説明

ツマジロクサヨトウ(fallarmyworm)およびユーロピアンコーンボーラー(Europeancornborer)を防除するための殺虫性タンパク質の組み合わせならびに害虫抵抗性管理のための方法

本発明は、一部には、特定のCry遺伝子をCry1Faと共にスタッキング(stacking)して、より耐久的で、昆虫がいずれかの毒素(Cry1Fa等)単独の活性に対する抵抗性を発達させる傾向がより少ない産物を得ることに関する。Cry1Fスタッキングパートナーの実施形態は、Cry2Aa、Cry1IおよびCry1Eを含む。これらのスタックは、本明細書に記載されている通り、FAWおよび/またはECBの防除に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
人間は、トウモロコシを食料およびエネルギー用途のために栽培する。昆虫は、トウモロコシ植物を食害することによりこのような人間の努力を台無しにする。トウモロコシの主要な破壊原因となる農業上の害虫は、ツマジロクサヨトウ(FAW;スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda))およびユーロピアンコーンボーラー(ECB;オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis))である。
【0002】
バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来のCry1Faタンパク質をコードする結晶(Cry)デルタエンドトキシン遺伝子の植物における発現により、現在、これら有害生物の植物内(in-plant)トランスジェニック防除が達成された。Cry1Faは、現在、FAWおよびECB害虫に対し抵抗性の、Dow AgroSciencesトランスジェニックトウモロコシ種子であるHerculex(商標)ブランド(Herculex、Herculex−ExtraおよびHerculex−RW)に含まれているタンパク質毒素である。このタンパク質は、昆虫の中腸に位置する特異的な受容体(複数可)と結合することによって機能し、腸細胞内にポアを形成する。このようなポア形成は、昆虫の浸透圧バランス調節を妨げ、その結果昆虫に死をもたらす。
【0003】
しかし、昆虫が、Cry1Faと結合するその腸内受容体の遺伝子変異により、Cry1Faの作用に対する抵抗性を発達できるようになる可能性があると懸念する者もいる。Cry1Fa結合能が低い受容体を産生する昆虫は、Cry1Faの活性に対し抵抗性となり、従ってこのタンパク質を発現する植物において生存し得る。
【0004】
成長条件の植物内に持続的に存在する単一のCry毒素を用いると、昆虫が、昆虫腸内でCry1Fa毒素と結合する受容体の遺伝子変異により、このタンパク質の活性に対する抵抗性を発達させ得るとの懸念がある。受容体のこのような変化に起因する毒素結合の減少は、Cry1Faの毒性の低下をもたらしかねず、これは最終的には作物において発現した際のタンパク質の有効性の低下をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一部には、特定のCry遺伝子をCry1Faと共にスタッキングして、より耐久的で、昆虫がいずれかの毒素(Cry1Fa等)単独の活性に対する抵抗性を発達させる傾向のより少ない産物を得ることに関する。Cry1Fスタッキングパートナーの実施形態は、ツマジロクサヨトウ(FAW;スポドプテラ・フルギペルダ)標的化のためのCry2Aaおよび/またはCry1Iならびにユーロピアンコーンボーラー(ECB;オストリニア・ヌビラリス)標的化のためのCry1Eを含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、Cry1Fa毒素と少なくとも1種類のスタッキングパートナー毒素とのペアとしての使用を含む。FAW(ツマジロクサヨトウ;スポドプテラ・フルギペルダ)標的化のための一部の好ましいペアは、Cry1Faタンパク質とCry1Eaタンパク質である。ECB(ユーロピアンコーンボーラー;オストリニア・ヌビラリス)標的化のための一部の好ましいペアは、Cry1Faタンパク質と、Cry1Iおよび/またはCry2Aaタンパク質とを含む。
