ダイボンダおよびダイボンディング方法
【課題】搬送動作により発生する振動や熱源による気流の発生によって、ワークやウエハの位置決めのために撮像する画像が受ける影響を減少させ、タクトタイムが短く、位置合わせ精度が高いダイボンダおよびダイボンディング方法を提供すること。
【解決手段】ワークやダイが移動を停止した直後、撮像装置は、振動の波形が整定位置に至る前に振動の波形の揺らぎ周期(1波長)より十分長いシャッター速度で、かつ、気流による光学的な揺らぎの波形より十分長いシャッター速度で、ワークやダイを撮像する。画像処理部は、撮像されたにじんだ画像でパターンマッチングする画像処理を行い位置補正する。
【解決手段】ワークやダイが移動を停止した直後、撮像装置は、振動の波形が整定位置に至る前に振動の波形の揺らぎ周期(1波長)より十分長いシャッター速度で、かつ、気流による光学的な揺らぎの波形より十分長いシャッター速度で、ワークやダイを撮像する。画像処理部は、撮像されたにじんだ画像でパターンマッチングする画像処理を行い位置補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイボンダおよびダイボンディング方法に関わり、特に、位置合わせ時間を短縮するダイボンダおよびダイボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダイボンディング工程では、ダイ(半導体チップ、以下、単にダイと称する)を分割する工程を経た半導体ウエハ(以下、単にウエハという)を配線基板やリードフレームなどの基板にマウントしてパッケージを組み立てる。
ダイボンダにおいて、まず、配線基板やリードフレームなどのサブストレート基板は、フレームローダから搬入される。搬入されたサブストレート基板上には、プリフォームヘッド部でダイ接着剤が塗布される(接着剤塗布工程)。ダイ接着剤は、例えば、ペースト状の接着剤である。
ダイ接着剤を塗布されたサブストレート基板は、ボンディング部で、ウエハホルダからピックアップされ(ピックアップ工程)たダイをマウント(ボンディング工程)される。
上述の接着剤塗布工程時、ピックアップ工程時、およびボンディング工程時には、各々の工程に合わせ、サブストレート基板やウエハを撮像し、撮像した画像に基づいて画像処理により位置決めおよび検査を行う(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−72996号公報
【特許文献2】特開2003−318600号公報
【特許文献3】特開平6−197349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サブストレート基板は、ダイボンダに搬入され、ダイボンディングされた後搬送される。即ち、サブストレート基板は、ダイボンダの上流から下流に搬送される。一般的に、高精度が要求される産業機械では、当然ながら、装置内部での振動や気流の管理を高精度に行う必要がある。しかし、駆動部や発熱部を持つ産業用ロボットでは、それらの影響をゼロにすることは、物理的に困難である。特に、画像処理装置を搭載するダイボンダ等の装置では、これらの影響が顕著に受け易い。
搬送動作により発生する振動は、サブストレート基板に直接伝わるほか、ダイボンダ本体にも伝達される。また、搬送動作だけではなく、ピックアップ工程でもピックアップするために発生する振動が、ダイボンダ中に機械的に伝達される。例えば、ピックアップ時の加重は、約9.8〜147[m/s2]程度である。
【0005】
また、プリフォーム工程以降、ダイ接着剤の塗布性を良くするために、約80〜200[℃]程度に基板を予熱している。
従って、ダイボンダ内には、予熱や排気管等による空気の乱れがある。さらに、搬送動作やピックアップの動作などによって、ダイボンダ内には、気流が発生する。
特に、位置合わせをするときには、ダイボンダでは、撮像装置が位置合わせしたいターゲット(サブストレート基板やダイ)を撮像し、画像処理装置が撮像した画像を画像処理してターゲットの基準位置(位置合わせマーク)を抽出している。しかし、撮像装置が撮像する箇所は、熱発生源に近く、気流の動きが激しい。このため、撮像装置は、気流の動きによる光学的な揺らぎの影響を受ける。また明るい画像を取得するために、照明の輝度を上げて撮像することが多いが、照明光が照射されることにより発生する熱も無視できない。
【0006】
そもそも、撮像装置が撮像する画像は、位置合わせのために使用する。この画像が撮像された時点での位置から、実際に作業するときの位置がずれていれば、撮像した画像は位置合わせに不適切で、使用できない。従って、基板搬送が終わって、振動が所定の大きさ以内に小さくなるまで、位置合わせのための画像を取得できない。このため、ダイボンディングのタクトタイムが長くなる問題があった。さらに、熱の影響による光学的な揺らぎのために、撮影画像には時間的に不確定な要因が入り、位置合わせ精度が向上しないという問題があった。
本発明の目的は、上記のような問題に鑑み、タクトタイムが短く、位置合わせ精度が高いダイボンダおよびダイボンディング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のダイボンダは、ワークを撮像する第1の撮像装置と、前記第1の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記ワークの所定の第1の基準位置を抽出する画図処理部と、前記抽出された第1の基準位置に基づいて位置合わせする位置制御部とを備え、前記第1の撮像装置の第1の電子シャッター速度が、前記ワークが停止基準位置に停止した後に発生する第1の振動波形の1波長より長い又は前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とする。
さらに、上記本発明のダイボンダにおいて、吸着ヘッドに保持される前の半導体チップを撮像する第2の撮像装置を備え、前記画像処理部は、前記第2の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記半導体チップの所定の第2の基準位置を抽出し、前記位置制御部は、前記抽出された第2の基準位置に基づいて位置合わせし、前記第2の撮像装置の第2の電子シャッター速度が、前記半導体チップが停止した後に発生する振動波形の1波長より長い又は前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のダイボンダは、ワークを撮像する第1の撮像装置と、前記第1の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記ワークの所定の第1の基準位置を抽出する画図処理部と、前記抽出された第1の基準位置に基づいて位置合わせする位置制御部とを備え、前記第1の撮像装置の第1の電子シャッター速度が、前記ワークが停止基準位置に停止した後に発生する第1の振動波形の1波長より長く、かつ、前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とする。
さらに、上記本発明のダイボンダにおいて、吸着ヘッドに保持される前の半導体チップを撮像する第2の撮像装置を備え、前記画像処理部は、前記第2の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記半導体チップの所定の第2の基準位置を抽出し、前記位置制御部は、前記抽出された第2の基準位置に基づいて位置合わせし、前記第2の撮像装置の第2の電子シャッター速度が、前記半導体チップが停止した後に発生する振動波形の1波長より長く、かつ、前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とする。
【0009】
さらに、上記本発明のダイボンダにおいて、前記第1の振動波形及び前記第2の振動波形は、前記半導体チップが停止した時間を起点とする時間と前記第1の基準位置及び前記第2の基準位置からのオフセットを複数回測定して得られた振動波形であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のダイボンディング方法は、吸着ヘッドによって半導体チップを取り出すステップと、ワークが停止基準位置に停止した後に発生する第1の振動波形の1波長より長い又は前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長い第1の撮像装置の電子シャッター速度により、前記第1の撮像装置によって撮像するステップと、前記撮像された第1の画像を画像処理し、前記ワークの所定の第1の基準位置を抽出するステップと、前記抽出された第1の基準位置に基づいて位置合わせして前記ワークに前記半導体チップをダイマウントするステップと、を有することを特徴とするダイボンディング方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タクトタイムが短く、位置合わせ精度が高いダイボンダおよびダイボンディング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例のダイボンダを上から見た概念図である。
【図2】本発明のダイボンダの一実施例における撮像装置の機能について説明するための模式的な断面図である。
【図3】本発明の位置合わせ機構の制御系の一実施例を説明するための図である。
【図4】駆動部のユニットが移動から停止に移行したときに発生する振動波形の一例を示す図である。
【図5】ワークやウエハから光学系までの光路内の気流(空気の乱れ)に起因する光学的な揺らぎによるオフセット波形の一例を示す図である。
【図6】本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例であって、撮像装置のシャッター速度を制御して、振動による揺らぎの影響を除去することについて説明する図である。
