説明

ダンパー

【課題】シリンダー内にて流体のシール性が低下することを抑えることの可能なダンパーを提供する。
【解決手段】流体室に流体を流入及び流出させてシリンダーC内で流体を流通させるとともに、流体の流体抵抗によってピストンロッドRを制動するダンパーであって、ブラダ20は、該ブラダ20の径方向の外側に突出して該ブラダ20にて外径が最大となる環状の先端摺動突条22Tを先端側に有し、シリンダーCは、アキュムレーターの収容される大径部分C2にて先端摺動突条22Tの外径以上の内径を有し、且つ該大径部分C2における先端側の端面CSには、大径部分C2の基端側に向けて突出して先端摺動突条22Tを基端側へ押圧する環状の押圧突条CTを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダー内にアキュムレーターを有するダンパーに関するものであって、特に、ピストンロッドに外嵌された筒状のライナーにブラダが巻装されてなるアキュムレーターを有するダンパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に記載のように、物体同士の衝撃力を緩和するダンパーが知られている。図4(a)は、ダンパーの内部構造を示す断面図であり、図4(b)は、ダンパーを構成するアキュムレーターがシリンダーに組み込まれる過程を説明する図である。
【0003】
図4(a)に示されるように、有底の二段円筒状に形成されたシリンダーCの基端には、シリンダーCの内部に各構成部品を封入するためのキャップCPが嵌め込まれている。このシリンダーCの内部には、シリンダーCの中心軸に沿って延びるピストンロッドRが、キャップCPを貫挿するように挿設されている。このピストンロッドRのうち、シリンダーCの小径部分C1内には、円柱状のピストンPが外嵌されて、また、ピストンロッドRのうち、シリンダーCの大径部分C2内には、大径部分C2内に位置決めされた糸巻き状のライナー50が外嵌されている。また、ピストンロッドRのうち、ライナー50の基端には、ライナー50とピストンロッドRとの間をシールするシールリングSRが外嵌されている。
【0004】
上記ピストンPは、小径部分C1の内周面を摺動可能な円筒状に形成され、小径部分C1の内部空間をピストンPの先端側とピストンPの基端側とに分割している。ピストンPは、ピストンロッドRの軸方向に延びる絞りPHを有することにより、ピストンPの先端側の空間とピストンPの基端側の空間との間で、所定の流体抵抗のもと、シリコンオイルを流通させる。
【0005】
上記ライナー50のうち、ピストンロッドRの軸方向における中央には、円筒状のスリーブ部51がピストンロッドRに外嵌されている。スリーブ部51における軸方向の両端部には、スリーブ部51よりも大径の先端フランジ部52と、同じく、スリーブ部51よりも大径の基端フランジ部53とが連結されている。また、先端フランジ部52は、ピストンロッドRの軸方向に延びる流路52Hを有し、先端フランジ部52の先端側である小径部分C1内とスリーブ部51の径方向の外側との間でシリコンオイルを流通させる。
【0006】
ライナー50の外周面には、該外周面の全体が覆われるように、ブラダ60が巻装されている。ブラダ60は、エラストマーや樹脂などから形成される弾性体であって、ピストンロッドRの軸方向に延びる糸巻き状に形成されている。このブラダ60における先端側の開口部は、ピストンロッドRの径方向の内側に折り曲げられて、流路52Hの先端側が開放されるように、先端フランジ部52の先端に掛け止めされている。また、ブラダ60における基端側の開口部は、これもまた径方向の内側に折り曲げられて、基端フランジ部53の基端に掛け止めされている。こうしたブラダ60のうち、一対のフランジ部52,53の外周面を覆う部位は、該外周面と大径部分C2の内周面とに押圧されている。そして、このような構成からなるダンパーでは、シリンダーC内の空間がピストンPとブラダ60とによって、下記四つの空間に分割される。
・小径部分C1内のうち、ピストンPに対する先端側の空間(第一空間S1)。
・小径部分C1内のうち、ピストンPに対する基端側の空間(第二空間S2)。
・大径部分C2内のうち、ブラダ60の内側の空間(第三空間S3)。
・大径部分C2内のうち、ブラダ60の外側の空間(第四空間S4)。
【0007】
上記第一空間S1と第二空間S2との間では、ピストンPの絞りPHを介し、所定の流体抵抗のもと、シリコンオイルが流通する。また、第二空間S2と第三空間S3との間では、流路52Hを介し、シリコンオイルが流通する。これに対して、第二空間S2と第四空間S4との間、及び第三空間S3と第四空間S4との間は、ブラダ60によって区画されている。
【0008】
そして、ピストンロッドRがシリンダーC内に押し込まれると、絞りPHにてシリコンオイルの流通が制限され、こうしたシリコンオイルの流体抵抗によって、ピストンロッドRが制動される。この際、第一空間S1の容積が減少するものの、こうした容積の変化は、ブラダ60がピストンロッドRの径方向の外側へ撓むことによって吸収される。また、ピストンロッドRがシリンダーC内から引き出されると、これもまたシリコンオイルの流体抵抗によって、ピストンロッドRが制動される。そして、第一空間S1の容積が拡大するものの、こうした容積の変化は、ブラダ60がピストンロッドRの径方向の内側へ撓むことによって吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−270951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述したライナー50とブラダ60とから構成されるアキュムレーターがシリンダーC内に組み込まれる過程では、図4(b)に示されるように、ピストンPとアキュムレーターとがピストンロッドRに外嵌された状態で、大径部分C2の内部にピストンロッドRが挿入される。この際、大径部分C2の内部にライナー50が固定されるまで、ブラダ60の先端側は、シリンダーCの内周面を摺動し続ける。
