説明

チーグラー・ナッタ触媒系及びそれから生成するポリマー

本明細書に触媒系の調製方法、それから生成する触媒系及びポリマーを記載する。方法は一般的に、マグネシウムジアルコキシドを含む第1の化合物を準備し、第1の化合物を、一般的に式:Ti(OR;[式中、RはC〜C10直鎖状から分枝鎖状アルキルから選ばれる]により示される第2の化合物と接触させて反応生成物「A」の溶液を調製し、反応生成物「A」の溶液を第1の金属ハライドと接触させて固体反応生成物「B」を生成させ、固体反応生成物「B」を第2の金属ハライドと接触させて反応生成物「C」を生成させ、反応生成物「C」を還元剤と接触させて触媒成分を調製することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明の態様は、一般的にチーグラー・ナッタ型触媒組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
チーグラー・ナッタ触媒系の調製のための多くの方法は成分のブレンドを使用する。不運なことに、そのようなブレンドは一般に高い製造コストを有する特殊化学品である。
【0003】
従って、製造コストを低下させながら、ブレンドから調製される触媒から製造されるポリマーに類似の性質を有するポリマーを製造することができるチーグラー・ナッタ触媒の調製方法を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
概略
本発明の態様は、触媒系の調製方法を含む。方法は一般的に、マグネシウムジアルコキシドを含む第1の化合物を準備し、第1の化合物を、一般的に式:
Ti(OR
[式中、RはC〜C10直鎖状から分枝鎖状アルキルから選ばれる]
により示される第2の化合物と接触させて反応生成物「A」の溶液を調製し、反応生成物「A」の溶液を第1の金属ハライドと接触させて固体反応生成物「B」を生成させ、固体反応生成物「B」を第2の金属ハライドと接触させて反応生成物「C」を生成させ、反応生成物「C」を還元剤と接触させて触媒成分を調製することを含む。
【0005】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、第1の化合物は一般的にMg(OEt)により示される。
【0006】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、第2の化合物はチタンテトラ2−エチルヘキシルアルコキシド、チタンテトラn−ブトキシド及びそれらの組み合わせから選ばれる。
【0007】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、第1の化合物は約0.75〜約1.75の当量において第2の化合物に接触する。
【0008】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、方法はさらに、第1の化合物を第2の化合物の存在下で第3の化合物と接触させることを含み、ここで第3の化合物は一般に式:
Al(OR
により示され、式中、RはC〜C10直鎖状もしくは分枝鎖状アルキルから選ばれる。
【0009】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、第3の化合物はアルミニウム2−エチルヘキシルアルコキシドを含む。
【0010】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、第3の化合物は、約0.1〜約0.5の当量において第1の化合物に接触する。
【0011】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、第2の化合物及び第3の化合物は、第1の化合物との接触の前に互いに接触する。
【0012】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、還元剤は有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物及びそれらの組み合わせから選ばれる。
【0013】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、還元剤はトリエチルアルミニウムを含む。
【0014】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、金属ハライドはTiClを含む。
【0015】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、チーグラー・ナッタ触媒の調製のために方法を用いる。
