説明

チトクロムP450−2C9をコードする遺伝子における変異を検出する方法

本発明は、チトクロムP450-2C9をコードする遺伝子の中に位置する二つ以上の変異を、同時に同定するための方法を記載する。多重検出は、多重にタグ付加された対立遺伝子特異的プライマー伸長(ASPE)、およびそうした伸長プライマーのプローブへの、好ましくはアドレス可能なアンチタグ支持体へのハイブリダイゼーションを用いて達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、チトクロムP450-2C9をコードする遺伝子の中に位置する変異の検出のための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の説明
CYP2Cファミリーは、様々な外因性および内因性基質、ならびに約20%の現在の処方薬の代謝を担っている。特にCYP2C9は、狭い治療係数(NTI)を有するいくつかの薬剤のフェーズI代謝において中心的な役割を有しており、その最も特徴的なものにはワーファリン(Rettie et al., 1992(非特許文献1))およびフェニトイン(Bajpai et al., 1996(非特許文献2))が含まれる。
【0003】
ヒトチトクロムP450-2C9遺伝子は約55キロベースの領域にわたり、九つのエキソンから構成されている(de Morais et al.,1993(非特許文献3))。遺伝子は染色体10(q24)上に存在し、他の密接に関係する2C遺伝子間で以下の順序でクラスター形成している:Cen-2C18-2C19-2C9-2C8-Tel(Gray et al.,1995(非特許文献4))。
【0004】
2C9変種の命名法は、ヒトヒトチトクロムP450(CYP)対立遺伝子命名法委員会(http://www.imm.ki.se/CYPalleles/(非特許文献5))による概説に従う。最も一般的な変種を代表する野生型対立遺伝子は、2C9*1と命名されている。それに応じて、他の変種は*2から*12に分類される。例えば、2C9*2変種はヌクレオチド430位におけるシトシンからチミン(C→T)への塩基転換を表す。これは、ポリペプチド中の配置144においてアルギニン(Arg)からシステイン(Cys)に変化させる(R144C)よう、コードされた野生型アミノ酸を変更する。
【0005】
六つの最も一般的なCYP2C9変種を表1に示す。
【0006】
(表1)最も一般的なCYP4502C9変種

【0007】
2C9*6を除いて、変種のほとんどは酵素活性の減少をもたらし、これは異種性発現システムにおいて検証されている(Haining et al.,1996(非特許文献6);Lee et al.,2002(非特許文献7))。2C9*6変種は、ポリペプチド配列中のフレームシフトのために、ヌル酵素活性をもたらす。
【0008】
図1は最も一般的に遭遇するCYP2C9変種の図式概略図を示す。
【0009】
遺伝子診断は、個体の遺伝学的プロファイルに基づいて薬物有害反応の危険性のある個体を同定するために用いることが可能で、医師が投与計画を変更すること、または薬物有害反応の潜在的危険性を減少させるために別の薬物を選択することを可能にする。しかしながら、CYP2C9をコードする遺伝子中の特異的変異の検出のための迅速かつ正確な試験の必要性が存在する。例えば、Motorola、Genlex、ACLARA、およびNanogenなど数多くの製造業者が、CYP2Cファミリーにおける変異を検出するために用いられ得るキットを産生しているが、これらのキットのほとんどは、CYP2C9(2C9*2および2C9*3)をコードする遺伝子中の最も一般的な二つの変異を検出するのみで、その他を除外している。
【0010】
多重対立遺伝子特異的プライマー伸長および変異の固体支持体検出
多重対立遺伝子プライマー伸長、および伸長されたプライマーの固体支持体へのハイブリダイゼーションは、先行技術の中に記述されている。ASPE技術は、米国特許第4,851,331号(特許文献1)に概説されている。本技術は、ゲノム中の特異的な多型部位の存在または非存在を同定するよう設計される。
【0011】
変異検出のため支持体とのハイブリダイゼーションと連動した多重ASPEを、以下のように概説することができる:
1)多重化PCRを利用して、多型遺伝子座を含むDNAの領域を増幅する工程。
2)DNAの増幅領域が対立遺伝子特異的伸長のための標的配列として働く、プライマーの対立遺伝子特異的伸長。標的配列と完全マッチを形成する3'末端ヌクレオチドを有する伸長プライマーを伸長して、伸長産物を形成する。検出のため伸長産物を効率的に標識する、改変ヌクレオチドを伸長産物に組み入れる。または、伸長プライマーは、標識配列とミスマッチを形成する3'末端ヌクレオチドを代わりに含み得る。この場合、プライマー伸長は起こらない。
3)マイクロアレイなどの固体支持体上で、伸長産物の5'端に相補的であるプローブに伸長産物をハイブリダイズする工程。
【0012】
上記の方法論において用いられる伸長プライマーは、その5'端に特有の配列タグを有する。例えば、配列タグは伸長産物を固体支持体上で捕獲することを可能にし得る。
【0013】
上記技術のバリエーションは、例えば米国特許第6,287,778号(特許文献2)およびPCT出願(WO 00/47766)(特許文献3)に記載されている。
【0014】
CYP2C9をコードする遺伝子における変種の検出のための、費用効率がよく、迅速、かつ正確な方法を提供することが、本発明の目的である。
【0015】
【特許文献1】米国特許第4,851,331号
【特許文献2】米国特許第6,287,778号
【特許文献3】PCT出願(WO 00/47766)
【非特許文献1】Rettie et al., 1992
【非特許文献2】Bajpai et al., 1996
【非特許文献3】de Morais et al.,1993
【非特許文献4】Gray et al.,1995
【非特許文献5】ヒトヒトチトクロムP450(CYP)対立遺伝子命名法委員会、インターネット<URL:http://www.imm.ki.se/CYPalleles/>
【非特許文献6】Haining et al.,1996
【非特許文献7】Lee et al.,2002
【発明の開示】
【0016】
発明の概要
ひとつの態様において、本発明は、表1に認められる変種の群より選択される試料中の変種の存在または非存在を検出するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する。
【0017】
