説明

ダニ駆除用水性液体組成物およびダニ駆除方法

【課題】室温で高いダニ駆除効果を発揮すると同時に、対象物に対して均一にダニ駆除効果を付与でき、しかも水性であって環境適合性等が高く、かつ、汎用性が高いダニ駆除用水性液体組成物と、これを用いたダニ駆除方法の提供。
【解決手段】下記の(A)成分、(B)成分および(C)成分を含有することを特徴とするダニ駆除用水性液体組成物。(A)炭素数8〜22の長鎖炭化水素基(ただし、該長鎖炭化水素基は、アミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい。)を分子内に1つ以上有する3級アミン、該3級アミンの中和物および該3級アミンの4級化物からなる群から選択される1種以上の化合物。(B)特定の二塩基酸ジエステル化合物。(C)炭素数2〜6の一価アルコール、炭素数2〜6の多価アルコールおよび特定のグリコールエーテル化合物からなる群から選択される1種以上の水溶性溶剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な種類のダニ駆除に好適に使用されるダニ駆除用水性液体組成物およびこれを使用したダニ駆除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダニの一種であるチリダニが排泄する糞や死骸は、アレルギーの原因物質となることが知られており、また、他のダニの種の中には、吸血したり、寄生により痒みを発症させたりするものがある。そのため、これらのダニを殺傷(殺ダニ)したり忌避したりすること、すなわちダニ駆除が公衆衛生における重要な課題となっている。
しかしながら、気密性の高い現在の住居環境は、チリダニが生育し易いものになってきており、布団などの寝具類やカーペットをはじめ、住居内の多くの生活用品がダニアレルゲンで汚染されるようになってきている。また、ペットブームなどを背景として、家畜やペットに寄生したり吸血したりするダニが、ヒトに対しても影響を及ぼすことが危惧されている。
【0003】
上記背景から、高いダニ駆除効果が得られるダニ駆除方法について検討されている。
例えば、非特許文献1には、50℃以上の熱水で加熱することにより殺ダニができることが報告されている。
特許文献1には、繊維製品に対する柔軟化効果や静電気防止効果などを有し、しかも環境適合性等も高いモノまたはジ長鎖炭化水素基含有第4級アンモニウム塩を主基剤としてダニ駆除効果を得る技術が開示されている。
一方、特許文献2には、ダニ駆除用の油性組成物として、カチオン性界面活性剤系抗菌剤と、防ダニ性を有する有機リン系殺虫剤又はピレスロイド系殺虫剤などの化合物と、非イオン性界面活性剤とを併用して、さらに有機溶剤を用いて組成化されたものが開示されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、分子内に窒素原子を有する有機化合物に、屋内ダニ誘引抑制剤を併用した組成物(水性組成物も可能)が提案され、実施例として、ジ長鎖炭化水素基含有第4級アンモニウム塩に環状脂肪族カルボン酸エステル化合物を併用した技術が開示されている。
一方、特許文献4には、直鎖状脂肪族カルボン酸エステルであるセバシン酸エステルを単独でダニ駆除剤として用いる技術が開示されている。
【非特許文献1】G.Lindy,「J.Allergy Clin.Immnol.」,vol.90,599(1992)
【特許文献1】特開昭61−212501号公報
【特許文献2】特開平11−246308号公報
【特許文献3】特開2005−137868号公報
【特許文献4】特開2005−53827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1の方法では、効果発現のために加温することが必須であるため、使用場面が制限される。また、ダニを忌避する効果は無いために、得られる効果は一時的なものである。
また、本発明者らが詳細な検討を加えた結果、カチオン性界面活性剤または脂肪族カルボン酸エステル化合物をそれぞれ単独で用いる特許文献1、4の技術では、充分なダニ駆除効果が得られないことが判明した。さらに、特許文献2に開示された組成物は、有機リン系殺虫剤又はピレスロイド系殺虫剤などが有機溶剤に溶解してなる油性の高いものであり、環境適合性等の点から好ましいものではなく、また、汎用性にも劣る。
また、特許文献3の実施例10において、ジ長鎖炭化水素基含有第4級アンモニウム塩に環状脂肪族カルボン酸エステルであるジヒドロジャスモン酸メチルを併用した水性組成物が開示されているが、本発明者らの評価によれば、このような環状脂肪族カルボン酸エステルをカチオン性界面活性剤と併用しても、その相乗効果は不充分である。
【0006】
また、本発明者らの更なる検討によると、ダニ駆除効果を有する成分を配合した組成物を用いて寝具類や衣料などの対象物を洗濯した際、洗濯後の寝具類や衣料の部位によってダニ駆除効果に差が生じ、所望とするダニ駆除効果が得られない場合があった。これは、洗濯後の対象物の部位の違いによって、ダニ駆除効果を有する成分の付着状態が異なるためと推測される。したがって、対象物のいずれの部位であっても均一にダニ駆除効果を付与できることが望まれる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、室温で高いダニ駆除効果を発揮すると同時に、対象物に対して均一にダニ駆除効果を付与でき、しかも水性であって環境適合性等が高く、かつ、汎用性が高いダニ駆除用水性液体組成物と、これを用いたダニ駆除方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、3級アミン等、特定の二塩基酸ジエステル化合物および特定の水溶性溶剤を組み合わせて用いることにより、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のダニ駆除用水性液体組成物は、下記の(A)成分、(B)成分および(C)成分を含有することを特徴とする。
