説明

チアゾリジンジオン化合物の結晶を含有する医薬組成物

【課題】 チアゾリジンジオン化合物の結晶を有効成分として含有し、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γ活性化剤、抗癌医薬組成物の製造原体として有用な、医薬組成物を提供する。
【解決手段】
下記一般式(I):
【化1】


で表される、5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物結晶を有効成分として含有する医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γ活性化能を有し、抗癌作用に優れ、さらに、医薬製剤を製造する上で有利な物性を有し、高純度で、かつ保存安定性および取り扱い容易性にも優れるチアゾリジンジオン化合物の結晶を有効成分として含有する医薬(特に、PPARγ活性化剤、又は、抗癌医薬組成物)に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第3488099号公報(国際公開第99/18081号パンフレット、米国特許第6432993号明細書、欧州特許第1022272号明細書)(特許文献1)、特開2003−238406号公報(国際公開第03/053440号パンフレット)(特許文献2)、特開2004−083574号公報(WO2004/000356号パンフレット)(特許文献3)、特開2005−162727号公報(WO2004/083167号パンフレット)(特許文献4)、国際公開第2007/091622号パンフレット(特許文献5)には、後述の式(I)で表されるチアゾリジンジオン化合物(以下、化合物(I)と記す。)が開示されている。化合物(I)は、優れたペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γ活性化能を示し、PPARγ活性化剤、又は、抗癌医薬組成物としての有用性が期待される。
【0003】
一般に、医薬品に用いられる物質については、その不純物による予期せぬ副作用が生じないように、高い純度が求められている。不純物としては医薬原体自身を製造する際に生成した副生成物(類縁物質)や、医薬原体を製造する際に使用する原料および溶媒等が含まれる。また、製剤化等のための加温処理工程等においても原体の結晶形等が変化しないこと、あるいは、吸収性を高めより少量の投与で効果を発揮するため高い溶解度を有することなど、医薬製剤を製造する上でより有利な物性化学的性質を示すことも求められる。加えて、医薬の原体は、その品質を保持しながら長期間保管できることが重要である。また保管条件が低温であることが必要な場合は、品質の保持のために大掛かりな冷蔵設備が必要となるため、室温又はそれ以上で保管できるような安定した結晶を見出すことは工業的に有意義である。
【0004】
さらに上述のような、より高純度で、医薬品製剤を製造する上で有利な物性を有し、かつその純度や物性を長期間安定に維持したまま保管可能な医薬原体を、工業的かつ大量に製造する方法が必要とされる。
そこで、化合物(I)を医薬の原体として実用化するには、医薬製剤を製造する上で、上述のような有利な物性を有し、また、より純度が高くかつ保存安定性、取り扱いの容易さが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3488099号公報(国際公開第99/18081号パンフレット、米国特許第6432993号明細書、欧州特許第1022272号明細書)
【特許文献2】特開2003−238406号公報(国際公開第03/053440号パンフレット)
【特許文献3】特開2004−083574号公報(WO2004/000356号パンフレット)
【特許文献4】特開2005−162727号公報(WO2004/083167号パンフレット)
【特許文献5】国際公開第2007/091622号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、優れたペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γ活性化能を示し、PPARγ活性化剤、又は、抗癌医薬組成物としての有用性が期待される化合物(I)について鋭意検討を行った結果、医薬原体として優れた物理的化学的性質を有し、室温での保存安定性に優れ且つ高純度な、化合物(I)及びその2塩酸塩の新規な水和物結晶を見出し、当該結晶が医薬組成物の有効成分として有用であることを見出し本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) 銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔が、10.93、7.16、5.84、4.41、3.65及び3.49オングストロームにピークを示す、下記式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
で表される5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物結晶を有効成分として含有する医薬組成物、
【0010】
(2) 銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔が、10.88、7.12、5.82、3.68、3.49、3.01及び2.97オングストロームにピークを示す、上記(1)に記載の一般式(I)で表される5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物結晶を有効成分として含有する医薬組成物、
【0011】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の一般式(I)で表されるチアゾリジンジオン化合物の結晶を有効成分として含有するPPARγ活性化剤、
【0012】
(4) 上記(1)又は(2)に記載の一般式(I)で表されるチアゾリジンジオン化合物の結晶を有効成分として含有する抗癌医薬組成物、
【0013】
(5) 上記(1)又は(2)に記載の一般式(I)で表されるチアゾリジンジオン化合物の結晶を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療用医薬組成物、及び
【0014】
(6) 上記(1)又は(2)に記載の一般式(I)で表されるチアゾリジンジオン化合物の結晶を有効成分として含有する、2型糖尿病を併発した癌の予防又は治療用医薬組成物
からなる。
【0015】
本発明の上記(I)で表される5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(以下、化合物(I)とも記す)の水和物結晶、および5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩の水和物結晶(以下、本発明の結晶とも記す)は、その内部構造が三次元的に構成原子(又はその集団)の規則正しい繰り返しでできている固体をいい、そのような規則正しい内部構造を持たない無定形固体とは区別される。
同じ化合物の結晶であっても、結晶化の条件によって、複数の異なる内部構造及び物理化学的性質を有する結晶(結晶多形)が生成することがあるが、本発明の結晶は、これら結晶多形のいずれであってもよく、2以上の結晶多形の混合物であってもよい。
本発明の結晶は、大気中に放置しておくことにより、水分を吸収し、付着水が付く場合や、有機溶媒と混和することによって溶媒を吸収し溶媒和物を形成する場合がある。また、通常の大気条件下において25乃至150℃に加熱すること等により、0.5水和物、さらに無水物を形成する場合がある。
【0016】
本発明の結晶は、これらの付着水が付いた結晶、水和物又は溶媒和物からなる結晶、0.5水和物を含む結晶、無水物を含む結晶を包含する。本発明の結晶のうち、好適には、化合物(I)の1水和物の結晶、または化合物(I)の2塩酸塩・1水和物の結晶である。
【0017】
本発明の化合物(I)の1水和物の結晶の形態の一つとして、例えば、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔が5.81、5.60、4.44、4.16及び3.70オングストロームにピークを示す結晶(以下、フリー体結晶とも記す)を挙げることができる。
【0018】
