説明

ダイボンダ及びボンディング方法

【課題】
本発明は、ダイに余計な力を与えることなく確実にダイを剥離できる、又はクラックの異常が発生しても検出でき信頼性の高い、ダイボンダ又はボンディング方法を提供することである。
【解決手段】
本発明は、複数のダイを粘着しているダイシングテープを吸着保持し、凹部を備える支持ステージと、前記凹部の低部を摺動する剥離ステージとを備え、前記ダイを吸着し、前記ダイを吸着した状態で前記剥離ステージを前記ダイから離れる方向に摺動させ、摺動前に前記離れる方向とは反対側の前記剥離ステージの端部側において前記ダイシングテープを線状に突き上げ剥離起点を形成し、前記ダイと前記吸着部材との間に発生するエアリーク流量に基づいて前記ダイの状態を判断し、前記ダイを前記ダイシングテープから剥離し、前記ダイをワークに装着し、前記剥離した後に、前記剥離ステージを元の位置に戻すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイボンダ及びボンディング方法に係わり、特に信頼性の高いダイボンダ及びボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイ(半導体チップ)(以下、単にダイという)を配線基板やリードフレームなどの基板に搭載してパッケージを組み立てる工程の一部に、半導体ウエハ(以下、単にウエハという)からダイを分割する工程と、分割したダイを基板上に搭載するダイボンディング工程とがある。
【0003】
ボンディング工程の中にはウエハから分割されたダイを剥離する剥離工程がある。剥離工程では、これらダイをピックアップ装置に保持されたダイシングテープから1個ずつ剥離し、コレットと呼ばれる吸着治具を使って基板上に搬送する。
【0004】
剥離工程を実施する従来技術としては、例えば、特許文献1がある。特許文献1では、ダイを真空吸着した状態で、吸着したダイに対応したダイテープ(ダイシングテープ)を支持するテープ剥離ステージを、上昇させ、ダイからは離れる方向に水平移動させて、ピックアップすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−270542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体装置の高密度実装を推進する目的で、パッケージの薄型化が進められている。特に、メモリカードの配線基板上に複数枚のダイを三次元的に実装する積層パッケージが実用化されている。このような積層パッケージを組み立てるに際しては、パッケージ厚の増加を防ぐために、ダイの厚さを20μm以下まで薄くすることが要求される。
【0007】
ダイが薄くなると、ダイシングテープの粘着力に比べてダイの剛性が極めて低くなる。特許文献1に開示された技術では、一気にダイを押し上げるために、ダイに余計な力がかかり、ダイにダメージを与え、最終的にはクラックを生じさせる虞がある。
【0008】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたもので、本発明の第1の目的は、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、クラックの異常が発生しても検出でき、信頼性の高いダイボンダ又はボンディング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の目的を達成するために、少なくとも下記の特徴を有する。
本発明は、複数のダイを粘着しているダイシングテープを吸着保持し、凹部を備える支持ステージと、前記凹部の低部を摺動する剥離ステージと、前記剥離ステージをピックアップする前記ダイから離れる方向に前後に摺動させる第1の駆動手段と、前記離れる方向とは反対側の前記剥離ステージの端部側に設けられた回転軸に回転可能に設けられ前記ダイシングテープを線状に突き上げ剥離起点を形成する突き上げ部材と、前記突き上げ部材を前記ダイシングテープに突き上げる第2の駆動手段とを備える突き上げユニットと、前記ダイを吸着する吸着部材と、前記吸着部材と前記ダイとの間に発生するエアリーク流量に基づいて前記ダイの状態を判断する第1の判断手段と、前記吸着部材で吸着され前記突き上げられた前記ダイを前記ダイシングテープから剥離して基板に装着するボンディングヘッドと、を有することを第1の特徴とする。
【0011】
