説明

チェック弁装置

【課題】シート部に異物を噛み込んだとしても、シート性に影響を及ぼさないチェック弁装置を提供する。
【解決手段】弁体であるボールBをセラミックス製とし、シート部25bを構成するシート部材25を樹脂製とする。そして、上記ボールBがシート部25bに着座したとき、ボールBとシート部25bとの接触部に噛み込んだ微細な紛状または粒状体を、ボールBの圧接力によって上記シート部25bに没入させる構成にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に管路内を微細な紛状または粒状物が流通する装置に有効なチェック弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
管路内に流体を流通させる装置には、その装置の特性や流体の特性等に応じて、ボール弁やポペット弁等さまざまな構造のチェック弁装置が用いられている。このようなチェック弁装置を用いる装置は、一度に大量の流体が流通するものや、あるいは高圧が作用するもの、さらには高温環境下で使用されるもの等さまざまである。
いずれにしても、この種のチェック弁装置のほとんどは、その耐用性を考慮して、ボールあるいはポペット等の弁体と、これら弁体が着座するシート面とを金属製にしている。
【特許文献1】特開2006−242019号公報
【特許文献2】特開2003−312843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のチェック弁装置では、流体の中に微細な粉状や粒状物が含まれていて、弁体とシート面との間に粉状や粒状物等の異物が噛み込まれると、当該チェック弁装置のシート性が極端に落ちてしまうという問題があった。
例えば、弁体とシート面との間に異物が噛み込まれると、その異物によって弁体とシート面との間に微細なすき間ができ、そのすき間から流体が漏れることがあった。また、弁体がシート面に着座する際に、上記異物によって弁体やシート面に傷がつくことがある。弁体やシート面に傷がついてしまうと、特に高圧下においては、この傷ついた部分から流体が漏れてしまい、シート機能を果たせなくなる。
【0004】
さらに、弁体をポペットで構成した場合に、シート面に対するポペットの接触部分が常に一定になるので、異物が噛み込まれる箇所も一定になる。そのため、シート面に圧接するポペットの特定箇所が異物によって損傷しやすくなり、その分、シート性が損なわれてしまう。
【0005】
また、ポペットの特定箇所のみが常にシート面に圧接するということは、上記したようにポペットの特定箇所だけに異物が噛み込まれることになるが、このように、いつもポペットの特定箇所に異物が噛み込まれていると、その異物がポペットにこびりついてしまう。しかし、ポペットにこびりついた異物は、積極的に除去しない以上、なかなか取れるものではないため、装置を分解してメンテナンスを強いられることとなる。
【0006】
上記したように従来のチェック弁装置では、異物が混入した流体が流通した場合に、確実なシート性を保持することができず、しかも、弁体やシート部などがすぐに傷ついてしまい、それら部品を短期間で交換しなければならないという問題もあった。
【0007】
この発明の目的は、異物が混入した流体を流通させても、長期に亘って確実なシート性を保持できるチェック弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、バルブボディに流入ポートおよび流出ポートを開口するとともに、上記バルブボディ内に設けたシート部にボールを着座可能に設け、上記流入ポートから流出ポートへの流れのみを許容するチェック弁装置において、上記ボールはセラミックス製からなる一方、上記シート部は樹脂製からなり、上記ボールがシート部に着座したとき、ボールとシート部との接触部に噛み込んだ微細な紛状または粒状体を、ボールの圧接力によって上記シート部に没入させる構成にした点に特徴を有する。
【0009】
第2の発明は、バルブボディは本体と蓋体とからなり、上記本体には、組込穴を形成するとともに、この組込穴には、断面凹状であってかつ金属製またはセラミックス製の補強部材を、上記組込穴との間でシール性を保って組み込み、かつ、この補強部材に樹脂製のシート部材を挿入した点に特徴を有する。
