説明

テスト情報データベース比較装置

【課題】テストプログラム間の差分を容易に抽出することのできるテスト情報データベース比較装置を提供する。
【解決手段】テスト情報データベース比較装置1は、記述言語あるいは表現形式の違いに関わらず、共通の階層的ディレクトリ構造を持って、テストデータごとに生成された複数のテスト情報データベース101、102、103、・・・に対して、ディレクトリ指定部11が、比較対照のディレクトリを指定し、正規化部12が、指定されたディレクトリのデータを予め定められた標準形式のデータに正規化し、比較部13が、正規化されたデータを比較し、差分抽出部14が、比較部13の比較結果からテスト情報データベース101、102、103、・・・間の差分を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テスト情報データベース比較装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LSIのテストをするためのテストプログラムは、使用するLSIテスター機種に応じて、そのLSIテスター機種用のテストプログラム記述言語を用いて記述している。したがって、使用するLSIテスター機種を変更する場合など、変更先のLSIテスター機種用のテストプログラム記述言語で、その記述書式に従って、テストプログラムを記述し直す必要がある。
【0003】
また、近年は、LSIテスター機種に関わらず共通に使用できる記述言語としてIEEE標準のテストインターフェース言語(Standard Test Interface Language)も用いられるようになっている。STILを用いてテストプログラムを記述すれば、LSIテスターの機種展開が容易である。ただし、このSTILは、記述の自由度が高く、同じテスト内容であっても、様々な表現形式で記述することができるため、それぞれの表現形式に応じた記述書式を守る必要がある。
【0004】
そこで、従来、テストプログラム記述言語で作成されたデータに対しては、パーサーによる構文解析を行い、その記述言語の記述書式が守られているかどうかをチェックすることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、パーサーでは、異なる記述言語あるいは異なる記述形式で記述された2つの記述データがあったときに、その2つの記述データに同じテスト内容が記述されているかどうかを判定することはできない。
【0006】
このような場合には、2つの記述データの差分は、目視による記述の解読と比較を人手作業で行って得るしかなく、現実的には、テストパターンに対しては波形表示を行うなどして間接的に違いを見るしかなく、また、テスター制御情報を記述するテストプログラムに対しては、その記述言語に精通した技術者がテストフローとテスト項目を解読して判別するしかない、という問題があった。
【特許文献1】特開2005−274451号公報 (第5−6ページ、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、テストプログラム間の差分を容易に抽出することのできるテスト情報データベース比較装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、記述言語あるいは表現形式の違いに関わらず、共通の階層的ディレクトリ構造を持って、テストデータごとに生成された複数のテスト情報データベースに対して、比較対照のディレクトリを指定するディレクトリ指定手段と、指定されたディレクトリのデータを予め定められた標準形式のデータに正規化する正規化手段と、正規化されたデータを比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果から前記複数のテスト情報データベース間の差分を抽出する差分抽出手段とを有することを特徴とするテスト情報データベース比較装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、テストプログラム間の差分を容易に抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1に係るテスト情報データベース比較装置の構成の例を示すブロック図である。
【0012】
本実施例のテスト情報データベース比較装置1は、記述言語あるいは表現形式の違いに関わらず、共通の階層的ディレクトリ構造を持って、テストデータごとに生成された複数のテスト情報データベース101、102、103、・・・に対して、比較対照のディレクトリを指定するディレクトリ指定部11と、指定されたディレクトリのデータを予め定められた標準形式のデータに正規化する正規化部12と、正規化されたデータを比較する比較部13と、比較部13の比較結果からテスト情報データベース101、102、103、・・・間の差分を抽出する差分抽出部14と、を有する。
【0013】
テスト情報データベース101、102、103、・・・は、それぞれ、テストプログラム記述言語で記述されたテストデータから、パーサやコンパイラなどにより生成されたデータベースである。元になるテストデータの記述言語あるいは表現形式に違いがあっても、テスト情報データベース101、102、103、・・・は、共通の階層的ディレクトリ構造を持つように生成される。
【0014】
図2に、各テスト情報データベースの階層的ディレクトリ構造の例を示す。
【0015】
この例では、各テスト情報データベースは、その上位階層に、LSIテスターを制御する情報に関連するテスト情報関連ディレクトリ、テストパターンデータに関連するテストパターン関連ディレクトリ、LSIテスター固有のパラメータに関連する共通利用データ関連ディレクトリ、を有している。