本発明の化合物(I)の2塩酸塩・1水和物の結晶の一形態として、例えば、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔が10.93、7.16、5.84、4.41、3.65及び3.49オングストロームにピークを示す結晶(以下、A結晶とも記す)、または10.88、7.12、5.82、3.68、3.49、3.01及び2.97オングストロームにピークを示す結晶(以下、B結晶とも記す)を挙げることができる。
【0019】
面間隔dは、式2dsinθ=nλにおいてn=1として算出することができる。
なお、上記のピークの相対強度は、結晶の成長面等の違い(晶癖)によって変化することがあるが、その様な結晶でも結晶形としては同じものであり、本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の結晶は、高純度であり、色調も白色であり、また、保存安定性、取り扱い容易性等に優れ、医薬組成物の有効成分として有用である。
【0021】
特に本発明の化合物(I)の1水和物結晶(フリー体結晶)は、従来知られている化合物(I)の塩よりも希塩酸に対する溶解性が高い。また本発明の化合物(I)の2塩酸塩・1水和物のB結晶は、残留溶媒量が少なく、純度が高く、色調も白色で、かつ、水和物の脱水温度が高いことから、室温での水和物としての保存安定性に優れる。また、本発明の化合物(I)の2塩酸塩1水和物のA結晶は、B結晶よりも溶解性が高い。
【0022】
これらのことから、本発明の化合物(I)の水和物結晶およびの2塩酸塩・水和物の結晶は、工業生産において大量合成される医薬(特にPPARγ活性化剤、癌の予防及び/又は治療剤、糖尿病の予防及び/又は治療剤、あるいは、2型糖尿病を併発した癌の予防及び/又は治療剤)の製造原体として有用である。
また、本発明の結晶の製造方法は、希塩酸に対する溶解度のより高い結晶、あるいは残留溶媒量のより少ない、純度の高い結晶を製造することができ、工業生産において大量合成される医薬の製造原体の製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1で得られたA結晶の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
【図2】実施例2で得られたB結晶の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
【図3】実施例3で得られたフリー体結晶の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
【図4】比較例1で得られた化合物の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単を示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
【図5】実施例2の(2−1)で得られた結晶の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単を示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上述の化合物(I)は、特許第3488099号公報に開示された方法又はそれに準じた方法により製造できる。
【0025】
本発明の化合物(I)の水和物の結晶は、化合物(I)またはその塩、若しくはそれらの水和物の水または含水溶媒の溶液または懸濁液を、脱塩(中和)させ、溶液の濃縮、冷却、良溶媒と貧溶媒の混合等を行い、化合物(I)の水和物を過飽和状態に導いて析出させ、次いで析出した結晶を単離することによって製造することができる。
【0026】
本発明の化合物(I)の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩等の金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、エチレンジアミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩のような有機塩等のアミン塩;フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、のようなハロゲン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩のようなアリ−ルスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマ−ル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;及び、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩等の各種塩を用いることができる。
【0027】
本発明の化合物(I)の水和物の結晶を製造するための出発原料としては、化合物(I)、その塩、若しくはそれらの水和物の水または含水溶媒の溶液または懸濁液を用いることができる。溶液または懸濁液としては、結晶化により精製することも可能であるので、例えば、化合物(I)を含む合成反応粗生成物の溶液または懸濁液を使用することもできる。
【0028】
本発明の化合物(I)の水和物の結晶の製造に用いる溶媒は、水和物の構造を持つ結晶を製造するため、水を含むことが必要であり、したがって水と混合可能な溶媒である。
【0029】
水と混合可能な溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、またはプロパノール等の低級アルコール、テトラヒドロフラン、もしくはジメチルホルムアミド、及びこれらの混合溶媒などがあり、好適には低級アルコール、さらに好適にはメタノールである。
【0030】
本発明の化合物(I)の塩もしくはそれらの各種溶媒和物を脱塩する際、酸または塩基を使用することができる。用いる酸としては脱塩可能なものであれば特に制限はないが、例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、のようなハロゲン化水素;硝酸、過塩素酸、硫酸、リン酸等の無機酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸のような低級アルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸のようなアリ−ルスルホン酸、酢酸、リンゴ酸、フマ−ル酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸等の有機酸;及び、グルタミン酸、アスパラギン酸のようなアミノ酸等の各種酸を用いられ、好適にはハロゲン化水素または無機酸であり、さらに好適には塩化水素、臭化水素、または硫酸である。用いる塩基としては脱塩可能なものであれば特に制限はないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化セシウム等の水酸化アルカリ金属、水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウム等の酸化アルカリ土類金属、あるいはアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン又はトリブチルアミン等のアミン類、等が用いられ、好適には水酸化アルカリ金属またはアミン類であり、さらに好適には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア又はトリブチルアミンである。
【0031】
酸または塩基はそのまま添加しても、各種溶媒に溶解させて添加してもよい。
脱塩に必要な酸または塩基の添加量は使用する溶媒の量および脱塩時の温度に依存し、特に制限はなく、脱塩を実施する条件において、本発明の化合物(I)の水和物の結晶の溶解度が最も低くなる条件であればよいが、通常、化合物(I)の各種塩に対して0当量乃至100当量、好適には0当量乃至10当量、さらに好適には0当量乃至5当量用いる。
【0032】
脱塩に使用する溶媒の量は、使用する酸または塩基の量、脱塩時の温度によって異なり、特に制限はないが、好適には使用する化合物(I)の各種塩に対して重量比で1倍以上、好適には5倍以上、さらに好適には10倍以上である。
脱塩する場合の温度は使用する溶媒の量や塩基の使用量によって異なり、特に制限はないが、通常0℃以上、好適には10℃以上、さらに好適には30℃以上である。
【0033】
