説明

チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体、およびその用途

【課題】密着性向上効果に優れるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を提供する。
【解決手段】チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、下記式1で表される化合物である。
【化1】


(式中のmは1または2である。Rは−CH−CHR−あるいは−CR(CH)−で表される2価の基である。ここで、R4は水素原子またはメチル基である。Rはメチル基またはエチル基である。Rは炭素数が1〜18の炭化水素基または、炭素数1〜3のアルコキシ基により置換された炭素数が2〜5の炭化水素基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密着性向上剤等に好適に用いられる新規なチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体、および当該チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種塗料をシリコン基板等の無機基材に塗工する際に、密着性を向上させる目的でシランカップリング剤が塗料に添加されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開開平7−300491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シランカップリング剤の多くは沸点が低く、高温塗工が必要な塗料に対しては、例えば100量部に対して10〜20量部添加する必要があった。また、密着性向上効果も充分とは言えず、例えばチタン、ジルコニウム等の塩や、イミダゾール等のアミン、リン酸エステル、ウレタン樹脂、チオール化合物等の密着性助剤も同時に添加することによって、初めて密着性を達成できる場合も多かった。しかしながら、これら密着性助剤の配合は工程数が増加するだけではなく、塗料特性を損なわない密着性助剤種や添加量の最適化作業が必要であった。
【0005】
そこで、本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その目的は、シリコン基板等への密着性向上効果に優れる新規なチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体と、およびこれを用いた密着性向上剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体が、シリコン基板等への優れた密着性向上効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は次の〔1〕から〔3〕である。
〔1〕下記式1で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化1】


(式中のmは1または2である。Rは−CH−CHR−または−CR(CH)−で表される2価の基である。R4は水素原子またはメチル基である。Rはメチル基またはエチル基である。Rは炭素数が1〜18の炭化水素基、または炭素数1〜3のアルコキシ基により置換された炭素数が2〜5の炭化水素基である。)
〔2〕下記式2で表されるアルコキシシリル基含有化合物と下記式3で表されるチオール化合物とを反応させてなる、〔1〕に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化2】


(式中のRはメチル基またはエチル基であり、R4は水素原子またはメチル基である。)
【化3】


(式中のmは1または2である。Rは炭素数が1〜18の炭化水素基または、炭素数1〜3のアルコキシ基により置換された炭素数が1〜5の炭化水素基である。)
〔3〕〔1〕または〔2〕に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を有効成分とする密着性向上剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明のチオエーテル基含有アルコキシシラン誘導体においては、分子中に存在するチオエーテル結合は、CやOやNといった原子での結合と比べ結合角や結合長が柔軟に変化でき、様々な立体配座を取ることができるため、基材への配向性が高まると考えられる。結果としてアルコキシシラン基と基材あるいはアルコキシシラン同士の化学・物理結合が形成しやすくなり、密着性付与効果が高くなる。加えて、チオエーテル結合に由来するS原子は、CやOやNといった原子の最外殻がL殻であるのに対し、最外殻がM殻であるため、より大きな原子半径と原子量を有する。そのため、S原子を有することにより分子間力が向上し、得られるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の凝集力が高くなる。このため、同分子量のものと比べると沸点が高く、且つ低揮発性となっている。結果として、例えば塗料に0.1〜10重量%という比較的少量添加するだけでも、密着性助剤の添加を必要とすることなく塗料に高いシリコン基板への密着性を付与することが可能である。
【0008】
また、本発明のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は密着性の付与効果に優れているため、塗料などに密着性を付与する密着性向上剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図2】実施例2で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図3】実施例3で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図4】実施例4で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図5】実施例5で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図6】実施例6で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図7】比較例1で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図8】実施例1で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図9】実施例2で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図10】実施例3で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図11】実施例4で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図12】実施例5で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図13】実施例6で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明について詳細に説明する。本発明のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、下記式1で表される化合物である。
【化4】


