説明

ダンパ

【課題】 所定の減衰作用を可能にしながら組立の際の作業性を良くする。
【解決手段】 内筒1内にピストン体3で画成されるピストン側室R2が内筒1の外側に配設される外筒4との間に画成されるリザーバRに内筒1内に配設のベースバルブ部5を介して連通可能とされ、先端側を内筒1内に挿通するロッド体2を軸芯部に貫通させるヘッド部材6で外筒4と内筒1のヘッド側端を閉塞すると共に、ベースバルブ部5を安定させるボトム部材8で外筒4と内筒1のボトム側端を閉塞し、内筒1がヘッド側端部をヘッド部材6に螺着させると共にボトム側端部をボトム部材8に螺着させ、外筒4がヘッド側端部をヘッド部材6にシール部材6fの配設下に隣接させると共にボトム側端部をボトム部材8にシール部材41aの配設下に隣接させ、外筒4におけるボトム側端部4bが固定手段42の配設下にボトム部材8に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダンパに関し、特に、たとえば、構築物についての免震装置や制振装置に利用されるダンパの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、構築物についての免震装置や制振装置に利用されるダンパとしては、これまでに種々の提案があるが、その中で、特許文献1および特許文献2に開示されているところでは、ダンパが内筒の外周に配設される外筒を溶接でボトム部材およびヘッド部材に連結する。
【0003】
すなわち、特許文献1には、ダンパにおける外筒のヘッド側端がヘッド部材に直列する連結部材に溶接されることが開示され、特許文献2には、ダンパにおける外筒のボトム側端がボトム部材に溶接されることが開示されている。
【0004】
つまり、このことを集約した図2に示すように、言わばこれまでのダンパは、作動流体たる作動油を充満させる内筒1内にロッド体2の図中で右側となる先端側を出没可能に挿通させると共に、このロッド体2の図中で右端部となる先端部に保持されるピストン体3でこの内筒1内にロッド側室R1とピストン側室R2とを画成する。
【0005】
そして、このダンパにあっては、内筒1の外側に外筒4を有して、この外筒4と内筒1との間をリザーバRに設定し、このリザーバRが内筒1の図中で右端部となるボトム側の内側に保持されるベースバルブ部5を介して内筒1内のピストン側室R2に連通可能とされる。
【0006】
なお、図示するダンパは、ユニフロー型に設定されるので、内筒1内のロッド側室R1がピストン体3を介してピストン側室R2に連通せずして、リザーバRに連通する。
【0007】
ところで、このダンパにあっては、外筒4の図中で左端となるヘッド側端がダンパにおける図中で左端部となるヘッド端部を構成するヘッド部材6に直列する連結部材7に図中に符号Mで示すように溶接される。
【0008】
そして、このダンパにあっては、外筒4の図中で右端となるボトム側端がダンパにおける図中で右端部となるボトム端部を構成するボトム部材8に同じく図中に符号Mで示すように溶接される。
【0009】
ちなみに、上記のヘッド部材6は、外筒4の軸芯部に位置決められる内筒1における図中で左端となるヘッド側端を閉塞しながらブッシュ6aおよびチェックシール6bの配設下にロッド体2を軸芯部に貫通させる。
【0010】
そして、連結部材7は、外筒4のヘッド側端を閉塞するもので、直列するヘッド部材6が連結ピン9の螺合で一体的に連結される。
【0011】
なお、ボトム部材8は、内筒1の図中で右端となるボトム側端を閉塞すると共に、外筒4のボトム側端を閉塞する。
【0012】
それゆえ、この図2に示すダンパにあっては、外筒4のヘッド側端がヘッド部材6に連結される連結部材7に溶接されると共にボトム側端がボトム部材8に溶接されるから、ダンパ内に収容される作動油が外筒4におけるいわゆる連結部から外部に漏出することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−315276号公報(明細書中の段落0008,図3参照)