SEQ ID NO:4および SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7、ならびにSEQ ID NO:8 およびSEQ ID NO:9からなるPCR 対の群より選択される、1つまたは複数のPCRプライマー対を用いて、上述の変種を含み得るDNAの領域を増幅する工程。
【0018】
SEQ ID NO:10〜SEQ ID NO:19からなる群より選択される少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーを、増幅DNAの相補的領域にハイブリダイズする工程であって、各タグ付き対立遺伝子特異的プライマーは、増幅DNAの領域に相補的な3'部分、上述の変異部位のひとつの1つの対立遺伝子(野生型または変異型)に相補的な3'末端ヌクレオチド、およびプローブ配列に相補的な5'部分を有する、工程。
【0019】
プライマーの3'末端ヌクレオチドが標的配列中の対応するヌクレオチドに相補的である場合に、プライマーの標識伸長産物が合成されることによって、タグ付きASPEプライマーを伸長させる工程;プライマーの末端ヌクレオチドが標的配列中の対応するヌクレオチドに相補的でない場合には伸長産物は合成されない。
【0020】
伸長産物をプローブにハイブリダイズする工程、および標識伸長産物の検出。標識伸長産物の検出は、ASPEプライマーの3'末端ヌクレオチドに相補的な対立遺伝子の存在を示している。標識された伸長産物が存在しない場合、ASPEプライマーの3'端に対応する対立遺伝子が試料中に存在しないと判定される。
【0021】
もうひとつの態様において、本発明は、チトクロムP450-2C9をコードする遺伝子中の多型部位において、CYP2C9*2、CYP2C9*3、CYP2C9*4、CYP2C9*5、およびCYP2C9*6からなる群より選択されるヌクレオチド変種の存在または非存在を検出するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する;
a)変種を含むDNAの領域を増幅して、増幅DNA産物を形成する工程;
b)少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーを、増幅DNA産物中の相補的標的配列にハイブリダイズする工程であって、各タグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーが、増幅DNAにハイブリダイズすることが可能な3'端ハイブリダイズ部分、および対応するプローブ配列に相補的な5'端タグ部分を有し、かつ少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーの3'端ハイブリダイズ部分がSEQ ID NO:10〜SEQ ID NO:19の塩基25以上からなる群より選択される配列を含み、3'端ハイブリダイズ部分の末端ヌクレオチドが、疑わしい変異体ヌクレオチドまたはその部位の対応する野生型ヌクレオチドのいずれかに相補的である、工程;
c)3'端ハイブリダイズ部分の末端ヌクレオチドが増幅DNA産物中の多型部位の一つの対立遺伝子に完全マッチしている場合、少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーを、標識ヌクレオチドを用いて伸長させる工程;
d)少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーを、対応するプローブ配列にハイブリダイズし、標識伸長産物の存在を検出する工程。
【0022】
もうひとつの態様において、本発明は、チトクロムP450-2C9をコードする遺伝子中の多型部位において、CYP2C9*2、CYP2C9*3、CYP2C9*4、CYP2C9*5、およびCYP2C9*6からなる群より選択されるヌクレオチド変種の存在または非存在を検出するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する;
a)変種を含むDNAの領域を増幅して、増幅DNA産物を形成する工程;
b)SEQ ID NO:10〜SEQ ID NO:19からなる群より選択される少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーを、増幅DNA産物中の相補的標的配列にハイブリダイズする工程であって、各タグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーが、増幅DNAにハイブリダイズすることが可能な3'端ハイブリダイズ部分および対応するプローブ配列に相補的な5'端タグ部分を有し、3'端ハイブリダイズ部分の末端ヌクレオチドが、疑わしい変異体ヌクレオチドまたは部位の対応する野生型ヌクレオチドのいずれかに相補的である、工程;
c)3'端ハイブリダイズ部分の末端ヌクレオチドが増幅DNA産物中の多型部位の一つの対立遺伝子に完全マッチしている場合、少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーを、標識ヌクレオチドを用いて伸長させる工程;
d)少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーを、対応するプローブ配列にハイブリダイズし、標識された伸長産物の存在を検出する工程。
【0023】
もうひとつの態様において、本発明は、チトクロムP450-2C9をコードする遺伝子中の多型部位において、CYP2C9*2、CYP2C9*3、CYP2C9*4、CYP2C9*5、およびCYP2C9*6からなる群より選択されるヌクレオチド変種の存在または非存在を検出するためのキットであって、各タグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーが、疑わしい変異体ヌクレオチドまたは多型部位の一つの対応する野生型ヌクレオチドのいずれかに相補的である3'末端ヌクレオチドを含む3'端ハイブリダイゼーション部分、および対応するプローブ配列に相補的な5'端タグ部分を有し、かつSEQ ID NO:10〜SEQ ID NO:19からなる群より選択される、少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーのセットを含むキットを提供する。
【0024】
もう一つの態様において、本発明は、チトクロムP450-2C9をコードする遺伝子中の少なくとも二つの多型部位においてCYP2C9*2、CYP2C9*3、CYP2C9*4、CYP2C9*5、およびCYP2C9*6からなる群より選択される変種ヌクレオチドの存在または非存在を検出する際に使用されるキットであって、少なくとも二つの多型部位を含むDNAの領域を増幅するための、以下からなる対の群より選択されるPCRプライマーの少なくとも二つの対を含む、PCR増幅プライマーのセットを含むキットを提供する:
SEQ ID NO:4および SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7、ならびにSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9。
【0025】
好ましい態様の説明
本出願において用いられる次の用語は、以下に定義された意味を有すると理解される。
【0026】
本出願において用いられる「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は、長さが1ヌクレオチドより大きいDNA配列を指す。そのような配列は一本鎖か、または二本鎖のいずれかの型で存在し得る。本明細書に記載されたオリゴヌクレオチドの例には、PCRプライマー、ASPEプライマー、およびアンチタグ(anti-tags)が含まれる。
【0027】
「対立遺伝子」という用語は、ヌクレオチド配列の変種を指すために本明細書で用いられる。
【0028】
本明細書で用いられる「対立遺伝子特異的プライマー伸長(ASPE)」という表現は、対応するDNA配列にハイブリダイズするプライマーであって、かつそうしたプライマーの3'末端ヌクレオチドが上手くハイブリダイズするのに応じて伸長するプライマーを利用した変異検出法を指す。DNAの増幅領域は、ASPEプライマーのための標的配列として働く。ASPEプライマーには、DNAの増幅領域にハイブリダイズする3'端-ハイブリダイズ部分が含まれる。標的配列と完全マッチを形成する3'末端ヌクレオチドを有するASPEプライマーは、伸長して伸長産物を形成する。検出のために効率的に伸長産物を標識する改変ヌクレオチドは、伸長産物に取り込まれ得る。または、伸長プライマーは、標的配列とミスマッチを形成する3'末端ヌクレオチドを代わりに含み得る。この場合、伸長のために用いられるポリメラーゼが偶発的にエキソヌクレアーゼ活性を有するか、または誤取り込みをする傾向があるということがなければ、プライマー伸長は起こらない。
【0029】
標的配列と完全マッチを形成する3'末端ヌクレオチドを保有するASPEプライマーを伸長して、伸長産物を形成する。検出目的で伸長産物を効率的に標識する改変ヌクレオチドは、伸長産物の中に取り込まれ得る。または、伸長プライマーは、標的配列とミスマッチを形成する3'末端ヌクレオチドを代わりに含み得る。この場合には、伸長のために用いられるポリメラーゼが偶発的にエキソヌクレアーゼ活性を有することがなければ、プライマー伸長は起こらない。
【0030】
「遺伝子型」という用語は、生物の遺伝子構成を指す。より具体的には、この用語は個体において存在する対立遺伝子の同一性を指す。個体またはDNA試料の「遺伝子型解析」とは、公知の多型部位において個体により所有されている二つの対立遺伝子の、ヌクレオチド塩基の観点から見た性質を同定することを指す。
【0031】
本明細書で用いられる「多型」という用語は、遺伝子またはその一部の二つ以上の型の共在を指す。
【0032】
本明細書で用いられる「PCR」という用語は、ポリメラーゼ連鎖反応を指す。PCRは、熱安定性ポリメラーゼ、ならびに増幅される配列の一端に(+)鎖に相補的な一つのプライマーおよび増幅される配列のもう一つの端に(-)鎖に相補的なもう一つのプライマーというプライマー対を用いて、DNA塩基配列を増幅する方法である。新しく合成されたDNA鎖は、続いて同じプライマー配列のための鋳型として働くことができ、熱変成、プライマーアニーリング、および鎖伸長の連続回転により、所望の配列の迅速かつ非常に特異的な増幅がもたらされる。PCRは、DNA試料中の規定配列の存在を検出するために用いることができる。
【0033】
本明細書で用いられる「プライマー」という用語は、DNA試料中の相補的配列にハイブリダイズすることが可能な、短い一本鎖オリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、鋳型依存的DNA合成のための開始点として働く。DNAポリメラーゼによって、デオキシリボヌクレオチドをプライマーに接合することができる。「プライマー対」または「プライマーセット」は、増幅されるDNA配列の5'端の相補体とハイブリダイズする5'上流プライマー、および増幅されるDNA配列の3'端とハイブリダイズする3'下流プライマーを含むプライマーのセットを指す。本明細書で用いられる「PCRプライマー」という用語は、PCR反応のために用いられるプライマーを指す。本明細書で用いられる「ASPEプライマー」という用語は、ASPE反応のために用いられるプライマーを指す。
【0034】
本明細書で用いられる「タグ」という用語は、ASPEプライマーに連結しているオリゴヌクレオチド配列を指す。配列は、通常、特有かつヒトゲノムに非相補的であるが、プローブ配列には実質的に相補的である。プローブ配列は、例えば、固体支持体に付着していてもよい。タグは、ASPEプライマーをプローブに結合させるために働く。
【0035】
本明細書で用いられる「タグ付きASPEプライマー」という用語は、タグに連結しているASPEプライマーを指す。
【0036】
本明細書で用いられる「アンチタグ」または「プローブ」という用語は、ASPEプライマーのタグ配列に相補的、かつハイブリダイズ可能な配列を有するオリゴヌクレオチド配列を指す。「アンチタグ」は、支持体に連結していてもよい。
【0037】
本明細書で用いられる「野生型」または「wt」という用語は、遺伝子の正常な、または変異していない、または機能的な型を指す。
【0038】
本明細書で用いられる「ホモ接合性野生型」という用語は、同じ対立遺伝子の二つのコピーを有する個体を指し、そのような対立遺伝子は遺伝子の正常かつ機能的な型と見なされているものである。
【0039】
本明細書で用いられる「ヘテロ接合性」または「HET」という用語は、同じ遺伝子の二つの異なる対立遺伝子を有する個体を指す。
【0040】
本明細書で用いられる「ホモ接合性変異体」という用語は、同じ対立遺伝子の二つのコピーを有する個体を指し、そのような対立遺伝子は遺伝子の変異体型と見なされているものである。
【0041】
本明細書で用いられる「変異体」という用語は、遺伝子の変異した、または潜在的に非機能的な型を指す。
【0042】
本発明は、薬物有害反応を受けやすい個体の遺伝子型を解析するための、迅速で、非常に特異的で、費用効率のよい方法の必要性に応じて開発された。より具体的には、本発明は、CYP2C9遺伝子中の変異に起因する薬物代謝異常を有し得る個体を同定するための方法を提供する。
【0043】
