説明

ダイバーシティ無線機およびRFIC

【課題】RFICの開発工数を削減する。
【解決手段】無線部10,20に、互いに同一回路構成のRFIC30A,30Bをそれぞれ設け、これらRFIC30A,30Bに、入力された動作モード選択信号の入力論理レベルに基づいて、プライマリ系およびダイバーシティ系のいずれか一方のモードでRF信号処理を行うRF信号処理回路35を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関し、特にダイバーシティ無線機で用いる回路構成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話装置などの無線機では、基地局からの無線電波の受信品質を高めるため、ダイバーシティ受信機能を備えている。ダイバーシティ受信機能とは、異なる複数のアンテナで受信した同一の無線信号について、電波状況の優れたアンテナの信号を優先的に用いたり、受信した信号を合成してノイズを除去したりすることによって、受信品質や信頼性の向上を図る技術のことである。
【0003】
このようなダイバーシティ無線機には、一方のアンテナを送信系統との間で送受切替器により兼用するプライマリ系として用いるとともに、他方のアンテナを受信系統専用となるダイバーシティ系とし、これらプライマリ系およびダイバーシティ系についてそれぞれRF信号処理を行う受信回路を設け、これら受信回路からの出力を復調器で復調するものがある(例えば、特許文献1など参照)。
これにより、プライマリ系のみを用いて受信するプライマリ動作(非ダイバーシティ動作)と、プライマリ系とダイバーシティ系の両方を用いて受信するダイバーシティ動作を、受信状況に応じて切り替え制御する機能が実現される。
【0004】
このようなダイバーシティ無線機の関連技術として、2つの異なるアンテナに接続されたそれぞれのRF受信処理部を1つのRFICに搭載し、このRFICに設けたレジスタにCPUから制御データを設定することにより、これらRF受信処理部をプライマリ系とダイバーシティ系のいずれかに切替制御する技術が提案されている(例えば、特許文献2など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−251241号公報
【特許文献2】特開2007−258847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような関連技術では、1つのRFICにプライマリ系とダイバーシティ系のRF信号処理回路が搭載されていることから、RFIC内部の回路構成が大規模化するとともに複雑化するため、回路評価などの開発工数が増大するという問題点があった。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、RFICの開発工数を削減できるダイバーシティ無線回路技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明にかかるダイバーシティ無線機は、第1のアンテナに接続された第1の無線部と、第2のアンテナに接続された第2の無線部と、第1および第2の無線部と接続されたベースバンド部とを備え、第1および第2の無線部のうちのいずれか一方がプライマリ系として動作するとともに、いずれか他方がダイバーシティ系として動作し、RF信号を受信する際、プライマリ系でのみ受信動作を行いダイバーシティ系での受信動作を停止するプライマリ動作と、プライマリ系とダイバーシティ系の両方で受信動作を行うダイバーシティ動作とを行うダイバーシティ無線機であって、第1および第2の無線部は、互いに同一回路構成のRFICをそれぞれ含み、RFICに、入力された動作モード選択信号の入力論理レベルに基づいて、プライマリ系およびダイバーシティ系のいずれか一方のモードでRF信号処理を行うRF信号処理回路を備えている。
【0008】
また、本発明にかかるRFICは、第1のアンテナに接続された第1の無線部と、第2のアンテナに接続された第2の無線部と、第1および第2の無線部と接続されたベースバンド部とを備え、第1および第2の無線部のうちのいずれか一方がプライマリ系として動作するとともに、いずれか他方がダイバーシティ系として動作し、RF信号を受信する際、プライマリ系でのみ受信動作を行いダイバーシティ系での受信動作を停止するプライマリ動作と、プライマリ系とダイバーシティ系の両方で受信動作を行うダイバーシティ動作とを行うダイバーシティ無線機において、第1および第2の無線部で共通して用いられて、ベースバンド部から制御データが出力される制御信号線に対してそれぞれ並