説明

テトラフルオロプロペンおよびジフルオロメタンを含む組成物ならびにその使用

本発明は、冷凍、空調およびヒートポンプシステムで使用するための組成物に関し、本組成物は、テトラフルオロプロペンおよびジフルオロメタンを含む。本発明の組成物は、伝熱流体、発泡剤、エアゾール噴射剤、鎮火剤、消火剤として、動力サイクルの作動流体として、冷却または加熱をもたらすための方法において、そしてHFC−134a、R410A、\R404A、またはR507を置換するための方法において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は冷凍、空調、およびヒートポンプシステムにおいて使用するための組成物に関し、本組成物は、テトラフルオロプロペンおよびジフルオロメタンを含む。本発明の組成物は、伝熱流体、発泡剤、エアロゾル噴射剤、ならびに動力サイクルの作動流体として、冷却または加熱をもたらすための方法において有用である。
【背景技術】
【0002】
冷凍産業では、過去数十年の間、モントリオール議定書(Montreal Protocol)の結果として段階的に廃止されつつあるオゾン層破壊性のクロロフルオロカーボン(CFC)およびハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の代替冷媒を見出す努力がなされてきた。ほとんどの冷媒製造業者にとっての解決法は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒の商業化であった。現時点で最も広く使用されている新しいHFC冷媒のHFC−134aは、オゾン層破壊係数がゼロであり、従って、モントリオール議定書の結果としての現在の規制の段階的廃止による影響を受けない。
【0003】
さらなる環境規制により、最終的には、特定のHFC冷媒の世界的な段階的廃止へと至り得る。現在、産業界は、移動空調で使用される冷媒についての地球温暖化係数(GWP)に関する規制に直面している。将来的に規制がより広く適用されれば、例えば固定空調および冷凍システムでは、冷凍および空調産業のすべての分野で使用することができる冷媒に対してさらにより大きい必要性が感じられるであろう。GWPに関連する最終的な規制要件についての不確実性によって、産業界は、多数の候補化合物および混合物を考慮することを強いられている。
【0004】
現在提案されているHFC冷媒および冷媒ブレンドの代替冷媒としては、HFC−152a、ブタンもしくはプロパンなどの純粋な炭化水素、またはCOなどの「天然」冷媒が挙げられる。これらの提案された代替品はそれぞれ、毒性、引火性、低エネルギー効率を含む問題を有するか、あるいは大きな装置設計の変更を必要とする。特に、HCFC−22、R−134a、R−404A、R−507、R−407CおよびR−410Aに対する新しい代替品も提案されている。GWPに関連してどんな規制要件が最終的に採用されるかについての不確実性によって、産業界は、低GWP、非引火性または低引火性に対する必要性と、現存のシステム性能パラメータとのバランスを取る多数の候補化合物および混合物を考慮することを強いられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびジフルオロメタンを含む組成物は、R−134a、R404AおよびR410Aを含む現在使用されている、より高GWPの冷媒の置換を可能にする特定の特性を有することが分かった。
【0006】
従って、本明細書では、約1重量パーセント〜約80重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約99重量パーセント〜約20重量パーセントのジフルオロメタンを含む組成物が提供される。
【0007】
また、本明細書には、冷却または加熱をもたらすための方法と、R−134a、R410AおよびR404Aなどの冷媒を置換するための方法と、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびジフルオロメタンを含む組成物を含有する空調および冷凍装置とが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に記載される実施形態の詳細に取り組む前に、いくつかの用語が定義される、あるいは明確にされる。
【0009】
定義
本明細書で使用される場合、伝熱組成物という用語は、熱源からヒートシンクへ熱を運ぶために使用される組成物を意味する。
【0010】
熱源は、熱を加える、伝達する、移動する、あるいは除去することが望ましい任意の空間、場所、物体または本体であると定義される。熱源の例は、スーパーマーケットにおける冷蔵庫または冷凍庫ケースなどの冷凍または冷却を必要とする空間(開放または閉鎖)、空調を必要とする建物空間、工業用ウォーターチラー、または空調を必要とする自動車の乗員室である。いくつかの実施形態では、伝熱組成物は、伝熱過程を通して一定状態のままであり得る(すなわち、蒸発または凝縮しない)。その他の実施形態では、伝熱組成物は蒸発冷却過程で同様に利用され得る。
【0011】
ヒートシンクは、熱を吸収することができる任意の空間、場所、物体または本体であると定義される。蒸気圧縮冷凍システムは、このようなヒートシンクの一例である。
【0012】
伝熱システムは、特定の空間において加熱または冷却効果を生じるために使用されるシステム(または装置)である。伝熱システムは、移動システムでも固定システムでもよい。
【0013】
伝熱システムの例としては、空調装置、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、ウォーターチラー、満液式蒸発器(flooded evaporator)冷却装置、直接膨張(direct expansion)冷却装置、ウォークインクーラー、移動冷蔵庫、移動空調ユニット、除湿機、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書で使用される場合、移動伝熱システムは、道路、鉄道、海また空用の輸送ユニット内に組み込まれた任意の冷凍、空調、または加熱装置を指す。さらに、移動冷凍または空調ユニットは、どの移動キャリアからも独立した「共同一貫輸送」システムとして知られる装置を含む。このような共同一貫輸送システムには、「コンテナ」(海上/陸上輸送の組み合わせ)および「スワップボディ」(道路/鉄道輸送の組み合わせ)が含まれる。
【0015】
本明細書で使用される場合、固定伝熱システムは、運転中、定位置に固定されるシステムである。固定伝熱システムは様々な建物内に結合されてもよいし、建物に取り付けられてもよく、あるいはソフトドリンクの自動販売機などのように屋外に配置された独立型の装置であってもよい。これらの固定用途は固定空調およびヒートポンプであってもよく、冷却装置、高温ヒートポンプ、住宅用、商業用または工業用の空調システム(住宅用ヒートポンプを含む)が含まれるがこれらに限定されず、そしてウィンドウ型、ダクトレス型、ダクト型、パッケージドターミナル型、およびルーフトップシステムなどの屋外用であるが建物に接続されたものが含まれる。固定冷凍用途では、開示される組成物は、商業用、工業用または住宅用の冷蔵庫および冷凍庫、製氷機、内蔵型クーラーおよび冷凍庫、満液式蒸発器冷却装置、直接膨張冷却装置、ウォークインおよびリーチイン(reach−in)クーラーおよび冷凍庫、ならびに組み合わせシステムを含む装置において有用であり得る。いくつかの実施形態では、開示される組成物は、スーパーマーケットの冷凍システムにおいて使用することができる。さらに、固定用途は二次ループシステムを用いることができ、これは、一次冷媒を用いてある場所で冷却を生じ、これを二次伝熱流体を介して離れた場所に伝達する。
【0016】
冷凍容量(冷却容量と称されることもある)は、循環される冷媒1ポンド当たりの蒸発器内の冷媒のエンタルピーの変化、または蒸発器から出る冷媒蒸気の単位量(容積)当たりの蒸発器内の冷媒によって除去される熱を定義する用語である。冷凍容量は、冷媒または伝熱組成物が冷却をもたらす能力の尺度である。従って、この容量が高いほど、得られる冷却は大きい。冷却速度は、単位時間当たりの蒸発器内の冷媒によって除去される熱を指す。
【0017】
性能係数(COP)は、除去された熱の量を、サイクルを運転するために必要とされるエネルギー入力で割ったものである。COPが高いほど、エネルギー効率は高い。COPは、エネルギー効率比(EER)、すなわち、特定の内部および外部温度セットにおける冷凍または空調装置に対する効率評価に直接関連する。
【0018】
「過冷却(subcooling)」という用語は、液体の温度を、所与の圧力に対するその液体の飽和点よりも低い温度まで低下させることを指す。飽和点は蒸気が完全に液体に凝縮する温度であるが、過冷却は、液体を、所与の圧力でより低い温度の液体に冷却し続ける。液体を飽和温度(または泡立ち点温度)よりも低い温度まで冷却することによって、正味の冷凍容量を増大させることができる。過冷却は、それにより、システムの冷凍容量およびエネルギー効率を改善する。過冷却量は、飽和温度よりも下方への冷却の量(度)である。
【0019】
過熱は、蒸気組成物がその飽和蒸気温度(組成物が冷却されたときに、液体の最初の一滴が形成される温度であり、「露点」と呼ばれることもある)よりもどの程度高温まで加熱されるかを定義する用語である。
【0020】
温度勾配(temperature glide)(単に「勾配」と称されることもある)は、過冷却または過熱を除いて、冷媒システムの構成要素内の冷媒による相変化過程の開始温度と終了温度との差の絶対値である。この用語は、近共沸または非共沸組成物の凝縮または蒸発を説明するために使用され得る。冷凍、空調またはヒートポンプシステムの温度勾配に言及する場合、蒸発器内の温度勾配および凝縮器内の温度勾配の平均である平均温度勾配を示すことが多い。
【0021】
共沸組成物とは、単一の物質として挙動する2つ以上の物質の定沸点混合物を意味する。共沸組成物を特徴付ける1つの方法は、液体の部分蒸発または蒸留によって生じる蒸気が、それが蒸発または蒸留される液体と同じ組成を有する、すなわち、混合物が組成の変化を伴わずに蒸留/還流されることである。定沸点組成物は、同じ化合物の非共沸混合物と比べて最高沸点または最低沸点のいずれかを示すので、共沸性と特徴付けられる。共沸組成物は、運転中に冷凍または空調システム内で分画しないであろう。さらに、共沸組成物は、冷凍または空調システムからの漏出時に分画しないであろう。
【0022】
近共沸(near−azeotropic)組成物(一般に「共沸混合物様組成物」とも称される)は、本質的に単一の物質として挙動する2つ以上の物質の実質的に定沸点の液体混合物である。近共沸組成物を特徴付ける1つの方法は、液体の部分蒸発または蒸留によって生じる蒸気が、それが蒸発または蒸留される液体と実質的に同じ組成を有する、すなわち、混合物が実質的な組成の変化を伴わずに蒸留/還流されることである。近共沸組成物を特徴付けるもう1つの方法は、特定の温度における組成物の泡立ち点蒸気圧および露点蒸気圧が実質的に同一であることである。本明細書では、蒸発または沸騰除去などによって組成物の50重量パーセントが除去された後、元の組成物と、元の組成物の50重量パーセントが除去された後に残存する組成物との間の蒸気圧の差が約10パーセント未満であれば、組成物は近共沸性である。
【0023】