【0011】
一方、ブラダ60の先端側には、上述したように、第二空間S2と第三空間S3との間、及び第二空間S2と第四空間S4との間をシールする機能が必要とされる。それゆえに、先端フランジ部52の外周面と大径部分C2の内周面との間隔は、通常、これらのシールが確保されるべく、ブラダ60の先端側が径方向に押し潰されるように設計されている。しかしながら、このような設計のもと、ブラダ60がシリンダーCの内周面を摺動すると、ピストンロッドRが挿入される方向とは反対方向の大きな摩擦力Fが、ブラダ60に作用することとなる。その結果、ブラダ60のうち、先端フランジ部52に掛け止めされた部位(図4(b)の二点鎖線で囲まれた部位)が、先端フランジ部52から捲れてしまう場合がある。ひいては、ダンパーが組み立てられる過程において、第二空間S2と第三空間S3との間のシール性や第二空間S2と第四空間S4との間のシール性が失われる虞がある。
【0012】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シリンダー内にて流体のシール性が低下することを抑えることの可能なダンパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ピストンロッドが貫挿されるキャップが基端に嵌め込まれたシリンダーと、該シリンダー内に収容されて前記ピストンロッドと同心の環状をなすアキュムレーターとを備え、前記アキュムレーターは、前記ピストンロッドに外嵌された糸巻き状の筒体であるライナーと、前記ライナーと前記シリンダーとの間に挟入され、前記ライナーの外周面と前記シリンダーの内周面との間の環状空間に容積の可変な流体室を区画する筒状のブラダとを備え、前記流体室に流体を流入及び流出させて前記シリンダー内で流体を流通させるとともに、該流体の流体抵抗によって前記ピストンロッドを制動するダンパーであって、前記ブラダは、該ブラダの径方向の外側に突出して該ブラダにて外径が最大となる環状の摺動突条を先端側に有し、前記シリンダーは、前記アキュムレーターの収容される収容部分にて前記摺動突条の外径以上の内径を有し、且つ該収容部分における先端側の端面には、前記収容部分の基端側に向けて突出して前記摺動突条を基端側へ押圧する環状の押圧突条を有することを要旨とする。
【0014】
上述したダンパーの製造過程では、アキュムレーターがピストンロッドに外嵌された状態で、シリンダーの基端から該シリンダーの内部へピストンロッドが挿入されることになる。この際、アキュムレーターを構成するブラダの先端部がシリンダーの内周面を摺動するため、これに伴い、ブラダの先端部には、該ブラダの先端部を基端側にずらすような摩擦力が加わることになる。この点、請求項1に記載の発明によれば、収容部分の内径が摺動突条の外径以上であるため、アキュムレーターにおける先端側では、収容部分の内周面に対して上述した摺動突条のみが支配的に接触することとなる。それゆえに、上述した摺動突条と該摺動突条以外の部位とがシリンダーの内周面に接触する場合と比較して、ブラダとシリンダーとが互いに接触する面積を抑えることが可能である。その結果、ブラダの先端部を基端側へずらすような摩擦力がブラダに作用し続けることを抑えることが可能である。そのうえ、収容部分にアキュムレーターが配置された状態では、収容部分の先端側にて押圧突条が摺動突条を押圧することとなる。そのため、シリンダーの内周面と摺動突条との間には、相対的に高いシール性が得られがたいものの、これら環状の押圧突条と環状の摺動突条との接触によって、流体室のシール性が確保されるようになる。ひいては、シリンダー内にて流体のシール性が低下することを抑えることが可能である。
【0015】
請求項2に記載の発明は、ピストンロッドが貫挿されるキャップが基端に嵌め込まれたシリンダーと、該シリンダー内に収容されて前記ピストンロッドと同心の環状をなすアキュムレーターとを備え、前記アキュムレーターは、前記ピストンロッドに外嵌された糸巻き状の筒体であるライナーと、前記ライナーと前記シリンダーとの間に挟入され、前記ライナーの外周面と前記シリンダーの内周面との間の環状空間に容積の可変な流体室を区画する筒状のブラダとを備え、前記流体室に流体を流入及び流出させて前記シリンダー内で流体を流通させるとともに、該流体の流体抵抗によって前記ピストンロッドを制動するダンパーであって、前記ブラダは、該ブラダの径方向の外側に突出して該ブラダにて外径が最大となる環状の摺動突条を先端側に有し、前記シリンダーは、前記アキュムレーターの収容される収容部分の先端側の端面に該収容部分の基端側に向けて突出して前記摺動突条を基端側へ押圧する環状の押圧突条を有し、前記押圧突条は、前記摺動突条が前記シリンダーの内周面を押圧する力よりも大きな力で前記摺動突条を押圧することを要旨とする。
【0016】
上述したように、ダンパーの製造過程では、ブラダの先端部に対して、該ブラダの先端部を基端側にずらすような摩擦力が加わることになる。この点、請求項2に記載の発明によれば、収容部分にアキュムレーターが配置された状態では、収容部分の先端側にて押圧突条が摺動突条を押圧する。そのため、これら環状の押圧突条と環状の摺動突条との接触によって、流体室のシール性が確保されるようになる。そして、摺動突条がシリンダーの内周面を押圧する力よりも大きな力によって、押圧突条が摺動突条を押圧することになる。そのため、摺動突条がシリンダーの内周面を押圧する力を抑えること、すなわち、上述した摩擦力を抑えることが可能となる。その結果、シリンダー内にて流体のシール性が低下することを抑えることが可能である。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のダンパーにおいて、前記シリンダーには、前記収容部分よりも小さい内径を有する小径部分が、前記収容部分の先端側に該収容部分と同心に連結され、前記押圧突条は、前記ピストンロッドの軸方向に突出する環状の突条であって、前記小径部分が連結された前記収容部分の端面に突設されていることを要旨とする。
