説明

テトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩の製造方法及びテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩

【課題】フッ化有機オニウム塩を用いて、テトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩を高収率で得る製造方法を提供すること。
【解決手段】フッ化有機オニウム塩とフッ化アルミニウム水和物を、溶媒の存在下で反応させることを特徴とするテトラフルオロアルミン酸有機オニウムの製造方法である。本方法により新規化合物として、テトラフルオロアルミン酸1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム又はテトラフルオロアルミン酸1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムを製造することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩の製造方法に関し、詳しくは、溶媒の存在下で、フッ化有機オニウム塩とフッ化アルミニウム水和物とを反応させてテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩を製造する方法に関する。また、本発明は、新規なテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩に関する。
【0002】
本発明によれば、テトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩を高純度かつ高収率で製造することができる。テトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩は、界面活性剤、電池やコンデンサ等の電気化学素子用の電解質、相関移動触媒、帯電防止剤などの分野で使用される有用な化合物である。
【背景技術】
【0003】
テトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩の製造方法としては、ピリジン溶媒中で、トリメチルアルミニウムとOlah試薬(フッ化水素とピリジンとのアダクトであり、一般式:(HF)n・C65Nで表される)とを反応させることにより、テトラフルオロアルミン酸ピリジニウムを合成した例が知られており、さらにこのテトラフルオロアルミン酸ピリジニウムとアミン類とのカチオン交換によるアミン塩の製造方法についても知られている(N. Herronら、J. Am Chem. Soc., 115, (1993) p.3028)。また、一般式:QMFn(式中、Qは、有機オニウムであり、Mは、周期表4〜16族の元素である)で表される化合物の製造方法として、テトラフルオロアルミン酸のアンモニウム塩NH4MFnを用いて、水酸化物QOHと反応させる方法(特開平11-322759号公報)、及び炭酸塩QRCO3(式中、Qは、有機オニウムであり、Rは水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を表す)と反応させる方法(特開平11-322760号公報)により、式:QMFnが合成されている。
【0004】
更にテトラフルオロアルミン酸有機オニウムのポリフルオロメタレート塩の合成法として、ポリフルオロメタレートの水素酸と、有機オニウムのハロゲン塩(Journal of Organic Chemistry, 36, (1971) p.2371)、有機オニウムの水酸化物塩(Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 2, 3 (1978) p.254)及び有機オニウムのアルキル炭酸塩(特許第2140853号公報)を反応させる方法が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トリメチルアルミニウムに代表される有機アルミニウムを使用する方法は、自然発火性物質を取り扱わなければならず、またテトラフルオロアルミン酸ピリジニウム塩を経由することから合成工程も多くなる。更にテトラフルオロアルミン酸ピリジニウム塩からの塩交換反応についてはアミン塩の合成例があるのみで、第四級オニウム塩については報告例がない。また、テトラフルオロアルミン酸アンモニウム塩を反応させる方法では、テトラフルオロアルミン酸アンモニウムの各種の溶媒に対する溶解性が極めて低く、実質的に反応が進行しないという問題がある。
【0006】
またテトラフルオロアルミン酸(水素酸)に関しては、化合物の存在を種々の方法により確認している状況である。例えば米国特許4428920号公報には、酸化アルミニウムとフッ化水素酸との反応によりテトラフルオロアルミン酸(水素酸)が生成することが記載されているが、テトラフルオロアルミン酸(水素酸)は反応中間体として使用されているだけで、その化合物の同定がなされていない。また、フッ化有機オニウムとフッ化アルミニウムとを直接反応させる製造方法についても検討したが、フッ化アルミニウムが非常に反応性に乏しく、また一方のフッ化有機オニウムは熱安定性が悪く高温で分解するため、目的とするテトラフルオロアルミン酸の有機オニウム塩を得ることはできなかった。
【0007】
従って、自然発火性の有機アルミニウム化合物を使用することなく、さらに高純度かつ高収率で製造することができるテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩の製造方法の開発が強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの課題を解決するために、鋭意検討を進めた結果、本発明者らはフッ化有機オニウム塩とフッ化アルミニウム水和物とを、適切な溶媒の存在下で反応させることにより、高純度かつ高収率でテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩を製造することができることを見出した。更に、本発明の方法により、これまで製造されていなかった新規なテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩の合成が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、フッ化有機オニウム塩とフッ化アルミニウム水和物とを、溶媒の存在下で反応させることを特徴とする、テトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩の製造方法である。