非共沸組成物は、単一の物質というよりはむしろ単純な混合物として挙動する2つ以上の物質の混合物である。非共沸組成物を特徴付ける1つの方法は、液体の部分蒸発または蒸留によって生じる蒸気が、それが蒸発または蒸留される液体と実質的に異なる組成を有する、すなわち、混合物が実質的な組成の変化を伴って蒸留/還流されることである。非共沸組成物を特徴付けるもう1つの方法は、特定の温度における組成物の泡立ち点蒸気圧および露点蒸気圧が実質的に異なることである。本明細書では、蒸発または沸騰除去などによって組成物の50重量パーセントが除去された後、元の組成物と、元の組成物の50重量パーセントが除去された後に残存する組成物との間の蒸気圧の差が約10パーセントよりも大きければ、組成物は非共沸性である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「潤滑剤」という用語は、組成物または圧縮器に添加されて(そして、任意の伝熱システム内での使用において任意の伝熱組成物と接触されて)、圧縮器に潤滑を提供して部品が動かなくならないようにする助けになるあらゆる材料を意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、相溶化剤は、伝熱システムの潤滑剤中における、開示される組成物のハイドロフルオロカーボンの溶解度を改善する化合物である。いくつかの実施形態では、相溶化剤は、圧縮器への油戻り(oil return)を改善する。いくつかの実施形態では、組成物はシステム潤滑剤と共に使用されて、油を多く含む相の粘度を低下させる。
【0026】
本明細書で使用される場合、油戻りは、伝熱組成物が伝熱システムを通って潤滑剤を運び、そしてそれを圧縮器に戻す能力を指す。すなわち、使用の際、圧縮器潤滑剤の一部が伝熱組成物によって圧縮器からシステムの他の部分へ運び去られることは珍しくない。このようなシステムでは、潤滑剤が圧縮器に効率良く戻されないと、圧縮器は、最終的には、潤滑の欠如のために動かなくなるであろう。
【0027】
本明細書で使用される場合、「紫外線」色素は、電磁スペクトルの紫外または「近」紫外領域で光を吸収するUV蛍光またはリン光組成物であると定義される。10ナノメートル〜約775ナノメートルの範囲の波長を有する少なくともある程度の放射を放出するUV光による照射下において、UV蛍光色素によって生じる蛍光が検出され得る。
【0028】
引火性は、組成物が発火するおよび/または火炎を伝播させる能力を意味するために使用される用語である。冷媒および他の伝熱組成物について、引火下限(「LFL」)は、ASTM(米国材料試験協会)E681において規定される試験条件下で、組成物および空気の均一な混合によって火炎を伝播させることができる伝熱組成物の空気中の最低濃度である。引火上限(「UFL」)は、同じ試験条件下で、組成物および空気の均一な混合によって火炎を伝播させることができる伝熱組成物の空気中の最高濃度である。ASHRAE(American Society of Heating,Refrigerating and Air−Conditioning Engineers)によって非引火性であると分類されるためには、冷媒は、液相および気相の両方で配合される際にASTM E681の条件下で非引火性であり、そして漏出シナリオの間に生じる液相および蒸気相の両方で非引火性でなければならない。
【0029】
地球温暖化係数(GWP)は、二酸化炭素1キログラムの放出と比較して、特定の温室ガス1キログラムの大気中への放出による相対的な地球温暖化寄与を評価するための指数である。GWPは、異なる対象期間に対して計算することができ、所与のガスについての大気寿命の効果を示す。100年の対象期間に対するGWPは、一般的に参照される値である。混合物については、各成分の個々のGWPに基づいて、加重平均を計算することができる。
【0030】
オゾン層破壊係数(ODP)は、物質によって引き起こされるオゾン層破壊の量を指す数である。ODPは、化学物質のオゾンに対する影響を、同様の質量のCFC−11(フルオロトリクロロメタン)の影響と比較した比率である。従って、CFC−11のODPは、1.0であると定義される。その他のCFCおよびHCFCは、0.01〜1.0の範囲のODPを有する。HFCは塩素を含有しないので、ゼロのODPを有する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、またはこれらのあらゆる他の変形は、非排他的な包含を網羅することが意図される。例えば、要素のリストを含む組成物、過程、方法、物品、または装置は、必ずしもこれらの要素のみに限定されず、明確に記載されていないか、あるいはこのような組成物、過程、方法、物品、または装置に固有のその他の要素を含んでいてもよい。さらに、反対する明確な記載がない限り、「または」は包括的な「または」を指し、排他的な「または」を指さない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(または存在し)かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)かつBが真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0032】
「からなる(consisting of)」という移行句は、規定されていないあらゆる要素、工程または成分を排除する。このような句が請求項内にあれば、普通に伴われる不純物を除いて、列挙された以外の材料の包含に対して、この請求項はクローズされるであろう。「からなる(consisting of)」という句が、序文の直後ではなく請求項の本文に現れる場合、その本文に示される要素を限定するだけであり、その他の要素は全体として請求項から排除されない。
【0033】
「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句は、文字通りに開示されたものに加えて、材料、行程、特徴、成分、または要素を含む組成物、方法または装置を定義するために使用されるが、ただし、これらの付加的に含まれる材料、行程、特徴、成分、または要素は、特許請求された発明の基本的および新規の特徴に実質的に影響を与えることを条件とする。「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、「含む(comprising)」と「からなる(consisting of)」との間の中間の立場をとる。
【0034】
出願人が「含む(comprising)」などの制約のない用語で発明またはその一部を定義した場合、その説明は(他に記載されない限り)、「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」という用語を用いて同様にこのような発明を説明すると解釈されるべきであることは、容易に理解されるはずである。
【0035】
また、「a」または「an」の使用は、本明細書に記載される要素および成分を説明するために用いられる。これは、単に便宜上、そして本発明の範囲の一般的な意味を与えるために行われる。この説明は、1つまたは少なくとも1つを含むと解釈されるべきであり、そしてそうでないことを意味することが明白でない限り、単数は複数も含む。
【0036】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または等価の方法および材料は、開示される組成物の実施形態の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料は以下に記載される。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、特定の一節が引用されない限り、参照によってその全体が援用される。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が支配するであろう。さらに、材料、方法、および実施例は単に例示的であって、限定的であることは意図されない。
【0037】
組成物
約1重量パーセント〜約80重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約99重量パーセント〜約20重量パーセントのジフルオロメタンを含む組成物が開示されている。2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、HFO−1234yf、HFC−1234yf、またはR1234yfと呼ばれることもある。HFO−1234yfは、脱フッ化水素化(dehydrofluorination)1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)または1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)などの当該技術分野において既知の方法によって製造することができる。ジフルオロメタン(HFC−32またはR32)は市販されているか、あるいは塩化メチレンの脱塩素フッ素化(dechlorofluorination)などの当該技術分野において既知の方法によって製造することができる。
【0038】
HFO−1234yfおよびHFC−32はいずれも、比較的高いGWPを有する特定の冷媒および冷媒混合物に対する低GWP代替品であると考えられている。特に、R410A(50重量%のHFC−32および50重量%のペンタフルオロエタンを含有する混合物、またはHFC−125に対するASHRAE名称)は2088の地球温暖化係数を有し、冷媒の地球温暖化に関連する規制が制定されたときに代替品を必要とするであろう。加えて、R404A(44重量%のHFC−125、52重量%のHFC−143a(1,1,1−トリフルオロエタン)、および4重量%のHFC−134aを含有する混合物に対するASHRAE名称)は3922のGWPを有し、代替品を必要とするであろう。さらに、R404Aと事実上同一の特性を有するために多くのR404Aシステムにおいて使用することができるR−507(50重量%のHFC−125および50重量%のHFC−143aを含有する混合物に対するASHRAE名称)は3985に等しいGWPを有し、従ってR404Aに対するより低GWPの代替品を提供するのではなく、同様に代替品を必要とするであろう。
【0039】
テトラフルオロエタン、特に現在多くの用途で冷媒として使用されている1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)は1430のGWPを有し、代替品を必要としている。注目すべきは、自動車用ヒートポンプにおけるHFC−134aの使用である。一実施形態では、約21.5重量パーセントのHFC−32および約78.5重量パーセントのHFO−1234yfを有する組成物は、HFC−134aに対して著しく改善された加熱容量を実証するが、150未満のGWPを有し、これは欧州F−Gasの指令を満たす。
【0040】
本発明の範囲内に包含される組成物は、空調システムにおいて一般に使用される冷媒であるR410Aと比較して低下されたGWPを提供することが分かった。80重量パーセントのHFO−1234yfおよび20重量パーセントのHFC−32を含有する組成物は、GWP=2088であるR410Aと比べて、わずか138のGWPを有する。このような組成物は、R410Aよりもかなり低い冷却容量を有する。しかしながら、GWP規制が150よりも低いGWPを要求すれば、冷却容量の不足を補うことが可能であろう。そして、この組成物はR410Aに対して改善されたエネルギー効率を有する。