(式中のmは1または2である。Rは−CH−CHR−あるいは−CR(CH)−で表される2価の基である。ここで、R4は水素原子またはメチル基である。Rはメチル基またはエチル基である。Rは炭素数が1〜18の炭化水素基または、炭素数1〜3のアルコキシ基により置換された炭素数が2〜5の炭化水素基である。)
【0011】
式1のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は多くの樹脂に相溶するため、幅広い用途に用いることが可能である。例えば、本チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を使用することで樹脂と無機材料の密着性を改善できるため、FRP(繊維強化プラスチック)、FRTP(繊維強化熱可塑性プラスチック)、レジンコンクリート、人造大理石、プラスチックマグネット、ゴムマグネット、磁気テープのような、無機材料と樹脂を組み合わせた複合材料用の密着性向上剤として有用である。特に、シリコン基板等の無機基材に各種塗料を塗工する際の密着性向上剤として好適である。
【0012】
<チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の製造方法>
式1で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、下記式2で表されるアルコキシシリル基含有化合物(以下、A成分ということがある)と、下記式3で表されるチオール化合物(以下、B成分ということがある)とを反応させることにより得ることができる。その際の反応はA成分の(メタ)アクリロイロキシ基とB成分のチオール基の1対1の付加反応である。
【化5】


(式中のRはメチル基またはエチル基であり、R4は水素原子またはメチル基である。)
【化6】


(式中のmは1または2である。Rは炭素数が1〜18の炭化水素基または、炭素数1〜3のアルコキシ基により置換された炭素数が1〜5の炭化水素基である。)
【0013】
式2で表されるアルコキシシリル基含有化合物としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを使用することができる。
【0014】
式3で表されるチオール化合物において、Rの炭素数が19以上の炭化水素基、または、炭素数が1〜3のアルコキシ基により置換された炭素数が6以上の炭化水素基、または炭素数が4以上のアルコキシ基により置換された炭素数が1〜5の炭化水素基のチオールを原料に用いた場合には、チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体のチオエーテルあるいはトリアルコキシシリル基が基材に配向しにくくなるため、本発明の効果である密着性を得にくくなる。
【0015】
A成分とB成分とは、触媒またはラジカル発生剤の存在下で反応させることが好ましい。触媒やラジカル発生剤を添加すれば、より短時間で且つ高収率にて反応させることができるからである。
【0016】
触媒としては、アミン系の塩基性触媒が好ましく、一級、二級あるいは三級のアミン類、もしくはイミダゾール系化合物が使用できる。例えば一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン等が挙げられる。二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、1,8−ジアザビシクロ [5.4.0]ウンデカ−アミノメチル)フェノール等が挙げられる。イミダゾール系化合物としては、例えば1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール等のイミダゾール同族体、1−メチル−2−オキシメチルイミダゾール、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾール等のアルキル誘導体、1−メチル−4(5)−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチルー5(4)−アミノイミダゾール等のニトロおよびアミノ誘導体、ベンゾイミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−ベンジルベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0017】
ラジカル発生剤としては、過酸化物もしくはアゾ化合物が好ましい。過酸化物として、例えば、過酸化ジベンゾイル、tert-ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、ジラウロイルペルオキシドなどが挙げられる。アゾ化合物としては、例えばアゾビス(イソ−ブチロニトリル)や2、2‘−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)などが挙げられる。
【0018】
A成分とB成分とを反応させると、A成分の二重結合とB成分のチオール基とが、下記式4で表される反応式で反応する。なお、式4においてXは水素原子またはメチル基、YはA成分の二重結合に結合するX以外の残基を表し、ZはB成分のチオール基に結合する残基を表す。
【化7】