【特許文献2】特開2005−207488号公報(図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記した特許文献1および特許文献2に開示されているところを集約する図2に示すダンパにあっては、ダンパ内に収容される作動油のいわゆる連結部から外部への漏出を阻止できる点で、基本的に問題がある訳ではないが、その実施にあって、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0015】
すなわち、上記した図2に示すダンパについての組立手順であるが、先ず、外筒4のボトム側端をボトム部材8で閉塞して、この状態下に外筒4のボトム側端をボトム部材8に溶接する。
【0016】
次いで、この内筒1のヘッド側端を連結部材7で閉塞して、この状態下に外筒4のヘッド側端を連結部材7溶接する。
【0017】
その後、この内筒1を外筒4の軸芯部に位置決めるように挿通し、先端部にピストン体3を有するロッド体2を軸芯部に貫通させるヘッド部材6で内筒1のヘッド側端を閉塞すると共に、このヘッド部材6を上記の連結部材7に直列させ、連結ピン9の螺合で、このヘッド部材6を連結部材7に一体化させる手順による。
【0018】
このとき、外筒4をボトム部材8や連結部材7に溶接するのにあって、外筒4において溶接熱による歪の発生を阻止するのが容易でない上に、仮に機械溶接するとしても、溶接幅を絶対的に均一にすることは事実上困難であることは、経験則が示すところである。
【0019】
それゆえ、上記した言わば従来のダンパにあっては、溶接幅の違いや外筒4に招来される溶接熱に起因する歪によって溶接後における外筒4の軸線方向の長さが内筒1の軸線方向の長さに対して設定通りにならないことを避けることが必須になり、そのために、ダンパの製作にあって、組立作業に慎重を要し、作業性を低下させ易くなったり、溶接後に機械加工が必要となったりで、コスト高を招来することになる。
【0020】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、所定の減衰作用をするのはもちろんのこと、組立の際の作業性を良くして、その汎用性の向上を期待するのに最適となるダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記した目的を達成するために、この発明によるダンパの構成を、基本的には、作動流体を充満させる内筒と、この内筒内に先端側が出没可能に挿通されるロッド体と、このロッド体の先端部に保持されて上記の内筒内に摺動可能に収装されながらこの内筒内にロッド側室とピストン側室とを画成するピストン体と、上記の内筒の外側に配設されてこの内筒との間にリザーバを画成する外筒と、上記の内筒のボトム側の内側に配設されるベースバルブ部と、軸芯部に上記のロッド体を貫通させながら上記の外筒におけるヘッド側端および上記の内筒におけるヘッド側端を閉塞するヘッド部材と、上記のベースバルブ部を定着させながら上記の外筒におけるボトム側端および上記の内筒におけるボトム側端を閉塞するボトム部材とを有し、内筒に対してロッド体が出没する伸縮作動時に減衰部において所定の減衰作用をするダンパにおいて、上記の内筒がヘッド側端部を上記のヘッド部材に液密構造下に螺着させると共にボトム側端部を上記のボトム部材に液密構造下に螺着させ、上記の外筒がヘッド側端部を上記のヘッド部材にシールの配設下に隣接させると共にボトム側端部を上記のボトム部材にシールの配設下に隣接させ、上記の外筒におけるボトム側端部が固定手段の配設下に上記のボトム部材に連結されてなるとする。
【発明の効果】
【0022】
それゆえ、この発明によれば、作動流体を充満させる内筒がヘッド側端部をヘッド部材に液密構造下に螺着させると共にボトム側端部をボトム部材に液密構造下に螺着させるから、内筒内のロッド側室およびピストン側室からの作動流体の内筒外への漏出を阻止でき、したがって、ロッド側室およびピストン側室を必要な圧力状態に維持でき、減衰部による減衰作用を設定通りに具現化できる。
【0023】