また、本発明は、複数のダイを粘着しているダイシングテープを吸着保持し、凹部を備える支持ステージと、前記凹部の低部を摺動する剥離ステージとを備え、前記ダイを吸着部材で吸着する吸着ステップと、前記ダイと前記吸着部材との間に発生するエアリーク流量に基づいて前記ダイの状態を判断する第1の判断ステップと、前記ダイを吸着した状態で前記剥離ステージを前記ダイから離れる方向に摺動させる摺動ステップと、前記離れる方向とは反対側の前記剥離ステージの端部側において前記ダイシングテープを線状に突き上げ剥離起点を形成する剥離起点形成ステップと、前記ダイを前記ダイシングテープから剥離する剥離ステップと、前記剥離した後に、前記剥離ステージを元の位置に戻す戻しステップと、前記ダイをワークに装着するステップと、を有することを第2の特徴とする。
【0012】
さらに、本発明は、前記第1の判断は、前記突き上げ部材が前記剥離起点を形成するときに、前記エアリーク流量に基づいて、前記ダイが前記剥離起点を有しているかどうかを判断することを第3の特徴とする。
また、本発明は、前記第1の判断は、前記ダイが前記剥離起点を有していないと判断したときに、再度前記吸着部材が前記ダイを吸着させてから前記ダイが前記剥離起点を有しているかどうかを判断することを第4の特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は、前記第1の判断は、前記剥離ステージをピックアップする前記ダイから離れる方向への移動が完了したときに、前記エアリーク流量に基づいて前記ダイのクラックの有無を判断することを第5の特徴とする。
また、本発明は、前記剥離起点の形成の有無を判断が無しのときに、その原因を判断する第2の判断をすることを第6の特徴とする。
【0014】
さらに、本発明は、前記剥離ステージの端部側に設けられた回転軸に回転可能に設けられ、前記ダイシングテープを線状に突き上げる突き上げ部材を突き上げることを第7の特徴とする。
【0015】
さらに、本発明は、前記突き上げ部材の傾斜角度を予め調整し、前記傾斜角度に設定することを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
【0017】
また、本発明によれば、クラックの異常が発生しても検出でき、信頼性の高いダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態であるダイボンダを上から見た概念図である。
【図2】本発明の実施形態であるピックアップ装置の外観斜視図を示す図である。
【図3】本発明の実施形態であるピックアップ装置の主要部を示す概略断面図である。
【図4】本実施形態における突き上げユニットの概略構成を示した側面図である。
【図5】図4に示した突き上げユニットの上面を模式的に示した図である。
【図6】回転軸の回転によって、剥離ステージが図4に示す矢印J方向に移動する原理を示した図である。
【図7】本実施形態の突き上げユニットよるダイのピックアップフローを示す図である。
【図8】図7に示す主要ステップにおけるステージ部及び突き上げ部の状態を示す図である。
【図9】剥離起点が形成されているかをチェックするチェックフローを示す図である。
【図10】ピックアップ時におけるコレット40に流れるエアリーク流量Lの推移曲線を示す図である。
【図11】剥離起点形成時に生じたクラック及びクラックによるエアリークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態であるダイボンダ10を上から見た概念図である。ダイボンダは大別してウエハ供給部1と、ワーク供給・搬送部2と、ダイボンディング部3とを有する。
【0020】
ワーク供給・搬送部2はスタックローダ21と、フレームフィーダ22と、アンローダ23とを有する。スタックローダ21によりフレームフィーダ22に供給されたワーク(リードフレーム又は基板等)は、フレームフィーダ22上の2箇所の処理位置を介してアンローダ23に搬送される。
ダイボンディング部3はプリフォーム部31とボンディングヘッド部32とを有する。プリフォーム部31はフレームフィーダ22により搬送されてきたワークにダイ接着剤を塗布する。ボンディングヘッド部32は、ピックアップ装置12からダイをピックアップして上昇し、ダイを平行移動してフレームフィーダ22上のボンディングポイントまで移動させる。そして、ボンディングヘッド部32はダイを下降させダイ接着剤が塗布されたワーク上にボンディングする。
