説明

ダイバーシチ送信を伴う加入者位置測定のための無線電話システム

【課題】時間/空間ダイバーシチを利用した通信システムを提供する。
【解決手段】同期情報を含むパケットを異なるアンテナから異なる時点で送信する。移動局はパケットを異なる時点で異なるアンテナから受信し、最良のパケットまたはこれらパケットの組合せを用いてフェージングの影響を低減する。基地局において空間的に別個のアンテナ位置でデータパケット反復を形成する。また、TDMA信号を用いて符号分割多元接続(CDMA)系列を変調する。したがって、各パケットは移動局加入者にCDMAリンク経由で異なる時点で送信される。一つの実施例では、各送信局は三つのスペースダイバーシチアンテナを備える。第2の実施例では各々が一つの空間的に別個のアンテナを有する三つの転送局を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は双方向無線通信システムに関する。とくに、この発明はフェージング低減と加入者位置測定のためにスペースダイバーシチアンテナと時間ダイバーシチ信号送信とを伴う無線電話システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信は信号フェージング、すなわち受信機における信号レベルが、信号消失を引き起こす変動マルチパス反射、大気状態により時間的に変動する伝送損失、信号経路に障害物を引き込む移動体受信機の移動など多様な理由で一時的に低下するフェージングの悪影響を受ける。信号フェージングは受信不良、不便の原因となり、極端な場合は呼接続の遮断の原因となる。
【0003】
フェージング低減のために種々の形の信号ダイバーシチを利用することは周知である。例えば、米国特許第5,280,472号に示されるとおり、信号ダイバーシチはフェージングの悪影響を軽減する。ダイバーシチには三つの形式、すなわち、時間ダイバーシチ、周波数ダイバーシチおよびスペースダイバーシチがある。
【0004】
時間ダイバーシチは反復、差込みまたは反復の位置形式の誤り訂正符号化を利用することによって得られる。自動再送信と組み合わせた誤り検出手法は時間ダイバーシチの一つの形式を提供する。
【0005】
周波数ダイバーシチではフェージングに対処するために信号エネルギーを広い帯域幅にわたって拡散させる。周波数変調は周波数ダイバーシチの一つの形式である。周波数ダイバーシチのもう一つの形式はスペクトラム拡散としても知られる符号分割多元接続(CDMA)である。もともと広帯域信号であるので、CDMA信号は狭帯域変調信号に比べてフェージングの影響を受けにくい。一般に、フェージングはどの時点で見ても無線周波数スペクトラムの一部だけで生ずるので、スペクトラム拡散信号はフェージングの悪影響をもともと受けにくい。
【0006】
スペースダイバーシチは同じ信号を互いに隔てられた二つ以上のアンテナで送信または受信することによって行う。スペースダイバーシチは一つの信号経路が任意のある時点でフェージングにかかったときの防御のための代替の信号経路を提供する。受信機は僅かの伝送遅延で互いに隔たった同一の信号を受信するのでスペースダイバーシチは若干の時間ダイバーシチも生ずる。伝送遅延の差は受信機が到来信号間の区別をできることを必要とする。一つの解決方法は到来信号の各々に一つずつの受信機を割り当てた多元受信機を用いる。例えば、米国特許第5,280,472号により、2チップ遅延乃至数チップ遅延の人工的マルチパス時間ダイバーシチ信号を作り出すために情報シンボルに比べて小さい遅延をスペースダイバーシチ多元アンテナCDMAシステムに導入することは公知である。CDMAシステムは受信機に2チップ遅延以上の互いに異なる伝搬遅延で到来する複数の互いに等しい信号を互いに区別できる。そのような受信機はレーキ(Rake)受信機として知られている。しかし、従来技術のシステムは受信CDMA信号ごとに一つずつの複数のCDMA受信機を必要とする。そのような複数のCDMA受信機を要しない時間ダイバーシチCDMA信号受信システムを作るのが望ましい。
【0007】
移動機の位置の測定または算定は公知である。システムによっては、移動機位置を固定アンテナで測定する。他のシステムでは、移動機が複数の受信信号から自局の位置を算定する。双方向システムの場合は、通信リンクにより移動局加入者および固定システムの両方から位置データを互いに交換できる。移動局加入者の位置情報を伝送するのに公知の多様なシステムが衛星または多元アンテナを用いている。例えば、移動機送信機の位置の三角測量に多方向性受信アンテナを用いることができる。そのようなシステムでは、固定受信機が移動局加入者の位置を算定し、他のシステムでは移動加入者局が自局の位置を受信信号から算定する。例えば、全地球測位システム(GPS)は移動加入者局が自局の緯度経度上の位置の算定をできるようにする信号を供給する複式衛星システムである。しかし、衛星システムも衛星信号受信用のGPS受信機も共に費用がかかる。
【0008】
GPS受信機とセルラー電話との組合せは米国特許第5,223,844号に示されている。このような組合せは、例えば乗用車窃盗を抑止するための保安警報サービス、すなわち警報の発信により乗用車の位置への保安サービスをも発動させる警報サービスとして有用なサービスを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】USP 5 260 943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に、電話またはデータサービスと位置測定とを組み合わせたシステムを低廉に提供するのが望ましい。
【0011】
フェージングに耐性があり受信機コストを下げ移動局加入者が位置測定をできるようにする多様なシステムを提供するために、時分割多元接続(TDMA)をCDMAおよびスペースダイバーシチアンテナとの多様な組合せで用いた時間ダイバーシチ信号のシステムを提供するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明はフェージング低減および受信機設計単純化のために時間ダイバーシチおよびスペースダイバーシチを用いた無線通信システムとして具体化される。また、この発明は、本来の無線通信用の通信信号と同じ信号を用いて加入者局の位置を特定する機能を有する無線通信システムを実現するために、時分割信号を符号分割(スペクトラム拡散)多重化してスペースダイバーシチアンテナに供給する無線通信システムとして具体化される。
【0013】
より詳細に述べると、例えば電話音声信号トラフィックを搬送できるデータパケットを三つの互いに異なるアンテナから三つの互いに異なる時点で送信する。したがって、受信機は三つの互いに異なるアンテナから同一のデータパケットを三つの互いに異なる時点で受信する。受信機はフェージングの影響を低減するために最良のデータパケットまたはそれらデータパケットの組合せを使う。
【0014】
また、受信機は上記三つの送信アンテナからの距離を算定するために、上記三つのデータパケットの着信の絶対時間および外挿した相対時間を使う。まず、一つのアンテナまでの絶対距離を往復メッセージの所要時間で算定する。次に、世界時を基準とした他の二つのアンテナからのデータパケットの着信時間で第1のアンテナまでの距離と対比した相対距離を表す。これら三つのアンテナはすべて既知の固定地点にあるので、受信機は三つの一定距離曲線の交点(二次元の場合は円、三次元の場合は三つの球の交線)としそれ自身の位置を算出する。代替的には、移動加入者局が固定局または位置測定サービスセンターに未加工の遅延測定データを送り、そこで移動加入者局の位置を算出する。
【0015】
さらに詳しく述べると、この発明は三つのスペースダイバーシチアンテナから送信されるTDMA信号の変調にCDMAを用いたシステムに具体化される。第1の実施例では、TDMA信号を三つのスペースダイバーシチアンテナ付き転送局からの同一データパケットの複数回反復送信に用いる。第2の実施例では、三つのスペースダイバーシチアンテナの一つを各々が備える三つの転送局からの同一データパケットの複数回反復送信にTDMA信号を用いる。それらデータパケットは互いに同一であるか実質的に同一の情報を搬送するものであるかいずれでもよいが、互いに異なる拡散符号または同一拡散符号の互いに異なるセグメントで変調する。
【発明の効果】
【0016】
電話サービスと加入者位置測定とを組み合わせたシステムを低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明による転送局の第1の実施例を含む無線電話分配システムの系統図。
【図2】この発明による無線電話分配システムの第1の実施例のブロック図。
【図3】この発明による無線電話分配システムの第1の実施例の系統図。
【図4】この発明による転送局の第2の実施例を含む無線電話分散システムの系統図。
【図5】この発明による無線電話分配システムの第2の実施例の系統図。
【図6】この発明による無線電話分配システムの第2の実施例のブロック図。
【図7】この発明による符号分割多重信号変調用時分割多重信号のタイミング図。
【図8】この発明による転送局の第1の実施例のブロック図。
【図9】この発明による転送局の第1の実施例のブロック図。
【図10A】この発明による無線電話分配システムの時間スロット割当て図であって、六つの同時呼についての時分割多重化および符号分割多重化を示す図。
【図10B】この発明による無線電話分配システムの時間スロット割当て図であって、12の同時呼についての時分割多重化および符号分割多重化を示す図。
【図11A】この発明による無線電話分配システムの時間スロット割当て図であって、24の同時呼についての時分割多重化および符号分割多重化を示す図。
【図11B】この発明による無線電話分配システムの時間スロット割当て図であって、24の同時呼についての時分割多重化および符号分割多重化を示す図。
【図12】この発明による転送局の第2の実施例のブロック図。
【図13】この発明による加入者局のブロック図。
【図14】この発明による集中一体化転送局のブロック図。
【図15】転送局アンテナ構成のブロック図。
【図16】同軸ケーブルまたは光ファイバケーブルを用いたこの発明による分散アンテナ構成のブロック図。
【図17】この発明による符号分割多重信号変調用時分割多重信号のタイミング図。
【図18】この発明の分散アンテナ構成を示す系統図。
【図19】位置測定センターを通信システムの外部に配置したこの発明によるシステムのブロック図。
【図20】この発明による移動加入者局位置算定システムの説明図。
【図21】移動加入者局位置算定方法を図解するこの発明のシステム。
【図22】加入者局から送信転送局までの距離を算定する方法を図解するタイミング図。
【図23】加入者局から二つの送信転送局までの相対距離を算定する方法を図解するタイミング図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[システム説明−第1の実施例(図1、2、3、8、9)]
図1に示したこの発明の第1の実施例においては、アンテナ10を備える移動局ユーザがCDMA転送局14に結合されている。CDMA転送局14はアンテナT16、アンテナA11、アンテナB12、アンテナC13を備える。アンテナA、BおよびCは図示のとおり互いに別個の構造物に取り付けるか、単一のマストに取り付ける。物理的要件はこれらアンテナ相互間の間隔を非相関スペースダイバーシチ達成に十分な値にすることだけである。4分の1波長間隔で十分であるが、少なくとも10波長間隔にするのが好ましい。1GHzでは10波長は約30フィート、5GHzでは10波長は約6フィートである。