【0016】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、触媒は少なくとも約5ミクロンの容量平均粒度(volume average particle size)を示す。
【0017】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、触媒は第3の化合物と接触しない触媒の容量平均粒度より大きな容量平均粒度を示す。
【0018】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)は、反応領域にオレフィンモノマーを導入し、オレフィンモノマーをチーグラー・ナッタ触媒と接触させてポリオレフィンを生成させ、反応領域からポリオレフィンを回収することを含む重合法を含む。
【0019】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、ポリマーはポリエチレンである。
【0020】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、触媒系は二峰性粒度分布を示す。
【0021】
1つもしくはそれより多い態様(他のいずれかの態様と組み合わされた)において、反応生成物「A」は、1つのプロセス段階で第2の化合物及び第1の化合物から生成する。
【0022】
図面の簡単な記述
図1及び2は、調製される触媒の容量平均粒度分布を示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】調製される触媒の容量平均粒度分布を示すグラフ。
【図2】調製される触媒の容量平均粒度分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
序論及び定義
ここで詳細な説明を与える。添付の請求項のそれぞれは別々の発明を定義し、それは侵
害の目的に関し、請求項中に規定される種々の要素又は制限への同等事項を含むと認識される。状況によって、下記の「発明」へのすべての言及は、いくつかの場合にはある特定の態様のみを指し得る。他の場合、「発明」への言及は1つもしくはそれより多くの、しかし必ずしもすべてではない請求項中に挙げられる主題を指すことが認識されるであろう。ここで特定の態様、変形及び実施例を含む本発明のそれぞれを下記でさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの態様、変形又は実施例に制限されず、それらは、本特許中の情報を利用可能な情報及び技術と組み合わせると、当該技術分野における通常の熟練者が本発明を作り且つ利用することを可能にするために含まれる。
【0025】
本明細書中で用いられる種々の用語を下記に示す。請求項中で用いられる用語が下記に定義されない限り(to the extent)、それは、申請の時点における印刷出版物及び発行された特許中に反映される通り、関連する技術分野における者がその用語に与えた最も広い定義を与えられるべきである。さらに、他に特定されなければ、本明細書に記載されるすべての化合物は置換されているか又は置換されていないことができ、化合物のリストはその誘導体を含む。
【0026】
種々の範囲がさらに下記で挙げられる。他にことわらなければ、末端値(endpoints)は互換性であるべきことが意図されていると認識されねばならない。さらに、その範囲内のいずれの点も本明細書で開示されることが意図されている。
【0027】
触媒系
チーグラー・ナッタ触媒系は一般に金属成分(例えば触媒前駆体)と1種もしくはそれより多い追加の成分、例えば触媒担体、助触媒及び/又は1種もしくはそれより多い電子供与体の組み合わせから調製される。
【0028】
チーグラー・ナッタ触媒の特別な例は、一般的に式:
MR
により示される金属成分を含み、式中、Mは遷移金属であり、Rはハロゲン、アルコキシ又はヒドロカルビル基であり、xは遷移金属の原子価である。例えばxは1〜4であることができる。
【0029】
遷移金属は、例えば第IV族〜VIB族(例えばチタン、バナジウム又はクロム)から選ばれることができる。Rは、1つの態様において塩素、臭素、カーボネート、エステル又はアルコキシ基から選ばれることができる。触媒の成分の例には、例えばTiCl、TiBr、Ti(OCCl、Ti(OCCl、Ti(OC13Cl、Ti(OCBr及びTi(OC1225)Clが含まれる。
【0030】