【0021】
ウエハ供給部1はウエハカセットリフタ11とピックアップ装置12とを有する。ウエハカセットリフタ11はウエハリングが充填されたウエハカセット(図示せず)を有し,順次ウエハリングをピックアップ装置12に供給する。
【0022】
次に、図2および図3を用いてピックアップ装置12の構成を説明する。図2はピックアップ装置12の外観斜視図を示す図である。図3はピックアップ装置12の主要部を示す概略断面図である。図2、図3に示すように、ピックアップ装置12はウエハリング14を保持するエキスパンドリング15と、ウエハリング14に保持され複数のダイ(チップ)4が粘着されたダイシングテープ16を水平に位置決めする支持リング17と、支持リング17の内側に配置されダイ4を上方に突き上げるための突き上げユニット50とを有する。突き上げユニット50は、図示しない駆動機構によって、上下方向に移動するようになっており、水平方向にはピックアップ装置12が移動するようになっている。
【0023】
ピックアップ装置12は、ダイ4の突き上げ時に、ウエハリング14を保持しているエキスパンドリング15を下降させる。その結果、ウエハリング14に保持されているダイシングテープ16が引き伸ばされ、ダイ4の間隔が広げ、突き上げユニット50によりダイ下方よりダイ4を突き上げる。ダイ4の間隔の広がりによって、ダイ4のピックアップ性が向上する。なお、薄型化に伴い接着剤は液状からフィルム状となり、ウエハとダイシングテープ16との間にダイアタッチフィルム18と呼ばれるフィルム状の接着材料を貼り付けている。ダイアタッチフィルム18を有するウエハでは、ダイシングはウエハとダイアタッチフィルム18に対して行なわれる。従って、剥離工程では、ウエハとダイアタッチフィルム18をダイシングテープ16から剥離する。
【0024】
図4は、本実施形態における突き上げユニット50の概略構成を示した側面図である。図5は図4に示した突き上げユニット50の上面を模式的に示した図である。
突き上げユニット50は、ダイ4を有するダイシングテープ16を支持するステージ部60と、ダイシングテープを突き上げる突き上げ部70と、突き上げ部を駆動する駆動部80と、真空室55、ユニット筐体51とを有する。なお、40はダイ4を吸着する吸着手段であるコレットで、35はコレットで吸着したダイ4をワークに装着するボンディングヘッドである。
【0025】
ステージ部60は、ダイシングテープ16を支持し支持ステージ64と、支持ステージ64に形成され後述する剥離ステージ71が摺動するコの字状の凹部61と、凹部61の底部61a(以下、凹部底部という)に設けられ、凹部61の周囲に複数列設けられた多数の吸着孔63とを有する。
【0026】
突き上げ部70は、ステージ部60に設けられた凹部61を摺動する剥離ステージ71と、剥離ステージ71に設けられた回転軸72aを中心に回転可能な奥行き方向に細長い突き上げ板72と、突き上げ板72を突き上げる中間部品91と、中間部品91を突上げる突き上げピン73とを有する。剥離ステージ71は、上面にダイ4の面積より広い平坦部71aと、突き上げ板72と反対側が傾斜部71bとを有する。また、剥離ステージ71の底面は、凹部底部61aと摺動し易いに様に、互いに滑り易い部材で構成されている。
【0027】
中間部品91は、底部に突き上げピン73が往復し、突き上げピン73の回転運動を直動に変える回転直動変換溝78がある。また、中間部品91の上部は、突き上げ板72に挿入される挿入部92がある。挿入部92には2本の軸93が両外側に延びている。軸93は、突き上げ板72の端部72eに設けた貫通穴72dに回転可能に保持される。なお、突き上げ板72は、中間部品91の挿入部92が挿入できるように、その一部を削ってある。また、凹部底部61aは剥離ステージ71が両側部分と、中間部品91又は挿入部92が移動できるように空間部を有する。
【0028】
ステージ部60の凹部61は、図5に示すように、剥離ステージ71が紙面上下に振れないような幅と、上部と突き上げピン73の反対側の側部に開放部61bを有する。溝62は、後述する吸引室に連通し、剥離ステージ71の移動によってできる凹部底部61aとの空間を真空にした剥離補助空間75(図8の(iv)参照)を形成する。剥離補助空間75が真空になると、ダイシングテープ16が凹部底部側に吸引され、ダイシングテープが剥離又は剥離され易い状態になる。吸着孔63は凹部61以外の領域にあるダイシングテープ16をステージ部60の上面に固定する。