本発明は、CYP2C9をコードする遺伝子の中に位置する複数の変異を検出する新規の多重法を提供する。具体的には、表1に認められる変異からなる群より選択される二つ以上の変異の存在または非存在の検出のために、本方法論を用いることができる。好ましい態様において、本発明は表1に認められる全ての変異の存在または非存在を検出する方法を提供する。
【0044】
表1に認められる一つまたは複数の変異の陽性検出は、酵素活性障害の素因を有する個体であることを示し得る。
【0045】
本発明は、高レベルの特異性によってさらに特徴付けられる。そのような特異性は、生じるいかなる結果もゲノム標的の真の表示であり、単に反応中に存在する試薬間に生じる非特異的相互作用の結果でないということを保証するために必要である。反応混合物中に存在するほとんどが非相補的な多数の配列が反応条件によっては非特異的に相互作用し得る、多重化されたDNAに基づく試験にとって、これは特に重要である。
【0046】
本発明の方法論は、検出を促進するため、タグ付きかつ標識された伸長産物のプローブへのハイブリダイゼーションと多重ASPE技術とを組み合わせて利用する。そのような方法論は、ハイスループットの臨床遺伝子型解析の適応に適している。
【0047】
ひとつの態様において、本発明は、表1に認められる変異の群より選択される試料中の変異の存在または非存在を検出する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する。
【0048】
上述の変異を含み得るDNAの領域を増幅する工程。
【0049】
少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーを増幅DNAの相補的領域にハイブリダイズする工程であって、各タグ付き対立遺伝子特異的プライマーが、増幅DNAの領域に相補的な3'部分、上述の変異部位のひとつの1つの対立遺伝子(野生型または変異体)に相補的な3'末端ヌクレオチド、およびプローブ配列に相補的な5'部分を有する、工程。
【0050】
プライマーの3'末端ヌクレオチドが標的配列中の対応するヌクレオチドに相補的である場合に、プライマーの標識伸長産物が合成されることにより、タグ付きASPEプライマーを伸長させる工程;プライマーの末端ヌクレオチドが標的配列中の対応するヌクレオチドに相補的でない場合には、伸長産物は合成されない。
【0051】
伸長産物をプローブにハイブリダイズする工程、および標識された伸長産物の検出。標識された伸長産物の検出は、ASPEプライマーの3'末端ヌクレオチドに相補的な対立遺伝子の存在を示している。標識された伸長産物が存在しない場合、ASPEプライマーの3'端に相補的な対立遺伝子が試料中に存在しないと判定される。
【0052】
上述の方法の一例の一般的概要を図2に提示する。当技術分野において公知の方法を用いて、DNA試料は最初に調製される10。チトクロムP450-2C9をコードする遺伝子中の変種部位を含むDNAの領域を増幅するために、多重PCR増幅20を実施する。その後、多重ASPE反応30を実施する。例としてのみ、33は遺伝子の野生型および変異型対立遺伝子を説明している。工程36において、ASPEプライマーをDNAの増幅領域にハイブリダイズさせる。ASPEプライマーの3'末端ヌクレオチドが標的配列中の対応するヌクレオチドに相補的である場合、以下に詳述するように標識伸長産物が形成される39。標識伸長産物の存在を、例えばxMAP検出50を用いて検出し得る、アドレス可能なユニバーサル選別アレイ40上で、ASPEを選別し得る。
【0053】
DNA試料調製
以下の方法において使用するための核酸(最も好ましくはゲノムDNA)を提供するため、当技術分野において公知の様々な方法を用いて患者試料を抽出することができる。
【0054】
増幅
最初の工程において、変異部位を含むCYP2C9をコードする遺伝子由来のDNAの領域が増幅される。表2において同定された多型部位を含む、CYP2C9遺伝子の領域の配列は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、およびSEQ ID NO:3に対応する。
【0055】
本発明の好ましい態様において、CYP2C9をコードする遺伝子中の変異部位を含む領域のPCR増幅は、以下からなるプライマー対の群より選択されるPCRプライマーの少なくとも2つの対を用いて開始する:SEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7、ならびにSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9。
【0056】
プライマーの各対と表2に記載された変異部位との関係を表3に提示する。
【0057】
(表2)CYP2C9変異を含む領域を増幅するために用いられるプライマー対

【0058】
当業者は、標的多型領域ならびに欠失および重複領域を増幅するために、別のPCRプライマーを用い得ることを認識すると考えられるが、しかしながら、好ましい態様においては、反応混合物における他の配列との最小限の非特異的相互作用のため、表2に記載されたプライマーが選択される。
【0059】
ASPE
本発明の方法のASPE工程は、SEQ ID NO:10〜SEQ ID NO:19からなるASPEプライマーの群より選択されるタグ付きASPEプライマーを用いて実施される。
【0060】
本発明のASPEプライマーセットは、そのような対立遺伝子特異的プライマーを利用して、診断試験の高い特異性および正確性を確実にするよう最適化されている。
【0061】
表3は、本発明の好ましい態様において用いられるASPEプライマーの一覧を提示している。末尾の「wt」は、特異的変異部位においてCYP2C9をコードする遺伝子の野生型を検出するために用いられるASPEプライマーを示している。末尾の「mut」は、特異的変異部位においてCYP2C9をコードする遺伝子の変異型を検出するために用いられるASPEプライマーを示している。SEQ ID NO:10〜SEQ ID NO:19のそれぞれの塩基1から24は、特異的プローブ配列に相補的であるASPEプライマーの5'部分である。表3に記載された特異的配列が好ましいが、本発明の別の態様においては、表3の配列の異なる5'部分(SEQ ID NO:10〜19の塩基1から24)を表3の配列の異なる3'端ハイブリダイズ部分(SEQ ID NO:10〜19の塩基25以上)と組み合わせることが可能である。
【0062】
ASPEプライマーのそれぞれの方向性もまた、表3に提示している。
【0063】
(表3)P450-2C9のASPEプライマー配列

【0064】