当該技術分野における熟練者は、触媒が重合の促進に有用である前に、それを何らかの方法で「活性化」することができることを認識するであろう。下記でさらに議論する通り、触媒をチーグラー・ナッタ活性剤(Z−N活性剤)と接触させることにより活性化を行うことができ、それはいくつかの場合に「助触媒」とも呼ばれる。そのようなZ−N活性剤の態様には、有機アルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEAl)及びトリイソブチルアルミニウム(TIBAl)が含まれる。
【0031】
チーグラー・ナッタ触媒系はさらに1種もしくはそれより多い電子供与体、例えば内部電子供与体及び/又は外部電子供与体を含むことができる。内部電子供与体を用い、得られるポリマーのアタクチック形態を減少させ、かくしてポリマー中のキシレン可溶物の量を減少させることができる。内部電子供与体には、例えばアミン、アミド、エステル、ケ
トン、ニトリル、エーテル、ホスフィン、ジエーテル、スクシネート、フタレート又はジアルコキシベンゼンが含まれ得る(引用することによりそれらの記載事項が本明細書の内容となる米国特許第5,945,366号明細書及び米国特許第6,399,837号明細書を参照されたい。)。
【0032】
外部電子供与体を用い、製造されるアタクチックポリマーの量をさらに抑制することができる。外部電子供与体には、一官能基性又は多官能基性カルボン酸、無水カルボン酸、カルボン酸エステル、ケトン、エーテル、アルコール、ラクトン、有機リン化合物及び/又は有機ケイ素化合物が含まれ得る。1つの態様において、外部供与体は、例えばジフェニルジメトキシシラン(DPMS)、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CDMS)、ジイソプロピルジメトキシシラン及び/又はジシクロペンチルジメトキシシラン(CPDS)を含むことができる。外部供与体は、用いられる内部電子供与体と同じか又は異なることができる。
【0033】
チーグラー・ナッタ触媒系の成分(例えば触媒、活性剤及び/又は電子供与体)は、互いと組み合わされた、もしくは互いと分離された担体を伴っているか、又は伴っていないことができる。Z−N担体材料には、例えばマグネシウムジハライド、例えばマグネシウムジクロリド又はマグネシウムジブロミドあるいはシリカが含まれ得る。
【0034】
チーグラー・ナッタ触媒の調製のための先行技術の試みは、一般に下記の方法を含む(引用することによりそれらの記載事項が本明細書の内容となる米国特許第6,734,134号明細書及び米国特許第6,174,971号明細書を参照されたい。)。
【0035】
可能な反応スキームの制限ではない代表的な例を以下の通りに示すことができる:
1)MgR+2ROH→Mg(OR
2)Mg(OR+ClA(O→“A
3)“A”+TiCl/Ti(OR→“A
4)“A”+TiCl→“B”
5)“B”+TiCl→“C”
6)“C”+AR→触媒
【0036】
一次反応成分(primary reaction components)を上記に示したが、追加の成分が反応生成物であることができるか、あるいはそのような反応において用いられることができ、上記に示されていないことに注意されたい。さらに、本明細書で一次反応段階(primary reaction steps)に関して記載するが、追加の段階が本明細書に記載される反応スキーム及び方法中に含まれ得(例えば洗浄、濾過、乾燥又はデカンテーション段階)、他の段階はある態様において除去され得ることがさらに意図されていることは、当該技術分野における熟練者に既知である。さらに、本明細書に記載される成分のいずれも、添加の順序が本発明の精神に従う限り、互いと組み合わせて添加することができることが意図されている。
【0037】
先行技術の方法は一般的に、アルキルマグネシウム化合物をアルコールと接触させてマグネシウムジアルコキシド化合物を生成させることを含んだ。アルキルマグネシウム化合物は一般に次式(I):
MgR; (I)
により示され、式中、R及びRは独立してC−C10アルキル基から選ばれた。アルキルマグネシウム化合物の制限ではない例には、例えばブチルエチルマグネシウム(BEM)、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム及びジブチルマグネシウムが含まれる。
【0038】
アルコールは一般に式(II):
OH; (II)
により示され、式中、RはC〜C20直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基から選ばれた。アルコールの制限ではない例には一般に、例えばブタノール、イソブタノール及び2−エチルヘキサノールが含まれる。
【0039】
先行技術の方法は次いで、マグネシウムジアルコキシド化合物を第1の薬品と接触させて反応生成物“A”を生成させることを含んだ。