【図7】本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例であって、撮像装置のシャッター速度を制御して、気流による光学的な揺らぎの影響を除去することについて説明する図である。
【図8】図6、図7の本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例における画像を説明する図である。
【図9】本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法において、振動による影響を除去可能なシャッター時間の別の算出手段および方法を説明するための図である。
【図10】撮像装置が撮像した画像から測定した画像に与える振動を説明する図である。
【図11】縦軸と振動波形の交点(黒丸)が振動発生タイミングとその座標であることを示す図である。
【図12】本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法においての、気流等による光学的な揺らぎの影響を除去可能なシャッター時間の算出手段および方法の一実施例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、各図の説明において、共通な機能を有する構成要素には同一の参照番号を付し、できるだけ説明の重複を避けるため、説明を省略する。
【実施例1】
【0014】
図1によって、ダイボンダの基本的な構成を説明する。図1は、本発明の一実施例のダイボンダを上から見た概念図である。100はダイボンダ、11はウエハ供給部、12はワーク供給・搬送部、13はダイボンディング部である。このように、ダイボンダ100は、ウエハ供給部11とワーク供給・搬送部12とダイボンディング部13とから成る。
ウエハ供給部11において、111はウエハカセットリフタ、112はピックアップ装置である。またワーク供給・搬送部12において、121はスタックローダ、122はフレームフィーダ、123はアンローダである。またダイボンディング部13において、131はプリフォーム部、132はボンディングヘッド部である。
【0015】
図1において、ウエハカセットリフタ111は、ウエハリングが充填されたウエハカセット(図示しない)を有し、順次、ウエハリングをピックアップ装置112に供給する。ピックアップ装置112は、所望するダイをウエハリングからピックアップできるように、ウエハリングを移動する。
スタックローダ121は、ダイを接着するワーク(リードフレーム)をフレームフィーダ122に供給する。フレームフィーダ122は、ワークをフレームフィーダ122上の2箇所の処理位置(プリフォーム部およびダイボンディング部それぞれの処理位置)を介してアンローダ123に搬送する。アンローダ123は、搬送されたワークを保管する。
プリフォーム部(ダイ接着剤塗布装置)131は、フレームフィーダ122により搬送されてきたワーク(例えば、リードフレーム)に、ダイ接着剤を塗布する。ボンディングヘッド部132は、ピックアップ装置112から、ダイをピックアップして上昇し、ダイをフレームフィーダ122上のボンディングポイントまで移動させる。そして、ボンディングヘッド部132は、移動したボンディングポイントでダイを下降させ、ダイ接着剤が塗布されたワーク上のボンディングポイントにダイをボンディングする。なお、ダイの裏面(接着面)にも、フィルム状の接着剤が予め付着している。
【0016】
図2によって、さらに、ダイボンダに使用する撮像装置の基本的な機能について説明する。図2は、本発明のダイボンダの一実施例における撮像装置の機能について説明するための模式的な断面図である。図2(a)は横方向(Y方向)から見た図、図2(b)は上方向(Z方向)から見た図である。なお、図2においては、ダイボンダにおける撮像装置とその撮像画像について説明している。このため、説明に関係のない機能部分(他の構成要素、結線)については、図示および説明を省略している。232はプリフォーム部の処理位置、233はダイボンディング部処理位置、211はピックアップ装置112に装着されたウエハリングのウエハ、201はピックアップ装置112の上からウエハ211のダイを撮像する撮像装置、212はプリフォーム部232に搬入されたワーク(例えば、リードフレーム)、202はプリフォーム部131のダイ接着位置(ボンディングポイント)を撮像する撮像装置、213はボンディングヘッド部の処理位置233に搬入されたワーク、203はボンディングヘッド部の処理位置132のダイ接着位置を撮像する撮像装置、251はプリフォーム部の処理位置232とダイボンディング部233間のピッチである。ワーク212と213は、ピッチ251の間隔を保ちローダから搬入され、アンローダ123に搬送される。
撮像装置は、例えば、CCD撮像素子若しくはCMOS撮像素子を用いた撮像装置である。
【0017】
図2において、撮像装置201は、ピックアップ装置112のウエハ211のパターン面(表面)を撮像し、パターン認識等の周知の画像処理によって、1つのダイの中心位置と、ピックアップ装置112の吸着ノズルの中心および突き上げブロックの中心位置とのずれをなくすように位置補正する。
同様に、撮像装置202は、プリフォーム部232の所定のダイ接着位置(ボンディングポイント)を撮像し、パターン認識等の周知の画像処理によって、ダイ接着位置にプリフォーム樹脂が塗布されるように位置ずれ補正を行い、プリフォーム樹脂を塗布する。
また同様に、撮像装置203は、ダイボンディング部233の所定のダイ接着位置を撮像し、パターン認識等の周知の画像処理によって、ダイ接着位置の中心位置にダイがマウントされるように位置ずれ補正を行い、ダイをマウントする。
【0018】
なお、画像処理装置が撮像装置によって画像を取得するとき(電子シャッター:蓄積露光時)には、ダイボンダ自身が起こしている振動や気流の乱れなどの影響を受け、撮像した画像の再現性に、揺らぎが発生する。振動などに対してはシャッター速度を短縮することでぶれを抑えることはできる。しかし、振幅の範囲内において、位置が不定となる。即ち、撮像した画像に基づく位置(撮像時の位置)が、その後の振動で動き、現在の位置が撮像時の位置と異なる。
これらの現象は、画像処理を用いた位置決め機能を低下させ、最終的には、ボンディング精度が低化する。
【0019】
次に、図3の位置合わせ機構によって、位置ずれ補正をさらに説明する。図3は、本発明の位置合わせ機構の制御系の一実施例を説明するための図である。301は画像処理装置、302は位置制御装置、303はX軸駆動部、304はY軸駆動部、305はθ軸駆動部、306はX軸モータ、307はY軸モータ、308はθ軸モータである。
【0020】
図3において、撮像装置201は、ウエハ211のパターン面(表面)を撮像し、撮像した画像データを画像処理装置301に出力する。
画像処理装置301は、入力された画像データを、パターン認識等の周知の画像処理によって解析し、ウエハおよびダイの所定の箇所の位置合わせマークについてX座標、Y座標およびθ座標のずれを抽出し、ピックアップの中心位置にピックアップするダイの中心300が来るように位置補正量を算出し、算出した位置補正量を位置制御装置302に出力する。
位置制御装置302は、入力された位置補正量に基づいて、駆動部303〜305に制御信号を出力する。駆動部303〜305は、入力された制御信号に基づいてそれぞれのモータ(X軸モータ306、Y軸モータ307、およびθ軸モータ)を制御し、X座標、Y座標、θ(回転)座標を補正する。
上述の実施例では、ピックアップ装置112についての位置補正を説明した。以下、プリフォーム部131およびボンディングヘッド部132についても同様である。
【0021】
次に、図4を用いて、駆動ユニットが移動から停止に移行する(搬送動作が停止し、ワークが停止基準位置で停止した)タイミングで発生する振動について説明する。図4は、駆動部のユニットが移動から停止に移行したときに発生する振動波形の一例を示す図である。
なお、駆動ユニットが移動から停止し、撮像装置が画像処理によって位置を決定する工程としては、図2で説明したように、本発明では、(1)ピックアップ装置112のウエハカセットリフタ111からピックアップ装置112へのウエハリングの移動時およびピックアップ装置112内でのダイ位置の移動、(2)プリフォーム部232へのワーク212の搬入、(3)ダイボンディング部232へのワーク213の搬入である。以下の説明では、(3)ダイボンディング部232へのワーク213の搬入を例として説明する。
【0022】
図4において、横軸は時間を示し、縦軸は基準位置(整定位置)からのオフセットを示す。図4(a)は、時刻t41ではワーク213が移動中で、時刻t42で停止基準位置に停止(ワーク搬送動作が停止)したことを示す。しかし、振動によって、ワーク213は、時刻t42では完全に停止せず、停止基準位置を中心にワーク搬送方向に振動する。振動の振幅(停止の基準位置からのずれ)は時間の経過と共に漸減し、整定時間が経過すると所定の許容振幅値(整定値)内に収まる。即ち、ワーク213を移動および停止させる駆動ユニットの剛体部分の形状の位置関係が大幅に変化しない限り、換言すると振動支点部と測定点の位置関係が大幅に変化しない限り、振動周期は、ある程度一定で、振幅が過渡的に減衰し、収束する。
【0023】
次に、図4(b)に示すように、例えば、時刻t43のタイミングで撮像装置がワーク213の画像を取得し、取得した画像を画像処理し、位置合わせマークに基づいて位置決定する。この結果、ワーク213は、収束時の位置(真値:オフセットゼロの停止基準位値)に比べて距離dずれた位置で位置合わせすることになる。このため、さらにオフセット値(距離d)分の位置補正が必要となる。