伸長プライマーの3'端ハイブリダイズ部分は、増幅される物質にハイブリダイズされる。ASPEプライマーの3'末端ヌクレオチドが多型部位に相補的である場合、プライマー伸長は改変ヌクレオチドを用いて実行される。ASPEプライマーの3'末端ヌクレオチドが多型領域に相補的でない場合、プライマー伸長は起こらない。
【0065】
ひとつの態様において、伸長産物の標識は、蛍光(ストレプトアビジンーフィコエリスリン)または化学発光(ストレプトアビジンー西洋ワサビペルオキシダーゼ)反応を用いて同定され得る、ビオチン化ヌクレオチドの伸長産物への取り込みを介して達成される。しかしながら、他の標識技術が利用され得ることを、当業者は認識すると考えられる。検出のために有用な標識の例には、放射標識、蛍光標識(例えば、フルオレセインおよびローダミン)、核磁気共鳴活性標識、陽電子放射断層撮影(PET)スキャナー、およびルシフェリンなどの化学発光体、およびペルオキシダーゼまたはフォスファターゼなどの酵素マーカーが含まれるが、それらに限定されない。
【0066】
上記の方法論において用いられる各ASPEプライマーは、その5'端に特有の配列タグを有する。配列タグにより、例えば、検出を促進するための固体支持体上での捕捉を通じて、伸長産物を高い特異性で検出することが可能となる。
【0067】
検出
本発明の対立遺伝子特異的プライマーのタグ付き5'部分はプローブ配列に相補的である。対立遺伝子特異的プライマーを対応するプローブ配列にハイブリダイズすると、伸長産物の存在を検出できる。
【0068】
好ましい態様において、本発明の方法論において用いられるプローブは、例えば「ユニバーサルな」ビーズに基づくマイクロアレイなどの固体支持体に連結している。
【0069】
本発明に用いられ得る支持体の例には、ビーズに基づくマイクロアレイおよび2Dガラスマイクロアレイが含まれるが、それらに限定されない。マイクロアレイの調製、使用、および解析は、当業者にとって周知である。(例えば、Brennan, T. M. et al.(1995)米国特許第5,474,796号;Schena et al.(1996)Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10614-10619; Baldeschweiler et al.(1995), PCT出願WO95/251116; Shalon D. et al.(1995)PCT出願WO95/35505; Heller, R. A. et al.(1997)Proc. Natl. Acad. Sci. 94:2150-2155;およびHeller, M. J. et al.(1997)米国特許第5,605,662号を参照されたい)。例えば、特異的変異の存在または非存在を同定するための化学発光または蛍光技術を用いたアレイにより、検出を達成することができる。
【0070】
ユニバーサルアレイは、関心対象の標的を間接的に検出する選別ツールとして機能し、セットとして等温で交差ハイブリダイズが最小限となるよう設計されている。本発明で用いられ得るマイクロアレイの例には、Luminex's(登録商標)ビーズに基づくマイクロアレイシステム、およびMetrigenix's(商標)フロースルーチップ技術が含まれるが、それらに限定されるべきない。
【0071】
ひとつの態様において、例えば、Luminex's 100xMAP(商標)蛍光に基づく固体支持体マイクロアレイシステムが利用される。上記、ASPEプライマー/伸長産物のタグ領域に相補的なアンチタグ配列は、内部を蛍光で色分けされたミクロスフェアの表面に連結される。ミクロスフェアの各セットがそれ自身に特徴的なスペクトルアドレスを有するアンチタグミクロスフェアのアレイが産生される。タグ付きの、伸長された、ビオチン化されたASPEプライマーの混合物は、アンチタグ付きミクロスフェアのアレイと組み合わせられ、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイズが可能となる。
【0072】
反応混合物中で、ASPEプライマーの末端ヌクレオチドが標的配列中の対応するヌクレオチドに相補的である場合、合成される標識伸長産物を検出するために蛍光レポーター分子(例えば、ストレプトアビジンーフィコエリスリン)が用いられる。
【0073】
ミクロスフェア、伸長産物などを含む反応混合物を、例えばLuminex's 100xMAP(商標)などの微小流体を用いてミクロスフェアを一列縦隊に整列する読み取り装置の中に注入する。ミクロスフェアの内部、およびアンチタグ配列にハイブリダイズした伸長産物の形態で表面に付着している両方の色を照射するために、レーザーを用いる。Luminex 100xMAP(商標)は、受信したシグナルを解釈し、野生型および/または変異型対立遺伝子の存在を同定する。表2に示された変異の任意の一つまたは複数の変異型対立遺伝子の存在は、薬物有害反応を受けやすい素因を示し得る。本発明の特異的伸長産物およびアンチタグ付きミクロスフェアと関連するデータを解析するように設計されたソフトウェアが提供され得る。
【0074】
もうひとつの態様においては、当技術分野において公知のとおり、Metrigenixフロースルー三次元微小チャネルバイオチップ(Cheek, B. J. Steel A. B., Torres, M. P., Yu, Y., およびYang H. Anal. Chem. 2001, 73, 5777-5783)が遺伝子型解析のために利用される。本態様において、微小チャネルの各セットは異なるユニバーサルアンチタグ集団を表す。上記、ASPEプライマー/伸長産物のタグ領域に相補的なアンチタグ配列は、セルを含む複数の微小チャネルの内側表面に付着している。複数のセルによりチップが作り上げられる。ビオチン化伸長産物を含む反応混合物は、ストレプトアビジンー西洋ワサビペルオキシダーゼなどの化学発光レポーター基質の存在下、セルの中を流れる。個体の遺伝子型を同定するため、ORCA-ER CCD(Hamamatsu Photonics K. K., Hamamatsu City, Japan)など当技術分野において公知の技術、および画像ソフトウェアを用いてマイクロアレイチップを画像化することができる。
【0075】
キット
さらなる態様において、本発明はCYP2C9をコードする遺伝子中の変異の多重検出のためのキットを提供する。
【0076】
関心対象の変異の検出のために用いられ得るキットには、以下を含む次の構成要素が含まれ得る:関心対象の変異部位を含む領域を増幅するためのPCRプライマーミックス(任意でdNTPを含む)、標識伸長産物の作製のためのASPEプライマーミックス(任意でdNTPを含む)、およびASPEプライマーのタグ領域に相補的なアンチタグを有するマイクロアレイビーズなどの固体支持体。さらに、当業者は、例えば緩衝液およびポリメラーゼなどを含むキット中に含まれ得る他の構成要素を認識すると考えられる。