【0016】
テスト情報関連ディレクトリの下位階層には、フロー情報ディレクトリ、ピン情報ディレクトリ、レベル情報ディレクトリ、波形情報ディレクトリ、パワーシーケンス情報ディレクトリなどが含まれる。
【0017】
テストパターン関連ディレクトリには、パターンデータディレクトリなどが含まれる。
【0018】
また、共通利用データ関連ディレクトリには、テスターリソースマッピング情報ディレクトリ、テストメソッドリソース情報ディレクトリ、テストメソッド情報ディレクトリ、テスター制約情報ディレクトリなどが含まれる。
【0019】
このように、本実施例のテスト情報データベース比較装置1が比較を行うとするテスト情報データベースは、共通の階層的ディレクトリ構造を有しているので、テスト情報データベース比較装置1は、ディレクトリ指定部11により比較対照のディレクトリを指定し、そのディレクトリのレコードどうしを比較するようにする。
【0020】
ただし、元のテストデータの記述言語あるいは表現形式が違っていると、同じディレクトリのレコードであっても、テスト情報データベースのレコードの記述形式が異なることがある。
【0021】
そこで、正規化部12が、指定されたディレクトリのデータを予め定められた標準形式のデータに正規化し、テスト情報データベースのレコードの記述形式を共通にする。
【0022】
正規化の形式としては、比較の目的に応じて、テスト実行のタイミングにおけるテストスペックを記述する形式、LSIテスターのテストユニットに対する入出力情報を時系列に記述する形式、デバイスの信号ピン、電源ピン、グラウンドピンに印加される電気信号の変化点を時系列に記述する形式、などがとられる。
【0023】
このような記述形式の共通化により、各ディレクトリのレコードの比較が容易になる。
【0024】
図3〜5に、正規化部12による正規化の具体的な例の一部を示す。
【0025】
図3は、正規化の形式として、テスト実行のタイミングにおけるテストスペックを記述する形式をとった例である。
【0026】
この場合、テスト項目ごとに、そのテストに必要な総てのスペックが一定のフォーマットで書き出される。LSIテスターの機種により、テスト実行までの設定方式は様々に異なるが、テストされるデバイス側から見たときには、テスト実行時に与えられる信号値はどのテストでも同じ状態となる。そこで、テスト実行時に設定されている信号状態を示すテストスペック形式でテスト情報関連ディレクトリを正規化することにより、テストデータの記述言語あるいは表現形式に違いに関らず、テスト情報関連ディレクトリの記述内容を共通化することができる。
【0027】
図5は、テスト情報関連ディレクトリの別の正規化の形式として、テスト装置のテストユニットに対する入出力情報を時系列に記述する形式をとった例である。
【0028】
この場合、テストされるデバイスの総ての外部ピン(信号ピン、電源ピン、グラウンドピン)に対して、使用する測定ユニットに対する設定条件が記述される。
【0029】
図6は、テストパターン関連ディレクトリの正規化の形式として、デバイスの信号ピン、電源ピン、グラウンドピンに印加される電気信号の変化点を時系列に記述する形式をとった例である。
【0030】
この場合、図6(a)に波形イメージで示すような信号の変化に対して、図6(b)に示すような形式で、対象となるテストの開始時刻を0secとして、電源やグラウンドも含めた各信号の変化が記述される。
【0031】
比較部13は、正規化部12により正規化された状態で、ディレクトリ指定部11により指定されたディレクトリの記述内容を比較する。
【0032】
差分抽出部14は、比較部13による比較により差違が検出されると、その差違が検出された箇所を、差分結果111として出力する。このとき、正規化したデータと元のデータとの対応情報を保持しておくことにより、元のデータ形式で差分結果を出力することもできる。
【0033】
このような本実施例によれば、テスター制御情報を含む複数のテスト情報データベース間の差分を、テストデータの記述言語あるいは表現形式の違いに関らず、容易に抽出することができる。また、目視によらず差分を抽出するので、抽出結果の正確性が増大する。
【実施例2】
【0034】
本実施例では、複数のテストプログラムの間の差分を検出するテスト情報データベース比較装置の例を示す。
【0035】
図6は、本発明の実施例2に係るテスト情報データベース比較装置の構成の例を示すブロック図である。
【0036】
本実施例のテスト情報データベース比較装置2は、図1に示したテスト情報データベース比較装置1に、さらにデータベース生成部21A、21Bを追加したものである。そこで、図6において、図1に示したブロックと同じ機能を有するブロックについては、図1と同じ符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0037】
本実施例のテスト情報データベース比較装置2は、例えば、それぞれ固有の記述言語で記述される、A社テスター用テストプログラム211とB社テスター用テストプログラム212との間における差分を抽出し、テスト情報の差分221として出力するテスト情報データベース比較装置である。
【0038】
データベース生成部21Aは、A社テスター用テストプログラム211を実行するテスターエミュレータあるいはテストプログラムシミュレータを利用して、テスト実行時にA社テスターのテストユニットに格納されるスペックやパラメータを抽出し、テスト情報データベース201に格納する。
【0039】
データベース生成部21Bは、B社テスター用テストプログラム212を実行するテスターエミュレータあるいはテストプログラムシミュレータを利用して、テスト実行時にB社テスターのテストユニットに格納されるスペックやパラメータを抽出し、テスト情報データベース202に格納する。