列接続されるRFICであって、制御信号線から入力されたプライマリ系の動作を規定する制御データを保持するプライマリレジスタと、制御信号線から入力されたダイバーシティ系の動作を規定する制御データを保持するダイバーシティレジスタと、入力された動作モード選択信号の入力論理レベルに基づいて、プライマリレジスタおよびダイバーシティレジスタのいずれか一方のみを有効とするレジスタ選択回路と、プライマリレジスタおよびダイバーシティレジスタのうち有効とされたいずれか一方で保持されている制御データに基づいてRF信号処理を行うRF信号処理回路とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、動作モード選択信号により、RFICの動作モードを容易に設定することができ、プライマリ系とダイバーシティ系のRF信号処理回路を、同一回路構成のRFICを用いてそれぞれ別個に実現することができる。したがって、RFIC内部の回路構成を小規模化できるとともに簡素化することができ、回路評価などの開発工数を大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態にかかるダイバーシティ無線機の構成を示すブロック図である。
【図2】プライマリレジスタの構成例である。
【図3】ダイバーシティレジスタの構成例である。
【図4】共通レジスタの構成例である。
【図5】RFICの動作開始処理を示すフローチャートである。
【図6】プライマリ動作のレジスタ設定例である。
【図7】ダイバーシティ動作のレジスタ設定例である。
【図8】第2の実施形態にかかるダイバーシティ無線機の構成を示すブロック図である。
【図9】プライマリ動作の他のレジスタ設定例である。
【図10】ダイバーシティ動作の他のレジスタ設定例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態にかかるダイバーシティ無線機について説明する。図1は、第1の実施形態にかかるダイバーシティ無線機の構成を示すブロック図である。
【0012】
このダイバーシティ無線機1は、複数のアンテナでそれぞれ受信した同一の無線信号を、電波状況に応じていずれか一方を選択し、あるいは両者を合成することによって、無線通信の通信品質や信頼性の向上を図るダイバーシティ受信機能を備えている。
【0013】
ダイバーシティ無線機1には、主な構成として、アンテナ10A(第1のアンテナ)に接続された無線部(第1の無線部)10、アンテナ20A(第2のアンテナ)に接続された無線部(第2の無線部)20、およびこれら無線部10,20と接続されたベースバンド部40が設けられている。
【0014】
これら無線部10,20は、いずれか一方がプライマリ系として動作するとともに、いずれか他方がダイバーシティ系として動作し、RF信号を受信する際、プライマリ系でのみ受信動作を行いダイバーシティ系での受信動作を停止するプライマリ動作と、プライマリ系とダイバーシティ系の両方で受信動作を行うダイバーシティ動作とを行う。
【0015】
本実施形態は、無線部10,20に、互いに同一回路構成のRFIC30A,30Bをそれぞれ設け、これらRFIC30A,30Bに、入力された動作モード選択信号の入力論理レベルに基づいて、プライム系およびダイバーシティ系のいずれか一方のモードでRF信号処理を行うRF信号処理回路35を備えている。
【0016】
次に、図1を参照して、本実施形態にかかるダイバーシティ無線機1の構成について詳細に説明する。本実施形態では、無線部10に送受信機能を設けるとともに、無線部10のRFIC30Aにロー論理レベルVLを示す動作モード選択信号51Mを入力することにより、無線部10をプライマリ系として動作させ、無線部20に受信機能のみを設けるとともに、無線部20のRFIC30Bにハイ論理レベルVHを示す動作モード選択信号52Mを入力することにより、無線部20をダイバーシティ系として動作させる場合を例として説明する。
【0017】
まず、無線部10の構成について説明する。無線部10には、主な機能部として、アンテナスイッチ(SW)11、共用器12、パワーアンプ13、アイソレータ14、およびRFIC30Aが設けられている。
【0018】
アンテナスイッチ11は、アンテナ10Aに接続されて、アンテナ10Aを構成するアンテナ素子の切替接続や、アンテナ10Aの切り離しを行うための回路部である。
共用器12は、アンテナスイッチ11に接続されて、送信時と受信時にアンテナ10Aを共用するための回路部である。
パワーアンプ13は、RFIC30Aから出力された送信RF信号を電力増幅する回路部である。