そして、この発明によれば、内筒内の作動流体が内筒外に漏出しないので、内筒と外筒との間に画成されるリザーバに減衰部の作動を保障する流体圧を負担させずしていわゆるタンク機能を発生させれば足り、また、外筒をヘッド部材およびボトム部材に連結させる構成を簡素化できるから、組立の際の作業性を向上できる。
【0024】
そしてまた、この発明によれば、ヘッド側端部がヘッド部材に隣接される外筒のボトム側端部がボトム部材に隣接される一方で、このボトム側端部が固定手段の配設下にボトム部材に連結されるから、前記した特許文献1に開示の技術のように溶接で連結される場合に比較して、外筒に溶接に起因する歪を発生させないで済み、また、内筒の設定長さに対する外筒における仕上がり長さのバラツキを危惧しなくて済む。
【0025】
その結果、内筒の設定長さに対する外筒における仕上がり長さのバラツキの発生を阻止できるから、ヘッド部材の後加工など要せずして、内筒におけるガタツキの発生を防止したり、作動流体が漏出したり流体圧が抜けたりすることを防止でき、組立の際の作業性を向上させると共に、製品コストの低廉化を可能にして、汎用性の向上を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明によるダンパを一部切り欠いて示す断面図である。
【図2】従来例とされるダンパを図1と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるダンパは、好ましくは、たとえば、構築物についての免震装置あるいは制振装置に利用される。
【0028】
ちなみに、この発明の構成からすれば、このダンパが、たとえば、車両に搭載されて車輪に入力される路面振動を吸収する懸架装置に利用されたり、あるいは、展示物を載置させる展示台に利用されたりしても良いことはもちろんである。
【0029】
ただ、この発明によるダンパが構築物についての免震装置や制振装置に利用される場合と、懸架装置や展示台に利用される場合とを比較すると、構築物についての免震装置などに利用される場合に方が全体的に規模を大きくし、部品も相似して大きく形成されるので、この発明の具現化の上からは、構築物についての免震装置などに利用されるのが有利となろう。
【0030】
一方、構築物についての免震装置などに利用されるダンパは、車両における懸架装置に利用されるダンパと異なり、伸縮作動時の減衰作用が同じになるのが良く、それに対して、車両における懸架装置に利用されるダンパにあっては、伸側あるいは圧側の減衰作用が同じとされることが少なく、むしろ、積極的に伸側の減衰作用と圧側の減衰作用とが異なるのが良いとされる傾向にある。
【0031】
このことからして、この発明によるダンパは、構築物についての免震装置などに利用されると共に、後述するように、ユニフロー型に設定されて、伸縮作動時の減衰作用を同じにするのを容易にしている。
【0032】
すなわち、この発明によるダンパは、図1に示すように、基本的には、前記した図2に示すダンパと同様に形成されるもので、内筒1と、ロッド体と、ピストン体3と、外筒4と、ベースバルブ部5と、ヘッド部材6と、ボトム部材8とを有してなる。
【0033】
内筒1は、内部に作動流体たる作動油を充満させるもので、図示するところでは、図中で左側端部となるヘッド側端部1aと図中で右側端部となるボトム側端部1bを有して両端を開口させる円筒からなる。
【0034】
そして、この内筒1にあっては、ヘッド側端部1aの外周に外周螺条1cを有して後述のヘッド部材6への螺着を可能にし、ボトム側端部1bの内周に内周螺条1dを有して後述のボトム部材8への螺着を可能にしている。
【0035】
ちなみに、この内筒1の後述するヘッド部材6への螺着にあっては、図示するところでは、上記の外周螺条1cに螺装されるロックナット11の締付で、ヘッド部材6への螺着状態を固定させる。
【0036】
ロッド体2は、図中で右側となる先端側を上記の内筒1内に出没可能に挿通させるもので、このダンパにあって、上記のボトム部材8が、たとえば、一方側たる固定側に連結されるとき、このロッド体2が他方側たる可動側に連結され、固定側に対する可動側の移動が発現されるときに、ロッド体2がボトム部材8に螺着された内筒1に対して出没し、このダンパが伸縮作動する。