【0040】
第1の薬品は一般に次式(III):
ClA(O; (III)
により示され、式中、Aはチタン、ケイ素、アルミニウム、炭素、錫及びゲルマニウムから選ばれ、RはC〜C10直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル及びイソプロピルから選ばれ、xは0又は1であり、yはAの原子価マイナス1であった。第1の薬品の制限ではない例には、例えばクロロチタントリイソプロポキシドClTi(OPr)及びClSi(Me)が含まれる。
【0041】
先行技術の方法はさらに反応生成物“A”を第2の薬品と接触させて反応生成物“A”を生成させることを含む。第2の薬品は一般に次式(IV):
TiCl/Ti(OR; (IV)
により示され、式中、RはC〜C20アルキル基から選ばれた。第2の薬品の制限ではない例には、塩化チタンとチタンアルコキシドのブレンド、例えばTiCl/Ti(OBu)が含まれる。
【0042】
上記に示す通り、第1の薬品及び第2の薬品は一般に化合物のブレンドを含む。不運なことに、そのようなブレンドは高い製造コストを有する特殊化学品である。
【0043】
従って本発明の1つもしくはそれより多い態様(単独の、又は組み合わされた)は一般的に、ブレンドを介して得られる1つもしくはそれより多い有益な性質を保持しながら、配合される薬品を修正/除去して製造コストを低下させることを含む。
【0044】
さらに、チーグラー・ナッタ触媒の調製に用いられるアルキルマグネシウム化合物の多く、そして特にブチルエチルマグネシウムは高コスト材料である。従って、1つもしくはそれより多い態様は、アルキルマグネシウム化合物を修正及び/又は置き換えることを含み得る。
【0045】
特に、本発明の態様は一般的に、マグネシウムジアルコキシドを含んでなる第1の化合物を準備することを含む。1つもしくはそれより多い特定の態様において、マグネシウムジアルコキシドはマグネシウムエトキシド(Mg(OEt))である。
【0046】
次いでマグネシウムジアルコキシドを第2の化合物と接触させて反応生成物“A”の溶液を生成させる。そのような態様は一般に、1つのプロセス段階で第1の化合物及び第2の化合物から反応生成物“A”を生成させることができる。
【0047】
本明細書で議論される先行技術の方法と異なり、第2の化合物は一般に式(V):
Ti(OR; (V)
により示され、式中、RはC〜C10直鎖状から分枝鎖状アルキルから選ばれる。1つもしくはそれより多い特定の態様において、第2の化合物は例えばチタン2−エチルヘキシルアルコキシド、チタンn−ブトキシド及びそれらの組み合わせから選ばれる。
【0048】
例えば大体室温から約200℃の温度で第1の化合物は第2の化合物に接触することができる。さらに第1の化合物は、例えば約0.75〜約1.75の当量において第2の化合物に接触することができる。
【0049】
場合により、第1の化合物は第2の化合物の存在下で第3の化合物に接触することができる。第3の化合物は一般に式(VI):
Al(OR; (VI)
により示され、式中、RはC〜C10直鎖状から分枝鎖状アルキルから選ばれる。1つもしくはそれより多い特定の態様において、第3の化合物はアルミニウム2−エチルヘキシルアルコキシドである。
【0050】
第1の化合物は、例えば大体室温〜約200℃の温度で第3の化合物に接触することができる。さらに、第1の化合物は、例えば約0.10〜約0.5の当量において第3の化合物に接触することができる。
【0051】
1つもしくはそれより多い態様において、第2の化合物及び第3の化合物は、第1の化合物との接触の前に互いに接触する。さらに、第2の化合物は、例えば約0.10〜約0.5の当量において第3の化合物に接触することができる。
【0052】
本発明の態様はさらに、反応生成物“A”を第1の金属ハライドと接触させて固体反応生成物“B”を生成させることを含む。
【0053】
そのような反応は不活性溶媒の存在下で行われ得る。不活性溶媒として多様な炭化水素を用いることができるが、選ばれるいずれの炭化水素もすべての関連する反応温度で液体形態のままでなければならず、担持触媒組成物の調製に用いられる成分は炭化水素中に少なくとも部分的に可溶性でなければならない。従って、ある態様において成分が炭化水素中に部分的にしか可溶性でなくても、炭化水素は本明細書における溶媒であると考えられる。
【0054】
適した炭化水素溶媒には、置換及び非置換脂肪族炭化水素ならびに置換及び非置換芳香族炭化水素が含まれる。例えば不活性溶媒には、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、1−クロロブタン又はそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0055】