アイソレータ14は、アンテナ10Aからの送信RF信号の反射を防止する回路部である。
【0019】
RFIC30Aは、アンテナ10Aで送受信するRF信号の信号処理を行うための各種回路が半導体チップに搭載された集積回路である。
このRFICには、主な回路部として、プライマリレジスタ31、ダイバーシティレジスタ32、共通レジスタ33、レジスタ選択回路34、およびRF信号処理回路35が設けられている。
【0020】
プライマリレジスタ31は、任意の入力データを保持出力する一般的なレジスタ回路からなり、制御信号線53を介してベースバンド部40から出力された、プライマリ系の動作を規定するためのプライマリ制御データを保持する機能と、レジスタ選択回路34からの動作モード選択信号が有効を示す場合には、保持しているプライマリ制御データを出力し、動作モード選択信号が無効を示す場合には、保持しているプライマリ制御データの出力を停止する(例えば、高いピーダンス出力とする)機能とを有している。
【0021】
図2は、プライマリレジスタの構成例である。
ここでは、RF信号処理回路35での送信処理動作の実行要否を示す送信ON/OFF設定、RF信号処理回路35での受信処理動作の実行要否を示す受信ON/OFF設定、RF信号処理回路35での受信RF信号に対するAGC動作の設定値を示す受信AGC設定などの各種設定項目が、1ビット以上のデータで保持されている。
【0022】
ダイバーシティレジスタ32は、任意の入力データを保持出力する一般的なレジスタ回路からなり、制御信号線53を介してベースバンド部40から出力された、ダイバーシティ系の動作を規定するためのダイバーシティ制御データを保持する機能と、レジスタ選択回路34からの動作モード選択信号が有効を示す場合には、保持しているダイバーシティ制御データを出力し、動作モード選択信号が無効を示す場合には、保持しているダイバーシティ制御データの出力を停止する機能とを有している。
【0023】
図3は、ダイバーシティレジスタの構成例である。
ここでは、RF信号処理回路35での送信処理動作の実行要否を示す送信ON/OFF設定、RF信号処理回路35での受信処理動作の実行要否を示す受信ON/OFF設定、RF信号処理回路35での受信RF信号に対するAGC動作の設定値を示す受信AGC設定などの各種設定項目が、1ビット以上のデータで保持されている。
【0024】
共通レジスタ33は、任意の入力データを保持出力する一般的なレジスタ回路からなり、制御信号線53を介してベースバンド部40から出力された、プライマリ動作とダイバーシティ動作に共通する動作を規定するための共通制御データを保持する機能を有している。
【0025】
図4は、共通レジスタの構成例である。
ここでは、RF信号処理回路35での初期動作を規定するための初期設定、RF信号処理回路35から送信するRF送信信号の周波数を示す送信周波数設定、RF信号処理回路35で受信するRF受信信号の周波数を示す受信周波数設定などの各種設定項目が、1ビット以上のデータで保持されている。
【0026】
レジスタ選択回路34は、動作モード選択端子SELに入力された動作モード選択信号51Mの入力論理レベルに基づいて、プライマリレジスタ31およびダイバーシティレジスタ32のいずれか一方のみを有効とするレジスタ選択信号を出力する機能を有している。動作モード選択信号51Mは、RFIC30Aがプライマリ系およびダイバーシティ系のいずれのモードで動作するかを設定するための信号であり、RFIC30Aの外部から入力される。
【0027】
図1の例では、動作モードとしてプライマリ系を設定するロー論理レベルVLを示す動作モード選択信号51Mが、プルダウン抵抗などの回路で生成されて、RFIC30Aの動作モード選択端子SELに入力されており、レジスタ選択回路34は、プライマリレジスタ31を有効とし、ダイバーシティレジスタ32を無効とするレジスタ選択信号をそれぞれに出力する。
【0028】
RF信号処理回路35は、アップコンバータ、ダウンコンバータ、増幅器、フィルタなどの各種信号処理回路部からなり、共通レジスタ33で保持している制御データに基づいて、ベースバンド部40から入力された送信ベースバンド信号51Sをアップコンバートすることにより送信RF信号を生成してパワーアンプ13へ出力するRF送信機能と、共通レジスタ33で保持している制御データに基づいて、共用器12から出力されたRF受信信号をダウンコンバートとして受信ベースハンド信号51Rを生成してベースバンド部40へ出力するRF受信機能とを有している。これらRF送信機能およびRF受信機能については一般的なRF信号処理機能である。
【0029】
