説明

ダクトラップおよびダクトの防火方法

ダクトの防火のための物品は、不燃性繊維材料を含む第1の材料の第1の層と、膨張性材料を含む第2の材料の第2の層とを含む。第1の層は第2の層に隣接している。本発明の物品は、非自立性であり、第1の適用状態にあるときには約3インチ未満の初期厚さを有し、第2の加熱状態にあるときには膨張時厚さを有する。膨張時厚さは初期厚さよりも厚い。膨張時厚さにおいて、本発明の物品は、建築役員国際会議(International Council of Building Officials)(ICBO−ES)によって2001年4月に規定されたAC101グリスダクトエンクロージャ組立体の合格基準(AC101 Acceptance Criteria for Grease Duct Enclosure Assemblies)のセクション(Section)5.5に適合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクトの防火のための物品および方法に関する。特に、本発明は、防火(fire−rated)ダクトの防火のための物品に関し、この物品は膨張性材料を含み、第1の適用状態にあるときには約3インチ未満の初期厚さを有し、第2の加熱状態にあるときには膨張時厚さを有し、この膨張時厚さは初期厚さよりも厚い。
【背景技術】
【0002】
防火ダクトは、厨房用グリスダクト(kitchen grease duct)、化学排気ダクト(chemical exhaust duct)、加熱、換気、および空調用のダクト、ならびにあらゆる一般的な目的の給気または排気ダクトなどの、多くの商業用途、工業用途、および居住用途において見られる。防火ダクトには、ダクトの周囲に耐火性障壁を形成するために防火性不燃性材料を巻き付けることができる。ダクト内部で火災が発生すると、この耐火性障壁は、ダクト内に火災を閉じ込めるのに役立ち、そのため火災はダクト周囲の構造には広がらない。これらの防火材料は、一般に、「ファイアラップ」(fire wrap)、「ダクトラップ」(duct wrap)、「防火シート」、「防火ブランケット」、または一般的に「防火物品」と呼ばれている。
【0003】
ダクト用の従来の防火物品では、ガラス、鉱物、またはセラミックの繊維、またはそれらのブレンドの繊維の複数の層を利用している。従来の防火物品では、適用される燃焼試験に合格するためには、ダクトの保護のために厚さ約2インチの防火物品の2層が必要となる。最も過酷な試験では、防火物品は、建築役員国際会議(International Council of Building Officials)(ICBO、現在はICCエバルエイション・サービス・インコーポレイテッド(ICC Evaluation Service,Inc.)の一部となっている)によって2001年4月に規定されたAC101グリスダクトエンクロージャ組立体の合格基準(AC101 Acceptance Criteria for Grease Duct Enclosure Assemblies)に合格する必要がある。AC101基準のセクション(Section)5.5においては、防火物品試料は、華氏約2000度(°F)の加熱炉に約30分間曝露される。この防火物品試料は、2000°Fの熱に耐えられる必要がある。すなわち、この防火物品試料は、燃焼してはならず、防火物品の最外部分(加熱炉から最も離れた防火物品部分)で測定される温度が325°F+周囲温度を超えてはならない。AC101基準のセクション(Section)5.4においては、防火物品試料は、約500°Fの熱を発する加熱炉に約4時間曝露される。防火物品の最外部分(加熱炉から最も離れた防火物品部分、これは「低温側」とも呼ばれる)で測定される温度は、117°F+周囲温度を超えてはならない。従来の防火物品を使用する場合、防火物品の最外部分の温度が、セクション(Section)5.5試験において約325°F+周囲温度以下、またはセクション(Section)5.4試験において約117°F以下を維持するために、2層の防火物品(合計約4インチの防火物品)を必要とすることが分かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、防火物品は、ダクトと周囲構造との間に取り付けられる。多くの場合、ダクトと周囲構造との間の空間は、従来の防火物品を適合させるのに十分な大きさでしかない。作業空間が狭いため、従来の防火物品を取り付けるのが困難となる場合がある。さらに、従来の防火物品を2層使用する場合、その取り付け作業が煩わしくなる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、ダクトの防火のための物品であって、不燃性繊維材料を含む第1の材料の第1の層と、膨張性材料を含む第2の材料の第2の層とを含む物品に関する。第1の層は、第2の層に隣接している。この物品は、非自立性であり、第1の適用状態にあるときには約3インチ未満の初期厚さを有し、第2の加熱状態にあるときには膨張時反応性厚さを有する。この膨張時厚さは初期厚さよりも厚い。膨張時厚さにあるとき、この物品は、建築役員国際会議(International Council of Building Officials)によって2001年4月に規定されたAC101グリスダクトエンクロージャ組立体の合格基準(AC101 Acceptance Criteria for Grease Duct Enclosure Assemblies)のセクション(Section)5.5に適合する。
【0006】
第2の態様においては、本発明は、ダクトの防火のための非自立性シートであって、不燃性繊維材料と、この不燃性繊維材料全体に分散した膨張性材料とを含むシートに関する。このシートは、第1の適用状態にあるときには約3インチ未満の初期厚さを有し、第2の加熱状態にあるときには初期厚さよりも厚い反応性厚さを有する。
【0007】
第3の態様においては、本発明は、防火物品を形成するための材料であって、約0〜約70重量%のガラス繊維、約0〜約70重量%のセラミック繊維、および約30〜約50重量%の黒鉛を含む材料に関する。これらのガラス繊維、セラミック繊維、および黒鉛が材料の層を画定している。この材料は、約3インチ未満の取付後厚さを有し、約500°F〜約1200°Fの範囲内の温度に加熱すると、取付後厚さよりも厚い膨張時厚さを有する。
【0008】
