説明

ダイラタント・オルガノポリシロキサンのエマルジョン

ダイラタントホウ素架橋オルガノポリシロキサンのエマルジョン、このエマルジョンから製造されたコーディング剤、およびこのコーディング剤で含浸された種々の基材を開示する。このエマルジョンは布にコーティングし、あるいは含浸させることができ、アクティブ・プロテクション・システムにおけるエネルギー吸収性材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年4月14日出願の米国仮特許出願番号61/044597、2008年4月14日出願の米国仮特許出願番号61/044594、および2008年12月23日出願の米国仮特許出願番号61/140109の利益を請求する。
【0002】
本開示は、ダイラタント・ホウ素架橋オルガノポリシロキサンのエマルジョン、このエマルジョンから製造されたコーティング剤、およびこのコーティング剤を含浸させた種々の基材に関する。前記エマルジョンを布にコーティングし、あるいは含浸させて、“アクティブ・プロテクション・システム”(Active Protection Systems)でのエネルギー吸収材を提供する。
【背景技術】
【0003】
ホウ素架橋オルガノポリシロキサンは、ダイラタント特性を有するため、エネルギー吸収材としての用途が見出されている。例えば、ダイラタントホウ素架橋シリコーンは、アクティブ・プロテクション・システム(APS)において用いられ、そこでは繊維がホウ素架橋シリコーンでコーティングされている。
【0004】
英国特許第890007号、米国特許第2431898号、および英国特許第1387040号には、それぞれ、ダイラタントシリコーン組成物が記載されている。
【0005】
国際公開第2000/069293号および国際公開第2003/022085号には、柔軟なエネルギー吸収材が記載されており、そこでは、ダイラタント材料が、柔軟なキャリア(例えば、布または発泡体など)に含浸されている。ダイラタント材料は、衝撃を受けるまでは柔らかいままであり、衝撃を受けたときにその特性が変化して一時的に硬くなる。ダイラタント材料は、衝撃後、通常の柔軟な状態に戻る。この柔軟なエネルギー吸収材は、衝撃保護材として、例えばモーターサイクルもしくはスキー用衣類として、あるいはローラースケートもしくはスケートボード用肘当てとして、着用される。
【0006】
特開平04−257439号および特開平04−257440号には、それぞれ、ポリボロシロキサン、シリコーン樹脂、無機充填材、および、短繊維状無機充填材もしくはガラスフリットからなる耐熱性塗料をコーティングまたは含浸させた織布または不織布が記載されている。
【0007】
国際公開第2007/102020号には、含浸された柔軟性シート材(例えば布)、および柔軟性シート材の製造方法が記載されている。具体的には、この文献は、ダイラタントシリコーン組成物が含浸された、エネルギー吸収材として有用な柔軟性シート材に関する。
【0008】
しかし、上述した参考文献では、ホウ素架橋シリコーンを、まず有機溶剤に分散または溶解させることが必要とされる。ホウ素架橋シリコーンの水ベースエマルジョンがより扱いやすく、このようなプロセスにおいて環境的にも望まれると考えられる。したがって、アクティブ・プロテクション・システムにおいて使用するための布へのコーティングまたは含浸用に、ダイラタント特性を有するホウ素架橋シリコーンエマルジョンを提供する必要性が存在している。
【0009】
ホウ素架橋シリコーンまたはボロシロキサンのエマルジョンの例はほとんどない。おそらく、ホウ素架橋剤と水との相互作用によって、水ベース組成物での架橋化学が制限されていると考えられる。
【0010】
米国特許第4,863,985号は、架橋してエラストマー状態になる水性シリコーンエマルジョンが教示されている。具体的には、米国特許第4,863,985号は、シリコーンチキソトロピックエマルジョンであって、シリコーンエマルジョンから水を除去すると、架橋してエラストマー状態になるもの(例えば、建設業におけるエラストマー・シール材を作るもの)が、4から8のpHおよび少なくとも50%の固形分を有し、(A)α、ω‐(ジヒドロキシ)ポリジオルガノシロキサンと、少なくとも1種のアニオン性もしくは非イオン性界面活性剤またはそれらの混合物の安定化量との水中油滴型エマルジョン100部;(B)粉末形態のシリカ質補強用充填剤1から15部;(C)シリカ質充填剤(B)以外の無機充填剤0から250部;(D)触媒スズ化合物0.01から2部;および(E)酸化ホウ素、ホウ酸、またはボレート0.1から5部を含有することを開示する。米国特許第4,863,985号は、エラストマー性シリコーンを与えるシリコーンエマルジョンを教示しているが、これらの組成物ではスズおよび充填剤の添加が必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2007/102020号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4,863,985号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ダイラタント特性を有するホウ素架橋オルガノポリシロキサンのエマルジョンを見いだした。具体的には、本開示は、乾燥させるとダイラタント特性を有するコーティングを生じる、ホウ素架橋オルガノポリシロキサンエマルジョンを供給する。このエマルジョンは、アクティブ・プロテクション・システムにおいて、エネルギー吸収材として、発泡体、繊維、不織材料、ラミネート材、複合材、および編物または織物などの基材に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例1で製造したホウ素架橋オルガノポリシロキサンのエマルジョンのダイラタント特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本開示は、ダイラタントホウ素架橋オルガノポリシロキサンのエマルジョン組成物に関する。本明細書において「ダイラタント」とは、開示したエマルジョン中のホウ素架橋オルガノポリシロキサン、あるいはより具体的には、これらのエマルジョンから製造されたその後のコーティングにより示される、レオロジー特性をさす。
本開示のエマルジョン組成物は、水中油型エマルジョンであっても、油中水型エマルジョンであっても、多相エマルジョンもしくは三重エマルジョンであってもよい。
【0015】
一つの実施態様では、本エマルジョン組成物は、ホウ素架橋オルガノポリシロキサンを含む分散相を有する水連続エマルジョン(water continuous emulsion)(すなわち、水中油型エマルジョン)である。この水中油型エマルジョンは、連続水性相中に分散したホウ素架橋オルガノポリシロキサン相の平均体積粒子径によって特徴付けることができる。この粒子径はエマルジョンのレーザー回折によって測定することができる。適するレーザー回折技術は当技術分野で周知である。粒子径は、粒子径分布(PSD)から得られる。PSDは、体積、面積、長さをベースとして決定される。体積粒子径は、所与の粒子と同じ体積を有する球体の直径に等しい。用語Dvは分散粒子の平均体積粒子径を表す。Dv0.5は、累積粒子母集団の50%に相当する体積で測定された粒子径である。言い換えれば、もしDv0.5=10μmであるなら、粒子の50%が10μmより小さい平均体積粒子径を有し、粒子の50%は10μmより大きい平均体積粒子径を有する。別段の表示がない限り、平均体積粒子径はいずれも、Dv0.5を用いて計算する。
【0016】
本開示の水中油滴型エマルジョン中の分散されたシロキサン粒子の平均体積粒子径は、0.1μm〜150μm;または0.1μm〜10μm;または0.5μm〜1.0μmである。
他の添加剤、例えば充填剤、泡制御剤、不凍剤、および殺生物剤などを、本開示のエマルジョンに組み入れることもできる。