【0007】
本発明はまた、一部には、Cry1Faおよびスタッキングパートナー毒素を基本のペアとする3種(以上)の毒素の三重スタックまたは「ピラミッド(pyramid)」に関する。好ましいピラミッドの一型は、2種の有害生物、FAWおよびECBに対し2種の作用機序を提供する。この種の「2MOA」ピラミッドは、Cry1FaとCry2AaとCry1Ab(ECBを防除するための好ましい一実施形態)およびCry1FaとCry1Ea(FAWを防除するための好ましい一実施形態)を含む。「別個の作用機序」とは、タンパク質が互いに交差抵抗性を生じないことを意味する。
【0008】
一部の好ましいピラミッド実施形態において、選択された毒素は、ECBに対する3種の別個の作用機序(交差抵抗性を生じない有効成分)を提供する。好ましいピラミッドの組み合わせは、Cry1Faと第二のIRM毒素と第三のIRM毒素である。この具体例は次の通りである。
【0009】
本発明のECBピラミッドは、Cry1Fa毒素と、第二のIRM毒素としてCry2Aa毒素と、Cry1Be、Cry1Ab、DIG−3およびCry1I毒素からなる群から選択される第三のIRM毒素とを含む。
【0010】
本発明のECBピラミッドは、Cry1Fa毒素と、第二のIRM毒素としてCry1I毒素と、Cry1Ab、Cry1Be、DIG−3およびCry2Aa毒素からなる群から選択される第三のIRM毒素とを含む。
【0011】
これらの様々な毒素(およびそれ以外)は、添付の付録Aに列挙されている。これらのGENBANK番号を用いて、本明細書に開示または言及されている遺伝子およびタンパク質のいずれかの配列を得ることもできる。
【0012】
特許を用いて関連配列を得ることもできる。例えば、米国特許第5,188,960号明細書および米国特許第5,827,514号明細書は、本発明の実施における使用に適したCry1Faコア毒素含有タンパク質について記載する。米国特許第6,218,188号明細書は、本発明における使用に適したCry1Faコア毒素含有タンパク質をコードする植物最適化DNA配列について記載する。米国特許出願公開第2010−00269223号明細書は、DIG−3タンパク質に関する。
【0013】
本発明はまた、一般に、互いに競合しない/交差抵抗性を生じないが、単一の標的有害生物に対し活性を有する3種の殺虫性タンパク質(一部の好ましい実施形態においてCryタンパク質)の使用に関する。
【0014】
対象ペアのいずれかまたは3種(以上)の毒素を産生する植物(およびこのような植物が植え付けられた地所)は、本発明の範囲内に含まれる。追加的な毒素/遺伝子を付け加えてもよいが、これら特定の三重スタックは、本発明において、FAWおよび/またはECBに対する3種の作用機序(非交差抵抗性活性)を有利にかつ驚くほどに提供するであろう。これは、緩衝帯(refuge)地所の要件の縮小または除外(例えば、40%未満、20%未満、10%未満、5%未満またはいっそ0%の緩衝帯)に役立つ可能性がある。よって、10エーカーを超えてこのように植え付けられた圃場は、本発明の範囲内に含まれる。
【0015】
対象ポリヌクレオチド(複数可)は、好ましくは、非バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)プロモーター制御下の(プロモーターに作動可能に連結した/を含む)遺伝的構築物に置かれる。対象ポリヌクレオチドは、植物における発現を増強するための植物コドン使用を含むことができる。
【0016】
Cry1Faに対する抵抗性を発達させる昆虫の能力に対抗するため、本出願人らは、(Cry1Faと)非競合的にFAWおよび/またはECB腸細胞標本と結合するCry毒素を同定した。Cry1Faは、FAWおよびECB幼虫の昆虫腸において、本明細書において同定されたCryタンパク質の結合を置き換えない。Cryタンパク質は、Cry2Aa等である。FAWおよび/またはECB幼虫に対し毒性となるこれらCry毒素の能力は、Cry1Faと同じ部位と完全には相互作用せず、Cry毒素の毒性が、Cry1Faの毒性に対し抵抗性となるメカニズムとしてCry1Fa受容体に遺伝子変異を発生させた昆虫による影響を受けないであろうことを示す。
【0017】