【0019】
移動加入者局アンテナ10(この明細書では、ユーザ端末アンテナ、加入者局アンテナ、または単にアンテナUともいう)をアンテナA、BおよびCに双方向無線リンクで結合する。CDMA転送局14は適宜切換えを経てアンテナT経由の双方向無線リンクで公衆通信用電話交換網に結合される。
【0020】
動作時には、アンテナTによりデータパケットの形で受信された順方向チャンネル電話音声トラフィックは、時間スロット1の期間にアンテナAで送信され、時間スロット2の期間にアンテナBで反復され、時間スロット3の期間にアンテナCでさらに反復される。これら三つの反復データパケット全部がアンテナ10で順次受信される。逆方向では、アンテナ10から送信された電話音声トラフィックを表すデータパケットがアンテナA、BおよびCでほぼ同時に受信される。CDMA転送局14はこの逆方向受信パケットをアンテナT経由で公衆通信用電話交換網に再送信する。
【0021】
図2は支持回路網相互間、すなわち公衆通信用電話交換網20、電話交換センター兼中央処理系装置22、およびCDMA転送局26、28、30、32、34、36および38相互間の互いに異なる相互接続を含むこの発明のシステムの総括図である。
【0022】
CDMA加入者局42のユーザはアンテナ10からアンテナA、BおよびC経由でCDMA転送局38に結合される。CDMA転送局38のアンテナT39は無線TDMA電話音声トラフィックを基地局24のアンテナ25に搬送する。これ以外のCDMA転送局の各々は多様な相互接続手段により電話交換センター22に接続される。TDMA基地局24とCDMA転送局36との間の接続手段Wは六つのTDMAスロットを有するTDMAチャンネル構成を備える無線手段である。この無線TDMA分配相互接続WEはインターディジタルコミュニケーションズ社発売の「ウルトラフォン」ディジタル無線電話システムなど市販の無線ローカルループシステムで構成できる。TDMA時間スロット構成は転送局経由で搬送され、出力側のスロット化CDMA信号の時間スロット構成になる。接続手段WEは、24の音声チャンネルについての基本的接続可能性を提供するために並列動作の四つのWモジュールがある以外は接続手段Wと同じである。接続手段Fは電話交換センター22を無線基地局経由なしにCDMA転送局に接続する光ファイバケーブルを用いる。接続手段F(光ファイバケーブル)はWおよびWEと同様のTDM/TDMAチャンネル構成のモデムを含むので、転送局との間のインタフェースは容易にとれる。電話交換センター22とCDMA転送局30との間の接続手段FT(標準T1多重を搬送する光ファイバケーブル)はチャンネル組合せ手段として標準T1マルチプレクサを用いる光ファイバケーブルである。したがって、WE接続手段を扱う転送局はFT接続手段との動作に容易に適合できる。CDMA転送局26への接続C(同軸ケーブル)およびCDMA転送局28への接続CT(T1標準多重を搬送する同軸ケーブル)は、FおよびFTとそれぞれ同様に機能するケーブル手段である。CDMA転送局36への接続手段Lは無線TDMA接続手段Wと同じ構成の100kb/sまでのデータストリームを搬送する条件付き電線路である。接続手段LE(図示してない)は接続手段WEと同じように機能するために四つの条件付き電線路を用いる。CDMA転送局34への接続手段PGは転送局とインタフェースする対利得機能である。
【0023】
転送局への接続用の無線および光ファイバケーブル媒体と転送局・CDMAユーザ端末間の共通出力空気インタフェースとの組合せを用いることにより、柔軟な高速応答と経済的解決方法とを達成する。また、64kb/s乃至100kb/sを取り扱うのに適合させた通常の電話線路を転送局へのTDMA無線入力の代わりに用いることもできる。また、転送局の入力側を対利得モジュールの出力に接続すると費用効率が非常に良くなる。空気インタフェースはこれら相互接続手段のすべてについて同じであるので、この拡張した考え方が費用効率の良い解決方法で過渡的伝達媒体となる。
【0024】
図3の系統図において、公衆交換網20経由の電話音声トラフィックはTDMA信号送受信用アンテナ25を有するTDMA基地局24に接続される。複数のCDMA転送局44、46、48、50および52が複数の加入者45および47に無線電話サービスを提供する。各CDMA転送局はTDMA信号受信用のアンテナTと移動局加入者45および47との通信用の個別のアンテナA、BおよびCを含む。例えば、TDMA基地局24は多数のCDMA転送局をカバーする半径35マイルの到達距離を有する。各CDMA転送局は通常は5マイルの到達距離を有し、地域全体にセル状の対象範囲を形成するために3マイル隔ててある。加入者局45はCDMA転送局46と交信し、加入者局47はCDMA転送局50と交信する。加入者がこのシステム内を移動するに伴って、別のCDMA転送局がその加入者局との間で信号授受を行う。
【0025】
代替実施例は、送信スペースダイバーシチ達成のために用いた三つのアンテナをさらに広く分散させるのに上述の高度の接続可能性を利用する。より広い分散により、マルチパスフェージングへの補償だけでなく通信障害に起因するフェージングへの補償も可能になる。例えば、CDMAユーザ(図1のアンテナ10)が建物または丘の背後に行くと、一つの転送局の三つのスペースダイバーシチアンテナ全部からの信号がフェージングする。
【0026】
しかし、各時間スロット内のエネルギーが図4に示すとおり互いに異なる転送局から送信されてきたものであれば、それら三つの転送局全部から同時にはブロックされない確率が大きい。したがって、障害によるフェージングの影響をランダム化し、マルチパスフェージングにより近似させることができる。ランダム化は、呼セットアップ処理期間中に個々に互いに異なる時間スロットを中央コントローラに割り当てさせることによって達成する。WまたはWE接続手段を用いて実動化した場合は、基地局と転送局との間の容量にはほとんど影響ないが、TDMA受信機の数は増える。しかし、基地局から転送局へのリンクにはダイバーシチ改善もある。一般的に、他の電線路接続手段への影響はさらに小さい。送信ダイバーシチ源として複数転送局を用いることによる主な利点は、ユーザCDMA受信機で各転送局からの信号の質の評価と、より品質の良いリンクが見出されたときの個々の時間スロットについてのチャンネル切換要求とが可能になり、ユーザが一つのエリアを通過する際に高信頼性で円滑な遷移ができることである。
【0027】
[システム説明−第2の実施例(図4、5、6および12)]
図4は高度化したスペースダイバーシチを備える無線電話分配システムを図解している。先の例と同様に、移動機ユーザアンテナ10を時間スロット1の期間中にアンテナAと、時間スロット2の期間中にアンテナBと、時間スロット3の期間中にアンテナCとそれぞれ結合する。しかし、アンテナA、BおよびCは互いに別々のCDMA転送局54、56および58にそれぞれ取り付けてある。より詳しくいうと、アンテナA60はCDMA転送局54に設けてあり、アンテナB68はCDMA転送局56に設けてあり、アンテナC64はCDMA転送局58に設けてある。これら転送局54、56および58はアンテナ62、70および66をそれぞれ経てTDMA無線ディジタル電話システムに結合されている。アンテナA、BおよびCから加入者局アンテナ10の受ける信号は図4の構成の受信信号と同様である。しかし、アンテナA、BおよびCがそれぞれ個々の転送局54、56、58にあって互いに隔てられているので、信号ダイバーシチが送信および受信の両方で大幅に改善されている。
【0028】
図6のシステム構成は、各CDMA転送局がアンテナBかアンテナBまたはCかを有する以外は図2のものと同じである。例えば、CDMA転送局A108は別のアンテナA109を備える。CDMA転送局106はアンテナB107を有する。同様に、CDMA転送局104はアンテナC105を有する。したがって、CDMA加入者局112のアンテナ10はCDMA転送局108、106および104の各々から信号を受信する。それら受信信号は、いかなる時点でもアンテナA、BまたはCの一つだけがアンテナ10への送信を行っているという意味で、時分割多重化された信号である。しかし、送信期間中はアンテナA、BおよびCは他のユーザに符号分割多重信号を供給する。
【0029】
この実施例においては、各転送局は一種類だけのアンテナ、すなわちアンテナA、アンテナBまたはアンテナCを有する。サービスエリアをカバーするシステム配置は図5に示してある。先の例のとおり、公衆交換網72を半径約35マイルのエリアを対象とする送信アンテナ75付きのTDMA基地局74に結合する。サービスエリア全体にわたって、CDMA転送局を一つの方向84に互いに隔ててあり、もう一つの方向86ではサービスエリアをカバーするように配置してある。図解のために規則正しい配置が示してある。実際には、CDMA転送局は、複数の加入者88、90をA、BおよびCアンテナの到達範囲内に常に納めるような交信範囲を提供するように配置する。例えば、CDMA転送局76および82はアンテナA型、CDMA転送局80はアンテナC型、CDMA転送装置78はアンテナB型である。したがって、加入者88は信号をCDMA転送局76、78および80から受信し、加入者90はCDMA転送局82、78および80から信号を受信する。
【0030】
この発明で用いるための時間スロット構成を図7に示す。六つの時間スロットを用いる。時間スロット1および2は受信用であり、加入者局送信用の時間スロット3がそれに続き、受信用にも使われている時間スロット4がさらにそれに続く。時間スロット5および6の期間中はCDMA受信機手段は他の転送局からの送信を走査する。
【0031】
[呼設定]
回線設定または転送を要する場合は、基地局が基地局周波数および転送局周波数の対、スロットおよびPN系列を割り当てる。次に、その回線をどの加入者が使うのかの割当ておよび指定のすべてを転送局に送信する。呼セットアップの期間中に、その転送局がスロットおよびPN系列割当てを所望の加入者局に転送する。例えば、TDMA時間スロット1乃至8をユーザA乃至Fにそれぞれ関連づけた図17を参照されたい。所与の時間スロット、例えば時間スロット2では、ユーザBへのメッセージは同期情報1701、システム全体の機能のための共通制御データ1702、個別制御データ1704およびユーザBのための専用ユーザトラフィック1705を含む。専用ユーザトラフィック1705は呼セットアップ期間中にシグナリング情報および初期化データの送信に用いる。
【0032】
[順方向経路]
信号圧縮および圧縮解除、順方向誤り訂正(FEC)を基地局で行う。順方向(加入者局に向かう方向)では、基地局が連続的に送信するが各スロットの情報は特定の加入者局に向けられる。
【0033】