【0017】
一つの実施態様では、本開示のエマルジョン組成物は、
A)シラノール官能性オルガノポリシロキサン、および
B)ホウ素化合物
の反応生成物を含み、さらに
C)乳化剤
を含む。
【0018】
さらに別の実施態様では、成分A)のシラノール官能性オルガノポリシロキサンの少なくとも70パーセントが、ホウ素化合物B)と反応して、分散粒子中に存在するホウ素架橋オルガノポリシロキサンを形成している。この反応(すなわち、ホウ素シロキサンエステルの形成)の程度は、29Si NMR分光法などの種々の分析技術を用いて確認することができる。
【0019】
A)シラノール官能性オルガノポリシロキサン
オルガノポリシロキサンは、(RSiO0.5)、(RSiO)、(RSiO1.5)、または(SiO)シロキシ単位〔式中、Rは、独立に、有機基、OH(シラノール)、またはH(SiH官能基)であってよい〕から独立に選択されるシロキサン単位を有するポリマーである。これらのシロキシ単位は、一般に、それぞれM、D、T、およびQ単位と呼ばれている。これらシロキシ単位は、種々の方法で組みわせることができ、環状、直鎖状、または分岐状構造を形成する。得られるポリマー構造の化学特性および物理特性は、オルガノポリシリオキサンに存在する各シロキシ単位の型および数に応じて変化する。例えば、オルガノポリシロキサンは、揮発性または低粘度液体、高粘度液体/ガム、エラストマーもしくはラバー、および樹脂であり得る。
【0020】
本発明において成分A)として有用なオルガノポリシロキサンは、(RSiO0.5)、(RSiO)、(RSiO1.5)、または(SiO)シロキシ単位の任意の組合せを有し得るが、このオルガノポリシロキサンは、少なくとも1個のシラノール基(SiOH)を有することを条件とする。したがって、オルガノポリシロキサンは様々な分子量を有し、液状、ガム、エラストマー、樹脂、またはそれらの任意の組合せであり得る。例えば、オルガノポリシロキサンは、成分A)のオルガノポリシロキサン組成物中に少なくとも1個のシラノール基が存在することを条件に、低分子量の液状オルガノポリシロキサン中の高分子量のオルガノポリシロキサン(例えばエラストマーまたは樹脂など)の混合物であってよい。
【0021】
前記オルガノポリシロキサン中に存在するシラノール基の量はさまざまであってよい。オルガノポリシロキサン中のシラノール基の量は、SiOHの質量%として示される。成分A)として有用なオルガノポリシロキサン中に典型的に存在するシラノール基の質量パーセントは、0.01から20質量パーセント、あるいは0.05から10質量パーセント、あるいは0.05から4質量パーセントの範囲である。
【0022】
一つの実施態様において、オルガノポリシロキサンは、大部分が、末端シラノール基を有する直鎖状ポリジメチルシロキサンである。末端シラノール基を有するこの大部分の直鎖状ポリジメチルシロキサンは、下記式:
HO(Me)SiO[(Me)SiO](Me)SiOH
(式中、xは>0であり、あるいはxは1−4000、あるいは10−1000である)
を有し得る。
【0023】
さらに別の実施態様では、シラノール官能性オルガノポリシロキサンは、後述するように、成分B)および成分C)と混合する前または混合中に、他のシランまたはポリシロキサン成分と混合することができる。他のシランまたはポリシロキサン成分には、シラノール官能性オルガノポリシロキサンと反応することができる有機官能性シランまたは有機官能性ポリシロキサンが挙げられる。好適な有機官能性シランとして、アミノ官能性シラン、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、エチレンジアミンプロピルトリメトキシシラン、またはエチレンジアミンイソブチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0024】
好適な有機官能性ポリシロキサンとして、アミノ官能性オルガノポリシロキサン、例えば下記式:
SiO(RSiO)(RRSiO)SiR、または
SiO(RSiO)(RSiO3/2SiR
[式中、Rは一価の有機基であり、Rは、‐RNHおよび‐RNHRNH(式中、Rは少なくとも3個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、Rは少なくとも2個の炭素原子を有する二価の炭化水素基である)からなる群から選択される式を有するアミノアルキル基であり、RはR、R、またはOHであり、aは0から2000の値を有し、bはゼロよりも大きく200までの値を有する]
を有するものなどが挙げられる。一価R基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、およびヘキシルなどのアルキル基;ビニル、アリル、およびヘキセニルなどのアルケニル基;シクロブチルおよびシクロヘキシルなどのシクロアルキル基;フェニルおよびナフチルなどのアリール基;ベンジルおよび2‐フェニルエチルなどのアラルキル基;トリル、およびキシリルなどのアルカリール基;3‐クロロプロピル、4‐ブロモブチル、3,3,3‐トリフルオロプロピル、クロロシクロヘキシル、ブロモフェニル、およびクロロフェニルなどのハロ炭化水素基によって例示される。典型的には、Rは1から6個の炭素原子を有する一価炭化水素基である。特に、好ましいR基は、メチル、フェニル、およびビニルである。基Rは、典型的に、3から20個の炭素原子を有するアルキレン基である。典型的には、Rは、プロピレン、‐CHCHCH‐、ブチレン、‐CHCH(CH)CH‐、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、3‐エチル‐ヘキサメチレン、オクタメチレン、およびデカメチレンから選択される。基Rは、典型的に、2から20個の炭素原子を有するアルキレン基である。典型的には、Rは、エチレン、プロピレン、‐CHCHCH‐、ブチレン、‐CHCH(CH)CH‐、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、3‐エチル‐ヘキサメチレン、オクタメチレン、およびデカメチレンから選択される。Rは、典型的には、‐CHCHCHNHCHCHNHまたは‐CHCH(CH)CHNHCHCHNHである。これらの同じアミノ官能性基の塩も用いることができる。このような塩の例として、アルキルカルボン酸塩、アリールカルボン酸塩、塩化物および臭化物などのハロゲン化塩、ならびに、有機酸を用いるアミンの中和生成物が挙げられる。基RはR、R、または‐OHであってよいが、典型的には、Rはメチルまたは‐OHである。ポリオルガノシロキサンは、0.1から15モルパーセントの上記アミノ基、最も典型的には0.2から10モルパーセントの上記アミノ基を有し得る。上記式中、典型的には、aは50から2000の値を有し、bは1から100の値を有する。本発明で有用なアミノ官能性ポリオルガノシロキサンは、当技術分野で周知の方法によって製造することができる。これらのポリオルガノシロキサンの多くが市販されている。
【0025】
添加するシラノール官能性オルガノポリシロキサンの量はさまざまであってよい。用いる量は、用いるホウ素化合物の型および量、ならびに所望の架橋の程度次第である。典型的には、シラノール官能性オルガノポリシロキサンの量は、A)、B)、およびC)の混合物の全質量に基づいて、50から99、あるいは75から95、あるいは85から90質量パーセントの範囲である。
【0026】
B)ホウ素化合物