よって、その腸受容体のCry1Fa結合能の低下によりCry1Faに対する抵抗性を発達させた昆虫は、例えば、別の部位と結合するCry2Aaタンパク質の毒性に対し依然として感受性であろう。本出願人らは、この説を支持する生化学的データを得た。トランスジェニック植物において発現したこれらタンパク質の組み合わせを有すると、圃場における昆虫抵抗性発達の確率を低下させる有用で価値のあるメカニズムをもたらし、退避地(refugia)要件の減少をもたらす。他のCryタンパク質は、Cry1Faに対し感受性および抵抗性(rFAWおよびrECB)両方の他の主要な害虫に対するその活性を試験されてきた。表1に示す通り、Cry1IおよびCry2Aaは、抵抗性および感受性両方のECB幼虫に対し活性を有する。Cry1Eaは、抵抗性および感受性両方のFAWに対し活性を有する。これら害虫に対するこれらCry毒素の結合データを得ることができる。いずれの場合においても、本明細書における後述のデータは、昆虫腸内のCry1Faとは別の標的部位(複数可)において相互作用する毒素を示すため、優れたスタッキングパートナーを得ることができるであろう。
【0018】
Cry1Fa発現作物に、本明細書に記載されている遺伝子等、1または複数の追加的なCry遺伝子をスタッキングすると、これらのタンパク質毒素を発現するトランスジェニック植物の活性に対する耐性を発達させる昆虫の能力を抑制するための、効果的な管理戦略をもたらす。本出願人らは、これらのCryタンパク質が、Cry1Faと比べて異なるおよび/または重複する部位と相互作用することを示す。このため、Cry毒素と結合する昆虫腸受容体の親和性の変化によって抵抗性が生じた場合、複数のタンパク質を発現する植物において昆虫が生存可能となるには、少なくとも2種の異なる受容体で同時に変化が生じる必要がある。これが起こる確率は非常に低く、従ってタンパク質に対する耐性を発達させ得る昆虫の区画(ward)に対するトランスジェニック産物の耐久性を増加させる。
【0019】
本出願人らは、トリプシン切断型のCryタンパク質毒素を放射性ヨウ素化し、放射性受容体結合アッセイ技法に用いて、その昆虫腸膜内に位置する推定受容体タンパク質との結合相互作用を測定した。Wolfersbergerの方法により、腸膜を刷子縁膜小胞(BBMV)として調製した。Pierce Chemical製のヨードビーズ(iodo beads)かヨードゲン(iodogen)処理したチューブのいずれかを用いて毒素のヨウ素化を行った。放射標識した毒素の特異活性は、およそ1〜4μCi/μgタンパク質であった。結合試験は、基本的にLiangの手順によって行った。
【0020】
本明細書に提示するデータは、昆虫腸内のCry1Faとは別の標的部位で相互作用する毒素を示すため、優れたスタッキングパートナーを得ることができるであろう。
【0021】
本発明は、様々な植物に用いることができる。具体例として、トウモロコシ(メイズ)、ダイズおよびワタが挙げられる。
【0022】
本発明において有用な遺伝子および毒素は、開示されている全長配列のみならず、本明細書において特に例示されている毒素の特徴的な殺有害生物活性を保持するこれら配列の断片、変種、変異体および融合タンパク質も含む。本明細書において、用語、遺伝子の「変種」または「変異種」は、同一毒素をコードする、あるいは殺有害生物活性を有する均等な毒素をコードするヌクレオチド配列を意味する。本明細書において、用語「均等な毒素」は、標的有害生物に対し、請求されている毒素と同一または本質的に同一の生物活性を有する毒素を意味する。
【0023】
本明細書において、境界は、「Revision of the Nomenclature for the Bacillus thuringiensis Pesticidal Crystal Proteins」N. Crickmore, D.R. Zeigler, J. Feitelson, E. Schnepf, J. Van Rie, D. Lereclus, J. Baum, and D.H. Dean. Microbiology and Molecular Biology Reviews (1998) 62巻:807〜813により、およそ95%(例えば、Cry1Fa)、78%(例えばCry1F)ならびに45%(Cry1)の配列同一性を表す。これらカットオフは、コアタンパク質のみ(例えば、Cry1FおよびCry1Faコアタンパク質のため)に適用することもできる。Crickmoreらの関連したウェブサイトlifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt/を参照されたい。
