説明

チタン製品の製造プロセス

本発明は、純度P2のチタン複塩の沈殿物及び純度P3のチタン溶液を形成することによる、純度P1のチタン供給原料ストリームの工業的精製方法を提供し、ここでP2>P1>P3であり、当該方法は、i.該供給原料から、水、チタンイオン、並びにアンモニウム、アルカリ金属のカチオン、プロトン及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオン、並びにOH、SO4、HSO4、ハロゲン化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオンを含む中間物を形成する工程を含み、該形成された中間物が、更に、(a)チタンイオン、該カチオンの少なくとも一つ及び該アニオンの少なくとも一つを含む複塩沈殿物;及び(b)チタン溶液の存在により特徴付けられ;およびここで、該チタン溶液中の該アニオンの濃度が15%よりも高く、且つ該チタン溶液中の該カチオンの濃度と該アニオンの濃度との間の比が0.2より高く1.6より低く;及び、ii.該溶液から該沈殿物の少なくとも一部を分離する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン製品の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、チタンの低品位ストリーム溶液からのチタン製品の製造方法に関する。
【0002】
チタンの工業的製造は、通常、高品位のチタン鉱石が使用される塩素化又はスルホン化ステージを含む。塩素化プロセスにおいて;HCl/Clを使用して鉱石からチタンを抽出し、塩化チタンが蒸留される;このようにして、高度に純化されたチタンが製造される。しかしながら、このプロセスの主な欠点は、塩化チタンの蒸留及び精製が高コストであることである。
【0003】
二酸化チタンは、白色顔料として広く使用されており、年間約700万ドルの市場がある。
【0004】
白色顔料である酸化チタンは、通常、高品位のチタン鉱石から製造される。製品は、不純物含有量、粒子サイズ及び粒子サイズの分布といった厳格な基準を満たす必要がある。酸化チタン粒子の粒子サイズは、数ナノメートルから数百ナノメートルまで及ぶ。これらの製品を製造するための原材料のコストは高い。
【0005】
本開示に記載されるプロセスは、チタン複塩が製造される精製ステージを使用し、低品位のチタンストリームから酸化チタンを製造することを可能とする。
【0006】
チタン金属は、高品位のチタン鉱石から製造される。製品は、不純物含有量の厳格な基準を満たす必要がある。この製品を製造するための原材料のコストは高い。低品位のチタン鉱石又は工業的プロセスから得られる低品位の溶液ストリームは、これらの製品の製造に使用されない。
【0007】
本開示に記載されるプロセスは、チタン複塩が製造される精製ステージを使用し、低品位のチタンストリームからチタン製品を製造することを提案する。
【0008】
複塩は、2つの異なるカチオン及び/又はアニオンからなる結晶として定義される。複塩は、通常、その構成成分の単塩と比べて著しく溶解度が低いことを特徴とする。
【0009】
Goroshchenko, Ya. G (Double titanium and ammonium sulfates) Doklady Akademii Nauk SSSR (1956), 109 532-4は、純粋溶液からのTi(iv)複塩の沈殿を研究し、塩析作用が、高い硫酸アンモニウム若しくはH2SO4濃度において観察され、複塩の溶解度が減少することを見出した。
【0010】
SILVA HELIO JOSEが2003年に著した特許BR 20012509号では、酸化チタンを、イルメナイト又は他のチタン含有鉱石中に存在する他の多価カチオンから分離している。この提案されたプロセスでは、アンモニウム複塩の形態でのFe(III)の沈殿の前に、Fe及びAlがチタン塩から分離される。硫酸を用いたイルメナイトの浸出によって得られた溶液への硫酸アンモニウムの添加は、二成分塩である(NH)Fe(SO12HO、(NHTiO(SOO及び(NHFe(SO6HOが一緒に沈殿するのを引き起こした。
【0011】
複塩は、多数の多価カチオンから製造され得る。チタン、Fe(III)及びFe(II)の両者とも複塩を形成し、これらの複塩は、通常、一緒に沈殿する。
【0012】
上記特許及び論文は、多価カチオンの複塩は容易に沈殿するが、共沈殿して低い純度の製品を形成しがちであることを教示している。低温での塩の沈殿は、複塩の溶解度を減少させてチタン複塩の沈殿生成量を増加させ得るが、製品の純度を減少させることが予期される。この結果は、複塩技術を使用するチタン塩の工業的な精製方法は存在しないということである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
驚くべきことに、本発明によれば、チタン複塩を、多価カチオン、特にFe(II)及びFe(III)を高い割合で含有する溶液から、高収率且つ高選択性で沈殿させ、高いチタン対多価カチオン比の製品を製造できることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、アニオン濃度が20%よりも高く、且つ一価カチオン対アニオン比が0.2から1.4の間である母液を用いることで、結晶化の収率が非常に高く、同時に複塩の純度が非常に高いことが見出された。驚くべきことに、生成した複塩は、非常に低いチタンの損失で洗浄され、チタン金属、並びに高い純度のチタン金属及び他の金属製品のための原材料、並びに酸化チタン及びチタン塩を製造するのに充分な品位の製品を与え得ることも見出された。この高純度は、Fe(III)及びFe(II)の両者が溶液中に多量に存在し、同様の複塩を形成することができるという事実にも関わらず得られる。より高い一価カチオン対アニオン比では、鉄複塩はチタン複塩と共沈殿し、それにより製品の純度を減少させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、非常に効率的で低コストの精製方法を提供し、当該方法において、低品位のチタンストリームが、高品位のチタン、並びに高品位の二酸化チタン、高品位のチタン金属、及び塩化チタニル、硫酸チタニル及び他のチタン塩などの他のチタン製品の製造のための原材料を製造するために消費される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明の開示
