説明

テラヘルツ測定装置

【課題】本発明は、被検物の透過測定と反射測定とを効率的に行うことのできるテラヘルツ測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のテラヘルツ測定装置は、テラヘルツ光で被検物(50)を照明する照明光学系(11,21,41,22,25,42)と、前記被検物から同時に発生した前記テラヘルツ光の透過光及び反射光をそれぞれ検出する検出光学系(23,24,12,43,26,27,13)とを備えたことを特徴とする。この装置によると、透過測定と反射測定との双方を、光路切り替えを伴わずに実施することができる。したがって、被検物(50)からの透過光と反射光との双方は、何れも無駄なく有効利用される。また、被検物(50)が状態変化する場合であっても、同じ状態での透過測定データと反射測定データとを取得することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツイメージング装置、テラヘルツ分光装置など、被検物(被測定試料)の照明にテラヘルツ光を用いたテラヘルツ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ光は、おおよそ0.01THzから100THzまでの周波数帯の電磁波であり、近年、物質の同定、分析、検査、イメージングなどへの適用が有力視されている。このテラヘルツ光を利用したテラヘルツ測定装置は、既に幾つか開発されており、特許文献1,2にも開示されている。
テラヘルツ測定装置は、専用の発生器から発光したテラヘルツ光で被検物を照明し、被検物から射出したテラヘルツ光を専用の検出器で検出するものである。測定の種類には、被検物からの反射光を検出する反射測定と、被検物からの透過光を検出する透過測定とがあり、それらは測定の目的や被検物の種類などに応じて使い分けられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、透過測定用の光学系と反射測定用の光学系との各々が搭載されたテラヘルツ測定装置が開示されている。また、特許文献2には、透過測定用の光学系と反射測定用の光学系とを搭載し、かつ両者の大部分を共用させたテラヘルツ測定装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−205360号公報
【特許文献2】特開2004−191302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの測定装置では、透過測定と反射測定との間で光路切り替えを要すので、切り替え操作の時間と手間がかかる。また、状態変化する被検物については、同じ状態での透過測定データと反射測定データとを取得することが難しい。
そこで本発明は、これらの無駄や不都合を回避し、被検物の透過測定と反射測定とを効率的に行うことのできるテラヘルツ測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のテラヘルツ測定装置は、テラヘルツ光で被検物を照明する照明光学系と、前記被検物から同時に発生した前記テラヘルツ光の透過光及び反射光をそれぞれ検出する検出光学系とを備えたことを特徴とする。
なお、前記照明光学系は、テラヘルツパルス光で前記被検物を照明し、前記検出光学系は、同一のテラヘルツパルス光による照明で発生した前記透過光及び反射光をそれぞれ検出するものであってもよい。
【0006】
また、前記検出光学系は、前記透過光及び反射光を2つの検出器で個別に検出するものであってもよい。
また、前記検出光学系は、前記透過光及び反射光を同一の検出器で検出するものであり、前記透過光の光路と前記反射光の光路との間には、光路長差が設けられてもよい。
また、前記検出光学系には、前記光路長差を調節するための機構が備えられてもよい。
【0007】
また、前記透過光と前記反射光との少なくとも一方の光路には、光路を開閉するためのシャッタ手段が設けられてもよい。
また、前記照明光学系は、同一のテラヘルツ光を分岐して2種類の角度から前記被検物を照明し、前記検出光学系は、前記2種類の角度のうち小角度の照明で発生した前記透過光と、大角度の照明で発生した前記反射光とをそれぞれ検出するものであってもよい。