【0041】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、約30重量パーセント〜約80重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約70重量パーセント〜約20重量パーセントのジフルオロメタンを含む。30重量パーセントのHFO−1234yfおよび70重量パーセントのHFC−32を含有する組成物はまだ500未満のGWPを提供し、冷却容量およびエネルギー効率は、R410Aと本質的に一致する。
【0042】
別の実施形態では、本発明の組成物は、約25重量パーセント〜約60重量パーセントのHFO−1234yfおよび約75重量パーセント〜約40重量パーセントのジフルオロメタンを含む。これらの組成物は、R410Aの±20%以内の加熱容量、同程度のエネルギー効率および約5℃未満の平均温度勾配を提供することが分かった。特に注目すべきは、約72.5重量パーセントのHFC−32および約27.5重量パーセントのHFO−1234yfを有する組成物であり、容量およびエネルギー効率の両方についてR410Aに一致することが分かった。
【0043】
別の特定の実施形態では、本発明の組成物は、約45重量パーセント〜約80重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約55重量パーセント〜約20重量パーセントのジフルオロメタンを含む。この実施形態の範囲内に包含される組成物は、R404Aの±20%以内の冷却容量を提供するが、エネルギー効率も一致する。さらに、この範囲内の組成物のGWPは約500〜約335の範囲内であり、これはR404AまたはR410AのGWPよりも著しく低い。
【0044】
別の実施形態では、本発明の組成物は、約55重量パーセント〜約80重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約45重量パーセント〜約20重量パーセントのジフルオロメタンを含む。この範囲内の組成物は、R404Aの代替品として所望される範囲の冷却容量およびエネルギー効率を提供するが、400未満のGWP値を保持する。
【0045】
特定の実施形態では、本発明に従う組成物は、約35重量パーセント〜約60重量パーセントのHFO−1234yfおよび約65重量パーセント〜約40重量パーセントのHFC−32を含む。このような組成物は、R407Cと同等以下の温度勾配を有する。
【0046】
いくらかの温度勾配を有する冷媒混合物は産業界において許容され得るか、あるいはさらに、本明細書において前述したような利点も有し得る。R407C(23重量%のHFC−32、25重量%のHFC−125、および52重量%のHFC−134aの混合物に対するASHRAE名称)は、勾配を有する市販の冷媒製品の一例である。本明細書に開示される特定の組成物は、R407Cの温度勾配に近いか、あるいはR407Cの温度勾配よりも低い温度勾配を有する冷媒組成物を提供することが実証されている。従って、このような組成物は、冷媒、空調およびヒートポンプ産業に商業的に許容されるであろう。
【0047】
一実施形態では、本発明の組成物は、約20重量パーセント〜約55重量パーセントのHFO−1234yfおよび約80重量パーセント〜約45重量パーセントのHFC−32を含む。この範囲内の組成物は、R410Aの20%以内の冷却容量およびR410Aよりもわずかに良好なエネルギー効率を有することが分かっているので、R410Aの許容可能な代替品とされる。
【0048】
特に注目すべきは作動流体を含む組成物であり、ここで、作動流体は本質的に、約20〜約42.5重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約80〜約57.5重量パーセントのジフルオロメタンからなる。これらの組成物は低い温度勾配を示すことが分かったので、様々な種類の装置における使用が可能になり、600未満のGWPを有する。
【0049】
別の実施形態では、本発明の組成物は、約45重量パーセント〜約55重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約55重量パーセント〜約45重量パーセントのジフルオロメタンを含むことができる。この範囲内の組成物は、R410Aの20%以内の冷却容量およびR410Aよりもわずかに良好なエネルギー効率と共に、400未満のGWP値も有する。さらに、この範囲内の組成物は、R404Aよりも大きい冷却容量を示すが、エネルギー効率はR404Aの数パーセント以内である。加えて、これらの組成物の温度勾配はR407Cの範囲内であり、従って、商業的に許容可能な冷媒のはずである。約45重量パーセント〜約55重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約55重量パーセント〜約45重量パーセントのジフルオロメタンの範囲内の組成物は、R410AまたはR404Aの代替品として許容可能なはずである。
【0050】
注目すべきは作動流体を含む組成物であり、ここで、作動流体は本質的に、約25重量パーセント〜約30重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約75重量パーセント〜約70重量パーセントのジフルオロメタンからなる。これらの組成物は、本明細書に開示される組成物のR410Aに対して、低い温度勾配ならびに一致するエネルギー効率および冷却容量を提供する。
【0051】
さらに注目すべきは作動流体を含む組成物であり、ここで、作動流体は本質的に、約40重量パーセント〜約45重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約60重量パーセント〜約55重量パーセントのジフルオロメタンからなる、これらの組成物は、R404Aに対してエネルギー効率の良好な一致ならびに改善された冷却および加熱容量、そして低い温度勾配および400未満のGWPを提供する。
【0052】
開示される組成物は、一般に、成分が上記の濃度+/−2重量パーセントで存在する場合に所望の特性および機能性を保持することが予想される。
【0053】
本発明の組成物の特定のものは非共沸組成物である。特に、43〜99重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび57〜1重量パーセントのジフルオロメタンを含む組成物は非共沸性である。非共沸組成物は、共沸または近共沸混合物を超える特定の利点を有し得る。例えば、非共沸組成物の温度勾配は、向流熱交換器配置における利点を提供する。
【0054】
置換される冷媒よりも高い容量を有する組成物は、より低いチャージサイズを可能にする(同じ冷却効果を達成するためにより少ない冷媒が必要とされ得る)ことによって低下されたカーボンフットプリントを提供する。従って、GWPがより高くても、このような組成物は最終的に環境影響の低下をもたらすことができる。加えて、さらにより大きいエネルギー効率の改善を提供するように新しい装置を設計することができ、従って、新しい冷媒を用いる環境影響も最小限となる。
【0055】
いくつかの実施形態では、テトラフルオロプロペンおよびジフルオロメタンに加えて、開示される組成物は、任意的な他の成分を含んでいてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物中の任意的な他の成分(本明細書では、添加剤とも呼ばれる)は、潤滑剤、色素(UV色素を含む)、可溶化剤、相溶化剤、安定剤、トレーサー、ペルフルオロポリエーテル、摩耗防止剤、極圧添加剤、腐食および酸化防止剤、金属表面エネルギー低下剤、金属表面不活性化剤、フリーラジカル捕捉剤、発泡調節剤、粘度指数改善剤、流動点降下剤、洗剤、粘度調整剤、およびこれらの混合物からなる群から選択される1つまたは複数の成分を含むことができる。実際には、これらの任意的な他の成分の多くはこれらのカテゴリーの1つまたは複数に当てはまり、1つまたは複数の性能特性を達成するために役立つ性質を有し得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、組成物全体に対して少量で存在する1つまたは複数の添加剤。いくつかの実施形態では、開示される組成物中の添加剤濃度の量は、全組成物の約0.1重量パーセント未満から、約5重量パーセントまでである。本発明のいくつかの実施形態では、添加剤は、全組成物の約0.1重量パーセント〜約3.5重量パーセントの量で、開示される組成物中に存在する。開示される組成物のために選択される添加剤成分は、実用性および/または個々の装置部品またはシステムの要求に基づいて選択される。
【0058】
いくつかの実施形態では、潤滑油は、鉱油潤滑剤である。いくつかの実施形態では、鉱油潤滑剤は、パラフィン(線状炭素鎖飽和炭化水素、分枝炭素鎖飽和炭化水素、およびこれらの混合物を含む)、ナフテン(飽和環状および環構造を含む)、芳香族化合物(1つまたは複数の環を含有する不飽和炭化水素を有するものであり、ここで、1つまたは複数の環は交互の炭素−炭素二重結合を特徴とする)、および非炭化水素(硫黄、窒素、酸素およびこれらの混合物などの原子を含有する分子)、ならびにこれらの混合物および組み合わせからなる群から選択される。
【0059】
いくつかの実施形態は、1つまたは複数の合成潤滑剤を含有することができる。いくつかの実施形態では、合成潤滑剤は、アルキル置換芳香族化合物(線状アルキル基、分枝状アルキル基、または線状および分枝状アルキル基の混合物によって置換されたベンゼンまたはナフタレンなどであり、一般的にアルキルベンゼンと称されることが多い)、合成パラフィンおよびナフテン、ポリ(αオレフィン)、ポリグリコール(ポリアルキレングリコールを含む)、二塩基酸エステル、ポリエステル、ネオペンチルエステル、ポリビニルエーテル(PVE)、シリコーン、ケイ酸エステル、フッ素化化合物、リン酸エステル、ポリカーボネートならびにこれらの混合物(この段落で開示される潤滑剤のいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択される。
【0060】
本明細書に開示される潤滑剤は市販の潤滑剤でもよい。例えば、潤滑剤は、BVM 100 NとしてBVA Oilsによって販売されるパラフィン系鉱油、Suniso(登録商標)1GS、Suniso(登録商標)3GSおよびSuniso(登録商標)5GSという商標でCrompton Co.によって販売されるナフテン系鉱油、Sontex(登録商標)372LTという商標でPennzoilによって販売されるナフテン系鉱油、Calumet(登録商標)RO−30という商標でCalumet Lubricantsによって販売されるナフテン系鉱油、Zerol(登録商標)75、Zerol(登録商標)150およびZerol(登録商標)500という商標でShrieve Chemicalsによって販売される線状アルキルベンゼン、ならびにHAB 22としてNippon Oilによって販売される分枝状アルキルベンゼン、Castrol(登録商標)100という商標でCastrol,United Kingdomによって販売されるポリエステル(POE)、Dow(Dow Chemical,Midland,Michigan)からのRL−488Aなどのポリアルキレングリコール(PAG)、そしてこれらの混合物(この段落で開示される潤滑剤のいずれかの混合物を意味する)であり得る。