(A)炭素数8〜22の長鎖炭化水素基(ただし、該長鎖炭化水素基は、アミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい。)を分子内に1つ以上有する3級アミン、該3級アミンの中和物および該3級アミンの4級化物からなる群から選択される1種以上の化合物。
(B)下記一般式(I)で表される二塩基酸ジエステル化合物。
(C)炭素数2〜6の一価アルコール、炭素数2〜6の多価アルコールおよび下記一般式(II)で表されるグリコールエーテル化合物からなる群から選択される1種以上の水溶性溶剤。
【0009】
【化1】

[式(I)中、R11は、炭素数4〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表し;R12およびR13は、それぞれ独立して炭素数2〜8の炭化水素基を表す。]
【0010】
【化2】

[式(II)中、Rは、炭素数2〜6のアルキル基又はフェニル基を表し;Rは炭素数2又は3のアルキレン基を表し;xは平均付加モル数を表し、2〜3の数である。]
【0011】
本発明のダニ駆除用水性液体組成物においては、前記(B)成分が、前記一般式(I)におけるR11が炭素数4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表す二塩基酸ジエステル化合物であることが好ましい。
本発明のダニ駆除方法は、前記本発明のダニ駆除用水性液体組成物を、繊維製品の洗濯すすぎ工程で使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、室温で高いダニ駆除効果を発揮すると同時に、対象物に対して均一にダニ駆除効果を付与でき、しかも水性であって環境適合性等が高く、かつ、汎用性が高いダニ駆除用水性液体組成物と、これを用いたダニ駆除方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
≪ダニ駆除用水性液体組成物≫
本発明のダニ駆除用水性液体組成物(以下、単に「水性液体組成物」という場合がある。)は、特定の3級アミン、該3級アミンの中和物および該3級アミンの4級化物からなる群から選択される1種以上の化合物(A)と、前記一般式(I)で表される二塩基酸ジエステル化合物(B)と、特定の一価アルコール、特定の多価アルコールおよび前記一般式(II)で表されるグリコールエーテル化合物からなる群から選択される1種以上の水溶性溶剤(C)とを含有する。
【0014】
[化合物(A)]
本発明の水性液体組成物は、(A)炭素数8〜22の長鎖炭化水素基(ただし、該長鎖炭化水素基は、アミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい。)を分子内に1つ以上有する3級アミン、該3級アミンの中和物および該3級アミンの4級化物からなる群から選択される1種以上の化合物(以下、(A)成分という)を含有する。
これらのなかでも、より高いダニ駆除効果が得られる点から、該3級アミンの中和物、該3級アミンの4級化物が好ましく、該3級アミンの4級化物、すなわち第4級アンモニウム塩がより好ましい。
かかる(A)成分は、環境適合性等と汎用性に優れた成分であり、製剤化において取扱いが容易な成分である。
【0015】
炭素数8〜22の長鎖炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよい。
長鎖炭化水素基の炭素数は、より好ましくは10〜20であり、さらに好ましくは10〜18である。このような炭素数であると、より高いダニ駆除効果が得られ、これより炭素鎖長が短すぎることに起因する皮膚刺激性の懸念や、炭素鎖長が長すぎることに起因する水溶性溶剤(C)への分散性・溶解性の低下の懸念が抑えられる。
【0016】
ただし、該長鎖炭化水素基は、アミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい。具体的には、該長鎖炭化水素基は、その鎖中に、アミド基(−NHCO−)、エステル基(−COO−)およびエーテル基(−O−)からなる群から選択される少なくとも1種の分断基を有し、その分断基によって鎖が分断されたものであってもよい。分断基を有すると、生分解性が向上する等の点から好ましい。該長鎖炭化水素基は、前記分断基によって1ヶ所が分断されていてもよく、2つ以上の分断基を有し、2ヶ所以上が分断されていてもよい。
なお、鎖中にこれら分断基を有する場合、分断基に存在する炭素原子は、該長鎖炭化水素基の炭素数にカウントするものとする。
【0017】
また、炭素数8〜22の長鎖炭化水素基には、ベンゼン環を含んでいてもよく、その場合、ベンゼン環に存在する炭素原子も該長鎖炭化水素基の炭素数としてカウントする。
(A)成分がベンゼン環を含む場合、該ベンゼン環は、炭素数8〜22の長鎖炭化水素基中とは別に存在していてもよい。
【0018】
なお、長鎖炭化水素基は、通常、工業的に使用される牛脂由来の未水添脂肪酸、不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸、パーム椰子、油椰子などの植物由来の未水添脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいは不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸又は脂肪酸エステル等を使用することにより導入される。
なお、長鎖炭化水素基が不飽和である場合、二重結合の位置はいずれの箇所にあっても構わないが、二重結合が1個の場合には、その二重結合の位置は長鎖炭化水素基の中央であるか、中央値を中心に分布していることが好ましい。
【0019】
上記のような(A)成分として具体的には、下記一般式(III)〜(V)で表される3級アミン、該3級アミンの中和物、該3級アミンの4級化物が挙げられる。
【0020】
【化3】

【0021】
上記式中、Rは、エステル基などの分断基を含まない炭素数8〜22、好ましくは10〜20の飽和もしくは不飽和の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基である。
は、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基又は−(CH−CH(Y)−O)n’−H(式中、Yは水素原子又はCHであり、n’は2〜3である)で表される基である。
は、R又はRと同様である。
一方、Rは、エステル基、アミド基、エーテル基のうちの少なくとも1種の分断基を鎖中に有し、この分断基で分断された炭素数8〜22、好ましくは10〜20の飽和もしくは不飽和の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立してR又はRと同様である。
【0022】
3級アミンの中和物としては、例えば、上記一般式(III)〜(V)で表される3級アミンの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩などの有機酸塩が挙げられ、具体的には、ジデシルモノメチルアミン塩酸塩、ステアリルジメチルアミン塩酸塩などを例示できる。
また、3級アミン、該3級アミンの中和物、該3級アミンの4級化物の中では、4級化物、すなわち第4級アンモニウム塩が最も好ましく、具体的には、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化パルミチルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム(塩化ステアリルトリメチルアンモニウムと塩化パルミチルトリメチルアンモニウムとの混合物、商品名:アーカードT−800(ライオンアクゾ社製))、N,N−ジアルカロイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムサルフェート(アルカロイル基の炭素数 C16:20質量%、C18:40質量%、C18F1:40質量%の混合物;商品名:TES−85E(ライオンアクゾ社製))等が挙げられる。
【0023】
なお、第4級アンモニウム塩を工業的に製造する際、主として4級化工程において副生物として塩化ナトリウムなどの無機塩が微量生成することがある。
本発明で使用可能な第4級アンモニウム塩には、第4級アンモニウム塩を使用する業界において公知であるように、製造工程に由来するこのような無機塩などの副生物が微量含まれていてもよい。また、第4級アンモニウム塩は、4級化反応溶媒としてしばしば用いられるエタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどとの混合物として供給されるものであってもよい。
【0024】
また、「TES」とは、下記一般式(VI)で示される構造のアルカノールアミンと、ヨウ素価が10〜80で、かつ、不飽和基のシス体の比率が50質量%未満である脂肪酸および/又は脂肪酸メチルエステルとのエステル化物;該エステル化物の中和物、又は該エステル化物を4級化剤で4級化することによって得られる反応生成物のうちのいずれか1種以上である。
なお、この代表的な製造法は、特開2003−12471号公報の実施例1に記載されている。
【0025】
【化4】

【0026】
式(VI)中、R、R、Rの少なくとも1つは、1つ以上のヒドロキシ基を有する炭素数2〜6の炭化水素基である。A、B、Cは、それぞれ独立して炭素数2〜6のオキシアルキレン基であり、添字l、m、nは、それぞれ独立して0〜10の整数である。
【0027】
(A)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の水性液体組成物における(A)成分の含有割合は、該組成物全量に対して、1〜30質量%が好ましく、6〜20質量%がより好ましく、6〜18質量%がさらに好ましい。該含有割合の下限値以上であると、ダニ駆除効果がより向上する。一方、上限値以下であると、他の成分との配合バランスが良好となる。また、水性液体組成物を適度な粘度に調整でき、保存安定性が向上する。
【0028】
[二塩基酸ジエステル化合物(B)]
本発明の水性液体組成物は、(B)下記一般式(I)で表される二塩基酸ジエステル化合物(以下、(B)成分という)を含有する。
当該(B)成分と、前記(A)成分とを組み合わせて用いることにより、より高いダニ駆除効果が発揮される。
【0029】
【化5】

[式(I)中、R11は、炭素数4〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表し;R12およびR13は、それぞれ独立して炭素数2〜8の炭化水素基を表す。]
【0030】
前記式(I)中、R11は、炭素数4〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表し、直鎖状のアルキレン基(ポリメチレン基)であることが好ましい。
11の炭素数は4〜8であり、炭素数4〜7が好ましく、炭素数4が最も好ましい。炭素数4以上であると、揮発性が低減してダニ駆除効果の持続性が向上する。炭素数8以下であると、水性液体組成物の製剤化などが容易となる。
【0031】
前記式(I)中、R12およびR13は、それぞれ独立して炭素数2〜8の炭化水素基を表す。
12およびR13の炭素数は、それぞれ炭素数2〜8であり、炭素数2〜4が好ましく、炭素数2〜3がより好ましく、炭素数3が最も好ましい。炭素数2以上であると、(B)成分の加水分解によりメタノールが生成するおそれがなく、環境適合性等の点で好ましい。炭素数8以下であると、水性液体組成物の製剤化などが容易となる。
12、R13における炭化水素基としては、アルキル基又は脂環式基であることが好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。該アルキル基としては、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
12およびR13は、それぞれ異なった構造であってもよく、同じ構造であってもよい。
【0032】
(B)成分の好適な具体例としては、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジn−プロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジn−ブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジsec−ブチル、アジピン酸ジt−ブチル、アジピン酸ジペンチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジヘプチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル);
ピメリン酸ジエチル、ピメリン酸ジn−プロピル、ピメリン酸ジイソプロピル、ピメリン酸ジn−ブチル、ピメリン酸ジイソブチル、ピメリン酸ジsec−ブチル、ピメリン酸ジt−ブチル、ピメリン酸ジペンチル、ピメリン酸ジヘキシル、ピメリン酸ジヘプチル、ピメリン酸ジオクチル、ピメリン酸ジ(2−エチルヘキシル);
スベリン酸ジエチル、スベリン酸ジn−プロピル、スベリン酸ジイソプロピル、スベリン酸ジn−ブチル、スベリン酸ジイソブチル、スベリン酸ジsec−ブチル、スベリン酸ジt−ブチル、スベリン酸ジペンチル、スベリン酸ジヘキシル、スベリン酸ジヘプチル、スベリン酸ジオクチル、スベリン酸ジ(2−エチルヘキシル);
アゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジn−プロピル、アゼライン酸ジイソプロピル、アゼライン酸ジn−ブチル、アゼライン酸ジイソブチル、アゼライン酸ジsec−ブチル、酸ジt−ブチル、アゼライン酸ジペンチル、アゼライン酸ジヘキシル、アゼライン酸ジヘプチル、アゼライン酸ジオクチル、アゼライン酸ジ(2−エチルヘキシル);
セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジn−プロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジn−ブチル、セバシン酸ジイソブチル、セバシン酸ジsec−ブチル、セバシン酸ジt−ブチル、セバシン酸ジペンチル、セバシン酸ジヘキシル、セバシン酸ジヘプチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)等が挙げられる。
【0033】
上記のなかでも、(B)成分としては、前記一般式(I)におけるR11が炭素数4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表す二塩基酸ジエステル化合物であることが好ましく、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)がより好ましく、アジピン酸ジイソプロピルが特に好ましい。
【0034】
(B)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の水性液体組成物における(B)成分の含有割合は、該組成物全量に対して、0.5〜12質量%が好ましく、1〜4質量%がより好ましく、2〜4質量%がさらに好ましい。該含有割合の下限値以上であると、ダニ駆除効果がより向上する。一方、上限値以下であると、特に(A)成分との配合バランスが良好となる。
【0035】
なお、本発明において、(B)成分は、その製造方法が特に制限されるものではなく、たとえば、炭素数6〜10の非環状脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜8の一価アルコールとから誘導されるもの等が挙げられる。
【0036】
本発明の水性液体組成物において、(B)成分は、前記(A)成分の存在下において、他のエステル化合物に比べてダニ駆除の対象物に吸着しやすいため、(A)成分と併用した際には高いダニ駆除の相乗効果を発現し、優れたダニ駆除効果が得られるものと考えられる。
【0037】
水性液体組成物中の(A)成分と(B)成分との混合割合、(A)/(B)としては、質量比で(A)/(B)=3/1〜100/1であることが好ましく、(A)/(B)=3/1〜50/1であることがより好ましい。
(A)/(B)が前記範囲であると、さらに高い相乗効果により充分なダニ駆除効果が得られ、しかも適度な粘度で、かつ、安定な水性液体組成物を容易に調製できる。また、(A)/(B)の質量比が上限値(100)以下であると前記相乗効果がより得られる。一方、(A)/(B)の質量比が下限値(3)以上であると、(B)成分と後述の(C)成分との相溶性が良好となり、安定性がより向上する。
【0038】
[水溶性溶剤(C)]
本発明の水性液体組成物は、(C)炭素数2〜6の一価アルコール、炭素数2〜6の多価アルコールおよび下記一般式(II)で表されるグリコールエーテル化合物からなる群から選択される1種以上の水溶性溶剤(以下、(C)成分という)を含有する。
当該(C)成分を、前記(A)成分および前記(B)成分と組み合わせて用いることにより、ダニ駆除の対象物に対して均一にダニ駆除効果を付与できる。
【0039】
【化6】

[式(II)中、Rは、炭素数2〜6のアルキル基又はフェニル基を表し;Rは炭素数2又は3のアルキレン基を表し;xは平均付加モル数を表し、2〜3の数である。]
【0040】
一価アルコールにおいて、炭素数は2〜6であり、炭素数2〜4であることが好ましい。
多価アルコールにおいて、炭素数は2〜6であり、炭素数2〜4であることが好ましい。
前記式(II)中、Rは、炭素数2〜6のアルキル基又はフェニル基であり、炭素数2〜6のアルキル基であることが好ましい。
は、炭素数2又は3のアルキレン基であり、炭素数2のアルキレン基(エチレン基)であることが好ましい。
xは、平均付加モル数を表し、2〜3の数である。
【0041】
(C)成分の好適な具体例としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の一価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(好ましくは、重量平均分子量100〜3000のもの)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(好ましくは、重量平均分子量150〜500のもの)、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール類、ヘキサンジオール類等の多価アルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル化合物が挙げられる。
上記のなかでも、対象物に対してより均一にダニ駆除効果を付与できることから、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エタノール、エチレングリコールがより好ましい。
ジエチレングリコールモノブチルエーテルは、該成分自体の環境適合性等が良好であり、また、水性液体組成物の製剤化が容易となることからも好ましい。
なお、エタノールとしては、発酵エタノール又は合成エタノールが使用できる。また、各種の変性剤を添加した変性アルコールも使用できる。
【0042】
(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の水性液体組成物における(C)成分の含有割合は、該組成物全量に対して、0.1〜90質量%が好ましく、5〜42質量%がより好ましく、6〜21質量%がさらに好ましく、14〜21質量%が特に好ましい。該含有割合の下限値以上であると、対象物に対してより均一にダニ駆除効果を付与できる。一方、上限値以下であると、他の成分との配合バランスが良好となる。また、保存安定性が向上する。
【0043】
[その他の成分]
本発明のダニ駆除用水性液体組成物は、溶媒として水性溶媒を含有するものであって、保存安定性に優れ、環境適合性等も高いものである。
水性溶媒としては、水や、水溶性有機溶剤を含有する水を使用できる。
本明細書において、「水溶性有機溶剤」とは、25℃の温度条件下において該溶剤をイオン交換水に溶解し、濃度1質量%の水溶液とした際、その調製直後(調製から1分間以内)の水溶液が透明であることを示す。ここで「透明」とは、測定セルとして光路長が10mmのガラスセルを使用し、対照側のセルにイオン交換水を入れた場合、波長660nmの光透過率が95%以上であることを意味する。
【0044】
水としては、水道水、イオン交換水、精製水、蒸留水など、いずれも用いることができる。なかでも、水中に微量存在するカルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの硬度成分や鉄イオンなどの金属イオンを除去した水が好ましく、コスト面等を考慮してイオン交換水が最も好ましい。
水溶性有機溶剤としては、前記(C)成分以外のものであって、上記条件を満足するものであれば特に制限されることなく使用できる。
【0045】
本発明の水性液体組成物のpHを調整するためには、塩酸、硫酸、リン酸、アルキル硫酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等の短鎖アミン化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属珪酸塩などのpH調整剤を用いることができる。
【0046】
本発明の水性液体組成物の粘度を調整するためには、水性液体組成物に、無機又は有機の水溶性塩類を含有する方法が挙げられる。
このような水溶性塩類としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム等を用いることができる。なかでも、塩化カルシウム、塩化マグネシウムが好ましい。
【0047】
本発明の水性液体組成物においては、任意成分として非イオン性界面活性剤を配合してもよい。非イオン性界面活性剤は、水性液体組成物を保存経日によっても安定な均一透明液体状またはエマルジョン状に維持する目的や、水性液体組成物の粘度を調整する目的などで使用されるものであって、必要に応じて、ダニ駆除効果を阻害しない範囲内で含有される。
非イオン性界面活性剤としては、例えば炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましく、アルキレンオキシドが平均2〜100モル付加されたものがより好ましい。特に、下記一般式(VII)で表される非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0048】