【0008】
また、前記小角度の照明は、前記被検物を正面から照明するものであってもよい。
また、前記照明光学系は、1種類の角度から前記被検物を照明するものであってもよい。
また、前記角度の照明は、前記被検物を正面から照明するものであってもよい。
また、本発明のテラヘルツ測定装置は、前記発光及び前記検出のタイミングを制御し、前記透過光の時間波形と前記反射光の時間波形とをそれぞれ検知する制御手段を備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検物の透過測定と反射測定とを効率的に行うことのできるテラヘルツ測定装置が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[第1実施形態]
図1を参照して本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態は、テラヘルツ分光装置の実施形態である。
図1は、本実施形態の測定装置を示す概略構成図である。なお、図1は、各部の光学的関係を示すことを主とした模式図であり、各光路の折り曲げ回数や光路長などは実際のものとは異なる場合がある(他の各図も同様)。
【0011】
図1に示すように、本測定装置には、テラヘルツ光を導光する光学系として、テラヘルツ光発生器11,軸外し放物面鏡(コリメータミラー)21,22,23,24,25,26,27,ビームスプリッタ41,テラヘルツ光検出器12,13,光路折り曲げミラー42,43が備えられ、その光路の所定箇所に、半導体などの被検物50が配置される。また、本測定装置には、制御用レーザを導光する光学系として、レーザ光源31,ビームスプリッタBS,可動鏡(可動レトロリフレクタ)32,レンズL,ミラーM,電流計33などが備えられる。また、各部は、コンピュータ34によって制御される。
【0012】
レーザ光源31は、制御用レーザとして、パルス幅10〜150fs程度のレーザパルス光を発光する。このレーザパルス光は、ビームスプリッタBSにて分岐される。
ビームスプリッタBSで分岐されたレーザパルス光の一方は、ミラーM,レンズLを介してテラヘルツ光発生器11に入射し、テラヘルツ光発生器11を励起する。つまり、このレーザパルス光は、ポンプ光の役割をする。
【0013】
ビームスプリッタBSで分岐されたレーザパルス光の他方は、可動鏡32,ミラーMを介してビームスプリッタBSに入射し、更に分岐される。分岐された一方のレーザパルス光は、ミラーM,レンズLを介してテラヘルツ光検出器12に入射し、分岐された他方のレーザパルス光は、レンズLを介してテラヘルツ光検出器13に入射する。これらのレーザパルス光は、テラヘルツ光検出器12,13のプローブ光の役割をする。
【0014】
テラヘルツ光発生器11は、与えられたポンプ光に応じて、0.01THz〜100THzの周波数帯のテラヘルツパルス光を発光する。このテラヘルツパルス光は、その発光点と等価な位置に焦点を有した軸外し放物面鏡21で反射し、平行光となる。平行光となったテラヘルツパルス光は、シリコン板などからなるビームスプリッタ41に入射し、分岐される。
【0015】
ビームスプリッタ41で分岐されたテラヘルツパルス光の一方は、軸外し放物面鏡22にて反射した後、被検物50の測定点を正面から照明する。そのテラヘルツパルス光のうち測定点を透過したもの(透過パルス光)は、測定点の複素誘電率や電気的特性や不純物濃度等の情報を含む光となり、発散しながら軸外し放物面鏡23に入射し、そこで反射して平行光となる。そのテラヘルツパルス光は、軸外し放物面鏡24にて反射し、その軸外し放物面鏡24の焦点と等価な位置に検出中心を有したテラヘルツ光検出器12に入射する。なお、被検物50の配置面は、軸外し放物面鏡22,23の焦平面に一致している。
【0016】