なお、ダイボンディング工程において、吸着ノズルがダイをワーク213の所定に位置にマウントするまでに、すでにワーク213が収束位置(停止基準位置にほぼ近い整定位置)にある。同様に、プリフォーム部131で、ダイ接着剤を塗布する塗布ヘッドがワーク212に塗布するまでに、すでにワーク212が整定位置にある。また、ピックアップ装置112でも同様に、ピックアップ装置の吸着ノズルがダイをピックアップするまでに、すでにダイの中心位置が整定位置にある。
しかし、位置精度を高くするために、減衰がほとんどなくなっている時刻t45まで待って、撮像装置によってワーク213の画像を取得し、取得した画像を画像処理し、位置決定すると、停止制御からの遅延時間を多く必要となるため、タクトタイムが長くなる。
【0024】
図4(c)に示すように、ワーク停止時刻t42から時刻t44までの短時間T40の区間内で、従来より正確に真値を算出可能なダイボンダを、以下で、説明する。
【0025】
次に、図5を用いて、ワークやウエハから光学系までの光路内の気流(空気の乱れ)に起因する光学的な揺らぎについて説明する。この光学的な揺らぎは、温度変化や噴出しエアーなどによって発生する。図5は、ワークやウエハから光学系までの光路内の気流(空気の乱れ)に起因する光学的な揺らぎによるオフセットの一例を示す図である。図5(a)および(b)において、横軸は時間を示し、縦軸は基準位置からのオフセットを示す。
図5(a)は、ダイマウンタで一般的に光路内の気流によって発生する、オフセット振幅波形の一例を示す図である。山PA1谷PA2の発生タイミング(周期)や振幅は、ランダムに近いが、振幅の最大値Amaxや周期の最大値Lmaxは、ある所定の範囲内に収まる。
図5(b)は、図5(a)の振幅波形の揺らぎの振幅波形に対して、撮像を繰り返し行った時刻での振幅をP1〜P4のドットで示した図である。
図5(c)は、図5(b)のように撮像した都度の揺らぎの振幅値をヒストグラムにした図である。横軸は頻度、縦軸は振幅(例えば、中央値はオフセットゼロである)のクラス代表値を示す。
このように、振幅のばらつきは、確率分布に依存する標準偏差で表すことができる。
【0026】
さて、図6を用いて、本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例を説明する。図6は、本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例であって、撮像装置のシャッター速度を制御して、振動による揺らぎの影響を除去することについて説明する図である。横軸は時間を示し、縦軸は基準位置からのオフセットを示す。
図6(a)は、撮像装置の電子シャッター時間(蓄積時間)が、振動の1波長に対して比較的短い場合のぶれ幅w、ぶれ幅中心c、およびオフセット基準位置(整定位置)の関係を示す図である。ぶれ幅wは、シャッター時間内の“オフセット最大値”と“オフセット最小値”の差である。
w = “オフセット最大値”−“オフセット最小値”
従って、ぶれ幅中心cの位置は、シャッター時間内の“オフセット最大値”と“オフセット最小値”の和の1/2の値である。
c = (“オフセット最大値”+“オフセット最小値”)/2
図6(b)は、撮像装置の電子シャッター時間(蓄積時間)が、振動の1波長に対して十分短い場合のぶれ幅w、ぶれ幅中心c、およびオフセット基準位置(整定位置)の関係を示す図である。ぶれ幅wは小さくなるが、ぶれ幅中心cは整定位置に対して振幅分の範囲で不定になる。振動とシャッターの同期がとれない場合には、位置が確定できない。
図6(c)は、撮像装置の電子シャッター時間(蓄積時間)が、振動の1波長より十分長い場合のぶれ幅w、ぶれ幅中心c、およびオフセット基準位置(整定位置)の関係を示す図である。ぶれ幅wは大きくなるが、ぶれ幅中心cの変動範囲が、整定位置に対して、プラス側に、“正側オフセット絶対値の最大”と“負側オフセット絶対値の最大”の差の絶対値の1/2の値、及びマイナス側に、正側オフセット絶対値の最大”と“負側オフセット絶対値の最大”の差の絶対値の1/2の値となる。
±|“正側オフセット絶対値の最大”−“負側オフセット絶対値の最大”|/2
振幅が比較的安定している振動に対しては、その値が小さくなる。
【0027】
図7を用いて、本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例を説明する。図7は、本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例であって、撮像装置のシャッター速度を制御して、気流による光学的な揺らぎの影響を除去することについて説明する図である。
気流による光学的な揺らぎは、気流や粗密に何らかの傾向がない場合には、通常、ランダムに発生すると考えて良い。本実施例では、気流による光学的な揺らぎが、ランダムに発生するとして以下のように検討した。
即ち、画像処理による位置は、真値に対して、一定の確率分布で分散する。このため、整定位置が、図7のような揺らぎ波形の中央付近に存在する確率が最も高い。その分散をほぼ算出できるだけ長いシャッター時間(蓄積時間)を設けるようにすることによって、真値を中心に挟んだ画像データになる。この画像データは、短いシャッター時間で撮像した画像よりも、正確に真値を算出することができる。
【0028】
図8は、上述の図6若しくは図7で説明したシャッター時間に対する画像データの一例を示す図である。図8には、(a)シャッター時間が揺らぎ周期(1波長)に対して十分短い場合、(b)シャッター時間が揺らぎ周期(1波長)に対して比較的短い場合、(c)シャッター時間が揺らぎ周期(1波長)に対して十分長い場合について、それぞれ、テンプレート登録時の画像、ランタイム時間の画像を示す。
図8(a)は、それぞれの画像がぶれない。しかし、中心位置も確定しない。そして、ランタイム時の画像は、テンプレート登録された画像と異なる。
図8(b)は、それぞれの画像がぶれる。従って、中心位置も確定しない。そして、ランタイム時の画像は、テンプレート登録された画像と異なる。
図8(c)は、それぞれの画像がぶれる。しかし、中心位置は、実際の中心位置に近くなる。さらに、ランタイム時の画像は、テンプレート登録された画像に類似する。
即ち、図6、図7、および図8で説明したように、ランタイム時若しくはそれに加えてテンプレート画像登録時に、シャッター時間を揺らぎ周期(1波長)に対して十分長くし、にじんだ画像でパターンマッチングする画像処理アルゴリズムとする。これによって、にじみの中心が真値に近くなる。この結果、位置決め精度が向上する。
【実施例2】
【0029】
本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の他の実施例を、図9によって説明する。実施例1においては、シャッター時間を揺らぎ波長より十分長いシャッター速度で画像を取得し、にじんだ画像でパターンマッチングする画像処理アルゴリズムを用いた。
図9によって、振動による影響を除去可能なシャッター時間の別の算出手段および方法を説明する。図9は、本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例を説明するための図である。901はCCD撮像素子若しくはCMOS撮像素子を用いた撮像装置、905は撮像装置901の光軸、914はレンズ、911は撮像装置901の光軸905上でかつ撮像素子(撮像装置901の上側)側に設けられたセンサ、912は撮像装置901の光軸905上でかつレンズ914側(撮像装置901の下側)に設けられたセンサである。また、901’はCD撮像素子若しくはCMOS撮像素子を用いた撮像装置、905’は撮像装置901’の光軸、914’はレンズ、911’は撮像装置901’の光軸905’上でかつ撮像素子(撮像装置901’の上側)側に設けられたセンサ、912’は撮像装置901’の光軸905’上でかつレンズ914’側(撮像装置901’の下側)に設けられたセンサである。
【0030】
図9の実施例では、シャッター開口(蓄積開始および終了)タイミング制御によって振動の波形を測定する方法について述べる。即ち、振動抑制のために振動周期若しくは振動終息時間を算出するものである。
使用するセンサとしては、一般的には、加速度センサや振動センサが考えられる。しかし、振動センサでの測定は、以下の理由で、取り込み画像への影響を確認することが難しくなる虞がある。
即ち、図9(a)は、撮像装置901の光軸が、垂直方向になるようにセットされている模式図である。図9(b)は、振動により、光軸が垂直な撮像装置901から、少し光軸が回転した(角度θ)場合の模式図である。
光軸上に上下2つの振動センサを取り付けた場合には、(1)センサが回転の支点中心になる場合には反応しない、(2)光学系が長い光路を持つ場合にはオフセットが反映されない、等の問題がある。
また、加速度センサでも、一般的には、オフセットは算出できないが、取りだした波形を積分すれば、類推できる。ただ、図9によって加速度センサを使用しても、画像上でのオフセットを正確に算出することは難かしいので、センサでの測定結果より実画像での影響度を測定して、最適なシャッター時間を選択する。
【0031】
図9の実施例について、図10を用いてさらに説明する。図10は、撮像装置が撮像した画像から測定した画像に与える振動を説明する図である。横軸は時間を示し、縦軸はオフセットを示す。図10(a)は1つの連続して撮像した画像の振動波形について、フレームサイクル(垂直同期:VD)とシャッタースピードの関係を示した図である。図10(b)は、1回目、2回目、および3回目に撮像した画像の振動波形を併記した図である。
【0032】