【0018】
収容部分の先端側にてシリンダーの内径が小さくなる構成としては、収容部分よりも小さい内径を有する小径部分が、収容部分の先端側に連結されるという構成の他、径方向の内側に突出する突条が、シリンダーの内周面に形成されるという構成がある。ただし、径方向の内側に突出する突条が、シリンダーの内周面に形成されるという構成では、例えば、シリンダーを樹脂成形する際に、金型をシリンダーの基端側から引き抜くことが難しく、シリンダーそのものを一体的に製造することが困難となる。この点、請求項3に記載の発明では、収容部分よりも小さい内径を有する小径部分が、収容部分の先端側に該収容部分と同心に連結される構成であって、且つ収容部分の基端側に向けて突出する押圧突条が、小径部分の連結された収容部分の端面に突設されている。このような構成によれば、シリンダーそのものを樹脂成形する際に、金型をシリンダーの基端側から引き抜くことが可能にもなる。それゆえに、ダンパーを構成する部材の点数やダンパーの製造に必要とされる時間を少なくすることが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のダンパーにおいて、前記摺動突条の先端側には、前記ブラダの先端側の開口縁が、径方向の内側に折り曲げられてなる開口端部が形成され、前記開口端部が、前記ライナーの先端側の端面に掛け止めされて、前記ライナーの先端側の端面と前記収容部分の先端側の端面との間に挟入されていることを要旨とする。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、ブラダにおける摺動突条が押圧突条によって押圧され、且つブラダにおける開口端部がライナーと収容部分との間に挟入される。そして、アキュムレーターの先端側では、これら摺動突条と開口端部との二カ所にて、ブラダとシリンダーとの間のシール性が確保される。その結果、シリンダー内にて流体のシール性が低下することをより確実に抑えることが可能である。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のダンパーにおいて、前記ライナーは、前記ピストンロッドに外嵌されたスリーブ部を有し、前記スリーブ部は、前記ブラダの先端部を前記シリンダーに押圧する先端フランジ部を先端に有するとともに、前記ブラダの基端部を前記シリンダーに押圧する基端フランジ部を基端に有し、前記流体室は、前記スリーブ部と、前記先端フランジ部と、前記基端フランジ部と、前記ブラダとによって区画され、前記先端フランジ部は、該先端フランジ部の周方向の全体にわたり掛止溝を有し、前記ブラダの先端側の開口端部は、前記掛止溝に掛け止めされていることを要旨とする。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、先端フランジ部の全体にわたる掛止溝にブラダの先端側の開口端部が掛け止めされるため、上述した摩擦力によるブラダの位置ずれをより発生し難くすることが可能である。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のダンパーにおいて、前記先端フランジ部が、前記ブラダの先端部を前記シリンダーに押圧する複数の先端フランジ片を先端に有し、前記複数の先端フランジ片が、該先端フランジ片の基端部にて支持される片持ち梁状に前記ライナーの周方向に配列されていることを要旨とする。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、ライナーの先端には、ブラダの先端部をシリンダーに押圧する複数の先端フランジ片が周方向に形成され、且つ複数の先端フランジ片の各々が、基端で支持された片持ち梁状に形成されている。このような構成によれば、上述した摩擦力が、複数の先端フランジ片を撓ませる力に変換されることとなる。そして、複数の先端フランジ片の各々が径方向の内側に撓むことによって、ライナーにおける先端部の外径が縮小するため、上述した摩擦力がブラダの先端部を基端側へずらす力として作用すること、それを抑えることが可能である。ひいては、シリンダー内にて流体のシール性が低下することを抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る第1実施形態のダンパーの断面構造の一部を示す部分断面図。
【図2】本発明に係る第2実施形態のダンパーの断面構造の一部を示す部分断面図。
【図3】本発明に係る第3実施形態のダンパーの断面構造の一部を示す部分断面図。
【図4】(a)は、従来のダンパーの断面構造を示す断面図。(b)は、シリンダー内にアキュムレーターを組み込む過程を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明のダンパーを具体化した第1実施形態について、図1を参照して説明する。本実施形態では、ダンパーが、住宅設備の引出しや扉等の開閉体と、開閉体を固定する固定側部材との間に架設され、開閉体と固定部材とが衝突する際の衝撃や騒音を緩衝するものとして説明する。
【0027】
図1に示されるように、ピストンロッドRに外嵌された樹脂製のライナー10には、糸巻き状のブラダ20が巻装されている。ブラダ20は、エラストマーや樹脂などからなる弾性体であって、ライナー10の外周面上では、ライナー10の全体を覆う一方、ピストンロッドRの軸方向では、ライナー10の両端部を開放するように形成されている。
【0028】
糸巻き状の筒体であるライナー10の中心には、ピストンロッドRの貫挿されるロッド貫挿孔10Hが、ピストンロッドRの軸方向に沿って延びるように貫通している。また、ライナー10のうち、ピストンロッドRの軸方向における中央では、円筒状のスリーブ部11が、ピストンロッドRに外嵌されている。
【0029】
上記スリーブ部11のうち、ピストンロッドRの軸方向における一端部には、スリーブ部11の外径よりも大きな外径からなる円筒状の先端フランジ部12が、スリーブ部11と一体的に成形されている。先端フランジ部12は、ピストンロッドRの軸方向に延びる流路12Hを有し、先端フランジ部12の先端側である小径部分C1の内部とスリーブ部11の径方向の外側との間でシリコンオイルを流通させる。
【0030】
また、スリーブ部11のうち、ピストンロッドRの軸方向における他端部には、スリーブ部11の外径よりも大きな外径からなる基端フランジ部13が、これもまた、スリーブ部11と一体的に成形されている。そして、このような外形を有したライナー10が、円筒状のシリンダーC内に配設されると、スリーブ部11の外周面とシリンダーCの内周面との間には、ピストンロッドRと同心の環状空間が、上記先端フランジ部12と基端フランジ部13とに挟まれるように形成される。
【0031】
なお、ピストンロッドRの軸方向のうち、スリーブ部11に対する先端フランジ部12の側を先端側とし、スリーブ部11に対する基端フランジ部13の側を基端側とする。
基端フランジ部13の基端部には、基端フランジ部13とピストンロッドRとの間をシールするシールリングSRを嵌め込むための嵌合孔13Hが、ピストンロッドRの軸方向に沿って延設されている。ライナー10に挿通されるピストンロッドRは、この嵌合孔13Hに嵌め込まれるシールリングSRを介して、ライナー10とのシール性を保ちつつ、ライナー10に対して軸方向へ移動する。
【0032】
上述したライナー10に巻装されるブラダ20の外形は、上述したライナー10の外周面に倣うように糸巻き状に形成されている。このブラダ20のうち、ピストンロッドRの軸方向における中央には、ピストンロッドRの径方向の内側に撓んだ領域である伸縮部21が区画されている。伸縮部21は、径方向の内側に撓んだ状態と、該状態から径方向の外側に変位した状態との間の遷移を許容する。この伸縮部21の先端側には、伸縮部21の内径よりも大きな内径からなる円筒状の先端掴持部22が、先端フランジ部12の外周面に密着するように区画されている。
【0033】
先端掴持部22の内径は、先端フランジ部12の外径よりも小さく、これにより、先端掴持部22は、径方向の内側に収縮する収縮力を有した状態で、上記先端フランジ部12を掴持するようになる。また、先端掴持部22における先端側の開口部である先端開口端部22Eは、ピストンロッドRにおける径方向の内側へ折り曲げられている。先端開口端部22Eの内径である開口内径DLは、上述した小径部分C1の内径よりも小さい。このような構成によれば、先端掴持部22における先端開口端部22Eは、先端フランジ部12における先端側の端面に掛け止められる。そして、掛け止めされた先端開口端部22Eは、収容部分である大径部分C2の先端側の端面CSと、先端フランジ部12における先端側の端面とによって押圧されることになる。
【0034】
先端掴持部22の外周面には、径方向の外側に突出する突条である先端摺動突条22Tが、先端掴持部22の周方向の全体にわたり凸設されている。先端摺動突条22Tは、ピストンロッドRの軸方向を含む断面にて円弧状に形成され、また、ピストンロッドRの軸方向における先端掴持部22の先端よりも若干基端側となる部位に配設されている。この先端摺動突条22Tの外径である突条外径DHは、ブラダ20における他の部位の外径DBよりも大きく、大径部分C2の内径であるシリンダー内径DCと同じである。
【0035】
上記伸縮部21の基端側には、伸縮部21の内径よりも大きな内径からなる円筒状の基端掴持部23が、基端フランジ部13の外周面に密着するように区画されている。基端掴持部23の内径は、基端フランジ部13の外径よりも小さく、これにより、基端掴持部23は、径方向の内側に収縮する収縮力を有した状態で基端フランジ部13を掴持するようになる。また、基端掴持部23の外周面には、径方向の外側に突出する突条である基端摺動突条23Tが、基端掴持部23の周方向の全体にわたり凸設されている。基端摺動突条23Tの外表面は、先端摺動突条22Tと同じく、ピストンロッドRの軸方向を含む断面にて円弧状に形成され、また、ピストンロッドRの軸方向における基端掴持部23の基端よりも若干先端側となる部位に配設されている。この基端摺動突条23Tの外径は、上述した先端摺動突条22Tの突条外径DHよりも大きく、シリンダー内径DCよりも大きい。
【0036】
また、基端掴持部23における基端側の開口部は、先端掴持部22における先端側の開口部と同じく、ピストンロッドRにおける径方向の内側へ折り曲げられている。基端掴持部23における先端側の開口縁の内径は、上述した嵌合孔13Hの内径よりも大きく、且つ上述した基端フランジ部13の外径よりも小さい。これにより、基端掴持部における基端側の開口部は、基端フランジ部13における基端側の端面に掛け止めされるようになる。
【0037】
大径部分C2の内側面のうち、上述した先端側の端面CSには、ピストンロッドRの軸方向に沿って基端側に延びる環状の押圧突条CTが突設されている。押圧突条CTは、ブラダ20の先端開口端部22Eから離間するように、該先端開口端部22Eの径方向の外側に配設されている。このような構成からなる押圧突条CTの突出する量は、以下のように規定されている。すなわち、ライナー10における先端側の端面と大径部分C2の端面CSとによって先端開口端部22Eが押圧される状態では、上述した先端摺動突条22Tの先端側が押圧突条CTによって押圧されるように、上記押圧突条CTの突出量が規定されている。