【0010】
また、本発明は、 式(II):
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、
5〜R7は、それぞれ独立して、水素原子か、又は非置換若しくは置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基を表すか;
あるいは、R6及びR7は、R6が結合した窒素原子及びR7が結合した炭素原子と一緒になって、4〜10員環(ここで、該環はヘテロ原子を含んでいてもよい)を形成し、R5は上記で定義したとおりであり、
Xは、非置換若しくは置換のアルキレン基である)
で表されるテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電池、電解コンデンサ等の電気化学的素子に使用される電解質をはじめとする各種化学品として有用なテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩を収率よく合成することができる。また、電池、電解コンデンサ等の電気化学的素子に使用される電解質をはじめとする各種化学品として有用な新規なテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電解コンデンサの巻回型素子の斜視図である。
【図2】電解コンデンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明のテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩の製造方法は、フッ化有機オニウム塩とフッ化アルミニウム水和物とを溶媒の存在下で反応させる。原料のフッ化有機オニウム塩の有機オニウムは、孤立電子対を有する元素(窒素、リンなど)を含む化合物において、これらの孤立電子対にプロトンや他の陽イオンが配位結合して生ずるイオン化合物の総称であり、特に限定されるものではないが、本発明においては、式(I):
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、
1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R1〜R4の2個以上が、水素原子を表すことはないものとする)又は、非置換若しくは置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基である;あるいは、R1〜R4の一部又は全部が、Aで示される原子と一緒になって、非置換又は置換の3〜10員環(ここで、該環はヘテロ原子を含んでいてもよい)を形成し、該環の形成に関与していないR1〜R4は、上記で定義したとおりである;そしてAは、窒素原子又はリン原子を表す)
で表される有機オニウムが好ましい。
【0018】
式(I)の有機オニウムのR1〜R4について、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜20の、より好ましくは炭素数1〜6の分岐又は直鎖状のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜20の、より好ましくは炭素数3〜6のシクロアルキル基が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等の炭素数6〜20の、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、アラルキル基としてはベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等の炭素数7〜20の、より好ましくは炭素数7〜11のアラルキル基が挙げられる。
【0019】
これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基は、1個以上の置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシル基等が挙げられる。
【0020】
式(I)の有機オニウムにおいて、R1〜R4の一部又は全部は、Aで表される原子と一緒になって、非置換又は置換の3〜10員環(ここで、該環はヘテロ原子を含んでいてもよい)、好ましくは5〜8員環を形成することもできる。ここで、ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。該環の置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられる。これらの具体例は、R1〜R4について記載したものが挙げられ、これらのアルキル基等は、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシル基等の1個以上で置換されていてもよい。
【0021】
1〜R4の一部が、Aで表される原子と一緒になって、非置換又は置換の3〜10員環(ここで、環はヘテロ原子を含んでいてもよい)を形成する場合としては、例えば、以下が挙げられる。まず、R1〜R4のうちの2個は、Aで表される原子と一緒になって環を形成し、R1〜R4のうちの環形成に関与しない残りの2個は、上記で各R1〜R4について定義されたとおりである場合である。具体的には、式(I)が、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、チアゾリジン環、チオモルホリン環等を1個のみ有する有機オニウムが該当する。次に、R1〜R4のうちの3個がAで表される原子と一緒になって、A原子に隣接する環原子との間に二重結合を有する環を形成し、環形成に関与しないR1〜R4のうちの環形成に関与しない残りの1個は、上記で各R1〜R4ついて定義されたとおりである場合である。具体的には、式(I)が、イミダゾリウム、ピリジニウム、第四級環状アミジニウムである有機オニウムが該当する。
【0022】
1〜R4の全部が、Aで表される原子と一緒になって、非置換又は置換の3〜10員環(ここで、環はヘテロ原子を含んでいてもよい)を形成する場合には、R1〜R4のうちの2個ずつが、それぞれA原子と一緒になって、2個の環を形成する場合が挙げられる。具体的には、式(I)が、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、チアゾリジン環、チオモルホリン環等から選択される環を2個有する有機オニウムが該当する。
【0023】