【0037】
ちなみに、図示する実施形態では、ダンパがユニフロー型に設定されて、しかも、伸縮作動時における作動油の流量を同じにするとの設定から、ロッド体2の断面積と上記した内筒1における内周側の断面積とが1:2に設定されている。
【0038】
ピストン体3は、上記のロッド体2における図中で右端部となる先端部に保持され、上記した内筒1内にロッド側室R1とピストン側室R2とを画成すると共に、このダンパがユニフロー型に設定されるから、上記のピストン側室R2からの作動油のロッド側室R1への流入を許容する言わば圧側の通路(図示せず)を有するが、逆となるロッド側室R1からの作動油のピストン側室R2への流出を許容する言わば伸側の通路を有しない。
【0039】
そして、このピストン体3にあっては、上記の言わば圧側の通路の下流側端をロッド側室R1から開放可能に塞ぐように伸側チェック弁(図示せず)を有し、この伸側チェック弁は、ピストン側室R2からの作動油のロッド側室R1への流入を許容するが、逆となるロッド側室R1からの作動油のピストン側室R2への流出を阻止する。
【0040】
外筒4は、上記した内筒1の外側に配設されて内筒1との間にリザーバRを画成するもので、内筒1と同様に図中で左側端部となるヘッド側端部4aと、同じく図中で右側端部となるボトム側端部4bとを有する円筒からなる。
【0041】
そして、この外筒4にあっては、ヘッド側端部4aの内周側を切削するようにしてこのヘッド側端部4aを薄肉構造にして、後述するシール6fの密封性を向上させ易くしている。
【0042】
一方、この外筒4にあって、図示するところでは、ボトム側端部4bを上記のヘッド側端部4aと同様に薄肉構造にして、後述するシール41aの密封性を向上させ易くする。
【0043】
すなわち、このダンパの組立手順からすると、外筒4を所定位置に位置決めるときには、ヘッド部材6とボトム部材8が内筒1に一体化されている。
【0044】
このことからすると、外筒4のヘッド側端部4aをヘッド部材6の外周に位置決めるときには、ボトム部材8の外径がこの外筒4におけるヘッド側端部4aとボトム側端部4bとの間となるいわゆる本体部(符示せず)の内径よりも小さく設定されていることが肝要となる。
【0045】
そして、ボトム部材8の外径が外筒4の本体部における内径より小さく設定されることから、両者間に筒状の隙間(符示せず)を出現させる。
【0046】
そこで、図示するところでは、上記の筒状に出現する隙間を充填すべく、この隙間の形状に相応する筒状に形成のスペーサ41が両者間に挿入され、このスペーサ41の配設で、外筒4のボトム側端部4bにおけるボトム部材8の外周への連結を可能にする。
【0047】
このとき、スペーサ41の外周にはシール41aが巻装されて、このスペーサ41と外筒4のボトム側端部4bとの間における液密性が保障されている。
【0048】
ちなみに、この外筒4にあっては、ヘッド側端部4aがヘッド部材6の外周に隣接され、また、ボトム側端部4bがボトム部材8の外周を構成するスペーサ41の外周に隣接されるのみであるから、この外筒4の配設位置たる所定位置からの位置ズレを阻止するために、外筒4がスペーサ41をも貫通する固定手段たるボルト42によってボトム部材8に固定的に連結される。
【0049】
ところで、上記のスペーサ41は、ボトム部材8の外周と外筒4のボトム側端部4bにおける内周との間に出現する隙間を爾後に充填することからすると、このスペーサ41の配設に代えて、図示しないが、外筒4のボトム側端部4bにおける内周が内側に膨出されて内径をボトム部材8の外径に一致させるように設定されても良く、この場合には、スペーサ41たる部品を不要にする点で有利となる。
【0050】
ベースバルブ部5は、図示するところでは、このダンパがユニフロー型に設定されることから、前記したピストン体3と同様に、減衰要素としてのバルブを有しない設定となる。
【0051】