【0019】
式4に示すように、A成分の二重結合を形成する2つの炭素のどちらもチオールのSと結合する。2つの生成物の生成比率は反応条件により異なり、例えばアミンなどの塩基触媒を反応系に添加した場合には、生成物(1)が多く生成し、ラジカル発生剤を反応系に添加した場合には生成物(2)が多く生成する傾向にある。多くの場合、製造後のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は生成物(1)と(2)の混合物となっている。
【0020】
チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の製造方法においては、5℃以上の温度で反応させることができるが、6時間以内といった短時間で反応させるためには、アミンなどの塩基触媒やラジカル発生剤を反応系に添加し、60〜80℃で反応させることがより好ましい。
【0021】
チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の製造方法においては、無溶剤でも反応を進行させることができるが、低温で反応させる場合など、粘度を下げたい場合には溶剤を加えて反応させることもできる。その際には、アルコキシシリル基、二重結合、チオール基と反応しない溶剤、例えばアルコール類、ケトン類、エステル類または芳香族類が好ましい。
【0022】
アルコキシシリル基、二重結合、チオール基と反応しないアルコール類としては、炭素数が3以下で一級であるものが好ましく、また、沸点が反応温度よりも高いものが好ましい。温度範囲内においては反応温度が高いものがさらによい。また、アルコールとアルコキシシリル基が反応中にエステル交換を起こす可能性があり、目的生成物の収率低下が起こる恐れがあるため、収率低下を抑制するためROHの構造を持つものがよい。これらを満たす反応溶剤として例えば、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0023】
アルコキシシリル基、二重結合、チオール基と反応しないケトン類としては、沸点が反応温度よりも高いものが好ましい、また溶解性の観点から炭素数6以下のものが好ましい。これらを満たすものとして、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0024】
アルコキシシリル基、二重結合、チオール基と反応しないエステル類としては、沸点が反応温度よりも高いものが好ましい、また溶解性の観点から直鎖炭素数6以下のものが好ましい。これらを満たすものとして、例えば酢酸ブチル、酢酸エチル等が挙げられる。
【0025】
<密着性向上剤>
チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、特にシリコン基板に対して高い密着性向上性能を有していることから、シリコン基板への密着性向上剤として用いることができる。チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を有効成分とする密着性向上剤は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアセチレンなどの二重結合を有する化合物等に配合することによって、高い密着性向上効果を発揮することができる。チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を有効成分とする密着性向上剤は、有効成分として樹脂に対し好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.1〜10質量%添加すると高い密着性を発揮することができる。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明の実施例について具体的に説明する。本実施例および比較例で用いた試薬は、次の通りである。
【0027】
<アルコキシシリル基を有する化合物:A成分>
(A−1)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン。その構造を下記式に示す。
【化8】

【0028】
(A−2)
3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン。その構造を下記式に示す。
【化9】

【0029】
(A−3)
3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン。その構造を下記式に示す。
【化10】

【0030】
<チオール化合物:B成分>
(B−1)
メチル-3-メルカプトプロピオネート(粘度1.5mPa・s)。その構造を下記式に示す。
【化11】

【0031】
(B−2)
2−エチルヘキシル−3メルカプトプロピオネート(粘度3.7 mPa・s)。その構造を下記式に示す。
【化12】

【0032】
(B−3)
メトキシブチル−3−メルカプトプロピオネート(粘度3.6 mPa・s)。その構造を下記式に示す。
【化13】

【0033】
(B−4)
ステアリル−3−メルカプトプロピオネート(常温固体)。その構造を下記式に示す。
【化14】

【0034】
(β−1)
比較例用として、β-メルカプトプロピオン酸(粘度8.4 mPa・s)。その構造を下記式に示す。
【化15】

【0035】
セパラブルの4つ口フラスコに温度計と還流管を備え、内部を窒素雰囲気にした。この4つ口フラスコに、表1に示す組成に従いA成分とB成分を仕込み、A成分とB成分を100重量部としたとき1重量部の触媒(1.8−ジアザビシクロ[5、4、0]ウンデカ−7−エン、和光純薬工業(株)製)を添加した後、80℃で6時間反応させ、実施例1〜6及び比較例1を得た。実施例1〜6及び比較例1における反応後の25℃における粘度も表1に示す。なお、粘土は東機産業(株)製のR型粘度計を用いて測定した。
【0036】
【表1】

