説明

ダブルフェーサ、及びその糊付方法及び糊付装置

【課題】片面段ボールシートへの糊液塗布量を広範囲で変更可能とし、糊液塗布量の調整を容易にする。
【解決手段】糊付けロール14の上方にスイングロール36を設け、スイングロール36を矢印方向に移動可能したので、糊付けロール14と押えロール20のニップ部Nにおける片面段ボールシートkの糊付けロール14への同時接触段山数を調整でき、片面段ボールシートkの段頂部mに塗付される糊液量を最適化できる。また押えロール20を糊付けロール14に対して水平方向に配置したので、押えロール20の自重による撓みの影響を回避でき、幅方向の均一塗布を可能にする。またニップ部Nの出口側で片面段ボールシートkを押えロール20に巻回することで、糊液のスプラッシュsを糊液槽12に回収でき、かつ糊付けロール表面に対する片面段ボールシートkの離れ位置dを安定化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシートを製造する段ボール製造装置に組み込まれたダブルフェーサにおいて、走行する片面段ボールシートの段頂部に糊液を付着させる糊付方法及び糊付装置、及び該糊付装置を備えたダブルフェーサに関する。
【背景技術】
【0002】
段ボール製造装置に組み込まれたダブルフェーサでは、中芯と裏ライナとが貼り合わされた片面段ボールシートと表ライナとを貼り合せるため、片面段ボールシートの段頂部に糊液を塗布するための糊付装置が用いられる。
【0003】
この糊付装置では、糊液槽に貯留された糊液を糊付けロールに付着させ、糊付けロールに付着した糊液をドクターロールによって設定膜厚に調整する。その後、糊付けロールと押えロール間のニップ部に片面段ボールシートを通し、糊付けロール上の該糊液を片面段ボールシートの段頂部に転写するようにしている。
【0004】
通常、片面段ボールシートへの糊液の塗布量は前記糊付けロールとドクターロールの隙間によって調整されるが、糊付けロールに対して同時に接触する段頂部の数を調整することでも可能になる。同時接触段山数が多くなるほど、段頂部の糊液塗布量が多くなる。糊付けロールに対する片面段ボールシートの同時接触段山数は、一般的に3山程度とされている。
【0005】
片面段ボールシートの段頂部に糊液を過剰に塗布した場合、糊液の糊化乾燥後、過剰塗布領域で過剰収縮が起こり、片面段ボールシートの平坦性を保持できない。糊液の適正塗布量は、片面段ボールシートの走行速度によって左右されるだけでなく、片面段ボールシートを構成する紙ウェブの坪量又は段山形状(フルート種別)等によっても異なってくる。
【0006】
特許文献1には、片面段ボールシートの走行速度に応じて最適な糊付量とするため、糊付けロールに対する同時接触段山数を可変にする手段が開示されている。以下、特許文献1に開示された糊付方法を図4により説明する。
図4において、ダブルフェーサの糊付装置100は、糊液gが貯留された糊液槽102と、下部が糊液gに浸漬された糊付けロール104と、糊液gの液面より上方に配置されたドクターロール106と、糊付けロール104との間にニップ部Nが設けられた押えロール108とで構成されている。
【0007】
ダブルフェーサの上流側に配置されたシングルフェーサで作られた片面段ボールシートkは、図示省略のプレヒータで加熱された後、矢印a方向に走行し、押えロール108に巻回され、糊付けロール104と押えロール108間のニップ部Nを通る。押えロール108に巻回された片面段ボールシートkの段頂部mは、糊付けロール104の表面に付着された糊液gを塗布される。
【0008】
図4(a)において、糊付けロール104及びドクターロール106を支持している箱体110を、図示省略の駆動装置で矢印b方向に移動させると、片面段ボールシートkの複数の段頂部m(例えば4個の段頂部)が糊付けロール104に接触し、高速運転でも、確実に片面段ボールシートkの段頂部に糊液gを付着できるとされている。
図4(b)において、片面段ボールシートkが比較的低速で搬送される場合、箱体110を矢印c方向に移動させると、片面段ボールシートkの例えば1個の段頂部のみが糊付けロール104に接触し、低速運転でも過剰な糊液gが塗付されないとしている。
【0009】
なお、この糊付装置100では、片面段ボールシートkが幅方向に平坦になる程度まで角度をもたせて押えロール108に巻回しているので、反りをなくし、幅方向に均一な糊膜を塗布できるとしている。また、糊付けロール104の代わりに、押えロール108を矢印b方向又は矢印c方向に進退可能にしてもよいとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−267620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示された糊付装置100では、糊付けロール104又は押えロール108を移動可能したことで、糊付けロール104と片面段ボールシートkとの同時接触段山数を可変としている。しかし、この手段では、糊付けロール104と押えロール108との相対位置が、運転条件が変わるたびに変化する。押えロールと糊付装置間の間隙は、精密に設定される必要があるため、両ロールの間隙を頻繁に再調整する必要が生じ、非常に煩雑となる。
【0012】
また、押えロール108が糊付けロール104の上方に配置されているため、押えロール108の自重により押えロール108の中央部が下方に撓んだとき、両ロールの中央部の間隙が小さくなる。そのため、糊付けロール104と押えロール108間のニップ部の間隙が軸方向で不均一になるという問題がある。特に、片面段ボールシートkの同時接触段山数が1山となったとき、片面段ボールシートkの中央部しか糊付けロール104に接触しないという事態や中央部が圧潰されるという事態が起こりやすい。
【0013】
さらに、図4(a)に示すように、糊付装置の出口周辺部は、片面段ボールシートkが糊付けロール104から離れる際に、糊液が糊付けロール104の接線方向に飛散するスプラッシュsが起こる。このスプラッシュsによって出口周辺部が汚れ、頻繁な清掃が必要になる。
また、図4(b)に示すように、片面段ボールシートkの段頂部が糊付けロール104の表面から離れる位置dにおいて、片面段ボールシートkの走行方向は糊付けロール104の接線方向となるため、離れ位置dが安定しない。そのため、段頂部の糊液の付き具合いが安定しないという問題が起こる。
【0014】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、本発明の第1の目的は、片面段ボールシートへの糊液塗布量を広範囲で変更可能とし、片面段ボールシートへの糊液塗布量の調整を容易にすることである。
本発明の第2の目的は、糊液塗布量の広い範囲に亘り、片面段ボールシートの幅方向に均一な糊液塗布を可能にすることである。特に、同時接触段山数が1山の場合であっても、均一な糊液塗布と可能とし、これによって、糊液量を節減可能にすることである。
【0015】
本発明の第3の目的は、糊付けロールの表面と片面段ボールシートの段頂部とが離れる位置で、糊付けロールの接線方向に発生する糊液のスプラッシュによる汚れを防止すると共に、該離れ位置で段頂部の糊液の付き具合いを安定させることである。
本発明の第4の目的は、段ボール製造装置の運転中でも、片面段ボールシートの紙種変更や運転条件の変更に応じて自動的に糊液塗布量の調整を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる目的を達成するため、本発明のダブルフェーサの糊付方法は、糊液槽に貯留された糊液中に糊付けロールの一部が浸漬され、該糊付けロールに付着した糊液をドクターロールによって設定膜厚に調整した後、片面段ボールシートを押えロールと糊付けロール間のニップ部に通して糊液を片面段ボールシートの段頂部に転写するようにしたダブルフェーサの糊付方法において、前記糊付けロールと押えロール間のニップ部より片面段ボールシートの送り方向上流側に設けられたスイングロールに片面段ボールシートを巻回すると共に、該ニップ部を通る片面段ボールシートが糊付けロールに巻回する方向にスイングロールを移動させて糊付けロールの表面に同時に接触して糊液が塗布される段頂部の数を調整するようにしたものである。
【0017】
本発明方法では、前記スイングロールを、糊付けロールと押えロール間のニップ部を通る片面段ボールシートが糊付けロールに巻回する方向(即ち、該ニップ部を通る片面段ボールシートのシート面と交差する方向)に移動させることにより、糊付けロール表面に同時接触する段頂部の数を容易に変更できるようにしている。これによって、片面段ボールシートの段頂部に塗布される糊液塗布量を容易に調整できる。
このように、スイングロールのみを移動させるため、糊付けロールと押えロールの相対位置は変化しない。
【0018】
本発明方法において、糊付けロール及び押えロールの中心軸を水平方向に配置すると共に、糊付けロールに対して押えロールを水平方向に配置し、押えロールの自重による撓みが糊付けロールと押えロール間のニップ部側に発生しないようにするとよい。
これによって、糊付けロールと押えロール間のニップ部の隙間を軸方向(紙幅方向)に均一に保持できるので、同時接触段山数が1山でも、片面段ボールシートの段頂部に糊液を確実に塗布でき、糊液量を節減できるようになる。
【0019】
さらに加えて、スイングロールが糊付けロール及び押えロールの上方に配置され、片面段ボールシートが糊付けロールと押えロール間のニップ部に上方から挿入され、該ニップ部の出口側で片面段ボールシートが押えロールの表面に巻回されて横方向へ送り出され、該ニップ部の下方空間が開放されているようにするとよい。
【0020】
これによって、片面段ボールシートが糊付けロールから離れる際に、糊液が糊付けロールの接線方向に飛散するスプラッシュを下方に向けることができる。糊付けロールの下方には、糊液槽が配置されているので、このスプラッシュを糊液槽に回収できる。そのため、糊付けロールの出口側周辺を汚すおそれがなくなる。
【0021】
また、糊付けロールと押えロール間のニップ部の出口側で、片面段ボールシートが押えロールの表面に巻回されて横方向へ送り出されるので、片面段ボールシートが糊付けロールから急激に離れる。そのため、片面段ボールシートの段頂部が糊付けロールから離れる位置が安定し、段頂部の糊液の付き具合が安定するという利点がある。
【0022】
また、本発明方法において、片面段ボールシートの坪量(紙種)、段山形状(フルート種別)、走行速度からなるパラメータのうち少なくともひとつのパラメータに応じて、前記スイングロールを移動させて糊付けロールの表面に同時に接触して糊液が塗布される段頂部の数を調整するようにするとよい。前記パラメータのうち少なくともひとつのパラメータによって、片面段ボールシートの段頂部に塗付される糊液の最適量が決定される。このように、前記パラメータに基づいて糊液塗布量を調整することで、片面段ボールシートの紙種変更や運転条件の変更に応じて最適な糊液塗布量とすることができる。
【0023】
また、前記本発明方法の実施に直接使用可能な本発明のダブルフェーサの糊付装置は、糊液を貯留した糊液槽と、該糊液に一部が浸漬されて表面に糊液が付着される糊付けロールと、該糊付けロールに付着した糊液を設定膜厚に調整するドクターロールと、を備え、設定膜厚に調整された糊付けロール上の糊液を片面段ボールシートに転写するようにしたダブルフェーサの糊付装置において、糊付けロールと押えロール間のニップ部より片面段ボールシートの送り方向上流側に設けられたスイングロールと、該ニップ部を通る片面段ボールシートが糊付けロールに巻回する方向にスイングロールを移動させる移動装置と、を備え、スイングロールに片面段ボールシートを巻回すると共に、前記ニップ部を通る片面段ボールシートが糊付けロールに巻回する方向にスイングロールを移動させて糊付けロールの表面に同時に接触して糊液が塗布される段頂部の数を調整するように構成したものである。
【0024】
本発明装置において、前記スイングロールを、片面段ボールシートが糊付けロールに巻回する方向に移動させることにより、糊付けロール表面に同時接触する段頂部の数を変更し、片面段ボールシートの段頂部に塗布される糊液塗布量を容易に調整できる。このとき、糊付けロールと押えロールの相対位置は変化しない。
【0025】
本発明装置において、糊付けロール及び押えロールの中心軸を水平方向に配置すると共に、糊付けロールに対して押えロールを水平方向に配置し、押えロールの自重による撓みが糊付けロールと押えロール間のニップ部側に発生しないように構成するとよい。好ましくは、押えロールの中心軸と糊付けロールの中心軸とを結ぶ平面と水平面とのなす角度が±15°以内となるように配置するとよい。
【0026】
これによって、糊付けロールと押えロール間の隙間を軸方向に均一に保持できるので、同時接触段山数が1山でも、片面段ボールシートの段頂部に糊液を確実に塗布でき、そのため、糊液量を節減できるようになる。
【0027】
本発明装置において、スイングロールが糊付けロール及び押えロールの上方に配置され、片面段ボールシートが糊付けロールと押えロール間のニップ部に上方から挿入され、該ニップ部の出口側で片面段ボールシートが押えロールの表面に巻回されて横方向へ送り出され、前記ニップ部の下方空間が開放されるようにするとよい。
【0028】
これによって、片面段ボールシートが糊付けロールから離れる際に、糊液が糊付けロールの接線方向に飛散するスプラッシュを下方に向けることができる。そのため、このスプラッシュを下方に配置された糊液槽に回収できるので、糊付けロールの出口側周辺を汚すおそれがなくなる。
【0029】
また、糊付けロールと押えロール間のニップ部の出口側で、片面段ボールシートが押えロールの表面に巻回されて横方向へ送り出されるので、片面段ボールシートが糊付けロールから急激に離れる。そのため、片面段ボールシートの段頂部が糊付けロールから離れる位置が安定し、段頂部の糊液の付き具合いが安定するという利点がある。
【0030】
本発明装置において、片面段ボールシートの坪量(紙種)、段山形状(フルート種別)、走行速度からなるパラメータのうち少なくともひとつのパラメータに応じて、スイングロールを移動させて糊付けロールの表面に同時に接触して糊液が塗布される段頂部の数を調整するコントローラを備えるようにするとよい。
【0031】
該コントローラによって、片面段ボールシートの段頂部に前記パラメータに基づいて糊液塗布量を調整する。これによって、片面段ボールシートの紙種変更や運転条件の変更に応じて最適の糊液量を塗付できる。また、糊液塗布量の制御を自動化でき、段ボール製造装置の運転中でも、糊液塗布量を自動制御できる。
なお、このコントローラは、段ボール製造装置(コルゲータ)の運転全般を管理する生産管理装置に内蔵することができる。
【0032】
また、本発明のダブルフェーサは、前記構成を有する糊付装置を備えたものである。本発明のダブルフェーサでは、該糊付装置を備えたことにより、片面段ボールシートの段頂部に塗布される糊付の塗布量を容易に調整できる等の作用効果を有する。
【発明の効果】
【0033】
本発明方法によれば、糊液槽に貯留された糊液中に糊付けロールの一部が浸漬され、該糊付けロールに付着した糊液をドクターロールによって設定膜厚に調整した後、片面段ボールシートを押えロールと糊付けロール間のニップ部に通して糊液を片面段ボールシートの段頂部に転写するようにしたダブルフェーサの糊付方法において、糊付けロールと押えロール間のニップ部より片面段ボールシートの送り方向上流側に設けられたスイングロールに片面段ボールシートを巻回すると共に、該ニップ部を通る片面段ボールシートが糊付けロールに巻回する方向にスイングロールを移動させて糊付けロールの表面に同時に接触して糊液が塗布される段頂部の数を調整するようにしたので、片面段ボールシートの段頂部に塗布される糊液塗布量の調整が容易になると共に、糊付けロールと押えロールの相対位置は変化しない。そのため、糊付けロールの表面と片面段ボールシートの段頂部とが離れる位置が安定し、これによって、段頂部に塗布される糊液量が安定する。
【0034】
本発明装置によれば、糊液を貯留した糊液槽と、該糊液に一部が浸漬されて表面に糊液が付着される糊付けロールと、該糊付けロールに付着した糊液を設定膜厚に調整するドクターロールと、を備え、設定膜厚に調整された糊付けロール上の糊液を片面段ボールシートに転写するようにしたダブルフェーサの糊付装置において、糊付けロールと押えロール間のニップ部より片面段ボールシートの送り方向上流側に設けられたスイングロールと、該ニップ部を通る片面段ボールシートが糊付けロールに巻回する方向にスイングロールを移動させる移動装置と、を備え、スイングロールに片面段ボールシートを巻回すると共に、前記ニップ部を通る片面段ボールシートが糊付けロールに巻回する方向にスイングロールを移動させて糊付けロールの表面に同時に接触して糊液が塗布される段頂部の数を調整するように構成したので、前記本発明方法と同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
また、本発明のダブルフェーサは、前記構成の糊付装置を備えたダブルフェーサであり、前記本発明方法と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明方法及び装置の第1実施形態に係るダブルフェーサの糊付装置の構成図である。
【図2】本発明方法及び装置の第2実施形態に係る生産管理装置の構成図である。
【図3】前記第2実施形態で、最適同時接触段山数を左右するパラメータの特性例を示す図表である。
【図4】(a)及び(b)は従来のダブルフェーサの糊付装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0038】
(実施形態1)