さらに、反応は例えば室温で行われ得る。
【0056】
第1の金属ハライドの制限ではない例には、例えば四塩化チタン(TiCl)のような当該技術分野における熟練者に既知のいずれの金属ハライドも含まれ得る。第3の薬品を、例えば約0.1〜約5又は約0.25〜約4又は約0.45〜約2.5の当量において加えることができる。
【0057】
方法はさらに、反応生成物“B”を第2の金属ハライドと接触させて反応生成物“C”を生成させることを含む。
【0058】
そのような反応は、不活性溶媒の存在下で行われ得る。不活性溶媒には、例えば本明細書で前に議論された溶媒のいずれも含まれ得る。
【0059】
さらに、反応は例えば室温で行われ得る。
【0060】
第2の金属ハライドを反応生成物“B”に、例えば約0.1〜約5又は約0.25〜約
4又は約0.45〜約2.0の当量において加えることができる。さらに、第2の金属ハライドを段階的なやり方で加えることができ、それは、触媒性能に影響を与えるために、第1に半分を加え、次いで洗浄後に第2の半分を導入することである。
【0061】
第2の金属ハライドの制限ではない例には、本明細書で前に記載したいずれの金属ハライドも含まれ得る。
【0062】
方法は、次いで反応生成物“C”を還元剤と接触させて触媒成分を生成させることを含むことができる。還元剤は、例えば有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物及びそれらの組み合わせから選ばれることができる。
【0063】
還元剤を反応生成物“C”に、例えば約0.1〜約1.0又は0.1〜約0.5の当量において加えることができる。
【0064】
還元剤の制限ではない例には有機アルミニウム化合物が含まれる。有機アルミニウム化合物には、次式(VII):
AlR; (VII)
を有するアルミニウムアルキルが含まれ得、式中、RはC〜C10アルキル化合物である。アルミニウムアルキル化合物の制限ではない例には一般に、例えばトリメチルアルミニウム(TMA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)、n−オクチルアルミニウム及びn−ヘキシルアルミニウムが含まれる。
【0065】
調製したら、場合により触媒を熱処理に供することができる。そのような熱処理は一般に、例えば約40℃〜約150℃又は約90℃〜約125℃又は約40℃〜約60℃の範囲内の温度に触媒を加熱することを含む。そのような熱処理を、例えば約0.5時間〜約24時間又は約1時間〜約4時間行うことができる。
【0066】
1つもしくはそれより多い態様において、触媒は少なくとも約5ミクロンの容量平均粒度を有する。さらに本発明の態様の触媒は、予期せぬことに、第3の化合物と接触しない触媒の容量平均粒度より大きい容量平均粒度を示す。
【0067】
1つもしくはそれより多い態様において、触媒は二峰性粒度分布を示すことができる。例えば複数の粒度ピークを含む単一の触媒は、「二峰性」であると考えられる。
【0068】
重合法
本明細書の他の場所で示す通り、触媒系を用いてポリオレフィン組成物を生成させる。上記に記載の通り、及び/又は当該技術分野における熟練者に既知の通りに触媒系が調製されたら、その組成物を用いて多様な方法を実施することができる。重合法において用いられる装置、プロセス条件、反応物、添加物及び他の材料は、生成されているポリマーの所望の組成及び性質に依存して、与えられる方法内で変わるであろう。そのような方法には、例えば溶液相、気相、スラリ相、バルク相、高圧法又はそれらの組み合わせが含まれ得る(引用することによりそれらの記載事項が本明細書の内容となる米国特許第5,525,678号明細書;米国特許第6,420,580号明細書;米国特許第6,380,328号明細書;米国特許第6,359,072号明細書;米国特許第6,346,586号明細書;米国特許第6,340,730号明細書;米国特許第6,339,134号明細書;米国特許第6,300,436号明細書;米国特許第6,274,684号明細書;米国特許第6,271,323号明細書;米国特許第6,248,845号明細書;米国特許第6,245,868号明細書;米国特許第6,245,705号明細書;米国特許第6,242,545号明細書;米国特許第6,211,105号明細書;米国特許
第6,207,606号明細書;米国特許第6,180,735号明細書及び米国特許第6,147,173号明細書を参照されたい。)。
【0069】