当該技術のこの状態を念頭において、本発明によれば、純度P2のチタン複塩の沈殿物及び純度P3のチタン溶液の形成による、純度P1の低品位のチタン供給原料ストリームの工業的精製方法(ここで、P2>P1>P3)がここに提供され、当該方法は、
i.上記供給原料から、水、チタンイオン、並びにアンモニウム、アルカリ金属のカチオン、プロトン及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオン、並びにOH、SO、HSO、ハロゲン化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオンを含む中間物を形成する工程を含み、ここで、この形成された中間物が、更に、(a)チタンイオン、上記カチオンの少なくとも一つ及び上記アニオンの少なくとも一つを含む複塩沈殿物;及び(b)チタン溶液の存在により特徴付けられ;およびここで、上記チタン溶液中の上記アニオン濃度は15%よりも高く、且つ上記チタン溶液中の上記カチオンの濃度と上記アニオンの濃度との間の比は0.2より高く1.6より低く;及び
ii.上記溶液から上記沈殿物の少なくとも一部を分離する工程を含む。
【0017】
本明細書において使用されるチタン複塩という用語は、アニオンおよび2つの異なるカチオンからなり、該カチオンの一方がチタンである結晶を意味する。
【0018】
本明細書において使用されるカチオンという用語は、複塩中に存在する一価カチオンを意味する。
【0019】
本明細書において使用されるアニオンという用語は、複塩中に存在するアニオンを意味する。
【0020】
純度という用語、即ちPは、チタンの全多価金属に対する重量比として定義され、ここで純度は、いくつかの場合ではパーセントで示され、例えば、本明細書で使用されるP1はチタン供給原料溶液の純度を意味し、P2はチタン複塩の純度を意味し、P3はチタン溶液(チタン複塩の製造中に形成される母液)の純度を意味する。
【0021】
本明細書において使用されるチタン金属という用語は、チタンスポンジ又は他のあらゆるチタン金属製品におけるような単体のチタンとして本開示において言及されるであろう。
【0022】
本明細書において使用されるチタン製品という用語は、水酸化チタン、オキシ水酸化チタン、塩化チタン、オキシ塩化チタン、硫酸チタン、オキシ硫酸チタン及び他のチタン有機若しくは無機塩などのチタンを含有する様々な製品を意味する。
【0023】
本発明の一つの実施態様によれば、上記チタン供給原料は、酸溶液を使用してチタン鉱石を浸出することによって形成されるチタンの低品位ストリーム溶液であっても良い。別の実施態様によれば、上記チタン供給原料は、酸ハロゲン化物、硫酸、硝酸又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される酸を含む。
【0024】
本発明の別の実施態様によれば、上記供給原料溶液は、工業的プロセスからの廃棄物ストリームを含み、また、別の実施態様では、上記チタン供給原料は、チタン製造プロセスからの廃棄物ストリームを含む。
【0025】
このように、本発明は、特に低品位のチタンストリームからの、チタン供給原料ストリームの非常に効率的な精製方法を提供する。
【0026】
別の実施態様によれば、本発明は、上記沈殿物を処理して酸化チタンを製造する工程を更に含む。
【0027】
アナターゼ、ルチル及びブルッカイトが酸化チタン製品に含まれる。
【0028】
別の実施態様によれば、本発明は、上記沈殿物を処理して酸化チタン以外のチタン製品を製造する工程を更に含む。
【0029】
Ti(OH)、TiOCl、TiOCl、TiCl、TiOSO、TiO(NO、他のチタン無機塩及びチタン有機塩が製品に含まれる。
【0030】
本発明の他の好ましい実施態様において、上記沈殿物を処理してチタン金属を製造する更なる工程を含むプロセスが提供される。
【0031】
本発明の好ましい実施態様において、上記チタン供給原料ストリームは、水性の廃棄物溶液である。
【0032】
本発明の好ましい実施態様において、上記チタン供給原料は、酸溶液を使用してチタン鉱石を浸出することによって形成される。
【0033】
一つの実施態様において、上記チタン供給原料の純度P1は、約10%と約90%との間の範囲内にある。好ましくは、P1は60%よりも低い。特に好ましい実施態様において、P1は50%よりも低く、また、別の好ましい実施態様において、P1は45%よりも低い。
【0034】
一つの実施態様によれば、上記チタン供給原料は、少なくとも0.25のFe/Ti比で鉄を含み、且つチタン複塩沈殿物は、0.02よりも小さいFe/Ti比を含む。
【0035】
本発明の好ましい実施態様において、P1は70%よりも小さく、且つP2は95%よりも大きい。
【0036】
本発明の特に好ましい実施態様において、上記チタン供給原料ストリームは、プロトン並びにハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種のアニオンを含む。
【0037】
本発明の好ましい実施態様において、上記チタン供給原料ストリームは、工業的プロセスからの廃棄物ストリームを含む。
【0038】
本件のある好ましい実施態様において、上記チタン供給原料ストリームは鉄を含み、上記低品位ストリーム中の鉄とチタンとの間のモル比は、約0.2:1と約3:1との間の範囲内にある。
【0039】
上記好ましい実施態様において、上記複塩中のチタンと鉄との間のモル比は、好ましくは、上記供給原料ストリームにおける比よりも少なくとも5倍大きい。
【0040】
本件のある好ましい実施態様において、上記複塩中の上記カチオンはアンモニウムである。
【0041】
本発明の他の好ましい実施態様において、上記複塩中のカチオンは、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される。
【0042】
本件のある好ましい実施態様において、上記複塩中のアニオンは、OH、SO、HSO及びハロゲン化物からなる群から選択される。