そして、このベースバルブ部5にあっては、このベースバルブ部5を所定位置たる内筒1のボトム側の内側に定着させるのについて、外周に嵌装したスナップリング51を内筒1におけるヘッド側端部1bの内周に形成の段部(符示せず)に係止させることで、このベースバルブ部5を内筒1内に入り込むようになるヅレ込みを阻止している。
【0052】
そしてまた、このベースバルブ部5にあっては、リザーバRからの作動油の内筒1内におけるピストン側室R2への流入を許容する言わば伸側の通路(図示せず)を有するが、逆となるピストン側室R2からの作動油のリザーバRへの流出を許容する言わば圧側の通路を有しない。
【0053】
そして、このベースバルブ部5にあっては、上記の言わば伸側の通路の下流側端をピストン側室R2から開放可能に塞ぐように圧側チェック弁(図示せず)を有し、この圧側チェック弁は、リザーバRからの作動油のピストン側室R2への流入を許容するが、逆となるピストン側室R2からの作動油のリザーバRへの流出を阻止する。
【0054】
ちなみに、このベースバルブ部5にあって、図示するところでは、ベースバルブ部5の背後、つまり、リザーバRに連通する部位がボトム部材8に形成の凹陥部からなる容室R3とされており、この容室R3は、同じくボトム部材8に形成の連通孔8bを介してリザーバRに連通する。
【0055】
ヘッド部材6は、ダンパにおけるいわゆるシリンダヘッドを構成するもので、軸芯部にブッシュ6aおよびチェックシール6bの配設下にロッド体2を貫通させる。
【0056】
このとき、前記した図2に示すダンパにあっては、この発明におけるヘッド部材6に相当する部位がヘッド部材(6)と連結部材(7)の二部品からなる分割構造に形成されるが、これは、外筒(4)をヘッド部材(6)側たる連結部材(7)とボトム部材(8)とに溶接(M)することに起因している。
【0057】
それに対して、この発明では、ボトム部材8に対してもそうであるが、外筒4をヘッド部材6に溶接しないから、このヘッド部材6を上記したような分割構造にする必要はなく、部品数の削減を可能にする点で有利となる。
【0058】
そして、このヘッド部材6は、図示するところでは、内筒1におけるヘッド側端を閉塞すると共に外筒4におけるヘッド側端を閉塞し、このとき、図中で右側部となる筒状に形成の挿込部6cを内筒1のヘッド側端部1aと外筒4のヘッド側端部4aとの間に挿し込み、内筒1と外筒4との間における同芯性を保障する。
【0059】
そしてまた、このヘッド部材6にあっては、上記の挿込部6cの内周に内周螺条6dを有し、この内周螺条6dに内筒1のヘッド側端部1aの外周に形成の外周螺条1cを螺合させて、内筒1のヘッド部材6への連結を実現する。
【0060】
さらに、このヘッド部材6にあっては、上記の挿込部6cの内周にシール6eを有し、内筒1との間における液密性を保障すると共に、外周にシール6fを有して外筒4との間における液密性を保障する。
【0061】
そしてさらに、このヘッド部材6にあっては、図中で左端となるヘッド端に内周がロッド体2の外周に摺接するシール6gを有し、このシール6gによってロッド体の外周に附着する外部からのダストの侵入を阻止すると共に内部からの油膜を構成する作動油の漏出を阻止する。
【0062】
ちなみに、図示するところでは、ヘッド部材6が吊り具Fを有し、この吊り具Fの利用によるこのダンパの吊り上げを可能にしている。
【0063】
ところで、図示するダンパは、前記したように、構築物についての免震装置や制振装置に利用されることから、伸縮作動時における減衰作用を同じにする設定とされる。
【0064】
そこで、これを実現するためにダンパをユニフロー型に設定し、また、一箇所の減衰部で所定の減衰作用を具現化されるとし、そのため、この減衰部がヘッド部材6に配設され、しかも、この減衰部に対する制御を可能にして最適な減衰作用を具現化できるようにする。
【0065】
つまり、図示するダンパにあっては、ヘッド部材6がいわゆる外付けの制御バルブVを有し、この制御バルブVに対する所定の操作で発生減衰力を高低でき、この制御バルブVは、詳しくは図示しないが、内筒1内のロッド側室R1とリザーバRとを連通するドレン通路中に配設される制御部を有する。
【0066】