また、RF信号処理回路35は、プライマリレジスタ31およびダイバーシティレジスタ32のうち有効とされたいずれか一方で保持している制御データを選択し、この制御データに基づいてRF送信機能およびRF受信機能の動作を制御する機能とを有している。
【0030】
図1の例では、レジスタ選択回路34でプライマリレジスタ31が有効とされているため、RF信号処理回路35は、プライマリレジスタ31で保持している制御データを選択して、RF送信機能およびRF受信機能の動作を制御するものとなる。
【0031】
制御データを選択する回路構成としては、例えばプライマリレジスタ31およびダイバーシティレジスタ32として、レジスタ選択回路34からのレジスタ選択信号で無効とされた場合に、保持データ出力端子を高インピーダンスにする機能を持つレジスタを用いれば、RF信号処理回路35において、これらプライマリレジスタ31およびダイバーシティレジスタ32の保持データ出力端子をワイアードオア接続するなど、一般的な各種回路構成を用いればよい。
あるいは、レジスタ選択回路34からのレジスタ選択信号を、プライマリレジスタ31およびダイバーシティレジスタ32ではなく、RF信号処理回路35に設けたセレクタ回路へ入力し、このレジスタ選択信号でセレクタ回路により、いずれか一方の制御データを選択してもよい。
【0032】
次に、無線部20の構成について説明する。無線部20には、主な機能部として、アンテナスイッチ(SW)21、フィルタ回路(BPF)25、およびRFIC30Bが設けられている。
【0033】
アンテナスイッチ21は、アンテナ20Aに接続されて、アンテナ20Aを構成するアンテナ素子の切替接続や、アンテナ20Aの切り離しを行うための回路部である。
フィルタ回路25は、アンテナスイッチ21に接続されて、アンテナ20Aで受信されるRF信号のうち、所望の受信周波数帯域の受信RF信号を選択してRFIC30Bへ入力するバンドパスフィルタである。
【0034】
RFIC30Bは、アンテナ20Aで受信した受信RF信号の信号処理を行うための各種回路が半導体チップに搭載された集積回路である。なお、RFIC30Bの回路構成は、無線部10で用いるRFIC30Aと同一の回路構成であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0035】
図1の例では、動作モードとしてプライマリ系を設定するハイ論理レベルVHを示す動作モード選択信号52Mが、プルアップ抵抗などの回路で生成されて、RFIC30Bの動作モード選択端子SELに入力されており、レジスタ選択回路34は、プライマリレジスタ31を無効とし、ダイバーシティレジスタ32を有効とするレジスタ選択信号をそれぞれに出力する。このため、RF信号処理回路35は、ダイバーシティレジスタ32で保持している制御データを選択して、RF送信機能およびRF受信機能の動作を制御するものとなる。
【0036】
ベースバンド部40は、CPUなどの上位装置(図示せず)から入力された送信データを変調処理することにより送信ベースバンド信号51Sを生成して、無線部10のRFIC30Aへ出力する機能と、プライマリ動作時に無線部10のRFIC30Aから入力された受信ベースバンド信号51Rを復調処理することにより受信データを生成して上位装置へ出力する機能と、ダイバーシティ動作時に無線部10のRFIC30Aから入力された受信ベースバンド信号51Rと無線部20のRFIC30Bから入力された受信ベースバンド信号52Rのうち、電波状況に応じていずれか一方を選択し、あるいは両者を合成して復調処理することにより受信データを生成して上位装置へ出力する機能とを有している。
【0037】
また、ベースバンド部40は、上位装置からの指示や記憶部(図示せず)に設定されている制御データを制御信号線53へ出力することにより、RFIC30A,30Bのプライマリレジスタ31、ダイバーシティレジスタ32、共通レジスタ33に対して、各種制御データを設定する機能を有している。
【0038】
[第1の実施形態の動作]
次に、図5を参照して、本実施形態にかかるダイバーシティ無線機の動作について説明する。図5は、RFICの動作開始処理を示すフローチャートである。
ダイバーシティ無線機1の無線部10,20に設けられたRFIC30A,30Bは、新たな無線通信動作を開始する際、図5の動作開始処理を実行する。
【0039】
まず、RFIC30Aのプライマリレジスタ31とRFIC30Bのプライマリレジスタ31は、ベースバンド部40から制御信号線53へ出力された、プライマリ系の動作を規定する同一の制御データを、それぞれ同一のタイミングで保持する(ステップ100)。