【0043】
本件の好ましい実施態様において、上記沈殿物は、チタン複塩及びチタンの塩基性複塩からなる群から選択される。
【0044】
好ましくは、上記沈殿物は、上記低品位ストリーム溶液中に元々存在するチタンの少なくとも80%を含有する。
【0045】
本発明の好ましい実施態様において、比P2/P3は2よりも大きい。
【0046】
本発明のより好ましい実施態様において、沈殿物は、チタン供給原料中に存在するチタンの85%より多くを含有し、多価の不純物の間の比、即ち(1−P3)/(1−P2)は10より大きい。
【0047】
本件の特に好ましい実施態様において、比P2/P3は10より大きい。
【0048】
本件の好ましい実施態様において、上記形成された中間物の温度は0−80℃の間の範囲内である。
【0049】
本件の特に好ましい実施態様において、上記接触が実施される温度は10−50℃の範囲内である。
【0050】
本件の最も好ましい実施態様において、上記接触が実施される温度は20−40℃の範囲内である。
【0051】
本発明の好ましい実施態様において、上記チタン溶液は改良されて、鉄金属、酸化鉄、及び上記チタン供給原料溶液中に存在する他の多価カチオンの製品からなる群から選択される製品を形成し、ここで改良ステージの一つは結晶化である。
【0052】
上記好ましい実施態様において、上記鉄含有製品は、好ましくは、鉄複塩、酸化鉄及び水酸化鉄の群から選択される。
【0053】
上記好ましい実施態様において、上記鉄複塩のアニオンは、好ましくは、一価アニオン、二価アニオン、ハロゲン化物アニオン、硫酸アニオン及び重硫酸アニオン並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0054】
上記好ましい実施態様において、上記鉄複塩の第二のカチオンは、好ましくは、アンモニウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される。
【0055】
上記好ましい実施態様において、上記多価カチオンの化合物は、好ましくは、中性の複塩、塩基性の複塩、金属酸化物及び上記多価カチオンの金属水酸化物からなる群から選択される。
【0056】
本発明のある好ましい実施態様において、当該方法は、純度P4を有する精製され洗浄された沈殿物及びP5の純度を有する洗浄溶液(ここで、P4>P2>P5)を形成する、溶液を用いた沈殿物洗浄ステージを更に含む。
【0057】
好ましい実施態様によれば、上記洗浄溶液は、チタン複塩中に存在するのと同じアニオン及びカチオンを含み、ここでカチオンは、アンモニウム、アルカリ金属及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、アニオンは、SO、HSO及びハロゲン化物並びにそれらの組み合わせからなる群から選択され、およびここで、上記アニオンの濃度は15%より高く、且つ上記チタン溶液中の上記カチオンの濃度と上記アニオンの濃度との間の比は、0.2より高く1.6より低い。
【0058】
上記好ましい実施態様において、上記洗浄は、好ましくは、プロトン、アンモニウムイオン及び硫酸イオンを含む溶液を用いるものである。
【0059】
上記好ましい実施態様において、洗浄された沈殿物の純度は、99%より高い。
【0060】
本発明の他の好ましい実施態様において、当該方法は、任意で前以て洗浄した上記沈殿物を再結晶化してP6の純度を有する沈殿物及び純度P7を有する母液(ここで、P6>P2>P7)を形成する工程を更に含む。
【0061】
上記好ましい実施態様において、再結晶化された沈殿物の純度は、99%より高く、より好ましくは99.9%より高い。
【0062】
好ましくは、上記結晶化は、一価カチオン塩の添加、一価カチオン塩基の添加、温度の上昇、希釈及びそれらの組み合わせからなる群から選択される作用により引き起こされる。
【0063】
上記再結晶化は、好ましくは、上述したそれらの群から選択される少なくとも一種のカチオン及び少なくとも一種のアニオンを含む溶液を使用する。
【0064】
本発明のある好ましい実施態様において、酸化チタンの沈殿による上記チタン複塩溶液からの酸化チタンの製造のために、当該方法は、
a.水性溶液中へのチタン複塩の溶解の工程を含み;及び
b.条件の変化を引き起こして上記溶液から酸化チタンを沈殿させる工程を含み、ここで上記変化は、希釈、温度上昇、pHの増加及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0065】
上記好ましい実施態様において、上記酸化チタン中のチタンの量と上記チタン複塩中のチタンの量との間の重量比は、好ましくは、0.8より大きい。
【0066】
上記好ましい実施態様において、上記温度上昇は、80℃を超えるように温度を上昇させることを意味する。
【0067】
上記チタン複塩の純度(P2)は、好ましくは、80%より大きい。
【0068】
本発明の特に好ましい実施態様において、上記チタン複塩の純度(P2)は、85%より大きい。
【0069】
本件の最も好ましい実施態様において、上記チタン複塩の純度(P2)は、95%より大きい。
【0070】
本件の他の好ましい実施態様において、上記沈殿物を処理するプロセスは、酸化チタンの製造ステージを含み、当該方法は、
a.水性溶液中へのチタン複塩の溶解の工程を含み;及び
b.条件の変化を引き起こして上記溶液から水酸化チタン沈殿物を形成する工程を含み、ここで上記変化は、希釈、温度上昇、pHの増加及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
c.チタン酸の酸化チタンへの転換の工程を含む。
【0071】
上記好ましい実施態様において、上記酸化チタンは、好ましくは、上記チタン供給原料中に存在していたチタンの少なくとも70%を含有する。
【0072】
酸化チタンは、好ましくは、5−100ナノメートルの中間範囲内のナノ粒子の形態である。
【0073】
本発明の好ましい実施態様において、酸化チタンは、100−300ナノメートルの中間範囲内のナノ粒子の形態である。
【0074】
本発明の好ましい実施態様によれば、チタン供給原料は、他の多価カチオンの中でも特に、Feも含む。