【0038】
次に、上述した構成からなるダンパーの作用のうち、特に、シリンダーC内にアキュムレーターが組み込まれる際の作用を説明する。
上述したダンパーが組み立てられる際には、まず、ピストンロッドRに外嵌されたライナー10の外周面に、ブラダ20が巻装される。次いで、同ライナー10の嵌合孔13Hには、ライナー10とピストンロッドRとの間をシールするシールリングSRが嵌め込まれ、さらに、シールリングSRの基端側のピストンロッドRに、キャップCPが貫挿される。そして、流体としてのオイルが小径部分C1に注入されたシリンダーCに対し、該シリンダーCの基端である開口部からピストンロッドRが挿入される。
【0039】
この際、ブラダ20における先端開口端部22Eが、大径部分C2の先端側の端面CSに当接するまでは、ブラダ20の先端掴持部22が、大径部分C2の内周面を摺動し続ける。そして、ピストンロッドRが挿入される挿入方向とは反対方向の摩擦力Fが、この先端掴持部22に作用し続ける。一方、このような摩擦力Fは、先端掴持部22が大径部分C2の内周面を押圧する力が大きくなるほど大きくなり、また先端掴持部22と大径部分C2との接触面積が大きくなるほど、その作用する領域が大きくなる。この点、上述したダンパーにおいては、先端摺動突条22Tの突条外径DHが、大径部分C2のシリンダー内径DCと同じであるため、こうした先端摺動突条22Tが大径部分C2を押圧する力も自ずと小さいものとなる。また、ブラダ20の外周面のうち、その先端側では、先端摺動突条22Tが大径部分C2の内周面と摺接する一方、その他の部位では、大径部分C2の内周面に対してブラダ20が摺接し難くなる。そのため、こうした先端摺動突条22Tを有しない構成と比較して、上述した摩擦力Fが先端掴持部22を捲る力として作用すること、それを抑えることが可能となる。
【0040】
そして、ブラダ20における先端開口端部22Eが大径部分C2の端面CSに当接し、キャップCPがシリンダーCに嵌め込まれることによって、ライナー10とブラダ20とから構成されるアキュムレーターが、大径部分C2内に固定される。この際、上述したように、先端摺動突条22Tの突条外径DHと大径部分C2のシリンダー内径DCとが互いに同じであるため、先端摺動突条22Tが大径部分C2の内周面を押圧する力は、非常に小さいものとなる。一方、先端開口端部22Eは、ライナー10における先端側の端面と大径部分C2の端面CSとによって押圧されることになる。また、これに加えて、上述した先端摺動突条22Tの先端側が押圧突条CTによって押圧されるようになる。その結果、ブラダ20が大径部分C2の内周面を殆ど押圧しない状態であっても、先端摺動突条22Tと押圧突条CTとの間、及び先端開口端部22Eと端面CSとの間、これらにおいて、大径部分C2の先端側とブラダ20との間のシール性が確保されることとなる。なお、基端フランジ部13と大径部分C2との間のシール性は、大径部分C2の内周面と基端摺動突条23Tとの間で確保されるようになる。
【0041】
このようにして、先端フランジ部12と大径部分C2との間、及び基端フランジ部13と大径部分C2との間がシールされると、ライナー10の外周面とシリンダーCの内周面との間に形成された環状空間が、上述したブラダ20によって二層の環状に分割される。
【0042】
具体的には、スリーブ部11、先端フランジ部12、基端フランジ部13、及びブラダ20によって、流体室となる第三空間S3が区画される。なお、この第三空間S3は、流路12Hを介してアキュムレーターの外側と連通するようになる。また、このような第三空間S3の他、大径部分C2、先端フランジ部12、基端フランジ部13、及びブラダ20によって、空気室となる第四空間S4が区画される。この第四空間S4に対しては、大径部分C2に形成された連通孔CHを介して、シリンダーCの外側が連通するようになる。
【0043】
そして、このようにして組み立てられたダンパーにて、ピストンロッドRがシリンダーC内に押し込まれると、シリコンオイルの流体抵抗によって、ピストンロッドRが制動される。この際、シリンダーC内のシリコンオイルの一部が、上述したスリット12Sを介して第三空間S3に流入し、第三空間S3が大きくなることによって、小径部分C1内における容積の変化がアキュムレーターに吸収される。また、ピストンロッドRがシリンダーC内から引き出されると、これもまたシリコンオイルの流体抵抗によって、ピストンロッドRが制動される。そして、シリンダーC内のシリコンオイルの一部が、上述したスリット12Sを介して第三空間S3から流出し、第三空間S3が小さくなることによって、小径部分C1内における容積の変化がアキュムレーターに吸収される。
【0044】
以上、第1実施形態によれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(1)先端摺動突条22Tにおける突条外径DHがシリンダー内径DCと同じであるため、ブラダ20が摩擦力Fによってずれることを抑えることが可能である。そのうえ、大径部分C2にアキュムレーターが位置決めされた状態では、大径部分C2の先端側にて、押圧突条CTが先端摺動突条22Tを基端側へ押圧するようになる。そのため、押圧突条CTと先端摺動突条22Tとの接触によって、流体室のシール性が確保されるようになる。ひいては、シリンダーC内における流体のシール性の低下を抑えることが可能である。
【0045】
また、上述のように、ブラダ20が摩擦力Fによってずれることを抑えることが可能であるため、ダンパーの組み立て時におけるブラダ20の捲れの発生が抑えられる。それゆえに、歩留まりを改善してコストダウンを図ることも可能である。
【0046】
(2)大径部分C2の基端側に向けて突出する押圧突条CTが、大径部分C2の先端側の端面CSに突設されている。このような構成によれば、シリンダーCそのものを樹脂成形する際に、シリンダーCの基端側から金型を引き抜くことが可能にもなる。それゆえに、ダンパーを構成する部材の点数やダンパーの製造に必要とされる時間を少なくすることが可能となる。