【化7】

【0049】
式(VII)中、R14は、炭素数10〜18、好ましくは炭素数12〜18のアルキル基又はアルケニル基である。
15は、炭素数2又は3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。
pは、平均付加モル数であり、好ましくは2〜100であり、より好ましくは10〜80である。
「−T−」は、−O−、−N−、−NH−、−N(COH)−、−CON−、−CONH−および−CON(COH)−からなる群から選択される1種を示す。
また、qは、1又は2である。
「−T−」が、−O−、−NH−、−N(COH)−、−CONH−、−CON(COH)−のうちのいずれかである場合、qは1であり;「−T−」が−N−または−CON−の場合、qは2である。
【0050】
前記一般式(VII)で表される非イオン性界面活性剤のより好ましい具体例としては、下記一般式(VIII)で表されるものが挙げられる。
【0051】
【化8】

【0052】
式(VIII)中、R16は、上記一般式(VII)におけるR14と同じである。
rは、エチレンオキシドの平均付加モル数であり、好ましくは10〜100であり、より好ましくは20〜80である。
【0053】
このような非イオン性界面活性剤を含有することにより、水性液体組成物は相分離を起こしにくくなり、保存安定性が一層向上する場合が多い。
水性液体組成物中の非イオン性界面活性剤の含有割合は、特に制限されるものではなく、たとえば、後述する本発明のダニ駆除方法で使用される水性液体組成物の場合、0.0001〜10質量%であることが好ましい。該含有割合が前記範囲であれば、ダニ駆除効果を阻害することなく、充分な保存安定性が得られやすい。
【0054】
本発明の水性液体組成物は、任意成分としてさらに多価アニオン性物質を含有すると、一層高いダニ駆除効果が得られることがある。
多価アニオン性物質の具体例としては、シュウ酸、酒石酸、クエン酸などの多価カルボン酸や、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、アミノトリメチレンホスホン酸又はこれらの塩が挙げられる。これらのなかでは、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、アミノトリメチレンホスホン酸又はそれらの塩がより好ましい。
また、塩の種類としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩などが挙げられる。
【0055】
本発明の水性液体組成物は、さらに、ダニ駆除効果を阻害しない範囲内で、pHバッファー剤、無機又は有機の水溶性塩類、香料、酸化防止剤、抗菌剤、染料、消泡剤など、界面活性剤を含有する公知の水性液体組成物に含まれ得るその他の成分を含有することができる。
なお、以上説明した各任意成分は、水性液体組成物の調製時において、いかなるタイミングで加えられてもよい。
【0056】
水性液体組成物のpHは、特に制限されるものではなく、水性液体組成物(原液)のpHが3〜8の範囲であることが好ましく、pH4〜7の範囲であることがより好ましい。該範囲であると、(A)成分、(B)成分および(C)成分(特に(B)成分)の化学的安定性が良好であり、環境適合性等の点でも好ましい。
本明細書において、「水性液体組成物のpH」は、水性液体組成物の原液を25℃に調整し、ガラス電極式pHメーター(製品名:ホリバF−22、(株)堀場製作所製)を用いて、JIS K3362−1998に準拠して測定される値を示す。
【0057】
水性液体組成物の粘度は、特に制限されるものではなく、水性液体組成物を容器から排出する際の排出性や、洗濯機への投入の際のハンドリング性などの点から、500mPa・s以下であることが好ましく、保存経日による粘度上昇を考慮すると、配合直後の粘度は200mPa・s以下であることがより好ましく、5〜50mPa・sであることがさらに好ましい。
特に、(A)成分として長鎖炭化水素基を2つ以上有する化合物を用いた場合、該化合物の水性液体組成物中の含有割合に応じて、水性液体組成物の粘度が急激に増加することがある。その場合には、前記水溶性塩類を添加したり、前記非イオン性界面活性剤を添加したりすることにより、粘度調整することが好ましい。
本明細書において、「水性液体組成物の粘度」は、水性液体組成物(原液)を25℃に調整し、B型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて、No.2ローター、30rpm、10回転後の示度を示す。
【0058】
以上説明したように、前記3級アミン等の化合物(A)と、前記一般式(I)で表される二塩基酸ジエステル化合物(B)と、特定の水溶性溶剤(C)とを含有するダニ駆除用水性液体組成物は、高いダニ駆除効果を備え、水性であるために環境適合性等の点でも好ましく、汎用性も高い。さらに、該ダニ駆除用水性液体組成物は、対象物に対して均一にダニ駆除効果を付与できる。よって、該ダニ駆除用水性液体組成物を使用することによって、効果的にダニ駆除ができる。
【0059】
≪ダニ駆除方法≫
本発明のダニ駆除方法は、上記本発明のダニ駆除用水性液体組成物を、繊維製品の洗濯すすぎ工程で使用する方法である。
【0060】
上記本発明の水性液体組成物を洗濯すすぎ工程で使用する場合、水性液体組成物における前記(A)成分の含有割合は、1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることがより好ましく、6〜20質量%であることがさらに好ましい。(A)成分の含有割合がこのような範囲内にあると、洗濯すすぎ工程処理において充分なダニ駆除効果が得られ、かつ、水性液体組成物の粘度も適度な範囲に調整され易いため、使用上好ましい。