【0075】
ある好ましい実施態様によれば、硫酸アンモニウムの残留濃度は、20%を超え、チタン溶液中の残留NH/SO比は、0.2:1から3.1:1の範囲内にあり、より好ましくは0.2:1と1.4:1との間の範囲内にあり、最も好ましくは0.2:1から0.7:1の範囲内にある。
【0076】
形成された沈殿物は、好ましくは、チタン複塩及びチタンの塩基性複塩からなる群から選択される。上記沈殿物が上記チタン供給原料中に存在していたチタンの少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも85%を含有する実施態様が特に好ましい。
【0077】
好ましい実施態様において、チタン供給原料は、少なくとも0.25のFe/Ti比を含み、且つチタン複塩沈殿物は、0.04より小さいFe/Ti比、より好ましくは0.02より小さいFe/Ti比を含む。
【0078】
好ましい実施態様において、P1は70%より小さく、P2は95%より大きい。
【0079】
Ti(iv)、Fe(II)及びFe(III)の両者が複塩を形成し、一緒に共沈殿する傾向がある。第二の塩の最終濃度においてのみ複塩中に存在し、ここでカチオンはアンモニア又はアルカリであり、アニオンは複塩のアニオンである。
【0080】
10%よりも高く、且つ第二のカチオンとアニオンとの比が0.1と1.6との間であるチタン溶液中で、チタン複塩は高い純度で沈殿する。この範囲を外れる比においては、Fe(III)及び特にFe(II)は、Ti複塩と共沈殿する。この特定の条件は、高収率でのチタン複塩の沈殿を可能とする。沈殿の収量は、残留第二塩濃度が増加するにつれて増加し、純度は、0.2から0.8の間の狭いカチオン/アニオン比の範囲で最も高い。
【0081】
上記沈殿物の純度P2は、好ましくは、80%より大きい。特に好ましい実施態様において、純度は90%より大きい。そして、最も好ましいものでは、純度P2は95%より大きい。
【0082】
好ましい実施態様によれば、中間物は硫酸イオンを含み、ここでカチオン(アンモニア又はアルカリ金属)のSOに対するモル比は、0.1より大きく1.6より小さい。別の好ましい実施態様によれば、上記モル比は、0.2より大きく1.4より小さく、また、別の好ましい実施態様によれば0.4より大きく0.8より小さい。
【0083】
更なる好ましい実施態様において、チタン複塩は硫酸アンモニウムチタンであり、沈殿物を洗浄するために使用される上記第三の溶液は、プロトン、0.2から1.4の間のアンモニア対SO比でアンモニア及び硫酸塩を含む。別の好ましい実施態様によれば、溶液は、チタンも含有する。
【0084】
上記沈殿物を溶解するための上記溶液は、好ましくは、アンモニウム及びアルカリ金属並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオン及びOH、SO、HSO、ハロゲン化物及び酸ハロゲン化物並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオンを含む。
【0085】
別の好ましい実施態様によれば、上記溶液は水を含む。
【0086】
好ましい実施態様において、洗浄溶液中の最終のアニオン対カチオン比は、0.2から1.4の間である。
【0087】
沈殿物は、水又は任意の他の溶液中に溶解され得、複塩中に存在するアニオン及びカチオンを含有する塩が添加されて10%より高い、より好ましくは20%より高い、最も好ましくは30%より高い最終の塩濃度及び0.2から1.4の間のカチオン対アニオン比を作り出す。
【0088】
本発明の特に好ましい実施態様において、上記沈殿物の処理は、塩化チタンの製造ステージを含み、
i.溶媒又は最小量の水へのチタン複塩及びCl塩の溶解の工程;及び
ii.上記溶液からのTiClの蒸留の工程を含む。
【0089】
更に別の好ましい実施態様において、チタン複塩は、チタン酸を沈殿させる温度よりも低い温度で塩基と接触させられる。沈殿物は洗浄され、酸中に溶解される。
【0090】
好ましい実施態様において、酸はHClであり、製品は塩化チタニルである。別の好ましい実施態様において、酸はHSOであり、製品は硫酸チタニルであり、別の好ましい実施態様において、酸は有機酸又は任意の無機酸である。
【0091】
更に別の好ましい実施態様において、上記塩化チタンは、上記チタン供給原料溶液中に存在していたチタンの少なくとも70%、より好ましくは少なくとも85%を含有する。
【0092】
更に、第一の好ましい実施態様によれば、上記塩化チタン又は塩化チタニルは、チタン金属の製造に更に使用される。
【0093】
別の好ましい実施態様によれば、チタン金属は、製造される任意のチタン塩から製造され、より好ましくは、還元剤としてNa又はMgを用いるクロール法、又は任意の他の従来の還元法を使用する還元により、チタン複塩溶液から直接製造される。
【0094】
好ましい実施態様によれば、製品は、チタンスポンジ又はチタンインゴットなどの単体のチタン或いはあらゆる他の単体のチタンの製品である。
【0095】
好ましい実施態様によれば、上記チタン溶液は、結晶化によって改良されて、鉄金属、酸化鉄、及び上記チタン供給原料中に存在する他の多価カチオンの製品からなる群から選択される製品を形成する。
【0096】
別の好ましい実施態様によれば、上記の鉄含有製品は、鉄複塩、酸化鉄及び水酸化鉄からなる群から選択される。
【0097】
好ましい実施態様によれば、上記鉄複塩を含むアニオンは、一価アニオン、二価アニオン、ハロゲン化物アニオン、硫酸アニオン及び重硫酸アニオン並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0098】
別の好ましい実施態様によれば、上記鉄複塩の第二のカチオンは、アンモニウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される。
【0099】
好ましい実施態様によれば、上記第二の溶液は、結晶化ステージによって改良されて、それらのカチオンの中性の複塩、塩基性の複塩、金属酸化物又はそれらのカチオンの金属水酸化物からなる群から選択される、上記チタン供給原料中に存在する他の多価カチオンの製品を形成する。
【0100】