ビームスプリッタ41で分岐されたテラヘルツパルス光の他方は、軸外し放物面鏡25にて反射した後、光路折り曲げミラー42を介して被検物50の測定点を斜め方向から照明する。そのテラヘルツパルス光のうち、測定点を反射したもの(反射パルス光)は、測定点の複素誘電率や電気的特性や不純物濃度等の情報を含む光となり、発散しながら光路折り曲げミラー43を介して軸外し放物面鏡26に入射する。そのテラヘルツパルス光は、軸外し放物面鏡26で反射され、平行光となった後、軸外し放物面鏡27で反射される。そのテラヘルツパルス光は、軸外し放物面鏡27の焦点と等価な位置に検出中心を有したテラヘルツ光検出器13に入射する。なお、軸外し放物面鏡25,26の集光点は、被検物50の測定点に一致している。
【0017】
テラヘルツ光検出器12,13は、入射したテラヘルツパルス光と、与えられたプローブ光とに応じて検出信号(電流)を生成する。その検出信号は、テラヘルツパルス光が検出器に生起させた電場強度の時間波形(以下、単に「波形」という。)のうち、プローブ光が与えられたタイミングに相当する箇所の値を示す。テラヘルツ光検出器12,13からの検出信号は、それぞれ電流計33を介してコンピュータ34に取り込まれ、処理される。
【0018】
なお、図示省略したが、本測定装置には、上述した電流計33の他に、テラヘルツ光検出器12,13,及びテラヘルツ光発生器11を適切に動作させるための回路部分として、電流計からの信号を電圧値に変換するI/V変換回路、必要な検出信号のみを増幅するロックイン増幅器、テラヘルツ光発生器11に対しバイアス電圧を与えるバイアス電圧印加装置、信号を変調する変調装置なども備えられる。
【0019】
以上の本測定装置では、テラヘルツ光発生器11→軸外し放物面鏡21→ビームスプリッタ41→軸外し放物面鏡22→被検物50→軸外し放物面鏡23→軸外し放物面鏡24→テラヘルツ光検出器12を順に経由するテラヘルツパルス光の光路が、透過測定用の光路である。
また、テラヘルツ光発生器11→軸外し放物面鏡21→ビームスプリッタ41→軸外し放物面鏡25→光路折り曲げミラー42→被検物50→光路折り曲げミラー43→軸外し放物面鏡26→軸外し放物面鏡27→テラヘルツ光検出器13を順に経由するテラヘルツパルス光の光路が、反射測定用の光路である。
【0020】
これら透過測定用の光路と反射測定用の光路とは、1つのテラヘルツ光発生器11を共有している。つまり、1つのテラヘルツ光発生器11で発生した1つのテラヘルツパルス光で被検物50を2種類の角度で照明し、小入射角度の照明光(正面からの照明光)で透過パルス光を生成し、大入射角度の照明光(斜め方向からの照明光)で反射パルス光を生成している。
【0021】
ここで、可動鏡32を或る基準位置に配置した状態では、ポンプ光の光路と透過測定用の光路との光路長の和は、テラヘルツ光検出器12に向かうプローブ光の光路長に一致し、かつ、ポンプ光の光路と反射測定用の光路との光路長の和は、テラヘルツ光検出器13に向かうプローブ光の光路長に一致している。
この状態では、透過パルス光がテラヘルツ光検出器12に到達するタイミングと、プローブ光がテラヘルツ光検出器12に入射するタイミングとが一致し、かつ、反射パルス光がテラヘルツ光検出器13に到達するタイミングと、プローブ光がテラヘルツ光検出器13に入射するタイミングとが一致する。
【0022】
この状態から可動鏡32を移動させると、テラヘルツ光検出器12に対する透過パルス光とプローブ光との入射タイミングにずれ(遅延時間)が生じ、また、テラヘルツ光検出器13に対する反射パルス光とプローブ光との入射タイミングにずれ(遅延時間)が生じる。但し、テラヘルツ光検出器12に関する遅延時間と、テラヘルツ光検出器13に関する遅延時間とは等しい。
【0023】
また、透過測定用の光路におけるテラヘルツ光発生器11から被検物50までの照明光の光路長と、反射測定用の光路におけるテラヘルツ光発生器11から被検物50までの照明光の光路長とは、一致している。これは、2種類の角度から同一のテラヘルツパルス光で同時に被検物50を照明するためである。このように構成すれば、被検物50が状態変化し、その状態変化を検出するような場合に、同じ状態下の被検物50から透過パルス光と反射パルス光との双方を発生させることができる。
【0024】