第4の態様においては、本発明は、ダクトの防火のための非自立性物品であって、第1の不燃性繊維材料の第1の層と、膨張性材料が散在した第2の不燃性繊維材料の第2の層とを含む物品に関する。第1の層は第2の層に隣接している。この非自立性物品は、周囲温度において約数インチ未満の第1の厚さを有し、約500°F〜約1200°Fの範囲内の温度において初期厚さよりも厚い第2の厚さを有する。
【0009】
第5の態様においては、本発明は、1層の不燃性繊維材料で形成されたダクトラップに関し、このダクトラップの1層は、約3インチ未満の取付後厚さを有し、建築役員国際会議(International Council of Building Officials)によって2001年4月に規定されたAC101グリスダクトエンクロージャ組立体の合格基準(AC101 Acceptance Criteria for Grease Duct Enclosure Assemblies)のセクション(Section)5.4および5.5に適合する。
【0010】
第6の態様においては、本発明は、膨張性材料を含むダクトラップに関し、このダクトラップの1層は、約2.2ポンド/平方フィート未満の重量であり、約3.5インチ以上の有効熱的厚さを有する。
【0011】
第7の態様においては、本発明は、ダクト組立体であって、ダクトと、ダクトの周囲に取り付けられた非自立性防火物品とを含む組立体に関する。この物品は、不燃性繊維材料と、膨張性材料とを含む。この物品は、第1の適用状態にあるときには約3インチ未満の初期厚さを有し、第2の加熱状態にあるときには初期厚さよりも厚い反応性厚さを有する。
【0012】
第8の態様においては、本発明は、ダクトの防火方法に関する。この方法は、約3インチ未満の厚さを有する1層の防火物品をダクトの周囲に取り付けるステップと、その防火物品をダクトに固定するステップとを含む。この防火物品は、不燃性繊維材料と、この繊維材料全体に分散した膨張性材料とを含む。この1層の防火物品は、建築役員国際会議(International Council of Building Officials)によって2001年4月に規定されたAC101グリスダクトエンクロージャ組立体の合格基準(AC101 Acceptance Criteria for Grease Duct Enclosure Assemblies)のセクション(Section)5.4および5.5に適合する。
【0013】
第9の態様においては、本発明は、ダクトの防火のための物品を形成する方法に関する。この方法は、第1の厚さを有する不燃性繊維材料の層を提供するステップと、この繊維材料上にバインダーを適用するステップと、繊維材料およびバインダーの上に膨張性材料を分散させるステップと、繊維材料および膨張性材料をニードリングして、約半インチ以下の第2の厚さを有する層を形成するステップとを含む。
【0014】
本発明の上記概要は、開示されるすべての実施形態および本発明のすべての実施の説明を意図したものではない。図面および以下の詳細な説明は、説明的実施形態をより詳細に例示している。
【0015】
図面を参照しながら本発明をさらに説明するが、いくつかの図面を通して類似の構造は類似の番号によって参照される。
【0016】
図面によっていくつかの実施形態が説明されるが、説明に記載されるように他の実施形態も考慮される。あらゆる場合で、本開示は、説明および非限定の目的で本発明を提供している。本発明の原理の範囲および意図の中にある多数の他の変更および実施形態は、当業者によって考案できることを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、防火ダクトの防火のための物品、およびその物品を使用したダクトの防火方法に関し、この物品は、不燃性繊維材料と膨張性材料とを含む。この物品は、第1の適用状態にあるときには約3インチ未満の初期厚さを有し、第2の加熱状態にあるときには膨張時厚さを有し、この膨張時厚さは初期厚さよりも厚い。好ましくは、初期厚さは約1インチ〜約2インチであり、膨張時厚さは約3.5インチ以上である。さらにより好ましくは、膨張時厚さは約3.5インチ〜約5インチの間である。膨張性材料は、高熱に応答して膨張し、これによって、ダクトの加熱状態に応答して防火物品を膨張させることが可能となる。膨張した防火物品によって、防火物品が熱を閉じ込めることができる空間の体積がより大きくなり、その断熱性能が増加する。断熱性能が増加すると、膨張した防火物品は、物品の一方の側から他方の側(すなわち、防火物品の「高温側」から「低温側」)への熱の移動の減速を促進することができる。ダクト上に使用される場合、防火物品は、ダクトを取り囲む構造が加熱するのを防止することができ、場合により、火災またはその他の高熱がダクト内部に存在する場合に、燃え出すのを防止することができる。
【0018】
約3インチ未満、好ましくは約1インチ〜約2インチの初期(「適用後」または「取付後」とも呼ばれる)厚さから、初期厚さよりも厚い膨張時「有効」(または「反応性」)厚さまで防火物品が膨張することによって、本発明の物品は、従来の防火物品よりも薄い層で適用できるという利点を有し、さらに実質的に同様の防火性能を有することができる。本発明による防火物品は、約2.2ポンド/平方フィート未満の重量を有し、同時に約3.5インチを超える有効熱的厚さを有することが好ましい。ダクトとその周囲構造との間に間隙がほとんど存在しないような場合では、1層のみの防火物品を有することが望ましい場合がある。さらに、1層のみの防火物品が必要な場合には、取付時間を短縮することができる。1層のみの防火物品を有することの他の利点としては、取付者を刺激しうる繊維への曝露の減少、および防火物品の使用量が減少することによる費用の削減が挙げられる。
【0019】