ある態様において、上記の方法は一般に1種もしくはそれより多いオレフィンモノマーを重合させてポリマーを生成させることを含む。オレフィンモノマーは、例えばC〜C30オレフィンモノマー又はC〜C12オレフィンモノマー(例えばエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、オクテン及びデセン)を含むことができる。モノマーは、例えばエチレン性不飽和モノマー、C〜C18ジオレフィン、共役又は非共役ジエン、ポリエン、ビニルモノマー及び環状オレフィンを含むことができる。他のモノマーの制限ではない例には、例えばノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、スチレン、アルキル置換スチレン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン及びシクロペンテンが含まれ得る。生成するポリマーは、例えばホモポリマー、コポリマー又はターポリマーを含むことができる。
【0070】
溶液法の例は、引用することによりそれらの記載事項が本明細書の内容となる米国特許第4,271,060号明細書、米国特許第5,001,205号明細書、米国特許第5,236,998号明細書及び米国特許第5,589,555号明細書に記載されている。
【0071】
気相重合法の1つの例には、循環ガス流(他にはリサイクル流又は流動化媒体として既知)を重合の熱により反応器中で加熱する連続サイクルシステムが含まれ得る。熱は、反応器の外部の冷却システムにより、サイクルの別の部分において循環ガス流から除去される。1種もしくはそれより多いモノマーを含有する循環ガス流を、反応性条件下で触媒の存在下に、流動床を介して連続的に循環させることができる。循環ガス流は一般に流動床から回収され、反応器中に戻して再循環される。同時にポリマー生成物を反応器から回収することができ、新しいモノマーを加えて、重合したモノマーと置き換えることができる。気相法における反応器圧は、例えば約100psig〜約500psig又は約200psig〜約400psig又は約250psig〜約350psigで変わることができる。気相法における反応器温度は、例えば約30℃〜約120℃又は約60℃〜約115℃又は約70℃〜約110℃又は約70℃〜約95℃で変わることができる(例えば引用することによりそれらの記載事項が本明細書の内容となる米国特許第4,543,399号明細書;米国特許第4,588,790号明細書;米国特許第5,028,670号明細書;米国特許第5,317,036号明細書;米国特許第5,352,749号明細書;米国特許第5,405,922号明細書;米国特許第5,436,304号明細書;米国特許第5,456,471号明細書;米国特許第5,462,999号明細書;米国特許第5,616,661号明細書;米国特許第5,627,242号明細書;米国特許第5,665,818号明細書;米国特許第5,677,375号明細書及び米国特許第5,668,228号明細書を参照されたい。)。
【0072】
スラリ相法は一般に、液体重合媒体中の固体粒子状ポリマーの懸濁液を形成し、それにモノマー及び場合により水素を触媒と一緒に加えることを含む。懸濁液(希釈剤を含むことができる)を反応器から断続的又は連続的に取り出すことができ、そこで揮発性成分をポリマーから分離し、場合により蒸留後に反応器に再循環させることができる。重合媒体中で用いられる液化希釈剤は、例えばC〜Cアルカン(例えばヘキサン又はイソブタン)を含むことができる。用いられる媒体は、一般的に重合の条件下で液体であり、比較的不活性である。バルク相法は、バルク相法においては液体媒体が反応物(例えばモノマー)でもあることを除いて、スラリ法のそれと類似である。しかしながら方法は、例えばバルク法、スラリ法又はバルクスラリ法であることができる。
【0073】
特別な態様において、スラリ法又はバルク法を1つもしくはそれより多いループ反応器において連続的に行うことができる。例えばスラリとして、又は乾燥流動性粉末としての触媒を反応器ループに規則的に注入することができ、反応器自身は希釈剤中の成長するポリマー粒子の循環スラリで満たされていることができる。場合により、例えば得られるポリマーの分子量制御のために、水素(又は例えば他の連鎖停止剤)を方法に加えることができる。ループ反応器を、例えば約27バール〜約50バール又は約35バール〜約45バールの圧力及び約38℃〜約121℃の温度に保つことができる。例えば二重ジャケット付きパイプ又は熱交換器を介するような適した方法を介し、ループ壁を通って反応熱を除去することができる。
【0074】