このような本測定装置では、レーザ光源31が駆動されると、ポンプ光がテラヘルツ光発生器11に与えられ、同一のテラヘルツパルス光が被検物50を同じタイミングで2種類の角度から照明する。2種類の照明に応じて被検物50から同じタイミングで発生した透過パルス光及び反射パルス光は、テラヘルツ光検出器12,13に対し個別に入射する。また、テラヘルツ光検出器12に関する遅延時間と、テラヘルツ光検出器13に関する遅延時間とは等しい。よって、透過パルス光の波形と反射パルス光の波形との同一箇所の値が、それぞれ検出される。
【0025】
さらに、可動鏡32の位置が図1の矢印の方向にずれると、テラヘルツ光検出器12に関する遅延時間と、テラヘルツ光検出器13に関する遅延時間とが同じだけ変化するので、テラヘルツ光検出器12による波形の検出箇所と、テラヘルツ光検出器13による波形の検出箇所とは同じだけずれる。
そこで、可動鏡32を各位置に配置してレーザ光源31を駆動すれば、透過パルス光の波形の全貌と反射パルス光の波形の全貌とが同様に検知されることとなる。コンピュータ34は、その透過パルス光及び反射パルス光の波形に対し個別に処理(フーリエ変換など)を施し、透過パルス光の分光データと、反射パルス光の分光データとをそれぞれ抽出する。
【0026】
以上、本測定装置では、被検物50から同時に射出した透過パルス光と反射パルス光とをそれぞれ検出するので、透過測定(ここでは透過パルス光の分光データの取得)と反射測定(ここでは反射パルス光の分光データの取得)との双方を、光路切り替えを伴わずに実施することができる。
また、被検物50が状態変化する場合であっても、同じ状態での透過測定データ(ここでは透過パルス光の分光データ)と反射測定データ(ここでは反射パルス光の分光データ)とを取得することができる。
【0027】
しかも、本測定装置では、テラヘルツ光検出器12に関する遅延時間と、テラヘルツ光検出器13に関する遅延時間とが常に一致するので、透過パルス光の波形と反射パルス光の波形とを、並列に検知することができる。
したがって、可動鏡32の全移動量は1パルス分のみ(つまり最小限)に抑えられ、測定時間も最小限に抑えられる。
【0028】
なお、本測定装置では、2種類の照明光の光路長を一致させたが、被検物50の状態変化を無視できるときや、被検物50の状態変化が2種類の照明タイミングのずれ量よりも十分に遅い限りにおいては、2種類の照明光の光路長に差があってもよい。
また、本測定装置では、特に、透過測定用の光路の全長(テラヘルツ光発生器11からテラヘルツ光検出器12まで)と、反射測定用の光路の全長(テラヘルツ光発生器11からテラヘルツ光検出器13まで)とを一致させれば、透過パルス光の検出タイミングと反射パルス光の検出タイミングとを一致させることができるので、より効率的である。
【0029】
但し、透過測定用の光路の全長と反射測定用の光路の全長とを一致させても、被検物50の厚みや材質により、透過パルス光の検出タイミングと反射パルス光の検出タイミングとがずれることがあるので、その場合、透過測定用の光路の全長と反射測定用の光路の全長とには、適切な光路長差が設けられるとよい。また、その光路長差を、被検物50の厚みや材質に応じて調節してもよい。
【0030】
[第2実施形態]
図2を参照して本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態も、テラヘルツ分光装置の実施形態である。ここでは、第1実施形態(図1)との相違点を主に説明する。
図2は、本実施形態の測定装置を示す概略構成図である。図2では、テラヘルツ光を導光する光学系のみを示した。図2に示すように、第1実施形態との相違点は、光路折り曲げミラー42,43を省略した点にある。
【0031】
テラヘルツ光発生器11は、ポンプ光に応じてテラヘルツパルス光を発光する。このテラヘルツパルス光は、その発光点と等価な位置に焦点を有した軸外し放物面鏡21で反射し、平行光となる。平行光となったテラヘルツパルス光は、シリコン板などからなるビームスプリッタ41に入射し、分岐される。