そして、この制御部には、ヘッド部材6の外表面から突出する操作部V1が連繋され、この操作部V1は、手動操作によるアジャスタ(符示せず)の回転を可能にし、したがって、この制御バルブVにあっては、アジャスタの回転で制御部を通過する作動流体における流路抵抗を変更させ、減衰部による最適な減衰作用の具現化を可能にする。
【0067】
ボトム部材8は、ダンパにおけるいわゆるボトムを構成するもので、図示するところでは、内筒1におけるボトム側端を閉塞すると共に外筒4におけるボトム側端を閉塞し、このとき、図中で左側部となる突出部8cを内筒1のボトム側端部1bに挿し込む。
【0068】
そして、このボトム部材8にあっては、突出部8cの外周に前記したボトム部材8に形成の外周螺条8aを形成し、この外周螺条8aに前記した内筒1におけるボトム側端部1bの内周に形成の内周螺条1dを螺合させる。
【0069】
また、このボトム部材8にあっては、突出部8cの軸芯部をベースバルブ5側から凹ますようにして、前記した容室R3を形成し、この容室R3に連通する前記の連通孔8bを開穿する。
【0070】
ところで、前記したが、図示するとことでは、ボトム部材8の外径がヘッド部材6の外径と一致するように配慮されておらず、したがって、スペーサ41の内周がこのボトム部材8の外周に隣接する。
【0071】
そこで、図示するところでは、ボトム部材8は、外周にシール8dを有し、このシール8dによって、ボトム部材8とスペーサ41との間における液密性を保障する。
【0072】
以上のように、この発明によるダンパは、基本的には、上記した内筒1、ロッド体2、ピストン体3、外筒4、ベースバルブ部5、ヘッド部材6およびボトム部材8を有してなることで所期の目的を達成できるが、図示するところにあっては、このダンパがユニフロー型に形成されることからして、以下のような配慮をしている。
【0073】
すなわち、先ず、このダンパが構築物についての免震装置や制振装置に利用されるとき、内筒1側、すなわち、いわゆるシリンダチューブ側が地盤側などの固定側に連結されるにしろ、構築物側たる可動側に連結されるにしろ、これがロッド体2を中心にして回転することはなく、このことからして水平配置されるダンパにあってシリンダチューブ側にいわゆる天地を設定できる。
【0074】
そして、シリンダチューブ側に天地を設定できるから、たとえば、ベースバルブ部5を隣設させるボトム部材8にあっては、ベースバルブ部5の背後側となる容室R3をリザーバRに連通させる連通孔8bをこの突出部8cにおけるいわゆる下面側に開口させることで足りる。
【0075】
その結果、この突出部8cにあっては、反対側となるいわゆる上面側に連通孔8bを開口させる必要がなくなり、したがって、この突出部8cを有するボトム部材8における機械的強度を保障し易くなる。
【0076】
つぎに、このダンパは、伸縮作動時に内筒1内のロッド側室R1からの作動油がヘッド部材6に開穿のドレン通路(図示せず)および制御バルブVを介してリザーバRに流出するとするが、このとき、ダンパが全くの水平でなく、たとえば、ロッド体2側をシリンダチューブ側より上方に位置決めるようにして、斜めに配設される場合には、ヘッド部材6の下面側がリザーバRにある作動油中から露出することがある。
【0077】
そして、このヘッド部材6の下面側がリザーバRにある作動油中から露出する状況下に、ヘッド部材6に形成のドレン通路、すなわち、内筒1内のロッド側室R1に連通するドレン通路中にある制御バルブVから流出する作動油に勢いがあると、リザーバRに噴出される状況になり、作動油中にエアを混入させ易くなる不具合を招く。
【0078】
そこで、この発明にあっては、ヘッド部材6における前記した挿込部6cにパイプPを連設すると共に、上記のドレン通路をこのパイプP内に連通させ、このドレン連通路を下面側に開口させつつ、かつ、このパイプPの図中で右端となる言わば下端の開口をリザーバR内において可能な限りにこのダンパのいわゆるボトム側に位置決める。
【0079】
これによって、このダンパが上記したように斜めに配設される場合にも、内筒1内からの作動油がリザーバRにおいて、図示しない油面を境にして画成される図示しない気室に噴出されなくなり、作動油中にエアが混入する機会を大幅に減らせる。