本発明方法及び装置の第1実施形態を図1に基づいて説明する。図1において、本実施形態の糊付装置10は、糊液槽12に澱粉糊からなる糊液gが貯留され、糊付けロール14の一部が糊液gに浸漬されている。
【0039】
糊付けロール14には、ドクターロール18及び押えロール20が対設されている。これら3ロールの軸線は、互いに平行に配置され、夫々矢印方向に回転する。ドクターロール18は、糊付けロール14に付着した糊膜の膜厚を設定膜厚に規制する。糊付けロール14と押えロール20間のニップ部Nに、上方から片面段ボールシートkが送り込まれる。そして、片面段ボールシートkがニップ部Nを通ることで、片面段ボールシートkの段頂部mに糊液gが塗布される。
【0040】
糊付けロール14とドクターロール18との間には、間隙δが設けられ、糊液gがこの間隙δを通ることによって、糊付けロール14の外周面に膜厚δの均一な糊膜が形成される。そして、片面段ボールシートkの段頂部mに該膜厚δに応じた糊液gが塗布される。ドクターロール18は、偏心カム機構22により糊付けロール14に対して進退可能になっている。この偏心カム機構22によって、間隙δを調整できる。
【0041】
また、段ボール製造装置の運転全般を管理する生産管理装置24が設けられている。この生産管理装置24が偏心カム機構22を制御して、間隙δを調整すると共に、後述する
スイングロール36の駆動装置42を制御する。
【0042】
ドクターロール18にはドクターブレード28が対設されている。ドクターブレード28は、糊付けロール14とのニップ部で付着したドクターロール表面の糊液を掻き落し、この糊液が糊付けロール14とドクターロール18とのニップ部に再び回り込むのを防止する役目をもつ。ドクターブレード28は基台30に固定されている。基台30は支持フレーム32に回転中心Oを中心に回動可能に装着されている。支持フレーム32と基台30との間にはコイルバネ34が架設され、コイルバネ34によって、ドクターブレード28がドクターロール18の外周面に設定された弾性力をもって押圧されている。
【0043】
糊付けロール14の上方には、スイングロール36が設けられている。スイングロール36は、アーム38を介して支軸40に支持されている。そして、支軸40を回動する駆動装置42が設けられ、スイングロール36は、駆動装置42によって、糊付けロール14と押えロール20とのニップ部Nを通る片面段ボールシート面と略直交する方向(矢印方向)に移動可能である。また、支軸40の右方には、ガイドロール44が設けられている。支軸40及びガイドロール44は、図示省略の支持フレームに回動可能に支持固定されている。
【0044】
かかる構成において、糊付けロール14の外周面に、糊液gが塗布される。糊付けロール14に塗布された糊膜は、ドクターロール18を通過することにより、間隙δに応じた設定膜厚に調整され、その後、糊付けロール14と押えロール20とのニップ部Nで、片面段ボールシートkの段頂部mに糊液が塗布される。
【0045】
また、生産管理装置24が支軸40の駆動装置42に指令信号を送り、ニップ部Nを通る片面段ボールシートkのシート面と直交する方向でスイングロール36の位置決めを行なう。これによって、糊付けロール14に対して同時に接触する段頂部mの段山数を、段頂部mに塗付される糊液量が最適となるように調整できる。ニップ部Nを通り、段頂部mに糊液が塗布された片面段ボールシートkは、ニップ部Nの出口側で押えロール20に巻回されて、水平方向に送り出される。
【0046】
本実施形態によれば、スイングロール36を、糊付けロール14と押えロール20間のニップ部Nを通る片面段ボールシートkのシート面と略直交する方向に移動させることにより、糊付けロール表面に同時接触する段頂部mの数を容易に変更できる。そのため、片面段ボールシートkの段頂部mに塗布される糊液塗布量を容易に調整できる。
【0047】
このとき、スイングロール36のみが移動し、糊付けロール14と押えロール20の相対位置は固定されたままである。そのため、ニップ部Nの下流側で、糊付けロール14の表面と片面段ボールシートkの段頂部mとが離れる位置が安定する。これによって、段頂部に塗布される糊液量が安定する。
【0048】
また、糊付けロール14及び押えロール20の中心軸を水平方向に配置すると共に、糊付けロール14に対して押えロール20を水平方向に配置したことにより、押えロール20の自重による撓みがニップ部N側に発生しない。これによって、糊付けロール14と押えロール20間の間隙を軸方向に均一に保持できるので、同時接触段山数が1山でも、片面段ボールシートkの段頂部mに糊液を確実に塗布できるようになる。そのため、糊液量を節減できるようになる。