図10において、繰り返し発生する装置振動が、画像に与える影響は、その撮像装置によって測定できる。画像は、一般的に、CCD撮像素子やCMOS撮像素子などの撮像素子を用いた撮像装置によって撮像される。しかし、撮像された画像は、撮像素子の画像吐き出し時間(画像転送時間)より高周期で撮像を繰り返すことができない。従って、撮像された画像は、その連続性を正確に維持できない。このため、振動などの軌跡解析に使用することは一般的に難かしい。即ち、図10(a)に示すように、シャッター時間sはフレームサイクルVDより短くできても、タイミングはフレームサイクルに依存する。このため映像の連続性を維持できなくなる。
【0033】
しかし、本発明の一実施例では、シャッター時間を測定する上で、撮像装置が撮像した実際の画像が、振動の影響をどのように受けているかを正確に測定することが重要である。このため、図10(b)に示すように、本実施例2では、装置の動作再現性を利用している。
図11は、縦軸と振動波形の交点(黒丸)が振動発生タイミングとその座標であることを示す図である。横軸が時間を示し、縦軸は基準位置からのオフセットを示す。
図1(a)は測定1回目、図11(b)は測定2回目、図11(c)は、測定3回目、・・・、図11(d)は、測定N回目である(Nは、2以上の自然数)。
発生起因が常に同じで、装置の剛性が十分ある場合、その振動の描く軌跡は周期測定を行うレベルでの再現性は大きい。
これにより、振動周期、振幅、および減衰時間が測定でき、必要精度に対するシャッター時間を算出できる。
即ち、振動波形を何回発生しても、装置の剛性が高ければ再現性が大きいことを利用したものである。その結果、振動の周期、振幅の幅がほぼ一定であることによって、シャッター速度およびシャッタータイミングを決定することができる。このため、上記実施例2によって振動を測定し、測定した振動波形を用いて、実施例1を適用することによって位置決め精度が向上する。その結果、ボンディング精度が向上する。
【実施例3】
【0034】
本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の他の実施例を、図12によって説明する。図12は、本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の実施例1を実施するにあたって、さらに、気流等による光学的な揺らぎの影響を除去可能なシャッター時間の算出手段および方法の一実施例を説明するための概略図である。即ち、図12は、繰り返し認識による気流影響除去に必要なシャッター時間を測定するための手段および方法を説明する図である。横軸はシャッター時間を示し、縦軸は標準偏差を示す。
図12において、装置を停止させた状態で、パターマッチング等の画像処理を行う。“画像取り込み”と“位置検出”とを繰り返し実行する。これによって、検出のばらつき(検出精度)を測定する。
即ち、シャッター時間を変化させながら、上記“画像取り込み”と“位置検出”とを繰り返し実行することによって、それぞれのシャッター時間における検出精度の傾向を測定することができる。
このシャッター時間毎の検出精度の傾向は、揺らぎの周期傾向によって定まる。揺らぎの周期に対比して十分にシャッター時間が得られていない場合には、繰り返し精度は劣化する(シャッター時間がポイントs0未満)。ポイントs0以上に、シャッター時間を延ばすと、その精度が安定してくる(シャッター時間がポイントs0以上でかつポイントs1未満)。これにより、必要精度に対する必要なシャッター時間(例えば、ポイントss)を算出することができる。
【0035】
この結果、上記実施例3によって気流の揺らぎを測定し、測定したシャッター速度−位置決め精度の標準偏差の波形を用いて、実施例1若しくは実施例2を適用することによって位置決め精度が向上する。即ち、その結果、ボンディング精度が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ダイボンダに限らず、駆動機構や搬送系を有し、位置合わせを画像処理によって行うワイヤボンダ、チップマウンタ、ディスペンサ、ビームはんだ付け装置、シーリング装置等の半導体製造装置に適用可能であり、発熱部を有しない装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
11:ウエハ供給部、 12:ワーク供給・搬送部、 13:ダイボンディング部、 100:ダイボンダ、 111:ウエハカセットリフタ、 112:ピックアップ装置、 121:スタックローダ、 122:フレームフィーダ、 123:アンローダ、 131:プリフォーム部、 132:ボンディングヘッド部、 201:撮像装置、 202:撮像装置、 203:撮像装置、 211::ウエハ、 212、213:ワーク、 232:プリフォーム部の処理位置、 233:ダイボンディング部の処理位置、 251:ピッチ、 301:画像処理装置、 302:位置制御装置、 303:X軸駆動部、 304:Y軸駆動部、305:θ軸駆動部、 306:X軸モータ、 307:Y軸モータ、 308:θ軸モータ、 901、901’:撮像装置、 905、905’:光軸、 911、911’、912、912’:センサ 914,914’:レンズ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイボンダおよびダイボンディング方法に関わり、特に、位置合わせ時間を短縮するダイボンダおよびダイボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダイボンディング工程では、ダイ(半導体チップ、以下、単にダイと称する)を分割する工程を経た半導体ウエハ(以下、単にウエハという)を配線基板やリードフレームなどの基板にマウントしてパッケージを組み立てる。
ダイボンダにおいて、まず、配線基板やリードフレームなどのサブストレート基板は、フレームローダから搬入される。搬入されたサブストレート基板上には、プリフォームヘッド部でダイ接着剤が塗布される(接着剤塗布工程)。ダイ接着剤は、例えば、ペースト状の接着剤である。
ダイ接着剤を塗布されたサブストレート基板は、ボンディング部で、ウエハホルダからピックアップされ(ピックアップ工程)たダイをマウント(ボンディング工程)される。
上述の接着剤塗布工程時、ピックアップ工程時、およびボンディング工程時には、各々の工程に合わせ、サブストレート基板やウエハを撮像し、撮像した画像に基づいて画像処理により位置決めおよび検査を行う(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−72996号公報
【特許文献2】特開2003−318600号公報
【特許文献3】特開平6−197349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サブストレート基板は、ダイボンダに搬入され、ダイボンディングされた後搬送される。即ち、サブストレート基板は、ダイボンダの上流から下流に搬送される。一般的に、高精度が要求される産業機械では、当然ながら、装置内部での振動や気流の管理を高精度に行う必要がある。しかし、駆動部や発熱部を持つ産業用ロボットでは、それらの影響をゼロにすることは、物理的に困難である。特に、画像処理装置を搭載するダイボンダ等の装置では、これらの影響が顕著に受け易い。
搬送動作により発生する振動は、サブストレート基板に直接伝わるほか、ダイボンダ本体にも伝達される。また、搬送動作だけではなく、ピックアップ工程でもピックアップするために発生する振動が、ダイボンダ中に機械的に伝達される。例えば、ピックアップ時の加重は、約9.8〜147[m/s2]程度である。
【0005】
また、プリフォーム工程以降、ダイ接着剤の塗布性を良くするために、約80〜200[℃]程度に基板を予熱している。
従って、ダイボンダ内には、予熱や排気管等による空気の乱れがある。さらに、搬送動作やピックアップの動作などによって、ダイボンダ内には、気流が発生する。
特に、位置合わせをするときには、ダイボンダでは、撮像装置が位置合わせしたいターゲット(サブストレート基板やダイ)を撮像し、画像処理装置が撮像した画像を画像処理してターゲットの基準位置(位置合わせマーク)を抽出している。しかし、撮像装置が撮像する箇所は、熱発生源に近く、気流の動きが激しい。このため、撮像装置は、気流の動きによる光学的な揺らぎの影響を受ける。また明るい画像を取得するために、照明の輝度を上げて撮像することが多いが、照明光が照射されることにより発生する熱も無視できない。
【0006】
そもそも、撮像装置が撮像する画像は、位置合わせのために使用する。この画像が撮像された時点での位置から、実際に作業するときの位置がずれていれば、撮像した画像は位置合わせに不適切で、使用できない。従って、基板搬送が終わって、振動が所定の大きさ以内に小さくなるまで、位置合わせのための画像を取得できない。このため、ダイボンディングのタクトタイムが長くなる問題があった。さらに、熱の影響による光学的な揺らぎのために、撮影画像には時間的に不確定な要因が入り、位置合わせ精度が向上しないという問題があった。
本発明の目的は、上記のような問題に鑑み、タクトタイムが短く、位置合わせ精度が高いダイボンダおよびダイボンディング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のダイボンダは、ワークを撮像する第1の撮像装置と、前記第1の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記ワークの所定の第1の基準位置を抽出する画図処理部と、前記抽出された第1の基準位置に基づいて位置合わせする位置制御部とを備え、前記第1の撮像装置の第1の電子シャッター速度が、前記ワークが停止基準位置に停止した後に発生する第1の振動波形の1波長より長い又は前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とする。