式(I)で表される有機オニウムの代表例としては、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム、第四級イミダゾリウム、第四級環状アミジニウム、第三級アンモニウム等を挙げることができる。
【0024】
第四級アンモニウムの具体例としては、テトラアルキルアンモニウム、例えばテトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチル−n−プロピルアンモニウム、トリメチルイソプロピルアンモニウム、トリメチル−n−ブチルアンモニウム、トリメチルイソブチルアンモニウム、トリメチル−t−ブチルアンモニウム、トリメチル−n−ヘキシルアンモニウム、ジメチルジ−n−プロピルアンモニウム、ジメチルジイソプロピルアンモニウム、ジメチル−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、メチルトリ−n−プロピルアンモニウム、メチルトリイソプロピルアンモニウム、メチルジ−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、メチル−n−プロピルジイソプロピルアンモニウム、トリエチル−n−プロピルアンモニウム、トリエチルイソプロピルアンモニウム、トリエチル−n−ブチルアンモニウム、トリエチルイソブチルアンモニウム、トリエチル−t−ブチルアンモニウム、ジメチルジ−n−ブチルアンモニウム、ジメチルジイソブチルアンモニウム、ジメチルジ−t−ブチルアンモニウム、ジメチル−n−ブチルエチルアンモニウム、ジメチルイソブチルエチルアンモニウム、ジメチル−t−ブチルエチルアンモニウム、ジメチル−n−ブチルイソブチルアンモニウム、ジメチル−n−ブチル−t−ブチルアンモニウム、ジメチルイソブチル−t−ブチルアンモニウム、ジエチルジ−n−プロピルアンモニウム、ジエチルジイソプロピルアンモニウム、ジエチル−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、エチルトリ−n−プロピルアンモニウム、エチルトリイソプロピルアンモニウム、エチルジ−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、エチル−n−プロピルジイソプロピルアンモニウム、ジエチルメチル−n−プロピルアンモニウム、エチルジメチル−n−プロピルアンモニウム、エチルメチルジ−n−プロピルアンモニウム、ジエチルメチルイソプロピルアンモニウム、エチルジメチルイソプロピルアンモニウム、エチルメチルジイソプロピルアンモニウム、エチルメチル−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、テトラ−n−プロピルアンモニウム、テトライソプロピルアンモニウム、n−プロピルトリイソプロピルアンモニウム、ジ−n−プロピルジイソプロピルアンモニウム、トリ−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、トリメチルペンチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、トリメチルヘプチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルノニルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルウンデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム等;芳香族置換アンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム等;脂肪族環状アンモニウム、例えばピロリジニウム(例えばN,N−ジメチルピロリジニウム、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、N,N−ジエチルピロリジニウム、N,N−テトラメチレンピロリジニウム等)、ピペリジニウム(例えばN,N−ジメチルピペリジニウム、N−エチル−N−メチルピペリジニウム、N,N−ジエチルピペリジニウム、N,N−テトラメチレンピペリジニウム、N,N−ペンタメチレンピペリジニウム等)、モルホリニウム(N,N−ジメチルモルホリニウム、N−エチル−N−メチルモルホリニウム、N,N−ジエチルモルホリニウム等)等;窒素ヘテロ環芳香族化合物イオン、例えばN−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−n−プロピルピリジニウム、N−イソプロピルピリジニウム、N−n−ブチルピリジニウム等、を挙げることができる。
【0025】
第四級ホスホニウムの具体例としては、テトラメチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム等を挙げることができる。
【0026】
第四級イミダゾリウムの具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチル−2−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリウム、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−n−プロピル−2,4−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,2,3,4,5−ペンタメチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−ペンチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−ヘプチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルベンゾイミダゾリウム、1−フェニル−3−メチルイミダゾリウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム、1−フェニル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、2−フェニル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、2−ベンジル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−ウンデシルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−ヘプタデシルイミダゾリウム等、更には2−(2′−ヒドロキシ)エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(2′−ヒドロキシ)エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、2−エトキシメチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エトキシメチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム化合物のヒドロキシル基やエーテル結合を有する基等を挙げることができる。
