説明

チオクト酸組成物及びその製造方法

【課題】安定性の高いチオクト酸組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(A)チオクト酸と(B)炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分とを混合してチオクト酸組成物を調製する。前記脂質成分(B)は、炭素数4〜14の脂肪酸単位を全脂肪酸単位中20重量%以上の割合で含有していてもよい。前記脂質成分(B)は、脂肪酸類、油脂、乳化剤などであってもよい。この組成物は、水に対する分散性を高めるため、さらに、炭素数15以上の脂肪酸単位を有する親水性乳化剤を含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品(医薬部外品も含む)、食品、サプリメント、ペット用飼料などに有用なチオクト酸組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チオクト酸(別名:α−リポ酸)は、従来から肝臓疾患などの医薬として注目されていた。また、2004年6月に食品用途としての使用が認められ、コエンザイムQ10やL−カルニチンなどとともに、ヒトや非ヒト動物に対する健康食品(ダイエット食品など)として注目されている。
【0003】
具体的に、チオクト酸は、極めて強い抗酸化活性を有するとともに、活性酸素の捕捉や金属をキレート化する能力などを有する反応性の高い化合物である。これらのチオクト酸の機能は、体内に摂取した場合、種々な薬効として発現するため、医薬品や健康食品として有用である。しかし、チオクト酸は、熱及び光に対して不安定であるため、遮光して低温で保存する必要がある。
【0004】
また、チオクト酸では、生理的機能を発揮する量は、症状にもよるが、平均体重が40〜70kgのヒトの場合、10〜500mg/日程度であり、犬や猫などのペットの場合、体重にもよるが、数mg/日程度と極めて微量である。このように、チオクト酸の使用量は微量であるため、秤量し難いという欠点を有している。従って、チオクト酸の使用形態としては、組成物の形態で使用されることが望まれている。
【0005】
一方、チオクト酸は、脂溶性の化合物であるため、水に溶解し難い物質であるだけでなく、薬製剤の素材や食品の様々な素材と組み合わせた組成物として製品化する場合、チオクト酸が不安定で製品化しにくい。すなわち、チオクト酸は、脂溶性加工食品では使用し易いものの、保存安定性が低下し、水溶性加工食品では使用し難いだけでなく、特に、他の原料との組合せなどにより保存安定性が低下する。例えば、チオクト酸は、L−アスコルビン酸などの有機酸の存在下では不安定であることが知られている。従って、チオクト酸は、水溶性組成物としての使用など、様々な加工食品への用途向けに安定な組成物の開発が求められている。
【0006】
例えば、特開平7−206674号公報(特許文献1)には、45〜99.9重量%の含有率でチオクト酸を含有する錠剤形の医薬品処方物において、使用作用物質の20〜100%が、100μmよりも大きい(例えば、100〜710μm程度)粒径を有する錠剤形のチオクト酸含有医薬品処方物が開示されている。この文献では、特定の粒径のチオクト酸を、セルロース誘導体などの結合剤とともに用いることにより、高い液体分を有するチオクト酸の錠剤への圧縮性を改良している。
【0007】
また、特開平6−16543号公報(特許文献2)には、チオクト酸、メスナまたはフルピルチンマレイン酸塩を含有するタブレット、顆粒またはペレットの形の医薬製剤において、作用物質含有率が45重量%より多い医薬製剤が開示されている。この文献では、大量の水及び結合剤(多糖類など)を用いて造粒することにより、錠剤へのプレス成形における割れや球冠の飛散を抑制している。
【0008】
さらに、特表2002−523435号公報(特許文献3)には、アセチルL−カルニチン又は薬理学上許容されるその塩、及びα−リポ酸を組み合わせて含む組成物が開示されている。この文献には、抗酸化力を有するチオクト酸と、アセチルL−カルニチンとを組み合わせると、心筋障害や糖尿病性神経障害などの予防や治療に極めて有効であると記載されている。さらに、この組成物が、経口投与可能な栄養補助食品であってもよい旨が記載されている。
【0009】
しかし、これらの組成物では、組成物中におけるチオクト酸の安定性を向上できない。
【特許文献1】特開平7−206674号公報(請求項1及び5、段落番号[0009]、実施例)
【特許文献2】特開平6−16543号公報(請求項1、段落番号[0013]、[0018]、実施例)
【特許文献3】特表2002−523435号公報(請求項1及び6、段落番号[0015])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、安定性の高いチオクト酸組成物及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、光や熱に対して長期間晒されても安定であるとともに、親水性溶媒に対して分散性に優れたチオクト酸組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分と組み合わせることにより、チオクト酸の安定性が向上できること、親水性乳化剤と組み合わせると、水性媒体に対する分散性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明のチオクト酸組成物は、(A)チオクト酸と、少なくとも(B)炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分とで構成されている。前記脂質成分(B)は、炭素数4〜14の脂肪酸単位を全脂肪酸単位中20重量%以上の割合で含有していてもよい。また、前記脂質成分(B)は、脂肪酸類、油脂及び乳化剤から選択された少なくとも一種であってもよい。本発明のチオクト酸組成物は、さらに、炭素数15以上の脂肪酸単位を有する親水性乳化剤を含んでいてもよい。本発明のチオクト酸組成物は、さらに、賦形剤を含有していてもよい。
【0014】
本発明には、(A)チオクト酸と、少なくとも(B)炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分とを混合するチオクト酸組成物の製造方法も含まれる。この方法において、(A)チオクト酸と、(B)炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分とを加熱して溶融混合した後、冷却固化してもよい。特に、80℃以下の温度で溶融混合した後、40℃以下の温度で冷却固化してもよい。
【0015】
本発明には、(A)チオクト酸と、少なくとも(B)炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分と、水とで構成された水性エマルジョンであって、炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する親水性乳化剤、炭素数15以上の脂肪酸単位を有する親水性乳化剤、タンパク質類及び多糖類から選択された少なくとも一種の親水性乳化剤を含んでいてもよい。
【0016】
また、本発明には、前記組成物を含有する食用組成物も含まれる。この組成物は、さらに、有効成分を含有していてもよい。この有効成分は、有機酸又はその塩、脂溶性又は水溶性ビタミン類、アミノ酸、ペプチド、コラーゲン、コラーゲンペプチド、コエンザイムQ10、L−カルニチン又はその塩、植物性ポリフェノール、ミネラル類、酵母類などであってもよい。本発明には、前記水性エマルジョンを含有する食用組成物も含まれる。