【0029】
駆動部80は、スプライン軸を中心に回転させる回転軸81と、回転軸81を含め全体を昇降させる昇降軸86とを有する。
回転軸81は、突き上げピン73を周囲に設けた回転板82と、回転板82に固定され回転板82を矢印H方向に回転させるスプライン83と、ベルト84を介してスプライン83を回転させる回転用モータと85と有する。スプライン83は、回転板82に固定されたスプライン軸83aと、スプライン軸を回転させるスプライン歯車82bと、スプライン軸を回転可能に支持する軸受け83cと、を有する。
一方、昇降軸86は、回転軸81を支持し回転軸を昇降する昇降板87、昇降板に設けられたナット88nと、ナット88nを矢印Iの方向に昇降させるボールジョイント88bと、ボールジョイントを駆動し、ユニット筐体51に固定された昇降用モータ89とを有する。
【0030】
真空室55は、後述する凹部底部61aに設けられた溝62に連通し、剥離補助空間75を形成する吸引室56と、吸着孔63が連通する吸着室57とを有する。吸引室56と吸着室57は、それぞれ接続部56a、57aなど接続ラインを介して図示しない真空装置に接続されている。従って、吸着室57(吸着孔63)によるピックアップするダイの周辺のダイシングテープ16の吸着と、吸引室56(剥離補助空間75)によるダイシングテープ16の吸引とは別々に制御できる。また、吸引室56は、駆動部80を有するユニット筐体51の内部との真空分離し、突き上げピン73を昇降可能にする蛇腹構造を備えるシール部56bを有する。一方、吸着室57は、吸引室56と干渉しないように設けている。
【0031】
なお、図4は、駆動部80の昇降軸86によって突き上げピン73が矢印I方向に上昇し、中間部品91が突き上げ板72を突き上げ、奥行き方向に細長い突き上げ板72がダイシングテープ16と線状に接し押し上げている状態を示している。
【0032】
次に、回転軸81の回転によって、剥離ステージ71が図4に示す矢印J方向に移動する原理について図6を用いて説明する。図6は図の煩雑さ避けるために回転板82を凹部底部61aから離間して示している。
図6に示すように、中間部品91の底部には、回転軸81の回転に伴い、突き上げピン73が回転しながら移動し、突き上げピン73の回転運動を直動に変える回転直動変換溝78が設けられている。突き上げピン73の力は、中間部品91に伝達される。中間部品91は、突き上げ板72と回転可能に保持されているので、上方に加わる力は突き上げ板72を押し上げ、回転力は突き上げ板72をJ方向に移動させる。
また、剥離ステージ71には、突き上げ板72と接触する段差部があって、この段差部が突き上げ板72からJ方向に加わる力を受けて、剥離ステージ71がJ方向に移動する。
【0033】
なお、回転直動変換溝78は、回転板82の回転によって突き上げピン73が移動できるような溝、例えば長方形であってもよい。
この結果、剥離ステージ71は、凹部61の移動方向Jの両側側部に沿って、中間部品91を介して突き上げピン73によって押されながら矢印J方向に移動できる。
【0034】
次に、本実施形態におけるダイのピックアップ方法について図7、図8を用いて説明する。図7は、ダイのピックアップフローを示し、図8は、図7に示す主要ステップにおけるステージ部60及び突き上げ部70の状態を示す図である。
【0035】
まず、ピックアップ装置12によりピックアップするダイ4pを突き上げユニット50のピックアップ位置に移動させる。その後、吸着室57を真空にし、吸着孔63によりダイシングテープ16をステージ部60の上面に吸着保持する(ステップ1、図8の(i))。本実施例でのピックアップ位置は、剥離ステージ71及び突き上げ板72が形成するエリアとなる。
【0036】
次に、コレット40をダイ4pに着地させ、ダイ4pを吸着する(ステップ2、図8の(ii))。その後、突き上げ板72の傾斜角度を設定し、所定の時間で突き上げピン73を図4に示すように上昇させ、ダイ4をダイシングテープから剥離するための剥離起点を形成する(ステップ3、図8の(iii))。剥離起点とは、ダイシングテープ16の一部を突き上げることダイ4をダイシングテープから剥離しし易くする起点をいう。起点と言っても点だけでなく、本実施形態のように線状のような状態も含む。傾斜角度は突き上げピン73の上昇位置によって調節でき、予め定められた適切な傾斜角度に設定可能である。例えば、大きな部品では角度を大きく、小さな部品では角度を小さく設定する。その後、剥離ステージ71が移動する剥離補助空間75を吸引室56、溝62を経て真空にする(ステップ4)。剥離補助空間75を真空するための吸引はステップ1から実施してもよい。