【0024】
例示した毒素の殺有害生物活性を保持する断片および均等物は、本発明の範囲内のものである。また、遺伝暗号の重複性のため、様々な異なるDNA配列が、本明細書に開示されているアミノ酸配列をコードし得る。同一または本質的に同一の毒素をコードするこのような代替的DNA配列の作製は、十分に当業者の技能範囲内である。このような変種DNA配列は、本発明の範囲内のものである。本明細書において、「本質的に同一」な配列の言及は、殺有害生物活性に実質的な影響を及ぼさないアミノ酸置換、欠失、付加または挿入を有する配列を意味する。殺有害生物活性を保持するタンパク質をコードする遺伝子の断片もまた、この定義に含まれる。
【0025】
本発明において有用な毒素をコードする遺伝子および遺伝子部分を同定するためのさらに別の方法は、オリゴヌクレオチドプローブの使用による。このようなプローブは、検出可能なヌクレオチド配列である。このような配列は、適切な標識に基づいて検出され得る、あるいは国際公開第93/16094号パンフレットに記載されている通り、蛍光が内在するように作製することができる。本技術分野でよく知られていることに、2分子間に強固な結合を形成することによってプローブ分子と核酸試料がハイブリダイズする場合、プローブと試料が実質的な相同性を有すると合理的に仮定することができる。好ましくは、ハイブリダイゼーションは、例えば、Keller, G. H., M. M. Manak (1987) DNA Probes, Stockton Press、ニューヨーク州ニューヨーク、169〜170頁に記載されている通り、本技術分野でよく知られた技法によりストリンジェントな条件下で行われる。塩濃度および温度の組み合わせを数例次に示す(ストリンジェンシー増加順)。2×SSPEまたはSSC、室温;1×SSPEまたはSSC、42℃;0.1×SSPEまたはSSC、42℃;0.1×SSPEまたはSSC、65℃。プローブの検出は、ハイブリダイゼーションが生じたか公知の様式において決定するための手段を提供する。このようなプローブ解析は、本発明の毒素コード遺伝子を同定するための迅速な方法を提供する。本発明に係るプローブとして用いられるヌクレオチドセグメントは、DNA合成装置および標準的手順を用いて合成することができる。このようなヌクレオチド配列は、本発明の遺伝子を増幅するためのPCRプライマーとして用いることもできる。
【0026】
本発明の特定のタンパク質は、本明細書において特に例示されている。これらのタンパク質は、本発明のタンパク質の単なる具体例であるため、本発明が、例示のタンパク質と同一または同様の殺有害生物活性を有する変種または均等なタンパク質(および均等なタンパク質をコードするヌクレオチド配列)を含むことが容易に明らかであろう。均等なタンパク質は、例示のタンパク質とアミノ酸相同性を有するであろう。このアミノ酸相同性は通常、75%を超え、好ましくは90%を超え、最も好ましくは95%を超えるであろう。アミノ酸相同性は、生物活性の原因となる、あるいは生物活性に最終的に関与する三次元配置の決定に関係するタンパク質の決定的領域において最も高くなるであろう。この点において、これらの置換が、活性に決定的ではない領域に存在する場合、あるいは分子の三次元配置に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換である場合、特定のアミノ酸置換が許容され、これを予想することができる。例えば、アミノ酸は、次のクラス、非極性、無電荷極性、塩基性および酸性に分類することができる。あるクラスのアミノ酸が同じ種類の別のアミノ酸に交換された保存的置換は、置換が化合物の生物活性を実質的に変化させない限り、本発明の範囲内に収まる。次に、各クラスに属するアミノ酸の具体例のリストを示す。場合によっては、非保存的置換が行われてもよい。重要な要素としては、これらの置換が、タンパク質の生物活性を顕著に損なってはならないことである。
【0027】
【表1】