【0061】
本発明と共に使用される潤滑剤は、ハイドロフルオロカーボン冷媒と共に使用するために設計され、圧縮冷凍および空調装置の運転条件下で本明細書に開示される組成物と混和性であり得る。いくつかの実施形態では、潤滑剤は、所与の圧縮器の要求と、潤滑剤がさらされ得る環境とを考慮することによって選択される。
【0062】
潤滑剤を含む本発明の組成物では、潤滑剤は、全組成物の5.0重量%未満の量で存在する。その他の実施形態では、潤滑剤の量は、全組成物の約0.1〜3.5重量%の間である。
【0063】
本明細書に開示される組成物についての上記の重量比にかかわらず、いくつかの伝熱システムでは、組成物は使用中にこのような伝熱システムの1つまたは複数の装置部品から付加的な潤滑剤を獲得し得ることが理解される。例えば、いくつかの冷凍、空調およびヒートポンプシステムでは、潤滑剤は圧縮器および/または圧縮器潤滑剤だめに充填され得る。このような潤滑剤はこのようなシステムの冷媒中に存在する任意の潤滑剤添加剤に付加的なものであり得る。使用中、冷媒組成物は圧縮器内にあるときに、ある量の装置潤滑剤を取り込み、冷媒−潤滑剤組成を出発の比率から変化させ得る。
【0064】
このような伝熱システムでは、潤滑剤の大部分がシステムの圧縮器部分に存在する場合でも、システム全体は、組成物の約75重量パーセントもの量からわずか約1.0重量パーセントまでが潤滑剤である全組成物を含有し得る。いくつかのシステム(例えばスーパーマーケットの冷凍陳列ケース)において、システムは約3重量パーセントの潤滑剤(システムの充填前に冷媒組成物中に存在するあらゆる潤滑剤のほかに)および97重量パーセントの冷媒を含有し得る。別の実施形態では、いくつかのシステム(例えば、移動空調システム)において、システムは約20重量パーセントの潤滑剤(システムの充填前に冷媒組成物中に存在するあらゆる潤滑剤のほかに)および約80重量パーセントの冷媒を含有し得る。
【0065】
本発明の組成物と共に使用される添加剤は、少なくとも1つの色素を含むことができる。色素は、少なくとも1つの紫外線(UV)色素であり得る。UV色素は、蛍光色素であってもよい。蛍光色素は、ナフタルイミド、ペリレン、クマリン、アントラセン、フェナントラセン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン、フルオレセイン、および前記色素の誘導体、ならびにこれらの組み合わせ(この段落で開示される上記の色素またはその誘導体のいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、開示される組成物は、約0.001重量パーセント〜約1.0重量パーセントのUV色素を含有する。その他の実施形態では、UV色素は全組成物の約0.005重量パーセント〜約0.5重量パーセントの量で存在し、他の実施形態では、UV色素は全組成物の0.01重量パーセント〜約0.25重量パーセントの量で存在する。
【0067】
UV色素は、装置(例えば、冷凍ユニット、空調装置またはヒートポンプ)内の漏出点において、またはその近くで色素の蛍光を観察できるようにすることによって、組成物の漏れを検出するために有用な成分である。色素からのUV発光、例えば蛍光は、紫外光の下で観察することができる。従って、このようなUV色素を含有する組成物が装置の所与の点から漏出していれば、漏出点または漏出点の近くで蛍光を検出することができる。
【0068】
本発明の組成物と共に使用可能な添加剤は、開示される組成物中の1つまたは複数の色素の溶解度を改善するように選択された少なくとも1つの可溶化剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、色素対可溶化剤の重量比は、約99:1〜約1:1の範囲である。可溶化剤には、炭化水素、炭化水素エーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル(ジプロピレングリコールジメチルエーテルなど)、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン(塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルム、またはこれらの混合物など)、エステル、ラクトン、芳香族エーテル、フルオロエーテルおよび1,1,1−トリフルオロアルカン、ならびにこれらの混合物(この段落で開示される可溶化剤のいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物が含まれる。
【0069】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの相溶化剤は、1つまたは複数の潤滑剤と、開示される組成物との相溶性を改善するように選択される。相溶化剤は、炭化水素、炭化水素エーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル(ジプロピレングリコールジメチルエーテルなど)、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン(塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルム、またはこれらの混合物など)、エステル、ラクトン、芳香族エーテル、フルオロエーテル、1,1,1−トリフルオロアルカン、およびこれらの混合物(この段落で開示される相溶化剤のいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択され得る。
【0070】
可溶化剤および/または相溶化剤は、炭素、水素および酸素のみを含有するエーテル(ジメチルエーテル(DME)など)からなる炭化水素エーテルおよびこれらの混合物(この段落で開示される炭化水素エーテルのいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択され得る。
【0071】
相溶化剤は、3〜15個の炭素原子を含有する線状または環状の脂肪族または芳香族炭化水素相溶化剤であり得る。相溶化剤は、少なくとも特に、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、およびデカンからなる群から選択され得る少なくとも1つの炭化水素であり得る。市販の炭化水素相溶化剤としては、Isopar(登録商標)H(ウンデカン(C11)およびドデカン(C12)の混合物(高純度C11〜C12イソパラフィン系))、Aromatic 150(C〜C11芳香族)、Aromatic 200(C〜C15芳香族)およびNaptha 140(C〜C11パラフィン、ナフテンおよび芳香族炭化水素の混合物)という商標でExxon Chemical(USA)から販売されているもの、ならびにこれらの混合物(この段落で開示される炭化水素のいずれかの混合物を意味する)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0072】
あるいは、添加剤は、少なくとも1つの高分子相溶化剤であり得る。高分子相溶化剤は、フッ素化および非フッ素化アクリレートのランダムコポリマーであってもよく、ここでポリマーは、式CH=C(R)CO、CH=C(R)C、およびCH=C(R)CXR(式中、Xは酸素または硫黄であり、R、R、およびRは独立してHおよびC〜Cアルキルラジカルからなる群から選択され、そしてR、R、およびRは独立してCおよびFを含有する炭素鎖ベースのラジカルからなる群から選択される)で表される少なくとも1つのモノマーの繰り返し単位を含み、さらに、H、Cl、エーテル酸素、またはチオエーテル、スルホキシド、もしくはスルホン基の形態の硫黄およびこれらの混合物を含有し得る。このような高分子相溶化剤の例としては、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE,19898,USA)からZonyl(登録商標)PHSという商標で市販されているものが挙げられる。Zonyl(登録商標)PHSは、40重量パーセントのCH=C(CH)COCHCH(CFCFF(Zonyl(登録商標)フルオロメタクリレートまたはZFMとも呼ばれる)(式中、mは1〜12、主に2〜8である)と、60重量パーセントのラウリルメタクリレート(CH=C(CH)CO(CH11CH、LMAとも呼ばれる)との重合によって製造されるランダムコポリマーである。
【0073】
いくつかの実施形態では、相溶化剤成分は、潤滑剤の金属への接着を低減するような方法で、熱交換器内に見出される金属の銅、アルミニウム、鋼、または他の金属およびこれらの金属合金の表面エネルギーを低下させる添加剤を約0.01〜30重量パーセント(相溶化剤の全量を基準として)含有する。金属表面エネルギー低下添加剤の例としては、DuPontから商標Zonyl(登録商標)FSA、Zonyl(登録商標)FSP、およびZonyl(登録商標)FSJで市販されているものが挙げられる。
【0074】
本発明の組成物と共に使用され得る添加剤は、金属表面不活性化剤であり得る。金属表面不活性化剤は、アレオキサリル(areoxalyl)ビス(ベンジリデン)ヒドラジド(CAS登録番号6629−10−3)、N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイルヒドラジン(CAS登録番号32687−78−8)、2,2’−オキサミドビス−エチル−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(CAS登録番号70331−94−1)、N,N’−(ジサリシクリデン(disalicyclidene))−1,2−ジアミノプロパン(CAS登録番号94−91−7)、ならびにエチレンジアミン四酢酸(CAS登録番号60−00−4)およびその塩、そしてこれらの混合物(この段落で開示される金属表面不活性化剤のいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択される。
【0075】
あるいは、本発明の組成物と共に使用される添加剤は、ヒンダードフェノール、チオホスフェート、ブチル化トリフェニルホスホロチオネート、オルガノホスフェート、またはホスファイト、アリールアルキルエーテル、テルペン、テルペノイド、エポキシド、フッ素化エポキシド、オキセタン、アスコルビン酸、チオール、ラクトン、チオエーテル、アミン、ニトロメタン、アルキルシラン、ベンゾフェノン誘導体、アリールスルフィド、ジビニルテレフタル酸、ジフェニルテレフタル酸、イオン性液体、およびこれらの混合物、(この段落で開示される安定剤のいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択される安定剤であり得る。
【0076】