AC101グリスダクトエンクロージャ組立体の合格基準(AC101 Acceptance Criteria for Grease Duct Enclosure Assemblies)のセクション(Section)5.4および5.5以外に、1層の防火物品は、アンダーライターズ・ラボラトリーズ(Underwriters Laboratories)(「UL」)規格2221(Standard 2221)(2003年に規定された)、UL規格1978(UL Standard 1978)のセクション(Section)12(第2版(second edition)、2002年6月25日に規定された)、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials)(「ASTM」)E84−04(2004年に規定された)、ASTM E119(2000年に規定された)、ASTM E136−04(2004年に規定された)、ASTM E814−02(2002年に規定された)、ASTM E2336(2004年に規定された)、および国際標準化機構(International Organization for Standardization)(「ISO」)6944(第1版(first edition)、1985年12月に規定された)の規定に適合することも好ましい。上記規定は、様々な種類のダクトラップの可燃性、表面燃焼性、および発煙可能性を制限している。上記の一連の規定は、網羅的であることを意図するものではない。
【0020】
UL規格(UL Standard)1978および2221は、グリスダクトエンクロージャ組立体の耐火性の基準を規定する内部グリスダクト燃焼試験である。これらのUL規格(UL Standard)は、AC101基準のセクション(Section)5.4および5.5に類似しており、グリスダクトエンクロージャ組立体について、指定の時間の間、標準的な内部および外部火炎加熱を行い、グリスダクトから間隔を開けた防火物品の表面付近または表面上(「低温側」)の温度を測定する。UL規格(UL Standard)1978においては、試験体(たとえば、防火物品)は、500°Fの熱を発する加熱炉に約4時間曝露される。この試験体の低温側は、117°F+周囲温度を超えてはならない。UL 1978においては、試験体は燃焼してはならない。
【0021】
ASTM E84−04は、表面燃焼特性の規格であり、壁および天井などの露出面に適用することができ、材料の相対燃焼挙動を試験する。ASTM E84−04は、天井位置にある試験体について行われ、その評価される表面は、熱源に対して下向きに露出した面を有する。材料、製品、または組立体は、試験中に試験位置に取り付け可能となるべきであり、そのためこれらの試験体は、それ自体の構造品質によって自立性であるか、試験表面に沿って加えられた支持体によって所定位置に維持されるか、または裏側から固定されるかのいずれかとなるべきである。ASTM E119は、完成した建造物の永続的一体部分を構成する構成単位に適用可能である。ASTM E119は、制御された条件下での材料、製品、または組立体の熱および火炎に対する応答を測定し記述するために使用される。ASTM E119規格においては、試験体は、最高1850°F(「火炎加熱」)の温度に最長2時間曝露される。この試験体の低温側は、325°F+周囲温度を超えてはならず、試験体は燃焼してはならない。さらにASTM E119規格においては、複製した試験体を約1時間火炎加熱し、次に直ちにこの試料に、30ポンド/平方インチ(psi)のホース流を当て、最初は中央部に向け、続いて露出面全体に指定の時間当てる。このホース流試験の目的は、耐火性試験中の側方からの衝撃によって、試験体が破片を落下させずにいられるかどうかを測定することである。
【0022】
ASTM E136−04は、制御された条件下での材料および製品組立体の熱および火炎に対する応答を測定し記述するための別の燃焼試験応答規格である。ASTM E136−04規格においては、750°Fの熱を発する縦型管状炉中の試験体の挙動を試験する。ASTM E814−02は、耐火性の壁および床の開口部内での使用が意図された貫通型火炎止めに適用可能である。ASTM E814−02は、外力に対する火炎止めの抵抗性を測定する。AC101基準のセクション(Section)5.5およびASTM E119と同様に、試験体が、最高1850°Fの温度に最長2時間曝露され、試験体の低温側は325°F+周囲温度を超えてはならず、試験体は燃焼してはならない。ASTM E814−02規格もASTM E119規格と類似のホース流試験を使用する。ASTM E2336は、グリスダクトエンクロージャシステムおよび材料について、貫通型火炎止めを使用した場合の不燃性、耐火性、耐久性、内部火災、および火災の巻き込みを試験する。
【0023】
ISO 6944には、基準化された火災条件下での垂直および水平のダクトの基準が記載されている。ISO 6944の一般的な目的は、防火ダンパーを使用せずに、ある火災区画から別の区画に火災が広がるのに抵抗する排気ダクトの性能を測定することである。
【0024】
図1Aは、本発明の防火物品10の全体的構造の一例を示している。防火物品10は、ダクトを防火するための材料の可撓性で非自立性の層またはシートであり、不燃性繊維材料と膨張性材料とを含む。図1Bに示されるように、防火物品10は、ダクト12の周囲に巻き付けるのに十分に可撓性である。非自立性物品はそれ自体を支持するための剛性が欠如した物品であり、そのため、ある形態の別個の支持枠組みを必要とする。防火物品10は、図1Bのダクト12などの別個の支持枠組みに適合させることができるが、所定の位置に保持するためにはストラップやピンなどの固定機構を必要とするので、非自立性である。非自立性物品であるので、防火物品10は、異なる大きさのダクトへの使用など、多くの異なる用途で使用することができる。防火物品10は、防火ダクトの防火に使用されるあらゆる物品であり、「ファイアラップ」、「ダクトラップ」、「防火シート」、または「防火ブランケット」と呼ばれる場合もある。
【0025】
前述したように、図1Bは、ダクト12の周囲に本発明の防火物品10を巻き付ける方法の一例を示している。防火物品10は、ダクト12の周囲に取り付けられ、ストラップ14で固定される。ストラップ14はステンレス鋼または高融点を有するあらゆる材料でできていてよく、それによって、火災またはその他の高熱がダクト12内部で生じた場合に、各ストラップ14はその高い融点に達するまでは破壊が起こらず、ストラップ14が低い融点を有する場合よりも長い間、防火物品10はダクト12に固定され続ける。固定機構の種類は本発明にとって重要ではなく、当業者は、防火物品10をダクト12に固定するために、鋼製ピンなどの別の固定機構を選択することができる。
【0026】
ダクト12は、防火が必要なあらゆる種類のダクトであってよく、火災または別の形態の高熱がダクト12内部で発生した場合、その火災または加熱はダクト12内部に閉じ込められ、周囲構造15には広がらない。ダクト12から構造15まで高熱が広がった場合には、周囲構造15が燃え出す場合がある。逆に、外部の火災がダクト12を外側から巻き込む場合、ダクト12の内側に炎が到達するのを防止するために、ダクト12を防火することが望ましいことがある。防火のために防火物品10を使用することができるダクトの例としては、厨房用グリスダクト、化学排気ダクト、加熱、換気、および空調用のダクト、ならびにあらゆる一般的な目的の給気または排気ダクトが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
図1Bに示されるように、ダクト12の大部分またはすべてが防火物品10によって覆われるようにダクト12の実質的周囲に防火物品10を取り付けることが好ましい。当業者は、防火物品10をダクト12周囲に巻き付ける方法を変更することができる。たとえば、「チェッカー盤」の巻き付け方法を使用することもできる。防火物品10は、約3インチ未満、好ましくは約1インチ〜約2インチの厚さで取り付けられる。厚さは、図1Aに示されるような方向で測定される。取り付けられる防火物品10の望ましい厚さは、防火物品10の熱伝導率に依存して異なる。熱伝導率(ワット/メートル℃)は、ある温度勾配(℃/メートル)が材料にわたって存在する場合、その材料を通過する熱流束(ワット/平方メートル)で表現される材料の性質である。実質的に、熱伝導率値は、防火物品10を介してどれだけ速く熱が伝達されるかを表しており、これは、防火物品10が曝露する温度、および防火物品10の形成に使用される材料の種類(以下で図2〜4を参照しながらより詳細に説明する)に依存する。熱伝導率が低いことが望ましい。高温における熱伝導率が高いほど、より厚い防火物品10を形成すべきである。
【0028】
防火物品10は、ダクト12と周囲構造15との間に取り付けることができる。図1Bにおいては、ダクト12の一部のみを周囲構造15が取り囲んでいるように示されているが、周囲構造15は、ダクト12の大部分またはすべてを囲むこともできる。従来のダクトラップよりも取り付けの厚さが小さいため、より容易に防火物品10を取り付けることができる。多くの場合、ダクト12と周囲構造15との間の間隙gは、従来の防火物品を適合させるのに十分な大きさでしかない。このような狭い作業空間では、取付者が作業するための空間が増えるので、より薄い防火物品10が好ましいと思われる。本発明による防火物品は、膨張するための空間を有するような構成で取り付けられることも好ましい。2つの固定された表面に隣接して防火物品が取り付けられると、その防火物品が膨張するための空間はほとんどまたは全くないと思われる。1層の防火物品10の膨張時厚さは、AC101グリスダクトエンクロージャ組立体の合格基準(AC101 Acceptance Criteria for Grease Duct Enclosure Assemblies)のセクション(Section)および5.5、UL規格(UL Standard)2221および1978、ASTM E84−04、ASTM E119、ASTM E136−04、ASTM 814−02、ASTM E2336、IMO A754、ならびにISO 6944に記載される種々の規格に適合する必要がある。
【0029】
ダクト12の防火のために2層以上の防火物品10を使用することができるが、1層のみの防火物品10を使用することが好ましい。1層のみが使用される場合、取付時間を短縮することができ、使用される製品を減少させることができるので、ダクト12の防火のための費用を削減することができる。本発明の防火物品10を使用すると、「有効」熱的厚さが取付後厚さよりも厚くなるように防火物品10が膨張するので、1層のみを使用してダクト12を防火することが可能となる。「有効」熱的厚さは、加熱状態にある場合に実質的に完全に膨張した後の防火物品10の厚さである。加熱状態は、好ましくは、防火物品10が約500°F〜約1200°Fの範囲内の温度に曝露した場合に発生する。さらにより好ましくは、約500°Fを超える温度に曝露してすぐに防火物品10がその有効厚さに到達する。「有効」厚さは、当技術分野において周知の過酷な燃焼試験に合格するために従来技術の防火物品が必要であった厚さと実質的に等しくてもよい。たとえば、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company,St.Paul,Minnesota)より市販される3Mファイア・バリア・ダクト・ラップ(3M Fire Barrier Duct Wrap)の場合、過酷な燃焼試験および規格に適合するために、現在のところ、2インチの従来技術の防火物品がほぼ2層必要である。有効厚さは、「反応性」厚さまたは「膨張時」厚さと呼ばれる場合もある。有効厚さ、反応性厚さ、または膨張時厚さは、初期厚さよりも厚い。適用時厚さまたは初期厚さは、高熱に曝露する前の防火物品10の厚さである。
【0030】
AC101グリスダクトエンクロージャの合格基準(AC101 Acceptance Criteria for Grease Duct Enclosure)のセクション(Section)5.5などの特定の燃焼試験に合格するのに十分低い温度に、防火物品10A側(「低温側」)(ダクト12の内側から最も離れた側)上の温度を維持するのに、防火物品10が十分な厚さである必要があるので、有効厚さは重要な寸法の1つである。A側は、火災(またはその他の熱源)がダクト12内部に存在する場合にのみ「低温側」となる。外部の火災にダクト12が外部から巻き込まれた場合に、B側が「低温側」であると見なされる。前述したように、AC101試験のセクション(Section)5.5においては、防火物品10の試料は、約2000°Fの熱を発する加熱炉に約30分間曝露される。防火物品10の試料は、2000°Fの熱に耐えられる必要がある。すなわち、防火物品10の試料は、燃焼してはならず、防火物品10のA側で測定した温度は325°F+周囲温度を超えてはならない。従来の防火物品を使用する場合、防火物品の最外部分の温度を325°F+周囲温度以下に維持するために、2層の物品(ダクトの外側で合計約4インチの防火物品)が必要となることが分かっている。
【0031】
本発明においては、AC101試験のセクション(Section)5.4および5.5に合格するためには、防火物品10(1層が約3インチ未満の厚さの場合)を1層しか必要とせず、この1層は、適用時(または初期)厚さが約3インチ未満である。防火物品10中の膨張性材料は加熱状態への反応で体積が膨張することで、防火物品10の厚さが膨張し、それによって1層の防火物品10が、適用時厚さよりも厚い有効(あるいは膨張時または反応性)厚さを有するので、3インチ未満の厚さを有する層を1層しか必要としない。具体的には、防火物品10は、約3インチ未満の初期厚さでAC101試験のセクション(Section)5.4に適合し、膨張時厚さでAC101試験のセクション(Section)5.5に適合することが好ましい。
【0032】
ダクト12は、長手方向にともに取り付けられた多くの断片で構成されてもよく、このため各断片の間には、側方に延在した継ぎ目が存在する。ダクト12の内側の火災またはその他の形態の熱によってダクト12が変形すると、ダクト12の断片の間の継ぎ目が離れてしまう場合がある。これは、ダクト12内に含まれる火災またはその他の熱源を周囲構造15に広げる経路を提供しうるので危険となりうる。火災またはその他の熱源に反応して防火物品10が膨張し始めると、ダクト12内の分離した継ぎ目によって形成された空隙を防火物品が満たすことができる。
【0033】
図1Bに示されるように、本発明によるダクトの防火方法は、最初に、ダクトの周囲に、約3インチ未満の厚さを有する1層で防火物品10を取り付けるステップを含む。次に、ステンレス鋼ストラップ14、または銅がコーティングされた鋼製ピンなどの別の固定機構を使用して、防火物品10がダクトに固定される。当業者は、固定機構の種類を変更することができる。防火物品11は、巻き付け途中の位置にあり、どのようにして防火物品11をダクト12周囲に巻き付けることができるかを示している。ダクト12は、周囲構造15によって完全にまたは部分的に囲まれていてよい。
【0034】
図1Cは、本発明による膨張した防火物品16を示している。膨張した防火物品16は、高温に曝露した後の図1Bの防火物品10である。具体的には、ダクト12の内側が高温まで上昇すると、それによって膨張性材料の体積が膨張し、すなわち防火物品10の膨張が起こる。「高温」(または「高熱」)により膨張性材料26は、使用される膨張性材料26の種類に依存して膨張し始める。約700°F〜約1200°Fの範囲内の温度において、防火物品10の内部の膨張性材料が、その最大体積まで膨張することが好ましい。膨張した防火物品16の厚さは、防火物品10の有効厚さである。前述したように、有効厚さは、適用時厚さよりも厚く、好ましくは約3.5インチ以上である。膨張した防火物品16は、ストラップ14によってダクト12に固定されている箇所では完全には膨張しない。防火物品16が完全に膨張しないことがある箇所で、より高レベルの防火を実現するために、ストラップ14の下で固定される箇所で防火物品16を部分的に重ねることもできる。しかし、ピンまたはクリップの組み合わせなどの使用される固定機構の種類に依存して、膨張した防火物品16が、ダクト12に固定される箇所で完全に膨張する場合もある。
【0035】
図2は、本発明の第1の例示的実施形態を示している。防火物品20は、それぞれが約半インチの厚さの4つの層22で形成されている。厚さは、図2中の矢印21で示される方向で測定される。図2に示される第1の例示的実施形態は、4つの層22を有する防火物品20を示しているが、防火物品20の全体の初期厚さが約3インチ未満であり、防火物品20が前述の種々のUL、ASTM、ICBO、およびISOの基準および規格に適合するのであれば、本発明による防火物品は、あらゆる厚さの層をあらゆる数で有することができる。さらに、各層22が同じ厚さである必要はない。層22は不燃性繊維材料24と膨張性材料26とで構成される。
【0036】
膨張性材料26は、繊維材料24全体に分散している。図2において、膨張性材料26は、各層22中の繊維材料24全体に分散している。膨張性材料26は、均一に分散している場合もあり、均一性は無関係である場合もある。しかし本発明においては、膨張性材料26が、ある勾配で分散することもでき、各層が異なる量の膨張性材料26を有する場合もあり、膨張性材料26が各層内である勾配で分散している場合もある(すなわち、膨張性材料26の量が各層内で異なる)。膨張性材料26は、別個の層の中で形成されてもよい(膨張性材料26が繊維材料全体に分散せず、1つの層内に集中している場合)。これらの別の例示的実施形態については、以下に図3および4を参照して説明する。防火物品20の完全性をより高めるためには、繊維材料24全体に分散した膨張性材料26を有することが好ましい場合がある。すなわち、膨張性材料26が繊維材料24全体に分散しており、膨張性材料26が膨張すると、各層22中の繊維材料24の繊維が引き離されることで、繊維材料24が膨張することができる。
【0037】
繊維材料24は、層22全体で同じ繊維材料である場合もあり、各層22で異なる繊維材料24を使用することもできる。繊維材料24は、不燃性であるあらゆる繊維材料であってよく、「不燃性」とは、その材料がASTM E136−04および/またはASTM E84−04および/またはASTM E176の基準に適合することを意味する。繊維材料24が600°F以上の融点を有することも好ましい。繊維材料24は、有機、無機、またはそれらのブレンドであってよい。本発明により使用することができる繊維材料24の例としては、鉱物繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、またはそれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明による繊維材料は、対応する温度において以下の熱伝導率値を有することが好ましいが、必要なものではない。
【0038】

表1:繊維材料の好ましい熱伝導率値
【0039】
膨張性材料26は、周囲温度より高温のある温度に曝露した場合に体積が膨張する耐火性材料である。本発明においては、膨張性材料26は、約320°F〜約500°Fの範囲内の温度(「開始温度」)において膨張し始め、約500°F〜約1200°Fの範囲内の温度で完全に膨張した体積を有することが好ましい。膨張性材料26は、高熱に曝露した場合に膨張して炭化すべきであるが、燃焼すべきではない。膨張性材料26が完全に膨張したときに、防火物品20は最大の断熱性能を有する。防火物品20がグリスダクトラップとして使用される場合、これは、AC101グリスダクトエンクロージャ組立体の合格基準(AC101 Acceptance Criteria for Grease Duct Enclosure Assemblies)のセクション(Section)5.5(前述の他の規格以外に)に適合する必要があり、したがってグリスダクト用途の場合、防火物品20は、防火物品20が500°Fの熱に4時間曝露した後、できるだけ速く完全に膨張した体積に到達することが好ましい。
【0040】
好ましくは、防火物品20は、少なくとも約20重量パーセント(%)〜約80重量%の膨張性材料26を含む。さらにより好ましくは、防火物品20は、少なくとも約25%〜約45重量%の膨張性材料26を含む。防火物品20中に使用すべき膨張性材料26の量は、使用される種類の膨張性材料の膨張性能、および望ましい膨張の望ましい量に依存する。本発明により使用することができる膨張性材料26の例としては、黒鉛、ケイ酸ナトリウム、バーミキュライト、およびそれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明で使用可能な黒鉛の具体例の1つは、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware)のグラフテック・インターナショナル・リミテッド(GrafTech International Limited)よりグラフガード(Grafguard)の商標で市販される製品である。他の膨張性材料と比較して、黒鉛は、比較的高い融点、比較的軽量、および比較的優れた膨張のために好ましい膨張性材料である。
【0041】
膨張性材料26が、好ましくは約320°F〜約500°Fの範囲内の温度で炭化と体積の膨張とを始めると、防火物品20は、その適用時厚さからその有効厚さに向かって膨張し始める。膨張性材料26が炭化および膨張を始める温度は、使用される膨張性材料26の種類に依存して異なる。たとえば、グラフガード(Grafguard)160Cが使用される場合、膨張性材料26は、約320°F〜約428°Fの範囲内の温度で炭化および膨張を始める。防火物品20の膨張によって、より大きな体積の空間が生じ、その中で防火物品20は熱を閉じ込めることができることで、断熱性能が増加する。前述したように、約500°Fおよび約1200°Fの範囲内の温度において、膨張性材料26はその最大体積に到達し、それによって防火物品20がその有効厚さに到達することが好ましい。
【0042】
本発明による防火物品は、最初に個別の層を形成し、それらを互いに縫い合わせて防火物品を形成することによって形成することができる。たとえば、各層22が同じである図2の防火物品20の場合、防火物品20の層22は、最初に不燃性繊維材料24用の鉱物繊維とガラス繊維とを混合することによって形成することができる。あらゆる他の好適な繊維ブレンド、または1種類の不燃性の繊維を使用することができる。次に、繊維ブレンド24をポリプロピレンスクリム上に分散させ、所望の量を計り取る。当技術分野において周知の他のあらゆる種類のスクリムを使用することもできる。スクリムの大きさは、防火物品20の好ましい大きさに依存する。たとえば、防火物品が2フィート×4フィートであることが好ましい場合は、同様の寸法を有するスクリムを使用することができる。必ずしもスクリムを使用する必要があるわけではなく、連続回転ベルトまたはキャリアマットなどの平坦面を製造プロセス中に使用することもできる。
【0043】
次に、バインダーを上記繊維材料に適用する。このバインダーは、有機、無機、またはそれらのブレンドであってよい。使用可能な有機バインダーの一例は、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company,St.Paul,Minnesota)より市販される3Mカンパニー・スプレー77・アドヒーシブ(3M Company Spray 77 Adhesive)である。バインダーを適用した後、膨張性材料26を、繊維材料24およびバインダーの上に分散させる。バインダーは、膨張性材料26を繊維材料24に結合させる働きをする。バインダーは繊維形態であってもよいが、そのことが必要なわけではない。次に繊維材料24をランダム化することによって、個別の繊維の方向を変化させることができる。最後に、繊維材料24および膨張性材料26を、当技術分野において周知のニードリング方法の使用によりニードリングすることで、図2の層22が形成される。この縫い合わせプロセスの後で、ポリプロピレンスクリムを除去することができる。スクリムは、ニードリングプロセス中に材料を互いに保持するために使用される。この方法によって形成された複数の層は、当技術分野において周知の縫い合わせ方法を使用して互いに縫い合わせることができる。好適な一実施形態においては、防火物品20は、約0重量%〜約70重量%のガラス繊維、約0重量%〜約70重量%の鉱物繊維、および約30重量%〜約50重量%の黒鉛を含む。別の好適な一実施形態においては、防火物品20は、約0重量%〜約70重量%のガラス繊維、約0重量%〜約70重量%のセラミック繊維、および約30重量%〜約50重量%の黒鉛を含む。
【0044】
図3は、本発明の第2の例示的実施形態を示している。防火物品30は、好ましくはそれぞれが約半インチの厚さである4つの層32、34、36、および38で形成されている。防火物品30が4つの層32、34、36、および38を有するとして図3に示されているが、防火物品30の全体の初期厚さが約3インチ未満であり、防火物品30が関連する規格および基準に適合するのであれば、本発明による防火物品30は、あらゆる厚さの層をあらゆる数で有することができる。さらに、各層32、34、36、および38が同じ厚さである必要はない。
【0045】
層32、34、36、および38は、不燃性繊維材料40と膨張性材料42とで構成される。膨張性材料42は繊維材料40全体に分散している。繊維材料40は図2の繊維材料24に類似しており、膨張性材料42は図2の膨張性材料26に類似している。しかし、各層32、34、36、および38は実質的に同じ量の膨張性材料42を有していないため、防火物品30は防火物品20とは異なる。この実施形態においては、膨張性材料42は、防火物品30の厚さ全体にわたってある勾配で分散しており、各層32、34、36、および38は異なる量の膨張性材料42を有する。具体的には、第1の層32は第2の層34よりも少ない膨張性材料42を有し、第2の層34は第3の層36よりも少ない膨張性材料42を有し、第3の層36は第4の層38よりも少ない膨張性材料42を有する。層32と層38とが同量の膨張性材料42を含有しないのであれば、ある勾配で膨張性材料42が分散していると見なすこともできる。したがって、別の実施形態においては、層34および36は同量の膨張性材料を含有することができる。第4の層38が、ダクトまたは他のあらゆる熱源に最も近く位置に合わされ、第1の層32が、ダクトまたは他のあらゆる熱源から最も離れていることが好ましい。
【0046】
場合により、第1の層32の隣に繊維材料層(図示せず)を配置することができ、この追加の繊維材料40の層は膨張性材料42を全く含有しない。追加の繊維材料40の層は、第4の層38が受けうる温度のような非常に高い温度を扱う必要なしに、さらなる熱保護を行うことができる。防火物品20と同様に、防火物品30は、約3インチ未満の適用時厚さを有し、好ましくは約500°F〜約1200°Fの間の温度に曝露した場合に、初期厚さよりも厚く膨張する。
【0047】
図3の防火物品30は、防火物品20の場合と同様の方法を使用して形成することができる。しかし、その違いは、各層32、34、36、および38が同量の膨張性材料42を含有するのではなく、第1の層32が第4の層38よりも少ない膨張性材料42を含有し、そのため結果として得られる防火物品30の厚さ全体にわたって、ある勾配で膨張性材料42が分散することだけである。好適な一実施形態においては、防火物品30は、約0重量%〜約70重量%のガラス繊維、約0重量%〜約70重量%の鉱物繊維、および約30重量%〜約50重量%の黒鉛を含む。別の好適な一実施形態においては、防火物品30は、約0重量%〜約70重量%のガラス繊維、約0重量%〜約70重量%のセラミック繊維、および約30重量%〜約50重量%の黒鉛を含む。
【0048】
図4は、本発明の第3の例示的実施形態を示している。防火物品50は、それぞれが約0.4インチの厚さである5つの層52、54、56、58、および60で形成されている。防火物品50が5つの層52、54、56、58、および60を有するとして図4に示されているが、防火物品50の全体の初期厚さが約3インチ未満であり、防火物品50が関連する規格および基準に適合するのであれば、本発明による防火物品50は、あらゆる厚さの層をあらゆる数で有することができる。さらに、各層52、54、56、58、および60が同じ厚さである必要はない。
【0049】
層52、54、58、および60は不燃性繊維材料62で構成される。層56は、膨張性材料64で構成される別個の層である。繊維材料62は図2の繊維材料24に類似しており、膨張性材料64は図2の膨張性材料26に類似している。しかし、膨張性材料64は繊維材料62全体には分散しておらず、別個の層56中に含まれるため、防火物品50は防火物品20とは異なる。すなわち、膨張性材料64は、繊維材料62を含有しない層に含まれる。膨張性材料64は、2つ以上の別個の層56中に含まれることもできる。さらに、図4には、防火物品50の中央に膨張性材料64の別個の層56が示されているが、層56は防火物品50中のあらゆる場所に存在することもできる。たとえば、火災またはその他の熱源に最も近くなる防火物品50の面の近くに層56を配置することが好ましい場合があり、これによって膨張性材料64は、より高温に曝露され膨張が速く始まることができる。別個の層56は、前述の他の例示的実施形態のいずれかと組み合わせて使用することもできる。
【0050】
防火物品20および30と同様に、防火物品50は、約3インチ未満の適用時厚さを有し、好ましくは約500°F〜約1200°Fの間の温度に曝露した場合に、初期厚さよりも厚い膨張時厚さを有する。膨張性材料56の別個の層が繊維材料の2層(たとえば、層54および58)の間に配置される場合、隣接する繊維材料62の層の繊維は、膨張性材料が膨張するときに引き伸ばされることで、防火物品50が膨張できるので、繊維材料全体に分散するのではなく膨張性材料が別個の層56の中に配置される場合でも、防火物品50は高レベルの完全性をなお有することができる。
【0051】
不燃性繊維層52、54、58、および60は、最初に、不燃性繊維材料に望ましい繊維を混合することによって形成することができる。この場合も、繊維ブレンドを使用する必要はなく、1種類の繊維を使用することもできる。次に、繊維または繊維ブレンドをポリプロピレンスクリム上でけば立てて、所望の量を計り取る。当技術分野において周知の他のあらゆる種類のスクリムを使用することもでき、他のあらゆる平坦面を使用することもできる。膨張性材料56の別個の層は、最初に、不燃性繊維材料層を分散させ、次に膨張性材料56を分散させることによって形成することができる。次に、不燃性繊維材料層および膨張性材料56のニードリングを行う。最終的に、不燃性繊維材料層の上に、膨張性材料56の別個の層が形成される。膨張性材料56の別個の層の形成に使用した不燃性繊維材料層の厚さは変動させることができる。膨張性材料56の別個の層の厚さは、防火物品50が含むべき膨張性材料の量によって決定され、これは、使用される種類の膨張性材料の膨張力によって決定される。たとえば、膨張性材料の種類として黒鉛が選択される場合、使用すべき膨張性材料の好ましい量は約30%重量〜約50重量%である。最後に、層52、54、56、58、および60は所望通りに配列して(すなわち、膨張性材料層58の配置は、層52、54、58、および60の中央でもよいし、他の位置でもよい)、当技術分野において周知の方法を使用して互いに縫い合わせることができる。好適な一実施形態においては、防火物品50は、約0重量%〜約70重量%のガラス繊維、約0重量%〜約70重量%の鉱物繊維、および約30重量%〜約50重量%の黒鉛から形成される。別の好適な一実施形態においては、防火物品50は、約0重量%〜約70重量%のガラス繊維、約0重量%〜約70重量%のセラミック繊維、および約30重量%〜約50重量%の黒鉛を含む。
【0052】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない形態および詳細の変更を行えることが理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】本発明の防火物品の構造の一例を示している。
