説明

チタン−ケイ素混合酸化物を含む分散液の製造方法

水性分散液の製造方法において、該分散液は9〜14のpHを有し且つ75〜99.99質量%の二酸化ケイ素の割合及び0.01〜25質量%の二酸化チタンの割合を有する熱分解法チタン−ケイ素混合酸化物粉末の粒子(その平均アグリゲート直径が分散液中で200nm以下である)、及び少なくとも1種の塩基性第4級アンモニウム化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチタン−ケイ素混合酸化物粉末を含む分散液の製造方法に関する。
【0002】
EP−A−814058号はチタン含有ゼオライトを製造するためのチタン−ケイ素混合酸化物粉末の使用を開示する。チタン含有ゼオライトは、過酸化水素によるオレフィンの酸化のための有効な触媒である。それらはテンプレートの存在下でケイ素−チタン混合酸化物粉末から水熱合成手順によって得られる。EP−A−814058号は75〜99.9質量%の二酸化ケイ素を有する熱分解チタン−ケイ素混合酸化物をこの目的に使用できることを開示する。特に有利な組成物は、90〜99.5質量%の二酸化ケイ素及び0.5〜5質量%の二酸化チタンを含むものである。使用されるテンプレートはアミン、アンモニウム化合物又はアルカリ金属/アルカリ土類金属の水酸化物であってよい。
【0003】
EP−A−814058号に開示された方法の欠点は、しばしば再現可能な活性がなく且つ十分な触媒活性のない生成物が生じることである。
【0004】
従って、本発明の目的は、ゼオライトを得るためにチタン−ケイ素混合酸化物が更なる加工において高い触媒活性を保証する形態で存在する方法を提供することである。
【0005】
本発明は、水性分散液の製造方法において、該分散液はpH9〜14を有し且つ
a)75〜99.99質量%の二酸化ケイ素の割合と0.01〜25質量%の二酸化チタンの割合とを有する熱分解法チタン−ケイ素混合酸化物粉末の粒子(その平均アグリゲート直径は分散液中で200nm以下、有利には100nm未満である)
b)及び少なくとも1種の塩基性第4級アンモニウム化合物を含み、且つそれに対して
c)5≦水のmol/チタン−ケイ素混合酸化物のmol≦30、有利には10≦水のmol/チタン−ケイ素混合酸化物のmol≦20、及び
d)0.005≦アンモニウム化合物のmol/ケイ素−チタン混合酸化物のmol<0.20であり、
その際、
e)貯蔵槽からローター/ステーター式の装置を用いて循環され且つpHが10〜12である量で存在する、水及び1種又は複数種の塩基性第4級アンモニウム化合物から構成される液相に、
f)ローター/ステーター式の装置を運転しながら充填装置を介して、20〜40質量%のチタン−ケイ素混合酸化物粉末の含有率を有する分散液が得られるように、請求項1から5に記載のチタン−ケイ素混合酸化物粉末の量を、ローター歯のスロットとステータースロットとの間のせん断帯に導入し、pHを10〜12に連続的に維持する間に、塩基性第4級アンモニウム化合物を更に添加し、且つ
g)全てのチタン−ケイ素混合酸化物粉末が添加された後に、充填装置を閉じて、せん断速度が10000〜40000s−1の範囲であるようにせん断を継続し、且つ
h)次いで、チタン−ケイ素混合酸化物粉末の含有率及びpHを調整するために、水及び/又は更なる塩基性第4級アンモニウム化合物を場合により添加する、
水性分散液の製造方法を提供する。
【0006】
この微粉度の粒子を含むこの分散液を使用する時に、チタン含有ゼオライトの製造に必要とされる反応時間が有意に削減されることが見出された。この平均アグリゲート直径は有利には100nm未満である。
【0007】
「熱分解法の」とは、火炎酸化及び/又は火炎加水分解によって得られた混合金属酸化物粒子を意味すると理解される。被酸化性の及び/又は加水分解性の出発材料は、一般的に水素−酸素火炎中で酸化又は加水分解される。本発明の混合金属酸化物粒子は、まさしく実質的に細孔がなく且つその表面上にヒドロキシル基を有する。それらは凝集した一次粒子の形で存在する。
【0008】
使用される熱分解法チタン−ケイ素混合酸化物粉末のBET表面積は限定されない。しかしながら、BET表面積が20〜400m/g、特に50〜300m/gの範囲内である時に有利であることが見出された。小さい平均アグリゲート直径と組み合わせて高いBET表面積を有するチタン−ケイ素混合酸化物粉末の分散液中での使用は、特にチタン含有ゼオライトの製造に有利である。
【0009】
使用される熱分解法チタン−ケイ素混合酸化物粉末が、50ppm未満、有利には25ppm未満の元素Na、K、Fe、Co、Ni、Al、Ca及びZnを含有する時に有利であることも見出された。
【0010】
