説明

チタン酸アルミニウム含有セラミック形成バッチ材料およびその使用方法

本開示は、チタン酸アルミニウム含有セラミック形成バッチ材料およびその使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、参照することにより本願に援用される、2009年11月24日出願の米国特許出願第12/624,998号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、チタン酸アルミニウム含有セラミック形成バッチ材料およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
チタン酸アルミニウム含有セラミック体は、例えば触媒コンバータおよびディーゼル微粒子フィルタなどを含めた、排ガス環境の過酷な条件下での用途に利用可能である。これらの用途においてろ過されるのは、排ガス中の多くの汚染物質の中でも、例えば、炭化水素および酸素含有化合物であり、後者としては、例えば、酸化窒素(NOx)および一酸化炭素(CO)、ならびに炭素系のスートおよび粒子状物質が挙げられる。チタン酸アルミニウム含有セラミック体は、それらの用途において被る幅広い温度変化に耐えられる高い耐熱衝撃性を示し、さらには、例えば、高い細孔率、低い熱膨張率(CTE)、アッシュの反応に対する耐性、および目的とする用途に適した破壊係数(MOR)など、ディーゼル微粒子フィルタ用途にとって有利な他の特性も示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジン管理スキームが益々洗練されるに従い、また、触媒組成が種々変化するに従って、これらのチタン酸アルミニウム含有セラミック体の特性、例えば、細孔径、細孔率、破壊係数(MOR)、および熱膨張率(CTE)などを変化させるまたは調整する能力が必要とされている。さらには、これらの望ましい特性を有するチタン酸アルミニウム含有セラミック体の製造方法も必要とされている。加えて、多様なアルミナ源を使用して、これらの望ましい特性を有するチタン酸アルミニウム含有セラミック体を製造する方法も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載される詳細な説明およびさまざまな典型的な実施の形態によれば、本開示は、無機材料および細孔形成材料を含む、新規のチタン酸アルミニウム含有セラミック形成バッチ材料に関する。
【0006】
さまざまな典型的な実施の形態では、無機材料は、少なくとも1種類のアルミナ源、少なくとも1種類のチタニア源、少なくとも1種類のシリカ源、少なくとも1種類のストロンチウム源、少なくとも1種類の水和アルミナ源、および少なくとも1種類のカルシウム源に由来する粒子を含みうる。さらなる実施の形態では、少なくとも1種類のアルミナ源のメジアン粒径は、9.0μm〜11.0μmの範囲でありうる。
【0007】
さまざまな典型的な実施の形態では、細孔形成材料は、少なくとも1種類のグラファイトおよび少なくとも1種類のデンプンに由来する粒子を含みうる。さらなる実施の形態では、細孔形成材料は、上乗せ添加として、バッチ材料の20重量%未満を構成して差し支えない。
【0008】
追加の典型的な実施の形態では、無機材料の少なくとも1種類は、11μm〜15μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のストロンチウム源の粒子;10μm〜14μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類の水和アルミナ源の粒子;および4.5μm〜10μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のカルシウム源の粒子から選択されて差し支えなく;および/または、少なくとも1種類の細孔形成材料は、40μm〜110μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のグラファイトの粒子でありうる。
【0009】
本発明者らは、本開示のバッチ材料を用いてチタン酸アルミニウム含有セラミック体を製造する方法についても見出した。その方法は、(A)バッチ材料を調製し;(B)前記バッチ材料から未焼成体を形成し;(C)前記未焼成体を焼成してチタン酸アルミニウム含有セラミック体を得る、各工程を有しうる。
【0010】
本発明者らはまた、本開示のバッチ材料を使用して、比較チタン酸アルミニウム含有セラミック体と実質的に同一のメジアン細孔径、MOR、および/またはCTEを有するチタン酸アルミニウム含有セラミック体の製造方法を見出した。
【0011】