成分B)はホウ素化合物である。本明細書において、「ホウ素化合物」とはホウ素を含有する任意の化合物を意味する。オルガノポリシロキサンと反応することで知られている任意のホウ素化合物を、成分B)として選択することができる。あるいは、ホウ素化合物は、オルガノポリシロキサン上のシラノール官能基と反応することが知られている化合物から選択することができる。このようなホウ素化合物には、ホウ素または酸化ホウ素、ホウ酸、ボラート(Borate)、ホウ酸無水物が含まれる。ホウ酸は、オルトホウ酸、メタホウ酸、または四ホウ酸でもよい。ボラートには、水の存在下でホウ酸に加水分解するアルキルおよびアリルホウ酸エステル/トリオルガノホウ酸エステル、例えば、トリエチルホウ酸エステル、トリフェニルホウ酸エステル、トリベンジルホウ酸エステル、トリシクロヘキシルホウ酸エステル、トリ(メチルシリル)ホウ酸エステル、トリ‐t‐ブチルホウ酸エステル、トリメトキシボロキシンおよびトリイソプロポキシボロキシンなどのトリアルコキシボロキシン、トリエタノールアミンボラート、ならびに2,2’‐オキシビス[4,4,6‐トリメチル‐1,3,2−ジオキサボロランなどの誘導体が含まれる。ボラートは、ペンタホウ酸ジアンモニウム、四ホウ酸ナトリウム・10水和物(ホウ砂)、ペンタホウ酸カリウム、二ホウ酸マグネシウム、一ホウ酸カルシウム、三ホウ酸バリウム、およびメタホウ酸亜鉛などの無機ホウ酸塩も包含する。好適なホウ素化合物には、さらに、前述したボラートの部分加水分解生成物も含まれる。典型的には、ホウ素化合物は、式:Bを有する酸化ホウ素[CAS登録番号#1303−86−2]、または式:HBOを有するホウ酸[CAS登録番号#10043−35−3]である。
【0027】
ホウ素化合物は、単独で、あるいは他の成分との組合せで、添加することができる。
【0028】
一つの実施態様において、ホウ素化合物はホウ酸(HBO)であり、それはトリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン〔例えば、25℃で0.65cS(mm/秒)〜25℃で100,000cS(mm/秒)、あるいは25℃で100〜10,000cS(mm/秒)、または25℃で100〜10,000cS(mm/秒)の範囲の粘度を有する、DOW CORNING(登録商標)200フルイドなど〕中に分散される。
【0029】
トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン中に分散されたホウ酸の量はさまざまであってよいが、典型的には、0.5から70、あるいは10から50質量パーセント、あるいは40から50質量パーセントの範囲である。
【0030】
添加するホウ素化合物の量はさまざまであってよい。用いる量は用いたオルガノポリシロキサンの型および量ならびに所望する架橋度次第である。典型的には、ホウ素化合物の量は、A)、B)、およびC)の混合物に基づいて、0.05から30、あるいは0.1から10、あるいは0.1から6質量パーセントの範囲である。
【0031】
C)乳化剤
成分C)は乳化剤である。本明細書において、「乳化剤」とは、エマルジョンの形成を可能にする任意の化合物または物質をさす。エマルジョンは、水中油滴型エマルジョンであっても、油中水滴型エマルジョンであっても、多相または三重エマルジョンであってもよい。乳化剤は、エマルジョンを安定化することができる任意の界面活性化合物またはポリマーから選択することができる。典型的には、このような界面活性化合物またはポリマーは、分散された粒子の合体を防ぐことによりエマルジョンを安定化する。本製法において乳化剤として有用な界面活性化合物は、界面活性剤または界面活性剤の混合物であり得る。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非性イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、またはこれら界面活性剤の任意の混合物であってよい。
【0032】
好適なアニオン性界面活性剤の代表例として、高級脂肪酸アルカリ金属石鹸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩、長鎖脂肪アルコールの硫酸エステル、オレフィン硫酸エステルおよびオレフィンスルホン酸エステル、および硫酸化モノグリセリド、硫酸化エステル、スルホン酸化エトキシル化アルコール、スルホコハク酸エステル、アルカンスルホン酸エステル、リン酸エステル、アルキルイセチオン酸エステル、アルキルタウレート、ならびにアルキルサルコシネートが挙げられる。
【0033】
好適なカチオン性界面活性剤の代表例としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩、およびホスホニウム塩が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤の代表例としては、エチレンオキシドとC12からC16アルコールなどの長鎖脂肪アルコールまたは脂肪酸との縮合物、エチレンオキシドとアミンまたはアミドとの縮合物、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの縮合生成物、グリセロールエステル、スクロース、ソルビトール、脂肪酸アルキロールアミド、スクロースエステル、フッ素系界面活性剤、および脂肪族アミンオキシドが挙げられる。好適な両性界面活性剤の代表例としては、イミダゾリン化合物、アルキルアミノ酸塩、およびベタインが挙げられる。
【0034】
好適な市販の非イオン性界面活性剤の代表例には、ユニケマ(ICI Surfactants)社(米国デラウェア州ウィルミントン)から商標名BRIJ(登録商標)で販売されている、ポリオキシエチレン脂肪アルコールがある。いくつかの例はBRIJ(登録商標)35Liquid、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルとして知られているエトキシ化アルコール、およびBRIJ(登録商標)30、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルとして知られている別のエトキシ化アルコールである。いくつかの追加的な非イオン性界面活性剤には、ダウケミカル社(米国ミシガン州ミッドランド)から商標TERGITOL(登録商標)で販売されているエトキシ化アルコールが含まれる。いくつかの例は、TERGITOL(登録商標)TMN−6、エトキシル化されたトリメチルノナノールとして知られているエトキシル化アルコール;ならびに、商標TERGITOL(登録商標)15−S−5、TERGITOL(登録商標)15−S−12、TERGITOL(登録商標)15−S−15、およびTERGITOL(登録商標)15−S−40の下で販売されている種々のエトキシル化されたアルコール、すなわちC12−C14の第二級アルコールエトキシレートである。エトキシル化されたC10のゲルベアルコールとして知られているLutensol XPおよびエトキシル化されたイソ‐C13アルコールとして知られているLutensol TOのシリーズでBASF社から供給されている、Lutensol(登録商標)を用いることもできる。
【0035】
非イオン性界面活性剤を含有する混合物を用いる場合、一つの非イオン性界面活性剤が低い親水親油バランス(HLB)を有し、他方の非イオン性界面活性剤が高いHLBを有するようにして、二つの非イオン性界面活性剤が11〜15の総HLB、あるいは12.5〜14.5の総HLBを有するようにすることができる。
【0036】
