説明

ダイヤルアップルータおよびその制御プログラム

【課題】携帯電話端末が接続された段階で、ネットワーク端末のインターネット接続を可能にしたダイヤルアップルータを提供する。
【解決手段】ダイヤルアップルータ1は、携帯電話端末4を介して、ISPに対して回線の接続を行い、DNSのIPアドレスを含んだアドレス情報を取得するPPP接続手段12と、アドレス情報を記憶するアドレス記憶手段13と、ネットワーク端末5から要求された更新依頼に対して、LAN側のIPアドレスの範囲から未使用のアドレスを割り当てて、有効期限を示すIPアドレス割り当て時間とともにネットワーク端末5に配信するIPアドレス割り当て手段14と、を備え、IPアドレス割り当て手段14は、アドレス記憶手段13にDNSサーバのIPアドレスが記憶されていない場合に、IPアドレス割り当て時間を短い時間に設定してネットワーク端末5に配信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話端末を利用してインターネット接続を行うためのダイヤルアップルータおよびその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット接続された任意のインターネット機器とインターネットプロトコル(IP:Internet Protocol)により通信を行う場合、通信先のインターネット機器のホスト名およびドメイン名からなるURL(Uniform Resource Locator)を、数値で表される実際のアドレスに変換するために、DNS(Domain Name System)サーバを参照することが一般的である。
【0003】
また、DNSサーバを参照するには、接続するネットワークに固有のDNSサーバのIPアドレスを取得する必要があるが、その手法として、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバを利用する方法がある。
【0004】
通常、DHCPサーバには、DNSサーバのIPアドレスや、クライアントに割り当ててもよいIPアドレスの範囲が設定されている。この場合、図8に示すように、DNSサーバのIPアドレス等の取得を希望するDHCPクライアント(機器B)が、DHCPサーバ(機器A)に対し、更新依頼(情報の要求)を行う(S10)ことで、機器Aが、機器BにDNSサーバのIPアドレス等を配信する(S11)。
【0005】
また、このようなインターネット接続を一般家庭内で行う場合、すなわち、家庭内のインターネット機器をインターネット接続する場合、しばしばダイヤルアップルータが用いられる(例えば、特許文献1等参照)。この場合、図9に示すように、ダイヤルアップルータは、起動時に、インターネットサービスプロバイダ(ISP:Internet Services Provider)にPPP(Point to Point Protocol)接続の依頼(接続依頼)を行う(S20)。そして、ISPがDNSサーバのIPアドレスをダイヤルアップルータに配信する(S21)。その後、ダイヤルアップルータは、ダイヤルアップルータ内のDHCPサーバによって、家庭内のインターネット機器(LAN側機器)からの更新依頼(S22)に対して、DNSサーバのIPアドレス等を配信する(S23)。
【0006】
このとき、ダイヤルアップルータはインターネット網と常時接続され、ダイヤルアップルータは、PPP接続時に取得したDNSサーバのIPアドレスを保持しておき、随時接続されるLAN側機器の更新依頼に応じてDNSサーバのIPアドレスを配信する。
【0007】
一方、最近では、デジタルテレビ受信機等の家庭内機器が、インターネットを介して情報の送受信を行う機能を有するようになってきた。しかし、このような家庭内機器の多くは、ISPとの間で常時接続の環境が整っていないのが現状である。このような環境においては、携帯電話端末をインターネット接続手段として用いることが簡便であり、日ごろ持ち歩いている携帯電話端末を、在宅時にのみダイヤルアップルータに接続し、インターネット網へ接続する手段として利用する技術が開発されている(非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−273892号公報
【非特許文献1】“無線LANルータ(CQW−HPMM−ER)”、[online]、平成19年1月26日、プラネックスコミュニケーションズ株式会社、[平成19年9月18日検索]、インターネット<URL:http://www.planex.co.jp/release/pdf/20070126_cqw-hpmm-er.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、携帯電話端末をインターネット網へ接続する手段として利用する場合、例えば、外出時に携帯電話端末をダイヤルアップルータから外し、帰宅時に携帯電話端末をダイヤルアップルータに接続するといった携帯電話端末の着脱が行われる。この場合、携帯電話端末のダイヤルアップルータへの接続のタイミングと、LAN側機器のインターネット接続のタイミングとの前後関係によっては、インターネット接続ができないという問題が発生する。