【0010】
第3の発明は、上記補強部材の開口側端面にメタルシール用凸部を形成し、このメタルシール用凸部に蓋体を接触させて、メタルシール用凸部と蓋体との間をメタルシールする構成にした点に特徴を有する。
第4の発明は、上記補強部材の周囲にメタルシール用凸部を形成し、このメタルシール用凸部を形成した補強部材を、上記組込穴に組み込み、このメタルシール用凸部で、補強部材の側面と組込穴との間をメタルシールする構成にした点に特徴を有する。
【0011】
第5の発明は、上記シート部と流出ポートとを連通させるとともに、上記ボールの移動をガイドするメイン通路穴を上記蓋体に形成する一方、このメイン通路穴と隣接するとともに、シート部と流出ポートとを連通して上記メイン通路穴の流路面積を実質的に拡大する拡大通路穴を設けた点に特徴を有する。
第6の発明は、上記メイン通路穴にはスプリングを設けるとともに、このスプリングの弾性力によって、上記ボールをシート部に圧接させる構成にした点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、ボールとシート部との間に異物が噛み込んだとしても、シート部に対するボールの圧接力によって、異物をシート部に没入させることができる。したがって、流体中に異物が混入しても、シート部をしっかりとシートすることができ、シート性が損なわれることがない。
また、ボールを硬度の高いセラミックス製にしたので、異物をシート部に没入させる際に、ボールが異物に圧接しても、ボールが簡単に傷ついてしまうことがない。したがって、長期に亘ってシート性を保持することができる。
しかも、ボールは全方向に転動可能なので、ボールがシート部に着座する都度、シート面に対するボールの接触箇所が変化する。このように、シート面に対するボールの接触箇所が変化すれば、常に同じ箇所でシートする場合に比べて、異物がこびりつきにくくなり、しかも、ボールの転動によって異物が除去されやすくなる。
【0013】
第2の発明によれば、シート部を有する樹脂製のシート部材の外周に補強部材を設けたので、バルブボディ内が高圧になってもシート部材の変形を防止できる。したがって、樹脂が持つ耐圧強度に関する弱点を完全に補うことができる。言い換えると、樹脂の持つ加工容易性という長所を遺憾なく発揮させることができる。したがって、シート部材の加工精度を上げることができ、その加工公差を極端に小さくすることができる。このように加工公差が小さければ、それだけ、シート性に優れたチェック弁装置が得られることになる。特に、流通する流体が高圧であればあるほど、シート部材の加工精度が求められるが、この第2の発明によれば、そのような要求にも確実に応えることができる。
【0014】
また、補強部材は硬度の高い金属またはセラミックス製にしているので、例えば、樹脂製のシート部材に高圧が作用して、それが変形しようとしても、補強部材によって、その変形をおさえることができる。逆に、その変形をおさえる力が、シート部材と補強部材間のシール性を高める機能を発揮することになる。
【0015】
第3および第4の発明によれば、補強部材と蓋体あるいは補強部材と本体と
の間をメタルシールできるので、Oリング等からなるシールの場合と比べて高圧においてもそのシール性を維持することができる。例えば、Oリング等からなるシールの場合には、70Mpa程度の圧力で損傷してしまうが、この第3および第4の発明の場合には、70Mpa以上の圧力にも十分耐えることができる。
第5の発明によれば、メイン通路穴以外に拡大通路穴を形成したので、ボールによって通路面積が縮小されることなく、ボールの移動範囲をメイン通路穴で規制しながら、流体を確実に流通させることができる。
【0016】
第6の発明によれば、スプリングの弾性力によって、閉弁時の応答性を高めることができるのはもちろん、上記第5の発明と相まって、スプリングが圧縮してコイル間のすき間が閉じたときにも、次のような効果を期待できる。すなわち、スプリングが圧縮して、コイル間のすき間が閉じられると、スプリングが障害になって流路面積が小さくなる。しかし、この第6の発明によれば、上記したように拡大通路穴を形成しているので、流路面積が必要以上に狭くなることはない。
【0017】