【0027】
第四級環状アミジニウムの具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,3−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリニウム、1,3−ジエチル−2−メチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリニウム、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリニウム、1−メチル−3−n−プロピル−2,4−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−n−ペンチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−n−ヘプチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、1−フェニル−3−メチルイミダゾリニウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリニウム、1−フェニル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1−ベンジル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−フェニル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−ベンジル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム等のイミダゾリニウム化合物;1,3−ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、1,3−ジエチルテトラヒドロピリミジニウム、1−エチル−3−メチルテトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチルテトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリエチルテトラヒドロピリミジニウム、1−エチル−2,3−ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、2−エチル−1,3−ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、1,2−ジエチル−3−メチルテトラヒドロピリミジニウム、1,3−ジエチル−2−メチルテトラヒドロピリミジニウム等のテトラヒドロピリミジニウム化合物;5−メチル−1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン−5、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7、1,3−ジメチル−2−n−ウンデシルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−n−ヘプタデシルイミダゾリニウム、更には2−(2′−ヒドロキシ)エチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1−(2′−ヒドロキシ)エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−エトキシメチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1−エトキシメチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム等のイミダゾリニウム化合物のヒドロキシル基やエーテル結合を有する基を挙げることができる。
【0028】
第三級アンモニウムの具体例としては、トリメチルアンモニウム、エチルジメチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ピリジニウム、N−メチルイミダゾリニウム、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネニウム−5、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセニウム−7等を挙げることができる。
【0029】
これらのうち、総炭素数が4〜12である有機オニウムが好ましく、中でもテトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、N,N−ジメチルピロリジニウム、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−ペンチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−ヘプチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルベンゾイミダゾリウム、1−フェニル−3−メチルイミダゾリウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム、1−フェニル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、2−フェニル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、2−ベンジル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3−ジエチルイミダゾリニウム、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−n−ペンチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