【0040】
この際、RFIC30A,30Bのダイバーシティレジスタ32でも、ベースバンド部40から制御信号線53へ出力された、ダイバーシティ系の動作を規定する同一の制御データを、それぞれ同一のタイミングで保持するとともに、RFIC30A,30Bの共通レジスタ33でも、ベースバンド部40から制御信号線53へ出力された、プライマリ系とダイバーシティ系で共通する共通動作を規定する同一の制御データを、それぞれ同一のタイミングで保持する。
【0041】
次に、レジスタ選択回路34は、選択端子SELに入力されている動作モード選択信号51Mの入力論理レベルがロー論理レベルVLか否か判定する(ステップ101)。
【0042】
ここで、動作モード選択信号51M,52Mがロー論理レベルVLの場合には(ステップ101:YES)、プライマリレジスタ31を有効とするとともにダイバーシティレジスタ32を無効とするレジスタ選択信号を出力する(ステップ102)。
これに応じて、RF信号処理回路35は、有効とされたプライマリレジスタ31で保持している制御データ、すなわちプライマリ系の動作を規定する制御データと、共通レジスタ33で保持している制御データを選択し(ステップ103)、これら制御データに基づき、プライマリ系のRF信号処理を開始し(ステップ104)、一連の動作開始処理を終了する。
【0043】
一方、動作モード選択信号51M,52Mがハイ論理レベルVHの場合には(ステップ101:NO)、プライマリレジスタ31を無効とするとともにダイバーシティレジスタ32を有効とするレジスタ選択信号を出力する(ステップ105)。
これに応じて、RF信号処理回路35は、有効とされたダイバーシティレジスタ32で保持している制御データ、すなわちダイバーシティ系の動作を規定する制御データと、共通レジスタ33で保持している制御データを選択し(ステップ106)、これら制御データに基づき、ダイバーシティ系のRF信号処理を開始し(ステップ107)、一連の動作開始処理を終了する。
【0044】
図6は、プライマリ動作のレジスタ設定例である。ここでは、RFIC30A,30Bの両方のプライマリレジスタ31に対して、送信処理機能を動作させる「送信ON」と受信処理機能を動作させる「受信ON」とが設定され、RFIC30A,30Bの両方のダイバーシティレジスタ32に対して、送信処理機能を停止させる「送信OFF」と受信処理機能を停止させる「受信OFF」とが設定されている。
【0045】
ここで、RFIC30Aの動作モード選択信号51MとしてVLが入力されていることから、プライマリレジスタ31のみが有効となり、RFIC30AのRF信号処理回路35は、プライマリ系として動作する。また、RFIC30Bの動作モード選択信号52MとしてVHが入力されていることから、ダイバーシティレジスタ32のみが有効となり、RFIC30BのRF信号処理回路35は、ダイバーシティ系として動作する。
これにより、ダイバーシティ無線機1全体として、プライマリ系の無線部10でのみで送受信動作を行い、ダイバーシティ系の無線部20で受信動作を停止する、プライマリ動作が実現される。
【0046】
図7は、ダイバーシティ動作のレジスタ設定例である。ここでは、RFIC30A,30Bの両方のプライマリレジスタ31に対して、送信処理機能を動作させる「送信ON」と受信処理機能を動作させる「受信ON」とが設定され、RFIC30A,30Bの両方のダイバーシティレジスタ32に対して、送信処理機能を停止させる「送信OFF」と受信処理機能を動作させる「受信ON」とが設定されている。
【0047】
ここで、RFIC30Aの動作モード選択信号51MとしてVLが入力されていることから、プライマリレジスタ31のみが有効となり、RFIC30AのRF信号処理回路35は、プライマリ系として動作する。また、RFIC30Bの動作モード選択信号52MとしてVHが入力されていることから、ダイバーシティレジスタ32のみが有効となり、RFIC30BのRF信号処理回路35は、ダイバーシティ系として動作する。
これにより、ダイバーシティ無線機1全体として、プライマリ系の無線部10で送受信動作を行い、ダイバーシティ系の無線部20で受信動作を行う、ダイバーシティ動作が実現される。
【0048】
[第1の実施形態の効果]
このように、本実施形態は、無線部10,20に、互いに同一回路構成のRFIC30A,30Bをそれぞれ設け、これらRFIC30A,30Bに、入力された動作モード選択信号の入力論理レベルに基づいて、プライマリ系およびダイバーシティ系のいずれか一方のモードでRF信号処理を行うRF信号処理回路35を備えている。