例えば、基地局はスロット1の期間中に周波数faで情報を送信する。転送局はこのスロット1の期間中に周波数faの信号を復調するとともにその情報をシンボルレベルまたはビットレベルだけで再生することによって前記情報を受信する。転送局は復号化(すなわち、誤り訂正、圧縮または圧縮解除)は何ら行わない。したがって、転送局の設計は符号化ずみの信号をTDMA基地局から受けることによって単純化される。シンボルレベルでの再生ののち、受信TDMA信号を割り当てずみのPN系列と組み合わせて、周波数fpで意図的遅延なしにCDMA信号として転送局から再送信する。転送局は基地局から受信したこの情報をバッファメモリに蓄積する。アンテナA送信の終わりにバッファに蓄積ずみの上記情報でPN信号の連鎖を変調し適当な送信機経由でアンテナBに送出する。したがって、同じPN系列を用いて同一ではあるものの所定数チップ分だけの増分を含む情報信号がアンテナBで送信される。相対位置、または送信情報についてのPN系列の位相は異なる。1回目の反復の終わりには、時間スロットバッファ内の3回目の読出しを行って情報の3回目の反復を形成し、それでPN系列の連鎖を変調し、やはり異なる位相で適当な送信機経由でアンテナCに送信する。
【0034】
[加入者局処理]
正しいCDMA符号を用いる加入者局は、情報信号反復を含む三つのスロットの各々の期間中に、互いに異なる位置に配置してある三つのアンテナからのデータパケットの同一内容三回反復を受信するやり方で受信を行う。次に、加入者局は三つの受信結果を比較して、誤り率、位相歪み、信号対雑音比などに基づく最良品質のものを選択する。このようにして、スペースダイバーシチ送信を達成できる。加入者局ではアンテナは一つだけでよい。加入者局は信号を復調して復号化し、誤り訂正、圧縮解除などを行う。三つの時間スロット全部からの信号電力の組合せに最大尤度コンバイナを用いることができる。受信データパケットのエネルギーを最小判定の前に最大値手法で組み合わせるのが理想的である。
【0035】
三番目の時間スロットT3の期間中に、加入者局は受信時と同じPN系列を用いて転送局に返送する。このPN系列は受信結果(再生ののち)から抽出したものでもよく、呼セットアップ期間中に受信したもとの符号に基づきローカルに発生したものでもよい。加入者局は受信期間中には送信を行わないから、ダイプレクサもノッチフィルタも必要でない。アンテナの送受信切換には単純なT/R(送受信)切換スイッチを用いる。三分岐ダイバーシチの達成のために加入者局に必要な受信機は一つだけである。レーキ受信機の必要とする三つの連鎖はこの発明では不要である。
【0036】
また、拡張スペクトラムのもたらす周波数保護を伴う三重時間スペース冗長度の利点が容量を損なうことなく得られる。三分岐ダイバーシチで深いフェージングにつき通常少なくとも10dB(10xの割合)の減少を達成する。同一情報信号の三回反復送信により干渉レベルは3倍に上がるが、フェージングの10dB減に伴い送信機電力レベルは10分の1(10dB)下げられる。したがって、全体としての干渉の量は10/3の率でまたは5dBだけ減少する。転送局から加入者局へのリンクは自己干渉モードで動作するので、ダイバーシチを用いない場合の約3倍の加入者回線の同時利用が可能となる。
【0037】
[返送経路]
逆方向(加入者局から転送局に向かう方向)については、三つの受信装置を転送局の三つのアンテナにそれぞれ接続して慣用の三分岐スペースダイバーシチを形成する。干渉および利用可能回線数の上記分析が順方向送信の場合と同様に逆方向送信にも適合するが、情報が一度だけ送信され三つの基地局アンテナで同時に受信される点だけが異なっている。
【0038】
この発明は周波数一波あたりの加入者数を増加させることができるほか、費用効率がよい。第1に、加入者局に必要な受信機は一つだけである。第2に、加入者局にダイプレクサが不要である。第3に、転送局は信号の復号化または再符号化を何ら必要としない。一方、逆方向のスペースダイバーシチを用いているので、送信機あたりの加入者局数は同じであり、受信機あたりの加入者数は増加する。逆に、加入者局の雑音は加入者局数増加を全面的に利用してない場合は高くなっても許容される。
【0039】
転送局が加入者局から受信した信号は転送局から同一時間スロットで意図的遅延なしに基地局に返送される(シンボルレベルまたはビットレベル再生で、復号化なしに)。そのスロットが同一TDMAフレーム内にある限り、または少なくともそのスロットの1フレーム期間が基地局から転送局に用いられている限り、この発明の実施において付加的遅延はかからない。
【0040】
[転送局−第1の実施例(図8、9および15)]
CDMA転送局はアンテナTにTDMA入力を受ける。転送局アンテナA、BおよびCの出力側は人口密度の比較的高い地域における多数の加入者に到達するためにCDMA構成を用いる。CDMAはこの用途に望ましいいくつかの属性を備える。マルチパス環境では広帯域信号はもともと強く、意図的または自然の干渉への耐性を備える。選択性フェージングによって全スペクトラムが抑圧される可能性は送信スペクトラムの増加とともに減少する。高いチップ速度、すなわち増大したTW積は所期性能レベルの達成に必要な対フェージングマージンの大きさを軽減させる。
【0041】
スペクトラム拡散信号は対フェージング保護のための対マルチパス防御をもともと備えている。しかし、統計的なモデルにはフェージング発生頻度または接続時間は斟酌しない。各地点における特定の地形および受信機に対するその地形の変化の具合が実際のフェージングのパターンを決める。低いアンテナを用いる小セルについては、強力信号の経路長の差は小さい可能性が高い。その結果、フラットフェージングになる。すなわち、10乃至15メガヘルツにわたるスペクトラムが同時にフェージングを生ずる。したがって、少なくとも25または35メガヘルツのスペクトラムが利用できなければ、対フラットフェージング防御のために拡散スペクトラム信号の本来の対マルチパス防御特性を活用できない。また、付加的レーキ受信機の利点を生かすのに十分な遅延を生ずるマルチパスを結果として生じないことが多い。仮に生じても、自然のまたは人工のマルチパスの利用のためには、CDMAユーザ端末に付加的な受信機/相関器を要する。したがって、CDMAだけを用いて信頼性の高い動作を維持するには、リンク電力割当てへの所要付加マージン、とくに移動機ユーザがナル地点の一つに停止する場合や固定機ユーザが位置地形を少し移動させる場合などへの備えのためのマージンを少なくとも15dBにする必要がある。
【0042】
この発明は拡散スペクトラムシステムのもう一つの重要な特性、すなわち耐干渉性能を難度の高いマルチパス環境への対処策として利用する。CDMAシステムの容量は所望の受信機の受ける干渉の量で限定される。TW積が所望の信号を干渉から引き出すのに十分な大きさを備えていれば送信データ速度の実際の値は問題にならない。したがって、この発明では送信信号の三つの互いに異なるアンテナからの3回反復を可能にし、高性能リンクにつき送信電力マージンの10dB低減を許容する送信三重ダイバーシチを実現するために送信情報速度を高めてある。したがって、リンクへの干渉がさらに加わっても、CDMA処理利得でその悪影響を容易に克服できる。すなわち、高品質システムでは三重ダイバーシチからの利点が干渉の増加に伴う欠点を大幅に上回る。
【0043】
この発明の第1の実施例による転送局のブロック図を順方向チャンネルについて図8に示す。TDMAアンテナ916を転送受信スイッチ918経由でTDMA受信機800に接続する。TDMA受信機800の出力はデマルチプレクサ802に接続し、その出力を時間スロットバッファ806に蓄積する。時間マルチプレクサ808は時間スロットバッファ806の内容にアクセスし、アンテナA送信用の複数のCDMAエンコーダ810にデータパケット出力を供給する。時間マルチプレクサ808はアンテナC送信用の複数のCDMAエンコーダ812にもデータパケット出力を供給する。同様に、時間マルチプレクサ808はアンテナB送信用の複数のCDMAエンコーダ814にデータパケット出力を供給する。各々が複数の複数CDMAエンコーダ810、812および814をCDMA送信機816、818および820にそれぞれ対応して備えてある。これらCDMA送信機をそれぞれアンテナ822、824および826経由でアンテナA送信、アンテナB送信、およびアンテナC送信用にそれぞれ接続する。
【0044】
TDMA受信機800、時間スロットバッファ806、時間マルチプレクサおよびCDMAエンコーダの各々の連携調整は同期および制御装置804により制御する。同期および制御装置804は特定の転送局を表示する位置表示(ID)を前記複数のCDMAエンコーダ810、812および814に送りアンテナA、BおよびCからの送信信号に含めさせる。
【0045】
図8の転送局は図9のブロック図にその詳細を示したCDMA受信およびTDMA送信装置900も備える。TDMA送信機は送受切換スイッチ918経由でアンテナ916に接続され、CDMA受信機は図15にさらに詳しく示すとおりそれぞれのダイプレクサ経由でアンテナA、アンテナBおよびアンテナCに接続する。
【0046】
図9は逆方向チャンネルにおける処理信号の構成を図解する転送局のブロック図である。参照数字822、824および826でそれぞれ示したアンテナA、BおよびCは、CDMA受信機A902、CDMA受信機B904およびCDMA受信機C906にそれぞれ接続する。各CDMA受信機A、BおよびCの出力は最大尤度コンバイナ908に供給し、その出力はメモリバッファおよび時間スロットマルチプレクサ910に供給する。図8のブロック図対応のTDMA受信およびCDMA送信装置828は送受信スイッチ918のもう一方の端子に接続する。
【0047】
図15はアンテナA、アンテナBおよびアンテナCをTDMAおよびCDMA送信信号および受信信号の間で共用可能にする転送局のアンテナ構成を図解している。変調器1502は、アンテナA1512、アンテナB1516およびアンテナC1520にそれぞれ接続したダイプレクサ1510、1514および1518に時間マルチプレクサ1503経由でそれぞれ接続される。ダイプレクサ1510、1514および1518の各々のもう一つの入力は復調器1504、1506および1508の出力にそれぞれ接続してある。
【0048】
図8の動作の際には、アンテナ916で受信したTDMA信号をデマルチプレクスし、時間スロットバッファ806に蓄積する。所与の加入者向けのデータパケットを時間スロット1の期間中に時間マルチプレクサ808で選択し、複数のエンコーダ810の一つでCDMA信号をエンコードしアンテナAから送信する。同じパケットを時間マルチプレクサ808で再び選択し時間スロット2の期間中に複数のエンコーダ812の一つでCDMA信号をエンコードしアンテナBから送信する。最後に、同じデータパケットを時間マルチプレクサ808でそのあと選択し複数のエンコーダ814の一つでCDMA信号をエンコードし時間スロット4の期間中にアンテナCから送信する。
【0049】
逆方向について図9を参照すると、時間スロット3の期間中に加入者局からのCDMA送信がアンテナ822、824および826にほぼ同時に受信される。CDMA受信機902、904および906の各々は同じデータパケットを受信する。最大尤度コンバイナ904は困難な判定の前に三つの時間スロット全部からの電力を組み合わせる。一般的に、強度の最も大きく誤りを含まない信号が選択される。選択のあと、データパケットはメモリバッファおよび時間スロットマルチプレクサ910に保持され適当な時間スロットにTDMA送信機914からアンテナ916経由で送信されるための待ちに入る。
【0050】
[転送局−第2の実施例(図12)]