脱塩(中和)したのち、溶液中の化合物(I)の水和物を過飽和状態に導いて析出させる。過飽和にする方法としては、前述のように、溶液の濃縮がある。その方法としては、例えば、本発明の化合物(I)の溶液を、ロータリーエバポレータ等を用いて常圧若しくは減圧下で加温しながら溶媒を蒸発させて濃縮する方法、逆浸透膜を用いて濃縮する方法などがある。溶液の濃縮に使用する逆浸透膜としては、例えばポリアクリロニトリル系膜、ポリビニルアルコール系膜、ポリアミド系膜、酢酸セルロース系膜等から選択することができる。
【0034】
本発明の化合物(I)の水和物の結晶を結晶化させるための温度としては、通常、−70乃至150℃であり、好適には、−70乃至100℃である。
【0035】
結晶の析出は、反応容器中で自然に開始し得るが、種結晶の接種、超音波刺激、反応器の表面を擦る等の機械的刺激を与えることによっても開始又は促進させることができる。
【0036】
結晶を接種する場合、接種する結晶としては本発明の化合物(I)の結晶であれば特に制限はないが、好適には本発明のフリー体結晶である。
接種する結晶の量には特に制限はないが、好適には用いる化合物(I)、またはその塩、もしくはそれらの各種溶媒和物の重量に対して、0.01%乃至20%、好適には0.1乃至10%である。
析出した本発明の化合物(I)の水和物の結晶は、例えば、ろ過、遠心分離、または傾斜法等によって単離することができる。
【0037】
単離した本発明の化合物(I)の水和物の結晶は必要に応じて適当な溶媒で洗浄してもよい。本発明の結晶を洗浄するには、例えば、水、メタノール、エタノール、またはプロパノール等の低級アルキルアルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル等の低級アルキルニトリル類、テトラヒドロフラン、もしくはジメチルホルムアミド、及びこれらの混合溶媒を用いて行なうことができるが、好適には水である。
得られた結晶は、再結晶やスラリー精製によって、その純度及び品質を向上させることができる。
【0038】
本発明の化合物(I)の2塩酸塩・1水和物の結晶であるA結晶は、化合物(I)または化合物(I)の塩もしくはそれらの各種溶媒和物、化合物(I)の2塩酸塩もしくはその各種溶媒和物、あるいは化合物(I)の2塩酸塩の水和物それ自身を、含水テトラヒドロフランに溶解し、脱塩(中和)、塩化水素もしくは塩酸の添加、溶液の濃縮、冷却、良溶媒と貧溶媒の混合等を行い、化合物(I)2塩酸塩の水和物を過飽和状態に導いて析出させ、次いで析出した結晶を単離することによって製造することができる。
なお、A結晶を製造するための出発原料としては、化合物(I)として既に単離したものを用いてもよいが、結晶化により精製することも可能であるので、化合物(I)を含むテトラヒドロフラン中で合成反応を行った粗生成物の溶液または懸濁液、もしくは化合物(I)の塩およびその各種溶媒和物を含水テトラヒドロフラン中で脱塩(中和)して得られる溶液または懸濁液を使用することもできる。
【0039】
A結晶の製造に用いる溶媒は、水を含むテトラヒドロフランである。
含水率には、水和物化が可能な量以上であれば特に限定はないが、通常1%乃至50%、好適には2%乃至40%である。
【0040】
A結晶の製造の出発原料として、化合物(I)の塩もしくはそれらの各種溶媒和物を用いる場合には、確実に化合物(I)の2塩酸塩を取得するために脱塩(中和)することがある。そのような場合、脱塩には通常、酸または塩基を用いる。酸または塩基としては脱塩可能なものであれば特に制限はないが、例えば、本発明の化合物(I)の水和物の結晶を製造する際に脱塩に用いることのできる酸または塩基として例示した酸または塩基を用いることができる。好適にはハロゲン化水素、無機酸、水酸化アルカリ金属またはアミン類であり、さらに好適には塩化水素、臭化水素、硫酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア又はトリブチルアミンである。
【0041】
酸または塩基はそのまま添加しても、各種溶媒に溶解させて添加してもよい。
酸または塩基の添加量に特に制限はないが、通常、化合物(I)の各種塩に対して0.1当量乃至4当量用いる。
A結晶は、本発明のフリー体結晶の溶液または懸濁液に、塩化水素または塩酸を添加することでも製造することができる。
【0042】
本発明のフリー体結晶の懸濁液は、単離された本発明のフリー体結晶を水に懸濁したものが使用できるが、また化合物(I)の塩もしくはそれらの各種溶媒和物を脱塩(中和)して得られる懸濁液を使用することもできる。そのような懸濁液は、本発明のフリー体結晶の製造方法に準じて製造される。
【0043】
A結晶を結晶化させるために、塩化水素または塩酸を添加する場合、その添加量は、化合物(I)が2塩酸塩を形成し、その結晶が晶析するのに必要な量以上が好ましい。さらには化合物(I)の2塩酸塩の水和物の溶媒に対する溶解度を小さくするため、通常化合物(I)に対して0.1乃至20当量、更に好適には2乃至10当量を添加する。
塩化水素は直接添加してもよいが、各種有機溶媒の溶液として添加してもよい。その場合の有機溶媒としては塩化水素を溶解し、さらに水と混合するものであればテトラヒドロフランを除けば特に制限はないが、そのような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、またはプロパノール等の低級アルキルアルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル等の低級アルキルニトリル類、もしくはジメチルホルムアミド、及びこれらの混合溶媒などがあり、好適には低級アルコール、さらに好適にはメタノールである。
【0044】
塩化水素溶液および塩酸の濃度には、特に制限はないが、通常0.01%から飽和溶液である。
塩化水素、塩化水素溶液および塩酸の添加温度には特に制限はないが、通常0℃乃至100℃で行う。
塩化水素、塩化水素溶液および塩酸の添加速度は製造量に依存し特に制限はないが、急激な過飽和による種々結晶形の混合を防止するため、瞬時に添加することは避け、通常2分以上、好適には15分以上である。
【0045】
化合物(I)の2塩酸塩の溶液を過飽和にする方法として、2塩酸塩の水和物の溶液を濃縮する方法もある。濃縮する方法としては、例えば、ロータリーエバポレータ等を用いて常圧若しくは減圧下で加温しながら溶媒を蒸発させて濃縮する方法、逆浸透膜を用いて濃縮する方法などがある。溶液の濃縮に使用する逆浸透膜としては、例えばポリアクリロニトリル系膜、ポリビニルアルコール系膜、ポリアミド系膜、酢酸セルロース系膜等から選択することができる。
【0046】
本発明の化合物(I)の2塩酸塩の水和物のA結晶を結晶化させるための温度としては、通常、−70乃至150℃であり、好適には、−70乃至100℃である。
【0047】
結晶の析出は、反応容器中で自然に開始し得るが、種結晶の接種、超音波刺激、反応器の表面を擦る等の機械的刺激を与えることによっても開始又は促進させることができる。
【0048】
A結晶を結晶化させるために結晶を接種する場合、接種する結晶としては2塩酸塩の水和物の結晶であれば特に制限はないが、好適には本発明の化合物(I)の2塩酸塩の水和物のA結晶である。
接種する2塩酸塩の水和物の結晶の量には特に制限はないが、好適には用いる化合物(I)、またはその各種塩、もしくはそれらの各種溶媒和物の重量に対して、0.001%乃至20%、好適には0.01%乃至10%である。
【0049】
本発明の化合物(I)の2塩酸塩・1水和物の結晶であるB結晶は、化合物(I)または化合物(I)の塩もしくはそれらの各種溶媒和物、化合物(I)の2塩酸塩もしくはその各種溶媒和物、あるいは化合物(I)の2塩酸塩の水和物それ自身を溶媒に溶解し、脱塩(中和)、塩化水素もしくは塩酸の添加、溶液の濃縮、冷却、良溶媒と貧溶媒の混合等を行い、化合物(I)の2塩酸塩の水和物を過飽和状態に導いて析出させ、次いで析出した結晶を単離することによって製造することができる。
【0050】
B結晶の製造に用いる出発原料としては、結晶化により精製することも可能であるので、化合物(I)を含む合成反応粗生成物の、溶媒としてテトラヒドロフランを除く溶液または懸濁液を使用することもできる。
B結晶の製造に用いる溶媒は、B結晶が水和物結晶であるため、水を含むことが必要であり、したがって水のみ、またはテトラヒドロフランを除く水と混合可能な溶媒である。
【0051】