さらに、上記本発明のダイボンダにおいて、吸着ヘッドに保持される前の半導体チップを撮像する第2の撮像装置を備え、前記画像処理部は、前記第2の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記半導体チップの所定の第2の基準位置を抽出し、前記位置制御部は、前記抽出された第2の基準位置に基づいて位置合わせし、前記第2の撮像装置の第2の電子シャッター速度が、前記半導体チップが停止した後に発生する振動波形の1波長より長い又は前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のダイボンダは、ワークを撮像する第1の撮像装置と、前記第1の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記ワークの所定の第1の基準位置を抽出する画図処理部と、前記抽出された第1の基準位置に基づいて位置合わせする位置制御部とを備え、前記第1の撮像装置の第1の電子シャッター速度が、前記ワークが停止基準位置に停止した後に発生する第1の振動波形の1波長より長く、かつ、前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とする。
さらに、上記本発明のダイボンダにおいて、吸着ヘッドに保持される前の半導体チップを撮像する第2の撮像装置を備え、前記画像処理部は、前記第2の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記半導体チップの所定の第2の基準位置を抽出し、前記位置制御部は、前記抽出された第2の基準位置に基づいて位置合わせし、前記第2の撮像装置の第2の電子シャッター速度が、前記半導体チップが停止した後に発生する振動波形の1波長より長く、かつ、前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とする。
【0009】
さらに、上記本発明のダイボンダにおいて、前記第1の振動波形及び前記第2の振動波形は、前記半導体チップが停止した時間を起点とする時間と前記第1の基準位置及び前記第2の基準位置からのオフセットを複数回測定して得られた振動波形であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のダイボンディング方法は、吸着ヘッドによって半導体チップを取り出すステップと、ワークが停止基準位置に停止した後に発生する第1の振動波形の1波長より長い又は前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長い第1の撮像装置の電子シャッター速度により、前記第1の撮像装置によって撮像するステップと、前記撮像された第1の画像を画像処理し、前記ワークの所定の第1の基準位置を抽出するステップと、前記抽出された第1の基準位置に基づいて位置合わせして前記ワークに前記半導体チップをダイマウントするステップと、を有することを特徴とするダイボンディング方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タクトタイムが短く、位置合わせ精度が高いダイボンダおよびダイボンディング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例のダイボンダを上から見た概念図である。
【図2】本発明のダイボンダの一実施例における撮像装置の機能について説明するための模式的な断面図である。
【図3】本発明の位置合わせ機構の制御系の一実施例を説明するための図である。
【図4】駆動部のユニットが移動から停止に移行したときに発生する振動波形の一例を示す図である。
【図5】ワークやウエハから光学系までの光路内の気流(空気の乱れ)に起因する光学的な揺らぎによるオフセット波形の一例を示す図である。
【図6】本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例であって、撮像装置のシャッター速度を制御して、振動による揺らぎの影響を除去することについて説明する図である。
【図7】本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例であって、撮像装置のシャッター速度を制御して、気流による光学的な揺らぎの影響を除去することについて説明する図である。
【図8】図6、図7の本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例における画像を説明する図である。
【図9】本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法において、振動による影響を除去可能なシャッター時間の別の算出手段および方法を説明するための図である。
【図10】撮像装置が撮像した画像から測定した画像に与える振動を説明する図である。
【図11】縦軸と振動波形の交点(黒丸)が振動発生タイミングとその座標であることを示す図である。
【図12】本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法においての、気流等による光学的な揺らぎの影響を除去可能なシャッター時間の算出手段および方法の一実施例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、各図の説明において、共通な機能を有する構成要素には同一の参照番号を付し、できるだけ説明の重複を避けるため、説明を省略する。
【実施例1】
【0014】
図1によって、ダイボンダの基本的な構成を説明する。図1は、本発明の一実施例のダイボンダを上から見た概念図である。100はダイボンダ、11はウエハ供給部、12はワーク供給・搬送部、13はダイボンディング部である。このように、ダイボンダ100は、ウエハ供給部11とワーク供給・搬送部12とダイボンディング部13とから成る。
ウエハ供給部11において、111はウエハカセットリフタ、112はピックアップ装置である。またワーク供給・搬送部12において、121はスタックローダ、122はフレームフィーダ、123はアンローダである。またダイボンディング部13において、131はプリフォーム部、132はボンディングヘッド部である。
【0015】
図1において、ウエハカセットリフタ111は、ウエハリングが充填されたウエハカセット(図示しない)を有し、順次、ウエハリングをピックアップ装置112に供給する。ピックアップ装置112は、所望するダイをウエハリングからピックアップできるように、ウエハリングを移動する。
スタックローダ121は、ダイを接着するワーク(リードフレーム)をフレームフィーダ122に供給する。フレームフィーダ122は、ワークをフレームフィーダ122上の2箇所の処理位置(プリフォーム部およびダイボンディング部それぞれの処理位置)を介してアンローダ123に搬送する。アンローダ123は、搬送されたワークを保管する。
プリフォーム部(ダイ接着剤塗布装置)131は、フレームフィーダ122により搬送されてきたワーク(例えば、リードフレーム)に、ダイ接着剤を塗布する。ボンディングヘッド部132は、ピックアップ装置112から、ダイをピックアップして上昇し、ダイをフレームフィーダ122上のボンディングポイントまで移動させる。そして、ボンディングヘッド部132は、移動したボンディングポイントでダイを下降させ、ダイ接着剤が塗布されたワーク上のボンディングポイントにダイをボンディングする。なお、ダイの裏面(接着面)にも、フィルム状の接着剤が予め付着している。
【0016】
図2によって、さらに、ダイボンダに使用する撮像装置の基本的な機能について説明する。図2は、本発明のダイボンダの一実施例における撮像装置の機能について説明するための模式的な断面図である。図2(a)は横方向(Y方向)から見た図、図2(b)は上方向(Z方向)から見た図である。なお、図2においては、ダイボンダにおける撮像装置とその撮像画像について説明している。このため、説明に関係のない機能部分(他の構成要素、結線)については、図示および説明を省略している。232はプリフォーム部の処理位置、233はダイボンディング部処理位置、211はピックアップ装置112に装着されたウエハリングのウエハ、201はピックアップ装置112の上からウエハ211のダイを撮像する撮像装置、212はプリフォーム部232に搬入されたワーク(例えば、リードフレーム)、202はプリフォーム部131のダイ接着位置(ボンディングポイント)を撮像する撮像装置、213はボンディングヘッド部の処理位置233に搬入されたワーク、203はボンディングヘッド部の処理位置132のダイ接着位置を撮像する撮像装置、251はプリフォーム部の処理位置232とダイボンディング部233間のピッチである。ワーク212と213は、ピッチ251の間隔を保ちローダから搬入され、アンローダ123に搬送される。
撮像装置は、例えば、CCD撮像素子若しくはCMOS撮像素子を用いた撮像装置である。
【0017】
図2において、撮像装置201は、ピックアップ装置112のウエハ211のパターン面(表面)を撮像し、パターン認識等の周知の画像処理によって、1つのダイの中心位置と、ピックアップ装置112の吸着ノズルの中心および突き上げブロックの中心位置とのずれをなくすように位置補正する。
同様に、撮像装置202は、プリフォーム部232の所定のダイ接着位置(ボンディングポイント)を撮像し、パターン認識等の周知の画像処理によって、ダイ接着位置にプリフォーム樹脂が塗布されるように位置ずれ補正を行い、プリフォーム樹脂を塗布する。