この発明の第2の実施例による転送局を図12に示す。この転送局は一つだけのCDMAアンテナA、BまたはCを備えている点を除き図8および9の転送局と同じである。より詳しくいうと、図12においてアンテナ1200が送受信切換スイッチ1202経由でTDMA受信機1204に接続されている。TDMA受信機1204の出力はデマルチプレクサ1206でデマルチプレクスされ時間スロットバッファ1208に蓄積される。時間スロットバッファ1208に蓄積したデータパケットはマルチプレクサ1210で時間多重化されて複数のCDMAエンコーダ1212の一つに供給される。エンコードされたCDMA信号はCDMA送信機1214で増幅され、ダイプレクサ1218経由でアンテナA1228に導かれる。
【0051】
アンテナA1228はCDMA信号受信も行う。そのために、CDMA受信機1226をアンテナA1228にダイプレクサ1218経由で接続し、受信データパケットをコンバイナおよび時間スロットバッファ1224に供給する。時間マルチプレクサ1222が時間スロットバッファ1224内のデータパケットを取り出しTDMA送信機1220への時間マルチプレクス信号を形成する。TDMA送信機1220は送受信切換スイッチ1202経由でアンテナ1200に接続する。この転送局の動作は、自局位置特定表示(ID)と呼セットアップパラメータを含む同期および制御装置1216により制御する。
【0052】
動作時には、転送局がアンテナT1200でTDMA信号を受け、その信号をTDMA受信機1204で復調し、デマルチプレクサ1206でデマルチプレクスし、時間スロットバッファ1208に蓄積する。時間スロットバッファ1208内のこのデータパケットは時間スロット1の期間中にアンテナAから送信される。そのために、時間マルチプレクサ1210、CDMAエンコーダ1212およびCDMA送信機1214は時間スロットバッファ1208からそれぞれのデータパケットを読み出し、適切なデータパケットでアンテナAへのCDMA符号化信号をエンコードする。それと逆の経路ではCDMA受信機1226が時間スロット全部においてアンテナA、BおよびCに信号を同時に受ける。受信データパケットはそれぞれのPN符号で復調し、ユーザごとに別々の時間スロットを割り当てた時間スロットコンバイナバッファ1224に蓄積する。次に、データパケットをマルチプレクサ1222で時間多重化しTDMA送信機1220により送受切換スイッチ1202経由でアンテナ1200から送信する。
【0053】
転送局はTDM/TDMA信号をCDMA信号に変換する変換点である。CDMA信号は適切に設計するとマルチパス干渉に対して優れた性能を発揮する。転送局の入力側は構造的分配回路網の一部である。それは基本的に回路網中の中継点であり、すなわちCDMA最終ユーザへのアドレスが中間点(転送局)のアドレスをも含むのである。一般の場合はCDMA最終ユーザは移動して他の転送点経由で回路網にアクセスするので、CDMAユーザのアドレスから独立した転送局アドレスを与える能力を提供する必要がある。図2におけるTDMA加入者局40などの固定加入者局については、バックアップ経路付与または対フェージング防御を除きこれは問題にならない。
【0054】
好適な入力回路網は図2に示すように多数の基地局、転送局およびTDMAユーザ局を含む。任意の周波数の任意の時間スロットを任意のTDMAユーザまたは転送局に割り当てることができる。転送局のコストを削減するために、CDMAユーザが特定の転送局経由で接続されたときその転送局に割り当てずみの任意の他のCDMAユーザも前記ユーザと同じ周波数の時間スロットに振り分けることを提案する。この割当てを適当に管理することによってTDMA無線素子の数を大幅に削減できる。基地局24または電話交換センターおよび中央系処理装置22は無線資源を管理し、周波数、時間スロットおよびPN符号を割り当て、スペクトラムおよび無線装置の効率的利用を確実にする。周波数、時間スロットおよびPN符号はすべて初期呼セットアップの期間中に割り当てる。
【0055】
転送局の出力側の局部的送信はCDMAであるが、各加入者局に時分割信号の特定の時間スロットを割り当てる。したがって、個々の情報速度は時間スロット数によって増加する。しかし、全加入者に対する全体のデータ速度は変わらず、全信号についての全体の送信電力も変わらず、再分配されるだけである。個々の時間スロットは活動がない場合はオフ状態になるので、送信電力は音声トラフィックについては約3dBだけ低下する。同一情報を3回送信するので平均送信電力は5dBだけ増加する。したがって、各転送局からの送信電力合計値は3回送信により5dBだけ増加するがダイバーシチ改善により10dBだけ削減できるので、5dBの平均電力総合低減が得られる。全体として、他のセルにおよぶ干渉は5dBだけ低減される。
【0056】
基地局(図2の24)または電話交換センターおよび中央系処理装置(図2の22)はチャンネル切換処理も行う。CDMA側でダイバーシチを得るには少なくとも四つの時間スロットがある必要があり、他の転送局の走査のためにCDMA受信機用の一つの時間スロットも必要である。四つの時間スロットでは二重ダイバーシチを提供できるだけである。五つの時間スロットによると三重ダイバーシチの所望のレベルを達成できる。CDMAユーザ端末に付加的受信機を追加することによって、より良質の同期信号を得るための並列同期が可能になることはもちろんである。しかし、CDMAユーザ端末にもう一つの受信機を付加するのは費用のかかる解決方法である。したがって、三つの時間スロットでは二重ダイバーシチどまりでありチャンネル切換はない。四つの時間スロットでは固定CDMA加入者用の三重ダイバーシチおよび移動CDMA加入者用の二重ダイバーシチができる。六つ以上の時間スロットによると、チャンネル構成に柔軟性を加える機会ができる。図7は時間スロット6個についてのCDMAユーザ端末時間スロット構成を示す。
【0057】
転送局における三重アンテナ構成は、活性状態の各加入者局からの単一のバーストをその加入者局への割当て時間スロットで三つのアンテナ全部で同時に受信することによって、返送リンクに用いるので、三重スペースダイバーシチをも達成する。転送局における順方向および逆方向CDMAリンク用の全体的タイミング構成を図10Aに示す。図解のために六つの時間スロットを示したが、上述のとおり3以上の任意の数の時間スロットを実動化でき、合理的上限は約32である。
【0058】
三つの活性時間スロットの送信の順序は時間スロット総数にわたり分散可能であり、三つ以上の時間スロットも利用可能である。三重ダイバーシチではCDMAユーザ端末からの送信電力を少なくとも5dB、おそらくそれ以上減らすことができるが、5dBは順方向リンクの性能に対等にする。いずれにしても、送信電力は高品質リンクの維持のために最小レベルに制御され保持される。より高い周波数では、比較的小さい無線装置またはエリアでも多少のアンテナ非相関性を達成できる。したがって、順方向リンクで用いたのと同様の送信スペースダイバーシチ時間ダイバーシチの手法を逆方向リンクにも適用できる。大ていの動作環境において二重ダイバーシチで著しい改善が得られる。
【0059】
各転送局は同期用および制御用にスペクトラム拡散チャンネルを連続的に送信する。同期および制御用チャンネルは特定の転送局を指定しユーザ端末をそれら端末がその転送局に割り当てられている期間中ずっと管理する。その同期および制御チャンネルは大部分の時間はユーザトラフィックを何ら搬送しない。同期および制御チャンネルは捕捉および追跡の容易な狭帯域チャンネルで構成できる。制御信号の情報保持部分は予め割り当てられた時間スロットを有し、その転送局のカバーする特定エリアに割り当てられた全ユーザへのシステムメッセージおよびシグナリングメッセージを含む。処理利得は、並列送信されるいくつかの時間スロット配置CDMA信号を転送局が包含できるようにし、それによってアンテナアレーの共用化を可能にするのに十分である。単一の位置で一体化する複数スロット配置CDMAモジュールに必要な同期および制御チャンネルは一つだけである。
【0060】
[加入者局(図13)]
この発明による加入者局のブロック図を図13に示す。アンテナ1300が送受信切換スイッチ1302経由でCDMA受信機1304に接続してある。CDMA受信機1304の出力はデータパケットをデータバッファ1306、1308および1310に供給する。コンバイナ1314はバッファ1306、1308および1310に保持されたデータを選択して結合し、D−A変換器1316に出力を供給し、同変換器内の圧縮解除手段で圧縮信号を圧縮解除して可聴周波数出力を生ずる。アナログ可聴周波数入力はデータ圧縮手段つきのA−D変換器1322に供給される。A−D変換器1322の出力はメモリバッファ3120内でデータパケットに組み立てられたディジタル形式の可聴周波数信号サンプルである。CDMA送信機1318はメモリバッファ1320の内容でエンコードを行い、CDMA符号化した信号を送受信切換スイッチ1302経由でアンテナ1300に供給する。CDMA加入者局は同期およびタイミング制御装置1312、すなわち後述のとおり位置測定のための信号遅延の測定も行う制御装置が同期させる。
【0061】
順方向では、CDMA受信機1304が三つの互いに同一のデータパケットを受信し、それらデータパケットの第1のものを時間スロットT1の期間中にメモリバッファ1306に、第2のものを時間スロットT2の期間中にメモリバッファ1308に、第3のものを時間スロットT4の期間中にメモリバッファ1310にそれぞれ蓄積する。コンバイナ1314は結合または最良の受信データとして選択すべきこれらメモリバッファの記憶内容の一つ以上を選択して、D−A変換器1316に供給する。このシステムは三つの時間およびスペースダイバーシチデータパケットを用いることによってフェージングに影響されにくくなっており、しかも三つのサンプル全部の復調に同じ受信機を用いているので複雑な信号強度平均化処理を必要としない。
【0062】
逆方向では、ディジタル圧縮アルゴリズム内蔵のA−D変換器1322へのアナログ可聴周波入力がバッファ1320へのデータパケットに変換される。時間スロットT3の期間にCDMA送信機1318でバッファ1320の内容によるエンコードを行い、CDMA信号としてアンテナ1300から送信する。
【0063】
CDMAユーザ端末の単純化はこのシステムにおける主要な考慮点である。主な単純化は受信機、とくに別の機能を持つ相関器の時間分割共用化ができることである。互いに異なる時点で送受信できる機能は小型可搬式ユーザ端末の実動化を単純化する。単一の受信機で三つのスペースダイバーシチ信号を三つの互いに異なる時間スロットで順次に受信し、次に別の符号に移って他の転送局からの改良信号を捜す。同一の受信機を捕捉および追跡にも用いる。ユーザ端末は送信中の時間スロット期間には受信は行わないのでダイプレクサおよびノッチフィルタは不要である。各時点ではただ一つのPN符号があればよいから、PN符号発生過程は大幅に単純化される。ベースバンド処理を比較的低速の普通のプロセッサで達成できる。
【0064】
ユーザ端末が送受信を行っていない時間スロットでは受信機が他の転送局からの同期および制御チャンネルを自由に探索できる。ユーザ端末が自局に割当てずみのものよりも良質の同期および制御チャンネルを特定すると、そのユーザ端末はチャンネル切換先候補を特定した旨のメッセージを回線網制御装置に送る。回線網制御装置はこのメッセージを他の情報とともに用いてチャンネル切換実行を決定する。回線網制御装置は対象交信先にチャンネル切換メッセージを送る。ユーザ端末の探索すべき符号の特定記号は回線網中央制御装置からそれら符号を制御チャンネルに収容した転送局経由で供給される。
【0065】
[時間スロット構成(図10A、10B、11A、11B、17)]