また、上記のようにスプリングのコイル間のすき間が狭くなると、そこを通過する流体の流速が速くなる。このようにコイル間のすき間を流れる流速が速くなると、その流れによって、スプリングが削り取られるようにしてやせ細っていく。特に、流体の中に微細な紛状または粒状物が混じっていると、その削り取られる速度がいっそう速くなる。このようにしてスプリングが削られてしまうと、それを交換しなければならなくなる。しかし、この第6の発明によれば、スプリングが削り取られてしまうようなことがなく、その分、スプリングの寿命を延ばすとともに、頻繁に部品交換をしなくてもすむようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1〜図3を用いて、この発明の実施形態について説明する。
この発明のチェック弁装置は、どのような装置にも広く用いることができるが、特に、紛状または粒状物を混入するスラリーを、高圧下で流通させる装置においてその機能を発揮するものである。そこで、この実施形態の説明では、湿式酸化装置を流れる流体の流通過程に設けるチェック弁装置について説明する。なお、この実施形態の湿式酸化装置は、焼酎粕等の有機物からなるスラリーを酸化処理するものである。
【0019】
図1に、上記湿式酸化装置の簡略的な回路図を示す。貯留槽1は、焼酎粕等の有機物と水とを混合したスラリーを貯留するタンクであり、フィードポンプ2によって、この貯留槽1に貯留されたスラリーを原料タンク3に供給する。この原料タンク3には、モータMによって駆動する攪拌手段4を設け、スラリー中の固形物質が沈殿しないように掻き混ぜるようにしている。
上記のようにして固形物質が均一に攪拌された原料タンク3内のスラリーは、通路5,6を介して反応機構Aに供給されるが、原料タンク3から反応機構Aへスラリーを供給するのがポンプ機構7である。
【0020】
このポンプ機構7は複動シリンダ型のポンプであり、シリンダ内のピストンで区画された一対の圧力室7a,7bと、これら圧力室7a,7bに隣接して設けた一対のポンプ作用室7c,7dとを有してなる。
上記ピストンの両端にはロッドを設けるとともに、このロッドを、圧力室7a,7bから突出させて、上記ポンプ作用室7c,7dに臨ませている。このようにしてポンプ作用室7c,7dに臨ませた上記ロッド先端に、移動体を摺動自在に設けている。なお、この移動体は、上記ロッドと一体にしたプランジャでもよいし、図示のようにロッドに設けたピストンであってもよい。
そして、上記圧力室7a,7bは、電磁切換弁8を介して油圧ポンプPに接続し、この油圧ポンプPから吐出する作動油を、圧力室7a,7bのいずれか一方の室に導くとともに、いずれか他方の室からの戻り油をタンクに導くようにしている。
したがって、電磁切換弁8を切り換えれば、油圧ポンプPから圧力室7a,7bに導かれる作動油によって上記移動体が摺動することになるが、この電磁切換弁8は、図示しないコントローラによって連続的に切り換わるようにしている。このようにすれば、圧力室7a,7bに交互に作動油が導かれて、移動体を連続的に往復動させることができる。
【0021】
このようにして上記移動体が往復動すれば、一対のポンプ作用室7c,7dが、吸入工程と吐出工程とを繰り返す。つまり、移動体が図中下方に移動すると、原料タンク3から通路5を介してスラリーがポンプ作用室7cに吸入される。一方、上記移動体が図中上方に移動すると、ポンプ作用室7cに吸入されたスラリーが通路5に吐出される。つまり、一方のポンプ作用室7cが吸入工程にあるときには、他方のポンプ作用室7dが吐出工程にあり、一方のポンプ作用室7cが吐出工程にあるときには、他方のポンプ作用室7dが吸入工程にある。したがって、ポンプ機構7全体で見れば、吸入工程および吐出工程の双方が連続的に行われていることになる。
【0022】
そして、上記のようにポンプ機構7は、同一通路に対してスラリーの吸入と吐出とを行うが、このように、同一通路に対して吸入および吐出をするのを可能にしているのが、この発明のチェック弁装置C〜Cである。
ただし、このチェック弁装置C〜Cの具体的な構成については、湿式酸化装置の説明の後に詳細に説明することとする。
【0023】
