説明

チップ抵抗器のトリミング方法

【課題】本発明は、高精度の抵抗値が得られるチップ抵抗器のトリミング方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明のチップ抵抗器のトリミング方法は、絶縁基板11の上面の両端部に形成された一対の上面電極12と電気的に接続される抵抗体13を形成する工程と、一対の上面電極12それぞれの上面に電圧測定用プローブ15、電流通電用プローブ16を接触させることによって抵抗体13の抵抗値を測定しながら、抵抗体13の一側面13aから中心方向に向かってレーザによって抵抗体13を切削してトリミング溝14を形成する工程とを備え、電圧測定用プローブ15の接触点15aを電流通電用プローブ16の接触点16aより抵抗体13側に位置させるとともに、電圧測定用プローブ15の接触点15aを電流通電用プローブ16の接触点16aより抵抗体13の他の側面13b側に位置させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に使用されるチップ抵抗器のトリミング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のチップ抵抗器のトリミング方法は、図3において、絶縁基板1の上面の両端部に一対の上面電極2を形成した後、この一対の上面電極2と電気的に接続される抵抗体3を形成し、その後、抵抗体3の抵抗値を測定しながら抵抗体3の一側面3aから抵抗体3の中心方向に向かってレーザで抵抗体3を切削してトリミング溝4を形成するようにしていた。そして、抵抗体3の抵抗値測定方法は、一対の上面電極2それぞれの上面に、電圧測定用プローブ5、電流通電用プローブ6を接触させ、電流通電用プローブ6から定電流を流しながら、電圧測定用プローブ5で電圧値を測定して抵抗値を測定するようにしていた。また、電圧測定用プローブ5の上面電極2との接触点5aを、電流通電用プローブ6の上面電極2との接触点6aより抵抗体3側(内側)に位置させるとともに、電圧測定用プローブ5の接触点5aと電流通電用プローブ6の接触点6aを、横方向に並ぶように(一対の上面電極2同士が向かい合う方向と同じ方向に並ぶように)配置していた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−150580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のチップ抵抗器の製造方法においては、トリミング溝4を形成すると、電流は主に図3の矢印Aの方向に流れるため、電圧測定用プローブ5の上面電極2との接触点5aと電流通電用プローブ6の上面電極2との接触点6aを横方向に配置していると、電圧測定用プローブ5の接触点5aにほとんど電流は流れず、正確な電圧値が測定できなくなり、これにより、精度の良い抵抗値が得られないという課題を有していた。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、高精度の抵抗値が得られるチップ抵抗器のトリミング方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0008】
本発明の請求項1に記載の発明は、絶縁基板の上面の両端部に一対の上面電極を形成する工程と、この一対の上面電極と電気的に接続される抵抗体を形成する工程と、前記一対の上面電極それぞれの上面に電圧測定用プローブ、電流通電用プローブを接触させることによって前記抵抗体の抵抗値を測定しながら、前記抵抗体の一側面から中心方向に向かってレーザによって前記抵抗体を切削してトリミング溝を形成する工程とを備え、前記電圧測定用プローブの接触点を電流通電用プローブの接触点より前記抵抗体側に位置させるとともに、前記電圧測定用プローブの接触点を電流通電用プローブの接触点より前記抵抗体の他の側面側に位置させるようにしたもので、この方法によれば、トリミング溝を形成したとき、電圧測定用プローブの接触点に大きな電流が流れるため、正確な電圧値が測定でき、これにより、高精度の抵抗値が得られるという作用効果が得られるものである。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明は、特に、すべての電圧測定用プローブおよび電流通電用プローブを、斜め上方から同時に同じ方向に押し付けるようにしたもので、この方法によれば、一対の上面電極に電圧測定用プローブおよび電流通電用プローブを確実に接触させることができるため、接触抵抗を抑えることができ、これにより、より高精度の抵抗値が得られ、さらに、電圧測定用プローブ、電流通電用プローブの位置関係や各プローブ間の距離は変わらないため、測定抵抗値に影響を与えないという作用効果が得られるものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明のチップ抵抗器のトリミング方法は、一対の上面電極に電圧測定用プローブ、電流通電用プローブを接触させることによって抵抗体の抵抗値を測定しながら、抵抗体の一側面から中心方向に向かってレーザによって抵抗体を切削してトリミング溝を形成し、さらに、電圧測定用プローブの接触点を電流通電用プローブの接触点より抵抗体側に位置させるとともに、前記電圧測定用プローブの接触点を電流通電用プローブの接触点より前記抵抗体の他の側面側に位置させるようにしているため、トリミング溝を形成したとき、電圧測定用プローブの接触点に大きな電流が流れ、これにより、正確な電圧値が測定できるため、高精度の抵抗値が得られるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のチップ抵抗器のトリミング方法を説明する上面図
【図2】同チップ抵抗器のトリミングをしている状態の側面図
【図3】従来のチップ抵抗器のトリミング方法を説明する上面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器のトリミング方法について説明する。
【0013】
図1において、まず、Al23を96%含有するアルミナで方形状に構成された絶縁基板11を用意する。
【0014】
なお、表面に予め分割のための複数の1次分割溝と2次分割溝を有し、この1次分割溝、2次分割溝で1つのチップ抵抗器に相当する部分が区切られたシート状の絶縁基板を通常は用いるが、説明を簡単にするために、以降は1つのチップ抵抗器を用いた説明をする。
【0015】
次に、絶縁基板11の上面の両端部に、銀ペーストまたは銀を主成分とする銀パラジウム合金導体ペーストを印刷して焼成することにより一対の上面電極12を形成する。
【0016】
次に、絶縁基板11、一対の上面電極12の上面に、酸化ルテニウムや銅ニッケル等の抵抗材料からなる抵抗体13を印刷またはスパッタにより形成する。なお、この抵抗体13は一対の上面電極12間を橋絡して一対の上面電極12と電気的に接続されるように矩形状に構成する。
【0017】
次に、抵抗体13の一部をレーザで直線状に切削してトリミング溝14を形成することによって抵抗体13をトリミングし、チップ抵抗器が所定の抵抗値になるようにする。このとき、図1に示すように、一対の電圧測定用プローブ15、一対の電流通電用プローブ16を一対の上面電極12それぞれの上面に接触させるとともに、一対の電流通電用プローブ16から定電流を流し、一対の電圧測定用プローブ15で電圧値を測定することによって抵抗値を測定しながら、抵抗体13の一側面13aから抵抗体13の中心方向に向かってレーザで切削してトリミング溝14を形成する。ここで、トリミングをしている状態の一方の上面電極12から他方の上面電極12を見た側面図を図2に示す。
【0018】
このとき、図1、図2に示すように、電圧測定用プローブ15の上面電極12との接触点15aを、電流通電用プローブ16の上面電極12との接触点16aより抵抗体13側に位置させる。また、電圧測定用プローブ15の接触点15aを電流通電用プローブ16の接触点16aより抵抗体13の他の側面13b側、すなわちトリミング溝14が形成される抵抗体13の一側面13aと反対側になるようにする。なお、図1では、電圧計、電流計や、電圧測定用プローブ15、電流通電用プローブ16は模式的に表しており、実際の大きさ、位置とは異なる。さらに、接触点15a、16aはその位置のみを表しており、実際の大きさとは異なる。
【0019】
さらに、電圧測定用プローブ15および電流通電用プローブ16は、垂直方向ではなく、図2のように、抵抗体13の一側面13a側の斜め上方から上面電極12との各接触点15a、16aへ伸びており、この方向から(図2の矢印Bの向きに)電圧測定用プローブ15および電流通電用プローブ16を一対の上面電極12に押し付けるようにする。これにより、一対の上面電極12に電圧測定用プローブ15および電流通電用プローブ16を確実に接触させることができるため、接触抵抗を抑えることができ、これにより、より高精度の抵抗値が得られる。なお、電圧測定用プローブ15および電流通電用プローブ16を、垂直方向から上面電極12へ伸びるようにしないのは、トリミングの際のレーザがプローブに当たらないようにするためである。また、電圧測定用プローブ15および電流通電用プローブ16は、抵抗体13の一側面13a側の斜め上方からではなく、抵抗体13の他の側面13b側の斜め上方から一対の上面電極12に押し付けられるようにしてもよいし、矢印Bの向きではなく水平方向に力を加えてもよい。
【0020】
なお、このとき、電圧測定用プローブ15、電流通電用プローブ16が一対の上面電極12上を滑って、その接触点15a、16aが動く可能性があるが、この場合は、一方の上面電極12、他方の上面電極12にそれぞれ接触される電圧測定用プローブ15、電流通電用プローブ16のすべてを根元で一体化して、同時に同じ方向に押し付けるようにすれば、各電圧測定用プローブ15、電流通電用プローブ16の位置関係や各プローブ間の距離は変わらないため、測定抵抗値に影響はない。