【0017】
さらに、本発明には、チオクト酸(A)と、炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分(B)とを組み合わせて、チオクト酸の安定性を向上する方法も含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、チオクト酸を、炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分と組み合わせるため、チオクト酸の安定性を向上でき、例えば、光や熱に長期間晒されても安定性を向上できる。さらに、親水性乳化剤と組み合わせることにより、水性溶媒に対する分散性も向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[チオクト酸組成物]
本発明のチオクト酸組成物は、(A)チオクト酸と、(B)炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分とで構成されている。
【0020】
(A)チオクト酸
チオクト酸(α−リポ酸)は、1,2−ジチオラン−3−吉草酸(1,2−Dithiolane−3−pentanoic acid又は1,2−Dithiolane−3−valeric acid)とも称され、組成C14、分子量206.32の化合物である。
【0021】
チオクト酸は光学活性物質であり、本発
明では、いずれの光学異性体(d,l又はR,S表記など)であってもよく、例えば、d体、l体、R体、S体の他、対掌体の等モル混合物であるラセミ体(dl又はRSラセミ体)であってもよい。チオクト酸の融点は、dl体で60〜61℃、d体で46〜48℃程度である。
【0022】
このようなチオクト酸は、例えば、立山化成(株)、浜理薬品工業(株)、ビーエイチエヌ(株)などより、市販品が入手可能である。
【0023】
チオクト酸には、生理学的又は薬理学的に許容される塩が含まれていてもよい。但し、親水性又は水溶性の高い塩の割合が多くなると、本発明の意義は小さくなる。生理学的又は薬理学的に許容される塩は、例えば、無機塩基(ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムに対応する金属化合物など)、有機塩基(トリメチルアミン、トリエチルアミン、t−ブチルアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、アルギニンなど)との塩であってもよい。これらの塩形成化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの塩は、通常の塩形成反応によって得ることができる。
【0024】
(B)脂質成分
脂質成分(B)は、炭素数4〜14の脂肪酸単位(C4−14脂肪酸単位)を有している。本発明では、このようなC4−14脂肪酸単位を含む脂質を用いることにより、チオクト酸(A)の安定性を向上できる。なお、本願明細書では、炭素数4〜8程度の低級脂肪酸も脂質成分の概念に含める。
【0025】
4−14脂肪酸単位に対応する脂肪酸としては、例えば、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸などの飽和脂肪酸、リンデル酸、マッコウ酸、ミリストレイン酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。これらの脂肪酸は、単独で又は二種以上組み合わせて脂肪酸単位を構成してもよい。これらの脂肪酸のうち、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸などの飽和C4−14脂肪酸が好ましく、さらに飽和C6−14脂肪酸(特に、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸などの飽和C8−12脂肪酸)が特に好ましい。
【0026】
本発明では、脂質成分を構成する全脂肪酸単位中20重量%以上(例えば、20〜100重量%)の割合で、C4−14脂肪酸単位を含有するのが好ましい。C4−14脂肪酸単位の割合は、全脂肪酸単位中、好ましくは40〜99.9重量%)、さらに好ましくは60〜99.5重量%(特に80〜99重量%)程度である。C4−14脂肪酸単位を全脂肪酸単位中20重量%以上含む脂質成分を用いると、チオクト酸の安定性が向上し、用途に応じて加工したり、光や熱に長期間晒してもチオクト酸の分解が抑制される。
【0027】
このような脂質成分には、脂肪酸類、油脂、乳化剤が含まれる。これらの脂質成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。本発明では、脂質成分がいずれの種類であっても、C4−14脂肪酸単位が全脂肪酸単位中20重量%以上含まれていることが重要であり、脂質成分は、例えば、当該成分がC4−14脂肪酸単位を20重量%以上含む成分であってもよく、他の脂質成分(脂肪酸類、油脂や乳化剤)に対して、C4−14脂肪酸単位を有する成分を配合することにより、C4−14脂肪酸単位の割合を20重量%以上に調整した脂質成分であってもよい。
【0028】
4−14脂肪酸単位を有する脂肪酸類としては、例えば、遊離脂肪酸(前記C4−14脂肪酸単位で例示された脂肪酸)、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどが挙げられる。これらの脂肪酸類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
これらの脂肪酸類のうち、脂肪酸エステルが好ましい。脂肪酸エステルとしては、脂肪酸とアルコール類とのエステルが挙げられる。アルコール類としては、一価乃至多価アルコールが挙げられるが、多価アルコール、特にグリセロールが好ましい。脂肪酸とグリセロールとのエステルとしては、モノ乃至トリエステルが挙げられるが、なかでも、トリグリセライドと称されるトリエステルが好ましい。本発明では、トリグリセライドを構成する脂肪酸単位のうち、少なくとも1個がC4−14脂肪酸単位であればよいが、好ましくはC4−14脂肪酸単位が2個以上(特に3個)である。なお、トリグリセライドは、一般的に油脂と称され、後述する油脂(天然物由来の油脂)にも含まれるが、本発明では、合成や精製(分離など)によって調製されたC4−14脂肪酸単位を有するトリグリセライドは、脂肪酸エステルに分類する。
【0030】
油脂としては、植物性油脂(植物油など)、動物性油脂(動物脂肪、魚油など)などのうち、C4−14脂肪酸単位を有する油脂であればよい。高濃度(特に20重量%以上)でC4−14脂肪酸単位を有する油脂としては、例えば、乳脂(特に、牛やめん羊などの反芻動物の乳脂)、ヤシ油、パーム核油などが挙げられる。これらの油脂は、水添油脂、C4−14飽和脂肪酸を分留した油脂などの分別油脂、エステル交換油脂などであってもよい。これらの油脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
乳化剤としては、C4−14脂肪酸単位を有する乳化剤であれば特に限定されないが、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられ、必要によりエチレンオキサイドが付加したポリオキシエチレン脂肪酸エステルであってもよい。これらの乳化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。組成物に乳化特性を付与する場合には、脂質成分(B)を、少なくともこれらの乳化剤で構成してもよい。