【0028】
害虫抵抗性管理(IRM)戦略。例えば、Roushらは、殺虫性トランスジェニック作物の管理のための、「ピラミッド化(pyramiding)」または「スタッキング」とも称される2毒素戦略について概要を述べる(The Royal Society、Phil. Trans. R. Soc. Lond. B. (1998) 353、1777〜1786)。
【0029】
米国環境保護局(the United States Environmental Protection Agency)は、そのウェブサイト(epa.gov/oppbppd1/biopesticides/pips/bt_corn_refuge_2006.htm)において、標的有害生物に対し活性を有する単一のBtタンパク質を産生するトランスジェニック作物と共に用いるための、非トランスジェニック(すなわち、非B.t.)緩衝帯(非Bt作物/トウモロコシの区画)を設置するための次の要件を公開する。
【0030】
「コーンボーラーから保護されたBt(Cry1AbまたはCry1F)トウモロコシ製品のための特定の構造化された要件は次の通りである。
構造化された緩衝帯:コーンベルトにおける非鱗翅目(lepidopteran)Btトウモロコシ緩衝帯、20%
コットンベルトにおける非鱗翅目(lepidopteran)Bt緩衝帯、50%
ブロック
内部(すなわち、Bt圃場内)
外部(すなわち、任意交配を最大限に高めるための、Bt圃場の1/2マイル(可能であれば1/4マイル)以内にある別の圃場)
圃場内帯状地(strip)
帯状地は、幼生移動の効果を低減するために少なくとも4列幅(好ましくは6列)である必要がある」
【0031】
さらに、全米トウモロコシ生産者協会(National Corn Growers Association)も、そのウェブサイト(ncga.com/insect-resistance-management-fact-sheet-bt-corn)において、緩衝帯要件に関する同様の指針、例えば次の事項を提示する。
「コーンボーラーIRMの要件:
− 緩衝帯雑種をトウモロコシ畑の少なくとも20%に植えること
− ワタ生産区域において、緩衝帯は50%でなければならない
− 緩衝帯雑種の1/2マイル以内に植えなければならない
− 緩衝帯はBt圃場内に帯状地として設置することができる;緩衝帯は、少なくとも4列幅でなければならない
− 標的昆虫に対して経済的許容限界に達した場合のみ、緩衝帯を従来の殺有害生物剤で処理してよい
− Btベースの噴霧可能な殺虫剤は、緩衝帯トウモロコシに用いることができない
− Btトウモロコシの農場毎に適切な緩衝帯を設置しなければならない」
【0032】
Roushらによって記述された通り(例えば、1780および1784頁右段)、それぞれ標的有害生物に対して有効であり、交差抵抗性がほとんどないまたは全くない2種の異なるタンパク質のスタッキングまたはピラミッド化は、より小規模の緩衝帯の使用を可能にする。Roushは、成功したスタックにおける10%未満の緩衝帯の緩衝帯サイズは、単一(非ピラミッド化)形質における約50%の緩衝帯に匹敵する抵抗性管理をもたらし得ることを示唆する。現在利用できるピラミッド化したBtトウモロコシ製品に対し、米国環境保護局は、単一形質の製品(概して20%)よりも有意に少ない(概して5%)非Btトウモロコシの構造化された緩衝帯の植え付けを要求する。
【0033】
Roushら(上記参照)および米国特許第6,551,962号明細書にさらに記載されている通り、圃場における様々な幾何級数的栽植パターン(上述)や種子同梱袋(in-bag seed mixture)等、緩衝帯のIRM効果を提供する様々な仕方が存在する。
【0034】
上述のパーセンテージまたは類似の緩衝帯比率は、対象の二重もしくは三重スタックまたはピラミッドに用いることができる。単一の標的有害生物に対し3種の作用機序を備える三重スタックに関して、目標はゼロ緩衝帯(または例えば5%未満の緩衝帯)である。これは、商業的地所、例えば10エーカーを超えるものに特に当てはまる。
【0035】
本明細書に参照または引用されているあらゆる特許、特許出願、仮出願および刊行物は、本明細書に明示されている教示と不一致とならない範囲まで、ここに本明細書の一部を構成するものとしてそれらの全体を援用する。