添付の図面は、本発明のさらなる理解をもたらすために含まれ、本明細書に取り込まれてその一部を構成する。図面は、特許請求の範囲に記載される本発明を制限することは意図されておらず、本発明の典型的な実施の形態を例証するために提供されたものであり、その記載とともに、本発明の原理を説明する役割を担っている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例2に記載されたチタン酸アルミニウム含有セラミック体の23種類のサンプルの熱膨張率、細孔率、およびメジアン細孔径を示すグラフ。
【図2】実施例2に記載されたチタン酸アルミニウム含有セラミック体の23種類のサンプルの破壊係数を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前述の概要および以下の詳細な説明は、両方とも、 典型例であって、単に説明するためのものであり、特許請求の範囲に記載される本発明を限定することは意図されていないことが理解されるべきである。他の実施の形態は、本明細書の熟考および本明細書に開示される実施の形態の実施から当業者にとって明らかになるであろう。本明細書および実施例は 、特許請求の範囲に示される本発明の真の範囲および精神を有する、典型例とみなされることが意図されている。
【0014】
本開示は、新しいチタン酸アルミニウム含有セラミック形成バッチ材料に関する。本明細書では、「バッチ材料」という用語およびそれらのバリエーションは、(a)無機材料、(b)細孔形成材料、および(c)結合剤を含む、実質的に均質な混合物を意味することを目的としている。
【0015】
さまざまな典型的な実施の形態では、無機材料は、少なくとも1種類のアルミナ源、少なくとも1種類のチタニア源、少なくとも1種類のシリカ源、少なくとも1種類のストロンチウム源、少なくとも1種類の水和アルミナ源、および少なくとも1種類のカルシウム源に由来する粒子を含みうる。
【0016】
アルミナ源としては、限定はしないが、他の原料の不存在下で十分に高温まで加熱された場合に、実質的に純粋な酸化アルミニウムを生じるであろう粉末などが挙げられる。これらアルミナ源の例としては、α−アルミナ、ならびに、γ−アルミナまたはρ−アルミナなどの遷移アルミナ、ギブサイト、コランダム(Al23)、ベーマイト(AlO(OH))、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、オキシ水酸化アルミニウム、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0017】
さまざまな典型的な実施の形態では、少なくとも1種類のアルミナ源は、無機材料の少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、または少なくとも50重量%を構成して差し支えなく、例えば、無機材料の47重量%を構成する。
【0018】
さまざまな典型的な実施の形態では、当業者は、少なくとも1種類のアルミナ源のメジアン粒径が、例えば、9.0μm〜11.0μmなど、1μm〜45μmまたは2〜25μmの範囲になるように、少なくとも1種類のアルミナ源を選択して差し支えない。
【0019】
本発明のさまざまな典型的な実施の形態では、少なくとも1種類のアルミナ源は、米国ペンシルベニア州リーツデール所在のAlmatis,Inc.から指定番号A2−325およびA10−325の下で販売される製品、および、米国マサチューセッツ州ウエストフィールド所在のMicro Abrasives Corp.から商品名Microgrit WCA20、WCA25、WCA30、WCA40、WCA45、およびWCA50として市販されているものなど、市販の製品から選択されて差し支えない。少なくとも1つの実施の形態では、少なくとも1種類のアルミナ源は、指定番号A2−325の下で販売されるものである。
【0020】
チタニア源としては、限定はしないが、ルチル、アナターゼ、および非晶質チタニアが挙げられる。例えば、少なくとも1つの実施の形態では、少なくとも1種類のチタニア源は、米国デラウェア州ウィルミントン所在のDuPont Titanium Technologies社から商品名Ti−Pure(登録商標)R−101として市販されるものであって差し支えない。
【0021】
さまざまな典型的な実施の形態では、少なくとも1種類のチタニア源は、無機材料の少なくとも20重量%を構成して差し支えなく、例えば、無機材料の少なくとも25重量%または少なくとも30重量%などでありうる。
【0022】
シリカ源としては、限定はしないが、溶融シリカまたはゾルゲルシリカなどの非晶質シリカ、シリコーン樹脂、低アルミナかつ実質的にアルカリを含まないゼオライト、珪藻土シリカ、カオリン、および、石英またはクリストバライトなどの結晶シリカが挙げられる。加えて、シリカ源は、加熱したときに遊離のシリカを形成する、例えば、ケイ酸またはシリコン有機金属化合物などの化合物を含む、シリカ形成源であってもよい。例えば、少なくとも1つの実施の形態では、少なくとも1種類のシリカ源は、米国イリノイ州トロイグローブ所在のUnimin社から商品名Cerasil300として市販されるもの、または米国イリノイ州エルコ所在のUnimin社から市販されるImsil A25でありうる。