【0047】
(3)ブラダ20における先端開口端部22Eが、ライナー10と大径部分C2との間に挟入される。このような構成によれば、先端摺動突条22Tの他、先端開口端部22Eにおいても、ブラダ20とシリンダーCとの間のシール性が確保される。その結果、シリンダーC内にて流体のシール性が低下することをより確実に抑えることが可能である。
【0048】
(第2実施形態)
以下、本発明のダンパーを具体化した第2実施形態について、図2を参照して説明する。なお、第2実施形態では、先端フランジ部12、基端フランジ部13、先端掴持部22、及び基端掴持部23、これらの構造が、第1実施形態とは異なる。そのため、以下では、これらの構造について主に説明し、第1実施形態と同一部分については、それらの説明を割愛する。
【0049】
図2に示されるように、先端フランジ部12の外周面には、周方向の全体にわたる先端掛止溝12Gが凹設されている。先端フランジ部12においては、上記先端掛止溝12Gに対する先端側の外径が、該先端掛止溝12Gに対する基端側の外径よりもブラダ20の厚さだけ大きい。また、この先端掛止溝12Gのうち、ピストンロッドRの軸方向の両側を挟む一対の溝側壁では、その形状が互いに異なる。具体的には、上述した一対の溝側壁のうち、基端側の溝側壁は、ピストンロッドRの軸方向と直交する一方、先端側の溝側壁は、溝底面から溝開口に向けて基端側に傾くようなテーパ状に形成されている。
【0050】
なお、基端フランジ部13の外周面にも、基端フランジ部13の周方向の全体にわたり、基端掛止溝が凹設されている。この基端掛止溝の形状は、ピストンロッドRの軸方向と直交する面に対して、先端掛止溝12Gと対称である。
【0051】
先端掴持部22における先端側の開口部では、該開口部の周方向の全体にわたる先端開口端部22Eが、ピストンロッドRにおける径方向の内側へ折り曲げられている。先端開口端部22Eのうち、ピストンロッドRの軸方向の両側を挟む一対の端面では、その形状が互いに異なる。具体的には、上述した一対の端面のうち、基端側の端面は、ピストンロッドRの軸方向と直交する一方、先端側の端面は、外表面から開口縁に向けて基端側に傾くようなテーパ状に形成されている。
【0052】
なお、基端掴持部23における基端側の開口部にも、ピストンロッドRにおける径方向の内側へ折り曲げられた基端開口端部が形成されている。この基端開口端部の形状と先端開口端部22Eの形状との関係は、上述した先端掛止溝12Gと基端掛止溝との関係と同じく、ピストンロッドRの軸方向と直交する面に対して対称である。
【0053】
一方、大径部分C2の内側面のうち、上述した先端側の端面CSには、ピストンロッドRの軸方向に沿って基端側に延びる環状の押圧突条CTが突設されている。押圧突条CTの内径は、先端フランジ部12にて最も大きい外径と略同じであり、押圧突条CTの内側には、先端フランジ部12の先端部が嵌め込まれている。このような構成からなる押圧突条CTの突出する量は、上述した先端摺動突条22Tの先端側が押圧突条CTによって押圧されるように規定されている。
【0054】
次に、上述した構成からなるダンパーの作用のうち、特に、シリンダーC内にアキュムレーターが組み込まれる際の作用を説明する。
上述した構造からなる先端フランジ部12と先端掴持部22とによれば、先端開口端部22Eが先端フランジ部12の先端掛止溝12Gに掛け止めされる。そして、先端開口端部22Eにて軸方向の両側を挟む一対の端面が、同じく先端掛止溝12Gにて軸方向の両側を挟む一対の端面と密着するようになる。これによって、先端フランジ部12と先端掴持部22との接触する面積が大きくなる結果、先端フランジ部12の掴持される力が強められて、先端掴持部22が捲れることをさらに抑制することが可能となる。なお、基端フランジ部13においても同様に、基端フランジ部13の掴持される力が強められる。
【0055】
また、先端掛止溝12Gに対する先端側の外径が、該先端掛止溝12Gに対する基端側の外径よりもブラダ20の厚さだけ大きいため、先端掴持部22のうち、先端摺動突条22T以外の外表面と、先端フランジ部12のうち、先端側の外表面とが、略面一となる。それゆえに、シリンダーC内にライナー10が組み込まれる際には、ピストンロッドRの軸方向において先端掴持部22の先端が、大径部分C2の内周面と干渉し難くすること、ひいては、こうした干渉に起因する先端掴持部22の捲れを抑えることが可能である。
【0056】
以上、第2実施形態によれば、上述した(1)〜(3)に加えて、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(4)先端フランジ部12の全体にわたる先端掛止溝12Gにブラダ20の先端開口端部22Eが掛け止めされるため、上述した摩擦力Fによるブラダの位置ずれをより発生し難くすることが可能である。その結果、ダンパーの組み立て時におけるブラダ20の捲れの発生が抑えられる。歩留まりを改善してコストダウンを図ることも可能である。
【0057】
(第3実施形態)
以下、本発明のダンパーを具体化した第3実施形態について、図3を参照して説明する。なお、第3実施形態では、ライナー10における先端フランジ部12の構造が、第2実施形態とは異なる。そのため、以下では、これらの構造について主に説明し、第2実施形態と同一部分については、それらの説明を割愛する。
【0058】