【0040】
このテスト情報データベース201とテスト情報データベース202に対して、ディレクトリ指定部11、正規化部12、比較部13、差分抽出部14が、実施例1と同様の処理を行い、その差分をテスト情報の差分221として出力する。
【0041】
このような本実施例によれば、それぞれが固有の記述言語で記述されていても、複数のテストプログラムの間の差違を容易に抽出することができる。
【実施例3】
【0042】
本実施例では、基準テストプログラムと他のテストプログラムとの差分を抽出して、基準テストプログラムと同じテストを実行するように、他のテストプログラムの修正を行うことのできるテスト情報データベース比較装置の例を示す。
【0043】
図7は、B社テスター用テストプログラム212を基準テストプログラムとしたときの、本発明の実施例3に係るテスト情報データベース比較装置の構成の例を示すブロック図である。
【0044】
本実施例のテスト情報データベース比較装置3は、図6に示したテスト情報データベース比較装置2に、さらにテスト情報データ修正部31およびテストデータ生成部32を追加したものである。そこで、図7において、図6に示したブロックと同じ機能を有するブロックについては、図6と同じ符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0045】
テスト情報データ修正部31は、差分抽出部14により抽出されたテスト情報の差分221にもとづいて、その差分が解消するように、テスト情報データベース201に格納されているテスト情報データの修正を行なう。
【0046】
テストデータ生成部32は、テスト情報データ修正部31により修正されたテスト情報データベースから、A社テスター用のテストプログラムを生成する。生成されたテストプログラムは、基準テストプログラムであるB社テスター用テストプログラム212と同じテストを実行する修正版A社テスター用のテストプログラム211Aとなる。
【0047】
このような本実施例によれば、基準テストプログラムと同じテストが実行できるように行う、他のテストプログラムに対する修正を容易に行うことができる。これにより、例えば、LSIテスターの機種展開を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例1に係るテスト情報データベース比較装置の構成の例を示すブロック図。
【図2】テスト情報データベースの階層的ディレクトリ構成の例を示す図。
【図3】本発明の実施例の正規化部における正規化処理の第1の例を示す図。
【図4】本発明の実施例の正規化部における正規化処理の第2の例を示す図。
【図5】本発明の実施例の正規化部における正規化処理の第3の例を示す図。
【図6】本発明の実施例2に係るテスト情報データベース比較装置の構成の例を示すブロック図。
【図7】本発明の実施例3に係るテスト情報データベース比較装置の構成の例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0049】
1、2、3 テスト情報データベース比較装置
11 ディレクトリ指定部
12 正規化部
13 比較部
14 差分抽出部
21A、21B データベース生成部
31 テスト情報データ修正部
32 テストプログラム生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記述言語あるいは表現形式の違いに関わらず、共通の階層的ディレクトリ構造を持って、テストデータごとに生成された複数のテスト情報データベースに対して、
比較対照のディレクトリを指定するディレクトリ指定手段と、
指定されたディレクトリのデータを予め定められた標準形式のデータに正規化する正規化手段と、
正規化されたデータを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果から前記複数のテスト情報データベース間の差分を抽出する差分抽出手段と
を有することを特徴とするテスト情報データベース比較装置。
【請求項2】
前記階層的ディレクトリのディレクトリに、
LSIテスターを制御する情報に関連するテスト情報関連ディレクトリと、
テストパターンデータに関連するテストパターン関連ディレクトリと、
LSIテスター固有のパラメータに関連する共通利用データ関連ディレクトリと
が含まれることを特徴とする請求項1に記載のテスト情報データベース比較装置。
【請求項3】
前記正規化手段が、
前記テスト情報関連ディレクトリのデータを正規化するときに、テスト対象の半導体製品に対するテストスペックを生成する
ことを特徴とする請求項2に記載のテスト情報データベース比較装置。
【請求項4】
半導体製品のテストプログラムから前記テスト情報データベースを生成するデータベース生成手段をさらに有し、
前記差分抽出手段が、
複数のテストプログラム間の差分を、前記複数のテスト情報データベース間の差分として抽出する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のテスト情報データベース比較装置。
【請求項5】
前記差分抽出手段により抽出された、基準テストプログラムと他のテストプログラムとの差分にもとづいて、
前記他のテストプログラムを前記基準テストプログラムと同じテストを実行するように修正するプログラム修正手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項4に記載のテスト情報データベース比較装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate