説明

ダスト捕集体の清掃装置

【課題】 現実の整備サービス現場における作業実態に合うダスト捕集体の清掃装置を開発しようとするものである。
【解決手段】 本発明のダスト捕集体の清掃装置Cは、内部を処理室20bとした筒状のドラム本体20と、処理室20b内空気を吸引する吸引装置3と、吹出ノズル装置5とを具え、処理室20b内にダスト捕集体(f)を受け入れた状態で粉塵(D)を除去し、ドラム本体20から排出する装置であって、前記ドラム本体20は、傾斜状態に設けられるとともに、処理室20b内にはドラム内壁に沿うように軸方向を配置した少なくとも一対のサポートローラ24と、処理室20b底部寄りに前記サポートローラ24とほぼ直交する方向であって、底部のほぼ中心を通る線上に設けられるセンターローラ25を具え、これらサポートローラ24と、センターローラ25とは、いずれか一方または双方が駆動可能状態であることを特徴として成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車エンジン用エアフィルタや、DPF(Diesel Particulate Filter)と呼ばれるディーゼルエンジンの排ガスカーボンの捕集フィルタ等のダスト捕集体を主たる処理対象とした、ダスト捕集体の清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記エアフィルタやDPF等のダスト捕集フィルタを代表とするダスト捕集体は、使用を経るにつれて、捕集した粉塵(ダスト)等がフィルタエレメントに付着し、浄化能力を低減させる。このため、これらダスト捕集体にあっては、それ自体が劣化して交換サイクルが来るまでは適宜の期間ごとに清掃してダスト除去を行い、エンジン性能を維持するための管理が行われている。
このようなフィルタ捕集エレメントに付着したダスト除去にあたっては、エアブロー等による物理的なダスト除去の手法が採られるが、更にエアブローに伴うダストの飛散による周辺作業環境の悪化を防ぐため、これらのダストを飛散させることなく回収する吸引手法があわせ考慮されている(特許文献1、2)。
【0003】
この一例として、エアフィルタのみを処理対象とし、これを密閉自在のチャンバーに挿入してエアブローと吸引とを行うものが市場に提供されているが、その普及は十分ではない。その理由は、サービス現場での作業実態、即ち作業頻度や、作業難易度等の観点から観て、装置導入コストが過大であることが挙げられる。
加えて従来のこのような大掛かりな装置にあっては、清掃作業こそ全自動で行えるものの、その作業の段取りを含めると、必ずしも作業時間を十分短縮できるものではない。
加えて更にこの装置は、エアフィルタのみを対象とした専用装置であり、近時作業要求が高まっているDPFの清掃については考慮されておらず、兼用もできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−4914号公報
【特許文献2】特開平06−47220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの種々の背景を考慮してなされたものであって、現実の整備サービス現場における作業実態に合う装置を開発しようとするものである。即ち、本発明は、エアフィルタとDPFとの双方を処理できること、異形形状のものであっても処理が可能であること、作業性が良好であること、低コストで供給可能なシンプルな構成であること、などの種々の技術的課題を解決することができる新規なダスト捕集フィルタをはじめとするダスト捕集体の清掃装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のダスト捕集体の清掃装置は、内部を処理室とした筒状のドラム本体と、このドラム本体に接続され、処理室内空気を吸引する吸引装置と、ドラム本体の処理室内に挿入操作自在の吹出ノズル装置とを具え、処理室内にダスト捕集体を受け入れた状態で吸引装置を作用させながら、吹出装置からの吹出風により、ダスト捕集体に捕集された粉塵を除去し、この粉塵を吸引装置によりドラム本体から排出する装置であって、
前記ドラム本体は、傾斜状態に設けられるとともに、ドラム本体の処理室内にはドラム内壁に沿うように軸方向を配置した少なくとも一対のサポートローラと、処理室底部寄りに前記サポートローラとほぼ直交する方向であって、底部のほぼ中心を通る線上に設けられるセンターローラを具え、これらサポートローラと、センターローラとは、いずれか一方または双方が駆動可能状態であることを特徴として成るものである。
【0007】
請求項2記載のダスト捕集体の清掃装置は、前記請求項1記載の要件に加えて、前記センターローラにおける支持作用面を中心下がり状態としていることを特徴として成るものである。
【0008】
請求項3記載のダスト捕集体の清掃装置は、前記請求項1または2記載の要件に加えて、前記吸引装置が接続される部位におけるドラム本体の内側には、異物捕集用の吸引口カバーが設けられていることを特徴として成るものである。
【0009】
請求項4記載のダスト捕集体の清掃装置は、前記請求項1、2または3記載の要件に加えて、前記処理室内空気を吸引する吸引装置は、更にその後段に回収装置を接続させるものであり、これら吸引装置と回収装置とは、共に前記ドラム本体を支持するフレーム上に搭載されていることを特徴として成るものである。
【0010】
請求項5記載のダスト捕集体の清掃装置は、前記請求項4記載の要件に加えて、前記回収装置は、上下方向に短寸の円胴状のダスト捕集ドラムと、その上方に設けられるバグフィルタと、その下方に設けられる回収袋とを具え、
前記ダスト捕集ドラムに対して空気の案内方向が接線方向となるようにダスト受入孔が形成されると共に、ダスト捕集ドラムの内側にはダスト受入孔より上方に下窄まりの内フランジ状にサイクロンガイドが設けられ、
一方前記回収袋は、上下方向の間に窄まり部を有し、前記ダスト捕集ドラムと回収袋における窄まり部上方のサイクロン反転部とが協働的にサイクロン作用部を構成し、サイクロン作用によりダストの主たる回収を行うようにしていることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0011】
まず請求項1記載の発明によれば、清掃ドラムユニットにおけるドラム本体が傾斜状態に設けられており、この処理室内壁面に沿って並設されているサポートローラ上に被処理体であるダスト捕集体を寄せることにより、前記ダスト捕集体は、その底部がドラム本体の底部寄りに設けられたサポートローラに接する。そしてサポートローラを回転駆動させることにより、通常中心部が開口した円筒状のエアフィルタの場合、ドラム本体の処理室内においてサポートローラに傾斜状態に支持されながらセンターローラの駆動を受けて回転する。この際、作業者が吐出ノズルによりエアフィルタの表面を圧力を吹きかけ捕集されていたダストを飛ばしながら、一方で吸引装置の作用によりドラム本体内の空気を吸引することにより、ダストを処理室から円滑に排除する。
このような作用により、簡単な構成の下に効果的なダスト捕集体等の清掃が可能となる。
【0012】
また請求項2記載の発明によれば、センターローラは、一点でダスト捕集フィルタと接するからセンターローラによるダスト捕集フィルタの回転駆動が円滑、且つ確実になされる。
【0013】
また請求項3記載の発明によれば、吸引口カバーの存在により、ダスト以外の異物が誤って回収装置側へ吸い込まれることを防止できる。
【0014】
また請求項4記載の発明によれば、清掃装置として、清掃ドラムユニット、吸引装置、回収装置とを一体に具えたものであり、ダスト回収までをこの清掃装置で完結できる。
【0015】
また請求項5記載の発明によれば、ダスト捕集ドラムを短寸に構成しながらも、下方の回収袋を中窄まり状態とすることにより、両者が協働的にサイクロン作用部を構成でき、コンパクトな回収装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のダスト捕集体の清掃装置の正面からの斜視図(a)であり、併せ、ダスト捕集フィルタ並びに適用される車輌を示すとともに(b)において作動状態の断面図を示す。
【図2】同上分解斜視図である。
【図3】同上背面からの斜視図である。
【図4】清掃ドラムユニットの開口側からの平面図である。
【図5】同上縦断側面図である。
【図6】同上センターローラの他の実施例を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態は、以下述べる実施例をその一つとするものであるとともに、この技術思想に基づく種々の改良した実施例をも含むものである。
【実施例】
【0018】
符号Cは、本発明たる清掃装置であり、このものは、ダスト捕集フィルタfに捕集されたダストDを清掃除去するものである。
なおダスト捕集体の一例としてのダスト捕集フィルタfとしては、自動車用の燃焼空気を清浄するためのエアフィルタfaや、ディーゼルガス粉塵(主としてカーボン粒子)を捕集するためのDPFfdであるが、他の産業機器等に用いられているダスト捕集フィルタが適用できることは、言うまでもない。
【0019】
まず清掃装置Cは、自動車の整備サービス工場等で使用されることを考慮し、比較的コンパクトで移動自在に構成されていることが好ましい。即ち、平面視で角枠シャーシ状のフレーム1に対し、清掃ドラムユニット2と、吸引装置3と、回収装置4と、吐出ノズル装置5とが搭載された形態を採る。まずフレーム1は、移動自在とするためにその底面にキャスタ10を具える。フレーム1の上面には、前記清掃ドラムユニット2を支持するドラム支持ブラケット11を具え、更にその側方には、吸引装置3と回収装置4とを支持するダスト回収テーブル12が設けられる。
【0020】
次に清掃ドラムユニット2について説明する。
清掃ドラムユニット2は、ドラム本体20を主要部材とするものであり、ドラム本体20は、一例として円胴状の中空部材であり、上部が開放されて、上部開口20aを形成するとともにその内部を処理室20bとする。更にドラム本体20の底部には、底部ホッパ21が形成されるものであり、いわば底窄まり状の形態を採る。このドラム本体20は、フレーム1に対し、傾斜配置されるものであって、その傾斜角度は、錘直に立てた状態を90°として、約40°〜60°の範囲で傾斜させた状態で設定できるが、50°の傾斜が好ましい一例である。
【0021】
一方、上部開口20a側には、やや外側に拡がるように上部パネル22が形成され、この上部パネル22を利用して種々のコントロールスイッチ23が設けられる。
更にこのコントロールスイッチ23とともに、これと対設されるようにエアレギュレータダイヤル23Aが設けられる。このものは、詳細な図示を省略するが、前記吐出ノズル装置5への圧搾空気供給経路途中に設けられるエアレギュレータを操作し、エア吐出圧をコントロールするつまみ部材である。このエアレギュレータダイヤル23Aの設定により、処理対象物たるダスト捕集フィルタfの種類に応じて適切なブローエアの圧力設定を行う。
なお、前記上部パネル22は、ドラム本体20の上部開口20aに対し、やや内側まで庇状に張り出すように内張出部22Aが形成されている。これによって、処理室20b内に飛散するダストDの動きが抑えられ僅かな庇状の内張出部22Aではあるものの、処理室20b内のダストDが、上部開口20aから舞い上がることを防止する。
【0022】
そしてドラム本体20内には、サポートローラ24が設けられる。このサポートローラ24は、傾斜配置されたドラム本体20の処理室20bの内壁に沿って、その下方側に一例として一対の設けられるものであって、処理室20bのドラムのほぼ高さ方向のほぼ全範囲に亘って設けられている。
なおサポートローラ24は、この実施例では自由回転するフリーローラであるが、別途回転駆動可能な状態に構成してもよい。
【0023】
このサポートローラ24の下端近くにセンターローラ25が設けられる。即ちセンターローラ25は、ドラム本体20の底部ホッパ21近くである処理室20b底部寄りに、前記サポートローラ24と、ほぼ直交する向きであってドラム本体20の底部のほぼ中心を通る線上に設けられている。このセンターローラ25は、駆動可能に設けられるものであって、具体的にはアウタロータタイプのモータユニットを適用することにより、センターローラ25自体にモータ機構が組み込まれた形態を採る。なお符号26は、ドラム本体20の底部近くに配設した軸受ステーであり、前記センターローラ25を、そのドラム本体20の中心端部において支持している。
このセンターローラ25の側面視の配設態様は、その回転中心軸をドラム本体20の中心寄りでは、底部ホッパ21側に偏寄するような形態としている。この結果、その表面である駆動作用面25aがドラム本体20の中心よりの部位で、先下がり状となるような形態となっている。これは、後述するように、円筒状のエアフィルタfaを適用して、これを処理室20b内で回転させて清掃処理を行う場合、その駆動を行うセンターローラ25は、エアフィルタfaに常に一点で接して作用するような形態を採るためである。従って、センターローラ25の駆動作用面25aが例えば図6に示すように先窄まり状のテーパ形状とした場合、例えばセンターローラ25の回転中心軸は、ドラム本体20の長手方向に対し、直交する状態に配設することももとより可能である。なおセンターローラ25を先下がり状とする場合、図面では誇張して図示しているが約5°程度の角度に設定することが好ましい。
【0024】
更にドラム本体20の底部ホッパ21側には、吸引口27が一例としてその中心に設けられ、そこから更に吸引管27aが外部に延長形成されている。一方、吸引口27には、通気性を有するメッシュ状の吸引口カバー28が設けられる。このものは、作業中に不用意にエアフィルタfa等の固定に用いられることのあるワッシャ、ナット等が入り混んだ際に、このものが吸引されることがないようにするための部材である。この吸引口カバー28は、図1(b)、図4、図5(a)に示すように全体として通気性を有する上蓋部28c付きの筒型とするほか、図5(b)に例示するように上蓋部が存在しない上下筒抜けとして上部開口28mを具えた形態の吸引口カバー28Aとしてもよい。
【0025】
次に吸引装置3について説明する。
この吸引装置3は、処理室20bで発生するダストDを吸引することにより、周辺環境を悪化させないためのものである。その主要部材として、清掃ドラムユニット2に隣接して吸引ブロワ30が設けられるものであり、吸引ブロワ30とドラム本体20とは、吸引ホース31で接続されている。この吸引ブロワ30の吐出側には、吐出ホース32が設けられ、この吐出ホース32は、後述する回収装置4に至るものである。
【0026】
次に回収装置4について説明する。
回収装置4は、ダスト捕集ドラム41と、バグフィルタ42と、回収袋43とを主要部材として構成される。ダスト捕集ドラム41は、円胴状の部材であって、その上方に前記バグフィルタ42を具える。またダスト捕集ドラム41の胴内には、ホッパ状のサイクロンガイド44が設けられると共にダスト捕集ドラム41の下方には、前記回収袋43が吊り下げ状態に適宜クリップリング等で固定取り付けされる。
【0027】
この構成ついて更に詳しく説明すると、回収装置4は、サイクロン作用によってダストDを捕集するものであって、このため上下方向に視て短寸のダスト捕集ドラム41と、その下方の回収袋43の上方部位とが協働して、サイクロン作用部を構成する。即ちダスト捕集ドラム41は、ホッパ状のサイクロンガイド44の下方に前記ダスト受入孔45を設けるものであって、平面視での形成方向は、空気の案内方向がダスト捕集ドラム41の接線方向である。
なおここでダスト捕集ドラム41が「短寸」とは、後述するようにこのものがサイクロン作用によりダストDの回収を行うことから、サイクロン作用を生起させるには充分でない高さであることを意味する。
【0028】
一方回収袋43は、例えば透明樹脂袋が適用され、内部のダストDの捕集状態が外部から目視できる。この回収袋43は、その上下方向の間、一例としてその中間部位において規制リング46によって絞り込まれるように規制され窄まり部43Aを形成する。この窄まり部43Aを境に上方部位がサイクロン作用部の一部となるサイクロン反転部43Bを構成すると共に下方がダスト回収部43Cとなる。この規制リング46の直径は、回収袋43の膨らみ状態における直径の1/4〜1/2程度であるが、吹き込まれる風量、風速、ダストDの粒度、質量等により、この範囲外であっても適切な寸法が選択できる。また窄まり部43Aの高さ位置も同様に条件により選択できるが、例えば中間位置を中心として高さ方向上下から1/3程度の高さに挟まれた範囲とすることが一例として選択できる位置である。
【0029】
次に吐出ノズル装置5について説明する。
このものは、ノズル本体51を主要部材とするものであり、適宜作業者が手に持ってこれを操作する。またノズル本体51の基端部からは、エアホース52が延長され、まずエアレギュレータダイヤル23Aと一体のエアレギュレータ本体を経由し、更にこのエアホース52は、フレーム1に搭載されたエア源ホースジョイント53に接続される。そしてエア源ホースジョイント53には、例えば整備サービス工場等に常設されているエアコンプレッサの圧力配管を接続させることにより、噴出エアの供給を受ける。もちろんノズル本体51の手元側には、噴出量をコントロールするためのトリガーを具えている。
【0030】
本発明のダスト捕集フィルタfの清掃装置Cは、以上述べたような具体的な構成を有するものであり、以下のように用いられる。
まず清掃の基本的な処理形態を述べると、被処理体たるダスト捕集フィルタfが、常時開口しているドラム本体20の上部開口20aから処理室20bにセットされる。この状態で、吸引装置3における吸引ブロワ30を作動させるとともに、吐出ノズル装置5を操作してノズル本体51から圧搾空気を吐き出し、ダスト捕集フィルタfに捕集されたダストDを吹き飛ばしながら、ダストDを周辺の空気ごと吸引ブロワ30により吸引する。
吸引ブロワ30による吸引は、ドラム本体20の底部ホッパ21の吸引口27からなされる。このとき吸引口27には、吸引口カバー28が設けられているからダストD以外の異物、例えばダスト捕集フィルタfに固着していたワッシャなどの異物Wが脱落し、吸引されようとしたときでも、ここで捕捉される。
このとき前記したように図5(b)に示す筒抜け状の形態の吸引口カバー28Aにあっては、次のような作用効果を奏する。即ち、このタイプの吸引口カバー28Aは、ダストDの確実な吸引排除を助けるものであって、その理由は、吸引口カバー28Aの上部は、開放しており、吸引ブロワー30の吸引作用に対し、負圧方向での圧力損失を生じず、充分なダストDの吸引がされるからである。
一方筒抜け状であることに因み吸引口カバー28Aによって、異物Wが捕捉されないという懸念があるが、実際には図5(b)に示すようにドラム本体20が傾斜していることによって、ほとんどの質量の大きな異物Wは、垂直に落下し吸引口カバー28Aの上部開口28mに入り込むことは殆ど防止される。
またこの吸引口カバー28Aは、上部開口28mからの確実な吸引が達成されていることから、例え異物Wが大量に捕捉され、吸引口カバー28Aの周囲に集中したとしても、ダストDの捕集能力を低下させてしまうことがない。
【0031】
一方ダスト捕集フィルタfの清掃作業中、ドラム本体20の処理室20b内では、前述したように吸引がなされているとは言え、ダストDの飛散環境となる。この際、上部開口20aには、庇状の内張出部22Aが形成されていることから、この部位が作用して外部へのダストDの飛散を防止する。そして、吸引装置3の吐出ホース32は、回収装置4に接続され、ここでダストDの捕集がなされる。
即ち回収装置4は、先に述べたようにダスト捕集ドラム41と下方の回収袋43の上部部位とが、協働的にサイクロン作用部を構成し、これによってダストDを回収袋43のダスト回収部43Cに集める。具体的には、まずダスト受入孔45から送られるダストDを含んだ空気は、サイクロンガイド44とダスト捕集ドラム41の内周壁とにより案内され、高速渦流を構成し、下方で反転し、中心渦流となって上昇する。このとき、質量の大きなダストDをはじめとして、多くのダストは、空気流とは分離され、回収袋43内に落下し捕集される。この際、一旦ダスト回収部43Cに落下したダストDは、窄まり部43Aがあることからここでサイクロン作用部における気流の影響を受けずに捕捉された状態で留まる。
一方で一部サイクロンの中心渦流と共に上昇した一部のダストDは、バグフィルタ42により捕集され、このものは、運転を停止した状態でバグフィルタ42に手作業等でたたくような衝撃や振動を与えることにより下方に落下し、回収袋43内に回収される。
【0032】
このとき清掃ドラムユニット2は、受け入れるダスト捕集フィルタfの形態に応じて、それぞれ異なる作用形態を採る。
(i)円筒状エアフィルタfa
エアフィルタfaは、最も一般的な形態については円筒状であり、エアフィルタfaの外周から外気を吸い、フィルタエレメントによりダストDを捕捉したのち、清浄化した空気を車両のエンジンEに供給する。
このような円筒状のエアフィルタfaの場合には、このものは車体から取り外されたのち、ドラム本体20においる処理室20b内の一対のサポートローラ24上に載置され、清掃処理を受ける。このときドラム本体20が傾斜していることから、サポートローラ24上に置かれたエアフィルタfaは、傾斜姿勢を採り、且つエアフィルタfaの底部よりの外周円は、図1(b)、図5、図6に示すようにセンターローラ25に接触した状態となる。この状態でセンターローラ25を駆動すれば、その回転がエアフィルタfaに摩擦伝達され、サポートローラ24上で回転する。エアフィルタfaの回転駆動にあたっては、この実施例ではセンターローラ25による駆動がされているが、ドラム本体20の傾斜角度によっては、サポートローラ24を回転させ、これによって支承したエアフィルタfaを回転させてもよい。またサポートローラ24とセンターローラ25との双方で駆動することも差し支えない。
因みに、このときドラム本体20に受け入れ可能なエアフィルタfaのサイズとしては、処理室20bに収納し得る最大の寸法からサポートローラ24による支持が可能な小径のものまで種々の形態のものが適用できる。
【0033】
このような状態で、作業者は回転するエアフィルタfaの主として中心側に吐出ノズル装置5におけるノズル本体51を差し込むようにして、専らこの上下方向に、即ち上部開口20aからノズル本体51を出し入れするような方向に移動を行いながら、エアフィルタfaに捕捉されたダストDを吹き飛ばすようにする。もちろん、エアフィルタfaの外周側もフィルタエレメント内にダストDを押し込まないような配慮の下に、ノズル本体51によってダストDの除去を図ることも差し支えない。この作業にあたって、エアレギュレータダイヤル23Aを調節して、適切な圧力でのノズル本体51からのエア吐出を得る。
このように作業者の操作としては、ノズル本体51を処理室20bから出し入れするような操作を行うのみであっても、被処理物たるエアフィルタfaは回転状態を維持しており、結果的に満遍なくエアフィルタfaに捕捉されていたダストDを除去することができる。そして除去されたダストDは、吸引装置3の作用により順次吸引排除される。
【0034】
(ii)異形エアフィルタfa
一方特殊な例ではあるが、エアフィルタfaの中には、円筒状でない異形のものも存在する。
このような場合は、敢えて回転駆動させず、サポートローラ24とセンターローラ25とによって、エアフィルタfaが支持されるように処理室20b内に置く。即ちセンターローラ25の駆動は行われずに、いわば静止状態で作業が行われる。
この場合、吐出ノズル装置5の操作にあたっては、このものを処理室20bから出し入れするような方向に操作するとともにエアフィルタfaの全周囲に亘って満遍なくダストDの除去ができるように、順次噴出する角度を変えながら、全周に亘ってのダストDの除去を行う。
このような異形のエアフィルタfaであってもドラム本体20内に収納しうるような形状であれば、どのような形態であっても処理が可能である。
【0035】
(iii)DPFfdの清掃
DPFfdは、排気の流れ方向に沿うように多数の長孔が形成されたセラミックブロックの形態を採るものであり、エアフィルタfaと異なり、中心部からの吐出ノズル装置5によるダストDの除去は行わず、排気上流側の端部から下流に向けてのエア吹き出しとなる。
DPFfdの場合、異径エアフィルタfaと同様に被処理体を回転させながらの処理は行わない。この場合、DPFfdの端面に圧搾空気を吹き付けるようにして、その衝撃でDPFfdの表面に付着した排気カーボン等のダストDの除去を行う。このときの圧搾空気の吐出状態をエアレギュレータダイヤル23Aによって設定するものであり、被処理物の性状に適した圧力に設定できる。
そして、DPFfdから遊離したダストDは、吸引装置3による吸引作用により回収装置4に至り、バグフィルタ42によって捕集される。
【0036】
〔他の実施の形態〕
本発明は以上述べた実施の形態を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
即ち、先に述べた実施例では、フレーム1に対し、清掃ドラムユニット2のほか、吸引装置3、回収装置4を搭載したが、これら吸引装置3、回収装置4については、一体に搭載せず、既存のバキュームクリーナや、既設のバキューム配管等を利用することももより可能である。