別の好ましい実施態様によれば、上記結晶化ステージは、一価カチオン塩の添加、一価カチオン塩基の添加、温度の上昇、希釈及びそれらの組み合わせからなる群から選択される工程によって引き起こされる。
【0101】
本発明の更に別の側面において、チタン複塩の還元によるチタン複塩溶液からのチタン金属の製造方法がここに提供され、当該方法は、
i.溶液中へのチタン複塩の溶解の工程;
ii.還元条件を生じさせて、上記溶液から複塩中のチタンを還元する工程:及び
iii.単体の金属を更に処理する工程
を含む。
【0102】
好ましい実施態様によれば、上記チタン金属又は塩化チタン中のチタンの総量の間の比は、チタンの最初の量の0.8より大きく、より好ましくは0.95より大きい。
【0103】
好ましい実施態様によれば、上記還元法は、80℃を超えるまで温度を上昇させることを意味する。特に好ましい実施態様において、上記温度上昇は、200℃を超えるまで温度を上昇させることを意味し、また、250℃を超えるまで温度を上昇させることが最も好ましい。
【0104】
本発明の特徴がより完全に理解され評価され得るよう、以下の実施例において及び添付の図面を参照して特定の好ましい実施態様に関して本発明を記載するが、これらの特定の実施態様に本発明を制限することは意図されない。反対に、添付の特許請求の範囲によって定義される発明の範囲内に含まれ得るようなあらゆる代替案、改良及び等価物を含む意図である。従って、好ましい実施態様を含む以下の実施例は本発明の実施を説明する役目のものであり、また、示される事項は、例のためであって、本発明の好ましい実施態様の説明的な議論を目的にするに過ぎず、尚且つ本発明の原理及び概念的特徴と共に形成手順の最も有用且つ容易に理解されると思われる解説を与えるために示されていることが理解されよう。
【実施例】
【0105】
図1は、本発明の実施態様による好ましいプロセスの一つのフローダイアグラムを示している。ステージ1において、酸溶液を使用してチタン鉱石を浸出してチタン塩のチタン供給原料溶液を形成し、ここで酸は、酸ハロゲン化物、硫酸、硝酸又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。単純化のために、当該図面における酸は硫酸を選択した。2つのストリーム(流れ):不溶解固体を含有する廃棄物ストリーム及びチタン供給原料として定義されるストリーム(これはステージ2の沈殿ステージに入る)が浸出ステージを出る。
【0106】
浸出ステージでチタン供給原料が形成される方法の代替として、本発明の別の好ましい実施態様において、チタン製造プロセスからの廃棄物ストリーム、又は鉄製造プロセスからの廃棄物ストリームが、ステージ2で沈殿ステージに導入される。
【0107】
ステージ2(沈殿ステージ)において、上記中間物は、チタン供給原料をアニオン及び1価カチオンからなる群から選択される試薬と混合し、沈殿するチタン複塩及び本明細書中でチタン溶液と呼ばれている母液を形成することによって形成され、ここで塩のカチオンは、アンモニウム及びアルカリ金属並びにそれらの組み合わせからなる群から選択され、アニオン塩は、OH、SO、HSO、ハロゲン化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0108】
単純化のために、図1は、(NHSOを含有する溶液のステージ2への添加を示している。
【0109】
好ましい実施態様において、このステージは0−80℃の温度範囲で行われ、別の好ましい実施態様において、このステージは10−50℃の温度範囲で行われ、更に別の好ましい実施態様においては、20−40℃の範囲内である。
【0110】
2つのストリーム:形成されたチタン複塩(これは沈殿する)及びチタン溶液が沈殿ステージを出る。母液中のアンモニアとSOとの間のモル比は、0.1より大きい。別の好ましい実施態様において、該モル比は0.2より大きく1.4より小さく、また、別の好ましい実施態様において、該モル比は0.4より大きく0.8より小さい。
【0111】
当該図において、上記チタン複塩中の第二のカチオンは、アンモニウムであるが、別の好ましい実施態様においては、該カチオンは、ナトリウム、カリウム又は任意のアルカリ金属からなる群から選択される。
【0112】
このステージは非常に効率的である。好ましい実施態様において、上記チタン複塩は、上記チタン供給原料中に存在していたチタンの少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%を含む。
【0113】
更に、このステージは、非常に純粋なチタン複塩の形成により特徴付けられ、ここでその純度(P2)は、80%より大きく、好ましくは85%より大きく、より好ましくは90%より大きく、最も好ましい実施態様においては95%より大きく、また、比P2/P3は2より大きく、より好ましくは5より大きく、最も好ましくは10より大きい。
【0114】
2つのストリーム:形成されたチタン複塩(これは沈殿する)及び溶液(これはステージ5に入る)が沈殿ステージを出る。
【0115】
形成されたチタン複塩(これはステージ2において沈殿する)の少なくとも一部は、上記溶液から分離して洗浄ステージのためにステージ3に入る。このステージにおいて、複塩は第三の溶液で洗浄されて、P4のチタン純度を有するチタン塩の純化された沈殿物及びP5のチタン純度を有する洗浄溶液(ここで、P4>P2>P5)を形成する。
【0116】
第三の溶液は、沈殿ステージ(ステージ2)において使用したものと同じカチオン及びアニオンを含む。好ましい実施態様において、当該図において示されるように、この溶液はNHHSO及びHSOを含有し、ここでより特定の好ましい実施態様において、上記溶液中のSO/HSOのモル比は、2より小さい。
【0117】
図1は、上記第三の溶液がステージ4から出て再循環されるストリームであることを示している。更にこの図は、上記洗浄溶液が洗浄ステージを出て、その一部がNHOHの添加と共にステージ2に再循環して戻り、それとは別の部分がHSOの添加と共に浸出ステージであるステージ1に再循環して戻ることを示している。
【0118】
チタン複塩は次いで、溶解及び再沈殿ステージ(ステージ4)に入り、P6のチタン純度を有する純化されたチタン塩沈殿物及びチタン純度P7を有する第二の洗浄溶液(ここで、P6>P2>P7)を形成する。