【0032】
ショ糖脂肪酸エステルには、ショ糖脂肪酸モノ乃至オクタエステルが含まれる。ショ糖脂肪酸エステルは、通常、エステル化度の異なる混合物であり、ショ糖ラウリン酸エステルが市販されている。
【0033】
グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリン脂肪酸エステルの他、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライドも含まれる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、通常、テトラ、ヘキサ、デカグリセリン脂肪酸エステルが汎用される。このような(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルには、モノ乃至ポリエステルが含まれるが、通常、モノ又はジエステルが乳化機能を有しており、好ましくはモノエステルである。グリセリン脂肪酸モノエステルとしては、例えば、グリセリンモノカプリル酸エステル、グリセリンモノカプリン酸エステル、グリセリンモノラウリン酸エステルなどが市販されている。有機酸モノグリセライドは、有機酸モノエステル単位を含む脂肪酸グリセライドである。有機酸としては、例えば、酢酸などのC1−3脂肪族カルボン酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸などのC3−6オキシカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸などのC3−6ジカルボン酸などが挙げられる。有機酸モノグリセライドとしては、例えば、前記有機酸単位の他に、1個又は2個のC4−14脂肪酸単位を有するジグリセライド又はトリグリセライドが挙げられる。
【0034】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノエステル、セスキエステル、トリエステルなどのエステルが含まれ、C4−14脂肪酸単位を有するソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノヤシ油脂肪酸エステルなどが市販されている。
【0035】
プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、プロピレングリコールラウリン酸エステルなどのモノエステル体などが挙げられる。
【0036】
これらの乳化剤は、親油性、親水性のいずれでもよいが、組成物の水分散性を向上させる点からは、親水性乳化剤を用いるのが好ましい。親水性乳化剤は、HLB値が高い乳化剤であり、一般的にHLB6〜19、好ましくは8〜19程度の乳化剤である。親油性乳化剤のHLBは1〜6(例えば、2〜5)程度である。なお、親水性乳化剤の指標となるHLBの範囲における下限値は、乳化剤の種類に応じて変動する。
【0037】
なお、前述の如く、脂質成分には、C4−14脂肪酸単位(例えば、全脂肪酸単位中20重量%以上)を含有する限りにおいて、炭素数15以上の脂肪酸単位を有する脂肪酸類、C4−14脂肪酸単位の割合が20重量%未満である油脂、リン脂質などの第2の脂質成分が含まれていてもよい。これらの脂質成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの第2の脂質成分は、C4−14脂肪酸単位の希釈剤、濃度調整剤として利用できる。
【0038】
炭素数15以上の脂肪酸単位としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アラキジン酸などのC15−24飽和脂肪酸単位、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などのC15−24不飽和脂肪酸などが挙げられる。これらの脂肪酸単位は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの脂肪酸単位のうち、ステアリン酸、ベヘン酸などのC16−22飽和脂肪酸単位、オレイン酸などのC16−22不飽和脂肪酸単位などが汎用される。
【0039】
炭素数15以上の脂肪酸単位を有する脂肪酸類としては、前記C4−14脂肪酸単位を有する脂肪酸類及び乳化剤に対応する脂肪酸類及び親油性乳化剤が挙げられる。
【0040】
4−14脂肪酸単位の割合が20重量%未満である油脂としては、例えば、植物油(綿実油、あまに油、ひまし油、脱水ひまし油、サフラワー油(紅花油)、大豆油、米油、米ぬか油、トウモロコシ油、ゴマ油、向日葵油、月見草油、アサミ油、菜種油、落花生油、やし油、パーム油、パーム核油、カポック油、扁桃油、オリーブ油、トール油、えの油、きり油など)、動物脂肪(牛脂、豚脂(ラード)、羊脂、鶏脂などの体脂や、豚乳、兎乳などの乳脂など)、魚油(イワシ油、サバ油など)などが挙げられる。これらの油脂も、水添油脂、分別油脂、エステル交換油脂などであってもよい。
【0041】
リン脂質には、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質が含まれる。グリセロリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン(ケファリン)などが挙げられる。スフィンゴリン脂質としては、例えば、スフィンゴエミリン、スフィンゴエタノールアミンが挙げられる。また、これらのリン脂質のホスホリパーゼ分解物も含まれる。これらのリン脂質のうち、グリセロリン脂質、特に、大豆レシチンや卵黄レシチンなどのレシチンが好ましい。
【0042】
組成物中におけるチオクト酸の割合は0.1〜99重量%程度の範囲から選択でき、通常、0.5〜95重量%(例えば、1〜90重量%)、好ましくは3〜80重量%、さらに好ましくは5〜70重量%(特に10〜60重量%)程度である。
【0043】
チオクト酸(A)と脂質成分(B)との割合(重量比)は、通常、前者/後者=95/5〜1/99(例えば、90/10〜3/97)程度であり、好ましくは80/20〜5/95(例えば、70/30〜10/90)、さらに好ましくは60/40〜15/85(特に50/50〜20/80)程度である。
【0044】
(炭素数15以上の脂肪酸単位を有する乳化剤)
本発明のチオクト酸組成物は、さらに、炭素数15以上の脂肪酸単位を有する乳化剤、特に、水に対する分散性を向上できる点から、前記HLB値を有する親水性乳化剤を含んでいてもよい。このような親水性乳化剤は、前記脂質成分(B)が親水性乳化剤(C4−14脂肪酸単位を有する親水性乳化剤)を含んでいない場合に、チオクト酸組成物の水分散性を向上させるのに有用である。さらに、この乳化剤の融点は、例えば、100℃以下であり、好ましくは20〜90℃、さらに好ましくは30〜80℃(特に40〜75℃)程度である。例えば、市販の親水性乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなど)は、融点25〜70℃程度である。
【0045】