あるいは、乳化剤は、ポリマーであるか、または「増稠剤」もしくは「増粘剤」と考えられる物質であってもよい。このようなポリマー乳化剤には、ポリビニルアルコール、セルロースポリマー、またはキサンタンガムが含まれる。ポリビニルアルコールには、加水分解されたポリビニルアルコール、例えば80から95%加水分解されたポリビニルアルコールが含まれる。好適な増粘剤は、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ポリオキシエチレン、グア−ガム、ヒドロキシプロピルグア−ガム、エトキシル化アルコール(例えば、ラウレスー4またはポリエチレングリコール400など)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルヒドロキシエチルセルロースで例示されるセルロース誘導体、デンプン、ヒドロキシエチルアミロースおよびデンプンアミロースで例示されるデンプン誘導体、イナゴマメガム、塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムで例示される電解質、ならびに、フラクトースおよびグルコースなどのサッカライド、およびPEG−120メチルグルコースジオラートなどのサッカライド誘導体またはこれらの2種以上の混合物により例示される。典型的には、増粘剤は、セルロース誘導体、サッカライド誘導体、および電解質からなる群から選択され、あるいは、セルロース誘導体と任意の電解質との組合せ、およびデンプン誘導体と任意の電解質との組合せによって例示される、前述した増粘剤の2種以上の混合物から選択される。
【0037】
乳化剤は、単独で、あるいはさまざまな量の水と組合せて添加することができる。典型的には、界面活性剤を単独で、あるいは界面活性剤を組合せて乳化剤として選択する場合には、界面活性剤は濃い水性分散液として、あるいは水溶液として添加する。
【0038】
一つの実施態様では、乳化剤は、8〜15の総HLBを有する2種の非イオン性界面活性剤を少なくとも70質量%含有する水溶液である。
【0039】
あるいは、乳化剤は、8から15のHLBを単独で有する非イオン性界面活性剤5から30質量パーセントの水溶液であり、あるいは乳化剤は、1種の非イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤を少なくとも20質量パーセント含有する水溶液であり、あるいは乳化剤は、アニオン性界面活性剤を30から100質量パーセント含有する水溶性界面活性剤である。
【0040】
添加する乳化剤の量はさまざまであってよい。用いる量は、所望するエマルジョン型および粒径次第である。典型的には、工程Iで添加される乳化剤の量は、A)、B)、およびC)の混合物の、0.1〜40、あるいは0.5〜30質量パーセントである。
【0041】
本開示のエマルジョン組成物は、当技術分野で知られている任意の方法で製造することができる。あるいは、エマルジョン組成物は、本発明の一つの実施態様にしたがって、以下に記述するプロセスによって製造することができる。
【0042】
プロセスの第一工程は;
A)シラノール官能性オルガノポリシロキサン、
B)ホウ素化合物、および
C)乳化剤
の混合物を形成させる工程を含む。ここで成分A)、B)、およびC)は上述したとおりである。
【0043】
工程(I)での混合は、高粘度材料の混合作用を及ぼすことが当技術分野で知られている任意の方法によって行うことができる。混合は、バッチ式、半連続式、または連続式のプロセスのいずれで行うこともできる。混合は、例えば、次の装置を用いることができる。中せん断/低せん断を有するバッチ混合装置として、チェンジ‐キャンミキサー(change−can mixers)、二重遊星型ミキサー(double−planetary mixers)、コニカル‐スクリュウミキサー(conical−screw mixers)、リボンブレンダー(ribbon blenders)、ダブルアームまたはシグマブレードミキサー(double−arm or sigma−blade mixers)があり;高せん断および高速分散機を有するバッチ装置として、Charles Ross & Sons(米国ニューヨーク州)、Hockmeyer Equipment Corp.(米国ニュージャージー州)製のものがあり;高せん断作用を有するバッチ装置として、Banbury−型(CW Brabender Instrument社、米国ニュージャージー州)およびHenschel型(Henschel mixers America、米国テキサス州)のものがある。連続ミキサー/コンパウンダーの説明に役立つ実例としては、単軸押出機、二軸押出機、および多軸押出機、同方向回転押出機〔例えばKrupp Werner & Pfleiderer Corp.(米国ニュージャージー州Ramsey)およびLeistritz(米国ニュージャージー州)製のものなど〕;異方向回転二軸押出機、二段押出機、二軸ローター連続ミキサー、ダイナミックもしくはスタティックミキサー、またはこれらの装置の組合せが挙げられる。
【0044】
工程Iの混合が行われる際の温度および圧力は重大でないが、一般に、周囲温度および圧力で行われる。典型的には、混合温度は、このような高粘度材料のせん断に伴う機械的エネルギーによって混合プロセス中に増加する。
【0045】
いかなる理論によって拘束されることも望まないが、本発明者らは成分A)、B)、およびC)の混合の結果として、ホウ素化合物がシラノール官能性オルガノポリシロキサンと反応して、種々の架橋が形成されると考える。しかし、工程I)の混合物に乳化剤を含めることによって、工程II)におけるその後のエマルジョン形成が高められる。
【0046】
本製法の工程IIは、工程Iの混合物に水を加えてエマルジョンを形成させる工程を含む。典型的には、工程Iの混合物100部当たり、5〜45部の水を混合して、エマルジョンを形成させる。一つの実施態様では、形成されるエマルジョンは水連続エマルジョンである。典型的には、この水連続エマルジョンは工程Iからのホウ素架橋オルガノポリシロキサンの分散粒子であって、150μm未満の平均粒径を有するものを有する。
【0047】
添加する水の量は、予め混合された混合物(プレミックス)の100質量部当たり、5〜45質量部の範囲でさまざまである。水は、工程Iの混合物のエマルジョンが形成されるような速度で、工程Iの混合物に加える。水のこの量は、ホウ素架橋オルガノポリシロキサンおよび乳化剤の選択次第でさまざまであり得るが、一般的には、水の量は、工程Iの混合物100質量部当たり5〜45部、あるいは工程Iの混合物100質量部当たり5〜30部、あるいは工程Iの混合物100質量部当たり5〜20部である。
【0048】
典型的には、水は漸増量に分けて工程Iからの混合物に加える。このため、各漸増量は工程Iからの混合物の8質量%未満からなり、各漸増量の水を、前の漸増量の水が分散した後それに引き続いて加える。こうして、ホウ素架橋オルガノポリシロキサンのエマルジョンを形成するのに十分な漸増量の水を加える。
【0049】
工程(II)における混合工程は、高粘度材料の混合に作用を及ぼすことが当技術分野で知られている方法により遂行することができる。混合は、バッチ式、半連続式、または連続式のプロセスとして、行わせることができる。工程(I)について上述した混合方法のいずれかを用いて、工程(II)の混合に作用を及ぼすことができる。
【0050】
場合により、工程(II)で形成された水連続エマルジョンをさらに工程(III)によって剪断して、粒径を減少しおよび/または長期間保存安定性を改良することができる。このせん断工程は上述により論じた任意の混合技術によって行うことができる。
【0051】
本開示のエマルジョンは、エマルジョンの物理的特性に影響を及ぼす追加の成分および添加剤を含むことができる。それらには、これらだけに限定されないが、殺生物剤、不凍剤、および種々の充填剤が含まれる。
【0052】
一つの実施態様では、シリカをエマルジョンに加えて、エマルジョンのその後の特性、特に、ダイラタント特性に作用を及ぼさせる。エマルジョンに添加するシリカの量および型はさまざまであってよい。典型的には、エマルジョンに加えるシリカの量は、0.1から50質量パーセント、あるいは1から40質量パーセント、あるいは5から30質量パーセントの範囲であってよい。シリカはエマルジョンの製造中いつでも加えることができるが、典型的には、後でエマルジョンに加える。すなわち、エマルジョンを最初に製造し、その後コ、ロイダルシリカを製造されたエマルジョンに加える。