【0009】
例えば、図10に示すように、携帯電話端末がダイヤルアップルータに接続されていない段階で、LAN側機器がダイヤルアップルータに接続された場合、ダイヤルアップルータは、DNSサーバのIPアドレスを取得していないため、LAN側機器からの更新依頼(S30)に対して、IPアドレスの情報を含まない応答が配信されることになる(S31)。その後、携帯電話端末がダイヤルアップルータに接続された場合、ダイヤルアップルータは、接続を検知したタイミングあるいは所定期間でISPにPPP接続の依頼(接続依頼)を行うことで(S32)、DNSサーバのIPアドレスを取得する(S33)。この場合、ダイヤルアップルータは、LAN側機器からの更新依頼がない限り、DNSサーバのIPアドレス等の情報を配信することができないため、LAN側機器は通信不可の状態となり、インターネット接続を行うことができない。
【0010】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、携帯電話端末の接続のタイミングによらず、短い待ち時間で、LAN側機器がインターネット接続を行うことを可能にしたダイヤルアップルータおよびその制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、まず、請求項1に記載のダイヤルアップルータは、携帯電話端末を接続するためのWAN側接続ポートと、ネットワーク端末を接続するためのLAN側接続ポートとを備え、ダイヤルアップ接続により、前記ネットワーク端末を、インターネット網に接続するダイヤルアップルータにおいて、PPP接続手段と、PPP接続手段で取得したDNSサーバのIPアドレスを含んだアドレス情報を記憶するアドレス記憶手段と、IPアドレス割り当て手段と、を備え、前記IPアドレス割り当て手段は、前記アドレス記憶手段に前記DNSサーバのIPアドレスが記憶されていない場合に、IPアドレス割り当て時間を、前記DNSサーバのIPアドレスが記憶されている場合に比べて短い時間に設定して前記ネットワーク端末に配信する構成とした。
【0012】
かかる構成において、ダイヤルアップルータは、PPP接続手段によって、WAN側接続ポートに接続された携帯電話端末を介して、予め定めたインターネットサービスプロバイダに対して回線の接続(PPP接続)を行い、DNSサーバのIPアドレスを含んだアドレス情報を取得する。そして、ダイヤルアップルータは、アドレス記憶手段にアドレス情報を記憶する。これによって、ネットワーク端末がインターネット接続を行うために必要なアドレス情報が、ダイヤルアップルータ内に保持される。
【0013】
そして、ダイヤルアップルータは、IPアドレス割り当て手段によって、LAN側接続ポートに接続されたネットワーク端末から要求されたIPアドレスの要求を含んだ更新依頼要求に対して、予め定めたLAN側のIPアドレスの範囲から、未使用のIPアドレスを割り当てて、当該IPアドレスの有効期限を示すIPアドレス割り当て時間とともにネットワーク端末に配信する。
【0014】
なお、PPP接続と、ネットワーク端末からの更新依頼とは、非同期処理である。そこで、ダイヤルアップルータは、IPアドレス割り当て手段によって、アドレス記憶手段にDNSサーバのIPアドレスが記憶されている場合には、IPアドレスの有効期限であるIP割り当て時間を長い時間(例えば、1日〜数日程度)に設定し、IPアドレスが記憶されていない場合には、IPアドレス割り当て時間を、短い時間(例えば、1分〜数分程度)に設定してネットワーク端末に配信する。これによって、PPP接続が完了していない状態においては、ネットワーク端末が短い間隔で、更新依頼要求をダイヤルアップルータに要求することになり、PPP接続が完了している状態においては、ネットワーク端末が長い間隔で、更新依頼要求をダイヤルアップルータに要求することになる。
【0015】
また、請求項2に記載のダイヤルアップルータは、請求項1に記載のダイヤルアップルータにおいて、前記WAN側接続ポートの電圧変化に基づいて、前記携帯電話端末の前記WAN側接続ポートへの接続を検出する接続検出手段をさらに備え、前記PPP接続手段が、前記接続検出手段によって前記携帯電話端末の接続を検出した段階で、前記インターネットサービスプロバイダに対して接続の要求を行う構成とした。
【0016】
かかる構成において、ダイヤルアップルータは、接続検出手段で携帯電話端末の接続を検出した段階で、PPP接続手段によってPPP接続を開始する。これによって、ダイヤルアップルータは、携帯電話端末の接続を検出した段階で、アドレス情報を取得しインターネット接続環境を整えることができる。