炭素数15以上の脂肪酸単位を有する乳化剤としては、例えば、ショ糖モノ乃至ヘキサC15−24飽和又は不飽和脂肪酸エステル(ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖トリステアリン酸エステル、ショ糖テトラステアリン酸エステル、ショ糖ヘキサステアリン酸エステルなど)、グリセリンC15−24飽和又は不飽和脂肪酸エステル(グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンジステアリン酸エステル、グリセリントリステアリン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステルなど)、ポリグリセリンC15−24飽和又は不飽和脂肪酸エステル(ジグリセリンモノ乃至テトラステアリン酸エステル、トリグリセリンモノ乃至ヘキサステアリン酸エステルなど)、ソルビタンC15−24飽和又は不飽和脂肪酸エステル(ソルビタンモノパルミチン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンジステアリン酸エステル、ソルビタントリステアリン酸エステル、ソルビタンテトラステアリン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ソルビタントリオレイン酸エステル、ソルビタンテトラオレイン酸エステルなど)、有機酸モノグリセライド(グリセリン酢酸ラウリン酸エステル、グリセリン酢酸ステアリン酸エステル、グリセリンクエン酸ステアリン酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸ステアリン酸エステル、グリセリンコハク酸ステアリン酸エステルなど)、プロピレングリコールC15−24飽和又は不飽和脂肪酸エステル(プロピレングリコールモノパルミチン酸エステル、プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノベヘン酸エステル、プロピレングリコールモノオレイン酸エステルなど)などが挙げられ、エチレンオキサイドが付加したポリオキシエチレン脂肪酸エステル系乳化剤であってもよい。これらの乳化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0046】
乳化剤(特に親水性乳化剤)を用いた場合、乳化剤を除く脂質成分と、乳化剤(炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する乳化剤と、炭素数15以上の脂肪酸単位を有する乳化剤との合計)との割合(重量比)は、脂質成分/乳化剤=100/0〜0/100の範囲から選択でき、例えば、100/0〜1/99、好ましくは90/10〜3/97、さらに好ましくは80/20〜5/95(特に70/30〜10/90)程度であってもよい。
【0047】
(賦形剤)
本発明のチオクト酸組成物は、さらに、賦形剤を含んでいてもよい。賦形剤としては、例えば、でんぷん類(水可溶性でんぷん、デキストリン、シクロデキストリンなど)、結晶セルロース類(結晶セルロースなど)、糖類(乳糖、ブドウ糖、砂糖、還元麦芽糖、水飴、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、マルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖など)、糖アルコール類(ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトールなど)などが挙げられる。これらの賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの賦形剤のうち、デキストリンなどのでんぷん類などが好ましい。
【0048】
賦形剤の割合は、チオクト酸(A)100重量部に対して、例えば、10〜1000重量部、好ましくは50〜500重量部、さらに好ましくは100〜300重量部程度である。
【0049】
(その他の成分)
チオクト酸組成物は、さらに、慣用の添加剤、例えば、有効成分(後述する生理活性成分又は薬理活性成分など)、結合剤、結着剤、安定剤(酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤など)、着色料、抽出剤、粘着防止剤、発色剤、被膜剤、漂白剤、酵素、防虫剤、膨張剤、離型剤、緩衝剤、防腐剤、抗菌剤、金属イオン封鎖剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0050】
チオクト酸組成物の形態は、特に限定されず、室温(15〜25℃)で、固形状、半固形状、液状のいずれであってもよい。
【0051】
[チオクト酸組成物の製造方法]
チオクト酸組成物は、水溶性加工食品に利用し易くしたり、チオクト酸特有の刺激臭を和らげるために、水分散性を有する組成物にするのが好ましい。本発明では、炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分(B)自体が乳化特性によって水分散性を有する場合だけでなく、炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分(B)自体が水分散性を有しない場合であっても、親水性乳化剤を混合(溶融混合)することにより、安定性が高く、かつチオクト酸の刺激臭が抑制された水分散性組成物を得ることができる。このような水分散性組成物は、水を蒸発させる熱エネルギーの無駄を省き、かつ経済的に得ることができる。
【0052】
すなわち、本発明のチオクト酸組成物は、チオクト酸(A)と炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分(B)と(必要に応じて他の添加剤と)を混合(溶融混合)し、溶解することにより得られる。溶融温度は、脂質成分(B)の融点に応じて適宜選択できるが、チオクト酸と脂質成分とを充分に混合又は混練できる温度であれば、特に限定されないが、混練性及びチオクト酸の安定性の点から、例えば、チオクト酸(特にチオクト酸、脂質成分、乳化剤)の融点に近く、可能な限り低温で溶融するのが好ましい。具体的に、溶融温度は、例えば、80℃以下(例えば、30〜80℃)であり、好ましくは35〜75℃、さらに好ましくは40〜70℃程度であり、混合及び混練を充分に行う点から、例えば、50〜80℃、好ましくは60〜80℃、さらに好ましくは65〜75℃(特に68〜75℃)程度で加熱してもよい。
【0053】
さらに、チオクト酸の安定性を向上させる点から、温度だけでなく、可能な限り遮光された条件下で混合又は溶融混合するのが好ましい。また、雰囲気については、大気中であってもよく、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下であってもよい。
【0054】
混合又は混練方法は、特に限定されず、攪拌機やミキサーなどの混合機を使用してもよいが、通常、溶融状態において、攪拌機などを用いて攪拌すればよい。添加順序は、特に限定されず、例えば、ジャケット付攪拌装置に、一括して各成分を添加してもよく、順次各成分を添加してもよい。例えば、脂肪酸類や油脂などの脂質成分と、融点25〜70℃程度の親水性乳化剤とを用いる場合、予め、前記脂質成分及び/又は前記親水性乳化剤とチオクト酸とを溶融混合して組成物を調製した後、前記親水性乳化剤を装置内で蒸気等の手段で加温し融点近くで融解した溶液に、前記組成物を加えて練合してもよい。親水性乳化剤を用いた系では、脂肪酸類や油脂などの脂質成分とチオクト酸とが充分に乳化されているのが好ましく、例えば、脂質成分において、炭素数4〜8程度の低級脂肪酸単位を有する脂質(綿実油などの液状油脂)の割合が多いと、乳化状態が低下し、クリーミングなどを発生する場合があるため、前記液状油脂の割合は少ないのが好ましい。