また同様に、撮像装置203は、ダイボンディング部233の所定のダイ接着位置を撮像し、パターン認識等の周知の画像処理によって、ダイ接着位置の中心位置にダイがマウントされるように位置ずれ補正を行い、ダイをマウントする。
【0018】
なお、画像処理装置が撮像装置によって画像を取得するとき(電子シャッター:蓄積露光時)には、ダイボンダ自身が起こしている振動や気流の乱れなどの影響を受け、撮像した画像の再現性に、揺らぎが発生する。振動などに対してはシャッター速度を短縮することでぶれを抑えることはできる。しかし、振幅の範囲内において、位置が不定となる。即ち、撮像した画像に基づく位置(撮像時の位置)が、その後の振動で動き、現在の位置が撮像時の位置と異なる。
これらの現象は、画像処理を用いた位置決め機能を低下させ、最終的には、ボンディング精度が低化する。
【0019】
次に、図3の位置合わせ機構によって、位置ずれ補正をさらに説明する。図3は、本発明の位置合わせ機構の制御系の一実施例を説明するための図である。301は画像処理装置、302は位置制御装置、303はX軸駆動部、304はY軸駆動部、305はθ軸駆動部、306はX軸モータ、307はY軸モータ、308はθ軸モータである。
【0020】
図3において、撮像装置201は、ウエハ211のパターン面(表面)を撮像し、撮像した画像データを画像処理装置301に出力する。
画像処理装置301は、入力された画像データを、パターン認識等の周知の画像処理によって解析し、ウエハおよびダイの所定の箇所の位置合わせマークについてX座標、Y座標およびθ座標のずれを抽出し、ピックアップの中心位置にピックアップするダイの中心300が来るように位置補正量を算出し、算出した位置補正量を位置制御装置302に出力する。
位置制御装置302は、入力された位置補正量に基づいて、駆動部303〜305に制御信号を出力する。駆動部303〜305は、入力された制御信号に基づいてそれぞれのモータ(X軸モータ306、Y軸モータ307、およびθ軸モータ)を制御し、X座標、Y座標、θ(回転)座標を補正する。
上述の実施例では、ピックアップ装置112についての位置補正を説明した。以下、プリフォーム部131およびボンディングヘッド部132についても同様である。
【0021】
次に、図4を用いて、駆動ユニットが移動から停止に移行する(搬送動作が停止し、ワークが停止基準位置で停止した)タイミングで発生する振動について説明する。図4は、駆動部のユニットが移動から停止に移行したときに発生する振動波形の一例を示す図である。
なお、駆動ユニットが移動から停止し、撮像装置が画像処理によって位置を決定する工程としては、図2で説明したように、本発明では、(1)ピックアップ装置112のウエハカセットリフタ111からピックアップ装置112へのウエハリングの移動時およびピックアップ装置112内でのダイ位置の移動、(2)プリフォーム部232へのワーク212の搬入、(3)ダイボンディング部232へのワーク213の搬入である。以下の説明では、(3)ダイボンディング部232へのワーク213の搬入を例として説明する。
【0022】
図4において、横軸は時間を示し、縦軸は基準位置(整定位置)からのオフセットを示す。図4(a)は、時刻t41ではワーク213が移動中で、時刻t42で停止基準位置に停止(ワーク搬送動作が停止)したことを示す。しかし、振動によって、ワーク213は、時刻t42では完全に停止せず、停止基準位置を中心にワーク搬送方向に振動する。振動の振幅(停止の基準位置からのずれ)は時間の経過と共に漸減し、整定時間が経過すると所定の許容振幅値(整定値)内に収まる。即ち、ワーク213を移動および停止させる駆動ユニットの剛体部分の形状の位置関係が大幅に変化しない限り、換言すると振動支点部と測定点の位置関係が大幅に変化しない限り、振動周期は、ある程度一定で、振幅が過渡的に減衰し、収束する。
【0023】
次に、図4(b)に示すように、例えば、時刻t43のタイミングで撮像装置がワーク213の画像を取得し、取得した画像を画像処理し、位置合わせマークに基づいて位置決定する。この結果、ワーク213は、収束時の位置(真値:オフセットゼロの停止基準位値)に比べて距離dずれた位置で位置合わせすることになる。このため、さらにオフセット値(距離d)分の位置補正が必要となる。
なお、ダイボンディング工程において、吸着ノズルがダイをワーク213の所定に位置にマウントするまでに、すでにワーク213が収束位置(停止基準位置にほぼ近い整定位置)にある。同様に、プリフォーム部131で、ダイ接着剤を塗布する塗布ヘッドがワーク212に塗布するまでに、すでにワーク212が整定位置にある。また、ピックアップ装置112でも同様に、ピックアップ装置の吸着ノズルがダイをピックアップするまでに、すでにダイの中心位置が整定位置にある。
しかし、位置精度を高くするために、減衰がほとんどなくなっている時刻t45まで待って、撮像装置によってワーク213の画像を取得し、取得した画像を画像処理し、位置決定すると、停止制御からの遅延時間を多く必要となるため、タクトタイムが長くなる。
【0024】
図4(c)に示すように、ワーク停止時刻t42から時刻t44までの短時間T40の区間内で、従来より正確に真値を算出可能なダイボンダを、以下で、説明する。
【0025】
次に、図5を用いて、ワークやウエハから光学系までの光路内の気流(空気の乱れ)に起因する光学的な揺らぎについて説明する。この光学的な揺らぎは、温度変化や噴出しエアーなどによって発生する。図5は、ワークやウエハから光学系までの光路内の気流(空気の乱れ)に起因する光学的な揺らぎによるオフセットの一例を示す図である。図5(a)および(b)において、横軸は時間を示し、縦軸は基準位置からのオフセットを示す。
図5(a)は、ダイマウンタで一般的に光路内の気流によって発生する、オフセット振幅波形の一例を示す図である。山PA1谷PA2の発生タイミング(周期)や振幅は、ランダムに近いが、振幅の最大値Amaxや周期の最大値Lmaxは、ある所定の範囲内に収まる。
図5(b)は、図5(a)の振幅波形の揺らぎの振幅波形に対して、撮像を繰り返し行った時刻での振幅をP1〜P4のドットで示した図である。
図5(c)は、図5(b)のように撮像した都度の揺らぎの振幅値をヒストグラムにした図である。横軸は頻度、縦軸は振幅(例えば、中央値はオフセットゼロである)のクラス代表値を示す。
このように、振幅のばらつきは、確率分布に依存する標準偏差で表すことができる。
【0026】
さて、図6を用いて、本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例を説明する。図6は、本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例であって、撮像装置のシャッター速度を制御して、振動による揺らぎの影響を除去することについて説明する図である。横軸は時間を示し、縦軸は基準位置からのオフセットを示す。
図6(a)は、撮像装置の電子シャッター時間(蓄積時間)が、振動の1波長に対して比較的短い場合のぶれ幅w、ぶれ幅中心c、およびオフセット基準位置(整定位置)の関係を示す図である。ぶれ幅wは、シャッター時間内の“オフセット最大値”と“オフセット最小値”の差である。
w = “オフセット最大値”−“オフセット最小値”
従って、ぶれ幅中心cの位置は、シャッター時間内の“オフセット最大値”と“オフセット最小値”の和の1/2の値である。
c = (“オフセット最大値”+“オフセット最小値”)/2
図6(b)は、撮像装置の電子シャッター時間(蓄積時間)が、振動の1波長に対して十分短い場合のぶれ幅w、ぶれ幅中心c、およびオフセット基準位置(整定位置)の関係を示す図である。ぶれ幅wは小さくなるが、ぶれ幅中心cは整定位置に対して振幅分の範囲で不定になる。振動とシャッターの同期がとれない場合には、位置が確定できない。
図6(c)は、撮像装置の電子シャッター時間(蓄積時間)が、振動の1波長より十分長い場合のぶれ幅w、ぶれ幅中心c、およびオフセット基準位置(整定位置)の関係を示す図である。ぶれ幅wは大きくなるが、ぶれ幅中心cの変動範囲が、整定位置に対して、プラス側に、“正側オフセット絶対値の最大”と“負側オフセット絶対値の最大”の差の絶対値の1/2の値、及びマイナス側に、正側オフセット絶対値の最大”と“負側オフセット絶対値の最大”の差の絶対値の1/2の値となる。
±|“正側オフセット絶対値の最大”−“負側オフセット絶対値の最大”|/2
振幅が比較的安定している振動に対しては、その値が小さくなる。
【0027】
図7を用いて、本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例を説明する。図7は、本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例であって、撮像装置のシャッター速度を制御して、気流による光学的な揺らぎの影響を除去することについて説明する図である。
気流による光学的な揺らぎは、気流や粗密に何らかの傾向がない場合には、通常、ランダムに発生すると考えて良い。本実施例では、気流による光学的な揺らぎが、ランダムに発生するとして以下のように検討した。
即ち、画像処理による位置は、真値に対して、一定の確率分布で分散する。このため、整定位置が、図7のような揺らぎ波形の中央付近に存在する確率が最も高い。その分散をほぼ算出できるだけ長いシャッター時間(蓄積時間)を設けるようにすることによって、真値を中心に挟んだ画像データになる。この画像データは、短いシャッター時間で撮像した画像よりも、正確に真値を算出することができる。
【0028】
図8は、上述の図6若しくは図7で説明したシャッター時間に対する画像データの一例を示す図である。図8には、(a)シャッター時間が揺らぎ周期(1波長)に対して十分短い場合、(b)シャッター時間が揺らぎ周期(1波長)に対して比較的短い場合、(c)シャッター時間が揺らぎ周期(1波長)に対して十分長い場合について、それぞれ、テンプレート登録時の画像、ランタイム時間の画像を示す。