安定剤は、トコフェロール、ヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、モノチオホスフェートおよびジチオホスフェート(Ciba Specialty Chemicals,Basel,Switzerland(以下、「Ciba」)から商標Irgalube(登録商標)63で市販)、ジアルキルチオリン酸エステル(Cibaからそれぞれ商標Irgalube(登録商標)353およびIrgalube(登録商標)350で市販)、ブチル化トリフェニルホスホロチオネート、(Cibaから商標Irgalube(登録商標)232で市販)、アミンホスフェート(Cibaから商標Irgalube(登録商標)349(Ciba)で市販)、ヒンダードホスファイト(CibaからIrgafos(登録商標)168で市販)およびトリス−(ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(Cibaから商標Irgafos(登録商標)OPHで市販)、(Di−n−オクチルホスファイト)およびイソデシルジフェニルホスファイト(Cibaから商標Irgafos(登録商標)DDPPで市販)、トリアルキルホスフェート(トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、およびトリ(2−エチルヘキシル)ホスフェートなど)、トリアリールホスフェート(トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、およびトリキシレニルホスフェートを含む)、および混合アルキル−アリールホスフェート(イソプロピルフェニルホスフェート(IPPP)、およびビス(t−ブチルフェニル)フェニルホスフェート(TBPP)を含む)、ブチル化トリフェニルホスフェート(Syn−O−Ad(登録商標)8784をはじめとする商標Syn−O−Ad(登録商標)で市販されているものなど)、tert−ブチル化トリフェニルホスフェート(商標Durad(登録商標)620で市販されているものなど)、イソプロピル化トリフェニルホスフェート(商標Durad(登録商標)220およびDurad(登録商標)110で市販されているものなど)、アニソール、1,4−ジメトキシベンゼン、1,4−ジエトキシベンゼン、1,3,5−トリメトキシベンゼン、ミルセン、アロオシメン、リモネン(特に、d−リモネン)、レチナール、ピネン、メントール、ゲラニオール、ファルネソール、フィトール、ビタミンA、テルピネン、デルタ−3−カレン、テルピノレン、フェランドレン、フェンケン、ジペンテン、カラテノイド(caratenoid)(リコペン、ベータカロテンなど)、およびキサントフィル(ゼアキサンチンなど)、レチノイド(ヘパキサンチンおよびイソトレチノインなど)、ボルナン、1,2−プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、n−ブチルグリシジルエーテル、トリフルオロメチルオキシラン、1,1−ビス(トリフルオロメチル)オキシラン、3−エチル−3−ヒドロキシメチル−オキセタン(OXT−101(Toagosei Co.,Ltd)など)、3−エチル−3−((フェノキシ)メチル)−オキセタン(OXT−211(Toagosei Co.,Ltd)など)、3−エチル−3−((2−エチル−ヘキシルオキシ)メチル)−オキセタン(OXT−212(Toagosei Co.,Ltd)など)、アスコルビン酸、メタンチオール(メチルメルカプタン)、エタンチオール(エチルメルカプタン)、補酵素A、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、グレープフルーツメルカプタン((R)−2−(4−メチルシクロヘキサ−3−エニル)プロパン−2−チオール))、システイン((R)−2−アミノ−3−スルファニル−プロパン酸)、リポアミド(1,2−ジチオラン−3−ペンタンアミド)、5,7−ビス(1,1−ジメチルエチル)−3−[2,3(または3,4)−ジメチルフェニル]−2(3H)−ベンゾフラノン(Cibaから商標Irganox(登録商標)HP−136で市販)、ベンジルフェニルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジイソプロピルアミン、ジオクタデシル3,3’−チオジプロピオネート(Cibaから商標Irganox(登録商標)PS802(Ciba)で市販)、ジドデシル3,3’−チオプロピオネート(Cibaから商標Irganox(登録商標)PS800で市販)、ジ−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(Cibaから商標Tinuvin(登録商標)770で市販)、ポリ−(N−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシ−ピペリジルスクシネート(Cibaから商標Tinuvin(登録商標)622LD(Ciba)で市販)、メチルビスタローアミン、ビスタローアミン、フェノール−アルファ−ナフチルアミン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン(DMAMS)、トリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、2,5−ジフルオロベンゾフェノン、2’,5’−ジヒドロキシアセトフェノン、2−アミノベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、ベンジルフェニルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジベンジルスルフィド、イオン性液体、ならびにこれらの混合物および組み合わせからなる群から選択され得る。
【0077】
あるいは、本発明の組成物と共に使用される添加剤は、イオン性液体安定剤であり得る。イオン性液体安定剤は、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウムおよびトリアゾリウム、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるカチオンと、[BF]−、[PF]−、[SbF]−、[CFSO]−、[HCFCFSO]−、[CFHFCCFSO]−、[HCClFCFSO]−、[(CFSON]−、[(CFCFSON]−、[(CFSOC]−、[CFCO]−、およびF−、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるアニオンとを含有する塩である、室温(約25℃)で液体の有機塩からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、イオン性液体安定剤は、emim BF(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート)、bmim BF(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラボレート)、emim PF(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)、およびbmim PF(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)(これらは全てFluka(Sigma−Aldrich)から入手可能である)からなる群から選択される。
【0078】
いくつかの実施形態では、安定剤はヒンダードフェノールであってもよく、これは、1つまたは複数の置換または環状、直鎖、または分枝状の脂肪族置換基を含むフェノールを含む任意の置換フェノール化合物であり、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジ
メチル−6−tertブチルフェノール、トコフェロールなどを含むアルキル化モノフェノールと、ヒドロキノンおよびアルキル化ヒドロキノン(t−ブチルヒドロキノンを含む)、ヒドロキノンのその他の誘導体などと、4,4’−チオ−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tertブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4メチル−6−tert−ブチルフェノール)などを含むヒドロキシル化チオジフェニルエーテルと、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−または4,4−ビフェノールジオールの誘導体、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tertブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tertブチルフェノール)、4,4−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール、2,2−または4,4−ビフェニルジオール(2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)を含む)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、または2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、へテロ原子を含むビスフェノール(2,6−ジ−tert−アルファ−ジメチルアミノ−p−クレゾール、4,4−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)を含む)などを含むアルキリデン−ビスフェノールと、アシルアミノフェノールと、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)と、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィドを含むスルフィドと、これらの混合物(この段落で開示されるフェノールのいずれかの混合物を意味する)などである。
【0079】
あるいは、本発明の組成物と共に使用される添加剤は、トレーサーであり得る。トレーサーは、同じ種類の化合物または異なる種類の化合物からの2つ以上のトレーサー化合物であってもよい。いくつかの実施形態では、トレーサーは、全組成物の重量を基準として約50重量百万分率(ppm)〜約1000ppmの全濃度で組成物中に存在する。その他の実施形態では、トレーサーは、約50ppm〜約500ppmの全濃度で存在する。あるいは、トレーサーは約100ppm〜約300ppmの全濃度で存在する。
【0080】
トレーサーは、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、重水素化ハイドロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒドおよびケトン、亜酸化窒素およびこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。あるいは、トレーサーは、フルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプタン、ヨードトリフルオロメタン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(NO)およびこれらの混合物からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、トレーサーは、2つ以上のハイドロフルオロカーボン、または1つもしくは複数のペルフルオロカーボンと組み合わせた1つのハイドロフルオロカーボンを含有するブレンドである。