【0055】
得られた混合又は混練物は、通常、冷却固化される。冷却温度は、チオクト酸を含む組成物の融点未満の温度であればよく、例えば、40℃以下(例えば、0〜40℃)、好ましくは5〜35℃、さらに好ましくは10〜35℃程度である。冷却方法も特に限定されず、室温に放置してもよく、冷媒(水道水など)を用いて冷却してもよい。冷却固化工程において、前記液状油脂の割合が多い場合は、軟質な固化物となり好ましくないため、前記液状油脂の割合は少ないのが好ましい。固化物は、粗砕又は粉砕した後、整粒し、粉末や顆粒を調製してもよい。
【0056】
親水性乳化剤を含む固化物は、チオクト酸及び脂質成分を含有するにも拘わらず、高い水分散性を有している。特に、本発明の方法では、高温での加熱を伴う従来の方法(例えば、スプレードライなどで乳化物を粉末化する方法)に比べて、熱の影響が少なく、安定な水分散性製剤を得ることができる。
【0057】
なお、前記攪拌装置などにおける容器は、チオクト酸の安定性の点から、プラスチック製容器よりも、ステンレス鋼などの金属製容器が好ましい。
【0058】
[水性エマルジョン]
本発明の水性エマルジョンは、前記チオクト酸(A)と、前記炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分(B)と、水とで構成され、少なくとも親水性乳化剤を含んでいる。この親水性乳化剤は、炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する親水性乳化剤、炭素数15以上の脂肪酸単位を有する親水性乳化剤、タンパク質類、及び多糖類から選択された少なくとも一種が使用される。なお、脂質成分(B)が炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する親水性乳化剤であるとき、炭素数15以上の脂肪酸単位を有する親水性乳化剤は必ずしも必要ではない。
【0059】
親水性乳化剤は、脂質成分(B)としての親水性乳化剤(前記チオクト酸組成物の項で例示された親水性乳化剤)であってもよいが、タンパク質類、多糖類などで構成された親水性乳化剤であってもよい。これらの親水性乳化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0060】
タンパク質類としては、例えば、ゼラチン、コラーゲン、コラーゲンペプチドなどが挙げられる。これらのタンパク質類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0061】
多糖類としては、例えば、天然ガム(アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、トラガントガム、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、カラギーナン、プルラン、ジエランガム、アルギン酸など)、合成糊料(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールなど)などが挙げられる。これらの多糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0062】
これらの親水性乳化剤のうち、炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する親水性乳化剤、炭素数15以上の脂肪酸単位を有する親水性乳化剤、ゼラチンなどのタンパク質類、アラビアガムなどの天然ガム類が好ましい。
【0063】
エマルジョン中における親水性乳化剤の割合は、例えば、1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%(特に10〜20重量%)程度である。
【0064】
水性エマルジョンを構成する溶媒としては、水、低級アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノールなど)などの親水性溶媒、又はこれらの混合溶媒などが挙げられるが、通常、水、又は水と親水性溶媒との混合溶媒(特に水)が使用される。
【0065】
水性エマルジョン中において、チオクト酸の割合は、例えば、エマルジョン中1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%程度である。
【0066】
水性エマルジョンにも、賦形剤が含まれていてもよい。賦形剤としては、チオクト酸組成物の項で例示された賦形剤を使用できる。これらの賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。特に、水性エマルジョンにおいて、これらの賦形剤は、エマルジョン中の分散性を向上できる場合があり、乳化安定剤として用いることができる。これらの賦形剤のうち、デキストリンなどのでんぷん類などが好ましい。
【0067】
賦形剤の割合は、チオクト酸(A)100重量部に対して、例えば、10〜1000重量部、好ましくは50〜500重量部、さらに好ましくは100〜300重量部程度である。
【0068】
水性エマルジョンは、さらに、チオクト酸組成物の項で例示された慣用の添加剤を含んでいてもよい。このような水性エマルジョンの形態は、飲料などの水性加工食品などに対して添加するのに有効である。
【0069】
[水性エマルジョンの製造方法]
水性エマルジョンの製造方法は、チオクト酸が水性溶媒(特に水)中に分散できれば特に限定されないが、乳化安定性を向上させる点から、組成物の粒径やエマルジョンの粘性などを制御できる製造方法が好ましい。
【0070】
組成物の粒径やエマルジョンの粘性を制御する方法としては、加圧下で乳化する方法が好ましい。加圧下での乳化方法において、加圧条件としては、10〜275MPa程度の範囲から選択できる。具体的には、加圧下での乳化方法としては、従来の切断力を伴う強制攪拌による乳化方法、例えば、10〜50MPa(特に10〜30MPa)程度での加圧乳化法[例えば、TKホモミキサー(日本特殊機化化工(株))、マントンガウリン(マントンガウリン社)、ラニーホモジナイザーなどを用いた乳化方法]であってもよいが、組成物の粒径を1μm以下(例えば、10nm〜1μm、好ましくは30〜800nm程度)として、分散性を大きく向上できる点から、超高圧乳化法が好ましい。超高圧乳化法としては、超高圧ホモジナイザー(例えば、みずほ工業(株)製、マイクロフルイダイザーM−140Kなど)を用いて、例えば、21〜275MPa、好ましくは50〜275MPa、さらに好ましくは100〜250MPa程度の圧力下で超高圧乳化する方法などが挙げられる。さらに、加圧乳化法と超高圧乳化法とを組み合わせてもよく、例えば、加圧乳化法により予備乳化した後に、超高圧乳化法により乳化してもよい。
【0071】
加圧乳化法及び超高圧乳化法のいずれにおいても、前述の親水性乳化剤や賦形剤(乳化安定剤)を用いるのが好ましい。例えば、親水性乳化剤や賦形剤の割合は、組成物の項で記載した前記範囲から選択できるが、種類に応じて、エマルジョン(乳化液)の粘度がゼリー状又は硬いペースト状で流動性が低い状態とならずに、液状又は柔らかなペースト状となるように選択するのが好ましい。例えば、親水性乳化剤として、天然多糖類を用いる場合であっても、アラビアガムは水溶液中に20〜30重量%程度含まれていても高い流動性を保持できるが、グアーガムは水溶液中に5〜10重量%含まれていると流動性が低下する傾向がある。
【0072】