【0077】
本発明のキットは、検出される全ての変異のためのPCRプライマー対、ASPEプライマー、およびタグ付き支持体を含み得るか、または個別の末端使用者の必要性に最適となるよう特注生産され得る。例えば、末端使用者がCYP2C9遺伝子中の変異の4個のみを検出したい場合、所望の変異の検出に必要なPCRプライマー対、ASPEプライマー、および支持体のみを含むようにキットを特注生産することができる。従って、製品の末端使用者が、彼らの具体的な要求に適合するキットを設計できる。さらに、末端使用者は、例えば、検出のためユニバーサルなビーズに基づくマイクロアレイを用いる場合、実施する試験をソフトウェアレベルで調節することもできる。例えば、所望の変異のためのビーズのみを読み取るようなソフトウェアか、または所望の変異データからの結果のみを報告するソフトウェアをキットと共に提供することができる。アッセイを別のプラットフォーム上で実行する場合、ソフトウェアによりデータ報告の類似の調節を得ることができる。
【0078】
表1に認められる特異的変異に関して本方法を記載してきたが、さらなる変異を検出するために用いられるPCRプライマーおよびASPEプライマーを上記の方法およびキットの中に含むことができることを、当業者は認識すると考えられる。
【0079】
実施例1:CYP2C9をコードする遺伝子における変異のASPE/マイクロアレイ検出
1)オリゴヌクレオチド
全てのオリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies(Coralville, IA)によって合成された。PCRプライマーは無修飾であり、標準的な脱塩手順により精製した。カルボキシル化ミクロスフェアと連結するために、ユニバーサルアンチタグ(プローブ)を3'-C7アミノ修飾した。全てのアンチタグを逆相HPLC精製した。対立遺伝子特異的配列に対して5'側に24merのユニバーサルタグ配列からなるキメラASPEプライマーもまた無修飾であったが、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により精製した。再構成の後、供給業者により提供された吸光係数を用いて、正確なオリゴヌクレオチド濃度を分光測定で決定した。再構成されたオリゴヌクレオチドを200 nmから800 nmの間でスキャンし、260 nmにおいて吸光度を測定してオリゴヌクレオチド濃度を計算した。
【0080】
2)試薬
Platinum Taq、Platinum Tsp、個々のdNTP、およびビオチン-dCTPは、Invitrogen Corporation(Carlsbad, CA)から購入した。シュリンプアルカリフォスファターゼおよびエキソヌクレアーゼIは、USB Corporation(Cleveland, OH)から購入した。カルボキシル化蛍光ミクロスフェアは、Luminex Corporation(Austin, TX)により提供された。EDCクロスリンカー(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)は、Pierce(Rockford, IL)から購入した。MES(2-(N-モルフォリーノ)エタンスルホン酸)、10% SDS、NaCl、Tris、Triton X-100、Tween-20、およびTE緩衝液を含むOmniPur試薬は、EM Science(Darmstadt, Germany)から購入した。ストレプトアビジン-接合フィコエリスリンは、Molecular Probes Inc.(Eugene, OR)から入手した。
【0081】
3)遺伝子型解析
a)多重PCR(3重):
最終容積25uL中でゲノムDNA 25ngを用いて多重PCRを実行した。「無標的」PCRネガティブ対照を各アッセイ実行に含んだ。反応は、30 mmol/L Tris-HCl、pH8.4、75 mmol/L KCl、2 mmol/L MgCl2、各200 umol/L dNTP、Platinum Taq 5ユニット、および0.8 umol/Lのプライマーからなった。MJ Research PTC-200 thermocycler(Waterdown MA)中で、95℃で5分間に続いて、95℃で30秒間、58℃で30秒間、および72℃で30秒間を30サイクルというサイクルパラメータ設定を用いて、試料をサイクルさせた。その後、試料を72℃で5分間保持し、使用まで4℃で保管した。図3は、本発明のプライマー対を用いて得られた三つのアンプリマーの検出を示すゲルを表している。
【0082】
b)対立遺伝子特異的プライマー伸長:
ASPE反応に先立って、プライマー伸長反応の間にビオチン-dCTPを効率的に取り込むことができるように、PCR反応物をシュリンプアルカリフォスファターゼ(SAP)で処理し、いかなる残存ヌクレオチド(特にdCTP)も不活性化した。また、タグ付きASPEプライマーおよび伸長反応自体へのいかなる干渉も回避するために、各PCR反応をエキソヌクレアーゼI(EXO)で処理し、残存PCRプライマーを分解した。PCR反応物 25μLに対して、SAP 2.0μL(2.0ユニット)およびEXO 0.5μL(5ユニット)を直接加え、かつ試料をボルテックスし、短時間遠心分離した。その後、試料を37℃で30分間インキュベートし、続いて酵素を不活性化するため99℃で15分間インキュベートした。その後、試料を直接ASPE反応に加えた。
【0083】
処理されたPCR産物の5μLを用いて、最終容量20μL中で多重ASPEを実行した。各反応は、20 mmol/L Tris-HCl pH8.4、50 mmol/L KCl、1.25 mmol/L MgCl2、5 umol/L ビオチン-dCTP、それぞれ5 umol/L のdATP、dGTP、およびdTTP、1.5ユニット Platinum Tsp、および50 nmol/L ASPEプライマープールからなった。ASPE反応物を96℃で2分間インキュベートし、その後94℃で30秒間、54℃で30秒間、および74℃で60秒間の40サイクルに供した。その後、反応物を使用まで4℃で保持した。
【0084】
c)ビーズの連結:
Luminex's 1工程カルボジイミド連結手順の後、アミノ修飾アンチタグ配列をカルボキシル化ミクロスフェアに連結した。簡潔に、最終容量50 μL の0.1 mol/L MES, pH4.5中で、5×106個のミクロスフェアを1 nmol NH2-オリゴに結合させた。使用直前に10 mg/mL EDC作業溶液を調製し、2.5 μLをビーズ混合物に添加し30分間インキュベートした。新鮮に調製されたEDCのもう一つの2.5μL分割量を添加し、その後さらに30分間インキュベートした。0.02%(v/v)Tween-20および0.1%(w/v)SDS中で洗浄後、アンチタグ連結ビーズをTE緩衝液(10 mmol/L Tris, pH8.0、1 mmol/L EDTA)100uL中に再懸濁した。ビーズ濃度を、Beckman Coulter Z2 粒子計算およびサイズ解析装置(Coulter Corp, Miami FL)を用いて決定した。
【0085】
d)ユニバーサルアレイハイブリダイゼーション:
10アンチタグを有するビーズ集団のそれぞれ約2500ビーズを用いて、各ハイブリダイゼーション反応を実行した。ビーズをハイブリダイゼーション緩衝液(0.22 mol/L NaCl、0.11 mol/L Tris, pH 8.0、および0.088%(v/v)Triton X-100)中で結合させ、混合物の45μLをMJ Research 96-ウェルプレート(Reno, NV)の各ウェルに添加した。その後、各ASPE反応物の5μL分割量を各ウェルに直接添加した。その後、MJ Research PTC-100中で試料を96℃で2分間熱し、次に37℃で1時間インキュベートした。このインキュベーションの後、試料を1.2 umのDurapore膜(Millipore Corp, Bedford, MA)を貫通濾過させ、洗浄緩衝液(0.2 mol/L NaCl、0.1 mol/L Tris, pH8.0および0.08%(v/v)Triton X-100)を用いて1回洗浄した。その後、ビーズをレポーター溶液(洗浄緩衝液中に1 ug/mL ストレプトアビジン接合フィコエリスリン)150μL中に再懸濁し、室温で15分間インキュベートした。反応物をLuminex xMAPで読み取った。ビーズ集団および100μL試料容量当たり100事象を測定するように収集パラメータを設定した。ゲート設定を、試料を流す前に確立し、研究経過中の全期間を通じて維持した。
【0086】
図4から図7は、本発明の方法を用いて、異なる個体由来の試料について得られた多くの結果を表している。図4は、CYP2C9野生型遺伝子型を有する個体の遺伝子型解析を表している。図5は、CYP2C9 2C9*2および2C9*3複合ヘテロ接合遺伝子型を有する個体の遺伝子型解析を表している。図6は、CYP2C9 2C9*3ヘテロ接合遺伝子型を有する個体の遺伝子型解析を表している。図7は、CYP2C9 2C9*2遺伝子型を有する個体の遺伝子型解析を表している。
【0087】
全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が参照により全体として組み入れられることを、具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0088】
ある具体的な態様に関連して本発明を記載してきたが、その様々な改変は、本明細書に添付された特許請求項の範囲の中で概説したとおり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者にとって明らかであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
発明の好ましい態様のこれらおよび他の特徴は、以下の添付図面を参照とする、次の詳細な説明においてより明らかになると考えられる。
【図1】CYP2C9をコードする遺伝子中の最も一般的な変種の図式的概要を表す。
【図2】本発明の工程の全般的概要を表す。
【図3】本発明のPCRプライマー対を用いた三つの領域の増幅を示すゲルを提示する。
【図4】CYP2C9野生型遺伝子型を有する個体の遺伝子型解析を表す。
【図5】CYP2C9 2C9*2および2C9*3複合ヘテロ接合遺伝子型を有する個体の遺伝子型解析を表す。
【図6】CYP2C9 2C9*3ヘテロ接合遺伝子型を有する個体の遺伝子型解析を表す。
【図7】CYP2C9 2C9*2遺伝子型を有する個体の遺伝子型解析を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チトクロムP450-2C9をコードする遺伝子中の多型部位において、CYP2C9*2、CYP2C9*3、CYP2C9*4、CYP2C9*5、およびCYP2C9*6からなる群より選択されるヌクレオチド変種の存在または非存在を検出するための方法であって、以下の工程を含む方法;
a)変種を含むDNAの領域を増幅して、増幅DNA産物を形成する工程;
b)少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーを増幅DNA産物中の相補的な標的配列にハイブリダイズする工程であって、各タグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーは増幅DNAにハイブリダイズすることが可能な3'端ハイブリダイズ部分を有し、少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーの3'端ハイブリダイズ部分はSEQ ID NO:10〜SEQ ID NO:19の塩基25以上からなる群より選択される配列、および対応するプローブ配列に相補的な5'端タグ部分を含み、3'端ハイブリダイズ部分の末端ヌクレオチドは、疑わしい変種ヌクレオチドまたは部位の対応する野生型ヌクレオチドのいずれかに相補的である、工程;
c)3'端ハイブリダイズ部分の末端ヌクレオチドが増幅DNA産物中の多型部位の一つの対立遺伝子に完全マッチしている場合、少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーを、標識ヌクレオチドを用いて伸長する工程;
d)少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーを対応するプローブ配列にハイブリダイズし、標識伸長産物の存在を検出する工程。
【請求項2】
少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的プライマーの5'端タグ部分が、SEQ ID NO:10〜SEQ ID NO:19の塩基1から24からなる群より選択される配列を含む、請求項2記載の方法。
【請求項3】
プローブ配列が固体支持体に連結している、請求項1記載の方法。
【請求項4】
固体支持体が、ビーズ、スペクトルコード化ビーズ、およびチップに基づくマイクロアレイからなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