図8(a)は、それぞれの画像がぶれない。しかし、中心位置も確定しない。そして、ランタイム時の画像は、テンプレート登録された画像と異なる。
図8(b)は、それぞれの画像がぶれる。従って、中心位置も確定しない。そして、ランタイム時の画像は、テンプレート登録された画像と異なる。
図8(c)は、それぞれの画像がぶれる。しかし、中心位置は、実際の中心位置に近くなる。さらに、ランタイム時の画像は、テンプレート登録された画像に類似する。
即ち、図6、図7、および図8で説明したように、ランタイム時若しくはそれに加えてテンプレート画像登録時に、シャッター時間を揺らぎ周期(1波長)に対して十分長くし、にじんだ画像でパターンマッチングする画像処理アルゴリズムとする。これによって、にじみの中心が真値に近くなる。この結果、位置決め精度が向上する。
【実施例2】
【0029】
本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の他の実施例を、図9によって説明する。実施例1においては、シャッター時間を揺らぎ波長より十分長いシャッター速度で画像を取得し、にじんだ画像でパターンマッチングする画像処理アルゴリズムを用いた。
図9によって、振動による影響を除去可能なシャッター時間の別の算出手段および方法を説明する。図9は、本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の一実施例を説明するための図である。901はCCD撮像素子若しくはCMOS撮像素子を用いた撮像装置、905は撮像装置901の光軸、914はレンズ、911は撮像装置901の光軸905上でかつ撮像素子(撮像装置901の上側)側に設けられたセンサ、912は撮像装置901の光軸905上でかつレンズ914側(撮像装置901の下側)に設けられたセンサである。また、901’はCD撮像素子若しくはCMOS撮像素子を用いた撮像装置、905’は撮像装置901’の光軸、914’はレンズ、911’は撮像装置901’の光軸905’上でかつ撮像素子(撮像装置901’の上側)側に設けられたセンサ、912’は撮像装置901’の光軸905’上でかつレンズ914’側(撮像装置901’の下側)に設けられたセンサである。
【0030】
図9の実施例では、シャッター開口(蓄積開始および終了)タイミング制御によって振動の波形を測定する方法について述べる。即ち、振動抑制のために振動周期若しくは振動終息時間を算出するものである。
使用するセンサとしては、一般的には、加速度センサや振動センサが考えられる。しかし、振動センサでの測定は、以下の理由で、取り込み画像への影響を確認することが難しくなる虞がある。
即ち、図9(a)は、撮像装置901の光軸が、垂直方向になるようにセットされている模式図である。図9(b)は、振動により、光軸が垂直な撮像装置901から、少し光軸が回転した(角度θ)場合の模式図である。
光軸上に上下2つの振動センサを取り付けた場合には、(1)センサが回転の支点中心になる場合には反応しない、(2)光学系が長い光路を持つ場合にはオフセットが反映されない、等の問題がある。
また、加速度センサでも、一般的には、オフセットは算出できないが、取りだした波形を積分すれば、類推できる。ただ、図9によって加速度センサを使用しても、画像上でのオフセットを正確に算出することは難かしいので、センサでの測定結果より実画像での影響度を測定して、最適なシャッター時間を選択する。
【0031】
図9の実施例について、図10を用いてさらに説明する。図10は、撮像装置が撮像した画像から測定した画像に与える振動を説明する図である。横軸は時間を示し、縦軸はオフセットを示す。図10(a)は1つの連続して撮像した画像の振動波形について、フレームサイクル(垂直同期:VD)とシャッタースピードの関係を示した図である。図10(b)は、1回目、2回目、および3回目に撮像した画像の振動波形を併記した図である。
【0032】
図10において、繰り返し発生する装置振動が、画像に与える影響は、その撮像装置によって測定できる。画像は、一般的に、CCD撮像素子やCMOS撮像素子などの撮像素子を用いた撮像装置によって撮像される。しかし、撮像された画像は、撮像素子の画像吐き出し時間(画像転送時間)より高周期で撮像を繰り返すことができない。従って、撮像された画像は、その連続性を正確に維持できない。このため、振動などの軌跡解析に使用することは一般的に難かしい。即ち、図10(a)に示すように、シャッター時間sはフレームサイクルVDより短くできても、タイミングはフレームサイクルに依存する。このため映像の連続性を維持できなくなる。
【0033】
しかし、本発明の一実施例では、シャッター時間を測定する上で、撮像装置が撮像した実際の画像が、振動の影響をどのように受けているかを正確に測定することが重要である。このため、図10(b)に示すように、本実施例2では、装置の動作再現性を利用している。
図11は、縦軸と振動波形の交点(黒丸)が振動発生タイミングとその座標であることを示す図である。横軸が時間を示し、縦軸は基準位置からのオフセットを示す。
図1(a)は測定1回目、図11(b)は測定2回目、図11(c)は、測定3回目、・・・、図11(d)は、測定N回目である(Nは、2以上の自然数)。
発生起因が常に同じで、装置の剛性が十分ある場合、その振動の描く軌跡は周期測定を行うレベルでの再現性は大きい。
これにより、振動周期、振幅、および減衰時間が測定でき、必要精度に対するシャッター時間を算出できる。
即ち、振動波形を何回発生しても、装置の剛性が高ければ再現性が大きいことを利用したものである。その結果、振動の周期、振幅の幅がほぼ一定であることによって、シャッター速度およびシャッタータイミングを決定することができる。このため、上記実施例2によって振動を測定し、測定した振動波形を用いて、実施例1を適用することによって位置決め精度が向上する。その結果、ボンディング精度が向上する。
【実施例3】
【0034】
本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の他の実施例を、図12によって説明する。図12は、本発明のダイボンダおよびダイボンディング方法の実施例1を実施するにあたって、さらに、気流等による光学的な揺らぎの影響を除去可能なシャッター時間の算出手段および方法の一実施例を説明するための概略図である。即ち、図12は、繰り返し認識による気流影響除去に必要なシャッター時間を測定するための手段および方法を説明する図である。横軸はシャッター時間を示し、縦軸は標準偏差を示す。
図12において、装置を停止させた状態で、パターマッチング等の画像処理を行う。“画像取り込み”と“位置検出”とを繰り返し実行する。これによって、検出のばらつき(検出精度)を測定する。
即ち、シャッター時間を変化させながら、上記“画像取り込み”と“位置検出”とを繰り返し実行することによって、それぞれのシャッター時間における検出精度の傾向を測定することができる。
このシャッター時間毎の検出精度の傾向は、揺らぎの周期傾向によって定まる。揺らぎの周期に対比して十分にシャッター時間が得られていない場合には、繰り返し精度は劣化する(シャッター時間がポイントs0未満)。ポイントs0以上に、シャッター時間を延ばすと、その精度が安定してくる(シャッター時間がポイントs0以上でかつポイントs1未満)。これにより、必要精度に対する必要なシャッター時間(例えば、ポイントss)を算出することができる。
【0035】
この結果、上記実施例3によって気流の揺らぎを測定し、測定したシャッター速度−位置決め精度の標準偏差の波形を用いて、実施例1若しくは実施例2を適用することによって位置決め精度が向上する。即ち、その結果、ボンディング精度が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ダイボンダに限らず、駆動機構や搬送系を有し、位置合わせを画像処理によって行うワイヤボンダ、チップマウンタ、ディスペンサ、ビームはんだ付け装置、シーリング装置等の半導体製造装置に適用可能であり、発熱部を有しない装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
11:ウエハ供給部、 12:ワーク供給・搬送部、 13:ダイボンディング部、 100:ダイボンダ、 111:ウエハカセットリフタ、 112:ピックアップ装置、 121:スタックローダ、 122:フレームフィーダ、 123:アンローダ、 131:プリフォーム部、 132:ボンディングヘッド部、 201:撮像装置、 202:撮像装置、 203:撮像装置、 211::ウエハ、 212、213:ワーク、 232:プリフォーム部の処理位置、 233:ダイボンディング部の処理位置、 251:ピッチ、 301:画像処理装置、 302:位置制御装置、 303:X軸駆動部、 304:Y軸駆動部、305:θ軸駆動部、 306:X軸モータ、 307:Y軸モータ、 308:θ軸モータ、 901、901’:撮像装置、 905、905’:光軸、 911、911’、912、912’:センサ 914,914’:レンズ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを撮像する第1の撮像装置と、前記第1の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記ワークの所定の第1の基準位置を抽出する画図処理部と、前記抽出された第1の基準位置に基づいて位置合わせする位置制御部とを備え、
前記第1の撮像装置の第1の電子シャッター速度が、前記ワークが停止基準位置に停止した後に発生する第1の振動波形の1波長より長い又は前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とするダイボンダ。