【0119】
好ましい実施態様において、このステージにおける溶液は、ステージ2において使用したのと同じカチオン及びアニオンを含む。別の実施態様によれば、上記溶液は、NHHSO及びステージ3に再循環して戻るHSOを含む。別の実施態様によれば、図1に記載されたように、上記溶液は水である。
【0120】
好ましい実施態様において、再結晶化ステージは、希釈、加熱、pHの増加又はそれらの組み合わせからなる群から選択される工程により引き起こされる。再結晶化ステージを出るチタン製品は、上記低品位供給源溶液中に存在していたチタンの少なくとも70%、より好ましくは少なくとも85%を含有する。別の好ましい実施態様において、チタン製品は、チタン金属を製造するのに充分な純度の塩化チタン又は塩化チタニルである。
【0121】
好ましい実施態様において、ステージ2を出る上記第二の溶液は、改良されて、鉄金属、酸化鉄及びチタン供給原料の低品位供給源中に存在する他の多価カチオンの製品からなる群から選択される製品を形成する。
【0122】
図2は、本発明の実施態様による好ましいプロセスの一つのフローダイアグラムを示している。この図は、図1と非常に似ているが、チタン複塩の洗浄ステージ(ステージ3)の代わりに、この図は、チタン複塩の最終的な精製のための溶解工程及び再結晶化工程を示している。
【0123】
図3は、チタン複塩溶液からのチタン金属の製造方法のための、本発明による好ましいプロセスの一つのフローダイアグラムを示しており、溶液中へのチタン複塩の溶解の工程及び上記溶液から塩化チタンを蒸留する条件を生じさせる工程を含む。
【0124】
該プロセスの好ましい実施態様によれば、アニオンチタン複塩は塩化物であり、塩化チタンはそのまま或いは水又は/及び溶媒の添加後に塩から蒸留される。
【0125】
該プロセスの別の好ましい実施態様によれば、アニオンチタン複塩は硫酸塩であり、塩化チタン又は塩化チタニルは、塩化物塩又はHCl並びに水及び/又は溶媒の添加により製造される。
【0126】
該プロセスの別の好ましい実施態様によれば、チタン複塩をクロール法により還元して単体のチタンを製造する。
【0127】
ステージ1は、チタン複塩の水性溶液中への溶解を示している。単純化のために、この図においてはこのストリームは水であるとして示した。
【0128】
好ましい実施態様の説明
比較例1
硫酸でイルメナイトを浸出することにより得られた様々な量の溶液、様々な量のアンモニア及び(NH)SOをフラスコに加えた。フラスコを25℃で20分間若しくは1.5時間振とうした。沈殿物が形成された。浸出液のイルメナイト溶液の組成を表1に示し、沈殿物及びチタン溶液の組成を表2及び3に示す。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【0132】
本実施例は、Feカチオン及びチタンカチオンが、低い残留チタン濃度及びFe濃度で、或いは低い残留硫酸アンモニウム濃度で複塩として共沈殿して純度の低い複塩を形成することを教示している。
【0133】
実施例2
硫酸でイルメナイトを浸出することによって得られた様々な量の溶液、アンモニア及び(NHSOをフラスコに加えた。フラスコを25℃で1.5時間振とうした。沈殿物が形成された。沈殿物及び溶液の組成を表4に示す。
【0134】
【表4】

【0135】
本実施例は、高純度のチタン塩の沈殿物が、残留Fe濃度がTiの濃度よりも大幅に高い溶液からでさえも得ることができることを教示している。
【0136】
実施例3
硫酸でイルメナイトを浸出することによって得られた様々な量の溶液、アンモニア及び(NHSOをフラスコに加えた。フラスコを25℃で1.5時間振とうした。沈殿物が形成された。沈殿物及び溶液の組成を表5に示す。
【0137】
【表5】

【0138】
本実施例は、残留アンモニアと残留硫酸塩との間の比が、複塩の純度に劇的な効果を有していることを教示している。
【0139】
実施例4
硫酸でイルメナイトを浸出することによって得られた様々な量の溶液、及び(NHSOをフラスコに加えた。フラスコを30℃で20分間振とうした。沈殿物が形成された。最初の溶液の組成を表6に、結果の組成を表7に示す。
【0140】
【表6】

【0141】
【表7】

【0142】
本実施例は、適切な残留NH/SO比では、沈殿物は、溶液中のFe/Ti比が非常に高くても、実質的にFeを含まないことを教示している。
【0143】
実施例5.1
硫酸でイルメナイトを浸出することによって得られた様々な量の溶液、アンモニア及び(NHSOをフラスコに加えた。フラスコを25℃で1.5時間振とうした。沈殿物が形成された。沈殿物及び溶液の組成を表8に示す。
【0144】
【表8】

【0145】
実施例5.2
バイアルNo.2において得られた結晶及び20% NHHSO溶液をバイアルに加えた。バイアルを30℃で20分間振とうした。固体の組成を表9に示す。
【0146】
【表9】

【0147】
実施例5.3
実施例5.2において得られた複塩2.0grを10grの水に溶解した。溶液を169℃に加熱した。沈殿物が形成された。残存する溶液中のTiの濃度は、約0.05%であった。
【0148】
実施例6
実施例5.1において得られた複塩2.0grを2grの水に溶解した。0.2MのNaOH溶液をpHが4.2になるまでゆっくり加えた。沈殿物が形成された。沈殿物を分離及び洗浄したところ、チタン酸であることが分かった。
【0149】
4N HCl溶液を該溶液に加えて塩化チタニル溶液を形成させた。
【0150】
実施例7
実施例5.2において得られた複塩2.0grを2grの水に溶解した。0.2MのNaOH溶液をpHが4.2になるまでゆっくり加えた。沈殿物が形成された。沈殿物を分離及び洗浄したところ、チタン酸であることが分かった。
【0151】
4N HSO溶液を該溶液に加えて硫酸チタニル溶液を形成させた。
【0152】
実施例8
実施例5.2において得られた複塩2.0grを2grの水に溶解した。0.2MのNaOH溶液をpHが4.2になるまでゆっくり加えた。沈殿物が形成された。沈殿物を分離及び洗浄したところ、チタン酸であることが分かった。沈殿物をプロパノールで洗浄する。