使用される塩基性第4級アンモニウム化合物は、例えば、テトラエチルアンモニウム水酸化物、テトラ−n−プロピル−アンモニウム水酸化物及び/又はテトラ−n−ブチルアンモニウム水酸化物であってよい。塩基性第4級アンモニウム化合物は、結晶格子中への導入によって結晶構造を決定するテンプレートとして働く。テトラ−n−プロピルアンモニウム水酸化物は、好ましくはチタンシリカライト−1(MFI構造)の製造、チタンシリカライト−2(MEL構造)の製造ためのテトラ−n−ブチルアンモニウム水酸化物及びチタンβ−ゼオライト(BEA結晶構造)の製造のためのテトラエチルアンモニウム水酸化物に使用される。
【0011】
本発明の分散液中での第4級塩基性アンモニウム化合物の割合は限定されない。分散液が長期間にわたって貯蔵される場合、チタン含有ゼオライトを製造するために必要とされる量の一部だけを分散液に添加することが有利である。第4級塩基性アンモニウム化合物は、好ましくはpH9〜11となる量で添加してよい。このpH範囲において、分散液は良好な安定性を示す。
【0012】
分散液を、例えば、その製造直後にチタン含有ゼオライトを製造するために使用する場合、該分散液は既に全量の第4級塩基性アンモニウム化合物をも含み得る。この場合、好ましくは0.08≦アンモニウム化合物のmol/ケイ素チタン混合酸化物のmol<0.17である。
【0013】
本発明による方法によって製造された分散液は、チタン含有ゼオライトを製造するために使用してよい。この場合、分散液は、場合により塩基性第4級アンモニウム化合物が更に添加され、150〜220℃の温度で12時間未満にわたり処理される。得られた結晶を、濾過、遠心分離又はデカンテーションによって分離し且つ好適な洗浄液、有利には水で洗う。
【0014】
次に結晶を、必要であれば乾燥させ且つテンプレートを除去するために400℃〜1000℃、好ましくは500℃〜750℃の温度で焼成する。
【0015】
チタン含有ゼオライトが粉末の形で得られる。該粉末の酸化触媒としての使用のために、必要であれば、これを粉末状触媒の公知の造形方法、例えば、ペレット化、噴霧乾燥、噴霧ペレット化又は押出し成形によって、使用に好適な形態、例えば、マイクロペレット、球体、タブレット、固体円柱、中空円柱又は蜂の巣構造に転換させる。
【0016】
チタン含有ゼオライトは、過酸化水素による酸化反応中で触媒として使用できる。更に詳細には、これは水混和性溶媒中で水性過酸化水素を利用するオレフィンのエポキシ化において触媒として使用できる。
【0017】
実施例
原料:
チタンケイ素混合酸化物粉末1(Ti−Si−MOX):6.0kg/hの四塩化ケイ素及び0.26kg/hの四塩化チタンを蒸発させる。この蒸気を、15m(STP)/hの窒素をキャリアガスとして用いて混合室へ移送する。それとは別に、3.3m(STP)/hの水素及び11.6m(STP)/hの一次空気を混合室中に導入する。中央の管内では、この反応混合物をバーナに供給し、そして点火する。この火炎は、水冷式炎管中で燃焼する。更に、13m(STP)/hの二次空気及び0.5m(STP)/hの周辺水素を反応室中に導入する。形成された粉末を下流のフィルタ内で分離し、次いで520℃で蒸気を用いて向流的に処理する。
【0018】
Ti−Si−MOX1は305m/gのBET表面積、275g/100gのDBP数、95質量%のSiOの割合及び5質量%のTiOの割合を有する。Naの割合は<10ppmであり、Kの割合<10ppm、Feの割合<1ppm、Coの割合<1ppm、Niの割合<1ppm、Alの割合<10ppm、Caの割合<10ppm及びZnの割合<10ppmである。Ti−Si−MOX1は4%の水の分散液中で約3.6のpHを有する。
【0019】
チタン−ケイ素混合酸化物粉末2(Ti−Si−MOX2)はEP−A−1553054号の実施例18に相当する。Ti−Si−MOX2は43m/gのBET表面積、83質量%のSiOの割合及び17質量%のTiOの割合を有する。
【0020】
実施例1:分散液(本発明)の製造
100リットルのステンレス鋼の混合容器中にまず32.5gの脱塩水を装入する。引き続き、約11のpHをテトラ−n−プロピルアンモニウム水酸化物の水溶液(TPAOH)(40質量%)を用いて確立する。次いで、Ystral社Conti−TDS4(ステータースロット:6mmリング及び1mmリング、ローター/ステーター間隔約1mm)の吸込みノーズを用いて、剪断条件下で、17.5kgのTi−Si−MOX1を吸込む。粉末の吸込みの間に、このpHをTPAOHの更なる添加によって10〜11の間に保持する。吸込みが終了した後、吸込みノズルを閉じ、TPAOHを用いてpHを11に調整し且つ33質量%の予備分散液を3000rpmで更に10分間剪断する。分散液の望ましくない加熱は、高エネルギー導入の結果、熱交換器によって向流し、そして温度上昇は最大40℃に制限される。
【0021】
非常に高い貯蔵安定性を保証するために、生成物を25.8kgの脱塩水で希釈し、完全に混合し且つわずかなTPAOHによって再びpH11.0に調整する。
【0022】