六つの同時的な呼を多重化する時間スロット割当てを図10Aに示す。送信用時間スロット割当て1002および受信用時間スロット割当て1004が図解してある。各囲みへの記入事項は対応時間スロット期間中の活動などである。時間スロット1の期間にはアンテナAがT1をユーザ1に送信し、アンテナBがT6をユーザ6に送信し、アンテナCがT4をユーザ4に送信する。同時に、アンテナA、BおよびCはユーザ5からR5を受信する。次の時間スロット2の期間にはアンテナAがT2をユーザ2に、アンテナBがT1をユーザ1に、アンテナCがT5をユーザ5にそれぞれ送信する。同時に、アンテナA、BおよびCはR6をユーザ6から受信する。図10Aの図表を続けて参照すると、時間スロット3の期間にはアンテナAがT3をユーザ3に、アンテナBがT2をユーザ2に、アンテナCがT6をユーザ6にそれぞれ送信する。同時に、アンテナA、BおよびCはユーザ1からR1を受信する。
【0066】
時間スロット3の期間にはアンテナA、BまたはCのいずれもユーザ1に送信していないことに注意されたい。その期間にはユーザ1は送信中であり、転送局がユーザ1からの信号を三つのアンテナ全部で受信中である。しかし、時間スロット4の期間にはユーザ1への3回目の送信がなされる。すなわち、時間スロット4の期間にはアンテナAはT4をユーザ4に、アンテナBはT3をユーザ3に、アンテナCはT1をユーザ1にそれぞれ送信する。時間スロット5および6はユーザ1との間のデータ転送には直接には使われていない。図10A、10B、11Aおよび11Bに示した時間スロット割当ては図7、すなわちユーザ1が時間スロット1、2および4の期間に受信し、時間スロット3の期間に送信している図7と整合している。T1の送信時点を探すことによってそのパターンが図10Aの時間スロット割当てから判る。T1の送信は時間スロット1、2および4でアンテナA、BおよびCにそれぞれ現れる。T3の期間中にはT1への送信はないが、受信時間スロット割当て1004を参照するとR1が時間スロット3の期間にユーザ1から受信されることが示されている。どの時間スロットにおいても三つの送信と一つの受信が同時に行われるので、少なくとも四つのアドレス可能なCDMAPN符号系列が必要になる。
【0067】
このように、互いに相続く時間スロットが互いに相異なるユーザ宛てのデータを搬送するという意味で時分割多重化を用いている。また、時分割多重化された時間スロットの各々の期間に多数のPN符号系列が多数のユーザとの間の同時通信を可能にするという意味で符号分割多重化を用いている。その結果、時分割多重化した符号分割多重化信号となる。
【0068】
12の同時呼を多重化する時間スロット割当てを図10Bに示す。送信用時間スロット割当て1006および受信用時間スロット割当て1008が図解してある。時間スロット1の期間にアンテナAがT1およびT7をユーザ1および7にそれぞれ送信し、アンテナBがT6およびT12をユーザ6および12にそれぞれ送信し、アンテナCがT4およびT10をユーザ4および10にそれぞれ送信する。同時に、アンテナA、BおよびCがユーザ5および11からR5およびR11をそれぞれ受信する。
【0069】
24の同時呼を多重化する時間スロット割当てを図11Aおよび11Bに示す。図11Aは転送局からの送信(順方向)を示し、図11Bは転送局への送信(逆方向)を示す。送信用時間スロット割当て1102、1104、1106と受信用時間スロット割当て1108とが図解してある。例えば、時間スロット5の期間にはアンテナAがT5、T11、T17およびT23を送信し(すなわちT5をユーザ5に、T11をユーザ11に、など)、アンテナBがT4、T10、T16およびT22を送信し、アンテナCがT2、T8、T14およびT20を送信する。同時に(時間スロット5の期間に)、アンテナA、BおよびCがR3、R9、R15およびR21を受信する(すなわち、R3をユーザ3から、R9をユーザ9から、R15をユーザ15から、R21をユーザ21から)。
【0070】
図10Aの場合は六つの同時呼を取り扱うのにアンテナ一つあたり一つのCDMAエンコーダが必要になる。図10Bでは12の同時呼を取り扱うのにアンテナ一つあたり二つのCDMAエンコーダを要する。同様に図11Aではアンテナ一つあたり四つのCDMAエンコーダを要する。したがって、例えば180のPN符号系列が利用できれば、180の同時呼の取扱いにアンテナ一つあたり180/6すなわち30のCDMAエンコーダを要する。所要アクセス数の増加に対して時間スロット数を増加させると、エンコーダ数はそれに比例して減少する。
【0071】
[代替的システム構成(図14、16)]
転送局とダイバーシチアンテナとの間の距離は1000フィート以上の広帯域ケーブル利用の性能強化により延長される。転送局は最終段無線周波数スペクトラム拡散信号をそのケーブル経由でアンテナに送る。そのケーブルの末端にあるアンテナは無線周波数増幅器を備える、ケーブルによる実動化分配信号は多元転送局送信ダイバーシチ受信手法について述べたのと同じ対通信障害改善をもたらす。
【0072】
しかし、好適な実施例は、各アンテナに別々のケーブルを用いる代わりに、単一のケーブルを共用にして各アンテナに互いに異なるケーブル搬送波周波数を割り当てた周波数分割多重化を用いる。このようにして、所望の信号をユーザに最も近いアンテナだけから送信して干渉を減らす。さらに他の改良例では、ケーブル分配システムで互いに異なる素子を地域的パーソナル通信システム回線網に一体化する。基本的構成単位は三重送信スペースおよび時間ダイバーシチ達成用の三つのアンテナを順次駆動する六つの時間スロット割当てCDMAモジュールである。単純化のために、入来TDMA信号を取り扱う転送局の設計にも基本の時間スロット6個構成を用いる。この時間スロット6個のモジュール構成はその倍数の12、18、24および30または32の時間スロットを収容するのに容易に応用できる。図14はいくつかの互いに異なる組合せの実動化を示す。好適な実施例は転送局への入力としてWまたはWEなどの無線入力を用いるが、ケーブル分配システムも電線経由の信号を入力として同程度に良好に動作する。
【0073】
ケーブル利用のパーソナル通信システムでは転送局を中央制御装置に戻し、過酷環境対応策および遠隔地電力供給を不要にして費用を削減する。また、同一場所への配置およびアクセス容易化により所要予備機数の削減および装置保守費用の削減も達成する。また、時間によりまたは週日によるトラフィック負荷の変動に伴って転送局を動的に割り当て、それによって所要転送局合計数を大幅に削減する。この分配システムの帯域幅は増大するが、ケーブルおよび光ファイバケーブル分配システムの開発により帯域幅増大に伴う費用は増大分を低廉な費用で吸収できるように低下している。いくつかの相互接続から選択できることによる利点は、相互接続選択が各装置設置関係費用で決まる所要経費面の選択になることである。各回線網で相互接続選択可能性を大幅にまたは全面的に含むものと思われる。
【0074】
転送局を中央制御装置と同じ場所に戻したシステム構成を図14の下段に示す。中央系装置近くに配置した転送局と遠隔地点に配置したアンテナとのリンクに通常の双方向ケーブルまたは光ファイバ広帯域分配システム1402を用いる。中央系装置近くに配置した転送局と各転送局アンテナとの間のリンクには広帯域スペクトラムを信号フォーマットに構成する際にかなりの柔軟性が得られる。しかし、単純化のために、時間スロット割当てCDMA三重スペース/時間ダイバーシチ空気インタフェース付きのTDMAプロトコルと周波数変換信号とを各アンテナへの共通空気インタフェースとして保持するのが望ましい。
【0075】
各アンテナに広帯域配線ケーブルで個別の中心周波数を割り当てる。TDMAおよびCDMAの回線分離機能により、多くのユーザと同一ケーブル周波数利用の同一アンテナと交信できる。位置Nにおける転送局アンテナは割当てケーブル周波数に同調したトランシーバを備える。中央制御装置は、広帯域分配ケーブル1402の各割当て周波数で電話トラフィックを代表する最終TDMA/CDMA波形でデータパケットを送受信する。すなわち、図16に示すとおり、各遠隔地点は地点1602に遠隔トランシーバ(送信機、受信機、局部発振器、ダイプレクサおよびアンテナ)を備える。遠隔地点に配置した装置は正逆両方向とも相対的に単純な受信機、周波数変換器および低電力送信機である。セルを小さくし三重ダイバーシチ(三つのアンテナおよび三つの時間スロット)を加入者局とシステムとの間のリンクに用いているので低電力送信増幅器が適している。局線コントローラの送信側が個々の情報の流れと、図14のインタフェースA’における関連のシグナリングおよび制御情報、すなわちパケットの形で割当て可能な時間スロットに表示した情報とを供給する。
【0076】
シグナリング情報は被呼加入者番号、符号、サービス概要および真正証明コードなどを含む。制御情報は経路付与情報(すなわち、どの基地局、転送局、アンテナであるかの指定)、電力レベル、通話中または通話なし状態、チャンネル切換メッセージなどを含む。大量のこの情報が、ユーザ情報(電話音声トラフィック)の回線伝達開始前に送信され、かなりの量の情報も電話音声トラフィックが回線に実際に伝送されている期間に伝達される。ユーザへの接続が完結したあとも別個の制御チャンネルが必要となる。基地局機能がこの情報をプロトコル、すなわちTDMA空気インタフェースとの境界形成に必要でありインタフェースWでのTDMA無線周波数スペクトラムを形成するプロトコルに変換する。転送局はこのTDMAプロトコルを時間スロット収容のCDMA三重スペース/時間ダイバーシチ空気インタフェースプロトコルに変換し、この信号をまずアンテナAで、次にアンテナBで、最後にアンテナCでそれぞれ送信する(図14)。
【0077】
中央制御装置近傍に配置した組合せ基地局・転送局(B−T)モジュールは基地局機能と転送局機能とを組み合わせ、A’に現れる信号を時間スロット収容のCDMA三重ダイバーシチ空気インタフェースに変換する。組合せB−Tモジュールは互いに個別の装置の直接組合せによって達成でき、組合せ基地局・転送局用に開発されたモジュールを一体化することもできる。CDMA信号は図15および16に示すとおり転送局の出力またはB−Tモジュールの出力で分岐される。三つの互いに異なるケーブルでそれぞれのアンテナに接続された転送局の場合は、出力を適切な時点で切り換えるだけである。全アンテナへの到達にケーブル1本だけを用いている場合は、転送局の出力をシンセサイザ周波数のアンテナ割当て周波数への変換により適当な時点で周波数シフトさせる。B−Tモジュールは同様に周波数アジルである。
【0078】
ユーザ情報が三つの時間スロットの各々で反復される一方、PN符号は継続し各時間スロットごとに互いに異なることが重要である。したがって、この反復は疑似マルチパスまたはエミュレートしたマルチパスの場合と同じではない。PN符号発生器はPN系列を蓄積したりリセットしたりすることなく動作を継続する。PN符号の継続発生はPN系列の新たな立ち上げに比べて実動化が簡単である。
【0079】
上述の説明において、時間スロットは互いに相続くものとしたが、受信機側に飛びの順序が既知であれば、これは必要でない。好適な実施例では、B−Tモジュールが二つの相続く時間スロットで送信し、次にユーザ端末からの応答信号を受信する。ユーザ送信時間スロットの期間にユーザ端末は、初めの二つの時間スロットが十分な動作をもたらし位置測定が不要であれば、B−Tモジュールに3番目のダイバーシチ時間スロットでの送信をしないよう指示する。二重ダイバーシチだけを用いることにより、他のユーザへの干渉が減り、ユーザ受信機を他の機能の達成用に空きにできる。