【0017】
さらに、請求項3に記載のダイヤルアップルータは、請求項2に記載のダイヤルアップルータにおいて、前記接続検出手段が、前記WAN側接続ポートの電圧変化に基づいて、前記携帯電話端末の前記WAN側接続ポートからの切断を検出する機能を有し、前記PPP接続手段が、前記接続検出手段によって前記携帯電話端末の前記WAN側接続ポートへの接続後に前記携帯電話端末の切断を検出した段階で、前記アドレス記憶手段に記憶されているアドレス情報を初期化する構成とした。
【0018】
かかる構成において、ダイヤルアップルータは、携帯電話端末のWAN側接続ポートへの接続後に携帯電話端末の切断を検出した段階で、アドレス記憶手段に記憶されているアドレス情報を初期化するため、その後に更新依頼要求を行ったネットワーク端末に対して、短いIPアドレス割り当て時間を設定することが可能になる。
【0019】
また、請求項4に記載のダイヤルアップルータは、携帯電話端末を接続するためのWAN側接続ポートと、ネットワーク端末を接続するためのLAN側接続ポートとを備え、ダイヤルアップ接続により、前記ネットワーク端末を、インターネット網に接続するために、ダイヤルアップルータのコンピュータを、携帯電話端末を介して、予め定めたインターネットサービスプロバイダに対して回線の接続を行い、DNSサーバのIPアドレスを含んだアドレス情報を取得して、アドレス記憶手段に記憶させるPPP接続手段、ネットワーク端末から要求されたIPアドレスの要求を含んだ更新依頼要求に対して、予め定めたLAN側のIPアドレスの範囲から、未使用のIPアドレスを割り当てて、当該IPアドレスの有効期限を示すIPアドレス割り当て時間とともに前記ネットワーク端末に配信するIPアドレス割り当て手段、として機能させ、前記IPアドレス割り当て手段は、前記アドレス記憶手段に前記DNSサーバのIPアドレスが記憶されていない場合に、IPアドレス割り当て時間を、前記DNSサーバのIPアドレスが記憶されている場合に比べて短い時間に設定して前記ネットワーク端末に配信する構成とした。
【0020】
かかる構成において、ダイヤルアップルータ制御プログラムは、PPP接続手段によって、WAN側接続ポートに接続された携帯電話端末を介して、予め定めたインターネットサービスプロバイダに対して回線の接続(PPP接続)を行い、DNSサーバのIPアドレスを含んだアドレス情報を取得する。そして、ダイヤルアップルータ制御プログラムは、アドレス記憶手段にアドレス情報を記憶する。
【0021】
そして、ダイヤルアップルータ制御プログラムは、IPアドレス割り当て手段によって、LAN側接続ポートに接続されたネットワーク端末から要求されたIPアドレスの要求を含んだ更新依頼要求に対して、予め定めたLAN側のIPアドレスの範囲から、未使用のIPアドレスを割り当てて、当該IPアドレスの有効期限を示すIPアドレス割り当て時間とともにネットワーク端末に配信する。
【0022】
なお、ダイヤルアップルータ制御プログラムは、IPアドレス割り当て手段によって、アドレス記憶手段にDNSサーバのIPアドレスが記憶されている場合には、IPアドレスの有効期限であるIP割り当て時間を長い時間(例えば、1日〜数日程度)に設定し、IPアドレスが記憶されていない場合には、IPアドレス割り当て時間を、短い時間(例えば、1分〜数分程度)に設定してネットワーク端末に配信する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るダイヤルアップルータおよびその制御プログラムによれば、以下のような優れた効果を奏する。
【0024】
請求項1,4に記載の発明によれば、ダイヤルアップルータは、携帯電話端末が接続されていない場合、ネットワーク端末からの更新依頼に対して、短いIPアドレス割り当て時間を設定するため、携帯電話端末が接続されPPP接続が完了した段階で、ネットワーク端末は、短い待ち時間でインターネット接続を行うことが可能になる。また、本発明によれば、ダイヤルアップルータは、携帯電話端末が接続された状態では、ネットワーク端末からの更新依頼に対して、長いIPアドレス割り当て時間を設定するため、LAN側のローカルネットワークの負荷を軽減することができる。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、ダイヤルアップルータは、携帯電話端末が接続されたことを検出することができるため、携帯電話端末が接続された段階で、素早くインターネットに接続するための環境を整えることができる。これによって、ネットワーク端末は、ダイヤルアップルータに携帯電話端末を接続した後、素早くインターネット接続を行うことができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、ダイヤルアップルータは、携帯電話端末を外した段階でアドレス情報を初期化するため、初期化後のネットワーク端末からの更新依頼に対して、短いIPアドレス割り当て時間を設定する。これによって、再度、携帯電話端末が接続されPPP接続が完了した段階で、ネットワーク端末は、短い待ち時間でインターネット接続を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[インターネット接続環境]