−n−ヘプチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、1−フェニル−3−メチルイミダゾリニウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリニウム、1−フェニル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1−ベンジル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−フェニル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム及び2−ベンジル−1,3−ジメチルイミダゾリニウムからなる群から選択される一種以上の化合物であることが好ましく、更に好ましくは、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムであることが好ましい。
【0030】
本発明の製造方法において原料となる他の一つは、フッ化アルミニウム水和物である。フッ化アルミニウム水和物は、式:AlF3・nH2Oで表される化合物であり、nの値が0.5、1、3及び9の化合物が知られている。また、AlF3と水の比が整数比とならない混合物があることも知られている。本発明の製造方法においては、nの値に関わりなくフッ化アルミニウム水和物を使用することができるが、中でもフッ化アルミニウム三水和物がフッ化有機オニウム塩との反応性に優れるため特に好ましい。
【0031】
フッ化アルミニウム水和物は、フッ化有機オニウム塩1モルに対して通常、0.5モル以上、好ましくは0.8モル以上、更に好ましくは0.9モル以上であって、通常、10モル以下、好ましくは2モル以下、より好ましくは1.2モル以下の量で用いられる。
【0032】
本発明の製造方法において使用される溶媒としては、例えば水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、エチル−n−プロピルエーテル、エチル−イソプロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n−プロピルイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン等のアミド類、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン等のスルホン類等が挙げられる。この中で、更に好ましくは、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトンが挙げられる。これらの溶媒は、単独でも混合して用いても良い。
【0033】
有機オニウムが、第四級アンモニム、第四級ホスホニウム、第四級イミダゾリウム、第四級環状アミジニウム及び第三級アンモニウムからなる群から選ばれる化合物である場合、溶媒が水、メタノール、アセトニトリルであることが、原料である第四級オニウムのフッ化物や生成物であるテトラフルオロアルミン酸の第四級オニウム塩の溶解性や安定性、反応後の溶媒の除去がしやすいという点で好ましい。
【0034】
溶媒の使用量は、反応に用いるフッ化アルミニウム水和物に対して、重量で、通常、0.5倍以上、好ましくは1倍以上であって、通常、20倍以下、好ましくは10倍以下の量で用いられる。下限未満では、フッ化有機オニウム塩の分解による副反応が起きるおそれがあり、上限を越えると反応速度が遅くなりすぎ、効率が低くなるためである。
【0035】
本発明のテトラフルオロアルミン酸有機オニウムの製造方法は、フッ化有機オニウム塩とフッ化アルミニウム水和物とを溶媒の存在下で反応させることを特徴とする。反応温度はフッ化有機オニウム塩が分解しない範囲であれば特に制限がないが、−20〜150℃、好ましくは0〜100℃で反応させることができる。反応時間は、通常、数分以上、好ましくは10分以上、更に好ましくは30分以上であって、通常、50時間以下、中でも20時間以下とすることができる。
【0036】
本発明の製造方法において、フッ化アルミニウム水和物は溶媒に難溶であるため、反応は、通常、固−液の不均一系で進行する。反応方法において、溶媒と原料であるフッ化有機オニウム塩とフッ化アルミニウム水和物の添加の順序は特に限定されず、例えば、(1)フッ化有機オニウム塩と溶媒とを混合した後、フッ化アルミニウム水和物を添加しても、(2)フッ化アルミニウム水和物と溶媒とを混合した後、フッ化有機オニウム塩を添加しても、(3)溶媒とフッ化有機オニウム塩とフッ化アルミニウム水和物を同時に添加してもよい。いずれの方法においても、原料、溶媒の添加は一度に又は複数回にわたって行ってもよい。
【0037】
(1)の方法の場合、フッ化有機オニウム塩と溶媒との混合物は、溶液とすることが好ましい。また、フッ化アルミニウム水和物は、直接又は溶媒に懸濁させた懸濁液の形態で添加してもよい。(2)の方法の場合、フッ化有機オニウム塩は、直接又は溶媒に溶解した形態で添加してもよい。
【0038】
フッ化有機オニウム塩は、しばしば室温で不安定であるが、その場合はフッ化有機オニウム塩を、水やメタノール等に溶解させた溶液の形態で使用することが好ましい。この場合、溶液中でフッ化有機オニウム塩は、水やメタノール等の電子対供与性の化合物が配位した配位化合物の形態をとるため安定である。また、フッ化有機オニウム塩を溶液中で生成し、そのままフッ化アルミニウム水和物との反応に用いることもできる。
【0039】
溶液中でフッ化有機オニウム塩を生成する方法としては、アルキル炭酸有機オニウム塩とフッ化アンモニウムとを反応させる方法が挙げられる。具体例としては、炭酸ジメチル及びメタノールと、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリン等の有機オニウムを供給する化合物とを110〜170℃、中でも130〜150℃で、2〜24時間、反応させて、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムのメチル炭酸塩等のアルキル炭酸有機オニウム塩を溶液中に得て、該溶液にフッ化アンモニウムを添加し、フッ化1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムを得る方法が挙げられる。
【0040】