このようにして得られた水性エマルジョンは、慣用の方法により造粒してもよい。造粒方法としては、低温での造粒法、例えば、フリーズドライ法、噴霧乾燥(スプレードライ)造粒法などが採用でき、凍結又は噴霧乾燥した後、乾燥物は解砕又は破砕してもよい。なお、スプレードライ法などのように、加熱を伴う造粒方法の場合は、多少のチオクト酸の熱損傷を考慮して仕込み量を調整して、粉末化又は顆粒化するのが好ましい。
【0073】
特に、親水性乳化剤として、タンパク質類(特にゼラチン)を用いる場合、チオクト酸及び脂質成分を、タンパク質類を含む水溶液中で乳化させた後、40℃以下の温度で造粒(冷却造粒)する方法、例えば、冷却条件下、回転する円板上に乳化液を滴下し、乳化液滴を冷却固化(凍結固化)して造粒し、凍結乾燥することにより製造してもよい。この方法によれば、組成物を粒状タンパク質(ゼラチンビーズ、特に球状ゼラチン)として得ることができる。具体的に、タンパク質を溶解させるために、水溶液を加熱する温度は、例えば、40〜100℃、好ましくは50〜95℃、さらに好ましくは60〜95℃程度である。水溶液中のタンパク質の濃度は、例えば、溶液中1〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは10〜50重量%程度である。
【0074】
冷却造粒法(気相造粒法)において、加熱溶解されたタンパク質水溶液中に、チオクト酸及び脂質成分を添加して乳化させる方法は特に制限されず、チオクト酸を乳化させる温度は、例えば、50〜80℃、好ましくは60〜80℃、さらに好ましくは65〜75℃(特に68〜75℃)程度である。乳化方法としては、例えば、チオクト酸を添加しながら、激しく切断力を伴う強制攪拌で乳化してもよく、例えば、羽根付攪拌機を用いて100〜30,000rpm(特に5000〜20,000rpm)程度で1〜60分間(特に3〜30分間)程度攪拌してもよい。チオクト酸の割合は、タンパク質100重量部に対して、例えば、1〜80重量部、好ましくは10〜50重量部程度である。さらに、チオクト酸とタンパク質とを直接的に混合する場合、水分散性を更に高めるため、乳化時に賦形剤を加えるのが好ましい。
【0075】
[食用組成物]
本発明の食用組成物は、前記チオクト酸組成物又は水性エマルジョン(水性エマルジョンの造粒物も含む)を含有している。食用組成物には、医薬品、食品、非ヒト動物用飼料(犬、猫、鳥などのペット、牛、豚、鶏などの家畜、マグロ、ウナギなどの養殖魚、金魚、熱帯魚などの鑑賞魚用飼料など)などの用途に使用される組成物が含まれる。特に、チオクト酸を含む組成物は、ダイエット食品としての効能を有しているが、近年、ヒト同様、愛玩用のペット(猫、犬など)も栄養過多で運動不足のため肥満が目立ち、健康状態が低下する状況が増加している。また、チオクト酸は抗酸化機能を有しているため、油性食品などの酸化を防止するために利用することもできる。従って、これらの用途のうち、チオクト酸の効能(ダイエット促進機能、抗酸化機能など)を容易かつ充分に発揮できる点から、食品、ペット用飼料などの食用組成物として使用するのが好ましい。
【0076】
本発明の食用組成物は、経口投与(摂取)に適した形態であれば、特に限定されず、固形製剤(又はサプリメント)や半固形製剤(ゲル剤など)、液剤などの健康食品(サプリメント)としての形態であってもよく、既存の食品やペット用飼料に含有された形態であってもよい。特に、本発明の食用組成物は、抗酸化剤(酸化還元剤)として、ダイエット食品、美容補助食品、美白補助食品などの健康食品に適用してもよく、解毒剤、血中グルコース濃度低下剤、金属キレート剤などの添加剤として使用してもよい。
【0077】
固形製剤としては、例えば、細粒剤、顆粒剤、錠剤、散剤、丸剤、カプセル剤、ドライシロップ剤などが挙げられる。固形製剤の平均粒径は、例えば、0.01〜30mm、好ましくは0.05〜20mm、さらに好ましくは0.1〜10mm程度である。
【0078】
液剤としては、溶液剤、懸濁剤、分散剤などの水性又は油性の液剤が挙げられる。例えば、本発明のチオクト酸組成物は脂質成分を含有しているため、チオクト酸組成物を液状油脂などに溶解させた油性液剤としてもよく、また、前記水性エマルジョンをそのまま液剤として使用してもよい。
【0079】
さらに、食品としては、例えば、飲料(例えば、清涼飲料水、アルコール飲料など)、粉末飲料(例えば、ココア、コーヒーなど)、菓子類(例えば、チョコレート、スナック菓子、和菓子、洋菓子など)、パン類(例えば、食パン、菓子パンなど)、農水産物の瓶詰・缶詰類(例えば、果実、野菜、魚類、牛肉又は豚肉類などの瓶詰又は缶詰など)、畜肉食品(例えば、牛肉、豚肉、鶏肉などの畜肉加工食品など)、乳製品(牛乳、チーズ、バター、ヨーグルトなど)、食用油脂類(例えば、サラダ油、ごま油、オリーブ油、菜種油、バター、マーガリンなど)、調味料類(例えば、醤油、ソース、マヨネーズ、ドレッシング、みそなど)などの各種食品が挙げられる。本発明では、これらの食品に、チオクト酸組成物を添加することができる。本発明のチオクト酸組成物は、脂質成分を含有するため、油性食品には、そのまま混合して使用できる。一方、本発明のチオクト酸組成物が水性エマルジョンの場合や、親水性乳化剤を含有する組成物の場合には、飲料などの水性食品に容易に混合して使用できる。
【0080】
ペット用飼料としては、例えば、ドッグフード、キャットフードなどが挙げられる。
【0081】
これらの食品や飼料中におけるチオクト酸組成物又は水性エマルジョンの割合は、例えば、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、0.5〜20重量%(特に1〜10重量%)程度である。
【0082】
いずれの食用組成物においても、人体(例えば、体重40〜70kg程度)に使用する場合には、チオクト酸の摂取量が、10〜500mg/日となるように製品設計するのが好ましい。
【0083】
このような食用組成物(特に食品又は健康食品)は、チオクト酸以外にも、さらに、生理学的許容量の範囲内で、有効成分(生理活性成分又は薬理活性成分)を含有していてもよい。有効成分としては、例えば、有機酸又はその塩[例えば、L−アスコルビン酸、クエン酸、りんご酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸又はこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カルシウム塩)など)、アミノ酸又はその塩[例えば、グリシン、L−リジン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−シスチン、L−メチオニン、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸、又はこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩など)など]、ペプチド又はその塩[例えば、L−アルギニンL−グルタミン酸、L−リジングルタメート、豚、牛、鶏など由来のコラーゲン及びそのコラーゲンペプチド等のペプチド類、コエンザイムQ10、L−カルニチン又は有機酸塩(フマル酸塩、酒石酸塩など)など]、グリコサミノグリカン類(コンドロイチン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸など)、ビタミン類[ビタミンA、β−カロテン、ビタミンE、ビタミンB又はこれらの無機酸塩(塩酸塩、硝酸塩など)、ビタミンB又はその酪酸エステル(ナトリウム)やリン酸エステル(ナトリウウム)、ビタミンB、ナイアシン、ニコチン酸アミド、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸又はその塩(カルシウム塩)など]、ポリフェノール類(茶カテキンや大豆イソフラボンなど)、セラミド類(小麦、米、大豆セラミドなど)、植物体粉末又はエキス(ガルシニア粉末及びそのエキス、ギムネマ粉末及びそのエキス、センナ茎粉末及びそのエキス、キダチアロエ粉末及びそのエキスなど)、多糖類(サルノコシカケなどのきのこ由来グルカンなど)、グルコサミン類(キチン、キトサンなど)、ミネラル類(カルシウム、鉄、食塩など)、酵母類(ビール酵母など)などが挙げられる。