また吐出ノズル装置5に対しての圧搾空気の供給は、既設管からの供給を前提とするほか、フレーム1に対してエアコンプレッサを搭載することによって行ってもよい。
なお本発明の処理対象として、車両用のエアフィルタfa、排気ガス浄化用のDPFfdについて応用例を示したが、適宜のエアコンフィルタ等のダスト捕集フィルタfに適用し、ダストD除去を行うことができることは言うまでもない。更にダスト捕集体としては、フロアマット、灰皿等をも含む。
【符号の説明】
【0037】
C 清掃装置
D ダスト
E エンジン
f ダスト捕集フィルタ
fa エアフィルタ
fd DPF
W 異物

1 フレーム
10 キャスタ
11 ドラム支持ブラケット
12 ダスト回収テーブル

2 清掃ドラムユニット
20 ドラム本体
20a 上部開口
20b 処理室
21 底部ホッパ
22 上部パネル
22A 内張出部
23 コントロールスイッチ
23A エアレギュレータダイヤル
24 サポートローラ
25 センターローラ
25a 駆動作用面

26 軸受ステー
27 吸引口
27a 吸引管
28 吸引口カバー(上蓋部付タイプ)
28A 吸引口カバー(筒抜け状タイプ)
28c 上蓋部
28m 上部開口

3 吸引装置
30 吸引ブロワ
31 吸引ホース
32 吐出ホース

4 回収装置
41 ダスト捕集ドラム
42 バグフィルタ
43 回収袋
43A 窄まり部
43B サイクロン反転部
43C ダスト回収部
44 サイクロンガイド
45 ダスト受入孔
46 規制リング

5 吐出ノズル装置
51 ノズル本体
52 エアホース
53 エア源ホースジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を処理室とした筒状のドラム本体と、このドラム本体に接続され処理室内空気を吸引する吸引装置と、ドラム本体の処理室内に挿入操作自在の吹出ノズル装置とを具え、処理室内にダスト捕集体を受け入れた状態で吸引装置を作用させながら、吹出装置からの吹出風により、ダスト捕集体に捕集された粉塵を除去し、この粉塵を吸引装置によりドラム本体から排出する装置であって、
前記ドラム本体は、傾斜状態に設けられるとともに、ドラム本体の処理室内にはドラム内壁に沿うように軸方向を配置した少なくとも一対のサポートローラと、処理室底部寄りに前記サポートローラとほぼ直交する方向であって、底部のほぼ中心を通る線上に設けられるセンターローラを具え、これらサポートローラと、センターローラとは、いずれか一方または双方が駆動可能状態であることを特徴とするダスト捕集体の清掃装置。
【請求項2】
前記センターローラにおける支持作用面を中心下がり状態としていることを特徴とする前記請求項1記載のダスト捕集体の清掃装置。
【請求項3】
前記吸引装置が接続される部位におけるドラム本体の内側には、異物捕集用の吸引口カバーが設けられていることを特徴とする前記請求項1または2記載のダスト捕集体の清掃装置。
【請求項4】
前記処理室内空気を吸引する吸引装置は、更にその後段に回収装置を接続させるものであり、これら吸引装置と回収装置とは、共に前記ドラム本体を支持するフレーム上に搭載されていることを特徴とする請求項1、2または3記載のダスト捕集体の清掃装置。
【請求項5】
前記回収装置は、上下方向に短寸の円胴状のダスト捕集ドラムと、その上方に設けられるバグフィルタと、その下方に設けられる回収袋とを具え、
前記ダスト捕集ドラムに対して空気の案内方向が接線方向となるようにダスト受入孔が形成されると共に、ダスト捕集ドラムの内側にはダスト受入孔より上方に下窄まりの内フランジ状にサイクロンガイドが設けられ、
一方前記回収袋は、上下方向の間に窄まり部を有し、前記ダスト捕集ドラムと回収袋における窄まり部上方のサイクロン反転部とが協働的にサイクロン作用部を構成し、サイクロン作用によりダストの主たる回収を行うようにしていることを特徴とする請求項4記載のダスト捕集体の清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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