【0053】
好適なシリカには、ヒュームドシリカ〔例えば、AEROSIL(登録商標)OX−50(Evonik社から入手可能、40ナノメートルの平均粒径のシリカ)など〕;安定化シリカゾル〔例えば、KLEBOSOL(登録商標)シリーズ(Rohm and Haas社から入手可能)〕、KLEBOSOL(登録商標)30H25(25nmの平均粒径、2.2のpHおよび30%固形分を有するプロトン安定化水性コロイダルシリカゾル)、KLEBOSOL 30H50(50nmの平均粒径、2.5から3.0のpHおよび30%固形分を有するプロトン安定化水性コロイダルシリカゾル)、KLEBOSOL 30N12(12nmの平均粒径、9.5から10.5のpHおよび30%固形分を有するアンモニウムイオン安定化水性コロイダルシリカゾル)、KLEBOSOL 30N25(25nmの平均粒径、9.6のpHおよび30%固形分を有する水素イオン安定化水性コロイダルシリカゾル)、NALCO(登録商標)1034A(20ナノメートルの平均粒径、2.8のpHおよび34%固形分を有する、Nalco Chemical社から入手可能な酸性コロイダルシリカゾル)、NALCO1130(8ナノメートルの平均粒径、10.0のpHおよび30%固形分を有する、Nalco Chemical社から入手可能なアルカリ性コロイダルシリカゾル)、およびNALCO1140(15ナノメートルの平均粒径、9.4のpHおよび40%固形分を有する、Nalco Chemical社から入手可能なアルカリ性コロイダルシリカゾル)などが含まれる。好適なコロイダルシリカとして、W.R.Grace社のLUDOX(登録商標)シリーズ、例えば、LUDOX AM、LUDOXAM−30(12nmの平均粒径、30%固形分を有する水性シリカゾル)、LUDOX AS、LUDOX HS40、LUDOX LS、LUDOX TM、およびLUDOX TMA(22nmの平均粒径、34%固形分を有する水性シリカゾル)などが挙げられる。別の適するシリカとして、ニッサンケミカル社(米国テキサス州ヒューストン)からSNOWTEX(登録商標)シリーズコロイダルシリカという商品名で販売されているもの(例えば、SNOWTEXなど)が挙げられる。
【0054】
本開示のエマルジョンは、エマルジョンの膜(film)を乾燥させた後に生じる膜またはコーティングの特性によってさらに特徴付けることができる。典型的には、このようなコーティングは、エマルジョンの膜を形成させ、この膜を十分な時間そのまま置いて、エマルジョン中に存在する水を蒸発させることによって得られる。このプロセスは膜またはコーティングの周囲温度を上昇させることによって加速させることができる。
【0055】
本エマルジョンから得られるコーティングは、そのレオロジー特性によって特徴付けることができる。例えば、せん断回転式レオメーター(例えば、ティー・エイ・インスツルメント社のCarri−MedまたはARESレオメーター)などを用いて、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)両方を測定する。コーティングを生じるためにホウ素架橋オルガノポリシロキサンエマルジョンの膜を乾燥させると、得られたコーティングについて25℃で、G’は少なくとも200PaでありG”は少なくとも1000Paである。典型的には、得られたシリコーンコーティングについて25℃で、
G’は200〜10,000,000Paであり、あるいはG’は1000〜200,000Paであり;
G”は1000〜10,000.000Paであり、あるいはG”は1000〜200,000Paである。
【0056】
本開示のエマルジョンを、様々な基材に適用して、ダイラタント特性のコーティングを有する製造完成品を形成させる。代表的な基材としては、発泡体、繊維、不織材料、ラミネート、複合体、柔軟なシート材、および編物または織物が挙げられる。
【0057】
ダイラタントエマルジョン組成物で処理することができる代表的な布地および繊維には、綿、絹、亜麻、および羊毛などの天然繊維;レーヨンおよびアセテートなどの再生繊維;ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、およびポリプロピレンなどの合成繊維;これらの組合せおよびブレンドが挙げられる。繊維の形状としては、より糸、フィラメント、麻くず、織り糸、織物、編み材料、不織材料、紙、カーペット、および皮革を挙げることができる。
【0058】
本開示は、布地または繊維に、処理組成物としてのダイラタントエマルジョンを適用する方法も提供する。処理組成物が1種を超える溶液、分散液、またはエマルジョンを含むときは、これらの溶液、分散液、またはエマルジョンを、同時にまたは連続して布地に適用することができる。処理組成物を布地に適用させた後、熱によって乾燥させることができる。
【0059】
ダイラタントエマルジョン組成物は、繊維のような柔軟なシート材料を含浸させるために知られた任意の方法で、柔軟なシート材料に適用することができる。例えば、パディング、ディッピング、スプレー法、ロールによる適用、カーテンコート法、ナイフコート法またはスクリーン印刷法がある。適用することとなる組成物の浴に布地を浸漬させ、続いてローラー間で圧搾して布地または他のシート材料により吸い取られる組成物の量を制御するのが、一つの好適な方法である。含浸後、これらの布地またはシート材料を、布地を周囲条件下で乾燥させる方法、あるいは、乾燥を加速するために熱および/または空気などの乾燥ガス流を適用する方法のいずれかによって、乾燥させる。乾燥は、例えば、40〜200℃、あるいは60〜120℃で実施することができる。柔軟なシート材料にダイラタントシリコーンエマルジョンを含浸させた後、他の組成物で処理する場合には、柔軟なシート材料にダイラタントシリコーン組成物を含浸させた後で乾燥させるか、あるいは二つの組成物を中間の乾燥工程なしに連続して適用することもできる。
【0060】
ダイラタントエマルジョンを含有する処理組成物は、布地または繊維の製造中に、またはその後の処理工程の後で、布地および/または繊維に適用することができる。適用後、担体(存在する場合)は、処理組成物から、例えば組成物を周囲温度または高温で乾燥させることによって除去することができる。
【0061】
布地または繊維に適用するダイラタントエマルジョン組成物の量はさまざまであってよいが、典型的には、200〜4000g/m、あるいは400〜3000g/m、あるいは600〜2000g/mの乾燥コーティング(乾燥後の付加質量)を提供するために十分な量である。
【0062】
一つの実施態様では、本開示のエマルジョンは、エネルギー吸収材として有用なコーティング組成物を提供するために用いられ得る。例えば、開示したエマルジョンは、国際公開第2000/69293号または同第2003/022085号に記載された布地または柔軟なシート材に基づくエネルギー吸収材の構造物に用いることができる。本発明による含浸布地は、潜在的に危険なスポーツ、例えばモーターサイクル、スキー、スケート、スケートボード、スノーボード、マウンテンバイク、サイクリング、ラグビー、フットボール、サッカー、クリケット、ラクロス、ハーリング、馬術、ポロ、野球、ゴルフ、ボクシング、マーシャルアート、体育および運動競技などのためのエネルギー吸収衣服に特に好適である。工業用途、生産用途、および建設用途に用いられる柔軟な個人用保護具の使用にも将来性がある。このような材料は、高速/弾道防護に将来性を示し、法の執行および防衛(民間および国軍)での用途を見出し得る。
【0063】