水と混合可能な溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、またはプロパノール等の低級アルキルアルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル等の低級アルキルニトリル類、もしくはジメチルホルムアミド、及びこれらの混合溶媒などがあり、好適には低級アルコール、さらに好適にはメタノールである。
【0052】
B結晶の製造に用いる出発原料として、化合物(I)の塩もしくはそれらの各種溶媒和物を用いる場合には、確実に化合物(I)の2塩酸塩を取得するために脱塩(中和)することがある。そのような場合、脱塩には通常、酸または塩基を用いる。酸または塩基としては脱塩可能なものであれば特に制限はないが、例えば、本発明のフリー体結晶を製造する際に脱塩に用いることのできる酸または塩基として例示した塩基を用いることができる。好適には、ハロゲン化水素、無機酸、水酸化アルカリ金属又はアミン類であり、さらに好適には、塩化水素、臭化水素、硫酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア又はトリブチルアミンである。
【0053】
酸または塩基はそのまま添加しても、各種溶媒に溶解させて添加してもよい。
酸または塩基の添加量に特に制限はないが、通常、化合物(I)の各種塩に対して1当量乃至4当量用いる。
B結晶は、本発明のフリー体結晶の懸濁液に塩化水素または塩酸を滴下することでも製造することができる。
【0054】
本発明のフリー体結晶の懸濁液は、単離された本発明のフリー体結晶を水に懸濁したものが使用できるが、また化合物(I)の塩もしくはそれらの各種溶媒和物を脱塩(中和)して得られる懸濁液を使用することもできる。そのような懸濁液は、本発明のフリー体結晶の製造方法に準じて製造される。
【0055】
B結晶を結晶化させるために、塩化水素または塩酸を添加する場合、その添加量は、化合物(I)が2塩酸塩を形成し、その結晶が晶析するのに必要な量以上が好ましい。さらには化合物(I)の2塩酸塩の水和物の溶媒に対する溶解度を小さくするため、通常化合物(I)に対して0.1乃至20当量、更に好適には2乃至10当量を添加する。
塩化水素は直接添加してもよいが、各種有機溶媒の溶液として添加してもよい。その場合の有機溶媒としては、テトラヒドロフラン以外であって、塩化水素を溶解し、さらに水と混合するものであれば特に制限はない。そのような溶媒としては、例えば、前述のA結晶を製造する際に、塩化水素を添加するために用いることのできる有機溶媒として例示した有機溶媒を用いることができる。好適には、低級アルコール、さらに好適には、メタノールである。
【0056】
塩化水素溶液および塩酸の濃度に特に制限はないが、通常0.01%から飽和溶液である。
塩化水素、塩化水素溶液および塩酸の添加温度は特に制限はないが、通常0℃乃至100℃で行う。
塩化水素、塩化水素溶液および塩酸の添加速度は製造量に依存し特に制限はないが、急激な過飽和による種々結晶形の混合を防止するため、瞬時に添加することは避け、通常2分以上、好適には15分以上である。
【0057】
化合物(I)の2塩酸塩の溶液を過飽和にする方法として、2塩酸塩の水和物の溶液を濃縮する方法もある。濃縮する方法としては、例えば、前述のA結晶を製造する際に濃縮する方法として例示した方法を用いることができる。
本発明のB結晶を結晶化させるための温度としては、通常、−70乃至150℃であり、好適には、−70乃至100℃である。
【0058】
結晶の析出は、反応容器中で自然に開始し得るが、種結晶の接種、超音波刺激、反応器の表面を擦る等の機械的刺激を与えることによっても開始又は促進させることができる。
本発明のB結晶を結晶化させる際、結晶を接種する場合、接種する結晶としては2塩酸塩の水和物の結晶であれば特に制限はないが、好適には本発明のB結晶である。
接種する2塩酸塩の水和物の結晶の量には特に制限はないが、好適には用いる化合物(I)、またはその各種塩、もしくはそれらの各種溶媒和物の重量に対して、0.001%乃至20%、好適には0.01%乃至10%である。
【0059】
析出した本発明の化合物(I)の2塩酸塩・1水和物の結晶(A結晶およびB結晶)は、例えば、ろ過、遠心分離、または傾斜法等によって単離することができる。
単離した本発明の化合物(I)の2塩酸塩・1水和物の結晶(A結晶およびB結晶)は必要に応じて適当な溶媒で洗浄してもよい。本発明の結晶を洗浄するには、例えば、水、希塩酸、メタノール、エタノール、またはプロパノール等の低級アルキルアルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル等の低級アルキルニトリル類、テトラヒドロフラン、もしくはジメチルホルムアミド、及びこれらの混合溶媒を用いて行なうことができるが、好適には水または希塩酸、さらに好適には希塩酸である。
洗浄に希塩酸を使用する場合、その濃度に特に制限はないが、通常0.001%乃至20%、好適には0.001%乃至10%、さらに好適には0.005%乃至5%である。
【0060】
単離したフリー体結晶、A結晶、およびB結晶は、通常、0乃至150℃で、好適には、20乃至90℃で重量がほぼ一定になるまで乾燥させる。結晶の乾燥は、必要に応じて、シリカゲルまたは塩化カルシウムのような乾燥剤の存在下、または、減圧下で行うこともできる。減圧下で行なう場合、温度と圧力を制御することによって結晶水を脱水させることなく乾燥させることもできる。そのような場合、乾燥温度が高い場合は相対的に圧力も高く制御する。例えば本発明のB結晶を乾燥する場合、乾燥温度が50℃では、圧力は通常0.7乃至50kPa、好適には1.8乃至11kPaで行なわれる。
温度と圧力を制御することなく乾燥し、乾燥した結晶が脱水している場合は、通常、0乃至50℃の温度で、かつ、10乃至100%の相対湿度で、好適には、10乃至40℃の温度で、かつ、20乃至100%の相対湿度で重量がほぼ一定になるまで吸湿させてもよい。
得られた結晶は、再結晶やスラリー精製によって、その純度及び品質を向上させることができる。
【0061】
化合物(I)、及びその薬理学上許容される塩(特に好ましくは塩酸塩)が、優れたペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γ活性化能を示すことは、特許第3488099号公報(国際公開第99/18081号パンフレット、米国特許第6432993号明細書、欧州特許第1022272号明細書)(特許文献1)、特開2003−238406号公報(国際公開第03/053440号パンフレット)(特許文献2)、特開2004−083574号公報(WO2004/000356号パンフレット)(特許文献3)、特開2005−162727号公報(WO2004/083167号パンフレット)(特許文献4)、国際公開第2007/091622号パンフレット(特許文献5)等に開示されるとおりである。
特に、国際公開第2007/091622号パンフレット(特許文献5)では、化合物
【0062】
(I)およびその塩酸塩は、胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、腎臓癌、前立腺癌、髄芽細胞腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、脂肪肉腫、多発性骨髄腫又は白血病を予防若しくは治療するための抗癌医薬組成物として有用であることが開示されている。
具体的には、国際公開第2007/091622号パンフレット(特許文献5)中の試験例1では、化合物(I)の2塩酸塩が、ヒト胃癌細胞、ヒト乳癌細胞、小細胞肺癌、膵臓癌細胞、前立腺癌細胞、腎臓癌細胞、髄芽細胞腫、ヒト肉腫細胞(横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、脂肪肉腫)、多発性骨髄腫のいずれの癌細胞に対しても有意な増殖抑制活性を示したことが実験データとともに開示されている。
また、同パンフレット(特許文献5)中の試験例2では、化合物(I)の2塩酸塩が、ヒト白血病細胞の増殖抑制活性を有意に抑制することが、実験データとともに開示されている。
【0063】
また、国際公開第2007/091622号パンフレット(特許文献5)中の試験例3では、化合物(I)の2塩酸塩が、ヒト大腸癌株に対してin vivoで有意な抗腫瘍活性を示すこと開示されている。
また、同パンフレット(特許文献5)中の試験例4では、化合物(I)の2塩酸塩と上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)阻害剤とを併用することによって相乗的な癌細胞増殖抑制活性を示すことが開示されている。