【0036】
特に示唆または暗示されていなければ、単数形の用語は、本明細書において「少なくとも1個」を示す。
【0037】
次に、本発明の実施のための手順を説明する実施例を示す。これらの実施例は、限定的なものとして解釈するべきではない。他に断りがなければ、あらゆるパーセンテージは重量で表し、あらゆる溶媒混合物の割合は容量で表す。あらゆる温度はセ氏で表す。
(参考文献)
Wolfersberger, M.G., (1993), Preparation and Partial Characterization of Amino Acid Transporting Brush Border Membrane Vesicles from the Larval Midgut of the Gypsy Moth (Lymantria Dispar). Arch. Insect Biochem. Physiol. 24: 139-147.
Liang, Y., Patel, S.S., and Dean, D.H., (1995), Irreversible Binding Kinetics of Bacillus thuringiensis Cry1A Delta-Endotoxins to Gypsy Moth Brush Border Membrane Vesicles is Directly Correlated to Toxicity. J. Bioi. Chern., 270, 24719-24724
【実施例】
【0038】
〔実施例1〕
バイオアッセイ
Cry1Faに対し感受性および抵抗性(rFAWおよびrECB)両方の他の主要な害虫に対するその活性に関し、対象Cryタンパク質を試験した。表1に示す通り、Cry1IおよびCry2Aaは、抵抗性および感受性両方のECB幼虫に対し活性を有する。Cry1Eaは、抵抗性および感受性両方のFAWに対し活性を有する(この有害生物の概略的な考察に関し、例えば、Tabashnik、PNAS (2008)、105巻49号、19029〜19030を参照されたし)。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【表3−4】

【表3−5】

【表3−6】

【表3−7】

【表3−8】

【表3−9】

【表4−1】

【表4−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cry1Fa殺虫性タンパク質をコードするDNAと、Cry2Aa殺虫性タンパク質およびCry1I殺虫性タンパク質からなる群から選択される第二の殺虫性タンパク質をコードするDNAとを含むトランスジェニック植物。
【請求項2】
Cry1Fa殺虫性タンパク質をコードするDNAと、Cry1E殺虫性タンパク質をコードするDNAとを含むトランスジェニック植物。
【請求項3】
Cry1Be、Cry1AbおよびDIG−3からなる群から選択される第三の殺虫性タンパク質をコードするDNAをさらに含む、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
【請求項4】
前記第三のタンパク質が、Cry1Beからなる群から選択され、前記植物が、Cry1Ca、Cry1DaおよびVip3Abからなる群から選択される第四の殺虫性タンパク質をコードするDNAをさらに含む、請求項3に記載のトランスジェニック植物。
【請求項5】
Cry1Be、Cry1Ca、Cry1DaおよびVip3Abからなる群から選択される第三の殺虫性タンパク質をコードするDNAをさらに含む、請求項2に記載のトランスジェニック植物。
【請求項6】
前記第三のタンパク質が、Cry1Beからなる群から選択され、前記植物が、Cry1Ab、Cry1I、Cry2AおよびDIG−3からなる群から選択される第四の殺虫性タンパク質をコードするDNAをさらに含む、請求項5に記載のトランスジェニック植物。
【請求項7】
前記DNAを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の植物の種子。
【請求項8】
非Bt緩衝帯植物および請求項1〜6のいずれかに記載の複数の植物を含む植物の圃場であって、前記緩衝帯植物は前記圃場の全ての作物植物の40%未満を構成する、圃場。