【0081】
トレーサーは、組成物の希釈、汚染またはその他の変更をどれも検出可能にするような所定の量で本発明の組成物に添加され得る。
【0082】
本発明の組成物と共に使用され得る添加剤は、あるいは、ペルフルオロポリエーテルであってもよい。ペルフルオロポリエーテルの共通の特徴は、ペルフルオロアルキルエーテル部分の存在である。ペルフルオロポリエーテルは、ペルフルオロポリアルキルエーテルと同義である。頻繁に使用されるその他の同義語としては、「PFPE」、「PFAE」、「PFPE油」、「PFPE流体」、および「PFPAE」が挙げられる。いくつかの実施形態では、ペルフルオロポリエーテルは、CF−(CF−O−[CF(CF)−CF−O]j’−R’fの式を有し、DuPontからKrytox(登録商標)という商標で市販されている。直前の式において、j’は2〜100(両端を含む)であり、R’fは、CFCF、C3〜C6ペルフルオロアルキル基、またはこれらの組み合わせである。
【0083】
Ausimont(Milan,Italy)、およびMontedison S.p.A.(Milan,Italy)から、それぞれ商標Fomblin(登録商標)およびGalden(登録商標)で市販されており、ペルフルオロオレフィンの光酸化によって製造されるその他のPFPEも使用可能である。
【0084】
商標Fomblin(登録商標)−Yで市販されているPFPEは、CFO(CFCF(CF)−O−)m’(CF−O−)n’−R1fの式を有することができる。また、CFO[CFCF(CF)O]m’(CFCFO)o’(CFO)n’−R1fも適切である。式中、R1fはCF、C、C、またはこれらの2つ以上の組み合わせであり、(m’+n’)は8〜45(両端を含む)であり、m/nは20〜1000(両端を含む)であり、o’は1であり、(m’+n’+o’)は8〜45(両端を含む)であり、m’/n’は20〜1000(両端を含む)である。
【0085】
商標Fomblin(登録商標)−Zで市販されているPFPEは、CFO(CFCF−O−)p’(CF−O)q’CFの式を有することができ、式中、(p’+q’)は40〜180であり、p’/q’は0.5〜2である(両端を含む)。
【0086】
ダイキン工業株式会社(日本)から商標DemnumTMで市販されている別の群のPFPEも使用することができる。これは、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンの連続的なオリゴマー化およびフッ素化によって製造することができ、F−[(CF−O]t’−R2fの式が得られる。式中、R2fはCF、C、またはこれらの組み合わせであり、t’は2〜200(両端を含む)である。
【0087】
いくつかの実施形態では、PFPEは官能化されていない。非官能化ペルフルオロポリエーテルでは、末端基は、分枝状または直鎖ペルフルオロアルキルラジカル末端基であり得る。このようなペルフルオロポリエーテルの例はCr’(2r’+1)−A−Cr’(2r’+1)の式を有することができ、式中、各r’は独立して3〜6であり、AはO−(CF(CF)CF−O)w’、O−(CF−O)x’(CFCF−O)y’、O−(C−O)w’、O−(C−O)x’(C−O)y’、O−(CF(CF)CF−O)x’(CF−O)y’、O−(CFCFCF−O)w’、O−(CF(CF)CF−O)x’(CFCF−O)y’−(CF−O)z’、またはこれらの2つ以上の組み合わせでよく、好ましくは、AはO−(CF(CF)CF−O)w’、O−(C−O)w’、O−(C−O)x’(C−O)y’、O−(CFCFCF−O)w’、またはこれらの2つ以上の組み合わせであり、w’は4〜100であり、x’およびy’はそれぞれ独立して1〜100である。特定の例としては、F(CF(CF)−CF−O)−CFCF、F(CF(CF)−CF−O)−CF(CF、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。このようなPFPEでは、ハロゲン原子の最大30%までが、例えば塩素原子などのフッ素以外のハロゲンであり得る。
【0088】
その他の実施形態では、ペルフルオロポリエーテルの2つの末端基は、独立して、同じまたは異なる基によって官能化されてもよい。官能化PFPEは、ペルフルオロポリエーテルの2つの末端基の少なくとも1つにおいて、そのハロゲン原子の少なくとも1つがエステル、ヒドロキシル、アミン、アミド、シアノ、カルボン酸、スルホン酸またはこれらの組み合わせから選択される基によって置換されたPFPEである。
【0089】
いくつかの実施形態では、代表的なエステル末端基には、−COOCH、−COOCHCH、−CFCOOCH、−CFCOOCHCH、−CFCFCOOCH、−CFCFCOOCHCH、−CFCHCOOCH、−CFCFCHCOOCH、−CFCHCHCOOCH、−CFCFCHCHCOOCHが含まれる。
【0090】
いくつかの実施形態では、代表的なヒドロキシル末端基には、−CFOH、−CFCFOH、−CFCHOH、−CFCFCHOH、−CFCHCHOH、−CFCFCHCHOHが含まれる。
【0091】
いくつかの実施形態では、代表的なアミン末端基には、−CFNR、−CFCFNR、−CFCHNR、−CFCFCHNR、−CFCHCHNR、−CFCFCHCHNRが含まれ、ここで、RおよびRは独立してH、CH、またはCHCHである。
【0092】
いくつかの実施形態では、代表的なアミド末端基には、−CFC(O)NR、−CFCFC(O)NR、−CFCHC(O)NR、−CFCFCHC(O)NR、−CFCHCHC(O)NR、−CFCFCHCHC(O)NRが含まれ、ここで、RおよびRは独立してH、CH、またはCHCHである。
【0093】
いくつかの実施形態では、代表的なシアノ末端基には、−CFCN、−CFCFCN、−CFCHCN、−CFCFCHCN、−CFCHCHCN、−CFCFCHCHCNが含まれる。
【0094】
いくつかの実施形態では、代表的なカルボン酸末端基には、−CFCOOH、−CFCFCOOH、−CFCHCOOH、−CFCFCHCOOH、−CFCHCHCOOH、−CFCFCHCHCOOHが含まれる。
【0095】
いくつかの実施形態では、スルホン酸末端基は、−S(O)(O)OR、−S(O)(O)R、−CFOS(O)(O)OR、−CFCFOS(O)(O)OR、−CFCHOS(O)(O)OR、−CFCFCHOS(O)(O)OR、−CFCHCHOS(O)(O)OR、−CFCFCHCHOS(O)(O)OR、−CFS(O)(O)OR、−CFCFS(O)(O)OR、−CFCHS(O)(O)OR、−CFCFCHS(O)(O)OR、−CFCHCHS(O)(O)OR、−CFCFCHCHS(O)(O)OR、−CFOS(O)(O)R、−CFCFOS(O)(O)R、−CFCHOS(O)(O)R、−CFCFCHOS(O)(O)R、−CFCHCHOS(O)(O)R、−CFCFCHCHOS(O)(O)Rからなる群から選択され、ここで、RはH、CH、CHCH、CHCF、CF、またはCFCFであり、RはCH、CHCH、CHCF、CF、またはCFCFである。
【0096】
添加剤は、ブチル化トリフェニルホスフェート(BTPP)、または他のアルキル化トリアリールリン酸エステル、例えば、Syn−0−Ad(登録商標)8478という商標でAkzo Chemicalsから販売されているもの、トリクレジルホスフェートおよび関連化合物などのEP(極圧)潤滑性添加剤のトリアリールホスフェート類のメンバーであり得る。さらに、市販のLubrizol 1375およびこの類の化学物質の他のメンバーを含む金属ジアルキルジチオホスフェート(例えば、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(または、ZDDP)が、開示される組成物の組成において使用される。その他の摩耗防止添加剤には、天然物油および非対称性ポリヒドロキシル潤滑添加剤、例えば市販のSynergol TMS(International Lubricants)などが含まれる。
【0097】
いくつかの実施形態では、酸化防止剤、フリーラジカル捕捉剤、および水捕捉剤、ならびにこれらの混合物などの安定剤が含まれる。このカテゴリーのこのような添加剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エポキシド、およびこれらの混合物を含むことができるが、これらに限定されない。腐食防止剤には、ドデシルコハク酸(DDSA)、アミンホスフェート(AP)、オレオイルサルコシン、イミダゾン誘導体および置換スルホネート(sulfphonates)が含まれる。
【0098】
一実施形態では、本明細書に開示される組成物は、所望の量の個々の成分を混ぜ合わせるための任意の便利な方法によって調製することができる。好ましい方法は、所望の成分量を秤量し、その後、適切な容器内で成分を混ぜ合わせることである。所望される場合には、攪拌が使用されてもよい。
【0099】
別の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、(i)少なくとも1つの冷媒容器から冷媒組成物の1つまたは複数の成分のある量を回収することと、(ii)前記1つまたは複数の回収された成分の再使用を可能にするために不純物を十分に除去することと、(iii)場合により、前記回収された量の成分の全てまたは一部を、少なくとも1つの付加的な冷媒組成物または成分と混ぜ合わせることとを含む方法によって調製することができる。
【0100】
冷媒容器は、冷凍装置、空調装置またはヒートポンプ装置内で使用されていた冷媒ブレンド組成物が貯蔵されるどんな容器であってもよい。前記冷媒容器は、冷媒ブレンドが使用された冷凍装置、空調装置またはヒートポンプ装置であってもよい。さらに、冷媒容器は、回収された冷媒ブレンド成分を捕集するための貯蔵容器(加圧ガスシリンダーを含むがこれに限定されない)であってもよい。
【0101】
残留冷媒は、冷媒ブレンドまたは冷媒ブレンド成分を移すために知られている任意の方法によって冷媒容器から外に出すことができる任意の量の冷媒ブレンドまたは冷媒ブレンド成分を意味する。
【0102】
不純物は、冷凍装置、空調装置またはヒートポンプ装置におけるその使用のために冷媒ブレンドまたは冷媒ブレンド成分中に存在するあらゆる成分であり得る。このような不純物は、冷凍潤滑剤(本明細書で前述されたものである)、冷凍装置、空調装置またはヒートポンプ装置から出てきた可能性のある微粒子(金属、金属塩またはエラストマー粒子を含むがこれらに限定されない)、および冷媒ブレンド組成物の性能に悪影響を与える可能性のあるあらゆる他の汚染物質を含むが、これらに限定されない。
【0103】
このような不純物は、冷媒ブレンドまたは冷媒ブレンド成分が使用されるであろう装置の性能に悪影響を与えることなく冷媒ブレンドまたは冷媒ブレンド成分の再使用を可能にするように十分に除去され得る。
【0104】
所与の製品に要求される仕様を満たす組成物を生じるために、付加的な冷媒ブレンドまたは冷媒ブレンド成分を残留冷媒ブレンドまたは冷媒ブレンド成分に提供することが必要なこともある。例えば、冷媒ブレンドが特定の重量百分率範囲の3つの成分を有する場合、組成物を仕様限界の範囲内に回復させるために、成分の1つまたは複数を所与の量で添加することが必要なこともある。
【0105】