【0037】
<赤外線吸収スペクトル分析(IR)>
得られた実施例1〜6及び比較例1について、下記条件にて赤外線吸収スペクトル分析を行った。その結果を図1〜7に示すと共に、代表的なIRピークを以下に示す。
機種;日本分光(株)製 FT/IR-600
セル;KBr上に展開、分解;4cm−1、積算回数;32回
【0038】
(実施例1)
3460cm−1:91%T、2947cm−1:25%T、2481cm−1:31%T、2360cm−1:95%T、1738cm−1:11%T、1439cm−1:39%T、1360cm−1:45%T、1194cm−1:15%T、1086cm−1:10%T、980cm−1:57%T、822cm−1:23%T、677cm−1:88%T
【0039】
(実施例2)
2958cm−1:48%T、2841cm−1:64%T、1736cm−1:38%T、1462cm−1:68%T、1387cm−1:79%T、1348cm−1:74%T、1194cm−1:48%T、1090cm−1:40%T、822cm−1:58%T
【0040】
(実施例3)
2941cm−1:61%T、2841cm−1:70%T、1736cm−1:36%T、1460cm−1:76%T、1354cm−1:76%T、1194cm−1:49%T、1086cm−1:36%T、976cm−1:86%T、820cm−1:62%T
【0041】
(実施例4)
2924cm−1:63%T、2852cm−1:74%T、1736cm−1:67%T、1458cm−1:88%T、1167cm−1:79%T、1090cm−1:71%T、820cm−1:85%T
【0042】
(実施例5)
2974cm−1:72%T、1738cm−1:58%T、1439cm−1:81%T、1390cm−1:83%T、1167cm−1:64%T、1078cm−1:55%T、958cm−1:74%T、791cm−1:79%T
【0043】
(実施例6)
2947cm−1:58%T、2841cm−1:63%T、1736cm−1:31%T、1439cm−1:75%T、1358cm−1:76%T、1194cm−1:39%T、1086cm−1:26%T、820cm−1:50%T
(比較例1)
2922cm−1:74%T、2852cm−1:80%T、1716cm−1:81%T、1541cm−1:90%T、1456cm−1:86%T、1036cm−1:83%T、812cm−1:92%T
【0044】
上記赤外線吸収スペクトル分析の結果からも明らかなように、C=Cに由来する1600〜1700cm−1のピークが観測されないことから、A−1、A−2およびA−3がそれぞれB−1〜B−4およびβ−1と反応していることがわかる。
【0045】
<核磁気共鳴スペクトル分析(NMR)>
また、実施例1〜6について、下記条件にて核磁気共鳴スペクトル分析を行った。その結果を図8〜13に示すと共に、各NMRスペクトルにおけるピークの帰属を下記に示す。なお、比較例1はNMR用の重溶剤に溶解しなかったため測定できなかった。
機種;日本ブルカー(株)製、400MHz−Advance400、
条件;積算回数16回
溶媒;重クロロホルム
【0046】
(実施例1)
【化16】


a:3.4〜3.6ppm、b:0.6〜0.7ppm、c:1.7〜1.8ppm、d:4.0〜4.2ppm、e、g、h、i:2.5〜2.8ppm、f:1.1〜1.3ppm、j:3.6〜3.7ppm
【0047】
(実施例2)
【化17】


a:3.4〜3.6ppm、b:0.6〜0.7ppm、c:1.7〜1.8ppm、d:4.0〜4.2ppm、e、g、h、i:2.6〜3.0ppm、f、l、m、n、p:1.2〜1.4ppm、j:4.0〜4.1ppm、k:1.7〜1.9ppm、o、q:0.8〜0.9ppm
【0048】
(実施例3)
【化18】


a:3.4〜3.6ppm、b:0.6〜0.7ppm、c、k、m:1.6〜1.9ppm、d:4.1〜4.2ppm、e、g、h、i:2.6〜2.8ppm、f:1.1〜1.3ppm、j:3.9〜4.2ppm、l:3.4〜3.5ppm、n:3.4〜3.5ppm
【0049】
(実施例4)
【化19】