【0153】
濃HSO溶液を該溶液に加えて硫酸チタニル溶液を形成させた。Mg金属を該溶液に加える。マグネシウム塩が形成されつつチタン金属が沈殿する。
【0154】
実施例9
実施例5.2において得られた複塩2.0grを2grの水に溶解した。0.2MのNaOH溶液をpHが4.2になるまでゆっくり加えた。沈殿物が形成された。沈殿物を分離及び洗浄したところ、チタン酸であることが分かった。
【0155】
ラウリルスルホナート溶液を該溶液に加えて有機チタニル塩を形成させた。
【0156】
本発明が上記の例示的な実施例の詳細に限定されないこと、及び本発明がその本質的な特質を離れることなく他の特定の形で具体化され得ることは当業者にとって自明であり、従って、本実施態様及び実施例はあらゆる点で例示的であり限定的でないものと考慮されることが求められており、参照は、上述の記載に対してよりもむしろ添付の特許請求の範囲に対してなされており、それゆえ、特許請求の範囲の均等物の意味及び範囲内にあるあらゆる変更は、本願に包含されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1は、本発明の実施態様のフローダイアグラムを示している。
【図2】図2は、本発明の実施態様のフローダイアグラムを示している。
【図3】図3は、本発明の実施態様のフローダイアグラムを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純度P2のチタン複塩の沈殿物及び純度P3のチタン溶液の形成による、純度P1のチタン供給原料ストリームの工業的精製方法であって、ここでP2>P1>P3であり、当該方法が、
i.該供給原料から、水、チタンイオン、並びにアンモニウム、アルカリ金属のカチオン、プロトン及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオン、並びにOH、SO、HSO、ハロゲン化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオンを含む中間物を形成する工程を含み、該形成された中間物が、更に、(a)チタンイオン、該カチオンの少なくとも一つ及び該アニオンの少なくとも一つを含む複塩沈殿物;及び(b)チタン溶液の存在により特徴付けられ;およびここで、該チタン溶液中の該アニオンの濃度が15%よりも高く、且つ該チタン溶液中の該カチオンの濃度と該アニオンの濃度との間の比が0.2より高く1.6より低く;及び
ii.該溶液から該沈殿物の少なくとも一部を分離する工程を含む、
前記方法。
【請求項2】
前記沈殿物を処理して酸化チタンを製造する工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記沈殿物を処理して酸化チタン以外のチタン製品を製造する工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記沈殿物を処理してチタン金属を製造する工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記チタン供給原料ストリームが水性の廃棄物溶液である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記チタン供給原料ストリームが少なくとも2重量%の鉄カチオンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記チタン供給原料が酸溶液でチタン鉱石を浸出することによって形成される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
P1が約10%と約90%との間の範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項9】
P1が60%より低い、請求項1記載の方法。
【請求項10】
P1が50%より低い、請求項1記載の方法。
【請求項11】
チタン供給原料ストリームが少なくとも0.25のFe/Tiモル比で鉄を含み、かつ、前記チタン複塩沈殿物中の該比が0.02よりも小さい、請求項1記載の方法。
【請求項12】
P1が70%より小さく、かつ、P2が95%より大きい、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記チタン供給原料ストリームが、プロトン並びにハロゲン化物、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つのアニオンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記チタン供給原料ストリームが、工業的プロセスからの副生成物ストリームを含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記チタン供給原料ストリームが鉄を含み、かつ、該供給原料ストリーム中のFe/Tiモル比が約0.2:1と約3:1との間の範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記複塩沈殿物中のFe/Tiモル比が、前記供給原料ストリーム中のFe/Tiモル比よりも少なくとも5倍小さい、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記複塩中の前記カチオンがアンモニウムである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記複塩中のカチオンが、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記複塩中のアニオンが、OH、SO、HSO及びハロゲン化物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記沈殿物が、チタン複塩及びチタンの塩基性複塩からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記沈殿物が、前記供給原料ストリーム中に元々存在するチタンの少なくとも80%を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項22】