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータを利用したインターネット接続環境について、概要を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータを利用したインターネット接続環境を模式的に示した模式図である。
【0028】
ダイヤルアップルータ1は、携帯電話端末4を用いて、ダイヤルアップ接続により、デジタルテレビ受信機等のネットワーク端末5をインターネット網に接続するものである。図1に示すように、ダイヤルアップルータ1は、宅内において、携帯電話端末4と、ネットワーク端末5(ここでは、デジタルテレビ受信機)を接続する。そして、ダイヤルアップルータ1は、携帯電話端末の通信事業者(図中、基地局8)により、公衆網Pを介して、携帯電話端末4からインターネットサービスプロバイダ(以下、ISPという)7に、PPP接続する。これによって、ネットワーク端末5は、携帯電話端末4を介して、インターネット網Nに接続が可能になり、例えば、デジタルテレビ受信機は、インターネット網Nに接続された放送局6との間で、地上デジタル放送等における双方向サービスを享受することが可能になる。
【0029】
[ダイヤルアップルータの構成]
次に、図2および図3を参照して、本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータの構成について説明する。図2は、本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータの外観の一例を示す背面図である。図3は、本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータの機能構成を示す機能ブロック図である。ここでは、ダイヤルアップルータ1は、図2に示すように、本体背面部にUSB(Universal Serial Bus)ポート2と、複数のLAN(Local Area Network)ポート3(3、…、3)とを備えている。なお、ここでは、各ポート2,3を本体背面部に配置しているが、本体正面部等、配置場所について限定されるものではない。
【0030】
USBポート(WAN側接続ポート)2は、USBケーブルを介して、携帯電話端末4と接続を行うための通信ポートである。なお、ここでは、WAN側接続ポートとして、USBポートを一例として示しているが、携帯電話端末4と接続可能なケーブルに対応した通信ポートであればよい。
【0031】
LANポート(LAN側接続ポート)3は、LANケーブルを介して、ネットワーク端末5と接続を行うための通信ポートである。なお、ここでは、ダイヤルアップルータ1は、LANポート3を5つ(3、…、3)備えた構成を例示しているが、この数はこれに限定されるものではない。また、このLANポート3は、例えば、10BASE−T、100BASE−TX等の通信規格に準拠した「RJ−45」のコネクタを有するLANケーブルが接続可能なものとする。
【0032】
また、ここでは、図3に示すように、ダイヤルアップルータ1は、USBインタフェース制御手段10と、LANインタフェース制御手段11と、PPP接続手段12と、アドレス記憶手段13と、IPアドレス割り当て手段14とを備えている。
【0033】
USBインタフェース制御手段(WAN側通信インタフェース手段)10は、USBポート2に接続された携帯電話端末4との間で、データの送受信を行うものである。なお、USBインタフェース制御手段10は、受信したデータでPPPのフレーム構造を有するデータについては、PPP接続手段12にデータを出力し、それ以外のデータについては、LANインタフェース制御手段11に出力する。また、ここでは、USBインタフェース制御手段10は、接続検出手段10aを備えている。
【0034】
接続検出手段10aは、USBケーブルを介して、USBポート2の電圧変換に基づいて、携帯電話端末4がUSBポート2に接続された、あるいは、切断されたことを検出するものである。この接続検出手段10aは、例えば、USBケーブルの「D+端子」または「D−端子」のいずれかが所定の電圧(3.3V)となったことを検出することで、携帯電話端末4が接続されたことを検出する。また、接続検出手段10aは、その電圧が元のレベルに戻ったことを検出することで、携帯電話端末4が切断されたことを検出する。なお、接続検出手段10aは、携帯電話端末4の接続を検出した場合、IPアドレス割り当て手段14にその旨を通知する。また、接続検出手段10aは、携帯電話端末4の切断を検出した場合、PPP接続手段12にその旨を通知する。
【0035】
LANインタフェース制御手段(LAN側通信インタフェース手段)11は、LANケーブルを介してLANポート3に接続されたネットワーク端末5との間で、データの送受信を行うものである。なお、LANインタフェース制御手段11は、受信したデータのうちでDHCPメッセージについては、IPアドレス割り当て手段14にデータを出力し、それ以外のデータについては、USBインタフェース制御手段10に出力する。なお、このLANインタフェース制御手段11は、10BASE−T等、一般的なLANプロトコルにより、ネットワーク端末5との間で、IPパケットによりデータの送受信を行う。
【0036】
PPP接続手段(PPPクライアント)12は、USBポート2に接続された携帯電話端末4を介して、予め定めたISPに対して回線の接続(PPP接続)を行うものである。このPPP接続手段12は、PPPクライアントとして機能し、ISPとの接続時に、ISPから、ドメインネームサーバ(以下、DNSサーバという)のIPアドレスを含んだアドレス情報を取得する。このアドレス情報には、DNSサーバのIPアドレス以外に、ISPから当該ダイヤルアップルータ1のWAN側のIPアドレス等が含まれている。また、PPP接続手段12は、取得したアドレス情報をアドレス記憶手段13に記憶する。
【0037】
また、ここでは、PPP接続手段12は、IPアドレス割り当て手段14からの接続開始指示に基づいて、ISPに対してPPP接続を開始することとする。これによって、PPP接続手段12は、携帯電話端末4が、USBポート2に接続された段階で、PPP接続が行われることになる。なお、PPP接続手段12は、所定時間単位で、PPP接続を開始することとしてもよいが、携帯電話端末4が接続された段階でPPP接続を開始した方が、素早くPPP接続を確立することができるため、より好ましいといえる。
【0038】
また、PPP接続手段12は、USBインタフェース制御手段10の接続検出手段10aから、USBポート2に接続された携帯電話端末4が切断されたことを通知された段階で、アドレス記憶手段13に記憶されているアドレス情報を初期化することとする。これによって、PPP接続手段12は、携帯電話端末4が接続されていない状態において、PPP接続が完了していない状態に戻すことができる。
【0039】
アドレス記憶手段13は、PPP接続手段12で取得したアドレス情報を記憶するものであって、半導体メモリ等の一般的な記憶手段である。なお、アドレス記憶手段13は、起動時に初期化されるものとする。このアドレス記憶手段13にDNSサーバのIPアドレス等のアドレス情報が記憶されることで、PPP接続が完了したことになる。
【0040】
IPアドレス割り当て手段(DHCPサーバ)14は、LANポート3に接続されたネットワーク端末5から要求されたIPアドレスの要求を含んだ更新依頼要求に対して、予め定めたLAN側のIPアドレスの範囲から、未使用のIPアドレスを割り当てて、当該IPアドレスの有効期限を示すIPアドレス割り当て時間とともにネットワーク端末5に配信するものである。このIPアドレス割り当て手段14は、DHCPサーバとして機能する。なお、IPアドレス割り当て手段14は、予めLAN側のローカルなIPアドレスの範囲をアドレス記憶手段13に設定しておき、要求のあったネットワーク端末5に対して、順次未使用のIPアドレスを割り当てる。
【0041】
また、IPアドレス割り当て手段14は、ネットワーク端末5に対するIPアドレス以外に、アドレス記憶手段13に記憶されているDNSサーバのIPアドレス、LAN側ネットワークのサブネットマスク、デフォルトゲートウェイ等の情報も合わせて、ネットワーク端末5に配信する。このとき、IPアドレス割り当て手段14は、アドレス記憶手段13にDNSサーバのIPアドレスが記憶されている場合、IPアドレス割り当て時間を長くし、DNSサーバのIPアドレスが記憶されていない場合、記憶されている場合に比べてIPアドレス割り当て時間を短くする。例えば、アドレス記憶手段13にDNSサーバのIPアドレスが記憶されている場合、IPアドレス割り当て時間を1日〜数日程度とし、記憶されていない場合、IPアドレス割り当て時間を1分〜数分程度と設定する。
【0042】
なお、IPアドレス割り当て手段14は、更新依頼である「DHCP要求(DHCPREQUEST)」を、DNSサーバのIPアドレス等の取得を希望するネットワーク端末5(DHCPクライアント)からの取得し、その応答となる「DHCP応答(DHCPACK)」に、IPアドレス割り当て時間を設定する。
【0043】
具体的には、IPアドレス割り当て手段14は、図4に示した「DHCPACK」のデータフォーマットにおいて、オプション(‘option’)として規定されている、「IPアドレスリース時間(IP address lease time)」の領域に、IPアドレス割り当て時間を設定する。これによって、ネットワーク端末5は、このIPアドレス割り当て時間経過までに、再度、更新依頼を行うことになる。
【0044】
以上、ダイヤルアップルータ1の構成について説明したが、ダイヤルアップルータ1は、図示を省略したCPU、メモリ等を搭載した一般的なコンピュータで実現することができる。このとき、ダイヤルアップルータ1は、コンピュータを前記した各手段として機能させるダイヤルアップルータ制御プログラムによって動作する。
【0045】
以上説明したようにダイヤルアップルータ1を構成することで、ダイヤルアップルータ1は、携帯電話端末4が未接続でDNSサーバのIPアドレスが取得されていない状態においては、ネットワーク端末5からの更新依頼に対して、IPアドレス割り当て時間を短く設定した応答を返すことで、ネットワーク端末5が、短時間で更新依頼を行うことになる。これによって、携帯電話端末4が接続され、DNSサーバのIPアドレスが取得された際に、ネットワーク端末5は、短時間で、DNSサーバのIPアドレスを取得し、インターネット接続が可能になる。
【0046】
また、ダイヤルアップルータ1は、携帯電話端末4が接続されDNSサーバのIPアドレスが取得された状態においては、ネットワーク端末5からの更新依頼に対して、IPアドレス割り当て時間を長く設定した応答を返すため、LAN側のネットワークにおいて、更新依頼が頻繁に発生しないため、ネットワーク負荷が軽減されることになる。
【0047】
[ダイヤルアップルータの動作]
次に、図5および図6を参照して、本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータの動作について説明する。図5は、本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータのPPP接続時の動作を示すフローチャートである。図6は、本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータのネットワーク端末に対するアドレス割り当て動作を示すフローチャートである。なお、図5に示したPPP接続動作と、図6に示したアドレス割り当て動作とは、それぞれ独立して動作するものである。
【0048】
(PPP接続動作)
最初に、図5を参照(構成については適宜図3参照)して、ダイヤルアップルータ1のPPP接続時の動作について説明する。
【0049】
まず、ダイヤルアップルータ1は、USBインタフェース制御手段10の接続検出手段10aによって、USBポート2の電圧変換に基づいて、携帯電話端末4がUSBポート2に接続されたか否かを判定する(ステップS1)。携帯電話端末4が接続されていない状態では(ステップS1でNo)、接続検出手段10aは、適宜ポーリング等によって、携帯電話端末4の接続を検出し続ける。
【0050】
一方、携帯電話端末4が接続されたことを検出した場合(ステップS1でYes)、ダイヤルアップルータ1は、PPP接続手段12によって、携帯電話端末4を介して、予め定めたISPに対して回線の接続(PPP接続)を依頼する(ステップS2)。そして、ダイヤルアップルータ1は、PPP接続手段12によって、ISPから、DNSサーバのIPアドレスを含んだアドレス情報を取得する(ステップS3)。そして、ダイヤルアップルータ1は、PPP接続手段12によって、ステップS3で取得したアドレス情報をアドレス記憶手段13に記憶する(ステップS4)。
【0051】
以上の動作によって、ダイヤルアップルータ1は、携帯電話端末4を接続された段階で、ISPとPPP接続を行い、インターネット接続に必要なDNSサーバのIPアドレスを含んだアドレス情報を、アドレス記憶手段13に記憶する。
【0052】
(アドレス割り当て動作)
次に、図6を参照(構成については適宜図3参照)して、ダイヤルアップルータ1のネットワーク端末5に対するアドレス割り当て動作について説明する。
【0053】
まず、ダイヤルアップルータ1は、IPアドレス割り当て手段14によって、LANインタフェース制御手段11が受信したネットワーク端末5から送信されたデータ(IPパケット)が、更新依頼の要求「DHCP要求(DHCPREQUEST)」であるか否かを判定する(ステップS5)。更新依頼の要求を受信しない間(ステップS5でNo)、IPアドレス割り当て手段14は待ち状態となる。
【0054】
一方、更新依頼の要求を受信した場合(ステップS5でYes)、ダイヤルアップルータ1は、IPアドレス割り当て手段14によって、アドレス記憶手段13にDNSサーバのIPアドレス等のアドレス情報が記憶されているか否かを判定する(ステップS6)。
【0055】
ここで、アドレス情報が記憶されている場合(ステップS6でYes)、ダイヤルアップルータ1は、IPアドレス割り当て手段14によって、IPアドレス割り当て時間を長時間(例えば1日)に設定し、アドレス情報等を設定した「DHCP応答(DHCPACK)」を生成し(ステップS7)、ステップS9に動作を進める。一方、アドレス情報が記憶されていない場合(ステップS6でNo)、ダイヤルアップルータ1は、IPアドレス割り当て手段14によって、IPアドレス割り当て時間を短時間(例えば1分)に設定した「DHCP応答(DHCPACK)」を生成し(ステップS8)、ステップS9に動作を進める。
【0056】
そして、ダイヤルアップルータ1は、IPアドレス割り当て手段14によって、LANインタフェース制御手段11を介して、アドレス情報(DHCP応答)を、ネットワーク端末5に配信する(ステップS9)。
【0057】
以上の動作によって、ダイヤルアップルータ1は、DNSサーバのIPアドレスが取得された状態においては、ネットワーク端末5からの更新依頼に対して、IPアドレス割り当て時間を長く設定した応答を返し、DNSサーバのIPアドレスが取得されていない状態においては、ネットワーク端末5からの更新依頼に対して、IPアドレス割り当て時間を短く設定した応答を返すことになる。
【0058】
[インターネット接続手順]
ここで、図7を参照(適宜図3参照)して、ダイヤルアップルータ1によって、インターネット接続を行う手順について説明する。図7は、本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータにおいて携帯電話端末を利用したインターネット接続の手順を示すシーケンスチャートである。
【0059】
図7に示すように、ダイヤルアップルータ1は、携帯電話端末4が接続されていない状態で、LAN側機器のネットワーク端末5から、更新依頼の要求を受信した場合(ステップS40)、ネットワーク端末5に対し、IPアドレス割り当て時間を短時間(例えば、1分)に設定した「DHCP応答(DHCPACK)」を配信する(ステップS41)。この場合、ネットワーク端末5は、アドレス情報の取得ができず、インターネット接続を行うことができない、
【0060】
その後、ネットワーク端末5は、「DHCP応答」に設定されたIPアドレス割り当て時間経過後、再度、更新依頼の要求をダイヤルアップルータ1に送信する(ステップS42)。この場合も、図7のシーケンスにおいては、まだ、ダイヤルアップルータ1は、アドレス情報を取得していないため、IPアドレス割り当て時間を短時間に設定した「DHCP応答」を配信する(ステップS43)。
【0061】
一方、ダイヤルアップルータ1は、携帯電話端末4が接続された段階で、携帯電話端末4を介してISPにPPP接続を依頼する(ステップS44)。その後、ISPは、DNSサーバのIPアドレス等のアドレス情報を配信し(ステップS45)、ダイヤルアップルータ1は、アドレス情報を取得してアドレス記憶手段13に記憶する。
【0062】
この段階で、ネットワーク端末5から、更新依頼の要求があった場合(ステップS46)、ダイヤルアップルータ1は、アドレス情報を設定するとともに、IPアドレス割り当て時間を長時間(例えば、1日)に設定した「DHCP応答」を、ネットワーク端末5に配信する(ステップS47)。これ以降、ネットワーク端末5は、インターネット接続を行うことが可能になる。
【0063】
以上説明したように、本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータ1における携帯電話端末4を利用したインターネット接続手順によれば、帰宅時に携帯電話端末4をダイヤルアップルータ1に接続した後、短時間で、ネットワーク端末5がDNSサーバのIPアドレスを取得することができ、素早くインターネット接続を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータを利用したインターネット接続環境を模式的に示した模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータの外観の一例を示す背面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータの機能構成を示す機能ブロック図である。
【図4】DHCPACKのデータフォーマットを示すデータ構造図である。
【図5】本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータのPPP接続時の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータのネットワーク端末に対するアドレス割り当て動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係るダイヤルアップルータにおいて携帯電話端末を利用したインターネット接続の手順を示すシーケンスチャートである。