【0023】
さまざまな典型的な実施の形態では、少なくとも1種類のシリカ源は、無機材料の少なくとも5重量%を構成して差し支えなく、例えば、無機材料の少なくとも8重量%または少なくとも10重量%などでありうる。
【0024】
ストロンチウム源としては、限定はしないが、炭酸ストロンチウムおよび硝酸ストロンチウムが挙げられる。例えば、少なくとも1つの実施の形態では、少なくとも1種類のストロンチウム源は、ドイツ国ハノーファー所在のSolvay & CPC Barium Strontium社から市販される、指定番号タイプWまたはタイプDFとして市販される炭酸ストロンチウムであって差し支えない。
【0025】
さまざまな実施の形態では、少なくとも1種類のストロンチウム源は、無機材料の少なくとも5重量%を構成して差し支えなく、例えば、無機材料の少なくとも8重量%でありうる。さまざまな実施の形態では、当業者は、少なくとも1種類のストロンチウム源のメジアン粒径が、例えば11μm〜15μmなど、1μm〜30μmまたは3〜25μmの範囲になるように、少なくとも1種類のストロンチウム源を選択して差し支えない。
【0026】
水和アルミナ源としては、限定はしないが 三水和アルミナ、ベーマイト(AlO(OH))(ギブサイト)、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、オキシ水酸化アルミニウム、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0027】
例えば、少なくとも1つの実施の形態では、少なくとも1種類の水和アルミナ源は、米国ニュージャージー州エジソン所在のJ.M. Huber CorporationによってSB8000またはSB432という指定番号で市販される三水和アルミナでありうる。
【0028】
さまざまな実施の形態では、少なくとも1種類の水和アルミナ源は、無機材料の少なくとも1重量%を構成して差し支えなく、例えば無機材料の少なくとも3重量%を構成する。さまざまな実施の形態では、当業者は、少なくとも1種類の水和アルミナ源のメジアン粒径の範囲が例えば10μm〜14μmなど、1μm〜30μmの範囲になるように、少なくとも1種類の水和アルミナ源を選択して差し支えない。
【0029】
カルシウム源としては、限定はしないが、重質炭酸カルシウム(GCC)および沈降炭酸カルシウム(PCC)が挙げられる。例えば、少なくとも1つの実施の形態では、少なくとも1種類のカルシウム源は、米国オハイオ州シンシナティ所在のOMYA North America Inc.によってHydrocarb OGという商品名で市販される炭酸カルシウム、または、米国ニュージャージー州エジソン所在のJ.M. Huber CorporationによってタイプW4またはM4という商品名で市販される炭酸カルシウムでありうる。
【0030】
さまざまな実施の形態では、少なくとも1種類のカルシウム源は、例えば無機材料の少なくとも1重量%など、無機材料の0.5重量%以上を構成しうる。さまざまな実施の形態では、当業者は、少なくとも1種類のカルシウム源のメジアン粒径が、例えば4.5μm〜10μmなど、1μm〜30μmの範囲になるように、少なくとも1種類のカルシウム源を選択して差し支えない。
【0031】
さまざまな実施の形態では、無機材料は、少なくとも1種類のランタン源をさらに含みうる。ランタン源としては、限定はしないが、酸化ランタン、炭酸ランタンおよびシュウ酸ランタンが挙げられる。例えば、少なくとも1つの実施の形態では、少なくとも1種類のランタン源は、米国カリフォルニア州マウンテンパス所在のMolyCorp Minerals,LLCから指定タイプ5205として市販される酸化ランタンでありうる。
【0032】
さまざまな実施の形態では、少なくとも1種類のランタン源は、例えば無機材料の少なくとも0.01重量%または0.02重量%など、無機材料の0.05重量%以上を構成しうる。さまざまな実施の形態では、当業者は、少なくとも1種類のランタン源のメジアン粒径が、例えば11μm〜15μmなど、1μm〜40μmの範囲になるように、少なくとも1種類のランタン源を選択して差し支えない。
【0033】
さまざまな典型的な実施の形態では、細孔形成材料は、少なくとも1種類のグラファイトおよび少なくとも1種類のデンプンを含みうる。
【0034】
グラファイト源としては、限定はしないが、天然または合成のグラファイトが挙げられる。例えば、少なくとも1つの実施の形態では、少なくとも1種類のグラファイトは、米国ニュージャージー州アズベリー所在のAsbury Graphite Mills社によって、タイプA625、4602、4623、または4740の商品名で市販されるものでありうる。