本発明の組成物は、ゼロオゾン層破壊係数および低地球温暖化係数(GWP)を有する。さらに、本発明の組成物は、現在使用されている多くのハイドロフルオロカーボン冷媒よりも小さい地球温暖化係数を有するであろう。本発明の一態様は、1000未満、700未満、500未満、400未満、300未満、150未満、100未満、または50未満の地球温暖化係数を有する冷媒を提供することである。
【0106】
使用方法
本明細書に開示される組成物は、伝熱組成物、エアロゾル噴射剤、起泡剤、発泡剤、溶媒、洗浄剤、キャリア流体、置換乾燥剤、バフ研磨剤、重合媒体、ポリオレフィンおよびポリウレタン用の膨張剤、気体誘電体、消火剤、鎮火剤および動力サイクルの作動流体として有用である。さらに、液体または気体の形態で、開示される組成物は、熱源からヒートシンクへ熱を運ぶために使用される作動流体としての機能も果たすことができる。このような伝熱組成物は、流体が相変化(すなわち、液体から気体、そして反対または逆方向)を受けるサイクルにおける冷媒としても有用である。
【0107】
本明細書に開示される組成物は、R410A(50重量パーセントのR125および50重量パーセントのR32のブレンドに対するASHRAE名称)またはR404A(44重量パーセントのR125、52重量パーセントのR143a(1,1,1−トリフルオロエタン)、および4.0重量パーセントのR134aのブレンドに対するASHRAE名称)を含むがこれらに限定されない、現在使用されている冷媒に対する低GWP(地球温暖化係数)代替品として有用であり得る。
【0108】
多くの場合、代替冷媒は、異なる冷媒のために設計された元の冷凍装置において使用可能であれば最も有用である。加えて、本明細書に開示される組成物は、R410AまたはR404Aの代替品として、R410AまたはR404Aのために設計されたいくらかのシステム修正を有する装置において有用であり得る。さらに、HFO−1234yfおよびHFC−32を含む本明細書に開示される組成物は、HFO−1234yfおよびHFC−32を含むこれらの新しい組成物のために特に修正されるか、あるいは完全にこれらの新しい組成物のために製造された装置において、R404AまたはR410Aを置換するために有用であり得る。
【0109】
多くの用途において、開示される組成物のいくつかの実施形態は冷媒として有用であり、少なくとも代替品が探索されている冷媒に匹敵する冷却性能(冷却容量およびエネルギー効率を意味する)を提供する。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、多数の伝熱組成物のために設計されたあらゆる容積式圧縮器システムに有用である。さらに、開示される組成物の多くは、前述の冷媒と同様の性能を提供するために、容積式圧縮器を用いる新しい装置において有用である。
【0111】
一実施形態では、本明細書に開示される組成物を凝縮させ、その後、冷却すべき本体の近くで前記組成物を蒸発させることを含む、冷却をもたらすための方法が本明細書において開示される。
【0112】
別の実施形態では、加熱すべき本体の近くで本明細書に開示される組成物を凝縮させ、その後、前記組成物を蒸発させることを含む、加熱をもたらすための方法が本明細書において開示される。
【0113】
いくつかの実施形態では、上記で開示される組成物の使用には、冷却をもたらすための方法において組成物を伝熱組成物として使用することが含まれ、ここで、組成物は初めに加圧下で冷却および貯蔵され、より暖かい環境にさらされると、組成物は周囲の熱のいくらかを吸収して膨張し、従ってそのより暖かい環境が冷却される。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、特に、冷却装置、高温ヒートポンプ、住宅用、商業用または工業用の空調システム(住宅用ヒートポンプを含む)を含むがこれらに限定されず、ウィンドウ型、ダクトレス型、ダクト型、パッケージドターミナル型冷却装置、およびルーフトップシステムなどの屋外用であるが建物に接続されたものを含む空調用途において有用であり得る。
【0115】
別の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、自動車用ヒートポンプにおいて有用である。特に注目すべきは、約21.5重量パーセントのHFC−32および約78.5重量パーセントのHFC−1234yfを有する組成物であり、HFC−134aに対して改善された加熱容量を提供し、150未満のGWPを有することが分かった。
【0116】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、特に、高温、中温または低温の冷凍を含む冷凍用途において有用であり得る。高温冷凍システムは、特にスーパーマーケットの農産物セクションのためのものを含む。中温冷凍システムは、冷蔵を必要とする飲料、乳製品および他の品目のためのスーパーマーケットおよびコンビニエンスストアの冷蔵ケースを含む。低温冷凍システムは、スーパーマーケットおよびコンビニエンスストアの冷凍キャビネットおよびディスプレイ、製氷機、ならびに冷凍食品輸送を含む。商業用、工業用または住宅用の冷蔵庫および冷凍庫、製氷機、内蔵型クーラーおよび冷凍庫、スーパーマーケットのラックおよび分配システム、満液式蒸発器冷却装置、直接膨張冷却装置、ウォークインおよびリーチインクーラーおよび冷凍庫、ならびに組み合わせシステムなどにおけるその他の特定の使用。
【0117】
さらに、いくつかの実施形態では、開示される組成物は、水、グリコールまたは、二酸化炭素を含み得る二次伝熱流体の使用によって遠隔地に冷却を提供する二次ループシステム内の一次冷媒として機能することができる。
【0118】
別の実施形態では、置換すべき冷媒および潤滑剤を含有する伝熱システムを再充填するための方法が提供され、前記方法は、潤滑剤の大部分を前記システム内に保持しながら、置換すべき冷媒を伝熱システムから除去し、本明細書に開示される組成物の1つを伝熱システムに導入することを含む。
【0119】
別の実施形態では、本明細書に開示される組成物を含む熱交換システムが提供され、前記システムは、空調装置、冷凍庫、冷蔵庫、ウォーターチラー、満液式蒸発器冷却装置、直接膨張冷却装置、ウォークインクーラー、ヒートポンプ、移動冷蔵庫、移動空調ユニット、およびこれらの組み合わせを有するシステムからなる群から選択される。
【0120】
蒸気圧縮冷凍、空調、またはヒートポンプシステムには、蒸発器、圧縮器、凝縮器、および膨張装置が含まれる。蒸気圧縮サイクルは、1つの工程で冷却効果を生じ、そして異なる行程で加熱効果を生じる多段階工程において、冷媒を再使用する。サイクルは、以下のように簡単に説明することができる。液体冷媒は膨張装置を通って蒸発器に入り、そして液体冷媒は蒸発器内で環境から熱を回収することによって低温で沸騰し、ガスを形成して冷却をもたらす。低圧ガスは圧縮器に入り、圧縮器においてガスが圧縮され、その圧力および温度が上昇される。より高圧(圧縮)ガス状の冷媒は次に凝縮器に入り、凝縮器において冷媒は凝縮され、その熱を環境に放出する。冷媒は膨張装置に戻り、液体は、膨張装置を通って、凝縮器内のより高圧レベルから蒸発器内の低圧レベルへ膨張し、このようにして、サイクルが繰り返される。
【0121】
一実施形態では、本明細書に開示される組成物を含有する伝熱システムが提供されている。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物を含有する冷凍、空調、またはヒートポンプ装置が開示される。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物を含有する固定冷凍、空調、またはヒートポンプ装置が開示される。特定の実施形態では、本発明の組成物を含有する中温冷凍装置が開示される。別の特定の実施形態では、本発明の組成物を含有する低温冷凍装置が開示される。
【0122】
さらに別の実施形態では、本明細書に開示される組成物を含有する移動冷凍または空調装置が開示される。
【0123】
また本明細書に開示される組成物は、有機ランキンサイクルなどの熱回収プロセスにおける動力サイクルの作動流体としても有用であり得る。この実施形態に関連して、熱を回収するための方法が開示され、本方法は、(a)加熱をもたらすプロセスと連通する第1の熱交換器に、作動流体を通すステップと、(b)前記作動流体を前記第1の熱交換器から除去するステップと、(c)機械的エネルギーをもたらすデバイスに、前記作動流体を通すステップと、(d)第2の熱交換器に前記作動流体を通すステップとを含む。
【0124】
上記の方法のための動力サイクルの作動流体は、本明細書に開示される組成物のいずれでもよい。第1の熱交換器において、熱は作動流体によって吸収され、作動流体が蒸発される。熱源は、排熱を含む利用可能な熱の任意の源を含むことができる。このような熱源には、燃料電池、内燃エンジン(排出ガス)、内部圧縮エンジン、外燃エンジン、石油精製所における作業、石油化学プラント、オイルおよびガスパイプライン、化学工業、商業ビル、ホテル、ショッピングモール、スーパーマーケット、ベーカリー、食品加工業、レストラン、塗料硬化炉、家具製造、プラスチック成形機、セメント窯、木材窯(乾燥)、焼成作業、鋼鉄工業、ガラス工業、鋳造所、溶錬、空調、冷凍、およびセントラルヒーティングが含まれる。
【0125】
機械的エネルギーを生じるデバイスはエキスパンダーまたはタービンでよく、それにより軸動力が生じ、所望の速度および要求されるトルクに応じて、ベルト、滑車、ギア、トランスミッションまたは同様のデバイス従来の配置を用いることによって、任意の種類の機械仕事を行うことができる。軸は誘導発電機などの発電デバイスに接続することができる。発生される電気は、局所的に使用されるか、あるいはグリッドに供給され得る。
【0126】
第2の熱交換器において、作動流体は凝縮され、次に第1の熱交換器に戻されることによって、サイクルが完了する。圧縮器またはポンプは、第2の熱交換器と第1の熱交換器との間でサイクルに含まれ、作動流体の圧力を高めることができる。
【実施例】
【0127】
本明細書に開示される概念は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定することのない以下の実施例において、さらに説明されるであろう。
【0128】
実施例1
冷却性能
HFO−1234yfおよびHFC−32を含有する組成物の冷却性能が決定され、R410A(50重量%のHFC−32および50重量%のHFC−125を含有する冷媒ブレンドに対するASHRAE名称)と比較して表1に示される。圧力、放出温度、COP(エネルギー効率)および冷却容量(cap)は、以下の特定の条件(空調に典型的)に対する物理特性の測定から計算される。
蒸発器温度 45°F(7.2℃)
凝縮器温度 110°F(43.3℃)
過冷却量 5°F(2.8℃)
戻りガス温度 65°F(18.3℃)
圧縮器効率は70%である。
過熱は冷却容量に含まれることに注意されたい。
【0129】
【表1】

【0130】