上記ポンプ機構7から吐出されたスラリーは、反応機構Aに導かれるとともに、この反応機構Aにおいてスラリー中の有機物が酸化処理される。反応機構Aは、第1反応塔9〜第3反応塔11を直列に接続しており、ポンプ機構7から吐出されたスラリーが、各反応塔9〜11を順次通過するようにしている。また、上記各反応塔9〜11にはエア供給手段12を接続し、スラリーとともにエアが供給される構成にしている。そして、このエアが各反応塔9〜11内でスラリー中の有機物に接触するとともに、当該有機物を化学反応させて酸化処理するのである。
上記のように反応機構Aにおいて酸化処理されたスラリーは、第3反応塔11から排出手段13を介して気液分離器14に導かれ、この気液分離器14において水と二酸化炭素とに分離される。
【0024】
次に、上記湿式酸化装置に用いられる、この発明のチェック弁装置C〜Cについて詳細に説明する。
図2〜図5に示すように、この発明のチェック弁装置は、本体21と蓋体22とからなるバルブボディVを備えてなる。このバルブボディVは、本体21に形成した組込穴23に凸形の蓋体22を嵌め合わせてボルトbで固定しているが、このように本体21と蓋体22とを嵌め合わせたとき、上記組込穴23内に空間が形成されるようにしている。そして、この空間には、断面凹状にした金属製あるいはセラミックス製の補強部材24を組み込んでいる。
【0025】
また、上記のようにした補強部材24は、その開口端面に、図4あるいは図5に示すようにメタルシール用凸部24cを形成している。図4のメタルシール用凸部24cは、上記開口端面全体を円弧状に盛り上がらせたもので、この円弧状の頂部が、上記組込穴23に組み込んだ蓋体22の先端にぴったりと接触して、メタルシール機能を発揮する。なお、図5は、図4とは別のメタルシール用凸部24cを示したもので、この図5に示したメタルシール用凸部24cは、補強部材24の開口端面にレール状に突出させ、それを開口端面に沿って連続させたものである。そして、この図5に示したメタルシール用凸部24cも、蓋体22の先端にぴったりと接触して、メタルシール機能を発揮する。
【0026】
さらに、上記補強部材24の側面周囲にも、複数のメタルシール用凸部24dを平行に形成している。このようにした補強部材24を上記組込穴23に組み込むことによって、補強部材24の側面と、組込穴23との間がメタルシールされるようにしている。
なお、図中符号30はOリングからなるシールである。ただし、上記したようにこの実施形態では、メタルシール機能が十分に発揮されるので、このOリングからなるシール30はあくまでも補助的なものとなる。
【0027】
上記のようにした補強部材24の凹部24aには、連通孔25aを形成した樹脂製のシート部材25を組み込むとともに、上記連通孔25aにおける蓋体22側の開口端周囲にシート部25bを形成している。なお、上記連通孔25aは、上記補強部材24に形成した連通孔24bを介して、本体21に形成した流入ポート26に連通させている。
【0028】
一方、蓋体22には、メイン通路穴27を形成するとともに、このメイン通路穴27を介して上記連通孔25aと、蓋体22に形成した流出ポート29とを連通させている。また、このメイン通路穴27には、弁体としてのボールBを移動可能に組み込むとともに、このボールBで上記シート部25bをシートするものである。そして、上記メイン通路穴27の内径は、ボール外径よりも多少大きくして、ボールBが組み込まれたとしても、メイン通路穴27に流体が流れるようにしているが、ボールBの大きさ分だけメイン通路穴27の実質的な流路面積が狭められることは否めない。
【0029】
そこで、この実施形態では、図3に示すように、上記メイン通路穴27を中心として放射状にした拡大通路穴28を、メイン通路穴27と平行に形成するとともに、この拡大通路穴28を上記メイン通路27側及び流出ポート29側に開口させている。したがって、シート部25bを通過した流体は、メイン通路穴27と拡大通路穴28との両方を通って流出ポート29から流出することになる。言い換えると、拡大通路穴28によって、メイン通路穴27の通路面積が実質的に小さくなるのを補うことができる。
なお、上記湿式酸化装置において、通路5,6にバルブボディVを接続する場合、流入ポート26を原料タンク3側に、流出ポート29を第1反応塔9側に接続する。
【0030】
次に、この実施形態の作用について説明する。
いま、バルブボディVを通路5,6に組み込んで、チェック弁装置C〜Cを構成している状態でポンプ機構7を作動した場合について説明する。
ポンプ作用室7cの吸入工程では、ポンプ作用室7cが負圧となるため、チェック弁装置Cが開弁するとともに、チェック弁装置Cが閉弁状態となり、スラリーが原料タンク3からポンプ作用室7cに吸入される。
一方、ポンプ作用室7cの吐出工程では、ポンプ作用室7cが高圧となるため、チェック弁装置Cが閉弁するとともに、チェック弁装置Cが開弁状態となり、ポンプ作用室7cから第1反応塔9にスラリーが供給される。
【0031】
上記のように、ポンプ機構7を作動したときのチェック弁装置Cは、次のように作用する。
すなわち、ポンプ作用室7cの吐出工程では、図2に示す流入ポート26側が高圧となるため、この高圧流体はシート部25bをシートしているボールBを押し退けてメイン通路穴27側に流出する。メイン通路穴27側に流出した高圧流体は、このメイン通路穴27及び拡大通路穴28を経由して流出ポート29から流出する。
【0032】
上記のように流入ポート26から高圧流体が流入すると、その時の流体圧がシート部材25に作用する。しかし、シート部材25は、前記したように樹脂製なので、上記流体圧に十分耐えるだけの硬さを持てない。そのために、上記流体圧の作用で、変形しようとするが、その変形は、金属製の補強部材24によって強制的に押さえられることになる。しかも、シート部材25の変形を補強部材24で押さえ込むことによって、シート部材25と補強部材24の凹部24aの壁面との密着力が強くなり、その力がシール機能をもたらすことになる。したがって、この密着力によるシールと、メタルシール用凸部24cによるメタルシール機能とによって、シール性は格段によくなる。しかも、補強部材24の周囲と組込穴23の側面との間は、メタルシール用凸部24dによってメタルシールされる。
【0033】
いずれにしても、上記メタルシール用凸部24c,24dによって本体21と蓋体22との間がシールされることになるので、高圧にも十分に耐えることができる。例えば、流体の圧力が約70Mpaを超えてしまうと、Oリング等からなるシールでは簡単に破損してしまう。しかし、この実施形態の場合には、シールの破損という問題は起こり得ない。
【0034】
また、樹脂製のシート部材25を金属製の補強部材24で囲うことによって、樹脂の硬度不足を補いつつ、樹脂が持つ切削加工の容易性という特質を遺憾なく発揮させることができる。特に、シート部25bは、精密な加工が必要になるが、金属によって精密な切削加工を施そうとすると、いろいろな困難がともなう。しかし、上記のようにシート部材25を樹脂製にしているので、精密な切削加工がきわめて容易になる。
【0035】
上記のように高圧に耐えながら、シール性及び加工性を上げることができる全ての要因は、樹脂製のシート部材25を金属製の補強部材24に組み込んだことである。つまり、樹脂と金属との長所を遺憾なく発揮させて、お互いの短所を完全に補うことができたものである。
【0036】
また、拡大通路穴28を形成したことによって、前記したようにボールBの周囲に異物が付着しにくくなるということ以外に、次のような効果を期待できる。例えば、ボールBの着座性をよくするために、メイン通路穴27にコイルスプリング(図示していない)を設け、このコイルスプリングのばね力をボールBに作用させるのが通常である。この場合には、ボールBが完全にリフトしたとき、すなわちコイルスプリングが収縮したとき、コイルスプリングのコイル間のすき間が小さくなり、その部分で流体が流通しにくくなる。このように流体が流通しにくくなるということは、その分、流路面積が実質的に狭くなることを意味するが、この実施形態のように拡大通路穴28を形成することによって、流路面積を十分に確保することができる。
【0037】
上記のようにコイルスプリングが収縮した状態でも、流入ポート26から流出ポート29に流出する流量が一定だとすると、そのコイル間に高圧流体が流通する流速が非常に速いものになる。このようにコイル間を高圧流体が高速で流通すると、コイルスプリングを激しく摩耗させ、短期間でコイルスプリングの交換が必要になる。しかし、この実施形態のように、拡大通路穴28を形成することによって、コイルスプリングのコイル間を流通する流量を少なくできるので、コイルスプリングが摩耗するという問題は発生せず、コイルスプリングを短期間で頻繁に交換しなくてもよくなる。