【0037】
次に、突き上げ板72の傾斜角度を維持しながら、図5に示すように、所定時間回転軸81により突き上げピン73を回転させ、剥離ステージ71を凹部61の開放側61b(図8の(iii)参照)に、即ち矢印J方向にスライドさせる(ステップ5、図8の(iv))。このとき、ダイシングテープ16との接触部は突き上げ板72の一部分であり、剥離ステージ71の移動の負荷にはならない。従って、剥離ステージ71は、滑らかな面を有する凹部底部61aをスムーズに移動できる。また、剥離ステージ71が移動した後には、前述したように凹部底部61aとダイシングテープ16との間の剥離補助空間75に真空が形成され、ダイシングテープが剥離または剥離し易い状態になる。
【0038】
次に、ダイシングテープが剥離または剥離し易い状態で、コレット40を上昇させ、ダイ4pをダイシングテープ16から完全に剥離させ、ピックアップする(ステップ6、図8の(v))。一定時間後、剥離補助空間75の真空を解除し(ステップ7)、回転軸81をステップ3とは逆方向に回転させ、剥離ステージ71を元の位置にスライドさせる(ステップ8、図8の(vi))。このとき、剥離補助空間75が真空であるとダイシングテープ16が凹部底部61a側に吸い込まれ、剥離ステージ71に移動の負荷のとなり、戻り難くなる。
【0039】
次に、吸着室57の真空を解除し、ダイシングテープ16のステージ部60の上面における吸着保持を解除する(ステップ9)。所定数、ダイ4のピックアップ処理をしたかを判断し(ステップ10)、所定数に達していなければステップ1に行き処理を繰り返す。所定数に達していれば処理を終了する。
【0040】
図8のダイ4のピックアップフローのステップ3(図8の(iii)において、突き上げ板72でダイシングテープ16及びダイ4を突き上げ、剥離起点を形成する。この剥離起点が形成されていない状態で剥離ステージ71を移動させると、剥離ステージ71はダイシングテープ16と面接触をしながら移動するので、ダイ4に負担が掛かりクラックを起し易くなる。特に、何枚も積層するダイ4の厚さが30μm以下と薄いダイにはその影響が大きいものがある。そこで、剥離ステージ71を移動させる前に剥離起点が形成されているかをチェックすることが重要である。剥離起点が形成されない原因とは、何らかの原因で既にクラックが発生している、剥離起点を形成するときにクラックが発生した、或いはダイの剥離ステージへの載置位置がずれているなどが挙げられる。
【0041】
また、剥離起点が形成されていたとしても、スライドが終了した図7のステップ5((図8の(iv)において、念のためにクラックが発生しているかいなかを再度チェックする。
【0042】
本実施形態では、ダイ4を吸着するときにダイ4とコレット40の隙間によって流れるエアリーク流量Lでチェックする。コレット40は、ダイ4を吸着する保持するために先端吸引孔41を先端側に複数有し、複数の先端吸引孔41がコレット軸42の存在する共通吸引孔43に集められ図示しない真空装置に接続されている。そこで、共通吸引孔43に流れるエア流量がエアリーク流量Lとなる。
【0043】
図9は、剥離起点が形成されているかをチェックする観点から図7の処理フローを見直したチェックフローを示す図である。図10は、ピックアップ時におけるコレット40に流れるエアリーク流量Lの推移曲線を示す図である。破線は、剥離起点が形成されており正常に動作した時の推移曲線であり、実線は剥離起点が形成されていない場合の推移曲線を示す。両推移曲線は分かり易くするために少し縦方向にずらして描いている。図10は、剥離起点が形成されていない分かり易い、図11に示す剥離起点を形成したときにクラックが発生した例を示している。
【0044】