これらのデータは、本発明の特定の組成物がR410Aの良好な代替品としての役割を果たし、さらに、純粋なHFC−32に対する改善を提供し得ることを示す。注目すべきは、20重量パーセント〜55重量パーセントのHFO−1234yfおよび80重量パーセント〜45重量パーセントのHFC−32の範囲の組成物であり、R410aの±20%の冷却容量、R410Aに比べて改善されたエネルギー効率(COP)、および低温度勾配を提供する。純粋なHFC−32と比較すると、これらの組成物の特定のものは、例えば冷却容量におけるR410aに対するより良好な一致、およびより低い放出温度(従って、圧縮器の寿命が増大される)を提供する。特に、25重量パーセント〜30重量パーセントのHFO−1234yfの範囲の組成物は、R410Aに対して99〜101%の間の容量、R410Aに対して102%のCOPおよびR−32よりも低い圧縮器放出温度を提供する。
【0131】
実施例2
加熱性能
表2は、典型的なヒートポンプ条件において、HFC−134a、HFO−1234yf、およびR410Aと比較して、いくつかの例示的な組成物の性能を示す。表2において、Evap Presは蒸発器圧力であり、Cond Presは凝縮器圧力であり、Comp Disch Tは圧縮器放出温度であり、COPは性能係数(エネルギー効率に類似)であり、CAPは容量である。計算したデータは、物理特性の測定および以下の特定の条件に基づく。
蒸発器温度 32°F(0℃)
凝縮器温度 113°F(45℃)
過冷却量 21.6°F(12K)
戻りガス過熱 5.4°F(3K)
圧縮器効率は70%である。
【0132】
【表2】

【0133】
これらのデータは、これらの組成物がヒートポンプ用途においてR410Aの代替品としての役割を果たし得ることを示す。特に、約25重量パーセント〜約60重量パーセントのHFO−1234yfおよび約75重量パーセント〜約40重量パーセントのHFC−32の範囲の組成物は、R410Aの±20%以内の加熱容量、わずかに改善されたエネルギー効率(COP)、および約5℃未満の平均温度勾を有すると実証されている。さらに、78.5重量パーセントのHFO−1234yfおよび21.5重量パーセントのHFC−32を有する組成物は、HFC−134aに対して著しく改善された加熱容量を提供するので、例えば自動車用ヒートポンプにおいて、HFC−134aの低GWP代替品としての役割を果たし得る。
【0134】
実施例3
引火性
引火性化合物は、ASTM(米国材料試験協会)E681−2004において、電子点火源を用いて試験することによって同定することができる。引火下限(LFL)を決定するために、種々の空気中濃度において、101kPa(14.7psia)、50パーセント相対湿度、ならびに23℃および100℃で、このような引火性試験を本開示の組成物において実施した。結果は表3に与えられる。
【0135】
【表3】

【0136】
これらのデータは、HFO−1234yfおよびHFC−32を45重量パーセント未満のHFO−1234yfで含む組成物が、10体積パーセントよりも大きいLFLのために日本では非引火性に分類され得ることを実証する。
【0137】
実施例4
地球温暖化係数
開示される組成物のいくつかについての地球温暖化係数(GWP)の値は、HCFC−22、HFC−134a、R404A、およびR410AのGWP値と比較して表4に記載される。参考のために純粋な成分のGWPが記載される。2つ以上の成分を含有する組成物のGWP値は、個々の成分のGWP値の加重平均として計算される。HFCの値は、「Climate Change 2007−IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)Fourth Assessment Report on Climate Change」から、「Working Group 1 Report:The Physical Science Basis」という表題のセクション、第2章、212−213頁、表2.14から引用される。HFO−1234yfの値は、Papadimitriou et al.,Physical Chemistry Chemical Physics,2007,第9巻,9、1−13頁に発表された。特に、100年の対象期間のGWP値が使用される。
【0138】
【表4】

【0139】
本明細書に開示される多数の組成物は、HCFC−22、R404A、および/またはR410Aなどに対するより低GWPの代替案を提供する。さらに、HFO−1234yfをHFC−32に添加すると、HFC−32だけであるよりも著しく低GWPの冷媒が提供され得る。
【0140】
実施例5
冷凍性能
表5は、HFO−1234yf、HFC−32、およびR404Aと比較して、いくつかの例示的な組成物の性能を示す。表5において、Evap Presは蒸発器圧力であり、Cond Presは凝縮器圧力であり、Comp Disch Tは圧縮器放出温度であり、COPは性能係数(エネルギー効率に類似)であり、CAPは冷却容量である。データは以下の条件に基づく。
蒸発器温度 14°F(−10℃)
凝縮器温度 104°F(40℃)
過冷却量 2.8°F(6K)
戻りガス温度 65°F(18℃)
圧縮器効率は70%である。
蒸発器の過熱エンタルピーは冷却容量およびエネルギー効率の決定に含まれることに注意されたい。
【0141】
【表5】

【0142】
表5のデータは、約45重量パーセント〜約80重量パーセントのHFO−1234yfの組成物が、R404Aの±20%の容量を有し、従って、低温冷凍用途においてR404Aの代替品として機能し得ることを実証する。また、表5の組成物について、エネルギー効率(上記でCOPで示される)は、R404Aのエネルギー効率のわずか数パーセント以内の範囲内に含まれるか、あるいはさらに改善される。またこれらは、HFC−32よりも著しく低い圧縮器放出温度も有し、圧縮器の寿命が増大され得る。
【0143】
実施例6
冷凍性能
表6は、HFO−1234yf、HFC−32、およびR404Aと比較して、いくつかの例示的な組成物の性能を示す。表6において、Evap Presは蒸発器圧力であり、Cond Presは凝縮器圧力であり、Comp Disch Tは圧縮器放出温度であり、COPは性能係数(エネルギー効率に類似)であり、CAPは冷却容量である。データは以下の条件に基づく。
蒸発器温度 14°F(−35℃)
凝縮器温度 104°F(40℃)
過冷却量 2.8°F(6K)
戻りガス温度 65°F(18℃)
圧縮器効率は70%である。
蒸発器の過熱エンタルピーは冷却容量およびエネルギー効率の決定に含まれることに注意されたい。
【0144】
【表6】

【0145】
データは、約45重量パーセント〜約80重量パーセントのHFO−1234yfの組成物が、R404Aの±20%の容量を有し、従って、低温冷凍用途においてR404Aの代替品として機能し得ることを実証する。また、表6の組成物について、エネルギー効率(上記でCOPで示される)は、R404Aのエネルギー効率のわずか数パーセント以内の範囲内に含まれるか、あるいはさらに改善される。またこれらは、HFC−32よりも著しく低い圧縮器放出温度も有し、圧縮器の寿命が増大され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1質量パーセント〜約80質量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約99質量パーセント〜約20質量パーセントのジフルオロメタンを含む組成物。
【請求項2】
約30質量パーセント〜約80質量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約70質量パーセント〜約20質量パーセントのジフルオロメタンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約45質量パーセント〜約80質量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約55質量パーセント〜約20質量パーセントのジフルオロメタンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
約55質量パーセント〜約80質量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約45質量パーセント〜約20質量パーセントのジフルオロメタンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
約45質量パーセント〜約55質量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび約55質量パーセント〜約45質量パーセントのジフルオロメタンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
鉱油、アルキルベンゼン、合成パラフィン、合成ナフテン、ポリαオレフィン、ポリアルキレングリコール、二塩基酸エステル、ポリエステル、ネオペンチルエステル、ポリビニルエーテル、シリコーン、ケイ酸エステル、フッ素化化合物、リン酸エステルおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの潤滑剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
潤滑剤、染料(UV染料を含む)、可溶化剤、相溶化剤、安定剤、トレーサー、ペルフルオロポリエーテル、摩耗防止剤、極圧添加剤、腐食抑制剤および酸化防止剤、金属表面エネルギー低下剤、金属表面不活性化剤、フリーラジカル捕捉剤、整泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、洗剤、粘度調整剤、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物を凝縮させる工程、およびその後、冷却しようとする物体の近くで該組成物を蒸発させる工程を含む、冷却を発生させる方法。
【請求項9】
加熱しようとする物体の近くで請求項1に記載の組成物を凝縮させる工程、およびその後、該組成物を蒸発させる工程を含む、加熱を発生させる方法。
【請求項10】
R410Aを使用するように設計されたシステムでR410Aを置換するための方法であって、請求項1に記載の組成物を前記システムに備えつけることを含む、上記方法。
【請求項11】
R404Aを使用するように設計されたシステムでR404Aを置換するための方法であって、請求項3に記載の組成物を前記システムに備えつけることを含む、上記方法。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物を含有する冷凍、空調またはヒートポンプ装置。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物を含有する業務用空調装置。
【請求項14】
請求項3に記載の組成物を含有する固定式冷凍システム。
【請求項15】
動力サイクルの作動流体としての、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物を含有する自動車用空調装置またはヒートポンプ。

【公表番号】特表2013−515156(P2013−515156A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546159(P2012−546159)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061611
【国際公開番号】WO2011/084813
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】