あるいはまた、例えば直列、並列又はそれらの組み合わせにおける撹拌反応器のような他の型の重合法を用いることができる。反応器から取り出したら、さらなる処理、例えば添加物の添加及び/又は押出しのために、ポリマーをポリマー回収システムに通過させることができる。
【0075】
反応器から取り出したら、さらなる処理、例えば添加物の添加及び/又は押出しのために、ポリマーをポリマー回収システムに通過させることができる。
【0076】
ポリマー生成物
本明細書に記載される方法を介して生成するポリマー(及びそのブレンド)には、例えば線状低密度ポリエチレン、エラストマー、プラストマー、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリプロピレンコポリマーが含まれ得るが、これらに限られない。
【0077】
本明細書で他に明示しなければ、すべての試験法は申請の時点における現法である。
【0078】
1つもしくはそれより多い態様において、ポリマーはエチレンに基づくポリマーを含む。本明細書で用いられる場合、「エチレンに基づく」という用語は「エチレンポリマー」又は「ポリエチレン」という用語と互換的に用いられ、例えばポリマーの合計重量に対して少なくとも約50重量%又は少なくとも約70重量%又は少なくとも約75重量%又は少なくとも約80重量%又は少なくとも約85重量%又は少なくとも約90重量%のポリエチレンを有するポリマーを指す。
【0079】
エチレンに基づくポリマーは、例えば約0.86g/cc〜約0.98g/cc又は約0.88g/cc〜約0.965g/cc又は約0.90g/cc〜約0.965g/cc又は約0.925g/cc〜約0.97g/ccの密度(ASTM D−792により測定される)を有することができる。
【0080】
エチレンに基づくポリマーは、例えば約0.01dg/分〜約100dg/分又は約0.01dg/分〜約25dg/分又は約0.03dg/分〜約15dg/分又は約0.05dg/分〜約10dg/分のメルトインデックス(Ml)(ASTM D−1238により測定される)を有することができる。
【0081】
1つもしくはそれより多い態様において、ポリマーは低密度ポリエチレンを含む。
【0082】
1つもしくはそれより多い態様において、ポリマーは線状低密度ポリエチレンを含む。
【0083】
1つもしくはそれより多い態様において、ポリマーは中密度ポリエチレンを含む。本明細書で用いられる場合、「中密度ポリエチレン」という用語は、例えば約0.92g/cc〜約0.94g/cc又は約0.926g/cc〜約0.94g/ccの密度を有する
エチレンに基づくポリマーを指す。
【0084】
1つもしくはそれより多い態様において、ポリマーは高密度ポリエチレンを含む。本明細書で用いられる場合、「高密度ポリエチレン」という用語は、例えば約0.94g/cc〜約0.97g/ccの密度を有するエチレンに基づくポリマーを指す。
【0085】
生成物用途
ポリマー及びそのブレンドは、成形作業(forming operation)(例えばフィルム、シート、パイプ及び繊維押出し及び共押出しならびに吹込成形、射出成形及び回転式成形)のような当該技術分野における熟練者に既知の用途において有用である。フィルムには、例えば食品と接触するか又は食品と接触しない用途における、収縮フィルム、クリングフィルム、延伸フィルム(stretch film)、シーリングフィルム、配向フィルム(oriented film)、スナック包装、重包装袋、野菜袋、焼成及び冷凍食品包装、医療用包装、産業用ライナー(industrial liners)及び膜として有用な、押出し又は共押出しにより、あるいは積層により成形される吹込み、延伸又はキャストフィルムが含まれる。繊維には、例えば袋(sacks)、袋(bags)、ロープ、トワイン(twine)、カーペット裏地、カーペット糸、フィルター、おむつ生地、医療用衣服及びジオテキスタイルの製造のための編織又は不織形態における使用のためのスリットフィルム、モノフィラメント、溶融紡糸、溶液紡糸及び溶融吹込み繊維作業が含まれる。押出し製品には、例えば医療用チューブ、ワイア及びケーブルコーティング、シート、熱成形シート(形材(profiles)及びプラスチック波形板紙を含む)、ジオメンブレン(geomambranes)及び池ライナー(pond liners)が含まれる。成形品には、例えばビン、タンク、大中空製品、剛性食品容器及びおもちゃの形態の単層及び多層構造物が含まれる。
【実施例】
【0086】
以下の実施例において、Al(O−2−エチルヘキシル)は、トリエチルアルミニウム(TEAl)及び2−エチルヘキサノールの反応によりその場で製造された。触媒は、4個のMortenのくぼみ(Morten’s indention)及び1個の滴下ロート、3羽撹拌機及び隔壁が備えられた500mLの反応器中で調製された。