まず、図7と同様に、ピックアップ装置12によりピックアップするダイ4pを突き上げユニット50のピックアップ位置に移動させる。その後、吸着室57を真空にし、吸着孔63によりダイシングテープ16をステージ部60の上面に吸着保持する(ステップ21)、時間t0からコレット40のエアを吸引し、コレット40を剥離ステージ71に着地させる(ステップ22)。ステップ22におけるエアリーク流量の推移は、エア吸引開始t0からコレット40が剥離ステージまで着地する時間tcまで増加し、着地した後は徐々に低下し、時間tkには流量はコレット40がダイ4を確りと吸着できるエアリーク流量Loまで低下する。流量Loはコレット40の整形度やコレットとステージ部60の密着度等で規定される。
【0045】
次に、突き上げ板72により線状の剥離起点を形成する(ステップ23)。剥離起点が形成されると、図8の(iii)に示すように、ダイ4の一端側は押し上げられ変形し、ダイ4とコレットの間には、突き上げ板72から凹部底部61の開放側61bに向って隙間Sができる。その結果、剥離起点が形成されている推移曲線は、破線で示すように剥離起点の形成開始時間ts後、その隙間による一定のエアリーク流量Lhがスライド開始時間tuまで発生する。
【0046】
一方、図11(中間部品91は省略)に示すように、ダイ4の端面が突き上げ板72の突き上げによりクラックKが発生し、これによってクラックK側にエアリーク流量を増大させる隙間SWが発生し、隙間SWによるエアリーク流量に隙間Sによるエアリーク流量LMを加えたエアリーク流量Laが時間taに発生する。
【0047】
そこで、剥離起点の形成がされているかどうかを、エアリーク流量Lを監視しチェックするリークチェック1を実施する(ステップ24)。ダイ4の寸法や突き上げ板72の突き上げ量によっても異なるが、例えば2リットル/分以下あれば正常tp判断し、2リットル/分以下になるまで所定時間その状態で待機し、2リットル/分以下になれば次のステップに移行する。
【0048】
所定時間以内に2リットル/分以下にならない場合は、DAF(Die Attach Film)切断不良などの原因で剥離できないか、又はクラックが発生したと判断する。
【0049】
コレット40は、更に一定時間(ステップ22の開始時間からステップ23の終了時間)、エアを吸引し続けるリーク待ちを行う(ステップ32)。このようにすることで、DAF切断不良により剥離できないダイを剥離することができる場合がある。リーク待ち(ステップ32)を行った後、後述するようにエラー処理1を行なう(ステップ30)。
【0050】
剥離起点が形成されない原因の一つである載置位置がずれている場合は、剥離起点形成効果が出てこないから、即ち隙間が発生しない、又は発生しても隙間量は小さいから、エアリーク流量Lは増加せずLoに維持される又はエアリーク流量Laが小さくなく。一方、既にクラックが発生している場合は、クラックの位置にエアリーク量Lが異なり、剥離起点形成時と異なる値を示せば検出できるが、この段階では検出できない場合もある。
【0051】
剥離起点が形成されていると判断されれば、図7のステップ5でも述べたように、剥離ステージ71のスライド動作を行ない、剥離起点を移動させて次々とダイ4を浮き上がらせ、コレット40に密着させて行く(ステップ25)。このときダイ4がコレット40に密着して行くにつれリークさせる辺が徐々に減少して行くのに伴いエアリーク流量Lも徐々に減少していく。そして、最終的にはダイ4は、図8の(iv)に示すように、剥離起点から離れ剥離補助空間75の上でコレット40に完全に吸着される。なお、徐々に減少して傾向はクラックを有するダイにおいても同じである。
【0052】
スライド動作が完了した後に再度移動中にクラックの以上が発生したかどうかをチェックするリークチェック2を実施する(ステップ26)。クラックが発生していなければ、エアリーク流量Lはステップ22で示したLo程度になっているはずである。クラックが発生していると、そのクラック付近からエアリークが発生しエアリーク流量LがLoより増える。従って、剥離ステージ71の移動後に発生したクラックと共に、ステップ24で検出できなかった剥離起点形成前のクラックも検出できる。
【0053】
リークチェック2のエアリーク流量Loの判断基準は、剥離起点形成によって発生するエアリーク流量を許容する判断基準よりも数段厳しくなる。ダイ4の寸法にもよるが、例えば0.5リットル/分以下ならば正常と判断する(ステップ25)。正常と判断したならば、図8に示すステップ6からステップ11に対応するステップ27の処理を行なう。正常ではないと判断したならば後述エラー処理2(ステップ31)を行なう。
【0054】