本発明の製造方法は、テトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩を晶析によって精製する方法をも含み、晶析溶媒としては炭素数4以下のアルコールが挙げられる。例えば、有機オニウムが、総炭素数4〜8の第四級アンモニウム又は第四級環状アミジニウムである場合、炭素数4以下のアルコールを晶析溶媒として晶析することによりテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩を精製することができる。炭素数4以下のアルコールとはメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール及びこれらの混合物である。これらの溶媒で晶析を行うことにより、効率的に不純物含量が小さいテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩が得られる。
【0041】
本発明の製造方法によれば、式(II):
【0042】
【化3】

【0043】
(式中、
5〜R7は、それぞれ独立して、水素原子か、又は非置換若しくは置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基を表すか;あるいは、R6及びR7は、R6が結合した窒素原子とR7が結合した炭素原子と一緒になって、4〜10員環(ここで、該環はヘテロ原子を含んでいてもよい)を形成し、R5は上記で定義したとおりであり、
Xは、非置換若しくは置換のアルキレン基である)
で表される、新規なテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩が得られる。
【0044】
式(II)において、R5〜R7はそれぞれ独立して、水素原子か、又は非置換若しくは置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基を表す。また、R6及びR7は、R6が結合した窒素原子とR7が結合した炭素原子と一緒になって、4〜10環(ここで、該環はヘテロ原子を含んでいてもよい)を形成することができる。R5とR7の両方ともが水素原子を表すものではないことが好ましい。
【0045】
5〜R7のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基の具体例は、R1〜R4について記載したとおりであり、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシル基等の1個以上で置換されていてもよい。
【0046】
6及びR7が環を形成する場合、4〜10員環(ここで、該環はヘテロ原子を含んでいてもよい)、好ましくは5〜8員環を形成することができる。
【0047】
Xのアルキレン基としては、炭素数が2〜20の、好ましくは2〜8の直鎖又は分岐状のアルキレン基が挙げられ、特にエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が好ましい。これらの基は、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシル基等の1個以上で置換されていてもよい。
【0048】
具体的な化合物としては、テトラフルオロアルミン酸1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸1,3−ジエチル−2−メチルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸1−メチル−3−n−プロピル−2,4−ジメチルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸1,3−ジメチル−2−n−ペンチルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸1,3−ジメチル−2−n−ヘプチルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸1−フェニル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸1−ベンジル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸2−フェニル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸2−ベンジル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸1,3−ジメチル−2−n−ウンデシルイミダゾリニウム、テトラフルオロアルミン酸1,3−ジメチル−2−n−ヘプタデシルイミダゾリニウム等のイミダゾリニウム塩;テトラフルオロアルミン酸1,2,3−トリメチルテトラヒドロピリミジニウム、テトラフルオロアルミン酸1,2,3−トリエチルテトラヒドロピリミジニウム、テトラフルオロアルミン酸1−エチル−2,3−ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、テトラフルオロアルミン酸2−エチル−1,3−ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、テトラフルオロアルミン酸1,2−ジエチル−3−メチルテトラヒドロピリミジニウム、テトラフルオロアルミン酸1,3−ジエチル−2−メチルテトラヒドロピリミジニウム、テトラフルオロアルミン酸5−メチル−1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネニウム−5、テトラフルオロアルミン酸8−メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセニウム−7等のテトラヒドロピリミジニウム塩が挙げられる。
【0049】
中でもテトラフルオロアルミン酸1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム及びテトラフルオロアルミン酸1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムが好ましい。
【0050】
本発明により得られるテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩は、界面活性剤、電池やコンデンサ等の電気化学素子用の電解質、相関移動触媒、帯電防止剤などの分野で使用される有用な化合物であり、特に電解コンデンサ等の電気化学的素子用電解質として有用である。また、式(II)で表されるテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩と溶媒を含む電解液は電気伝導率が高く、熱安定性に優れ、なおかつ耐電圧が高いことから、電解コンデンサ等の電気化学的素子用電解質として極めて有用である。