【0035】
さまざまな典型的な実施の形態では、当業者は、少なくとも1種類のグラファイトのメジアン粒径が1μm〜400μm、または5μm〜300μmの範囲、例えば40μm〜110μmなどになるように、少なくとも1種類のグラファイトを選択して差し支えない。
【0036】
デンプン源としては、限定はしないが、トウモロコシ、オオムギ、豆、ジャガイモ、米、タピオカ、エンドウ豆、サゴヤシ、小麦、カンナ、およびクルミの殻の粉が挙げられる。少なくとも1つの実施の形態では、少なくとも1種類のデンプンは、米、トウモロコシ、小麦、サゴヤシおよびジャガイモから選択されうる。例えば、少なくとも1つの実施の形態では、少なくとも1種類のデンプンは、ドイツ国エムリヒハイム所在のEmsland−Starke GmbHから市販される天然のジャガイモデンプンなど、ジャガイモデンプンでありうる。
【0037】
さまざまな典型的な実施の形態では、当業者は、少なくとも1種類のデンプンのメジアン粒径が、例えば40μm〜50μmなど、1μm〜100μm、または25μm〜75μmの範囲になりうるように、少なくとも1種類のデンプンを選択して差し支えない。
【0038】
さまざまな典型的な実施の形態では、細孔形成材料は、所望の結果を達成できるいずれかの量で存在しうる。例えば、細孔形成材料は、バッチ材料の少なくとも1重量%を構成して差し支えなく、上乗せ添加として加えられる(すなわち、無機材料はバッチ材料の100%を構成し、バッチ材料の合計は101%になる)。例えば、細孔形成材料は、上乗せ添加として加えられて、バッチ材料の少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも18重量%、または少なくとも20重量%を構成しうる。さらなる実施の形態では、細孔形成材料は、上乗せ添加として、前記バッチ材料の20重量%未満を構成して差し支えなく、例えば18重量%でありうる。本開示のさらなる実施の形態では、少なくとも1種類のグラファイトは、上乗せ添加として、バッチ材料の少なくとも1重量%を構成して差し支えなく、例えば少なくとも5重量%であり、例えば10重量%でありうる。さらなる実施の形態では、少なくとも1種類のデンプンは、上乗せ添加として、バッチ材料の少なくとも1重量%を構成して差し支えなく、例えば、少なくとも5重量%であり、例えば8重量%などでありうる。
【0039】
さまざまな典型的な実施の形態では、少なくとも1種類の無機材料は、11μm〜15μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のストロンチウム源の粒子;10μm〜14μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類の水和アルミナ源の粒子;および4.5μm〜10μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のカルシウム源の粒子から選択されて差し支えなく;および/または、少なくとも1種類の細孔形成材料は、40μm〜110μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のグラファイトの粒子でありうる。さらなる実施の形態では、少なくとも2種類または少なくとも3種類の材料は、所定のバッチ材料のための群より選択されて差し支えない。さらなる実施の形態では、バッチ材料は、11μm〜15μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のストロンチウム源の粒子;10μm〜14μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類の水和アルミナ源の粒子;4.5μm〜10μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のカルシウム源の粒子;および40μm〜110μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のグラファイトの粒子を含みうる。
【0040】
本発明者らは、本開示のバッチ材料を用いて、チタン酸アルミニウム含有セラミック体を製造する方法を見出した。その方法は、A)前記バッチ材料を調製し;(B)前記バッチ材料から未焼成体を形成し;(C)前記未焼成体を焼成してチタン酸アルミニウム含有セラミック体を得る、各工程を含みうる。
【0041】
バッチ材料は、当業者に既知のいずれかの方法で製造されて差し支えない。例として、少なくとも1つの実施の形態では、無機材料は、粉末状の材料として合わされ、実質的に均質な混合物を形成するように緊密に混合されうる。細孔形成材料は、無機材料が緊密に混合される前または後にバッチ混合物を形成するように添加されうる。さまざまな実施の形態では、次に、細孔形成材料および無機材料は、実質的に均質なバッチ材料を形成するように緊密に混合されうる。無機材料と少なくとも1種類の細孔形成材料を合わせて実質的に均質なバッチ材料を達成するための適切なステップおよび条件を決定することは、当業者の能力の範囲内である。