ビームスプリッタ41で分岐されたテラヘルツパルス光の一方は、軸外し放物面鏡22にて反射した後、被検物50の測定点を正面から照明する。その測定点を透過したテラヘルツパルス光は、測定点の複素誘電率や電気的特性や不純物濃度等の情報を含む光となり、発散しながら軸外し放物面鏡23に入射し、そこで反射して平行光となる。そのテラヘルツパルス光は、軸外し放物面鏡24にて反射し、その軸外し放物面鏡24の焦点と等価な位置に検出中心を有したテラヘルツ光検出器12に入射する。なお、被検物50の配置面は、軸外し放物面鏡22,23の焦平面に一致している。
【0032】
ビームスプリッタ41で分岐されたテラヘルツパルス光の他方は、軸外し放物面鏡25にて反射した後、被検物50の測定点を斜め方向から照明する。その測定点で反射したテラヘルツパルス光は、測定点の複素誘電率や電気的特性や不純物濃度等の情報を含む光となり、発散しながら軸外し放物面鏡26に入射する。そのテラヘルツパルス光は、軸外し放物面鏡26で反射され、平行光となった後、軸外し放物面鏡27で反射される。そのテラヘルツパルス光は、軸外し放物面鏡27の焦点と等価な位置に検出中心を有したテラヘルツ光検出器13に入射する。なお、軸外し放物面鏡25,26の集光点は、被検物50の測定点に一致している。
【0033】
以上の本測定装置では、テラヘルツ光発生器11→軸外し放物面鏡21→ビームスプリッタ41→軸外し放物面鏡22→被検物50→軸外し放物面鏡23→軸外し放物面鏡24→テラヘルツ光検出器12を順に経由するテラヘルツパルス光の光路が、透過測定用の光路である。また、テラヘルツ光発生器11→軸外し放物面鏡21→ビームスプリッタ41→軸外し放物面鏡25→被検物50→軸外し放物面鏡26→軸外し放物面鏡27→テラヘルツ光検出器13を順に経由するテラヘルツパルス光の光路が、反射測定用の光路である。
【0034】
本測定装置においても、第1実施形態の測定装置と同様、テラヘルツ光検出器12に関する遅延時間とテラヘルツ光検出器13に関する遅延時間とが等しくなるように各光路が設定されている。また、2種類の角度から同一のテラヘルツパルス光で同時に被検物50を照明するように各光路が設定されている。したがって、本測定装置によれば、第1実施形態の測定装置と同じ測定をすることが可能である。
【0035】
しかも、本測定装置では、第1実施形態の測定装置とは異なり、光路折り曲げミラー42,43が省略されたので、部品点数が抑えられる。なお、光路折り曲げミラー42,43を省略するために透過測定用の光路と反射測定用の光路とが一部クロスしているが、両光路を通過するテラヘルツ光はパルス光なので、クロス部分であっても互いに干渉しない。
【0036】
なお、本測定装置においても、被検物50の状態変化を無視できるときや、被検物50の状態変化が照明タイミングのずれ量よりも十分に遅い限りにおいては、2種類の照明光の光路長に差があってもよい。
また、本測定装置においても、透過測定用の光路の全長と、反射測定用の光路の全長とを一致させ、透過パルス光の検出タイミングと反射パルス光の検出タイミングとを一致させてもよい。
【0037】
但し、透過測定用の光路の全長と反射測定用の光路の全長とを一致させても、被検物50の厚みや材質により、透過パルス光の検出タイミングと反射パルス光の検出タイミングとがずれることがあるので、その場合、透過測定用の光路の全長と反射測定用の光路の全長とには、適切な光路長差が設けられるとよい。また、その光路長差を、被検物50の厚みや材質に応じて調節してもよい。
【0038】
[第3実施形態]
図3を参照して本発明の第3実施形態を説明する。本実施形態も、テラヘルツ分光装置の実施形態である。ここでは、第1実施形態(図1)との相違点を主に説明する。
図3は、本実施形態の測定装置を示す概略構成図である。図3では、テラヘルツ光を導光する光学系のみを示した。図3に示すように、第1実施形態との相違点は、照明光路を2系統に分離せずに1系統にした点にある。
【0039】
テラヘルツ光発生器11は、ポンプ光に応じてテラヘルツパルス光を発光する。このテラヘルツパルス光は、その発光点と等価な位置に焦点を有した軸外し放物面鏡21で反射し、平行光となる。そのテラヘルツパルス光は、軸外し放物面鏡22にて反射した後、シリコン板などからなるハーフミラー61を介して被検物50の測定点を正面から照明する。
【0040】