【0080】
代替的手法では三つの時間スロット全部に拡散させた1/3順方向誤り訂正符号を用いる。このような符号の利用により、各時間スロット期間中の誤り確率がほぼ同じであれば性能が改善される。一つの時間スロットが著しく悪化しその時間スロットを特定できる場合は、その悪化した時間スロットを無視し、性能低下継続の場合はその時間スロットを置換するようにアンテナチャンネル切換を要求する。実際のダイバーシチチャンネル統計により時間スロット統計はばらつくと考えられるので、好適な代替手法では三つの時間スロットにわたる順方向誤り訂正符号は用いない。誤り検出訂正符号は各時間スロット内だけにしか含まれていなくても、順方向誤り訂正符号を複数時間スロットにわたり用いることができる。
【0081】
送信すべきデータがあるとすると、各アンテナは時間スロットの各々の期間に送信する。そのデータは三回送信されるので、そのアンテナに割り当てられた各モジュールにつき各時間スロットに三つの送信CDMA信号がある。そのアンテナへの割当てモジュールが四つある場合は、どの時点でも四つのモジュールが24のユーザをサポートし、各時間スロット中にアンテナから放出されるCDMA信号は12になる(図11A、11B参照)。デューティ率が約50%の場合は、CDMA信号六つだけが実際に送信され、3番目の時間スロット不要の時が20乃至25%の場合は、各時点で送信されるCDMA信号は四つ乃至五つだけである。同じアンテナを受信側または逆方向(ユーザから転送局へ向かう方向)リンクにも用いる。
【0082】
上述のとおり、ユーザCDMA端末は一つの時間スロット期間だけ送信を行い、転送局は三つのアンテナでその送信を同時に受信し、受信機三重スペースダイバーシチを形成する。三つの受信信号は図15および16に示すとおり個別の電線路または互いに異なる周波数経由で転送局、すなわちB−Tモジュールに供給され、別々に処理される。これら処理を施した信号を最大尤度コンバイナを用いて足し合わせる。各アンテナ経路からのS/Iを測定し、少なくとも時間スロット10個分の期間にわたりメモリに保持する。信号統計の蓄積値は最大尤度結合処理に用いる。蓄積した信号統計は他のアンテナへのチャンネル切換実行のための判定プロセスにも有用である。
【0083】
B−Tケーブル回路網用のチャンネル切換処理は上記アンテナの各々からの信号に基づく。中央系処理装置は両方向のリンクの品質に関する情報を受信する。順方向リンクでは、特定のアンテナで特定された割当て時間スロット期間にそのリンクで動作中のユーザCDMA受信機から情報を受信する。逆方向リンクでは、互いに異なるアンテナ経由で個別の経路に関する情報を受信する。特定のアンテナ経由の経路の品質に関する情報は評価して他のアンテナ経由の電流経路と比較したり、ユーザ端末による継続的探索の対象である他の新たな経路と比較したりすることができる。特定の時間スロット経由の電流経路が継続して劣化し、より良質の経路が利用可能である場合は、中央制御装置が新たな経路(アンテナ)をユーザ端末に割り当ててその旨をユーザ端末に知らせる。
【0084】
転送局のためのチャンネル切換処理はこの切換えがアンテナ間の切換えでなく一般に転送局間の切換えである点を除き同じである。転送局間の切換えが行われると、その転送局関連の三つのアンテナ全部がその転送局からチャンネル切換えされる。いくつかの転送局は広く間隔を設けたアンテナで実動化できる。広く分離させたアンテナ付きの転送局がある場合は、B−Tモジュールにつき上述したチャンネル切換処理も使える。
【0085】
動作説明:新しい加入者がCDMAユーザ端末の電源を入れて同期符号をその符号の捕捉に至るまで走査する。次に、CDMAユーザ端末が登録メッセージを送信する。転送局がこのメッセージを受け、中央制御装置に転送し、この制御装置が入力確認メッセージをユーザ端末に返送して入力確認する。中央制御装置は上記新たな加入者端末の登録原簿を参照し、ユーザ概要を得て活性化状態にあるユーザ用にファイルに蓄積する。新たなユーザはこのようにして登録され、すべての呼がこの新しいサービス領域に転送される。
【0086】
互いに異なる同期符号が28個あり、各エリアに一つの同期符号が割り当ててある。28のエリアで1つの地域を形成し、隣の地域では同じ符号が反復される。一つのエリアの中の転送局は自局符号に互いに別のシフトまたは始点を与えられている。したがって、各転送局、または各広間隔アンテナは特定可能な符号を有する。中央制御装置には新たなユーザの登録したアンテナまたは転送局は既知であり、そのユーザへの全情報の経路づけはそのノード経由とする。中央制御装置はその新たなユーザに一組の符号または同ユーザの現在の符号についての互いに異なる始点を与えて、ダイバーシチ経路またはチャンネル切換先候補の特定の探索に備える。この新たなユーザは自局時間スロットの一方の半分の期間にわたり同期および制御チャンネルを継続してモニタする。自局時間スロットの他方の半分の期間はより良質の同期チャンネルを求めて走査する。
【0087】
ユーザは制御チャンネルで呼出しを受け、CDMAおよび時間スロット割当てを受け、呼の開始に備えてセットアップを行う。ユーザがサービス要求を出すと、その呼の期間についてのCDMA符号および時間スロット割当ても併せて受ける。ユーザ端末は、一つまたは全部のダイバーシチ経路における信号が弱くならなければ、呼の終わりまでこの状態に留まる。ユーザ受信機は入来信号の品質評価を継続的に行い、より良質の新たな経路を求めて走査を行っているので、経路の品質低下を検出し、その品質低下状態をより良質の切換先候補のリストとともに中央制御装置に知らせる。中央制御装置はチャンネル切換を指示し、ユーザ端末は新たなCDMA符号および時間スロットに移る。この動作はいずれもエンドユーザには検出できない。
【0088】
各時間スロットの始まりには、ユーザ情報を含まない短い再同期用および到達距離調整用の非変調部分であって、すぐ後の短い制御メッセージ部分に続いている非変調部分がある。これら短いバーストは送信すべきユーザ情報の有無に関わりなく送信される。送るべきユーザ情報がない場合は制御メッセージがそれを確認し、送信電力を時間スロットのユーザ情報部分について10dBだけ減らす。ユーザと中央制御装置との間で得られた合意如何でユーザ情報を伝達するための時間スロットが順方向チャンネルに四つ利用できることに注意されたい。これら時間スロットは上述のとおりオフ状態にして、他のユーザがアクセスできるようにし容量増大をはかることもできる。ダイバーシチの改善、またはより高速のデータ、複数データチャンネルもしくは図形チャンネルの音声チャンネルとの同時伝送のために、複数時間スロットを利用できる。
【0089】
[位置測定処理(図20、21、22、23)]
図20は乗用車およびそのアンテナをユーザアンテナUで表して図1または図4の無線リンクを示す。これら無線リンクは図10Aに示すように時間スロット割当てされている。無線リンクAUは時間スロット割当てを受けて時間スロット1の期間に形成される。無線リンクBUも時間スロット割当て式でスロット2の期間に形成される。無線リンクAUも時間スロット割当て式でスロット4の期間に形成される。無線リンクAUはUからアンテナAまでの絶対距離を確立する。アンテナAまでの距離が無線リンクAUとBUとの間の経路長差の測定の基準を形成する。同様に、無線リンクAUの経路長は無線リンクAUとCUとの間の経路長差の測定の基準としても使える。
【0090】
全部1のベクトル(同期用)の発生は三つのアンテナ全部について同時であるので、三つのアンテナ全部までの距離は各時間スロット内における全部1のベクトルの各到達時刻の差から導き出せる。三つのアンテナ全部の物理的地理的座標を有する位置決めセンターがユーザアンテナUの位置を算出する。
【0091】
位置測定の幾何を図20、21、22および23に示す。第1の距離AU測定で図21の円A上のある点にユーザを確定する。第2の距離測定で円B上のある点に位置するそのユーザを確定する。この確定位置が真正であり得るのはこれら円の交点XおよびZのみである。したがって、このユーザの位置は二つの可能性ある地点に絞られる。第3の距離測定でユーザを円C上のある点に確定する。ユーザは円C上にも位置するから、地点Zに位置しなければならない。他のアンテナまでの距離をさらに得ることによって、測定値の最初の組を確認し、多くの場合精度が改善される。地形が高さ方向に大幅に変動している場合は一定距離円は一定距離球になり、追加の測定により第三次元追加に起因する不確定性を除去できる。位置測定処理センターがこれら座標をユーザに利用しやすい指示に変換する。CDMAシステムによる距離測定は次のように達成される。
【0092】
1.AとUとの間で伝搬されるPN符号が物差しとして作用する。AとUとの間の所要伝搬時間が、マイクロ秒表示の伝搬時間とメガチップ中のチップ速度との積で表したチップの多数倍でリンクの長さを表すこと、またはその長さを信号伝搬期間にリンクに「蓄積」することを可能にする。図20参照。
【0093】
2.伝搬経路中に蓄積するチップの数を増大させるには二つの方法がある。一つは経路長を大きくする方法であり、もう一つはチップのクロック周波数を高くする方法である。チップのクロック周波数を上げるのは物差しをより細かい目盛にすることと類似している。したがって、チップのクロック周波数上昇によって経路遅延の中により多数のチップを蓄積し、より高精度の測定を可能にする。
【0094】
3.アンテナAからユーザ端末Uまでと、その逆向きにアンテナAまでとの経路長は、AからPN符号を送信し、同じPN符号を到来位相でユーザ端末から再送信し、アンテナAにおける返送受信信号をそのアンテナから先に送信ずみの信号と比較することによって測定できる。もとの信号を地点Aでの反射受信信号とチップごとに合致するまで遅延させること、およびすべりを生じたチップの数を数えることによって、合計の遅延はアンテナAおよびアンテナUの間の距離の2倍に比例する。
【0095】
4.距離測定の精度は1チップの表すフィート数の約1/4である。1/4チップは最大相関をいかに正確に検出し追跡するかで決まる実動化の制約である。この誤差は自己相関手法により減らすこともできるが、1/4チップは現実的な精細度である。
【0096】
5.上記3項で述べたアンテナAとユーザ端末Uとの間の経路長の測定のために、図22はアンテナAの送信信号2202および受信信号2204を示す。チップクロック周波数10メガチップ/秒では、各チップが表示するのは100フィートである。送信信号2202と受信信号2204との間の51チップ分の遅延は無線周波数信号が加入者局と転送局との間を往復伝搬するのに必要な時間を表す。往復伝搬遅延の半分、すなわち25.5チップがアンテナまでの距離を表す。したがって、アンテナAからユーザ端末アンテナUまでの距離は、例えば図22においては(51×100)/2=2550フィートである。この距離測定の精度は25フィート(100/4フィート)である。
【0097】
6.このように距離AUはごく正確に測定される。上述のとおり、受信機は単一の受信機を時間スロット全部について用いる。加入者受信機は時間スロット1を受信中は、基地局と協動して、受信波形を同じ位相でユーザ端末における遅延を加えることなく反復する。基地局受信機は上述のとおりこの受信位相を送信位相と比較して距離の絶対値を算定する。次に基地局はこのように測定された距離の値をユーザ端末に送り、その端末で将来の読出しおよび利用に備えて蓄積される。先に述べたとおり、重要なものは波形の位相であり、全部1のベクトルの始点がユーザ端末を通じて維持されていれば逆向きリンクでは同じ内容の新たなPN符号に差し替えてもよい。上述の同様の符号は所定のオフセット値だけシフトさせた同一の符号を含む。