【0021】
そして、上記のようにトリミングした後、プリコートガラス、保護膜、側面電極、めっき層等を適宜形成して、本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器が製造される。
【0022】
上記したように本発明の一実施の形態においては、一対の上面電極12に電圧測定用プローブ15、電流通電用プローブ16を接触させることによって抵抗体13の抵抗値を測定しながら、抵抗体13の一側面13aから中心方向に向かってレーザによって抵抗体13を切削してトリミング溝14を形成し、さらに、電圧測定用プローブ15の接触点15aを電流通電用プローブ16の接触点16aより抵抗体13側に位置させるとともに、前記電圧測定用プローブ15の接触点15aを電流通電用プローブ16の接触点16aより前記抵抗体13の他の側面13b側に位置させるようにしているため、トリミング溝14を形成したとき、電圧測定用プローブ15の接触点15aに大きな電流が流れ、これにより、正確な電圧値が測定できるため、高精度の抵抗値が得られるという効果が得られるものである。
【0023】
すなわち、トリミング溝14は、抵抗体13の一側面13aから抵抗体13の中心方向に向かって形成されるため、トリミングが進むと電流通電用プローブ16から流れる電流は、図1の矢印Cのように抵抗体13の他の側面13b側を通るようになる。したがって、電圧測定用プローブ15の上面電極12との接触点15aを電流通電用プローブ16の上面電極12との接触点16aより抵抗体13側に位置させ、かつ電圧測定用プローブ15の接触点15aを電流通電用プローブ16の接触点16aより抵抗体13の他の側面13b側に形成すれば、電圧測定用プローブ15の接触点15a上に大きな電流が流れるようになる。
【0024】
また、トリミングの開始直後は、まだ電流は抵抗体13の他の側面13b側を通らないため、電圧測定用プローブ15の接触点15a上にはあまり電流が流れないが、この時点では粗調整の段階であるため最終の抵抗値にはあまり影響はない。一方、トリミングの終了直前では、電流はトリミング溝14の外側の抵抗体13の他の側面13b側を通るため、電圧測定用プローブ15の接触点15a上に電流が流れ、そして、この時点は抵抗値の最終調整の段階となり、このときに電圧測定用プローブ15の接触点15a上に電流が流れるようにすることで、正確な電圧値が測定できるようにし、これにより、高精度の抵抗値が得られる。
【0025】
なお、上記本発明の一実施の形態において、トリミング溝14の形状を直線状としたが、L字状としても、抵抗体13の一側面13aから中心方向に向かって切削された部分を有するため、同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係るチップ抵抗器のトリミング方法は、高精度の抵抗値が得られるという効果を有するものであり、特に各種電子機器に使用されるチップ抵抗器等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0027】
11 絶縁基板
12 上面電極
13 抵抗体
13a 抵抗体の一側面
13b 抵抗体の他の側面
14 トリミング溝
15 電圧測定用プローブ
15a 電圧測定用プローブの接触点
16 電流通電用プローブ
16a 電流通電用プローブの接触点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の上面の両端部に一対の上面電極を形成する工程と、この一対の上面電極と電気的に接続される抵抗体を形成する工程と、前記一対の上面電極それぞれの上面に電圧測定用プローブ、電流通電用プローブを接触させることによって前記抵抗体の抵抗値を測定しながら、前記抵抗体の一側面から中心方向に向かってレーザによって前記抵抗体を切削してトリミング溝を形成する工程とを備え、前記電圧測定用プローブの接触点を電流通電用プローブの接触点より前記抵抗体側に位置させるとともに、前記電圧測定用プローブの接触点を電流通電用プローブの接触点より前記抵抗体の他の側面側に位置させるようにしたチップ抵抗器のトリミング方法。
【請求項2】
すべての電圧測定用プローブおよび電流通電用プローブを、斜め上方から同時に同じ方向に押し付けるようにした請求項1記載のチップ抵抗器のトリミング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−84698(P2013−84698A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222480(P2011−222480)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】