また、同パンフレット(特許文献5)中の試験例5では、化合物(I)の2塩酸塩が、ヒト非小細胞肺癌に対して抗腫瘍活性を有すること、ならびに上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)阻害剤との併用投与による抗腫瘍活性の増強が認められることが開示されている。
【0064】
また、同パンフレット(特許文献5)中の試験例6では、化合物(I)の2塩酸塩と血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤、Rafキナーゼ阻害剤とを併用することによって相乗的な癌細胞増殖抑制活性を示すことが開示されている。
さらに、同パンフレット(特許文献5)中の試験例7では、化合物(I)の2塩酸塩が、ヒト腎臓癌に対して抗腫瘍活性を有すること、ならびに血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤やRafキナーゼ阻害剤との併用投与による抗腫瘍活性の増強が認められることが開示されている。
従って、本発明の結晶を有効成分として含有する本発明の医薬組成物は、PPARγ活性化剤として有用であり、また、上述のような種々の癌種に対する治療剤又は予防剤(抗癌医薬組成物)として有用である。
【0065】
また、化合物(I)とその薬理学上許容される塩が、優れたペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γ活性化能を示し、優れたインスリン抵抗性改善作用、血糖低下作用を有し、糖尿病(特に2型糖尿病)の予防または治療剤としても有用であることが、特許第3488099号公報(国際公開第99/18081号パンフレット、米国特許第6432993号明細書、欧州特許第1022272号明細書)(特許文献1)で開示されている。従って、本発明の結晶を有効成分として含有する本発明の医薬組成物は、糖尿病(特に2型糖尿病)の予防又は治療用医薬組成物として有用である。
さらに、本発明の結晶を有効成分として含有する本発明の医薬組成物は、上述のように抗癌医薬組成物であることから、2型糖尿病を併発した癌の予防又は治療用医薬組成物として有用である。
【0066】
本発明の結晶を医薬組成物、特に、PPARγ活性化剤、癌治療剤又は予防剤、糖尿病の治療剤又は予防剤として使用する場合には、それ自体、あるいは適宜の薬理学的に許容される賦形剤、希釈剤等と混合し、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくはシロップ剤等による経口的又は注射剤若しくは坐剤等による非経口的に投与することができる。
【0067】
これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、ソルビットのような糖類;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプンのようなデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩類;リン酸カルシウムのようなリン酸塩類;炭酸カルシウムのような炭酸塩類;硫酸カルシウムのような硫酸塩類等)、結合剤(例えば、前記の賦形剤;ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等)、崩壊剤(例えば、前記の賦形剤;クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾された、デンプンまたはセルロース誘導体等)、滑沢剤(例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ビーガム;ビーズワックス、ゲイロウのようなワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸のようなカルボン酸類;安息香酸ナトリウムのようなカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウムのような硫酸類塩;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;前記の賦形剤におけるデンプン誘導体等)、安定剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラヒドロキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;無水酢酸;ソルビン酸等)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等)、懸濁化剤(例えば、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、希釈剤、製剤用溶剤(例えば、水、エタノール、グリセリン等)等の添加物を用いて周知の方法で製造される。
【0068】
本発明の医薬組成物に有効成分として含有される結晶の使用量は投与される患者(哺乳動物、特にヒト)の症状、体重、年齢、投与方法等により異なるが、例えば、経口投与の場合には、1回当り、下限として0.001mg/kg体重(好ましくは、0.01mg/kg体重)、上限として、500mg/kg体重(好ましくは、50mg/kg体重)を、静脈内投与の場合には、1回当り、下限として0.005mg/kg体重(好ましくは、0.05mg/kg体重)、上限として、50mg/kg体重(好ましくは、5mg/kg体重)を1日当り1乃至数回症状に応じて投与することが望ましい。
【実施例】
【0069】
以下に製造例、試験例及び実施例を示し、本発明を更に詳細に説明する。
【0070】
(製造例1)<A結晶>
(1−1)
特許第3488099号公報の実施例8に記載の方法と同様の方法で、ただし塩酸塩化を含水テトラヒドロフラン中で行って得た5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの塩酸塩(4.0g)を、窒素気流下で、室温でテトラヒドロフラン(40mL)−水(12mL)混合液に懸濁させ、ここへ25%水酸化ナトリウム水溶液(2.4g)を滴下し、溶液とした。この溶液を、窒素気流下で調整した活性炭(0.4g)のテトラヒドロフラン(12mL)縣濁液に滴下し、同温度で20分間攪拌した。活性炭を濾別した後、活性炭をテトラヒドロフラン(12mL)で洗浄した。濾液と洗浄液を合わせ、ここへ水(12mL)を加えた。この溶液に38%塩酸(3.2g)とテトラヒドロフラン(12mL)の混合溶液を滴下した。反応混合液を45分間攪拌し、0℃まで冷却後、さらに2時間攪拌した。得られた結晶を濾別し、約80Pa、50℃で12時間乾燥した。この結晶を大気中で3時間放置し、5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン 2塩酸塩・1水和物(3.64g)の結晶を得た(A結晶)。
【0071】
(1−2)
(1−1)で得られた結晶の粉末X線回折(CuKα、λ=1.54オングストローム)の回折パターン図を図1に、図1に示す回折パターン図において最大ピーク強度を100とした場合の相対強度9以上のピークを表1に示す。図1中の数字は表1中のピーク番号に対応する。
【0072】
【表1】

【0073】
これらのピークの中で、面間隔d値が、10.93、7.16、5.84、4.41、3.65及び3.49オングストロームであるピークが、特にA結晶に特徴的なピークである。
【0074】
(製造例2)
(2−1)
(1−1)と同様の方法で得られたA結晶(2.0g)を水(40mL)に懸濁し、80℃で20分間間攪拌した。ここへ同温度で38%塩酸(1.1g)と水(8.4mL)の混合液を5分間かけて滴下し、1時間攪拌した。40℃まで冷却後、結晶を濾別し、水(6mL)で洗浄し5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン 2塩酸塩・1水和物の吸湿結晶を得た。得られた結晶を約80Pa、50℃で14時間乾燥した。この結晶を大気中で3時間放置し、5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン 2塩酸塩・1水和物(1.83g)の白色結晶を得た。
【0075】
(2−2)<B結晶>