エラー処理1では、まずコレット40は、更に一定時間、エアを吸引し続けるリーク待ち(ステップ32)を行った後、DAF切断不良により剥離できないダイを剥離することができる場合があるので、ステップ24と同様のリークチェック再度行う。リークチェックでOKとなれば、ステップ25以下の動作を行う。一方、このリークチェックでもリークしている場合には、エアリーク流量Lに基づいてエラー原因を判定する。例えばエアリーク流量がLaならばクラックが発生していると判断し、Loならば剥離ステージへの載置位置の位置ずれと判断する。クラック発生の場合はダイ4をピックアップできるのであれば、ピックアップし廃棄処理を行なう。ピックアップできなければ、次のダイのスライド移動の障害となるので、ダイシングテープ上にダイが列状に並んでいる次に列の先頭に移動してステップ21に行く又は装置を停止させ当該ダイを取り除き、ステップ28から再開する。載置位置の位置ずれの場合は、図9に図示していないが、ダイシングテープ16の吸着を解除に、ステップ21からやり直す。
【0055】
エラー処理2ではエアリーク量Lは小さいので基本的にピックアップでき、廃棄処理を行ない、ステップ28に行く。
【0056】
以上説明した本実施形態によれば、突き上げ板72の角部で剥離起点を形成でき、前記角部のみをダイシングテープ16と摺動させることで、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
【0057】
また、以上説明した本実施形態によれば、突き上げ板72の傾斜角度を適切な角度に設定でき、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
【0058】
さらに、以上説明した本実施形態によれば、エアリーク流量Lをチェックすることで、剥離起点形成を判断でき、クラック発生を抑制し、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
【0059】
さらに、以上説明した本、実施形態によれば、クラック発生を検知でき信頼性の高いダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
【0060】
以上のように本発明の実施形態を説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0061】
1:ウエハ供給部 2:ワーク供給・搬送部
3:ダイボンディング部 4:ダイ(半導体チップ)
10:ダイボンダ 12:ピックアップ装置
16:ダイシングテープ 32:ボンディングヘッド部
35:ボンディングヘッド 40:コレット
41:先端吸引孔 42:コレット軸
43:コレット共通吸引孔 50:突き上げユニット
55:真空室 56:吸引室
57:吸着室 60:ステージ部
61:支持ステージの凹部 61a:凹部の底部(凹部底部)
62:突き上げピンが移動する溝 63:吸着孔
64:支持ステージ 70:突き上げ部
71:剥離ステージ 72:突き上げ板
72a:突き上げ板の回転軸 73:突き上げピン
75:剥離補助空間 78:回転直動変換溝
80:駆動部 81:回転軸
82:回転板 83:スプライン
84:ベルト 85:回転用モータ
86:昇降軸 87:昇降板
89:昇降用モータ K:クラック
L、La、Lc、Lm、Lo:エアリーク流量
S:凹部底部の開放側にできるダイとコレットの間の隙間
SW:凹部底部のクラック側にできるダイとコレットの間の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のダイを粘着しているダイシングテープを吸着保持し、凹部を備える支持ステージと、前記凹部の低部を摺動する剥離ステージと、前記剥離ステージをピックアップする前記ダイから離れる方向に前後に摺動させる第1の駆動手段と、前記離れる方向とは反対側の前記剥離ステージの端部側に設けられた回転軸に回転可能に設けられ前記ダイシングテープを線状に突き上げ剥離起点を形成する突き上げ部材と、前記突き上げ部材を前記ダイシングテープに突き上げる第2の駆動手段とを備える突き上げユニットと、
前記ダイを吸着する吸着部材と、
前記吸着部材と前記ダイとの間に発生するエアリーク流量に基づいて前記ダイの状態を判断する第1の判断手段と、
前記吸着部材で吸着され前記突き上げられた前記ダイを前記ダイシングテープから剥離して基板に装着するボンディングヘッドと、
を有するダイボンダ。