【0042】
追加の典型的な実施の形態では、バッチ材料は、バッチ材料の製造に有用な他の既知の成分と混合されてもよい。例えば、可塑化混合物を形成するために、有機結合剤などの結合剤および/または溶媒がバッチ材料に加えられて差し支えない。これらの実施の形態では、適切な結合剤の選択は、当業者の能力の範囲内である。単なる例として、有機結合剤は、セルロース含有成分から選択されてもよい。例えば、メチルセルロース、メチルセルロース誘導体、およびそれらの組合せが用いられうる。
【0043】
必要に応じて適切な溶媒を選択することもまた当業者の能力の範囲内である。さまざまな典型的な実施の形態では、溶媒は、例えば脱イオン水などの水であってもよい。
【0044】
有機結合剤および溶媒などの追加の成分は、実質的に均質な混合物を形成するために、個別に任意の順番で、または一緒に、バッチ材料と混合されて差し支えない。実質的に均質な材料を達成するために、バッチ材料を有機結合剤および溶媒などの追加の成分と混合するのに適切な条件を決定することは、当業者の能力の範囲内である。例えば、成分は、実質的に均質な混合物を形成するために、混練プロセスによって混合されてもよい。
【0045】
混合物は、さまざまな実施の形態では、当業者に既知のいずれかのプロセスによってセラミック体へと成形されうる。例えば、混合物は射出成形または押出成形されて差し支えなく、未焼成体を形成するために、当業者に既知の従来の方法によって随意的に乾燥されうる。さまざまな典型的な実施の形態では、次に、未焼成体は、チタン酸アルミニウム含有セラミック体を形成するために、焼成されうる。
【0046】
一部には未焼成体の大きさおよび組成に応じて、チタン酸アルミニウム含有セラミック体を達成するために、例えば、設備、温度、および持続時間を含めた焼成条件などセラミック体形成のための適切な方法および条件を決定することは、当業者の能力の範囲内である。チタン酸アルミニウム含有セラミック体のための焼成サイクルの非限定的な例は、 参照することによって本明細書に援用される国際公開第2006/130759号パンフレットにおいて確認することができる。
【0047】
バッチ材料の組合せを注意深く選択することによって、本開示のチタン酸アルミニウム含有セラミック体の特性を、例えば特定のメジアン細孔径、MOR、および/またはCTEを有するように調整してもよい。さまざまな実施の形態では、これは、一部には、材料のメジアン粒径または粗さに基づいて、本開示のチタン酸アルミニウム含有セラミック体のためのバッチ材料を選択することによって達成されうる。例えば、本明細書に開示されるさまざまな実施の形態では、少なくとも1種類のアルミナ源が9.0μm〜11.0μmの範囲のメジアン粒径を有している、本明細書に記載のバッチ材料から得られるチタン酸アルミニウム含有セラミック体は、
細孔形成材料が、上乗せ添加として、前記バッチ材料の20重量%未満を構成し、
少なくとも1種類の無機材料が、
(a)11μm〜15μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のストロンチウム源の粒子;
(b)10μm〜14μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類の水和アルミナ源の粒子;および
(c)4.5μm〜10μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のカルシウム源の粒子
から選択され;および/または、
少なくとも1種類の細孔形成材料が、40μm〜110μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のグラファイトの粒子であって差し支えなく、
このチタン酸アルミニウム含有セラミック体は、13μm〜15μmの範囲のメジアン細孔径、220psi(1517kPa)を超えるMOR、800℃における6未満のCTE、および/または48〜52%の範囲の細孔率を有しうる。
【0048】
本開示はまた、本明細書に開示されるバッチ材料を用いた比較チタン酸アルミニウム含有セラミック体と実質的に同一のメジアン細孔径、MOR、および/またはCTEを有するチタン酸アルミニウム含有セラミック体の製造方法に関する。本開示のさらなる実施の形態では、チタン酸アルミニウム含有セラミック体は、比較チタン酸アルミニウム含有セラミック体と実質的に同一の細孔率を有しうる。
【0049】
バッチ材料の組合せを注意深く選択することによって、本開示のチタン酸アルミニウム含有セラミック体の特性は、粗いアルミナ源を用いて製造された比較チタン酸アルミニウム含有セラミック体と実質的に同一のメジアン細孔径、MOR、および/またはCTEを有するように調整されうる。さまざまな実施の形態では、これは、比較チタン酸アルミニウム含有セラミック体の製造に用いたものよりも粗い、本開示のチタン酸アルミニウム含有セラミック体用のバッチ材料を選択することによって達成されうる。
【0050】
本明細書では「比較チタン酸アルミニウム含有セラミック体」という用語は、本開示のチタン酸アルミニウム含有セラミック体と実質的に同一の方法で成形および焼成された比較用のバッチ材料から作られたチタン酸アルミニウム含有セラミック体を意味する。「比較バッチ材料」は、本明細書に開示されるバッチ材料と同一の成分を含み、比較バッチ材料の少なくとも1種類のアルミナ源がバッチ材料のアルミナ源よりも粗いという点において、少なくとも変化している。本明細書では、「粗い」という用語およびそれらのバリエーションは、所定の材料源のメジアン粒径が同一の材料の別の起源より大きいことを意味することを目的としている。例えば、12μmのメジアン粒径を有するアルミナ源は、10μmのメジアン粒径を有するアルミナ源よりも粗い。逆に、本開示のバッチ材料のアルミナ源は、比較バッチ材料のものよりもメジアン粒径が小さいことから、比較バッチ材料よりも「細かい」と言える。
【0051】
本開示の少なくとも1つの実施の形態では、比較バッチ材料は、少なくとも1種類のアルミナ源、少なくとも1種類のチタニア源、少なくとも1種類のシリカ源、少なくとも1種類のストロンチウム源、少なくとも1種類の水和アルミナ源、および少なくとも1種類のカルシウム源に由来する粒子を含む無機材料と、少なくとも1種類のグラファイトおよび少なくとも1種類のデンプンに由来する粒子を含む細孔形成材料とを含みうる。しかしながら、少なくとも1種類のアルミナ源は、本開示のバッチ材料よりも粗い。
【0052】
本開示の他の実施の形態では、バッチ材料の少なくとも1種類のチタニア源、少なくとも1種類のシリカ源、少なくとも1種類のストロンチウム源、少なくとも1種類の水和アルミナ源、少なくとも1種類のカルシウム源、または少なくとも1種類のグラファイトのうち少なくとも1種類の粒子は、比較バッチ材料の粒子よりも粗い。さらなる実施の形態では、列挙した材料のうち少なくとも2種類、少なくとも3種類、または4種類すべてが比較バッチ材料の粒子より粗くてもよい。
【0053】
本開示の追加の実施の形態では、比較バッチ材料は、本開示のバッチ材料のものと同一の化学量論を有しうる。
【0054】
本開示のさまざまな実施の形態では、バッチ材料の成分は、それらから作られるチタン酸アルミニウム含有セラミック体が、例えば13μm〜17μmまたは13μm〜15μmの範囲など、5μm〜35μmの範囲のメジアン細孔径を有するように選択されて差し支えない。
【0055】
本開示のさらなる実施の形態では、バッチ材料の成分は、それらから作られるチタン酸アルミニウム含有セラミック体が、例えば35%〜60%、40%〜55%、または48%〜52%の範囲など、30%〜65%の範囲の細孔率を有するように選択されて差し支えない。
【0056】
本開示のさまざまな実施の形態では、チタン酸アルミニウム含有セラミック体は、セル製品(例えば、300セル/平方インチ(cpsi)(46.5セル/cm2)/13ミル(0.33mm)のウェブ厚)において、250psi(1724kPa)以上または300psi以上など、例えば、220psi(1517kPa)を超える、200psi(1379kPa)以上のMORを有しうる。
【0057】
本開示のさまざまな実施の形態では、チタン酸アルミニウム含有セラミック体は、800℃において、例えば5未満または4未満など、6未満のCTEを有しうる。
【0058】
少なくとも1つの実施の形態では、チタン酸アルミニウム含有セラミック体は、13μm〜15μmの範囲のメジアン細孔径、48%〜52%の範囲の細孔率、220psi(1517kPa)を超えるMOR、および800℃において6未満のCTEを有しうる。
【0059】
他に示されない限り、本明細書および特許請求の範囲に用いられるすべての数字は、そう表現されているか否かにかかわらず、すべての事例において「約」という用語によって修飾されるものと理解されるべきである。本明細書および特許請求の範囲で用いられる正確な数値は、本発明の追加の実施の形態を形成することもまた理解されるべきである。実施例に開示される数値の正確性を確保するために努力がなされた。しかしながら、測定値は、本質的に、それぞれの測定技術に見られる標準偏差から生じるある特定の誤差を含みうる。
【0060】
本発明の他の実施の形態は、本明細書の熟考および本明細書に開示される本発明の実施から当業者にとって明らかになるであろう本明細書および実施例は、特許請求の範囲によって示される本発明の真の範囲および精神の下、単に、典型例とみなされるべきであることが意図されている。
【実施例】
【0061】
次の実施例は、特許請求の範囲に記載される発明を限定することは意図されていない。
【0062】
実施例1
異なるアルミナ源を使用した以外は同一のバッチ材料および量を用いて、2種類のチタン酸アルミニウム含有セラミック体を調製した。具体的には、バッチAは、46.6重量%のA10−325アルミナ、30重量%のR101チタニア、10.2重量%のCerasil 300シリカ、8.0重量%のタイプWの炭酸ストロンチウム、3.7重量%の水和アルミナ、1.4重量%のOMYA炭酸カルシウム、および0.2重量%の5205酸化ランタンを含む、無機材料を用いて調製された。バッチBは、A10−325アルミナの代わりにA2−325アルミナを使用した以外は同一の材料を使用して調製した。
【0063】
両方のバッチにおいて、無機材料は、互いに粉末の形態で混合された。次に、細孔形成材料(上乗せ添加として、10.0重量%の4602グラファイトおよび8.0重量%のジャガイモデンプン)が無機材料に加えられ、緊密に混合されて実質的に均質な混合物が生じた。バッチ材料のメジアン粒径は下記表1に記載されている。
【表1】

【0064】
上乗せ添加として、混合物の4.5重量%を構成するMethocelが、粉末としてバッチ材料に添加された。その後、上乗せ添加として、混合物の16重量%を構成する水が加えられ、混合物が混練されて、可塑化混合物が形成された。
【0065】
可塑化混合物が押出成形されてセル製品(例えば、300セル/平方インチ(cpsi)(46.5セル/cm2)/13ミル(0.33mm)のウェブ厚)が作られ、得られた未焼成体は、参照することによって本明細書に取り込まれる、国際公開第2006/130759号パンフレットに記載される標準的なチタン酸アルミナ焼成スケジュールで焼成された。
【0066】
得られたチタン酸アルミナ含有セラミック体を分析した。その特性は下記表2に記載されている。
【表2】

【0067】
表2に記載される結果から分かるように、バッチ材料中のアルミナ源の粒径を変化させると、得られるセラミック体の特性に影響を与える。具体的には、材料の細孔率は似ているが、粗いアルミナから作られたサンプルAは、より大きいメジアン細孔径、および低いCTEを有し、サンプルBよりも収縮が少なかった。
【0068】
実施例2
実施例1に見られるアルミナ源における変化の影響を相殺するために、バッチ材料において粗い材料を使用した場合の影響を調べることを目的として、追加のセラミック体が調製された。下記表3に記載されるバッチ材料および量を用いて、23種類のチタン酸アルミニウム含有セラミック体が調製された。この場合もまた、2種類の異なるアルミナ源(A10−325およびA2−325)をバッチに用いた。加えて、ストロンチウム、カルシウム、水和アルミナ、およびグラファイト源を変化させた。バッチの化学量論はすべて同一に保った。
【0069】
表3に見られるように、サンプル1、11、および23は、すべて、アルミナ源としてA10−325を使用した同一のバッチ組成から作られた。これらのバッチ材料は、上記実施例1のサンプルAと同一である。加えて、サンプル7および8は、両方とも、アルミナ源としてA10−325を用いた同一のバッチ組成から作られている。この実施例の目的では、サンプル1、7〜8、11、および23は、比較サンプルであり、この比較バッチ材料で用いたアルミナ源A10−325は、残りのサンプル(サンプル2〜6、9〜10、および12〜22)のバッチ材料に用いたアルミナ源A2−325よりも粗い。
【0070】
実施例1に開示される方法と同一の方法を用いて表3に記載されるバッチ材料からチタン酸アルミニウム含有セラミック体を調製した。
【表3−1】

【表3−2】

【0071】
得られたチタン酸アルミナ含有セラミック体を分析した。その特性を、図1および2に示す。具体的には、図1には、バッチが、800℃におけるCTE、細孔率、およびメジアン細孔径(MPD)の関数としてプロットされている。図2では、バッチはMORの関数としてプロットされている。
【0072】
図1および2に示されるデータからわかるように、ほとんどのサンプルは、48〜52%の所望の範囲内の細孔率を有する。サンプル2、13、16、および22を含む幾つかのサンプルは、特に、800℃における6未満の所望のCTE、13〜15μmのメジアン粒径、および220psi(1517kPa)を超えるMORも有している。
【0073】
実施例3
サンプル24〜38は、実施例1および2に記載されるバッチ材料から調製された。具体的には、サンプル24、29、および34は、A10−325アルミナを含む、実施例1にサンプルAとして記載されたバッチ材料を用いて調製された。サンプル24、29、および34は、用いたアルミナ源がこの実施例の他のサンプルのものよりも粗い、いわゆる比較チタン酸アルミニウム含有セラミック体である。具体的には、残りのサンプルはA2−325アルミナを用いて調製された。サンプル25、30、および35は、実施例2にサンプル2として記載されたバッチ材料を用いて調製された。サンプル26、31、および36は、実施例2にサンプル13として記載されたバッチ材料を用いて調製された。サンプル27、32、および35は、実施例2にサンプル16として記載されたバッチ材料を用いて作られ、サンプル28、33、および38は、実施例2にサンプル22として記載されたバッチ材料を用いて調製された。
【0074】
セラミック体は、実施例1に記載された手順と同一の手順を用いて調製された。ダイの大きさは、下記表4に記載されるように変化させた。
【0075】
得られたチタン酸アルミナ含有セラミック体を分析した。その特性は、表4に示されている。
【表4】

【0076】
表4に見られるように、すべてのサンプルが48〜52%の範囲内の細孔率を有し、すべてのサンプルが220psi(1517kPa)を超えるMORを有する。加えて、1つを除いたすべてのサンプルは、800℃において6未満のCTEを有する。最終的に、メジアン細孔径は11.2μm〜15.9μmの範囲にあり、その半数を超える細孔径が13μm〜15μmの範囲内にある。よって、本開示のセラミック体は、比較チタン酸アルミニウム含有セラミック体と実質的に同一の特性を有しうることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バッチ材料を調製する工程であって、
(1)少なくとも1種類のアルミナ源、少なくとも1種類のチタニア源、少なくとも1種類のシリカ源、少なくとも1種類のストロンチウム源、少なくとも1種類の水和アルミナ源、および少なくとも1種類のカルシウム源に由来する粒子を含む無機材料であって、
前記少なくとも1種類のアルミナ源のメジアン粒径が9.0μm〜11.0μmの範囲である、無機材料と、
(2)少なくとも1種類のグラファイトおよび少なくとも1種類のデンプンに由来する粒子を含む細孔形成材料であって、
前記少なくとも1種類の細孔形成材料が、上乗せ添加として、前記バッチ材料の20重量%未満からなり、
前記バッチ材料の少なくとも1つが、
(a)11μm〜15μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のストロンチウム源の粒子;
(b)10μm〜14μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類の水和アルミナ源の粒子;
(c)4.5μm〜10μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のカルシウム源の粒子;および
(d)40μm〜110μmの範囲のメジアン粒径を有する少なくとも1種類のグラファイトの粒子;
から選択されることを特徴とする、細孔形成材料と、
を含むバッチ材料を調製する工程と、
(B)前記バッチ材料から未焼成体を形成する工程と、
(C)前記未焼成体を焼成してチタン酸アルミニウム含有セラミック体を得る工程と、
を含む、チタン酸アルミニウム含有セラミック体の製造方法。
【請求項2】
前記チタン酸アルミニウム含有セラミック体が13μm〜15μmの範囲のメジアン細孔径を有することを特徴とする請求項1記載のチタン酸アルミニウム含有セラミック体の製造方法。
【請求項3】
前記チタン酸アルミニウム含有セラミック体が、48〜52%の範囲の細孔率を有することを特徴とする請求項1または2記載のチタン酸アルミニウム含有セラミック体の製造方法。
【請求項4】
チタン酸アルミニウム含有セラミック体が220を超える破壊係数(MOR)を有することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のチタン酸アルミニウム含有セラミック体の製造方法。
【請求項5】
前記チタン酸アルミニウム含有セラミック体が、800℃において6未満の熱膨張率(CTE)を有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のチタン酸アルミニウム含有セラミック体の製造方法。
【請求項6】
前記バッチ材料が酸化ランタンをさらに含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載のチタン酸アルミニウム含有セラミック体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−512172(P2013−512172A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541102(P2012−541102)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/056704
【国際公開番号】WO2011/066125
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】