【0087】
下記の表1は、触媒合成条件を示す。触媒1、2及び3はTi(OBu)(TNBT)の使用により調製され、触媒4及び5はTi(O−2−エチルヘキシル)により調製された。
【0088】
【表1】

【0089】
生成する触媒の容量平均粒度分布を図1及び2に示す。示される通り、TNBTの相対的な量は触媒の形態に影響を与えるようである。容量平均粒度分布は非常に広くから二峰性であることが観察された。しかしながら、Tiアルコキシド試薬の型が、沈殿のために用いられる条件下で容量平均粒度分布に最も大きい影響を有するかのように見える。チタン2−エチルヘキシルアルコキシドの使用(触媒4)は、以前に調製された触媒の形態に類似の(しかしそれよりいくらか小さい)形態を与える。
【0090】
前記は本発明の態様に向けられているが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく本発明の他の及びさらなる態様を工夫することができ、本発明の範囲は続く請求項により決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウムジアルコキシドを含む第1の化合物を準備し;
第1の化合物を、一般的に式:
Ti(OR
[式中、RはC〜C10直鎖状から分枝鎖状アルキルから選ばれる]
により示される第2の化合物と接触させて反応生成物「A」の溶液を調製し;
反応生成物「A」の溶液を第1の金属ハライドと接触させて固体反応生成物「B」を生成させ;
固体反応生成物「B」を第2の金属ハライドと接触させて反応生成物「C」を生成させ;そして
反応生成物「C」を還元剤と接触させて触媒成分を調製する
ことを含んでなる触媒系の調製方法。
【請求項2】
第1の化合物が一般に式Mg(OEt)により示される請求項1の方法。
【請求項3】
第2の化合物がチタン2−エチルヘキシルアルコキシド、チタンn−ブトキシド及びそれらの組み合わせから選ばれる請求項1の方法。
【請求項4】
第1の化合物が約0.75〜約1.75の当量において第2の化合物に接触する請求項1の方法。
【請求項5】
さらに第1の化合物を第2の化合物の存在下で第3の化合物と接触させることを含んでなり、ここで第3の化合物は一般に式:
Al(OR
により示され、式中、RはC〜C10直鎖状もしくは分枝鎖状アルキルから選ばれる請求項1の方法。
【請求項6】
第3の化合物がアルミニウム2−エチルヘキシルアルコキシドを含む請求項5の方法。
【請求項7】
第3の化合物が約0.1〜約0.5の当量において第1の化合物に接触する請求項5の方法。
【請求項8】
第2の化合物及び第3の化合物が第1の化合物との接触の前に互いに接触する請求項5の方法。
【請求項9】
還元剤が有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物及びそれらの組み合わせから選ばれる請求項1の方法。
【請求項10】
還元剤がトリエチルアルミニウムを含む請求項1の方法。
【請求項11】
金属ハライドがTiClを含む請求項1の方法。
【請求項12】
請求項5の方法から調製されるチーグラー・ナッタ触媒。
【請求項13】
さらに、少なくとも約5ミクロンの容量平均粒度を含んでなる請求項12の触媒。
【請求項14】
触媒が第3の化合物と接触しない触媒の容量平均粒度より大きい容量平均粒度を示す請求項12の触媒。
【請求項15】
反応領域内にオレフィンモノマーを導入し;
オレフィンモノマーを請求項1の触媒と接触させてポリオレフィンを生成させ;そして
反応領域からポリオレフィンを回収する
ことを含んでなる重合法。
【請求項16】
請求項15の方法により生成するポリオレフィン。
【請求項17】
触媒系が二峰性粒度分布を示す請求項1の触媒。
【請求項18】
反応生成物「A」が1つのプロセス段階で第2の化合物及び第1の化合物から生成する請求項1の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−516542(P2013−516542A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548223(P2012−548223)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2011/020780
【国際公開番号】WO2011/085350
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】