被検物50を照明したテラヘルツパルス光のうち、測定点を透過したもの(透過パルス光)は、測定点の複素誘電率や電気的特性や不純物濃度等の情報を含む光となり、発散しながら軸外し放物面鏡23に入射し、そこで反射して平行光となる。そのテラヘルツパルス光は、軸外し放物面鏡24にて反射し、その軸外し放物面鏡24の焦点と等価な位置に検出中心を有したテラヘルツ光検出器12に入射する。
【0041】
被検物50を照明したテラヘルツパルス光のうち、測定点を反射したもの(反射パルス光)は、測定点の複素誘電率や電気的特性や不純物濃度等の情報を含む光となり、発散しながらハーフミラー61へ戻り、ハーフミラー61にて光路を折り曲げられる。そのテラヘルツパルス光は、軸外し放物面鏡25で反射され、平行光となった後、軸外し放物面鏡26で反射される。そのテラヘルツパルス光は、軸外し放物面鏡26の焦点と等価な位置に検出中心を有したテラヘルツ光検出器13に入射する。なお、被検物50の配置面は、軸外し放物面鏡22,23,25の焦平面に一致している。
【0042】
以上の本測定装置では、テラヘルツ光発生器11→軸外し放物面鏡21→軸外し放物面鏡22→ハーフミラー61→被検物50→軸外し放物面鏡23→軸外し放物面鏡24→テラヘルツ光検出器12を順に経由するテラヘルツパルス光の光路が、透過測定用の光路である。また、テラヘルツ光発生器11→軸外し放物面鏡21→軸外し放物面鏡22→ハーフミラー61→被検物50→ハーフミラー61→軸外し放物面鏡25→軸外し放物面鏡26→テラヘルツ光検出器13を順に経由するテラヘルツパルス光の光路が、反射測定用の光路である。
【0043】
本測定装置においても、第1実施形態の測定装置と同様、テラヘルツ光検出器12に関する遅延時間とテラヘルツ光検出器13に関する遅延時間とが等しくなるように各光路が設定されている。また、本測定装置では、被検物50から同時に射出した透過パルス光と反射パルス光とをそれぞれ検出する。したがって、本測定装置によれば、第1実施形態の測定装置と同じ測定をすることが可能である。
【0044】
しかも、本測定装置では、第1実施形態の測定装置とは異なり、照明光路が1系統のみなので、部品点数が抑えられる。また、透過測定の照明方向と反射測定の照明方向とが同じなので、透過パルス光の波形を処理するときのアルゴリズムと、反射パルス光の波形を処理するときのアルゴリズムとを共通化できるという利点がある。また、その照明方向が正面なので、そのアルゴリズムを簡略化できるという利点もある。
【0045】
なお、本測定装置においても、特に、透過測定用の光路の全長と、反射測定用の光路の全長とを一致させ、透過パルス光の検出タイミングと反射パルス光の検出タイミングとを一致させてもよい。
但し、透過測定用の光路の全長と反射測定用の光路の全長とを一致させても、被検物50の厚みや材質により、透過パルス光の検出タイミングと反射パルス光の検出タイミングとがずれることがあるので、その場合、透過測定用の光路の全長と反射測定用の光路の全長とには、適切な光路長差が設けられるとよい。また、その光路長差を、被検物50の厚みや材質に応じて調節してもよい。
【0046】
[第4実施形態]
図4を参照して本発明の第4実施形態を説明する。本実施形態も、テラヘルツ分光装置の実施形態である。ここでは、第1実施形態(図1)との相違点を主に説明する。
図4(A)は、本実施形態の測定装置を示す概略構成図である。図4(A)における図1と同じ要素には同じ符号を付した。図4(A)に示すように、第1実施形態との相違点は、透過パルス光の検出と反射パルス光の検出とに、1つのテラヘルツ光検出器12を共用した点にある。それに対応して、制御用レーザを導光する光学系も、簡略化される(テラヘルツ光検出器13へ向かうレーザ光の光路は省略される。)。
【0047】
本測定装置の照明光路は、第1実施形態の測定装置のそれと同じであり、2方向から被検物50の測定点を照明するものである。
被検物50の測定点を透過したテラヘルツパルス光(透過パルス光)は、測定点の複素誘電率や電気的特性や不純物濃度等の情報を含む光となり、発散しながら軸外し放物面鏡23に入射し、そこで反射して平行光となる。そのテラヘルツパルス光は、シリコン板などからなる合成ミラー44を介して軸外し放物面鏡24にて反射し、その軸外し放物面鏡24の焦点と等価な位置に検出中心を有したテラヘルツ光検出器12に入射する。なお、被検物50の配置面は、軸外し放物面鏡22,23の焦平面に一致している。