本開示はさらにダイラタントエマルジョンのコーティングを有する布地に関する。コーティングされた布地は、特にアクティブ・プロテクション・システムに有用である。本ダイラタントエマルジョンで処理されたコーティング布地は、その衝撃減衰性により特徴付けられ得る。衝撃減衰性は、種々のEN規格(CEN、ヨーロッパ標準化委員会提供、http://www.cen.eu/cenorm/homepage.htm)、例えば、EN1621−1:1997、EN1621−2:2003、EN13061:2002、EN13158:2000、EN13546:2002、EN13277−2:2002など、によって評価され得る。しかし、本開示の目的では、コーティング布地の衝撃減衰性は、「落下塔」試験であるEN1621‐2:1997の試験方法に従って評価した。EN1621−2:2003によれば、正確な質量および直径のテスト用ピースを、正確な寸法および形状の力変換器上に置いた被試験サンプルへ高い位置から落とす。標準品において指定された運動エネルギーが、移動するテスト用ピースの質量および速度に従って制御される。サンプルを通して伝達された力が力変換器の内側の圧電検出器で測定され、これを時間に対して電子的に集めて伝達力の記録を作成する。この伝達力のピーク値が性能の重大な尺度であり、よりよい性能は常に低い伝達されたピーク力で表示される。
【0064】
本ダイラタントエマルジョンの乾燥したコーティングを含む布地は、有機溶剤中のシリコーン組成物でコーティングされた布地に匹敵する衝撃減衰値を与える。例えば、代表的ダイラタントエマルジョンから布地の上に蓄積させたホウ素架橋オルガノポリシロキサンの乾燥コーティングを有する、スペーサポリエステルのニット織物から、衝撃エネルギー50Jを用いるEN1621−1またはEN1261−2衝撃試験に準拠して、ピーク伝達力50kN未満の衝撃減衰値、あるいはピーク伝達力30kN未満の衝撃減衰値を有する布地が生産される。
【実施例】
【0065】
これらの実施例は、本発明を当業者に例証することを意図するものであり、請求項に記載する本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。測定および実験はいずれも、別段の表示がない限り、23℃で行った。
【0066】
平均粒径は、Malvern Mastersizer2000を使用して測定した。レオロジー特性は、ティ・エイ・インスツルメントARESレオメーター(コーン/プレート型)(実施例1〜5)、ならびにCarri−MedレオメーターCSL(コーン/プレート型)(実施例6〜14)を使用して測定した。
【0067】
実施例1
最初に、約50,000mPa・s(cP)の粘度および約61,000の数平均分子量を有するMeSiOH末端ジメチルポリシロキサン50gを、秤量して100ml容量のカップ(max 100 cup)に入れ、続いて、約1000cStの動粘度を有するトリメチルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン流体(トリメチルシロキシ封鎖ポリジメチルシロキサン流体)中のホウ酸の50質量%分散液0.10gを添加した。カップを閉め、Speedmixer(登録商標)DAC150ミキサー内に置き、最大速さで20秒間回転(spin)させた。カップを15分間そのままに置いた後、最大速度で20秒間再度回転させた。追加的に10分間静止した後、カップを再度20秒間回転した。この回転の直後に、ラウリルアルコール(4)エトキシレート(Brij(登録商標)30)0.75gを加え、ラウリルアルコール(23)エトキシレート(Brij(登録商標)35L)の72%水溶液1.5gおよび脱イオン(DI)水0.6gを引き続いて添加した。カップを閉じ、Speedmixer(登録商標)中で20秒間回転させた。カップの内容物は濃厚ゲル状粘稠度を有する塊を形成しており、カップの壁をスパチュラでこすり落とした。カップおよびその内容物を再度20秒間回転させた。この粘稠相(thick phase)組成物を、全31gのDI水で徐々に増量して希釈した。最初の漸増量は、5gで、もう一つ5g、その後10gが続き、最後の11gが続いた。カップは、各漸増量の水添加後、SpeedMixer(登録商標)中、全速力で18秒間回転させた。得られた最終組成物は、低粘度の乳白色液体であり、酸化ホウ素を含有するポリジメチルシロキサン約60質量%の、約0.75μmの粒径を有する水中油滴型エマルジョンからなっていた。次の日に、このエマルジョンの20gをペトリ皿に流し入れ、周囲条件で24時間蒸発させた。エマルジョンから得られたポリマーを検査した。開始シリコーンポリマーの粘度から実質的に増加した粘度を有することが分かった。エマルジョンからのポリマーの粘度を、レオメーターを用いて測定した。図1にまとめるように、(10−1/sおよび24℃で)約10cPのゼロずり粘度(zero−shear−rate viscosity)を有することが分かった。これらの結果は、エマルジョンからのシロキサンポリマーの粘度が、開始シロキサンポリマーの粘度(約5x10cP)よりも大幅に高かったことを示している。
【0068】
実施例2
実施例1に記載した方法と同じ方法を用いて、約50,000mPa・s(cP)の粘度および約61,000の数平均分子量を有するMeSiOH末端ジメチルポリシロキサン50gと、約1000cStの動粘度を有するトリメチルシロキシ封鎖ポリジメチルシロキサン流体中のホウ酸の50質量%分散液0.11gとから製造した組成物を、ラウリルアルコール(4)エトキシレート(Brij(登録商標)30)0.75g、ラウリルアルコール(23)エトキシレート(Brij(登録商標)35L)の72%水溶液1.5g、および脱イオン(DI)水0.60gを用いて、乳化した。エマルジョンの粘稠相を、実施例1の方法と同じ方法を用いて、徐々に増量して合計31gのDI水で希釈した。エマルジョンの平均粒径は約0.75μmであった。
【0069】
実施例3
用いたポリジメチルシロキサン中の酸化ホウ素分散液の量以外は、実施例2に記載された方法と同じ方法および量を用いて、エマルジョンを製造した。このエマルジョンは、MeSiOH末端ジメチルポリシロキサン50gおよび酸化ホウ素/ポリジメチルシロキサン分散液0.40gを用いて製造した。エマルジョンの平均粒径は約0.75μmであった。
【0070】
実施例4
実施例1で記載したとおりの方法を用いて、約50,000mPa・s(cP)の粘度および約61,000の数平均分子量を有するSiOH官能性ジメチルポリシロキサン50gと、約1000cStの動粘度を有するトリメチルシロキシ封鎖ポリジメチルシロキサン流体中のホウ酸の50質量%分散液0.50gとから製造した組成物を、第二級アルキルスルホン酸ナトリウム(Hostapur(登録商標)SAS−60)の60質量%の水溶液1.25g、および水5.0gを用いて乳化した。得られた粘稠相組成物を、DI水27gで、実施例1に記載したとおりに徐々に添加量を増加させて希釈した。得られたエマルジョンは、0.5%のBを含有するPDMSのアニオン性エマルジョン(固形分約60%)からなっていた。このエマルジョンから水を取り除くと、高粘度ポリマーがもたらされた。
【0071】
実施例5
実施例1で記載したとおりの方法を用いて、約50,000mPa・s(cP)の粘度および約61,000の数平均分子量を有するSiOH官能性ジメチルポリシロキサン50gと、約1000cStの動粘度を有するトリメチルシロキシ封鎖ポリジメチルシロキサン流体中のホウ酸の50質量%分散液0.50gとから製造した組成物を、塩化セチルトリメチルアンモニウムの30%水溶液(CETAC(登録商標)30)3.3g、および水0gを用いて、乳化した。得られた粘稠相組成物を、DI水30gで、実施例1に記載したとおりに徐々に添加量を増加させて希釈した。得られたエマルジョンは、500ppmのBを含有するPDMSの約60%カチオン性エマルジョンからなっていた。このエマルジョンから水を取り除くと、ゴム状粘稠度を有したポリマー膜がもたらされた。
【0072】
実施例6