【0051】
特に、電解コンデンサに用いる場合には、電解質は高純度であることが望まれるため、塩は必要により晶析や溶媒抽出等により高純度にまで精製して使用される。また本発明方法によるテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩は、アルミニウム電解コンデンサの電解液に忌避される不純物である塩化物イオン、臭化物イオン及び硫酸イオン等を実質的に含有しないので、この用途に好適である。例えば塩化物イオン、臭化物イオン及び硫酸イオンの含有量を10ppm以下、中でも、5ppm以下程度にまで不純物含有量を低下させることが可能である。本発明によれば極めて高純度なテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩を得ることができ、電解コンデンサ用途にとって好適であるので、極めて工業的に有利な製造方法であり、テトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩であるといえる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではなく、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。
【0053】
実施例1
(1)テトラフルオロアルミン酸トリエチルメチルアンモニウムの合成
PFA製丸底フラスコにフッ化アルミニウム三水和物6.90g(50.0mmol)を秤量し、容器内を減圧後、アルゴンガスで置換した。フラスコの口からアルゴンガスを導入しながら、脱水したアセトニトリル100mlを加え、密栓して30分攪拌した。続いて同様にアルゴンガスを導入しながら、フッ化トリエチルメチルアンモニウム三水和物9.46g(50.0mmol)を分割して投入し、更に3時間ほど攪拌した。未反応の固形分を濾別後、溶媒を留去して約9gのテトラフルオロアルミン酸トリエチルメチルアンモニウムの白色粗結晶を得た。これをイソプロパノール10gにより再結晶精製した。収量は5.50g、仕込みからのトータル収率は50%であった。同定は元素分析とNMRにより行い、TG−DTAにより融点を測定した。またイオンクロマトグラフィーにより不純物である塩化物イオン、臭化物イオン及び硫酸イオンを定量した。
【0054】
元素分析:理論値C: 38.36, H: 8.28, N: 6.39, Al: 12.31, F: 34.67
分析値:C: 38.40, H: 7.70, N: 6.32, Al: 12.0, F: 33.50
19F-NMR:-190 ppm(六重線、J = 34 Hz、(CD3)2SO溶媒中CFCl3基準)
27Al-NMR: 49 ppm(五重線、J = 34 Hz、(CD3)2SO溶媒中AlCl3・3H2O基準)
融点:320℃(分解)
Cl-濃度:5ppm以下
Br-濃度:5ppm以下
SO42-濃度:5ppm以下
【0055】
(2)電解液及びアルミ電解コンデンサの作製
上記で得られたテトラフルオロアルミン酸トリエチルメチルアンモニウムを、γ−ブチロラクトンに溶解することにより25重量%濃度の電解液を調製した。この電解液について、調製直後と、125℃での加熱試験を25時間実施した後に、電気伝導率(25℃)を測定した。次に、図1に示す巻回型素子にこの電解液を含浸し、該巻回型素子をアルミニウム外装ケースに収納し、過酸化物で加硫したブチルゴムで封口した構造のアルミ電解コンデンサを作製した(図2)。このアルミ電解コンデンサに、10mAの定電流を125℃にて印加したときの電圧−時間の上昇カーブで、初めにスパイクあるいはシンチレーションが観測された電圧値を耐電圧値とした。使用したアルミ電解コンデンサ素子の仕様は、ケースサイズ10φ×20L、定格電圧200V、静電容量20μFである。
【0056】
比較例として、テトラフルオロアルミン酸トリエチルメチルアンモニウムの代わりにフタル酸水素トリエチルメチルアンモニウム(比較例1)及びフタル酸水素1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム(比較例2)をそれぞれ塩に使用した以外は実施例1と同様にして電解液を調製し、各評価を実施した。これらの結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例と比較例を比較すると、実施例1の方が、電気伝導率が比較例より約2倍も高い上、加熱後もその変化が小さく熱安定性に優れていることがわかる。また耐電圧についても比較例の2.5〜3倍もの高い値を示している。
【0059】
比較例3
フッ化アルミニウム三水和物のかわりに無水のフッ化アルミニウム4.20g(50mmol)を使用した以外は実施例1と同様に反応を実施した。反応停止後も液中にフッ化アルミニウムが大量に懸濁していたため、反応温度55℃にて更に12時間反応を実施した。しかし反応は進行せず、目的物であるテトラフルオロアルミン酸トリエチルメチルアンモニウムを全く得ることができなかった。
【0060】
実施例2
(1)テトラフルオロアルミン酸1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムの合成
100mlオートクレーブ内に1−エチル−2−メチルイミダゾリン11.2g(0.10mol)、炭酸ジメチル18.0g(0.20mol)、メタノール27.2gを投入し、145℃にて8時間反応させることにより、炭酸メチル1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムを収率100%で得た。続いてこの反応液を、リフラックスコンデンサ付きのテフロン製フラスコに移液し、更にフッ化アンモニウム3.70g(0.10mol)を混合して、50℃にて5時間反応させることによりフッ化1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムを収率100%で得た。反応終了後のリフラックスコンデンサにはアンモニアと二酸化炭素によって生成した白色固体が付着しており、またその固体の一部が反応液中に混入していたのでこれをろ過により除去して次の反応工程に供した。
【0061】