【請求項2】
請求項1記載のダイボンダにおいて、
吸着ヘッドに保持される前の半導体チップを撮像する第2の撮像装置を備え、前記画像処理部は、前記第2の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記半導体チップの所定の第2の基準位置を抽出し、
前記位置制御部は、前記抽出された第2の基準位置に基づいて位置合わせし、
前記第2の撮像装置の第2の電子シャッター速度が、前記半導体チップが停止した後に発生する振動波形の1波長より長い又は前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とするダイボンダ。
【請求項3】
ワークを撮像する第1の撮像装置と、前記第1の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記ワークの所定の第1の基準位置を抽出する画図処理部と、前記抽出された第1の基準位置に基づいて位置合わせする位置制御部とを備え、
前記第1の撮像装置の第1の電子シャッター速度が、前記ワークが停止基準位置に停止した後に発生する第1の振動波形の1波長より長く、かつ、前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とするダイボンダ。
【請求項4】
請求項3記載のダイボンダにおいて、
吸着ヘッドに保持される前の半導体チップを撮像する第2の撮像装置を備え、
前記画像処理部は、前記第2の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記半導体チップの所定の第2の基準位置を抽出し、
前記位置制御部は、前記抽出された第2の基準位置に基づいて位置合わせし、
前記第2の撮像装置の第2の電子シャッター速度が、前記半導体チップが停止した後に発生する振動波形の1波長より長く、かつ、前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とするダイボンダ。
【請求項5】
請求項1又は請求項3記載のダイボンダにおいて、
前記第1の振動波形は、前記半導体チップが停止した時間を起点とする時間と前記第1の基準位置からのオフセットを複数回測定して得られた振動波形であることを特徴とするダイボンダ。
【請求項6】
請求項2又は請求項4記載のダイボンダにおいて、
前記第2の振動波形は、前記半導体チップが停止した時間を起点とする時間と前記第2の基準位置からのオフセットを複数回測定して得られた振動波形であることを特徴とするダイボンダ。
【請求項7】
吸着ヘッドによって半導体チップを取り出すステップと、
ワークが停止基準位置に停止した後に発生する第1の振動波形の1波長より長い又は前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長い第1の撮像装置の電子シャッター速度により、前記第1の撮像装置によって撮像するステップと、
前記撮像された第1の画像を画像処理し、前記ワークの所定の第1の基準位置を抽出するステップと、
前記抽出された第1の基準位置に基づいて位置合わせして前記ワークに前記半導体チップをダイマウントするステップと、
を有することを特徴とするダイボンディング方法。
【請求項8】
吸着ヘッドによって半導体チップを取り出すステップと、
ワークが停止基準位置に停止した後に発生する第1の振動波形の1波長より長くかつ前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長い第1の撮像装置の電子シャッター速度により、前記第1の撮像装置によって撮像するステップと、
前記撮像された第1の画像を画像処理し、前記ワークの所定の第1の基準位置を抽出するステップと、
前記抽出された第1の基準位置に基づいて位置合わせして前記ワークに前記半導体チップをダイマウントするステップと、
を有することを特徴とするダイボンディング方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8記載のダイボンディング方法において、
前記第1の振動波形は、前記半導体チップが停止した時間を起点とする時間と前記第1の基準位置からのオフセットを複数回測定して得られた振動波形であることを特徴とするダイボンディング方法。
【請求項1】
ワークを撮像する第1の撮像装置と、前記第1の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記ワークの所定の第1の基準位置を抽出する画図処理部と、前記抽出された第1の基準位置に基づいて位置合わせする位置制御部とを備え、
前記第1の撮像装置の第1の電子シャッター速度が、前記ワークが停止基準位置に停止した後に発生する第1の振動波形の1波長より長い又は前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とするダイボンダ。
【請求項2】
請求項1記載のダイボンダにおいて、
吸着ヘッドに保持される前の半導体チップを撮像する第2の撮像装置を備え、前記画像処理部は、前記第2の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記半導体チップの所定の第2の基準位置を抽出し、
前記位置制御部は、前記抽出された第2の基準位置に基づいて位置合わせし、
前記第2の撮像装置の第2の電子シャッター速度が、前記半導体チップが停止した後に発生する振動波形の1波長より長い又は前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とするダイボンダ。
【請求項3】
ワークを撮像する第1の撮像装置と、前記第1の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記ワークの所定の第1の基準位置を抽出する画図処理部と、前記抽出された第1の基準位置に基づいて位置合わせする位置制御部とを備え、
前記第1の撮像装置の第1の電子シャッター速度が、前記ワークが停止基準位置に停止した後に発生する第1の振動波形の1波長より長く、かつ、前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とするダイボンダ。
【請求項4】
請求項3記載のダイボンダにおいて、
吸着ヘッドに保持される前の半導体チップを撮像する第2の撮像装置を備え、
前記画像処理部は、前記第2の撮像装置が撮像した画像を画像処理し前記半導体チップの所定の第2の基準位置を抽出し、
前記位置制御部は、前記抽出された第2の基準位置に基づいて位置合わせし、
前記第2の撮像装置の第2の電子シャッター速度が、前記半導体チップが停止した後に発生する振動波形の1波長より長く、かつ、前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長いことを特徴とするダイボンダ。
【請求項5】
請求項1又は請求項3記載のダイボンダにおいて、
前記第1の振動波形は、前記半導体チップが停止した時間を起点とする時間と前記第1の基準位置からのオフセットを複数回測定して得られた振動波形であることを特徴とするダイボンダ。
【請求項6】
請求項2又は請求項4記載のダイボンダにおいて、
前記第2の振動波形は、前記半導体チップが停止した時間を起点とする時間と前記第2の基準位置からのオフセットを複数回測定して得られた振動波形であることを特徴とするダイボンダ。
【請求項7】
吸着ヘッドによって半導体チップを取り出すステップと、
ワークが停止基準位置に停止した後に発生する第1の振動波形の1波長より長い又は前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長い第1の撮像装置の電子シャッター速度により、前記第1の撮像装置によって撮像するステップと、
前記撮像された第1の画像を画像処理し、前記ワークの所定の第1の基準位置を抽出するステップと、
前記抽出された第1の基準位置に基づいて位置合わせして前記ワークに前記半導体チップをダイマウントするステップと、
を有することを特徴とするダイボンディング方法。
【請求項8】
吸着ヘッドによって半導体チップを取り出すステップと、
ワークが停止基準位置に停止した後に発生する第1の振動波形の1波長より長くかつ前記停止基準位置の光学的な揺らぎの第1の波形の1波長より長い第1の撮像装置の電子シャッター速度により、前記第1の撮像装置によって撮像するステップと、
前記撮像された第1の画像を画像処理し、前記ワークの所定の第1の基準位置を抽出するステップと、
前記抽出された第1の基準位置に基づいて位置合わせして前記ワークに前記半導体チップをダイマウントするステップと、
を有することを特徴とするダイボンディング方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8記載のダイボンディング方法において、
前記第1の振動波形は、前記半導体チップが停止した時間を起点とする時間と前記第1の基準位置からのオフセットを複数回測定して得られた振動波形であることを特徴とするダイボンディング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−59765(P2012−59765A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198989(P2010−198989)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】
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