比P2/P3が2より大きい、請求項1記載の方法。
【請求項23】
比P2/P3が10より大きい、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記形成された中間物の温度が0−80℃の間の範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記形成された中間物の温度が10−50℃の間の範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記形成された中間物の温度が20−40℃の間の範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記チタン溶液を処理して、鉄金属、酸化鉄、他の鉄製品、前記チタン供給原料溶液中に存在する他の多価カチオンの製品及びそれらの組み合わせからなる群から選択される製品を形成する工程をさらに含み、該処理が結晶化を含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記分離された沈殿物を洗浄して、P4の純度を有する洗浄された沈殿物及びP5の純度を有する洗浄溶液を形成する工程をさらに含み、ここでP4>P2>P5である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記洗浄が、請求項1の群から選択される少なくとも一つのカチオン及び少なくとも一つのアニオンを含む溶液を用いるものであり、ここで該アニオンの濃度が15%より高く、前記チタン溶液中の該カチオンの濃度と該アニオンの濃度との間の比が0.2より高く1.6より低い、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記洗浄が、プロトン、アンモニウム及び硫酸イオンを含む溶液を用いるものである、請求項28記載の方法。
【請求項31】
任意で前以て洗浄した前記沈殿物を再結晶化して、P6の純度を有する沈殿物及び純度P7を有する母液を形成する工程をさらに含み、ここでP6>P2>P7である、請求項1記載の方法。
【請求項32】
前記再結晶化が、請求項1の群から選択される少なくとも一つのカチオン及び少なくとも一つのアニオンを含む溶液を使用する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
a.水性溶液中へのチタン複塩の溶解の工程;及び
b.条件の変化を引き起こして、該溶液から酸化チタン沈殿物を形成する工程をさらに含み、ここで該変化が、希釈、温度上昇、pHの増加及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項34】
前記酸化チタンが、前記供給原料ストリーム中に元々存在するチタンの少なくとも70%を含有する、請求項2記載の方法。
【請求項35】
前記酸化チタンが、5−100ナノメートルの中間サイズ範囲内にあるナノ粒子を含む、請求項2記載の方法。
【請求項36】
前記酸化チタンが、100−300ナノメートルの中間サイズ範囲内にあるナノ粒子を含む、請求項2記載の方法。
【請求項37】
前記鉄製品が、鉄複塩、酸化鉄及び水酸化鉄からなる群から選択される、請求項27記載の方法。
【請求項38】
前記鉄複塩のアニオンが、一価アニオン、二価アニオン、ハロゲン化物アニオン、硫酸アニオン及び重硫酸アニオン並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記鉄複塩が、アンモニウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択されるカチオンを含む、請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記多価カチオンの化合物が、中性の複塩、塩基性の複塩、酸化物、水酸化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項27記載の方法。
【請求項41】
前記再結晶化が、一価カチオンの塩の添加、一価カチオンの塩基の添加、温度の上昇、希釈及びそれらの組み合わせからなる群から選択される作用により引き起こされる、請求項31記載の方法。
【請求項42】
前記チタン複塩からの酸化チタンの製造のための、
a.水性溶液中へのチタン複塩の溶解の工程;及び
b.希釈、温度上昇、pHの増加及びそれらの組み合わせからなる群から選択される作用によって、該溶液からの酸化チタンの沈殿を引き起こす工程
を含む、請求項2記載の方法。
【請求項43】
前記酸化チタンが、前記複塩中に元々存在するチタンの少なくとも80%を含有する、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記温度上昇が、80℃を超えるまで温度を上昇させることを伴う、請求項42記載の方法。
【請求項45】
P2が80%より大きい、請求項1記載の方法。
【請求項46】
P2が85%より大きい、請求項1記載の方法。
【請求項47】
P2が95%より大きい、請求項1記載の方法。
【請求項48】
前記酸化チタンが、前記チタン供給原料ストリーム溶液中に存在していたチタンの少なくとも70%を含有する、請求項2記載の方法。
【請求項49】
前記温度上昇が、120℃から250℃の範囲内になるまで温度を上昇させることを意味する、請求項42記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−511413(P2009−511413A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535187(P2008−535187)
【出願日】平成18年10月15日(2006.10.15)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001185
【国際公開番号】WO2007/043055
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(507132813)ヨマ インターナショナル アーエス (6)
【出願人】(508109829)
【Fターム(参考)】