これらの有効成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの有効成分のうち、有機酸又はその塩、脂溶性又は水溶性ビタミン類、アミノ酸、ペプチド、コラーゲン、コラーゲンペプチド、コエンザイムQ10、L−カルニチン又はその塩、植物性ポリフェノール、ミネラル類、酵母類などが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のチオクト酸組成物は、抗酸化性能などの生理活性を有する物質であり、安定性が高く、油性及び水性のいずれの組成物としても使用できるため、医薬(部外)品、食品、ペット用飼料などに広く利用でき、特に、固形製剤又は液剤などのサプリメント、各種健康食品として有効に利用できる。
【実施例】
【0085】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例で用いた成分の略号、チオクト酸残存率の測定方法、C4−14脂肪酸含有量の測定方法、乳化状態の評価方法を以下に示す。また、以下の例において、「%」及び「部」は、特にことわりのない限り、それぞれ、「重量%」及び「重量部」を示す。
【0086】
[成分の略号]
MCT:中鎖脂肪酸トリグリセライド(商品名「サンファットMCT−7」、太陽化学(株)製)
大豆油:精製大豆油(植田製油(株)製)
綿実油:精製綿実油(植田製油(株)製)
パーム油:精製パーム油(植田製油(株)製)
ヤシ油:精製ヤシ油(植田製油(株)製)
乳脂:乳脂(雪印乳業(株)製)
乳化剤:グリセリン脂肪酸エステル(ラウリン酸を主脂肪酸とするエステル)(商品名「ポエムM−300」、理研ビタミン(株)製)
チオクト酸:商品名「α―リポ酸」、立山化学(株)製。
【0087】
[脂質成分における構成脂肪酸中のC4−14脂肪酸含有量]
脂質成分0.3gを10mlの遠沈管に取り、試薬特級n−ヘキサン6mlを加え、溶解させた。次いで、2N−水酸化カリウム溶液0.3mlを加え、栓をして1分間よく振り混ぜた後、遠心分離機を用いて回転数4,000rpmで3分間遠心分離を行い、上澄み液を得た。この上澄み液2mlに蒸留水8mlを加え、再度、遠心分離機を用いて回転数4,000rpmで3分間遠心分離を行い、その上澄み液を濾紙[濾紙(東洋濾紙No.5B)上に無水硫酸ナトリウムを載置した濾紙]で濾過し、濾液を試薬特級n−ヘキサンで適宜希釈して測定に供した。この検体について、C4−14脂肪酸含有量を、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、GC−17A)を用いて、以下の条件で測定した。
【0088】
カラム:キャピラリーカラム
液相 DB−WAX
サイズ 0.25mm×30m
フィルム 0.25μm
検出温度:250℃
INJ温度:250℃
キャリアーガス:Heガス
メイクアップガス:Nガス
カラム温度条件 140→230℃。
【0089】
[チオクト酸含有量]
チオクト酸組成物100mgを精密に秤量し、希リン酸でpH3.5〜3.7に調整した0.005モルリン酸緩衝液と、アセトニトリルとの混液(前者/後者=1:1(容量比))に溶解し100mlとして検液として、HPLC((株)日立製作所製、HPLC H1100型)を用いて、以下の条件で、組成物中のチオクト酸含有量(%)を測定した。なお、チオクト酸(試薬99%)を検体の溶解に用いた溶液で溶解の標準液として使用し、検液及び標準液20μLを用いて測定器に供し、両者の比[(試料溶液のチオクト酸のピーク面積)/(標準溶液のチオクト酸のピーク面積)×100]からチオクト酸含量(%)を測定した。
【0090】
検出波長:215nm
流速:1.2ml/分
移動相:希リン酸でpH3〜3.1に調整したメタノール/アセトニトリル/0.005モルリン酸緩衝液(1160/180/920(容積比))
カラム温度:35℃
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル250mm×4.6mm。
【0091】
[チオクト酸残存率]
チオクト酸組成物約10〜30gを白色ガラス容器(60ml容量)に密閉し常温で30日保存しチオクト酸量を測定した。保存直後のチオクト酸含量を100とし保存後のチオクト酸量を測定し、以下の式でチオクト酸残存率(%)を測定した。なお、実施例23及び24では、アルミ箔をラミネートした軟質フィルム袋を用いて90日間保存した。
【0092】
チオクト酸残存率=保存後のチオクト酸含量/保存直後のチオクト酸含量×100。
【0093】
[乳化性]
組成物の乳化性は、20ml試験管に蒸留水10mlを入れた後、検体1gをその中に加え、60℃で加温し激しく攪拌し、乳濁状態を目視で観察した。その結果、乳濁状態が良好のものを「+」とし、乳濁状態が不良なものを「−」と評価した。
【0094】
実施例1〜9及び比較例1〜3
表1に示す成分を、表1に示す割合で配合し、70℃で加熱溶融して組成物(脂質成分)を得た。この組成物に、チオクト酸含有量が表1に示す割合となるように、チオクト酸を70℃で加熱溶融した。このチオクト酸組成物について約10gを経日的に観察してチオクト酸残存率を測定した結果を表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
表1の結果から明らかなように、チオクト酸を各種脂質成分と加熱溶融し保存した結果、チオクト酸の残存率に影響があることがわかった。即ち、C4−14脂肪酸が検出できない比較例1〜3では、チオクト酸の残存率が低かった。さらに、C4−14脂肪酸の含量が20%以上である実施例1〜6の組成物は、C4−14脂肪酸の含量が20%未満である実施例7〜9の組成物よりもチオクト酸の残存率が高かった。特に、乳化剤を60%配合した実施例6の組成物でもチオクト酸の残存率は極めて高かった。
【0097】
また、実施例1〜6の組成物は、脂質成分とチオクト酸とを70℃で加熱溶融しても、溶融物の外観変化には顕著な変化は認められなかった。これに対して、比較例1〜3の組成物、実施例7〜9の組成物は、脂質成分とチオクト酸とを、70℃で加熱溶融すると、粘性がかなり増加し、白色状を呈した。このような現象は、チオクト酸を融点以上に加熱し、その溶融物に光照射すると、チオクト酸の1,2−ジチオラン環が開裂しジスルフイド結合を形成し樹脂状の重合物となっているためと推定される。
【0098】
実施例10〜13
ショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬(株)製、商品名「DKエステルF140」、融点58℃、HLB約14)100gを300mlのビーカーに入れ、手で攪拌しながら湯浴内で75℃まで加温して、加熱溶融した溶液中に、実施例1〜3及び6のチオクト酸組成物50gを加え、手で激しく練合した。練合後、水道水の水浴上で冷却し固化させた。この固化物を木杵で破砕し、乳鉢内で更に細かく砕きJIS標準篩の30メッシュを通過し、200メッシュに留まる試料を得た。得られた試料について、チオクト酸の残存率と乳化性を評価した結果を表2に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