【0080】
ちなみに、ドレン連通路の位置調整は、螺着部の回転により可能となり、所定の位置でロックナット11の利用で固定すれば良い。
【0081】
そして、図示しないが、上記のパイプPは、これが複数本とされるのが好ましく、そのためヘッド部材6に環状に形成される連通路6hを有し、この連通路6hに複数本となる各パイプPのいわゆる基端が連結される。
【0082】
以上のように形成されたこのダンパにあっては、伸長作動時に内筒1内にあってピストン体3が図中で左行するからロッド側室R1が収縮し、作動油がドレン通路および制御バルブVを介してリザーバRに流出する。
【0083】
そして、このとき、膨張するピストン側室R2には、リザーバRからの作動油がベースバルブ部5を通過して流入し、作動油の吸込み不足によるいわゆる負圧発生を阻止する。
【0084】
一方、このダンパにあっては、収縮作動時に内筒1内にあってピストン体3が図中で右行するからロッド側室R1が膨張すると共に、ピストン側室R2が収縮する。
【0085】
したがって、ピストン側室R2からの作動油がピストン体3を通過してロッド側室R1に流入するが、このとき、ピストン側室R2においては、いわゆるロッド侵入体積分に相当する量の作動油が余剰になり、したがって、この余剰となる量の作動油もロッド側室R1に流入すると共に、ドレン通路および制御バルブVを介してリザーバRに流出する。
【0086】
その結果、このダンパにあっては、伸縮作動時に制御バルブVを同量の作動油が通過することになり、いわゆる両方向で同じ減衰作用が具現化され、このとき、制御バルブVがいわゆる外付けとされるから、発生減衰力の高低を外部からの操作で調整できる。
【0087】
そして、このダンパにあっては、作動油を充満させる内筒1がヘッド側端部1aをヘッド部材6に液密構造下に螺着させると共にボトム側端部1bをボトム部材8に液密構造下に螺着させるから、内筒1内のロッド側室R1およびピストン側室R2からの作動油の内筒1外への漏出を阻止でき、したがって、ロッド側室R1およびピストン側室R2を必要な圧力状態に維持でき、減衰部による減衰作用を設定通りに具現化できる。
【0088】
そして、このダンパにあっては、内筒1内の作動油が内筒1外に漏出しないので、内筒1と外筒4との間に画成されるリザーバRに減衰部の作動を保障する流体圧を負担させずしていわゆるタンク機能を発生させれば足りるから、また、外筒4をヘッド部材6およびボトム部材8に連結させる構成を簡素化できるから、組立の際の作業性を向上できる。
【0089】
そしてまた、このダンパにあっては、ヘッド側端部4aがヘッド部材6に隣接される外筒4のボトム側端部4bがボトム部材8に隣接される一方で、このボトム側端部4bが固定手段たるボルト42の配設下にボトム部材8に連結されるから、前記した特許文献1に開示の技術のように溶接で連結される場合に比較して、外筒4に溶接に起因する歪を発生させないで済み、また、内筒1の設定長さに対する外筒4における仕上がり長さのバラツキを危惧しなくて済む。
【0090】
その結果、このダンパによれば、内筒1の設定長さに対する外筒4における仕上がり長さのバラツキの発生を阻止できるから、ヘッド部材6の後加工など要せずして、内筒1におけるガタツキの発生を防止したり、作動油が漏出したり流体圧が抜けたりすることを防止でき、組立の際の作業性を向上させると共に、製品コストの低廉化を可能にして、汎用性の向上を期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
たとえば、構築物についての免震装置や制振装置への利用に向き、地震などに起因する構築物における揺れを抑制するのに向く。
【符号の説明】
【0092】
1 内筒
1a,4a ヘッド側端部
1b,4b ボトム側端部
1c,8a 外周螺条
1d,6d 内周螺条
2 ロッド体
3 ピストン体
4 外筒
5 ベースバルブ部
6 ヘッド部材
6a ブッシュ
6b チェックシール
6c 挿込部
6e,6f,6g,8d シール