【0049】
このため、動作モード選択信号51M,52Mにより、RFIC30A,30Bの動作モードを容易に設定することができ、プライマリ系とダイバーシティ系のRF信号処理回路を、同一回路構成のRFICを用いてそれぞれ別個に実現することができる。したがって、RFIC内部の回路構成を小規模化できるとともに簡素化することができ、回路評価などの開発工数を大幅に削減できる。
【0050】
また、本実施形態では、無線部10,20のRFIC30A,30Bを、ベースバンド部40から制御データが出力される制御信号線53に対して並列接続し、これらRFIC30A,30Bに、制御信号線53から入力されたプライマリ系の動作を規定する制御データを保持するプライマリレジスタ31と、制御信号線から入力されたダイバーシティ系の動作を規定する制御データを保持するダイバーシティレジスタ32とを設けて、レジスタ選択回路34で、当該RFIC30A,30Bがプライム系およびダイバーシティ系のいずれのモードで動作するかを示す動作モード選択信号51M,52Mの入力論理レベルに基づいて、プライマリレジスタ31およびダイバーシティレジスタ32のいずれか一方のみを有効とし、RF信号処理回路35で、プライマリレジスタ31およびダイバーシティレジスタ32のうち有効とされたいずれか一方で保持されている制御データに基づいてRF信号処理を行う。
【0051】
これにより、RFIC30A,30Bにおいて、プライマリレジスタ31およびダイバーシティレジスタ32に保持された制御データのうち、動作モード選択信号51M,52Mで選択されたモードと対応する制御データに基づき、RF信号処理が実行される。
このため、ベースバンド部40から制御データを設定する際、これらRFIC30A,30Bごとに別個の制御データを設定する必要がなくなる。このため、別個のRFIC30A,30Bを用いた場合でも、無線部10,20に対するベースバンド部40での設定処理動作を極めて簡素化することが可能となる。
【0052】
[第2の実施形態]
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施形態にかかるダイバーシティ無線機について説明する。図8は、第2の実施形態にかかるダイバーシティ無線機の構成を示すブロック図である。
【0053】
第1の実施形態では、無線部10にRF信号の送受信処理機能を設けて、動作モード選択信号51Mにより無線部10をプライマリ系として固定的に設定し、無線部20にRF信号の受信処理機能のみを設けて、動作モード選択信号52Mにより無線部20をダイバーシティ系として固定的に設定した場合を例として説明した。
本実施形態では、無線10,20の両方にRF信号の送受信処理機能を設け、動作モード選択信号51M,52Mにより、無線部10,20をそれぞれプライマリ系とダイバーシティ系のいずれかに任意に設定する場合について説明する。
【0054】
本実施形態にかかるダイバーシティ無線機1において、無線部20は無線部10と同様の構成を有している。すなわち、無線部20に設けられた、アンテナスイッチ(SW)21、共用器22、パワーアンプ23、アイソレータ24、およびRFIC30Bは、それぞれ無線部10における、アンテナスイッチ11、共用器12、パワーアンプ13、アイソレータ14、およびRFIC30Aと同じ構成である。
【0055】
また、RFIC30Aの動作モード選択端子SELに対して、ベースバンド部40からの動作モード選択信号51Mが入力されており、RFIC30Bの動作モード選択端子SELに対して、インバータINVで動作モード選択信号51Mの論理レベルを反転した動作モード選択信号52Mが入力されている。これにより、RFIC30Aが、プライマリ系とダイバーシティ系のいずれか一方のモードに設定され、RFIC30Bが、いずれか他方のモードに設定される。
なお、本実施形態にかかるダイバーシティ無線機1におけるこの他の構成、および動作開始処理については、第1の実施形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0056】
図9は、プライマリ動作の他のレジスタ設定例である。ここでは、RFIC30A,30Bの両方のプライマリレジスタ31に対して、送信処理機能を動作させる「送信ON」と受信処理機能を動作させる「受信ON」とが設定され、RFIC30A,30Bの両方のダイバーシティレジスタ32に対して、送信処理機能を停止させる「送信OFF」と受信処理機能を停止させる「受信OFF」とが設定されている。
【0057】