表2の結果から明らかなように、いずれの組成物もチオクト酸残存率が高く、乳化性も優れている。
【0101】
実施例14〜16
60℃に加温した水2400mlに、アラビアガム600gをTKホモミキサーで攪拌溶解し、20%アラビアガム溶液を調製した。この溶液各800mlに、実施例1〜3の組成物200mlを加えてTKホモミキサーで粗乳化し、更にデキストリン(松谷工業(株)製)200gを加えてTKホモミキサーで粗乳化した後、超高圧ホモジナイザー(みずほ工業(株)製、商品名「M−140K」)を用いて、200MPaの圧力で100ml/分の流速で乳化し乳化液を得た。得られた乳化液を各20g白色ガラス瓶に密封し40℃で経日的にチオクト酸量を測定しチオクト酸残存率を測定した。またその乳化性を評価した。その結果を表3に示す。
【0102】
【表3】

【0103】
表3の結果から明らかなように、いずれの乳化液も乳化性は良好で、チオクト酸の残存率も高かった。
【0104】
実施例17〜19
実施例14〜16で得られた乳化液500gをマイナス40℃で16時間真空凍結乾燥し、得られた乾燥物を軽く乳鉢上で粉砕し粉末状組成物を得た。この組成物を各20g白色ガラス瓶に密封し40℃で経日的にチオクト酸量を測定し残存率を測定した。またその乳化性を評価した。その結果を表4に示す。
【0105】
【表4】

【0106】
表4の結果から明らかなように、いずれの粉末も乳化性は良好で、チオクト酸の残存率も高かった。
【0107】
実施例20
ゼラチン(新田ゼラチン(株)製)100kgに、蒸留水80リットルを加えて80〜95℃に加温して溶解した後、70℃まで温度を下げたゼラチン水溶液に、MCT20kgにチオクト酸160kgを70℃で加熱溶融した溶融物を、少しずつ加えて約5分間攪拌し、乳化させた。この乳化液を冷却造粒法(別名:気相造粒法)により、液体窒素で15〜20℃としたチャンバー内に、滴下してビーズ状(球状)の顆粒を得た。この顆粒を80メッシュの金網トレーに均一に広げて、室温で5日間風乾しチオクト酸ゼラチンビーズ顆粒を得た。
【0108】
実施例21及び22
乳鉢上で脱脂粉乳(雪印乳業(株)製)20部に対して、実施例4の組成物又は実施例17の組成物2部を、少しずつ加えながら混合し、次いでココアパウダー(明治乳業(株)製)40部、及び砂糖(台糖(株)製)40部を加えて、均一になるよう混合し、調整ココア粉末を得た。得られた調整ココア粉末10gを、7μm厚みのアルミ箔をラミネートした軟質フイルム袋(寸法:70×110mm)に充填し、40℃で30日、60日、90日間保存し、チオクト酸の保存率を測定した。結果を表5に示す。
【0109】
【表5】

【0110】
表5の結果から明らかなように、いずれの組成物も安定性が高く、保存後90日を経過しても、チオクト酸の残存率が高い。特に、実施例17の組成物を含むココアパウダーのように、乳化粉末にしたチオクト酸組成物は若干ではあるが更に安定性が高くなった。
【0111】
実施例23〜25
実施例17で得られた組成物2部に対して、牛肉エキス粉末(富士食品(株)製)、組織大豆タン白(不二製油(株)製)、小麦粉グルテン(日清製粉(株)製)を、それぞれ98部乳鉢上で混和してペット用飼料を調製し、チオクト酸の保存による残存率を測定した。なお、試作量は100gで行い、保存は試作品30gを60ml容量の茶褐色ガラス瓶に密封し40℃で30日、60日、90日間保存した。結果を表6に示す。
【0112】
【表6】

【0113】
表6の結果から明らかなように、いずれのペット用飼料もチオクト酸の残存率が高い。
【0114】
実施例26〜28
実施例17で得られた組成物の配合量を0.5部に変更する以外は、実施例23〜25と同様にしてペット用飼料を調製して、チオクト酸残存率を測定した。結果を表7に示す。
【0115】
【表7】

【0116】
表7の結果から明らかなように、いずれのペット用飼料もチオクト酸の残存率が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)チオクト酸と、少なくとも(B)炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分とで構成されたチオクト酸組成物。
【請求項2】
脂質成分(B)が、炭素数4〜14の脂肪酸単位を全脂肪酸単位中20重量%以上の割合で含有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
脂質成分(B)が、脂肪酸類、油脂及び乳化剤から選択された少なくとも一種である請求項1記載の組成物。
【請求項4】
さらに、炭素数15以上の脂肪酸単位を有する親水性乳化剤を含む請求項1記載の組成物。
【請求項5】
さらに、賦形剤を含有する請求項1記載の組成物。
【請求項6】
(A)チオクト酸と、少なくとも(B)炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分とを混合するチオクト酸組成物の製造方法。
【請求項7】
さらに、炭素数15以上の脂肪酸単位を有する親水性乳化剤を混合する請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
(A)チオクト酸と、少なくとも(B)炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分とを加熱して溶融混合した後、冷却固化する請求項6記載の製造方法。
【請求項9】
80℃以下の温度で溶融混合した後、40℃以下の温度で冷却固化する請求項8記載の方法。
【請求項10】
(A)チオクト酸と、(B)炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分と、水とで構成された水性エマルジョンであって、炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する親水性乳化剤、炭素数15以上の脂肪酸単位を有する親水性乳化剤、タンパク質類、及び多糖類から選択された少なくとも一種の親水性乳化剤を含む水性エマルジョン。
【請求項11】
請求項1記載の組成物を含有する食用組成物。
【請求項12】
さらに、有効成分を含有する請求項11記載の食用組成物。
【請求項13】
有効成分が、有機酸又はその塩、脂溶性又は水溶性ビタミン類、アミノ酸、ペプチド、コラーゲン、コラーゲンペプチド、コエンザイムQ10、L−カルニチン又はその塩、植物性ポリフェノール、ミネラル類、及び酵母類からなる群より選択された少なくとも1種である請求項12記載の食用組成物。
【請求項14】
請求項10記載の水性エマルジョンを含有する食用組成物。
【請求項15】
チオクト酸(A)と、(B)炭素数4〜14の脂肪酸単位を有する脂質成分とを組み合わせて、チオクト酸の安定性を向上する方法。

【公開番号】特開2007−153817(P2007−153817A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352196(P2005−352196)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000189970)植田製油株式会社 (18)
【出願人】(505382434)株式会社アンチ・エイジング・ライフ (2)
【Fターム(参考)】