【請求項9】
前記緩衝帯植物が前記圃場の全ての作物植物の30%未満を構成する、請求項8に記載の植物の圃場。
【請求項10】
前記緩衝帯植物が前記圃場の全ての作物植物の20%未満を構成する、請求項8に記載の植物の圃場。
【請求項11】
前記緩衝帯植物が前記圃場の全ての作物植物の10%未満を構成する、請求項8に記載の植物の圃場。
【請求項12】
前記緩衝帯植物が前記圃場の全ての作物植物の5%未満を構成する、請求項8に記載の植物の圃場。
【請求項13】
前記緩衝帯植物がブロックまたは帯状地にある、請求項8に記載の植物の圃場。
【請求項14】
非Bt緩衝帯植物からの緩衝帯種子および請求項7に記載の複数の種子を含む種子混合物であって、前記緩衝帯種子は混合物の全ての種子の40%未満を構成する、種子混合物。
【請求項15】
前記緩衝帯種子が混合物の全ての種子の30%未満を構成する、請求項14に記載の種子混合物。
【請求項16】
前記緩衝帯種子が混合物の全ての種子の20%未満を構成する、請求項14に記載の種子混合物。
【請求項17】
前記緩衝帯種子が混合物の全ての種子の10%未満を構成する、請求項14に記載の種子混合物。
【請求項18】
前記緩衝帯種子が混合物の全ての種子の5%未満を構成する、請求項14に記載の種子混合物。
【請求項19】
種子を播いて請求項8に記載の植物の圃場を作製するステップを含む、昆虫によるCry毒素への抵抗性の発達を管理する方法。
【請求項20】
前記植物が10エーカーよりも多くを占める、請求項8〜13のいずれかに記載の圃場。
【請求項21】
前記植物がトウモロコシ、ダイズおよびワタからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の植物。
【請求項22】
前記植物がトウモロコシ植物である、請求項21に記載の植物。
【請求項23】
ユーロピアンコーンボーラー昆虫をCry1F殺虫性タンパク質ならびにCry2Aa殺虫性タンパク質およびCry1I殺虫性タンパク質からなる群から選択される第二の殺虫性タンパク質と接触させることにより、ユーロピアンコーンボーラー昆虫を防除する方法。
【請求項24】
Cry2Aa殺虫性タンパク質およびCry1I殺虫性タンパク質からなる群から選択される第二の殺虫性タンパク質と組み合わせたCry1F殺虫性タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項25】
Cry2Aa殺虫性タンパク質およびCry1I殺虫性タンパク質からなる群から選択される第二の殺虫性タンパク質と組み合わせたCry1F殺虫性タンパク質を作製する方法。
【請求項26】
ツマジロクサヨトウ昆虫をCry1F殺虫性タンパク質およびCry1E殺虫性タンパク質と接触させることにより、ツマジロクサヨトウ昆虫を防除する方法。
【請求項27】
Cry1E殺虫性タンパク質と組み合わせたCry1F殺虫性タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項28】
Cry1E殺虫性タンパク質と組み合わせたCry1F殺虫性タンパク質を作製する方法。
【請求項29】
請求項1に記載の植物の植物細胞であって、前記Cry1Fa殺虫性タンパク質が、配列番号1と少なくとも99%同一であり、前記Cry2Aa殺虫性タンパク質が、配列番号2と少なくとも99%同一であり、前記Cry1I殺虫性タンパク質が、配列番号3と少なくとも99%同一である、植物細胞。
【請求項30】
請求項2に記載の植物の植物細胞であって、前記Cry1Fa殺虫性タンパク質が、配列番号1と少なくとも99%同一であり、前記Cry1E殺虫性タンパク質が、配列番号4と少なくとも99%同一である、植物細胞。


【公表番号】特表2013−514767(P2013−514767A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544837(P2012−544837)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060812
【国際公開番号】WO2011/075586
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】