【0049】
なお、本発明者等の実験によれば、糊付けロール14の回転中心と押えロール20の回転中心とを結ぶ面と、水平面とのなす角度が±15°以内のときに、糊付けロール14と押えロール20との間隙を軸方向に均一保持でき、押えロール20の自重による撓みの影響が少ないことがわかった。一方、該角度が±15°を越えると、押えロール20の自重による撓みの影響が出始め、ロール軸方向に糊膜の不均一が生じ始めることがわかった。
【0050】
また、ニップ部Nの出口側で片面段ボールシートkが押えロール20の表面に巻回されて横方向へ送り出され、これによって、ニップ部Nの下方空間が開放されるので、片面段ボールシートkが糊付けロール14から離れる際に,糊液が糊付けロール14の接線方向に飛散するスプラッシュsを下方に向けることができる。そのため、このスプラッシュsを下方に配置された糊液槽12に回収できるので、スプラッシュsが四方に飛び散り、糊付装置を汚すおそれがなくなる。
【0051】
また、ニップ部Nの出口側で、片面段ボールシートkが押えロール20の表面に巻回されて横方向へ送り出されるので、片面段ボールシートkが糊付けロール14から急激に離れる。そのため、片面段ボールシートkの段頂部mが糊付けロール14から離れる位置が安定し、段頂部mの糊液の付き具合いが安定するという利点がある。
【0052】
(実施形態2)
次に、本発明方法及び装置の第2実施形態を図2及び図3により説明する。本実施形態の糊付装置のハード構成は第1実施形態と同一である。片面段ボールシートkの段頂部mに最適糊液量を塗付するために設定される同時接触段山数は、片面段ボールシートkの坪量(紙種)、段山形状(フルート種別)、走行速度からなるパラメータで決定される。図3は、これらのパラメータと最適同時接触段山数との定性的な関係の例である。
【0053】
例えば、片面段ボールシートkを構成する紙ウェブの坪量が小さい軽量紙や段山形状の小さいフルート種別の場合、最適同時接触段山数は少なくなり、一方、紙ウェブの坪量が大きい重量紙や段山形状の大きいフルート種別の場合、最適同時接触段山数は多くなる。即ち、紙ウェブが重量紙であったり、段山形状の大きいフルート種別である場合、同時接触段山数を増やして糊液の塗布量を確保する必要がある。
【0054】
片面段ボールシートkの走行速度が低速の場合、最適同時接触段山数は少なくなる。一方、走行速度が高速のとき、最適同時接触段山数は多くなる。即ち、片面段ボールシートkの走行速度が低速である場合、同時接触段山数を減らして、過剰な糊液が塗布されないようにする必要がある。
【0055】
そのため、本実施形態では、図2に示すように、複数のパラメータ(x1〜x3)に対する最適同時接触段山数yを予め実験で求めておき、これらの実験値からマトリックスマップを作成しておく。そして、このマトリックスマップを生産管理装置24に記憶させておく。これによって、片面段ボールシートkの坪量(紙種)や運転条件に応じて、生産管理装置24により駆動装置42を操作して、自動的に最適同時接触段山数を選択することができる。そのため、段ボール製造装置の運転中でも、同時接触段山数の自動変更が可能になる。
【0056】
なお、前記実施形態では、3種の前記パラメータから最適同時接触段山数を求めたが、本発明では、これらパラメータのうち少なくともひとつのパラメータから、最適同時接触段山数を求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、ダブルフェーサの糊付装置において、簡単かつ低コストな手段で、片面段ボールシートの段頂部に塗布する糊液塗布量の最適化及び片面段ボールシートの幅方向の均一塗布を実現できる。これによって、同時接触段山数が1山でも段頂部への糊液塗付が可能になり、糊液量を節減できる。
【符号の説明】
【0058】
10,100 糊付装置
12,102 糊液槽
14,104 糊付けロール
18 ドクターロール
20,108 押えロール
22 偏心カム機構
24 生産管理装置(コントローラ)
28 ドクターブレード
30 基台
32 支持フレーム
34 コイルバネ
36 スイングロール
38 アーム
40 支軸
42 駆動装置(移動装置)
44 ガイドロール
N ニップ部
O 回動中心
a 片面段ボールシート走行方向
d 離れ位置
g 糊液
s スプラッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糊液槽に貯留された糊液中に糊付けロールの一部が浸漬され、該糊付けロールに付着した糊液をドクターロールによって設定膜厚に調整した後、片面段ボールシートを押えロールと糊付けロール間のニップ部に通して糊液を片面段ボールシートの段頂部に転写するようにしたダブルフェーサの糊付方法において、
前記糊付けロールと押えロール間のニップ部より片面段ボールシートの送り方向上流側に設けられたスイングロールに片面段ボールシートを巻回すると共に、該ニップ部を通る片面段ボールシートが糊付けロールに巻回する方向にスイングロールを移動させて糊付けロールの表面に同時に接触して糊液が塗布される段頂部の数を調整するようにしたことを特徴とするダブルフェーサの糊付方法。
【請求項2】
前記糊付けロール及び押えロールの中心軸を水平方向に配置すると共に、糊付けロールに対して押えロールを水平方向に配置し、押えロールの自重による撓みが糊付けロールと押えロール間のニップ部側に発生しないようにしたことを特徴とする請求項1に記載のダブルフェーサの糊付方法。
【請求項3】
前記スイングロールが前記糊付けロール及び押えロールの上方に配置され、片面段ボールシートが糊付けロールと押えロール間のニップ部に上方から挿入され、該ニップ部の出口側で片面段ボールシートが押えロールの表面に巻回されて横方向へ送り出され、該ニップ部の下方空間が開放されていることを特徴とする請求項2記載のダブルフェーサの糊付方法。
【請求項4】
片面段ボールシートの坪量(紙種)、段山形状(フルート種別)、走行速度からなるパラメータのうち少なくともひとつのパラメータに応じて、前記スイングロールを移動させて糊付けロールの表面に同時に接触して糊液が塗布される段頂部の数を調整するようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のダブルフェーサの糊付方法。
【請求項5】
糊液を貯留した糊液槽と、該糊液に一部が浸漬されて表面に糊液が付着される糊付けロールと、該糊付けロールに付着した糊液を設定膜厚に調整するドクターロールとを備え、設定膜厚に調整された糊付けロール上の糊液を片面段ボールシートに転写するようにしたダブルフェーサの糊付装置において、
前記糊付けロールと押えロール間のニップ部より片面段ボールシートの送り方向上流側に設けられたスイングロールと、該ニップ部を通る片面段ボールシートが糊付けロールに巻回する方向にスイングロールを移動させる移動装置と、を備え、
スイングロールに片面段ボールシートを巻回すると共に、前記ニップ部を通る片面段ボールシートが糊付けロールに巻回する方向にスイングロールを移動させて糊付けロールの表面に同時に接触して糊液が塗布される段頂部の数を調整するように構成したことを特徴とするダブルフェーサの糊付装置。
【請求項6】
前記糊付けロール及び押えロールの中心軸を水平方向に配置すると共に、糊付けロールに対して押えロールを水平方向に配置し、押えロールの自重による撓みが糊付けロールと押えロール間のニップ部側に発生しないように構成したことを特徴とする請求項5に記載のダブルフェーサの糊付装置。
【請求項7】
前記糊付けロールの中心軸と前記押えロールの中心軸とを結ぶ平面と水平面とのなす角度が±15°以内となるように、糊付けロール及び押えロールを配置することを特徴とする請求項6に記載のダブルフェーサの糊付装置。
【請求項8】
スイングロールが糊付けロール及び押えロールの上方に配置され、片面段ボールシートが糊付けロールと押えロール間のニップ部に上方から挿入され、該ニップ部の出口側で片面段ボールシートが押えロールの表面に巻回されて横方向へ送り出され、前記ニップ部の下方空間が開放されていることを特徴とする請求項6又は7記載のダブルフェーサの糊付装置。
【請求項9】
片面段ボールシートの坪量(紙種)、段山形状(フルート種別)、走行速度からなるパラメータのうち少なくともひとつのパラメータに応じて、スイングロールを移動させて糊付けロールの表面に同時に接触して糊液が塗布される段頂部の数を調整するコントローラを備えたことを特徴とする請求項5〜8のいずれかの項に記載のダブルフェーサの糊付装置。
【請求項10】
請求項5〜8のいずれかの項の糊付装置を備えたことを特徴とするダブルフェーサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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