【0098】
7.上述の往復測定手法は他の二つの距離(アンテナBおよびCまで)の算出および算出結果のユーザ局メモリへの蓄積に利用できる。しかし、三つのアンテナ全部までの距離の直接測定は不要である。図23参照。同じ受信機で三つの経路全部についての情報を回収できる。その際に受信機は各時間スロットの始点で経路長差に対し調節を行う。調節が一旦終わると、受信機がそのアンテナを情報チャンネルとして用いる最初の時点でその符号をメモリに蓄積し受信機がこの時間スロットに戻るまで保持し、メモリから取り出したその符号を追跡ループ用の始点に用いる。したがって、受信機は三つの別々の受信機をエミュレートする受信機パラメータの三つの別々の組、すなわち、時間スロット1のための一つの組、時間スロット2のための別の一つの組、時間スロット3のためのさらにもう一つの組を実質的に維持している。アンテナBおよびCへの距離はチップ数で測定したオフセットをリンクAUについての距離測定絶対値に加減算することによって算出できる。実際にはこのオフセットは時間スロットを情報チャンネルとして最初に使う前に決定でき、この決定はチャンネル切換え用の新しい経路の探索の過程で行う。遅延および信号品質の指標値を測定し潜在的チャンネル切換え先のファイルに保存する。これらの遅延オフセット測定値は位置測定過程の付加的距離測定でも用いる。
【0099】
上述の例を引き続き参照してより詳細に述べると、アンテナAからの送信信号2302はアンテナAからユーザ端末までの25.5チップの距離を代表する。アンテナUで受信したアンテナAからの信号2304はアンテナBおよびCからの信号の相対的時間、すなわちこれら信号の配置される互いに異なる時間スロットにつき調整を加えて時間の測定の基準として用いる。
【0100】
時間スロット1、2および3のタイミングは順次式になっているので、スロット2および3の実時間チップパターンは重複しない。しかし、時間スロット遅延の調整のあとは、タイミング関係は図23に示したとおりになる。時間スロット差についての調整をこのように経由して、アンテナBからユーザ端末アンテナUで受信した信号2306は8チップ分だけ先に(すなわち、アンテナAからの信号に対しオフセットされて)受信される。同様に、アンテナCからユーザ端末アンテナUで受信した信号2308も6チップ分だけ先に(すなわち、アンテナCからの信号に対しオフセットされて)受信される。受信信号は基準信号2304に対し遅れているか進んでいる(すなわち、正の遅延か負の遅延を受ける)。先行受信はそのアンテナ(BまたはC)がアンテナAよりも離れていることを示している。
【0101】
図23ではアンテナBからアンテナUまでの距離は25.5−8=17.5チップである。フィート表示では、17.5チップは17.5×100=1750フィート、すなわち経路長BUである。アンテナCからアンテナUまでの距離は25.5−6=19.5チップである。フィート表示では、19.5チップは19.5×100=1950フィート=経路長CUである。ユーザ端末の位置はZ、すなわちアンテナAから2250フィートの円AとアンテナBから1750フィートの円BとアンテナCから1950フィートの円Cとの交点に特定できる。
【0102】
代替的には位置測定は二つの双曲線の交点の計算により達成できる。第1の双曲線は二つの焦点からの距離差、すなわちアンテナAとアンテナBとの間の遅延差に比例する距離差を一定にする点の軌跡である。第2の双曲線は二つの焦点からの距離差、すなわちアンテナBとアンテナCとの間(またはアンテナAとアンテナCとの間)の遅延差に比例する距離差を一定にする点の軌跡である。アンテナAおよびアンテナBは第1の双曲線の焦点であり、アンテナBおよびアンテナCは第2の双曲線の焦点である。このようにして、第1の距離測定の達成のためにユーザ端末と転送局との間で双方向信号交換を要することなく加入者位置を算出できる。
【0103】
[位置特定サービス(図18、19)]
加入者局受信機は既知の地点から三つの互いに異なる経路経由で情報を受信しているので、固定の基準時点に対するメッセージ到達時点の測定により位置特定情報を算出できる。測定精度はチップ速度に左右されるが、毎秒10メガチップのチップ速度で十分に正確である。ユーザ端末でどの程度の信号処理が可能であるかによって、位置測定および表示にはいくつかの方法がある。その選択はその情報を実際に使うのは誰かによる。相対チップオフセット情報だけを用い、現在位置のセルから基準を得るのでかなり受動的になりうる。ユーザはGPSシステムの利用の場合と同様に自局の位置を局地的に算出しそれを表示することもできる。
【0104】
GPS受信機は経度値および緯度値を表示する。位置情報をサービス提供の処理センターに返送することもできる。処理センターは経度緯度値を特定街路のブロック番号など地理的意味を持つ位置情報に変換する。
【0105】
保安および健康問題に懸念のある人々には局地的位置測定はとくに魅力がある。サービスセンターの管理者が警察、指定家族に通報したり、サービスセンターに特別料金対象の一部として異常状態点検スタフを配置したりすることができる。そのサービスセンターが名目的な料金で各個人に現在位置を通知したり所望の目的地点までの経路を指示したりできることはもちろんである。歩行者あるいは車両利用者であるユーザにこれらサービスを提供できる。目的地への案内は詳細な案内をいっぺんに提供してもよく、ユーザが示唆経路どおりに移動する過程で供給する特定継続交差点プロンプトでもよい。このプロンプトは、次の交差点で右折などの音声コマンド、またはテキスト表示の形式でよい。配達用トラック、タクシー、救急車、消防車などは案内事項を記入した関連地域の地図を示す特別の表示スクリーンを備えることもできる。道路混雑状況の変化に応じて案内を変えることもできる。この発明の利点は公衆安全、利便性および生産性が大幅に高められることである。
【0106】
上述のシステム構成において、正確な位置特定性能を発揮するためにアンテナ相互間の分離は十分に大きくしてある。干渉を生じさせる障害物に起因するフラットフェージングを避けるために十分な互いに独立の経路を確保するようにアンテナを配置することによって、三角測量誤差をごく小さい値に減らすに十分なアンテナ相互間分離とする。位置測定性能最適化に伴う追加費用はごく小さい。
【0107】
位置測定情報処理は位置測定センターを所有し管理する第三者のプロバイダが行う。位置測定サービスはいくつかの方法で達成できる。好適な手法は、位置測定ファイルを構築し保守してユーザ端末をあらゆる位置情報の貯蔵所にする手法である。位置測定センターは情報が必要なときは通常の公衆交換網経由(好ましくはデータパケット)でユーザ端末に照会を発する。守秘のために送信中およびアクセス符号の秘匿化の備えを設けるのが好ましい。ユーザ端末は、ユーザによる作動に応答して、公衆交換回路網経由で位置測定センターに位置測定情報を送る。例えば、ユーザが警報ボタンを押すと、無線送信機が位置測定情報とともに警報メッセージを位置測定センターに送る。位置測定センターは予め構成ずみの案内と契約サービスのレベルに応じて応答する。ユーザ端末は符号オフセット情報を内部的に発生するので、このセルラーシステムがユーザ端末に提供する必要のある追加の情報は、ユーザ端末から基地局/アンテナの一つまでの距離、片道往復の区別だけである。ユーザへのサービスとして提供される距離情報は基地局/アンテナを特定しなければならない。測定はすべて100ミリ秒の時間窓の期間内に実行する必要があり、それが未達になると測定時点間の車両の移動に起因する誤差が過大になる。停止中の車両または歩行者については、位置測定を実行するための時間窓は、測定時点間の移動がほとんどまたは全くないのでずっと長くてもよい。したがって、このシステムからユーザ端末に送る距離測定値は、フィート表示の距離、ミリ秒表示の時間および測定主体の名称などである。ユーザは距離メッセージを受信するとそのメッセージを蓄積し、いくつかの互いに異なるアンテナまでの符号オフセット測定を行い、信号レベルが十分であれば複合情報を位置測定ファイルに蓄積する。その位置測定ファイルはユーザ端末無線受信機が新たな距離メッセージを受信するまで保持され、そのメッセージ受信時点でユーザ端末無線受信機は符号オフセット測定を再び行い、位置情報ファイルを更新する。
【0108】
位置測定センターがユーザ端末無線装置に対してその端末の位置に関する照会を発すると、その無線装置は位置情報ファイルの内容を送る。位置測定センターはそのデータを処理してごく正確な地図データ、すなわち特定街路上の位置のデータなど(通常の街路地図に表示可能)に変換する。このシステムは、加入者が受信機をオンにした呼出し待ち受けの活性受信モードにある場合は、通常毎分1回ずつ加入者局までの距離測定を行う。距離測定の時間間隔は可変であり、ユーザの必要に応じて調節可能である。システムはこの新たな距離値を加入者局に送り、加入者局はこれをファイルに蓄積し、それによって新たな符号オフセット測定を行う。加入者が通話中は、ユーザ端末は送信中であり、基地局は10秒ごとに測定を行い、距離が100フィート以上変動するとシステムはメッセージを加入者局に送る。ユーザ端末は、距離測定値を受信するたびに、局部符号オフセット測定値を加えてファイルを更新する。
【0109】
ユーザ端末位置ファイルが毎秒または必要に応じてそれ以上頻繁に更新されることは理解されよう。したがって、このシステムは距離およそ100フィート以内にある活性状態のユーザすべての位置を把握できる。より高い精度およびより頻繁なデータ更新はもちろん可能であるが、データリンクへの負荷を伴うのでそれら高性能化した加入者局の数は原則的でなく例外にする必要がある。ユーザが可搬式端末の警報ボタンを押すと、その端末配置特定ファイルの内容を3回送信し、それはシステムが新たな距離を算出してユーザ端末にメッセージを送るのに十分な長さを有する。ユーザ端末は数回のオフセット測定を行い新たな距離ファイルを3回送る。警報メッセージは電池があがるまで30秒に1回反復される。ユーザ端末無線装置には無線警報メッセージの送信の度ごとに可聴音を発する(専用バッテリ内蔵の)モジュールを付加できる。
【0110】
このシステムは人間に読取り可能な地図データに変換すべき未加工の位置特定情報をユーザ端末で発生する。一般に、基本的な経度、緯度、角度および距離の算出値は精細である。しかし、このデータを一般公衆がすぐ使えるフォーマットにサービス事業として変換する第三者が必要である。ユーザ端末は基本位置測定情報を有するから、その情報はユーザ端末に要求を出す正当な権利保有者に提供できる。位置情報処理センターは契約ずみユーザ端末に周期的に照会を出し、それら端末の現在位置についてのファイルを維持する。健康問題を抱えている加入者への一つの潜在的サービスは運動中のモニタを行うサービスである。加入者が正常でない場所に長時間にわたって停止しておりしかも警報ボタンを押さない場合は、位置測定センターの操作者がその停止中の加入者に脈拍などを要求したり、医療技能者を派遣したりすることができる。緊急の場合は、位置測定センター操作者が援助派遣のための加入者現在位置を把握している。一方、警報ボタンが押される場合は、その警報メッセージは緊急事態対処に備えのある位置測定センターに宛てられる。ユーザ端末を追跡し何らかの行動の結果として援助を提供できる機能は多様な用途に有用である。盗難車の捜索、交通混雑の検出、経路混同防止およびいたずらの通報などがこの発明の用途のいくつかの例として挙げられる。