ここで、RFIC30Aの動作モード選択信号51MとしてVHが入力されていることから、ダイバーシティレジスタ32のみが有効となり、RFIC30AのRF信号処理回路35は、ダイバーシティ系として動作する。また、RFIC30Bの動作モード選択信号52MとしてVLが入力されていることから、プライマリレジスタ31のみが有効となり、RFIC30BのRF信号処理回路35は、プライマリ系として動作する。
これにより、ダイバーシティ無線機1全体として、プライマリ系の無線部20でのみで送受信動作を行い、ダイバーシティ系の無線部10で受信動作を停止する、プライマリ動作が実現される。
【0058】
図10は、ダイバーシティ動作の他のレジスタ設定例である。ここでは、RFIC30A,30Bの両方のプライマリレジスタ31に対して、送信処理機能を動作させる「送信ON」と受信処理機能を動作させる「受信ON」とが設定され、RFIC30A,30Bの両方のダイバーシティレジスタ32に対して、送信処理機能を停止させる「送信OFF」と受信処理機能を動作させる「受信ON」とが設定されている。
【0059】
ここで、RFIC30Aの動作モード選択信号51MとしてVHが入力されていることから、ダイバーシティレジスタ32のみが有効となり、RFIC30AのRF信号処理回路35は、ダイバーシティ系として動作する。また、RFIC30Bの動作モード選択信号52MとしてVLが入力されていることから、プライマリレジスタ31のみが有効となり、RFIC30BのRF信号処理回路35は、プライマリ系として動作する。
これにより、ダイバーシティ無線機1全体として、プライマリ系の無線部20で送受信動作を行い、ダイバーシティ系の無線部10で受信動作を行う、ダイバーシティ動作が実現される。
【0060】
[第2の実施形態の効果]
このように、本実施形態では、無線部10,20の両方に送受信機能を設けて、RFIC30Aに対する動作モード選択信号51Mと、RFIC30Bに対する動作モード選択信号51Mとは逆論理レベルの動作モード選択信号52Mとを、ベースバンド部40から任意の切替出力するようにしたので、受信状況や上位装置からの指示に応じて、プライマリ系とダイバーシティ系とをダイナミックに切り替えて動作することができ、より良い受信性能を得ることが可能となる。
【0061】
[実施形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0062】
また、第1および第2の実施形態では、ベースバンド部40からRFIC30A,30Bのプライマリレジスタ31、ダイバーシティレジスタ32、さらには共通レジスタ33に対して、制御信号線53を介して各種設定データを設定する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ベースバンド部40とは別個に設けられたCPUなどからなる上位装置(図示せず)から、これらレジスタに対して制御データを設定するようにしてもよい。
【0063】
また、第2の実施形態では、ベースバンド部40からRFIC30A,30Bに対して動作モード選択信号51M,52Mを出力する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ベースバンド部40とは別個に設けられたCPUなどからなる上位装置(図示せず)から、これら動作モード選択信号51M,52Mを出力するようにしてもよい。
【0064】
また、第1および第2の実施形態では、プライマリ系として動作する1つの無線部とダイバーシティ系として動作する1つの無線部が設けられている場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ダイバーシティ系として動作する無線部が複数設けられているダイバーシティ無線機に対しても、前述と同様にして各実施形態を適用でき、前述と同様の作用効果が得られる。
【0065】
また、第1および第2の実施形態では、受信ダイバーシティ方式を適用した場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、送信ダイバーシティ方式にも同様にして適用できる。送信ダイバーシティ方式は、基地局に設けた異なる2つのアンテナから、それぞれの無線部で生成したRF信号をそれぞれ送信し、携帯電話端末でこれらRF信号のいずれか一方、または両方を合成して受信処理するものである。したがって、基地局において、これら無線部のRF信号送信処理の動作モードを切り替え制御する際、前述と同様にして各実施形態を適用でき、前述と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0066】