【0038】
一方、ポンプ作用室7cに流体を吸い込むときには、チェック弁装置Cの流入ポート26側には負圧が作用し、流出ポート29側には反応機構A側の高圧が作用する。したがって、ボールBは、高い圧力作用で、シート部25bに強く押しつけられるが、このときシート部25bあるいはボールBに異物が付着していたとしても、その異物はシート部25bに没入させられる。なぜなら、上記異物は、硬いセラミックス製のボールBと、やや柔軟な樹脂製のシート部25bとの間にあるので、硬いボールBの接触圧によってシート部25bに押し込まれるからである。このように異物がシート部25bに没入することによって、シート部25bは初期の面の状態を維持し、シート性に支障を来すことはなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明のチェック弁装置を用いる湿式酸化装置の簡略図である。
【図2】この発明のチェック弁装置の断面図である。
【図3】図2におけるIII―III線断面図である。
【図4】補強部材の断面斜視図である。
【図5】図4の補強部材とは別の形態の補強部材を示す断面斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
21 本体
22 蓋体
23 組込穴
24 補強部材
25 シート部材
25b シート部
26 流入ポート
27 ボール移動用通路
28 拡大通路
29 流出ポート
B ボール
C1〜C4 チェック弁装置
V バルブボディ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブボディに流入ポートおよび流出ポートを開口するとともに、上記バルブボディ内に設けたシート部にボールを着座可能に設け、上記流入ポートから流出ポートへの流れのみを許容するチェック弁装置において、上記ボールをセラミックス製とし、上記シート部を樹脂製とする一方、上記ボールがシート部に着座したとき、ボールとシート部との接触部に噛み込んだ微細な紛状または粒状体を、ボールの圧接力によって上記シート部に没入させる構成にしたチェック弁装置。
【請求項2】
バルブボディは本体と蓋体とからなり、上記本体には組込穴を形成するとともに、この組込穴には、断面凹状であってかつ金属製またはセラミックス製の補強部材を、上記組込穴との間でシール性を保って組み込み、かつ、この補強部材に樹脂製のシート部材を挿入した請求項1記載のチェック弁装置。
【請求項3】
上記補強部材の開口側端面にメタルシール用凸部を形成し、このメタルシール用凸部に蓋体を接触させて、メタルシール用凸部と蓋体との間をメタルシールする構成にした請求項2記載のチェック弁装置。
【請求項4】
上記補強部材の周囲にメタルシール用凸部を形成し、このメタルシール用凸部を形成した補強部材を、上記組込穴に組み込み、このメタルシール用凸部で、補強部材の側面と組込穴との間をメタルシールする構成にした請求項2または3記載のチェック弁装置。
【請求項5】
上記シート部と流出ポートとを連通させるとともに上記ボールの移動をガイドするメイン通路穴を上記蓋体に形成する一方、このメイン通路穴と隣接するとともに、シート部と流出ポートとを連通して上記メイン通路穴の流路面積を実質的に拡大する拡大通路穴を設けた請求項1〜4のいずれか1に記載のチェック弁装置。
【請求項6】
上記メイン通路穴にはスプリングを設けるとともに、このスプリングの弾性力によって、上記ボールをシート部に圧接させる構成にした請求項5記載のチェック弁装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−95803(P2008−95803A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277626(P2006−277626)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(594058827)株式会社カラサワ ファイン (14)
【Fターム(参考)】