8 ボトム部材
8b 連通孔
8c 突出部
11 ロックナット
12 スナップリング
41 スペーサ
42 固定手段たるボルト
51 スナップリング
F 吊り具
P パイプ
R リザーバ
R1 ロッド側室
R2 ピストン側室
R3 容室
V 制御バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を充満させる内筒と、この内筒内に先端側が出没可能に挿通されるロッド体と、このロッド体の先端部に保持されて上記の内筒内に摺動可能に収装されながらこの内筒内にロッド側室とピストン側室とを画成するピストン体と、上記の内筒の外側に配設されてこの内筒との間にリザーバを画成する外筒と、上記の内筒のボトム側の内側に配設されるベースバルブ部と、軸芯部に上記のロッド体を貫通させながら上記の外筒におけるヘッド側端および上記の内筒におけるヘッド側端を閉塞するヘッド部材と、上記のベースバルブ部を定着させながら上記の外筒におけるボトム側端および上記の内筒におけるボトム側端を閉塞するボトム部材とを有し、内筒に対してロッド体が出没する伸縮作動時に減衰部において所定の減衰作用をするダンパにおいて、上記の内筒がヘッド側端部を上記のヘッド部材に液密構造下に螺着させると共にボトム側端部を上記のボトム部材に液密構造下に螺着させ、上記の外筒がヘッド側端部を上記のヘッド部材にシールの配設下に隣接させると共にボトム側端部を上記のボトム部材にシールの配設下に隣接させ、上記の外筒におけるボトム側端部が固定手段の配設下に上記のボトム部材に連結されてなることを特徴とするダンパ。
【請求項2】
内筒のヘッド側端部が外周に有する外周螺条をヘッド部材が有する内周螺条に螺合することでヘッド部材に連結されると共に、上記の外周螺条に螺装のロックナットがヘッド部材の端面に密着することで内筒のヘッド部材に対する連結状態が固定されてなる請求項1に記載のダンパ。
【請求項3】
ベースバルブ部が内筒内に対向する側部を内筒内に液密構造下に臨在させると共に、リザーバに連通する側部の外周に嵌装されたスナップリングが内筒のボトム側端部の内周に形成の段部に係止されて所定位置に定着されてなる請求項1または請求項2に記載のダンパ。
【請求項4】
ピストン体が内筒内のピストン側室からの作動流体のロッド側室への流入を許容するが逆となるロッド側室からの作動油のピストン側室への流出を阻止する伸側チェック弁を有すると共に、ベースバルブ部がリザーバからの作動流体のピストン側室への流入を許容するが逆となるピストン側室からの作動油のリザーバへの流出を阻止する圧側チェック弁を有してなる請求項1,請求項2または請求項3に記載のダンパ。
【請求項5】
減衰部が上記のヘッド部材に外付け態様に設けられて内筒内のロッド側室からの作動流体のリザーバへの流出を許容するがその逆となる流れを阻止しながら減衰作用をすると共に外部からの操作で発生減衰力の高低調整を可能にしてなる請求項1,請求項2,請求項3または請求項4に記載のダンパ。
【請求項6】
ボトム部材の外径が外筒のボトム側端部における内径より小径に形成されて外筒のボトム側端部との間に出現する隙間にスペーサが充填されてなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5に記載のダンパ。
【請求項7】
ボトム部材の外径が外筒のボトム側端部における内径より小径に形成されると共に、外筒のボトム側端部が上記の小径に形成されるボトム部材における外径に一致する内径を有する縮径部を有してなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5に記載のダンパ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−57770(P2012−57770A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204105(P2010−204105)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】