1…ダイバーシティ無線機、10…無線部(第1の無線部)、10A…アンテナ(第1のアンテナ)、11…アンテナスイッチ、12…共用器、13…パワーアンプ、14…アイソレータ、20…無線部(第2の無線部)、20A…アンテナ(第1のアンテナ)、21…アンテナスイッチ、22…共用器、23…パワーアンプ、24…アイソレータ、25…フィルタ回路(BPF)、30A,30B…RFIC、31…プライマリレジスタ、32…ダイバーシティレジスタ、33…共通レジスタ、34…レジスタ選択回路、35…RF信号処理回路、40…ベースバンド部、51M,52M…動作モード選択信号、51S,52S…送信ベースバンド信号、51R,52R…受信ベースバンド信号、53…制御信号線、INV…インバータ、VL…ロー論理レベル、VH…ハイ論理レベル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアンテナに接続された第1の無線部と、第2のアンテナに接続された第2の無線部と、前記第1および第2の無線部と接続されたベースバンド部とを備え、前記第1および第2の無線部のうちのいずれか一方がプライマリ系として動作するとともに、いずれか他方がダイバーシティ系として動作し、RF信号を受信する際、前記プライマリ系でのみ受信動作を行い前記ダイバーシティ系での受信動作を停止するプライマリ動作と、前記プライマリ系と前記ダイバーシティ系の両方で受信動作を行うダイバーシティ動作とを行うダイバーシティ無線機であって、
前記第1および第2の無線部は、互いに同一回路構成のRFICをそれぞれ含み、
前記RFICは、入力された動作モード選択信号の入力論理レベルに基づいて、前記プライマリ系および前記ダイバーシティ系のいずれか一方のモードでRF信号処理を行うRF信号処理回路を備える
ことを特徴とするダイバーシティ無線機。
【請求項2】
請求項1に記載のダイバーシティ無線機において、
前記第1および第2の無線部の前記RFICは、
前記ベースバンド部から制御データが出力される制御信号線に対してそれぞれ並列接続されており、
前記制御信号線から入力された前記プライマリ系の動作を規定する制御データを保持するプライマリレジスタと、
前記制御信号線から入力された前記ダイバーシティ系の動作を規定する制御データを保持するダイバーシティレジスタと、
入力された前記動作モード選択信号の入力論理レベルに基づいて、前記プライマリレジスタおよび前記ダイバーシティレジスタのいずれか一方のみを有効とするレジスタ選択回路とを備え、
前記RF信号処理回路は、前記プライマリレジスタおよび前記ダイバーシティレジスタのうち有効とされたいずれか一方で保持されている前記制御データに基づいてRF信号処理を行う
ことを特徴とするダイバーシティ無線機。
【請求項3】
第1のアンテナに接続された第1の無線部と、第2のアンテナに接続された第2の無線部と、前記第1および第2の無線部と接続されたベースバンド部とを備え、前記第1および第2の無線部のうちのいずれか一方がプライマリ系として動作するとともに、いずれか他方がダイバーシティ系として動作し、RF信号を受信する際、前記プライマリ系でのみ受信動作を行い前記ダイバーシティ系での受信動作を停止するプライマリ動作と、前記プライマリ系と前記ダイバーシティ系の両方で受信動作を行うダイバーシティ動作とを行うダイバーシティ無線機において、前記第1および第2の無線部で共通して用いられて、前記ベースバンド部から前記制御データが出力される制御信号線に対してそれぞれ並列接続されるRFICであって、
前記制御信号線から入力された前記プライマリ系の動作を規定する制御データを保持するプライマリレジスタと、
前記制御信号線から入力された前記ダイバーシティ系の動作を規定する制御データを保持するダイバーシティレジスタと、
入力された前記動作モード選択信号の入力論理レベルに基づいて、前記プライマリレジスタおよび前記ダイバーシティレジスタのいずれか一方のみを有効とするレジスタ選択回路と、
前記プライマリレジスタおよび前記ダイバーシティレジスタのうち有効とされたいずれか一方で保持されている前記制御データに基づいてRF信号処理を行うRF信号処理回路と
を備えることを特徴とするRFIC。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−119891(P2011−119891A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274255(P2009−274255)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】