図3に示されるように、先端フランジ部12の周壁及び底壁には、ピストンロッドRの軸方向に沿って延びる4つのスリット12Sが、ピストンロッドRの周方向に等配されている。4つのスリット12Sの各々は、ピストンロッドRの軸方向に沿って延びる切欠きであって、ピストンロッドRの軸方向においては、先端フランジ部12の全幅にわたり連続している。すなわち先端フランジ部12の全体は、4つのスリット12Sによって周方向に分割されている。また、先端フランジ部12の分割された部分である4つの先端フランジ片12Bの各々は、スリーブ部11の先端部にて片持ち梁状に連結されている。そして、4つの先端フランジ片12Bの各々が、ピストンロッドRの径方向の内側に向けて外力を受けると、これら4つの先端フランジ片12Bの各々は、該先端フランジ片12Bとスリーブ部11との連結箇所を固定端として、径方向の内側へ撓曲するようになる。
【0059】
次に、上述した構成からなるダンパーの作用のうち、特に、シリンダーC内にアキュムレーターが組み込まれる際の作用を説明する。
シリンダーCの内部にピストンロッドRが挿入される際、ブラダ20における先端側の端面が、大径部分C2の先端側の端面に当接するまでは、ブラダ20の先端掴持部22が大径部分C2の内周面を摺動し続ける。そして、ピストンロッドRが挿入される挿入方向とは反対方向の摩擦力Fが、この先端掴持部22に作用し続ける。一方、このような摩擦力Fは、先端掴持部22を捲る力として該先端掴持部22に作用する他、該先端掴持部22を介して、先端フランジ部12を径方向の内側(図3の矢印方向)へ変位させる力として該先端フランジ部12にも作用する。
【0060】
この点、上述したダンパーにおいては、先端フランジ部12を構成する4つの先端フランジ片12Bの各々が、片持ち梁構造を有している。そのため、こうした片持ち梁構造を有しない構成と比較して、上述した摩擦力Fが、先端フランジ部12を撓ませる力に変換されやすくなる。また、先端フランジ片12Bが撓むことになれば、先端掴持部22の外周面と大径部分C2の内周面との接触面積が小さくなるため、上述した摩擦力Fそのものが先端掴持部22に作用することが抑えられることになる。その結果、こうした片持ち梁構造を有しない先端フランジ部と比較して、先端フランジ片12Bが撓む分、上述した摩擦力Fが先端掴持部22を捲る力として作用すること、それを抑えることが可能となる。ひいては、先端掴持部22が先端フランジ部12から外れることを抑えることが可能となる。
【0061】
以上、第3実施形態によれば、上述した(1)〜(4)に加えて、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(5)ライナー10の先端には、ブラダ20の先端部をシリンダーCに押圧する複数の先端フランジ片12Bが周方向に形成され、且つ複数の先端フランジ片12Bの各々が、基端で支持された片持ち梁状に形成されている。このような構成によれば、上述した摩擦力Fが、複数の先端フランジ片12Bを撓ませる力に変換されることとなる。そして、複数の先端フランジ片12Bの各々が径方向の内側に撓むことによって、ライナー10における先端部の外径が縮小するため、上述した摩擦力Fがブラダ20の先端部を基端側へずらす力として作用すること、それを抑えることが可能である。ひいては、シリンダーC内にて流体のシール性が低下することを抑えることが可能である。
【0062】
また、上述のように、ブラダ20が摩擦力Fによってずれることを抑えることが可能であるため、ダンパーの組み立て時におけるブラダ20の捲れの発生が抑えられる。それゆえに、歩留まりを改善してコストダウンを図ることも可能である。
【0063】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・先端摺動突条22Tの外径である突条外径DHは、大径部分C2の内径であるシリンダー内径DCよりも小さくてもよい(DH<DC)。このような構成であっても、ブラダ20と大径部分C2とのシール性が先端摺動突条22Tと押圧突条CTとによって確保される以上、アキュムレーターとしての機能を確保することは可能である。
【0064】
・先端摺動突条22Tの外径である突条外径DHは、大径部分C2の内径であるシリンダー内径DCよりも大きくてもよく(DH>DC)、先端摺動突条22TがシリンダーCの内周面を押圧する力よりも大きな力で押圧突条CTが先端摺動突条22Tを押圧する構成であればよい。このような構成であっても、ブラダ20と大径部分C2とのシール性が先端摺動突条22Tと押圧突条CTとによって確保される以上、シリンダーCの内周面と先端摺動突条22Tとの密着性を抑えることは可能である。
【0065】
・基端掴持部23では、基端フランジ部13と大径部分C2とが基端掴持部23によってシールされる構成であれば、上述した基端摺動突条23Tが割愛される構成であってもよい。
【0066】
・アキュムレーターの収容される収容部分の先端側にてシリンダーCの内径が小さくなる構成としては、上述したように、小径部分C1と大径部分C2とによってシリンダーCを構成する他、径方向の内側に突出する突条が、シリンダーCの内周面に形成されるという構成がある。上述した押圧突条CTとは、こうしたシリンダーC内に突出する突条に形成される構成であってもよく、アキュムレーターの収容される収容部分の先端側の端面に該収容部分の基端側に向けて突出し、且つ先端摺動突条22Tを押圧する環状の突条であればよい。
【0067】
・押圧突条CTにおける先端摺動突条22T側の形状は、押圧突条CTが先端摺動突条22Tに押し付けられる形状であればよい。なお、押圧突条CTと先端摺動突条22Tとが点接触する構成であれば、これらが接触する面における面圧が高められ、シール性を高めることが可能にもなる。
【0068】
・押圧突条CTの内径は、アキュムレーターにおける先端の外径と同じであってもよく、あるいは同先端の外径よりも大きくてもよい。
・押圧突条CTの延設される方向は、ピストンロッドRの軸方向とは異なる方向であってもよく、例えば、押圧突条CTは、大径部分C2の基端に向けて内径が小さくなる筒状、あるいは大径部分C2の基端に向けて内径が大きくなる筒状であってもよい。すなわち、押圧突条CTは、大径部分C2の端面CSから基端に向けて延びるような形状であればよい。