また、水性液体組成物における前記(B)成分の含有割合は、0.5〜12質量%であることが好ましく、1〜6質量%であることがより好ましく、2〜4質量%であることがさらに好ましい。(B)成分の含有割合がこのような範囲内にあると、(A)成分との併用による相乗効果が得られやすい。
水性液体組成物中の(A)成分と(B)成分との混合割合、(A)/(B)としては、上述のように、質量比で(A)/(B)=3/1〜100/1であることが好ましく、(A)/(B)=3/1〜50/1であることがより好ましい。
また、水性液体組成物における前記(C)成分の含有割合は、5〜42質量%であることが好ましく、6〜21質量%であることがより好ましく、14〜21質量%であることがさらに好ましい。(C)成分の含有割合がこのような範囲内にあると、洗濯すすぎ工程処理において、対象物に対してより均一にダニ駆除効果を付与できる。
【0061】
また、水性液体組成物を洗濯すすぎ工程において水(洗濯液)中に加える際には、この水中における(A)成分、(B)成分および(C)成分の濃度、すなわち希釈処理液中の各成分の濃度は、
(A)成分が好ましくは約30ppm以上、より好ましくは約60ppm以上、さらに好ましくは約100ppm以上となるように加え、(B)成分が好ましくは約1ppm以上、より好ましくは約5ppm以上、さらに好ましくは約10ppm以上、特に好ましくは約20ppm以上となるように加え、(C)成分が好ましくは約10ppm以上、より好ましくは約50ppm以上、さらに好ましくは約60ppm以上となるように加える。
(A)成分および(B)成分がこのような濃度であると、充分なダニ駆除効果が得られ、(C)成分がこのような濃度であると、対象物に対してより均一にダニ駆除効果を付与できる。
具体的には、(A)成分の濃度が6質量%、(B)成分の濃度が2質量%および(C)成分の濃度が5質量%の水性液体組成物であれば、その30mLを30Lのすすぎ水に加えて希釈し、使用すればよい。この場合には、希釈処理液中の(A)成分の濃度は60ppm、(B)成分の濃度は20ppm、(C)成分の濃度は50ppmとなる。
【0062】
水性液体組成物を洗濯すすぎ工程において使用する場合、水性液体組成物のpHは、水性液体組成物(原液)のpHが2.5〜8の範囲であることが好ましく、pH3〜7の範囲であることがより好ましい。該範囲であると、(A)成分、(B)成分および(C)成分(特に(B)成分)の化学的安定性が良好であり、環境適合性等の点でも好ましい。
水性液体組成物を洗濯すすぎ工程において使用する場合、該水性液体組成物の粘度を調整するために配合する成分、たとえば前記水溶性塩類の濃度は、該水性液体組成物中、通常0〜1質量%程度とすることが好ましい。
【0063】
本発明のダニ駆除方法において、ダニ駆除の対象物である繊維製品としては、住居内でダニが存在すると考えられるものであれば、いかなるものであってもよく、たとえば布団のシーツなどの寝具類、衣料、ぬいぐるみ、カーペット、マット等が挙げられる。
【0064】
本発明のダニ駆除方法、すなわち、該ダニ駆除用水性液体組成物を、繊維製品の洗濯すすぎ工程で使用する方法によれば、対象物である繊維製品に対して、高いダニ駆除効果を発揮できる。
また、本発明のダニ駆除方法によれば、対象物のいずれの部位であっても均一に、所望とするダニ駆除効果を付与できる。
【0065】
なお、上記本発明のダニ駆除用水性液体組成物を用いたダニ駆除方法としては、該ダニ駆除用水性液体組成物を洗濯すすぎ工程で使用する方法に限らず、たとえばダニ駆除の対象物の表面に該水性液体組成物を直接付着させる方法なども好適である。かかる方法は、具体例として水性液体組成物をスプレー容器などに収容して対象物の表面に直接噴霧する方法;水性液体組成物を対象物の表面に綿棒、ハケ、ローラーなどで塗布する方法;ティッシュペーパーやキッチンペーパーなどの紙や布に水性液体組成物を含ませてダニ駆除の対象物の表面に塗布する方法などが挙げられ、布団などの寝具類、衣料、カーペット、じゅうたん、畳、ぬいぐるみ、ソファー、マット、家具や床などの木質表面、プラスチック製品の表面などの対象物に使用できる。
【実施例】
【0066】
次に、実施例及び比較例を挙げるが、本発明は下記例によって何ら限定されるものではない。なお、特に断りが無い限り、「水」は「イオン交換水」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
実施例及び比較例において、ダニ駆除効果は、下記の評価方法によって求められる「ダニ忌避率」を指標とした。
【0067】
[実施例1〜20、比較例1〜6]
表1に示した成分とイオン交換水とを用いて、以下に示す方法により、各成分が表2〜4に示す濃度(質量%)になるように水性液体組成物を調製した。
なお、水性液体組成物は、各表に記載の成分の合計が100質量%となるように調製した。各成分は50℃に保温したものを用いた。
(水性液体組成物の調製)
(A)成分、(B)成分及び(C)成分を混合し、最後に水を加えて各例の水性液体組成物を調製した。
水を配合する際には、必要に応じて、高速撹拌を加えながらゆっくり配合した。そして、この水性液体組成物を室温とした後、0.1N塩酸又は0.1N水酸化ナトリウムを用いて、pH7.0に調整した。
pH測定は、水性液体組成物を25℃に調整し、ガラス電極式pHメーター(製品名:ホリバF−22、(株)堀場製作所製)を用いて測定した。測定方法は、JISK3362−1998に準拠して行った。
【0068】
<ダニ駆除効果の評価>
得られた水性液体組成物を用いて、下記に示す方法により、ダニ忌避率を求めた。