(2−1)と同様の方法で得られた5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物の結晶(5.0g)の水(300mL)懸濁液に38%塩酸(1.94g)を滴下後、95℃で攪拌し、溶液とした。ここへ同温度で38%塩酸(0.81g)と水(5mL)の混合液を滴下し、(2−1)と同様の方法で得た結晶(0.25g)を加え、30分間攪拌した。ここへ38%塩酸(6.14g)と水(38mL)の混合液を2時間かけて滴下し、さらに30分間攪拌した。混合液を40℃まで冷却後、結晶をろ別した。得られた結晶を38%塩酸(0.39g)と水(15mL)の混合液で洗浄後、4.3kPa、50℃で16時間乾燥し、2塩酸塩・1水和物の結晶(5.0g)を得た(B結晶)。
【0076】
(2−3)
(2−2)で得られた結晶の粉末X線回折(CuKα、λ=1.54オングストローム)の回折パターン図を図2に、図2に示す回折パターン図において最大ピーク強度を100とした場合の相対強度10以上のピークを表2に示す。図2中の数字は表2中のピーク番号に対応する。
【0077】
【表2】

【0078】
これらのピークの中で、面間隔d値が、10.88、7.12、5.82、3.68、3.49、3.01及び2.97オングストロームであるピークが、特にB結晶に特徴的な主ピークである。
【0079】
(製造例3)<フリー体結晶>
(3−1)
(2−1)と同様の方法で得た5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物の結晶(80.00g)を水(4800mL)に懸濁し、80℃で1時間攪拌した。25℃まで冷却後、結晶を濾別し、水(20mL)で洗浄した。得られた結晶を約4.3kPa、50℃で13.5時間乾燥し、結晶(64.80g)を得た。この結晶(63.00g)を水(3780mL)に懸濁し、80℃で1時間攪拌した。25℃まで冷却後、結晶を濾別し、水(189mL)で洗浄した。得られた結晶を約4.3kPa、50℃で18時間乾燥し、5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの1水和物の結晶(62.07g)を得た(フリー体結晶)。
【0080】
(3−2)
(3−1)で得られた結晶の粉末X線回折(CuKα、λ=1.54オングストローム)の回折パターン図を図3に、図3に示す回折パターン図において最大ピーク強度を100とした場合の相対強度7以上のピークを表3に示す。図3中の数字は表3中のピーク番号に対応する。
【0081】
【表3】

【0082】
これらのピークの中で、面間隔d値が、5.81、5.60、4.44、4.16及び3.70オングストロームであるピークが、特にフリー体結晶に特徴的な主ピークである。
【0083】
(製造例4)<A結晶>
特許第3488099号公報の実施例8に記載の方法と同様の方法で、ただし塩酸塩化を含水テトラヒドロフラン中で行って得た5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの塩酸塩(7.0g)を、室温でテトラヒドロフラン(70mL)−水(21mL)混合液に懸濁させ、ここへ25%水酸化ナトリウム水溶液(4.2g)を滴下し、溶液とした。この溶液を、窒素気流下で調整した活性炭(0.7g)のテトラヒドロフラン(35mL)縣濁液に滴下し、同温度で10分間攪拌した。活性炭を濾別した後、活性炭をテトラヒドロフラン(21mL)で洗浄した。濾液と洗浄液を合わせ、ここへ水(21mL)を加えた。この溶液に38%塩酸(5.6g)とテトラヒドロフラン(21mL)の混合溶液を滴下した。反応混合液を45分間攪拌し、0℃まで冷却後、さらに2時間攪拌した。得られた結晶を濾別し、約80Pa、50℃で12時間乾燥した。この結晶を大気中で3時間放置し、5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・水和物(6.36g)の結晶を得た。この結晶の粉末X線回折(CuKα、λ=1.54オングストローム)の回折パターンは回折強度が若干異なるものの回折角(2θ)は(1−1)で得られたA結晶の回折パターンと一致した。
【0084】
(製造例5)
(5−1)<フリー体結晶>
(2−1)と同様の方法で得られた5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物の結晶(10.0g)の水(600mL)懸濁液を80℃で1時間攪拌した。この時点で析出している結晶を一部サンプリングし、粉末X線を測定したところ、その回折パターンは(3−1)で得られたフリー体結晶のものと同じであった。
【0085】
(5−2)<B結晶>
(5−1)で調製した懸濁液に、65℃で38%塩酸(18.6g)と水(115mL)の混合液を滴下し、40分間攪拌した。この混合液を40℃まで冷却後、結晶をろ別し、38%塩酸(0.78g)と水(30mL)の混合液で洗浄した。得られた結晶を約4.3kPa、50℃で11.5時間乾燥し、5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物の結晶(8.73g)を得た。この結晶の粉末X線回折(CuKα、λ=1.54オングストローム)の回折パターンは回折強度が若干異なるものの回折角(2θ)は(2−2)で得られたB結晶のものと一致した。
【0086】
(製造例6)
(6−1)<フリー体結晶>
(1−1)と同様の方法で得られた5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物のA結晶(4.0g)の水(160mL)懸濁液に、80℃で25%水酸化ナトリウム水溶液(1.08g)を滴下し、1時間攪拌した。この状態で懸濁している結晶を一部サンプリングし、粉末X線を測定したところ回折パターンは(3−1)で得られたフリー体結晶のものと同じであった。
【0087】
(6−2)<B結晶>
(6−1)で調製した懸濁液を65℃まで冷却後、38%塩酸(0.65g)を水(4.0mL)で希釈したものを滴下し、(2−1)と同様の方法で得られた結晶(0.02g)を添加し、ここへ同温度で38%塩酸(5.11g)を水(31.6mL)で希釈したものを1時間かけて滴下した。さらに30分間攪拌後、結晶をろ別、38%塩酸(0.31g)を水(12mL)で希釈したもので洗浄した。得られた結晶を4.3kPa、50℃で17時間乾燥後、5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物結晶(3.98g)を得た。この結晶の粉末X線回折(CuKα、λ=1.54オングストローム)の回折パターンは回折強度が若干異なるものの回折角(2θ)は(2−2)で得られたB結晶のものと一致した。
【0088】
(製造例7)
(7−1)<フリー体結晶>
(2−1)と同様の方法で得られた5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物の結晶(10.0g)の水(350mL)懸濁液に、80℃で25%水酸化ナトリウム水溶液(2.70g)を水(50mL)で希釈した溶液を滴下し、1時間攪拌した。この状態で懸濁している結晶を一部サンプリングし、粉末X線を測定したところ回折パターンは(3−1)で得られたフリー体結晶のもの同じであった。
【0089】
(7−2)<B結晶>
(7−1)で得られた懸濁液を55℃まで冷却後、38%塩酸(1.08g)を水(3.0mL)で希釈したものを1時間かけて滴下し、ついで(2−2)と同様の方法で得られたB結晶(0.025g)を38%塩酸(0.026g)を水(1mL)で懸濁したものを添加後、さらに38%塩酸(0.026g)を水(1mL)で希釈したものを滴下し、3時間攪拌した。ここへ同温度で38%塩酸(11.87g)を水(33mL)で希釈したものを1時間かけて滴下した。さらに30分間攪拌後、同温度で結晶をろ別、38%塩酸(0.78g)を水(30mL)で希釈したもので洗浄した。得られた結晶を0.4kPa、50℃で63時間乾燥後、室温下、飽和硝酸マグネシウム水溶液で調湿したデシケータ内(湿度約53%)で約5時間吸湿させ、5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物結晶(9.77g)を得た。この結晶の粉末X線回折(CuKα、λ=1.54オングストローム)の回折パターンは回折強度が若干異なるものの回折角(2θ)は(2−2)で得られたB結晶のものと一致した。
(7−3)
得られた結晶の元素分析結果を示す。
理論値(C2730SCl):C=54.64%、H=5.09%、N=9.44%、O=13.48%、Cl=11.95%、S=5.40%.