【請求項2】
前記第1の判断手段は、前記突き上げ部材が前記剥離起点を形成するときに、前記エアリーク流量に基づいて、前記ダイが前記剥離起点を有しているかどうかを判断することを特徴とする請求項1に記載のダイボンダ。
【請求項3】
前記第1の判断手段は、前記ダイが前記剥離起点を有していないと判断したときに、再度前記吸着部材が前記ダイを吸着させてから前記ダイが前記剥離起点を有しているかどうかを判断することを特徴とする請求項2に記載のダイボンダ。
【請求項4】
前記第1の判断手段は、前記剥離ステージをピックアップする前記ダイから離れる方向への移動が完了したときに、前記エアリーク流量に基づいて前記ダイのクラックの有無を判断することを特徴とする請求項1に記載のダイボンダ。
【請求項5】
前記剥離起点の形成の有無を判断が無しのときに、その原因を判断する第2の判断手段を有することを特徴とする請求項3に記載のダイボンダ。
【請求項6】
前記原因はクラック又は前記ダイの前記剥離ステージへの載置位置ずれであることを特徴とする請求項5に記載のダイボンダ。
【請求項7】
前記突き上げ部材は細長い板であり、前記第2の駆動手段は、前記突き上げ部材の前記回転軸と反対側を突き上げる突き上げピンと、前記突き上げピンを昇降させる昇降手段とを有することを特徴とする請求項1に記載のダイボンダ。
【請求項8】
前記凹部は前記剥離ステージの前記離れる方向とは反対側に前記突き上げ部材を載置可能な傾斜部を有し、前記突き上げ部材は細長い板であり、前記第2の駆動手段は、前記回転軸から離間した位置に前記細長い板の長辺に沿って設けられた突起部と、前記第1の駆動手段とを有することを特徴とする請求項1に記載のダイボンダ。
【請求項9】
前記突き上げ部材の傾斜角度を予め調整し、前記傾斜角度に設定することを特徴とする請求項1に記載のダイボンダ。
【請求項10】
複数のダイを粘着しているダイシングテープを吸着保持し、凹部を備える支持ステージと、前記凹部の低部を摺動する剥離ステージとを備え、
前記ダイを吸着部材で吸着する吸着ステップと、
前記ダイと前記吸着部材との間に発生するエアリーク流量に基づいて前記ダイの状態を判断する第1の判断ステップと、
前記ダイを吸着した状態で前記剥離ステージを前記ダイから離れる方向に摺動させる摺動ステップと、
前記離れる方向とは反対側の前記剥離ステージの端部側において前記ダイシングテープを線状に突き上げ剥離起点を形成する剥離起点形成ステップと、
前記ダイを前記ダイシングテープから剥離する剥離ステップと、
前記剥離した後に、前記剥離ステージを元の位置に戻す戻しステップと、
前記ダイをワークに装着するステップと、
を有することを特徴とするボンディング方法。
【請求項11】
前記第1の判断ステップは、前記剥離起点を形成するときに、前記エアリーク流量に基づいて、前記ダイが前記剥離起点を有しているかどうかを判断することを特徴とする請求項10に記載のボンディング方法。
【請求項12】
前記第1の判断ステップは、前記ダイが前記剥離起点を有していないと判断したときに、再度前記吸着部材が前記ダイを吸着させてから前記ダイが前記剥離起点を有しているかどうかを判断することを特徴とする請求項11に記載のボンディング方法。
【請求項13】
前記第1の判断ステップは、前記剥離ステージをピックアップする前記ダイから離れる方向に移動した完了したときに前記エアリーク流量に基づいて前記クラックの有無を判断することを特徴とする請求項10に記載のボンディング方法。
【請求項14】
前記剥離起点の形成の有無を判断が無しのときに、その原因を判断する第2の判断ステップを有することを特徴とする請求項12に記載のボンディング方法。
【請求項15】
前記原因はクラック又は前記ダイの前記剥離ステージへの載置位置ずれであることを特徴とする請求項14に記載のボンディング方法。
【請求項16】
前記剥離ステージの端部側に設けられた回転軸に回転可能に設けられ、前記ダイシングテープを線状に突き上げる突き上げ部材を突き上げることを特徴とする請求項10に記載のボンディング方法。
【請求項17】
前記突き上げ部材の傾斜角度を予め調整し、前記傾斜角度に設定することを特徴とする請求項16に記載のボンディング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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