【0069】
・先端フランジ部12に形成される先端掛止溝12Gは、2本以上であってもよい。なお、この際、これら先端掛止溝12Gの各々に掛止される突条が、先端掴持部22の内周面に形成される構成が好ましい。このような構成であれば、先端掴持部22が捲れることをさらに抑えることが可能にもなる。
【0070】
・先端フランジ部12に形成されるスリット12Sは、2本以上であればよく、また、これらのスリット12Sが等配されない構造であってもよく、片持ち梁状の先端フランジ片12Bが形成される構成であればよい。
【符号の説明】
【0071】
C…シリンダー、C1…小径部分、C2…大径部分、CH…連通孔、CP…キャップ、CS…端面、CT…押圧突条、DB…外径、DC…シリンダー内径、DH…突条外径、DL…開口内径、F…摩擦力、P…ピストン、PH…絞り、R…ピストンロッド、S1…第一空間、S2…第二空間、S3…第三空間、S4…第四空間、SR…シールリング、10,50…ライナー、10H…ロッド貫挿孔、11,51…スリーブ部、12,52…先端フランジ部、12B…先端フランジ片、12G…先端掛止溝、12H,52H…流路、12S…スリット、13…基端フランジ部、13H…嵌合孔、20,60…ブラダ、21…伸縮部、22…先端掴持部、22E…先端開口端部、22T…先端摺動突条、23…基端掴持部、23T…基端摺動突条、53…基端フランジ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンロッドが貫挿されるキャップが基端に嵌め込まれたシリンダーと、該シリンダー内に収容されて前記ピストンロッドと同心の環状をなすアキュムレーターとを備え、
前記アキュムレーターは、
前記ピストンロッドに外嵌された糸巻き状の筒体であるライナーと、
前記ライナーと前記シリンダーとの間に挟入され、前記ライナーの外周面と前記シリンダーの内周面との間の環状空間に容積の可変な流体室を区画する筒状のブラダとを備え、
前記流体室に流体を流入及び流出させて前記シリンダー内で流体を流通させるとともに、該流体の流体抵抗によって前記ピストンロッドを制動するダンパーであって、
前記ブラダは、該ブラダの径方向の外側に突出して該ブラダにて外径が最大となる環状の摺動突条を先端側に有し、
前記シリンダーは、前記アキュムレーターの収容される収容部分にて前記摺動突条の外径以上の内径を有し、且つ該収容部分における先端側の端面には、前記収容部分の基端側に向けて突出して前記摺動突条を基端側へ押圧する環状の押圧突条を有する
ことを特徴とするダンパー。
【請求項2】
ピストンロッドが貫挿されるキャップが基端に嵌め込まれたシリンダーと、該シリンダー内に収容されて前記ピストンロッドと同心の環状をなすアキュムレーターとを備え、
前記アキュムレーターは、
前記ピストンロッドに外嵌された糸巻き状の筒体であるライナーと、
前記ライナーと前記シリンダーとの間に挟入され、前記ライナーの外周面と前記シリンダーの内周面との間の環状空間に容積の可変な流体室を区画する筒状のブラダとを備え、
前記流体室に流体を流入及び流出させて前記シリンダー内で流体を流通させるとともに、該流体の流体抵抗によって前記ピストンロッドを制動するダンパーであって、
前記ブラダは、該ブラダの径方向の外側に突出して該ブラダにて外径が最大となる環状の摺動突条を先端側に有し、
前記シリンダーは、前記アキュムレーターの収容される収容部分の先端側の端面に該収容部分の基端側に向けて突出して前記摺動突条を基端側へ押圧する環状の押圧突条を有し、
前記押圧突条は、前記摺動突条が前記シリンダーの内周面を押圧する力よりも大きな力で前記摺動突条を押圧する
ことを特徴とするダンパー。
【請求項3】
前記シリンダーには、前記収容部分よりも小さい内径を有する小径部分が、前記収容部分の先端側に該収容部分と同心に連結され、
前記押圧突条は、前記ピストンロッドの軸方向に突出する環状の突条であって、前記小径部分が連結された前記収容部分側の端面に突設されている
請求項1又は2に記載のダンパー。
【請求項4】
前記摺動突条の先端側には、前記ブラダの先端側の開口縁が、径方向の内側に折り曲げられてなる開口端部が形成され、
前記開口端部が、前記ライナーの先端側の端面に掛け止めされて、前記ライナーの先端側の端面と前記収容部分の先端側の端面との間に挟入されている
請求項3に記載のダンパー。
【請求項5】
前記ライナーは、前記ピストンロッドに外嵌されたスリーブ部を有し、
前記スリーブ部は、前記ブラダの先端部を前記シリンダーに押圧する先端フランジ部を先端に有するとともに、前記ブラダの基端部を前記シリンダーに押圧する基端フランジ部を基端に有し、
前記流体室は、前記スリーブ部と、前記先端フランジ部と、前記基端フランジ部と、前記ブラダとによって区画され、
前記先端フランジ部は、該先端フランジ部の周方向の全体にわたり掛止溝を有し、
前記ブラダの先端側の開口端部は、前記掛止溝に掛け止めされている
請求項1〜4のいずれか一項に記載のダンパー。
【請求項6】
前記先端フランジ部は、
前記ブラダの先端部を前記シリンダーに押圧する複数の先端フランジ片を先端に有し、
前記複数の先端フランジ片は、
該先端フランジ片の基端部にて支持される片持ち梁状に前記ライナーの周方向に配列されている
請求項5に記載のダンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−172755(P2012−172755A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35023(P2011−35023)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】