実測値:C=54.45%、H=5.04%、N=9.45%、O=13.42%、Cl=12.10%、S=5.42%。
【0090】
(製造例8)<B結晶>
(3−1)と同様の方法で得た5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの1水和物(3.0g)の水(120mL)懸濁液に、55℃で38%塩酸(0.81g)と水(2.3mL)の混合液を滴下した。ここへ(2−1)と同様の方法で得られた結晶(0.0075g)の9.6%塩酸(0.6mL)懸濁液を添加し、3時間攪拌した。ここへ同温度で38%塩酸(3.73g)を水(10.47mL)で希釈したものを1時間かけて滴下し、さらに1時間攪拌後、結晶をろ別、38%塩酸(0.23g)を水(9mL)で希釈したもので洗浄した。得られた結晶を4.3kPa、50℃で61時間乾燥し、5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物結晶(3.29g)を得た。この結晶の粉末X線回折(CuKα、λ=1.54オングストローム)の回折パターンは回折強度が若干異なるものの回折角(2θ)は(2−2)で得られたB結晶のものと一致した。
【0091】
(製造例9)<B結晶>
(2−1)と同様の方法で得た5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物の結晶(100g)にメタノール(2700mL)を加え、還流した後、38%塩酸(16.17g)を加えた。この溶液を50℃に冷却し、不溶物をろ別後、ろ液に内温が55℃以上を保つように水(440mL)を滴下した。反応液を5℃まで冷却し、0℃乃至5℃で1時間撹拌し、析出した結晶をろ取した。得られた結晶を50℃、4.3kPaで約15時間乾燥し、5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物の結晶(78.24g)を得た。この結晶の粉末X線回折(CuKα、λ=1.54オングストローム)の回折パターンは回折強度が異なるものの回折角(2θ)は(2−2)で得られたB結晶のものと一致した。
【0092】
(比較例1)
特許第3488099号公報の実施例8に記載の方法で、5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの塩酸塩を製造した。得られた化合物は、微赤紫色を呈した。この化合物の粉末X線回折(Cu Kα、λ=1.54 オングストローム)の回折パターン図を図4に示す。
【0093】
(比較例2)
実施例2の(2−1)で得られた結晶の粉末X線回折(CuKα、λ=1.54オングストローム)の回折パターン図を図5に、図5に示す回折パターン図において最大ピーク強度を100とした場合の相対強度10以上のピークを表4に示す。図5中の数字は表4中のピーク番号に対応する。
【0094】
【表4】

【0095】
(試験例1)<不純物>
実施例4で得られたA結晶、実施例(6−2)で得られたB結晶、及び、比較例1で得られた化合物の不純物の含有率をHPLCにて、以下に示す分析法で測定した。
ここで、不純物の含有率とは、以下に示す測定条件のもと、ピーク面積比率が0.01%以上として測定された全てのピークの積分面積から、化合物(I)のピーク、及び、溶媒のみを注入したときに検出されるピークを除いたピーク面積の、化合物(I)のピーク面積に対する比率をいう。
また、個々の不純物とは、ピーク面積比率が0.01%以上として測定されたピークで、化合物(1)のピーク、及び、溶媒のみを注入したときに検出されるピークを除いたピークの面積比率をいう。
0.01mol/mL酢酸水溶液に、0.01mol/mL酢酸アンモニウム水溶液を加え、pH=4.5に調整し、0.01mol/mL酢酸アンモニウム緩衝液とした。
水、アセトニトリルを体積比でそれぞれ、3対2の比率で混合し、試料溶解液とした。
【0096】
測定対象物0.01gを精密に量り、20mLの褐色メスフラスコに移し、ジメチルスルホキシド約1mLを加え溶液とした後、20mLとし、試料溶液とした。
試料溶液1mLを正確に量り、100mLの褐色メスフラスコに移し、試料溶解液を加え、100mLとし、標準溶液とした。
以下の試験条件で、測定した。
【0097】
HPLC測定条件(1)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:230nm)
カラム:Waters社製、XTerra RP18(4.6mm × 150mm)
カラム温度:40℃
移動相:0.01mol/mL酢酸アンモニウム緩衝液−アセトニトリル(65対35)流量:1mL/min(本条件では、化合物(I)は約25分の保持時間を示した。)
標準溶液および試料溶液の注入量:10μL
面積測定範囲:注入開始から70分間。
【0098】
HPLC測定条件(2)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:230nm)
カラム:Waters社製、XTerra RP18(4.6mm × 150mm)
カラム温度:40℃
移動相:0.01mol/mL酢酸アンモニウム緩衝液−アセトニトリル(56対44)
流量:1mL/min(本条件では、化合物(1)は約8分の保持時間を示した。)
標準溶液および試料溶液の注入量:10μL
面積測定範囲:化合物(I)との相対保持時間が1.48のピークの次に溶出するピークから70分間。
【0099】
不純物の含有率を、以下の計算式により算出した。
【0100】
不純物の含有率(%)
= [HPLC測定条件(1)で測定した0.01%以上の個々の不純物の合計]+[HPLC測定条件(2)で測定した0.01%以上の個々の不純物の合計]
式中、
HPLC測定条件(1)で測定した0.01%以上の個々の不純物の合計(%)
=Ai1/AS1
HPLC測定条件(2)で測定した0.01%以上の個々の不純物の合計(%)
=Ai2/ AS2
上記式中、
HPLC測定条件(1)で測定した標準溶液中の化合物(1)のピーク面積:AS1
HPLC測定条件(1)で測定した0.01%以上の個々の不純物のピーク面積:Ai1
HPLC測定条件(2)で測定した標準溶液中の化合物(1)のピーク面積:AS2
HPLC測定条件(2)で測定した0.01%以上の個々の不純物のピーク面積:Ai2
得られた測定結果を、表5に示す。
【0101】
【表5】

【0102】
本発明のA結晶およびB結晶の不純物の含有率が非常に低いことがわかる。
【0103】
(試験例2)<残留溶媒>
実施例(6−2)で得られたB結晶、実施例(2−1)で得られた結晶、及び比較例1で得られた化合物の残留溶媒を下記分析法に準じてガスクロマトグラフにて測定した。
(1)B結晶および(2−1)で得られた結晶のサンプル調整法
ジメチルホルムアミドと水を体積比で7対3の比率で混合し、希釈液とした。
【0104】
t−ブチルアルコール1mLを正確に量り、100mLのメスフラスコに移し、希釈液で溶かし、100mLとした。この液10mLを正確に量り、500mLのメスフラスコに移し、希釈液を加え500mLにし、内標準液とした。
テトラヒドロフラン2mL、ジイソプロピルエーテル2mL、メタノール2mL、酢酸エチル2mL、酢酸2mL、および1,4−ジオキサン2mLを正確に量り、250mLのメスフラスコに移し、内標準溶液を加え、250mLとした。この液1mLを正確に量り、100mLのメスフラスコに移し、内標準溶液を加え、100mLとした。得られた溶液100mLから6mLを正確に量り、20mLのヘッドスペース用バイアル瓶に移した。バイアル瓶にゴム栓をし、アルミニウムキャップで巻き閉めて密栓し、標準溶液とした。
測定対象試料0.1gを正確に量り、20mLのヘッドスペース用バイアル瓶に移し、
内標準溶液6mLを正確に加えた。バイアル瓶にゴム栓をし、アルミニウムキャップで巻き閉めて密栓した。60〜70℃の水浴中で振り混ぜながら試料を完全に溶かし、試料溶液とした。
【0105】
(2)比較例1の化合物のサンプル調整法
t−ブチルアルコール1mLを正確に量り、100mLのメスフラスコに移し、クロロベンゼンで溶かし、100mLとした。この液10mLを正確に量り、500mLのメスフラスコに移し、クロロベンゼンを加え500mLにし、内標準液とした。
テトラヒドロフラン2mL、ジイソプロピルエーテル2mL、メタノール2mL、酢酸エチル2mL、酢酸2mL、および1,4−ジオキサン2mLを正確に量り、250mLのメスフラスコに移し、内標準溶液を加え、250mLとした。この液1mLを正確に量り、100mLのメスフラスコに移し、内標準溶液を加え、100mLとした。得られた溶液100mLから6mLを正確に量り、20mLのヘッドスペース用バイアル瓶に移した。バイアル瓶にゴム栓をし、アルミニウムキャップで巻き閉めて密栓し、標準溶液とした。
【0106】
測定対象試料0.1gを正確に量り、20mLのヘッドスペース用バイアル瓶に移し、