【図8】DHCPの基本パターンを示すシーケンスチャートである。
【図9】従来のダイヤルアップルータを用いたインターネット接続の手順を示すシーケンスチャートである。
【図10】従来のダイヤルアップルータにおいて携帯電話端末を利用したインターネット接続の手順を示すシーケンスチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1 ダイヤルアップルータ
2 USBポート(WAN側接続ポート)
3 LANポート(LAN側接続ポート)
4 携帯電話端末
5 ネットワーク端末
10 USBインタフェース制御手段
10a 接続検出手段
11 LANインタフェース制御手段
12 PPP接続手段(PPPクライアント)
13 アドレス記憶手段
14 IPアドレス割り当て手段(DHCPサーバ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話端末を接続するためのWAN側接続ポートと、ネットワーク端末を接続するためのLAN側接続ポートとを備え、ダイヤルアップ接続により、前記ネットワーク端末を、インターネット網に接続するダイヤルアップルータにおいて、
前記WAN側接続ポートに接続された前記携帯電話端末を介して、予め定めたインターネットサービスプロバイダに対して回線の接続を行い、DNSサーバのIPアドレスを含んだアドレス情報を取得するPPP接続手段と、
このPPP接続手段で取得したアドレス情報を記憶するアドレス記憶手段と、
前記LAN側接続ポートに接続された前記ネットワーク端末から要求されたIPアドレスの要求を含んだ更新依頼要求に対して、予め定めたLAN側のIPアドレスの範囲から、未使用のIPアドレスを割り当てて、当該IPアドレスの有効期限を示すIPアドレス割り当て時間とともに前記ネットワーク端末に配信するIPアドレス割り当て手段と、を備え、
前記IPアドレス割り当て手段は、前記アドレス記憶手段に前記DNSサーバのIPアドレスが記憶されていない場合に、前記IPアドレス割り当て時間を、前記DNSサーバのIPアドレスが記憶されている場合に比べて短い時間に設定して前記ネットワーク端末に配信することを特徴とするダイヤルアップルータ。
【請求項2】
前記WAN側接続ポートの電圧変化に基づいて、前記携帯電話端末の前記WAN側接続ポートへの接続を検出する接続検出手段をさらに備え、
前記PPP接続手段が、前記接続検出手段によって前記携帯電話端末の接続を検出した段階で、前記インターネットサービスプロバイダに対して接続の要求を行うことを特徴とする請求項1に記載のダイヤルアップルータ。
【請求項3】
前記接続検出手段は、前記WAN側接続ポートの電圧変化に基づいて、前記携帯電話端末の前記WAN側接続ポートからの切断を検出する機能を有し、
前記PPP接続手段が、前記接続検出手段によって前記携帯電話端末の前記WAN側接続ポートへの接続後に前記携帯電話端末の切断を検出した段階で、前記アドレス記憶手段に記憶されているアドレス情報を初期化することを特徴とする請求項2に記載のダイヤルアップルータ。
【請求項4】
携帯電話端末を接続するためのWAN側接続ポートと、ネットワーク端末を接続するためのLAN側接続ポートとを備え、ダイヤルアップ接続により、前記ネットワーク端末を、インターネット網に接続するために、ダイヤルアップルータのコンピュータを、
前記WAN側接続ポートに接続された前記携帯電話端末を介して、予め定めたインターネットサービスプロバイダに対して回線の接続を行い、DNSサーバのIPアドレスを含んだアドレス情報を取得して、アドレス記憶手段に記憶させるPPP接続手段、
前記LAN側接続ポートに接続された前記ネットワーク端末から要求されたIPアドレスの要求を含んだ更新依頼要求に対して、予め定めたLAN側のIPアドレスの範囲から、未使用のIPアドレスを割り当てて、当該IPアドレスの有効期限を示すIPアドレス割り当て時間とともに前記ネットワーク端末に配信するIPアドレス割り当て手段、
として機能させ、
前記IPアドレス割り当て手段は、前記アドレス記憶手段に前記DNSサーバのIPアドレスが記憶されていない場合に、前記IPアドレス割り当て時間を、前記DNSサーバのIPアドレスが記憶されている場合に比べて短い時間に設定して前記ネットワーク端末に配信することを特徴とするダイヤルアップルータ制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−89208(P2009−89208A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258346(P2007−258346)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(507327718)株式会社iND (1)
【Fターム(参考)】