【0111】
このシステムは、上に述べたとおりとくに分散構成においては、互いに異なる基地局にまたがる整合零時刻基準を要する。零時刻基準を利用できると、信号がアンテナ間で跳ぶときの再同期までの所要時間が短縮され、また捜索チャンネル切換の援助になる。上述の位置測定応用能力は、いくつかのユーザ端末を上述のとおり固定位置に配置するとともにそれら位置への適切な零時刻設定によって、このシステムが自己較正を周期的に行うことを可能にする。このシステムがそれらチェック点を走査している際に中央処理装置に正しい答えを保存しておくことによって、システムが較正外れになった場合の誤り表示が可能になる。実行遅延を増減させることによって可変遅延を導入する処理の期間に、同じチェック点を用いる。
【0112】
較正処理は容易に自動化できる。自動化は二つの方法により実動化できる。第1の手法は毎分1回の割合でチェック点を走査し、何らかの誤りが発生したかどうかを判定する。誤りが著しいレベルに達すると、通信システムが位置計測センターに連絡してそのセンターに位置測定算出用に組み入れるべき訂正を伝える。後者の手法は通信システムと位置測定センターとの間の協動を要する。より自治的な手法が望まれよう。通信システムそのものは、上述のとおり、チェック点を走査すること、および経路中への遅延1806の挿入または除去の機能を備えることによって適切な「零」状態を維持できよう。
【0113】
図18は自己較正つきシステムを図解している。毎分1回このシステムは各チェック点に照会を発する。その結果、距離測定値はチェック点1802に送られ、そこでチェック点受信機が符号オフセット測定値を加え、位置ファイルの内容をプロセッサ1804に送り、そこで受信されたファイルは正しい測定値を含むファイルと比較される。その差が閾値を超える場合はプロセッサ1804が、測定値を許容値範囲内に納めるに必要な遅延の変化分を計算し、訂正値を制御装置に送る。制御装置は各アンテナについて挿入すべき可変遅延1806を含むファイルを維持する。制御装置はファイル内の遅延値を変化させ、新たな測定値を較正の有効化のために取り込む。遅延値の大幅な変更を要する変化は起こりにくいが、そのような変化が万一生じた場合は再較正対象の区間を含む測定は制御装置が開始しない。このようにして、位置測定機能が通信システムにサービスを提供する。自己較正により設置費用は大幅に削減され、より廉価なシステム構成部分の利用が可能になる。
【0114】
アンテナ装置と加入者端末との間の位置測定関連の通信はいくつかの互いに異なるリンクに分割できる。それら互いに異なるリンクの機能は、(1)距離測定(双方向リンクを要するが通話トラフィックなし)、(2)加入者端末への測定情報の送信(起こり得る再送信要求を除き一方向データリンク)、(3)符号オフセットの測定(受信用にユーザ端末だけを要し、データ転送なし)、(4)位置測定センターまたは通信プロセッサ1804への位置測定ファイルの送信(データリンクは一方向でも双方向でもよい)。距離測定はシステムだけに可能であり、双方向リンクを必要とするので通常の通話チャンネルが確立しているときに実行可能であり、端末が受信モードの時はシステムが短距離の往復接続を形成しなければならない。
【0115】
基地局がユーザ端末への送信信号とユーザ端末からの受信信号との間の符号位相差を測定するので双方向リンクが必要である。図18では、この機能はプロセッサ1804で達成される。その意味で、このシステムはPNチップ幅のパルスを用いたレーダと同様に動作する。ユーザ端末に距離情報を伝える一方向データリンクメッセージは通常誤り訂正符号を含む単一メッセージであり、ユーザ端末から基地局への入力確認メッセージの返送を必要とする。入力確認メッセージはそれだけ独立に送ってもよく、距離測定機能の一部に付加して送ってもよい。
【0116】
符号オフセット情報はシステム外部からアクセス可能なファイルにも蓄積する。上述のとおりユーザ端末は三つの互いに異なるアンテナから互いに異なる時点で生ずる三つの独立経路経由で一つの受信機をタイムシェアしている。したがって、この受信機は三つの独立の経路を逐次追跡する。各経路のPN符号は同じであり、上述のとおり、符号は各アンテナで同一の始点を有するが、ユーザ端末からこれら三つのアンテナまでの距離の差のために、ユーザ端末に到来する符号は互いに異なる符号位相を有する。しかし、システムサイクルはアンテナごとに急速に変動するので、受信機はこれらアンテナの各々からの受信信号の間で循環する。したがって、受信機は三つの開始状態と互いに異なる時間スロットについての追跡ループとを維持する。各時間スロットの終わりには正確な時間が事前に既知であり、前の状態がコンピュータに蓄積され、同一アンテナに割り当てられた次の時間スロットの始点で回復される。したがって、このプロセッサは三つの互いに異なる受信機をエミュレートしている。受信機は他のアンテナにロックされている間に生じた僅かのドリフトを急速に調整する。受信機が特定の開始状態を有することに注意されたい。このようにして、PN系列はユーザ端末と第1のアンテナとの間の経路およびユーザ端末と第2のアンテナとの間の経路の距離差を補償するようにシフトを受ける。この差は符号オフセットである。すなわち、符号オフセットは距離差を測定するからである。したがって、第2のアンテナまでの距離も閉ループ(双方向)測定を要することなく既知となる。第3のアンテナについても同じ処理を行う。
【0117】
位置情報ファイルに追加の、すなわち四つ以上の入力を行うことも、ユーザ端末無線装置がチャンネル切換先候補の特定に用いる通常の探索モードを用いて利用可能である。ユーザ端末無線装置は近くのアンテナからのパイロット符号を探索してそれらアンテナからの信号が現在使用中の三つのアンテナからのものよりも良質かどうかを判定する。良質であると判定されれば、ユーザ端末は適切な候補が利用可能である旨をシステムに通知する。探索過程は時間スロット1からの入来PN信号の状態で始まり、その状態で何も見出されなければ無線装置は1チップを経路長に加算して再構成する。無線装置は信号を見出すか距離閾値を超えるまでチップ加算を継続する。距離閾値を超えるとPN発生器を新たなパイロット符号にリセットして零オフセット距離から再始動する。したがって、無線装置が新たなパイロット符号を見出した時点では、その時点までに加えたチップの数は無線装置に既知である。チップ追加数は符号オフセットでもある。この符号オフセット値をアンテナ特定用の符号および時刻データとともに位置情報ファイルに蓄積する。無線装置はこれらデータ入力をそれらデータが現在の信号よりも良質でなくても位置測定ファイルに蓄積する。無線装置が新たなアンテナを走査し見出すと、四つの最良の捜査結果を位置測定ファイルに蓄積する。走査の継続とともに、古い方の入力データは新たなより良質の入力データに置換される。
【0118】
所要情報がこのようにユーザ端末位置測定ファイルで利用可能になるので、それら情報は資格ある要求者の利用に供される。位置測定サービスは通信事業者またはそれと競合する独立のサービスプロバイダによって提供されよう。それ以外に、多数の車両の所有者の運用する大規模な私立位置測定センターもあり得る。位置測定センター1902は公衆通信用交換網経由で位置測定ファイルを受信する。図19参照。その交換網は回線交換網でもパケット交換網でもよい。この種の用途にはパケット交換網で十分である。
【産業上の利用可能性】
【0119】
CDMAによる第三世代広帯域移動無線通信方式の機能強化に適用できる。
【符号の説明】
【0120】
1,2,4 受信
3 送信
5 走査
6 予備
10 CDMA転送局
11,12,13,16 アンテナ
14 CDMA(符号分割多元接続)転送局
20 公衆通信用電話交換網
22 電話交換センターおよび中央系処理装置
24 TDMA(時分割多元接続)基地局
26 CDMA転送局
40 TDMA加入者局
42 CDMA加入者局
54,56,58 転送局
60,64,68 アンテナ
72 公衆通信用電話交換網
74 TDMA基地局
92 電話交換センターおよび中央系処理装置
94 TDMA基地局
96,98,100,102,104,106,108 CDMA転送局
110 TDMA加入者局
112 CDMA加入者局
800 TDMA受信局
802 デマルチプレクサ
804 位置特定符号を含む同期および制御装置
806 時間スロットバッファ
808 時間マルチプレクサ
810,812,814 複数CDMAエンコーダ
816,818,820 CDMA送信機
828 TDMA受信機 図8のCDMA送信機
900 CDMA受信機 図9のTDMA送信機
902,904,906 CDMA受信機
908 最大尤度コンバイナ
910 メモリバッファおよび時間スロットマルチプレクサ
912 同期および制御装置
914 TDMA送信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加入者ユニットにおける使用の方法であって、
前記加入者ユニットにおいて、第1の到達の時間において、第1のアンテナから第1の信号を受信するステップと、
前記加入者ユニットにおいて、第2の到達の時間において、第2のアンテナから第2の信号を受信するステップと、
前記加入者ユニットにおいて、前記第1のアンテナからの前記第1の信号の前記第1の到達の時間と、前記第2のアンテナからの前記第2の信号の前記第2の到達の時間との間の差を決定するステップと、
前記加入者ユニットによって、前記第1のアンテナ又は前記第2のアンテナに対して、前記決定された前記第1のアンテナからの前記第1の信号の前記第1の到達の時間と、前記第2のアンテナからの前記第2の信号の前記第2の到達の時間との間の差を示す情報を搬送する第3の信号を送信するステップであって、前記第3の信号は拡散符号化されている、ステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のアンテナからの前記第1の信号は、第1の擬似ランダムコードで符号化され、前記第2のアンテナからの前記第2の信号は、第2の擬似ランダムコードで符号化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の擬似ランダムコードで符号化される前記第1のアンテナからの前記第1の信号の一部は、前記第2の擬似ランダムコードで符号化される前記第2のアンテナからの前記第2の信号の一部よりチップ数前に前記加入者ユニットにおいて到達し、前記チップ数は、前記第1のアンテナからの前記第1の信号の前記第1の到達の時間と、前記第2のアンテナからの前記第2の信号の前記第2の到達の時間との間の差に対応することを特徴とする請求項2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−120222(P2012−120222A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−11040(P2012−11040)
【出願日】平成24年1月23日(2012.1.23)
【分割の表示】特願2011−43103(P2011−43103)の分割
【原出願日】平成7年8月31日(1995.8.31)
【出願人】(596008622)インターデイジタル テクノロジー コーポレーション (871)
【Fターム(参考)】