最初に、α‐イソ‐トリデシル‐ω‐ヒドロキシルポリ(オキシエチレン)(Lutensol TO12)2gを、250mLガラスビーカーに加え、続いて脱イオン水40gを加えた。この界面活性剤溶液を1時間(IKAローター付4枚羽根金属攪拌器を使用して150rpmで)攪拌した。約50mPa・s(cP)の粘度および800の数平均分子量を有するSiOH官能性シロキサン50gを秤量して、100ml容量のカップに入れた。続いて25℃で約1000cS(mm/秒)の動粘度を有するトリメチルシロキシ封鎖ポリジメチルシロキサン流体中のホウ酸の50質量%分散液6.6gを加えた。カップを閉め、Speedmixer(登録商標)DAC150ミキサーに置いた。カップを最大速度で20秒間回転させた。カップの内容物を上述した界面活性剤溶液に加え、Ultraturraxミキサーにて最大速度で混合した。その後、ステアリン酸0.17gおよびオレイン酸0.18gを穏やかな攪拌下で(IKAローター付4枚羽根金属攪拌器を使用して150rpmで)加えた。得られた最終組成物は低粘度の乳白色液体であり、酸化ホウ素を含有するポリジメチルシロキサン約60質量%の、約3.8μmの平均粒径を有する水中油滴型エマルジョンからなっていた。次の日に、エマルジョンの20gをアルミニウムカップに流し入れ、周囲条件で24時間蒸発させた。エマルジョンから得られたポリマーを検査し、膜が形成されていることが分かった。この膜のレオロジー特性をCarri−medレオメーターを用いて調べた。線形粘弾性領域(LVR)をまず測定した(0.2Hzおよび25℃で2cm4°のスチール製円錐形状を有するトルクランプ(Torque ramp))。その後、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)の両方をこの領域で測定した。G’は13600Paであり、G”は72400Paであった。
【0073】
実施例7
最初に、第二級アルキルスルホン酸塩(HostapurSAS30)40gを秤量し、500mLガラスビーカーに入れ、続いて脱イオン水100gを加えた。(IKAローター付4枚羽根金属攪拌器で150rpm攪拌)。約50mPa・s(cP)の粘度および約800の数平均分子量を有するSiOH官能性シロキサン300gを秤量し、500mLガラスビーカーに入れ、続いて25℃で約1000cS(mm/秒)の動粘度を有するトリメチルシロキシ封鎖ポリジメチルシロキサン流体中のホウ酸の50質量%分散液37gを加えた。この混合物を15分攪拌した(IKAローター付4枚羽根金属攪拌器を使用して150rpm)。このシリコーン相を上述した界面活性剤水溶液に注ぎ、5分間攪拌した。得られた混合物を、Rannie(登録商標)APVシステム200中、400バールにて1回通過させることによって処理した。その後、ステアリン酸0.55gおよびオレイン酸0.078gを、最後に、穏やかな攪拌下で(IKAローター付4枚羽根金属攪拌器を使用して150rpmで)加えた。得られた最終組成物は低粘度の乳白色液体であり、酸化ホウ素を含有するポリジメチルシロキサン約60質量%の、約1.3μmの平均粒径を有する水中油滴型エマルジョンからなっていた。前述したとおりに、膜のレオロジーを調べた。弾性率G’は2400Paであり、G”は28600Paであった。
【0074】
実施例8
α‐イソ‐トリデシル‐ω‐ヒドロキシルポリ(オキシエチレン)1.5gを、塩化ヘキサデシルトリアンモニウム(有効成分30%)(Arquad16−29)に置き換えたこと以外は、実施例6に記載した方法と同じ方法および量を用いてエマルジョンを製造した。前述したとおりに、膜のレオロジーを調べた。弾性率G’は29970Paであり、G”は112500Paであった。
【0075】
実施例9
SiOH官能性シロキサン4.2gを、Dow Corning(登録商標)AP−6087(これは末端メトキシおよびヒドロキシ官能性シロキサン基を有する、ジメチル‐、メチル‐、アミノエチルアミノイソブチルシロキサンである)で置き換えたこと以外は、実施例6に記載した方法と同じ方法および量を用いてエマルジョンを製造した。前述したとおりに、膜のレオロジーを調べた。弾性率G’は3300Paであり、G”は29400Paであった。
【0076】
実施例10
SiOH官能性シロキサン0.6gを、エチレンジアミンプロピルトリメトキシシランで置き換えたこと以外は、実施例6に記載した方法と同じ方法および量を用いて、エマルジョンを製造した。前述したとおりに、膜のレオロジーを調べた。弾性率G’は23300Paであり、G”は62000Paであった。
【0077】
実施例11
代表的なダイラタントエマルジョン(本明細書ではDILエマルジョンと呼ぶ)のコーティング、および比較の溶剤ベースの組成物(プロパン‐2‐オール中65w/w%固形分のDow Corning (登録商標)X−3180ポリホウ素シロキサンである、本明細書ではX−3180と呼ぶ)のコーティングを、「ディップ・アンド・スクイーズ」コーティング法を用いてポリエステル縦編みスペーサー布地(N2651H Heathcoat Fabrics社、英国Tiverton)に含浸させた。
【0078】
この実施例に用いたDILエマルジョンは、上記の実施例6に記載したプロセスに従って、以下の成分を用いて製造した:
α‐イソ‐トリデシル‐ω‐ヒドロキシルポリ(オキシエチレン)(Lutensol TO12)1.8g
50mPa・s(cP)の粘度を有するSiOH官能性シロキサン60g
25℃で1000cS(mm/秒)の動粘度を有するトリメチルシロキシ封鎖ポリジメチルシロキサン流体中のホウ酸の50質量%分散液7.6g
他の成分、製法、および温度は全て同じであった。得られたエマルジョン(DILエマルジョン)は、2.4μmの平均粒径を有していた。エマルジョン膜からのコーティングのレオロジーを前述したとおりに調べた。弾性率G’は19900Paであり、G”は130,000Paであった。
【0079】
「ディップ・アンド・スクイーズ」コーティング法は、基材が飽和状態になるように基材を液状コーティング浴中を移動させ、その後動いている二本ローラーにより形成された挟みに基材を通すことによって所望のコート量に達するまで、過剰の材料を取り除く工程を含んでいた。所望のコート量はローラー間のすき間に直接関係していた、従ってより小さいすき間は、多くの材料を絞り出すので、低コート量をもたらす。挟みを通過した後、基材は、乾燥スペースに移動され、そこで揮発物が乾燥により除去された。これらの実施例において、布地をコーティングするためのライン速度は、0.5から1.0m/分であった。これにより、それぞれ約1400g/mの乾燥後の付加量がもたらされた。
【0080】
コーティング布地の衝撃減衰を、「落下塔」試験であるEN1621−2:1997の試験方法に従って評価した。正確な質量および直径を有するテスト用ピースを、正確な寸法および形状を有する力変換器上に置かれた被試験サンプルへ、高所から落とした。標準品によって特定された運動エネルギーが、移動中のテスト用ピースの質量および速度に従って制御される。サンプルを通して伝達された力が力変換器の内側の圧電検出器で測定され、これを電子的にサンプリングして、時間に対する伝達力の記録を作成する。所与の衝撃エネルギーでのピーク伝達力がより低いほど、より良い性能を示す。その結果を次の表にまとめる。
【表1】

【0081】
実施例12