a:3.4〜3.6ppm、b:0.6〜0.7ppm、c、k:1.6〜1.8ppm、d、j:4.0〜4.2ppm、e、g、h、i:2.6〜2.9ppm、f、l:1.1〜1.4ppm
【0050】
(実施例5)
【化20】


a:3.4〜3.6ppm、b:0.6〜0.7ppm、c:1.7〜1.8ppm、d:4.0〜4.2ppm、e、g、h、i:2.6〜2.8ppm、f:1.1〜1.3ppm、j:3.8〜4.2ppm、k:3.8〜4.2ppm
【0051】
(実施例6)
【化21】


a:3.4〜3.6ppm、b:0.6〜0.7ppm、c:1.7〜1.8ppm、d:4.0〜4.2ppm、e、f、g、h:2.6〜2.8ppm、i:3.5〜3.8ppm
【0052】
(比較例1)
【化22】

【0053】
図8〜13及び上記の結果より、CH=Cに由来する5.5〜6.5ppmのピークが観測されないことから、A−1、A−2およびA−3がそれぞれB−1〜B−4と反応していることがわかった。
【0054】
<密着性評価>
次に、上記実施例1〜6及び比較例1を用いて密着性を評価した。さらに、反応前の上記A−1のみを用いた場合、反応前の上記B−1のみを使用した場合、デシルトリメトキシシラン(信越シリコーン(株)製、C−1とする)を使用した場合、及び密着性向上剤未使用の場合についても、密着性を評価した。密着性の評価対象としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂〔東都化成(株)製、YDPN638〕を使用した。当該エポキシ樹脂98質量%に触媒〔イミダゾール型触媒:(株)アデカ製、EH−4344S〕を2質量%混合した混合物(E−1とする)へ、実施例1〜6や比較例1などを密着性向上剤として表2の配合量に従って配合した。当該組成物を単結晶シリコン基板〔(株)シリコンテクノロジー製、6inchベアシリコンウェーハN型〕にバーコーターで塗布し、150℃、1時間の条件で硬化させて樹脂成形物としての硬化膜を得た(試料1〜11)。このようにして得られた試料1〜11を温度121℃、相対湿度(RH)100%で8時間処理した後、JIS K5600−5−6に規定される塗膜の機械的性質−付着性(クロスカット法)試験法で評価を行った。これらの結果を表2に示す。なお、評価基準は次の通りである。
○:全く剥離が無い ×:少しでも剥離が発生している
【0055】
【表2】

【0056】
表2に示した結果より、実施例1〜6の密着性向上剤を使用した試料1〜6では全く剥離は見られず、密着性が良好であった。その一方、試料7は、比較例1の密着性向上剤がゲル化しておりE−1と相溶しなかった。試料8,9は、チオエーテル形成前の化合物を用いており、いずれも剥離が生じて密着性は不良であった。試料10は、密着性向上剤の分子構造中にチオエーテル基を持たないため剥離が生じて密着性が不良であった。試料11は密着性向上材が無添加のため剥離が生じ密着性は不良であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化1】


(式中のmは1または2である。Rは−CH−CHR−または−CR(CH)−で表される2価の基である。R4は水素原子またはメチル基である。Rはメチル基またはエチル基である。Rは炭素数が1〜18の炭化水素基、または炭素数1〜3のアルコキシ基により置換された炭素数が2〜5の炭化水素基である。)
【請求項2】
下記式2で表されるアルコキシシリル基含有化合物と下記式3で表されるチオール化合物とを反応させてなる、請求項1に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化2】


(式中のRはメチル基またはエチル基であり、R4は水素原子またはメチル基である。)
【化3】


(式中のmは1または2である。Rは炭素数が1〜18の炭化水素基または、炭素数1〜3のアルコキシ基により置換された炭素数が1〜5の炭化水素基である。)
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を有効成分とする密着性向上剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−46451(P2012−46451A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190619(P2010−190619)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】