なお、表2〜4に記載の例は、水性液体組成物を、繊維製品の洗濯すすぎ工程で使用する場合を想定したものである。
【0069】
(評価試料の作製)
二槽式洗濯機(三菱電機製、製品名:CW−C30A1)に、25℃の水道水30Lを注ぎ、各例の水性液体組成物を、表2〜4に示す希釈倍率となるように添加した。
次いで、綿肌シャツ約1kgと、チャージ布として綿布(かなきん3号、日本規格協会)30cm×30cmとを3分間撹拌した。その後、脱水1分後に綿布を取り出して自然乾燥し、直径4cmの円形状に切り抜いた布片5枚を作製し、評価試料とした。
評価試料の対照試料として、前記二槽式洗濯機に、水道水のみを注ぎ(水性液体組成物は添加せず)、上記と同様に処理して作製した布片を用いた。
【0070】
(ダニ忌避率の測定)
「動物忌避剤の開発と応用(シーエムシー、(1999))」の126頁に記載された方法に準じて、ダニ忌避率を求めてダニ駆除効果を判定した。
具体的には、上記で作製された評価試料の布片5枚をそれぞれシャーレ(1)内に置き、該布片の上にダニを含まない培地を0.05g置いた。
次いで、このシャーレ(1)を、直径9cmのシャーレ(2)の中央に置き、シャーレ(1)とシャーレ(2)の間にヤケヒョウヒダニ約1万匹を生育させた培地を均一に広げ、25℃、相対湿度75%RH、全暗状態で24時間放置した。
24時間後、シャーレ(1)内に存在するダニ匹数を実体顕微鏡で観察してカウントした(試料試験)。
一方、対照試料の布片を用いて、上記試料試験と同じように試験を行った(対照試験)。
そして、下記式により、ダニ忌避率(%)を求めた。
【0071】
ダニ忌避率(%)=(対照試験におけるダニ匹数−試料試験におけるダニ匹数)/(対照試験におけるダニ匹数)×100
【0072】
本試験により求められるダニ忌避率(%)は、約50%以上であることが望ましく、このような忌避率であると、有意にダニ駆除効果を有していると判断できる。
ダニ駆除効果の評価においては、評価試料の布片5枚におけるダニ忌避率の平均値(%)を求め、該評価を行った。その結果を表2〜4に示す。
【0073】
<ダニ駆除効果の均一性の評価>
ダニ駆除効果の均一性の評価は、上記測定により求められた評価試料の布片5枚それぞれのダニ忌避率(%)から、下記式により、各例の水性液体組成物ごとにダニ忌避率変動計数(CV;%)を算出し、下記均一性の基準に基づいて該評価を行った。その結果を表2〜4に示す。
【0074】
ダニ忌避率変動計数(CV;%)=布片5枚におけるダニ忌避率の標準偏差/布片5枚におけるダニ忌避率の平均値×100
【0075】
(均一性の基準)
◎:CV(%)が15%以下であった。
○:CV(%)が15%超25%未満であった。
△:CV(%)は25%超30%未満であった。
×:CV(%)は30%以上であった。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
表2〜3に示すように、(A)成分、(B)成分および(C)成分を併用した、本発明に係る実施例1〜20の水性液体組成物において、顕著に高いダニ駆除効果が認められ、かつ、対象物に対して均一にダニ駆除効果を付与できることが確認できた。
また、実施例1〜20の液体組成物は、水性であることから、環境適合性等が高く、かつ、汎用性が高いものである。
【0081】
表4に示すように、(C)成分を欠く比較例1〜4の水性液体組成物は、ダニ駆除効果の均一性が悪いことが確認された。
また、(B)成分を欠く比較例5の水性液体組成物はダニ駆除効果が低く、(A)成分を欠く比較例6の水性液体組成物は、配合直後に分離したため、評価不能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分、(B)成分および(C)成分を含有することを特徴とするダニ駆除用水性液体組成物。
(A)炭素数8〜22の長鎖炭化水素基(ただし、該長鎖炭化水素基は、アミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい。)を分子内に1つ以上有する3級アミン、該3級アミンの中和物および該3級アミンの4級化物からなる群から選択される1種以上の化合物。
(B)下記一般式(I)で表される二塩基酸ジエステル化合物。
(C)炭素数2〜6の一価アルコール、炭素数2〜6の多価アルコールおよび下記一般式(II)で表されるグリコールエーテル化合物からなる群から選択される1種以上の水溶性溶剤。
【化1】

[式(I)中、R11は、炭素数4〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表し;R12およびR13は、それぞれ独立して炭素数2〜8の炭化水素基を表す。]
【化2】

[式(II)中、Rは、炭素数2〜6のアルキル基又はフェニル基を表し;Rは炭素数2又は3のアルキレン基を表し;xは平均付加モル数を表し、2〜3の数である。]
【請求項2】
前記(B)成分が、前記一般式(I)におけるR11が炭素数4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表す二塩基酸ジエステル化合物である請求項1に記載のダニ駆除用水性液体組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のダニ駆除用水性液体組成物を、繊維製品の洗濯すすぎ工程で使用することを特徴とするダニ駆除方法。

【公開番号】特開2009−114117(P2009−114117A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288317(P2007−288317)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】