ケイ素−チタン混合酸化物の濃度:22質量%。全部の3.8kgのテトラ−n−プロピルアンモニウム水酸化物の水溶液(40質量%)を使用する。
【0023】
分散液は以下の値を有する:
水/ケイ素−チタン混合酸化物11.5、平均アグリゲート直径92nm(Horiba LA 910により測定)。
【0024】
実施例2:分散液の製造(比較)
100リットルのステンレス鋼の混合容器中にまず32.5kgの脱塩水を装入する。次いで、Ystral社Conti−TDS4(ステータースロット:6mmリング及び1mmリング、ローター/ステーター間隔約1mm)の吸込みノーズを用いて、剪断条件下で、13.6kgのTi−Si−MOX1を吸込む。
【0025】
これにより、高粘度及び低安定性を有する、28質量%のケイ素−チタン混合酸化物の含有率を有する分散液が形成される。
【0026】
実施例3:分散液の製造(比較)
100リットルのステンレス鋼の混合容器中にまず32.5kgの脱塩水を装入する。引き続き、テトラ−n−プロピルアンモニウム水酸化物の水溶液(TPAOH)(40質量%)を用いてpHを約13.5に調整する。次いで、Ystral社Conti−TDS4(ステータースロット:6mmリング及び1mmリング、ローター/ステーター間隔約1mm)の吸込みノーズを用いて、剪断条件下で、17.5kgのTi−Si−MOX1を吸込む。これにより分散液の強力な発泡が生じる。更なる分散は可能ではない。
【0027】
実施例4:分散液の製造(本発明による)
実施例1に類似した手順(Ti−Si−MOX1の代わりにTi−Si−MOX2を使用することを除く)。
【0028】
分散液は以下の値を有する:水/ケイ素−チタン混合酸化物11.5、平均アグリゲート直径131nm(Horiba LA 910により測定)。
【0029】
実施例は、使用されるチタン−ケイ素−混合酸化物粉末が主に二酸化ケイ素から構成されているにも関わらず、二酸化ケイ素について公知の酸性のpH範囲の分散技術が、極めて微細な(<200nm)且つ高度に充填された分散液の製造に適していないことを示す。その代わりに、アルカリ性の範囲の本発明による分散液は、所望の粒子微粉度及び固体含有率を有する分散液をもたらす。
【0030】
同等のBET表面積を有する純粋な二酸化ケイ素の分散液、例えば、CAB−O−SIL(登録商標)H−5、Cabot社製、BET表面積=300m/g)は、これらの条件下で所望の粒子微粉度及び固体含有率をもたらさない。
【0031】
この実施例はまた、塩基性第4級アンモニウム化合物の一部がチタンケイ素混合酸化物粉末と一緒に添加されるべきであり、即ち、粉末の導入前の塩基の完全な添加が目的を達成しないことをも示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性分散液の製造方法において、該分散液はpH9〜14を有し且つ
a)75〜99.99質量%の二酸化ケイ素の割合と0.01〜25質量%の二酸化チタンの割合とを有する熱分解法チタン−ケイ素混合酸化物粉末の粒子(その平均アグリゲート直径は分散液中で200nm以下である)
b)及び少なくとも1種の塩基性第4級アンモニウム化合物を含み、且つそれに対して
c)5≦水のmol/チタン−ケイ素混合酸化物のmol≦30及び
d)0.005≦アンモニウム化合物のmol/ケイ素−チタン混合酸化物のmol<0.20であり、
その際、
e)貯蔵槽からローター/ステーター式の装置を用いて循環され且つpHが10〜12である量で存在する、水及び1種又は複数種の塩基性第4級アンモニウム化合物から構成される液相に、
f)ローター/ステーター式の装置を運転しながら充填装置を介して、20〜40質量%のチタン−ケイ素混合酸化物粉末の含有率を有する分散液が得られるように、請求項1から5までに記載のチタン−ケイ素混合酸化物粉末の量を、ローター歯のスロットとステータースロットとの間のせん断帯に導入し、pHを10〜12に連続的に維持する間に、塩基性第4級アンモニウム化合物を更に添加し、且つ
g)全てのチタン−ケイ素混合酸化物粉末が添加された後に、充填装置を閉じて、せん断速度が10000〜40000s−1の範囲であるようにせん断を継続し、且つ
h)次いで、チタン−ケイ素混合酸化物粉末の含有率及びpHを調整するために、水及び/又は更なる塩基性第4級アンモニウム化合物を場合により添加する、
水性分散液の製造方法。

【公表番号】特表2011−500491(P2011−500491A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529330(P2010−529330)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062833
【国際公開番号】WO2009/050013
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】