上記反応液にフッ化アルミニウム三水和物13.8g(0.10mol)混合し、55℃で10時間反応させた。反応終了後、ろ過によって不溶物を除去した後、反応液から溶媒を減圧留去した。更にn−ブタノール46.0gから晶析してテトラフルオロアルミン酸1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムの白色結晶を得た。収量は20.2g(0.088mol)、出発原料である1−エチル−2−メチルイミダゾリンからのトータル収率は88%であった。同定は元素分析によりCHN含有量、ICP発光分析によりAl含有量、NMRにより19F核及び23Al核の核磁気共鳴スペクトルを測定することにより行った。またTG−DTAにより融点を測定した。更にイオンクロマトグラフィーにより不純物である塩化物イオン、臭化物イオン及び硫酸イオンを定量した。
【0062】
元素分析:理論値C: 36.53, H: 6.57, N: 12.17, Al: 11.72
分析値:C: 39.27, H: 6.05, N: 12.76, Al: 11.70
19F-NMR:-190.5 ppm(六重線、J = 35 Hz、(CD3)2SO溶媒中CFCl3基準)
27Al-NMR: 49.6 ppm(五重線、J = 35 Hz、(CD3)2SO溶媒中AlCl3・3H2O基準)
融点:160℃
Cl-濃度:5ppm以下
Br-濃度:5ppm以下
SO42-濃度:5ppm以下
【0063】
(2)電解液及びアルミ電解コンデンサの作製
このテトラフルオロアルミン酸1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムを、γ−ブチロラクトンに溶解することにより25重量%濃度の電解液を調製した。25℃における電気伝導率は24.1mS/cm、実施例1と同様にして測定した125℃におけるコンデンサの耐電圧は160Vであった。
【符号の説明】
【0064】
1 陽極箔
2 陰極箔
3 セパレータ
4 リード線
5 封口材
6 外装ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化有機オニウム塩とフッ化アルミニウム水和物とを、溶媒の存在下で反応させることを特徴とする、テトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩の製造方法。
【請求項2】
フッ化有機オニウム塩が、アルキル炭酸有機オニウム塩とフッ化アンモニウムとを反応させて得られる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
フッ化有機オニウム塩とフッ化アルミニウム水和物とを、溶媒の存在下で反応させて得られるテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩を、炭素数4以下のアルコールを晶析溶媒として用いて晶析することを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
フッ化有機オニウム塩の有機オニウムが、式(I):
【化4】


(式中、
1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R1〜R4の2個以上が、水素原子を表すことはないものとする)か、又は非置換若しくは置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基であるか;
あるいは、R1〜R4の一部又は全部が、Aで表される原子と一緒になって、非置換若しくは置換の3〜10員環(ここで、該環はヘテロ原子を含んでいてもよい)を形成し、環形成に関与していないR1〜R4は、上記で定義したとおりであり、
そしてAは、窒素原子又はリン原子を表す)
で表されるイオンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
有機オニウムが、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム、第四級イミダゾリウム、第四級環状アミジニウム及び第三級アンモニウムからなる群から選ばれるイオンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
有機オニウムが、第四級環状アミジニウムである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
有機オニウムの総炭素数が、4〜12である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
有機オニウムが、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム又は1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
フッ化アルミニウム水和物が、フッ化アルミニウム三水和物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
溶媒が、水、メタノール及びアセトニトリルからなる群から選ばれる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
溶媒が、メタノールである、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求式(II):
【化5】


(式中、
5〜R7は、それぞれ独立して、水素原子か、又は非置換若しくは置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基を表すか;
あるいは、R6及びR7は、R6が結合した窒素原子及びR7が結合した炭素原子と一緒になって、4〜10員環(ここで、該環はヘテロ原子を含んでいてもよい)を形成し、R5は上記で定義したとおりであり、
Xは、非置換若しくは置換のアルキレン基である)
で表されるテトラフルオロアルミン酸有機オニウム塩。
【請求項13】
テトラフルオロアルミン酸1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム又はテトラフルオロアルミン酸1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−161537(P2009−161537A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13110(P2009−13110)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【分割の表示】特願2002−135388(P2002−135388)の分割
【原出願日】平成14年5月10日(2002.5.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】