増幅する工程が、以下からなる対の群より選択されるPCRプライマーの少なくとも二つの対を含む、PCR増幅プライマーのセットを用いて、PCRによって実施される、請求項1記載の方法:
SEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7、ならびにSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9。
【請求項6】
チトクロムP450-2C9をコードする遺伝子中の多型部位において、CYP2C9*2、CYP2C9*3、CYP2C9*4、CYP2C9*5、およびCYP2C9*6からなる群より選択されるヌクレオチド変種の存在または非存在を検出するための方法であって、以下の工程を含む方法;
a)変種を含むDNAの領域を増幅して、増幅DNA産物を形成する工程;
b)SEQ ID NO:10〜SEQ ID NO:19からなる群より選択される少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーを、増幅DNA産物中の相補的な標的配列にハイブリダイズする工程であって、各タグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーは増幅DNAにハイブリダイズすることが可能な3'端ハイブリダイズ部分、および対応するプローブ配列に相補的な5'端タグ部分を有し、3'端ハイブリダイズ部分の末端ヌクレオチドは、疑わしい変種ヌクレオチドまたは部位の対応する野生型ヌクレオチドのいずれかに相補的である、工程;
c)3'端ハイブリダイズ部分の末端ヌクレオチドが増幅DNA産物中の多型部位の一つの対立遺伝子に完全マッチしている場合、少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーを、標識ヌクレオチドを用いて伸長する工程;
d)少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーを対応するプローブ配列にハイブリダイズし、標識伸長産物の存在を検出する工程。
【請求項7】
プローブ配列が固体支持体に連結している、請求項6記載の方法。
【請求項8】
固体支持体が、ビーズ、スペクトルコード化ビーズ、およびチップに基づくマイクロアレイからなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
増幅する工程が、以下からなる対の群より選択されるPCRプライマーの少なくとも二つの対を含む、PCR増幅プライマーのセットを用いて、PCRにより実施される、請求項6記載の方法:
SEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7、ならびにSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9。
【請求項10】
チトクロムP450-2C9をコードする遺伝子中の多型部位において、CYP2C9*2、CYP2C9*3、CYP2C9*4、CYP2C9*5、およびCYP2C9*6からなる群より選択されるヌクレオチド変種の存在または非存在を検出するためのキットであって、少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーのセット含み、各タグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーは、疑わしい変種ヌクレオチドまたは多型部位の一つの対応する野生型ヌクレオチドのいずれかに相補的な3'末端ヌクレオチドを含む3'端ハイブリダイズ部分、および対応するプローブ配列に相補的な5'端タグ付き部分を有し、かつ少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーはSEQ ID NO:10〜SEQ ID NO:19からなる群より選択される、キット。
【請求項11】
多型部位を含むDNAの領域を増幅するための、以下からなる対の群より選択されるPCRプライマーの少なくとも二つの対を含むPCR増幅プライマーのセットをさらに含む、請求項10記載のキット:
SEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7、ならびにSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9。
【請求項12】
プローブのセットをさらに含む、請求項10記載のキット。
【請求項13】
プローブのセットが支持体に連結している、請求項12記載のキット。
【請求項14】
チトクロムP450-2C9をコードする遺伝子中の少なくとも二つの多型部位において、CYP2C9*2、CYP2C9*3、CYP2C9*4、CYP2C9*5、およびCYP2C9*6からなる群より選択される変種ヌクレオチドの存在または非存在を検出するためのキットであって、少なくとも二つの多型部位を含むDNAの領域を増幅するための、以下からなる対の群より選択されるPCRプライマーの少なくとも二つの対を含むPCR増幅プライマーのセットを含む、キット:
SEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7、ならびにSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9。
【請求項15】
少なくとも二つのタグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーのセットをさらに含む、請求項14記載のキットであって、各タグ付き対立遺伝子特異的伸長プライマーは、増幅DNAにハイブリダイズすることが可能な3'端ハイブリダイズ部分、対応するプローブ配列に相補的な5'端タグ部分を有し、3'端ハイブリダイズ部分の末端ヌクレオチドは、疑わしい変種ヌクレオチドまたは多型部位の対応する野生型ヌクレオチドのいずれかに相補的である、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−504825(P2008−504825A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519574(P2007−519574)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000998
【国際公開番号】WO2006/002525
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(507004945)ティーエム バイオサイエンス ピージーエクス インコーポレイティッド (3)
【Fターム(参考)】