内標準溶液6mLおよびトリブチルアミン100μLを正確に加えた。バイアル瓶にゴム栓をし、アルミニウムキャップで巻き閉めて密栓した。60〜70℃の水浴中で振り混ぜながら試料を完全に溶かし、試料溶液とした。
【0107】
(3)試験条件
以下の試験条件で、溶媒の残留量を測定した。
検出器:水素炎イオン化検出器
カラム:J&W社製、DB−624(0.53mm × 30m)
カラム温度:40℃(5分保持)→昇温(10℃/分)→260℃(3分保持)
試料気化室温度:250℃
検出器温度:300℃
キャリアーガス:ヘリウム
カラム流量:5mL/分(テトラヒドロフランの保持時間が約7分になるように調整した。)
スプリット比:1対10
試料注入方法:スプリット法
面積測定範囲:20分間。
【0108】
(4)ヘッドスペース装置の操作条件
バイアル内平衡温度(オーブン温度):85℃
バイアル内平衡時間:15分間
注入ライン温度
サンプルループ温度:95℃
トランスファーライン温度:110℃
キャリアーガス:ヘリウム
バイアル加圧時間:0.20分間
バイアル加圧圧力:約10kPa
サンプルループ充填時間:0.15分間
サンプルループ平衡時間:0.05分間
注入時間:1.0分間
試料注入量:1mL。
【0109】
(5)残留溶媒の計算方法
各溶媒の残留量は、以下の式で与えられる。
各溶媒の残留量(ppm)
=(2×D×Q×6×10000000)÷(Q×25000×W)
式中、
試料秤取量(g):W
各溶媒の密度(g/mL):D
標準溶液の各溶媒の内標準物質のピーク面積に対する面積の比:Q
試料溶液の各溶媒の内標準物質のピーク面積に対する面積の比:Q
得られた測定結果を、表6に示す。
【0110】
【表6】

【0111】
(2−1)で得られた結晶は比較例1の結晶と比較して溶媒残留量が少なくなっている。(2−1)で得られた結晶および(6−2)で得られたB結晶を製造するために原料とした結晶は(1−1)に示した方法で製造したA結晶である。このB結晶は、(2−1)で得られたものと同様の2塩酸塩・1水和物の結晶でありながら、より溶媒の残留量が少ないことがわかる。また同時に本発明のB結晶取得法が極めて高い溶媒除去効果を有していることもわかる。
【0112】
(試験例3)<希塩酸に対する溶解性>
実施例3の方法で製造されたフリー体結晶、実施例4の方法で製造されたA結晶、および実施例(2−1)の方法で製造された得られた結晶の希塩酸に対する溶解度を下記の方法で測定した。
濃塩酸を水で希釈し、塩酸濃度が9.6mg/gの希塩酸(pH=約0.7、25℃)を調製し、試験液とした。
【0113】
結晶を500mg量り取り、25℃の5mLの試験液に添加し、同温度で攪拌した。6分後、試験液をサンプリングし、ろ加後、ろ液中の5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの濃度を定量した。
5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの濃度は以下に示す方法で定量した。
0.01mol/mL酢酸水溶液に、0.01mol/mL酢酸アンモニウム水溶液を加え、pH=4.5に調整し、0.01mol/mL酢酸アンモニウム緩衝液とした。
水、アセトニトリル、メタノールを体積比でそれぞれ、55対40対5の比率で混合し、試料溶解液とした。
【0114】
4−ヒドロキシ安息香酸イソアミル0.2gを試料溶解液に溶かし、200mLとし、内標準溶液とした。
5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン 2塩酸塩・1水和物の標準品約0.04gを精密に量り、200mLのメスフラスコに移し、試料溶解液に溶かして、200mLとした。この液5mLを正確に量り50mLのメスフラスコに移し、このメスフラスコに内標準液10mLを正確に加え、さらに試料溶解液を加え、50mLにし、標準溶液とした。
サンプリング後、ろ過した試験液約0.04gを精密に量り、50mLのメスフラスコに移し、ジメチルスルホキシド約2.5mLを加え、内標準液10mLを正確に加えた後、さらに試料溶解液を加え、50mLにし、試料溶液とした。
以下の試験条件で、含量を測定した。
【0115】
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:290nm)
カラム:Waters社製、Symmetry C18(4.6mm x 100mm)
カラム温度:40℃
移動相:0.01mol/mL酢酸アンモニウム緩衝液−アセトニトリル(3対2)
流量:1mL/min(本条件では5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンは、約8分の保持時間を示した。)
標準溶液および試料溶液の注入量:10μL
ピーク面積測定範囲:注入開始から約20分。
【0116】
含量は、以下の計算式で与えられる。
試験液中の濃度(mg/g)=1000×(Q×W×F×502.58)÷(Q×W×40×593.52)
式中、
標準溶液調製時の標準品秤取量(g):W
試料溶液調製時の試験液の秤取量(g):W
標準品の純度係数:F
標準溶液のクロマトグラムにおける標準品のピーク面積を内標準のピーク面積で除した値:Q
試料溶液のクロマトグラムにおける試料のピーク面積を内標準のピーク面積で除した値:Q
得られた結果を表7に示す。
【0117】
【表7】



【0118】
希塩酸中では、2塩酸塩・1水和物の結晶の中でA結晶が最も高い濃度を示している。またフリー体結晶はすべての2塩酸塩・1水和物の結晶より高い濃度を示している。したがってフリー体結晶やA結晶は、希塩酸と同様の酸性度を示す胃酸中でも高い溶解性を示すと考えられ、高い吸収性を有することが期待される。
【0119】
(実施例1)<カプセル剤>
実施例1で得られたA結晶5g、乳糖115g、トウモロコシデンプン58gおよびステアリン酸マグネシウム2gをV型混合機を用いて混合した後、3号カプセルに180mgずつ充填するとカプセル剤が得られる。
【0120】
(実施例2)<錠剤>
実施例1で得られたB結晶5g、乳糖90g、トウモロコシデンプン 34g、結晶セルロース20gおよびステアリン酸マグネシウム1gをV型混合機を用いて混合した後、1錠当り150mgの質量で錠剤機で打錠すると錠剤が得られる。
【0121】
(実施例3)<懸濁剤>
メチルセルロースを精製水に分散、溶解させた分散媒を調製し、実施例1で得られたB結晶を乳鉢に量り取り、前述した分散媒を少量ずつ加えながらよく練合し、精製水を加えて懸濁液100gを調製する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔が、10.93、7.16、5.84、4.41、3.65及び3.49オングストロームにピークを示す、下記式(I):
【化1】


で表される5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物結晶を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項2】
銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折において、面間隔が、10.88、7.12、5.82、3.68、3.49、3.01及び2.97オングストロームにピークを示す、請求項1に記載の一般式(I)で表される5−(4−{[6−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−1−メチル−1−H−ベンツイミダゾール−2−イル]メトキシ}ベンジル)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの2塩酸塩・1水和物結晶を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の一般式(I)で表されるチアゾリジンジオン化合物の結晶を有効成分として含有するPPARγ活性化剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の一般式(I)で表されるチアゾリジンジオン化合物の結晶を有効成分として含有する抗癌医薬組成物、
【請求項5】
請求項1又は2に記載の一般式(I)で表されるチアゾリジンジオン化合物の結晶を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の一般式(I)で表されるチアゾリジンジオン化合物の結晶を有効成分として含有する、2型糖尿病を併発した癌の予防又は治療用医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−173869(P2011−173869A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12835(P2011−12835)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【Fターム(参考)】