最初に、α‐イソ‐トリデシル‐ω‐ヒドロキシルポリ(オキシエチレン)(Lutensol TO12)2gを、250mLガラスビーカーに加え、続いて脱イオン水24.7gを加えた。この界面活性剤溶液を1時間(IKAローター付4枚羽根金属攪拌器を使用して150rpmで)攪拌した。約50mPa・s(cP)の粘度および800の数平均分子量を有するSiOH官能性シロキサン64.5gを秤量し、100ml容量のカップに入れた。続いて25℃で約1000cS(mm/秒)の動粘度を有するトリメチルシロキシ封鎖ポリジメチルシロキサン流体中のホウ酸の50質量%分散液8.2gを加えた。カップを閉め、Speedmixer(登録商標)DAC150ミキサーに置いた。カップを最大速度で20秒間回転した。カップの内容物を、上述した界面活性剤溶液に加え、Ultraturraxミキサーを使用して最大速度で混合した。その後、ステアリン酸0.18gおよびオレイン酸0.19gを穏やかな攪拌下で(IKAローター付4枚羽根金属攪拌器を使用して150rpmで)加えた。得られた最終組成物は、白色クリームであり、酸化ホウ素を含有するポリジメチルシロキサン約70質量%の、約2.5μmの平均粒径を有する水中油滴型エマルジョンからなっていた。
【0082】
次の日に、エマルジョンの20gをアルミニウムカップに注ぎ入れ、周囲条件で24時間蒸発させた。エマルジョンから得られたポリマーを検査し、膜が形成されていることが分かった。この膜のレオロジー特性をCarri−medレオメーターを用いて調べた。線形粘弾性領域(LVR)をまず測定した(0.2Hzおよび25℃で2cm、4スチール製円錐形状を有するトルクランプ(Torque ramp))。その後、周波数掃引を0.2%ひずみで行い、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を1Hzで測定した。G’は72,000Paであり、G”は158,000Paであった。
【0083】
実施例13
実施例12のエマルジョンにおいて記述したとおりに製造したエマルジョン80gを秤量し、100ml容量のカップに入れ、続いてコロイダルシリカLUDOX(登録商標)AM−30を20g加えた。カップを閉め、Speedmixer(登録商標)DAC150ミキサーに置いた。カップを最大速度で20秒間回転させた。得られた乳白色エマルジョンをアルミニウムカップに注ぎ入れ、周囲条件で24時間蒸発させた。エマルジョンから得られたポリマーを検査し、膜が形成されていることが分かった。この膜のレオロジー特性をCarri−medレオメーターを用いて調べた。線形粘弾性領域(LVR)をまず測定した(0.2Hzおよび25℃で2cm4のスチール円錐形状を有するトルクランプ(Torque ramp))。その後、周波数掃引を0.2%ひずみで行い、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を1Hzで測定した。G’は275,000Paであり、G”は358,000Paであった。
【0084】
実施例14
実施例10のエマルジョンで記載したとおりに製造したエマルジョン90gを、100ml容量のカップに秤量し、続いてコロイダルシリカLUDOX(登録商標)AM−30を10g加えた。カップを閉め、Speedmixer(登録商標)DAC150ミキサーに置いた。カップを最大速度で20秒間回転させた。得られた乳白色エマルジョンをアルミニウムカップに注ぎ入れ、周囲条件で24時間蒸発させた。エマルジョンから得られるポリマーを検査し、膜が形成されていることが分かった。この膜のレオロジー特性をCarri−medレオメーターを用いて調べた。線形粘弾性領域(LTR)をまず測定した(0.2Hzおよび25℃で2cm4のスチール円錐形状を有するトルクランプ(Torque ramp))。その後、周波数掃引を0.2%ひずみで行い、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を1Hzで測定した。G’は127,000Paであり、G”は209,000Paであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイラタントホウ素架橋オルガノポリシロキサンを含むエマルジョン組成物。
【請求項2】
前記エマルジョンが、ホウ素架橋オルガノポリシロキサンを含む分散相を有する水連続エマルジョンである、請求項1に記載のエマルジョン組成物。
【請求項3】
前記ホウ素架橋オルガノポリシロキサンが、
A)シラノール官能性オルガノポリシロキサン、および
B)ホウ素化合物
からの反応生成物を含む、請求項1または2に記載のエマルジョン組成物。
【請求項4】
成分A)のシラノール官能性基の少なくとも70%が、前記ホウ素化合物と反応して、前記ホウ素架橋オルガノポリシロキサンを形成している、請求項3に記載のエマルジョン組成物。
【請求項5】
前記エマルジョン組成物が、
I)次の成分:
A)シラノール官能性オルガノポリシロキサン、
B)ホウ素化合物、および
C)乳化剤、
の混合物を形成させる工程;
II)工程I)からの混合物に水を混合して、エマルジョンを形成させる工程;および
III)場合により、さらに前記エマルジョンをせん断混合する工程
を含む方法によって製造される、請求項3に記載のエマルジョン組成物。
【請求項6】
前記工程Iの混合物が、
50〜99質量パーセントのA)、
0.05〜30質量パーセントのB)、
0.10〜40質量パーセントのC)、
を含有し、但し、A)、B)およびC)の合計が100質量パーセントであることを条件とする、請求項5に記載のエマルジョン組成物。
【請求項7】
前記オルガノポリシロキサンが、シラノール末端ポリジメチルシロキサンである、請求項5に記載のエマルジョン組成物。
【請求項8】
前記ホウ素化合物が、トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンに分散されている、請求項5に記載のエマルジョン組成物。
【請求項9】
前記ホウ素化合物がBまたはHBOである、請求項5に記載のエマルジョン組成物。
【請求項10】
前記乳化剤が非イオン性界面活性剤の混合物である、請求項5に記載のエマルジョン組成物。
【請求項11】
前記非イオン性界面活性剤の混合物が、エトキシル化C10‐ゲルベ(Guerbet)アルコールまたはエトキシル化イソC13‐アルコールを含む、請求項10に記載のエマルジョン組成物。
【請求項12】
前記水が、工程IIで漸増量に分けて混合される、請求項1に記載のエマルジョン組成物。
【請求項13】
コロイダルシリカまたはフュームドシリカをさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のエマルジョン組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のエマルジョン組成物の膜を形成させる工程、および前記膜を乾燥させてコーティングを形成させる工程を含む、コーティングの形成方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法により製造されたコーティング。
【請求項16】
前記コーティングが、25℃で少なくとも200PaのG’および少なくとも1000PaのG”を有する、請求項14に記載のコーティング。
【請求項17】
請求項14または15に記載のコーティングを含む製造品。
【請求項18】
前記製造品が布地である、請求項17に記載の製造品。
【請求項19】
前記布地が、EN1621‐1またはEN1621‐2衝撃試験法に準拠して、50Jの衝撃エネルギーで実施して、ピーク伝達力が50kN未満である衝撃減衰性を有する、請求項18に記載の布地。

【図1】
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【公表番号】特表2011−517725(P2011−517725A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505112(P2011−505112)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/040354
【国際公開番号】WO2009/129177
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】