【図1B】本発明の防火物品をダクト周囲に巻き付ける方法の一例を示している。
【図1C】本発明による膨張した防火物品を示している。
【図2】本発明の第1の例示的実施形態を示している。
【図3】本発明の第2の例示的実施形態を示している。
【図4】本発明の第3の例示的実施形態を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトの防火のための物品であって:
不燃性繊維材料を含む第1の材料の第1の層と、
膨張性材料を含む第2の材料の第2の層と、を含み、前記第1の層は前記第2の層に隣接しており、
前記物品は、非自立性であり、第1の適用状態にあるときには約3インチ未満の初期厚さを有し、第2の加熱状態にあるときには膨張時反応性厚さを有し、前記膨張時厚さは前記初期厚さよりも厚く、前記膨張時厚さにあるとき、前記物品は、建築役員国際会議によって2001年4月に規定されたAC101グリスダクトエンクロージャ組立体の合格基準のセクション5.5に適合する、物品。
【請求項2】
前記初期厚さが約1インチ〜約2インチである、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記膨張時厚さが約3.5インチ以上である、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記第1の層が、前記繊維材料全体に分散した前記膨張性材料をさらに含む、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記第2の層が、前記第1の層よりも多くの前記膨張性材料を含む、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記第1の材料および前記第2の材料が実質的に類似している、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記不燃性繊維材料が、鉱物繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、およびそれらのブレンドからなる群より選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記不燃性繊維材料が600°F以上の融点を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記膨張性材料が、黒鉛、ケイ酸ナトリウム、バーミキュライト、およびそれらのブレンドからなる群より選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
約20重量%〜約80重量%の前記膨張性材料を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
約25重量%〜約45重量%の前記膨張性材料を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
約0〜約70重量%のガラス繊維と、
約0〜約70重量%の鉱物繊維と、
約30〜約50重量%の黒鉛と、を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項13】
約0〜約70重量%のガラス繊維と、
約0〜約70重量%のセラミック繊維と、
約30〜約50重量%の黒鉛と、を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項14】
防火ダクト組立体の一部としてダクト周囲に取り付けられる、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記ダクトが、グリスダクト、化学排気ダクト、ならびに加熱、換気、および空調用のダクトからなる群より選択される、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
ダクトの防火のための非自立性シートであって:
不燃性繊維材料と、
前記不燃性繊維材料全体に分散した膨張性材料と、を含み、
第1の適用状態にあるときには約3インチ未満の初期厚さを有し、第2の加熱状態にあるときには前記初期厚さよりも厚い反応性厚さを有する、非自立性シート。
【請求項17】
前記反応性厚さが約3.5インチ以上である、請求項16に記載の非自立性シート。
【請求項18】
約20重量%〜約80重量%の前記膨張性材料を含む、請求項16に記載の非自立性シート。
【請求項19】
前記不燃性繊維材料の複数の層から形成され、前記複数の層が第1の層と第2の層とを含み、前記第1の層が、前記第2の層よりも少ない膨張性材料を有する、請求項16に記載の非自立性シート。
【請求項20】
ダクトの防火方法であって:
約3インチ未満の厚さを有する層として非自立性防火物品を前記ダクトの周囲に取り付けるステップであって、前記防火物品が、不燃性繊維材料と膨張性材料とを含み、前記防火物品の前記層が、建築役員国際会議によって2001年4月に規定されたAC101グリスダクトエンクロージャ組立体の合格基準のセクション5.5に適合するステップと、
前記防火物品を前記ダクトに固定するステップと、を含む、防火方法。
【請求項21】
前記防火物品が、前記膨張性材料が散在する前記不燃性繊維材料の複数の層で形成され、前記複数の層が、第1の層と第2の層とを含み、前記第1の層が、前記第2の層よりも少ない膨張性材料を有する、請求項20に記載のダクトの防火方法。
【請求項22】
前記不燃性繊維材料が層として配置され、前記膨張性材料が、前記繊維材料層に隣接する膨張性材料の別個の層として配置される、請求項20に記載のダクトの防火方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−531323(P2008−531323A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555109(P2007−555109)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/002248
【国際公開番号】WO2006/088611
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】