【0048】
被検物50の測定点で反射したテラヘルツパルス光(反射パルス光)は、測定点の複素誘電率や電気的特性や不純物濃度等の情報を含む光となり、発散しながら光路折り曲げミラー43を介して軸外し放物面鏡26に入射する。そのテラヘルツパルス光は、軸外し放物面鏡26で合成ミラー44の方向へ反射され、平行光の状態でその合成ミラー44に入射する。そのテラヘルツパルス光は、透過パルス光と同じ光路を辿り、軸外し放物面鏡24を経てテラヘルツ光検出器12に入射する。なお、軸外し放物面鏡25,26の集光点は、被検物50の測定点に一致している。
【0049】
以上の本測定装置では、テラヘルツ光発生器11→軸外し放物面鏡21→ビームスプリッタ41→軸外し放物面鏡22→被検物50→軸外し放物面鏡23→合成ミラー44→軸外し放物面鏡24→テラヘルツ光検出器12を順に経由するテラヘルツパルス光の光路が、透過測定用の光路である。また、テラヘルツ光発生器11→軸外し放物面鏡21→ビームスプリッタ41→軸外し放物面鏡25→光路折り曲げミラー42→被検物50→光路折り曲げミラー43→軸外し放物面鏡26→合成ミラー44→軸外し放物面鏡24→テラヘルツ光検出器12を順に経由するテラヘルツパルス光の光路が、反射測定用の光路である。
【0050】
ここで、本測定装置では、透過測定用の光路の全長と、反射測定用の光路の全長とには、1パルス分以上の光路長差が設けられている。これは、透過パルス光と反射パルス光とを、テラヘルツ光検出器12に対し異なるタイミングで入射させるためである。
図4(B)は、テラヘルツ光検出器12に到達するテラヘルツ光の波形(電場強度の時間変化)を示す図である。この波形には、2つの大きなピークがあり、その一方が透過パルス光の波形であり、他方が反射パルス光の波形である。なお、図4(B)では、反射測定用の光路長よりも透過測定用の光路長が短く、透過パルス光の方が先に到達する例を示した。光路長差は、これらの透過パルス光と反射パルス光とが時間的に完全に分離されるよう確保される。但し、光路長差は、到達タイミングのずれ量ΔTが最小になるよう、適当な値に設定されることが望ましい。
【0051】
以上の本測定装置では、レーザ光源31が駆動されると、第1実施形態の測定装置と同様に、ポンプ光がテラヘルツ光発生器11に与えられ、テラヘルツパルス光が被検物50を同じタイミングで2種類の角度から照明する。
しかし、本測定装置では、被検物50から同じタイミングで発生した透過パルス光及び反射パルス光は、到達タイミングのずれ量ΔTをもってテラヘルツ光検出器12に到達する。テラヘルツ光検出器12に対する入射光の波形は、図4(B)に示したとおりである。テラヘルツ光検出器12は、プローブ光の与えられたタイミングで、その波形の或る1箇所の値を検出する。
【0052】
さらに、可動鏡32の位置が図4の矢印の方向にずれると、ポンプ光の入射タイミングからプローブ光の入射タイミングまでの遅延時間が変化するので、その波形の検出箇所がずれる。よって、可動鏡32を各位置に配置してレーザ光源31を駆動すれば、その波形の全貌が検知される。検知された波形の前半部分が透過パルス光波形であり、後半部分が、反射パルス光の波形である。コンピュータ34は、双方の波形に対し個別に処理(フーリエ変換など)を施し、透過パルス光の分光データと、反射パルス光の分光データとをそれぞれ取得する。
【0053】
以上、本測定装置は、被検物50から同時に射出した透過パルス光と反射パルス光とをそれぞれ検出するので、光路切り替えを伴わずに、透過測定(ここでは透過パルス光の分光データの取得)と反射測定(ここでは反射パルス光の分光データの取得)との双方を行うことができる。
また、被検物50が状態変化する場合であっても、同じ状態での透過測定データと反射測定データとを取得することができる。
【0054】
しかも、本測定装置では、透過パルス光及び反射パルス光の検出に1つのテラヘルツ光検出器12を共用するので、部品点数が抑えられる。
なお、本測定装置では、1つのテラヘルツ光検出器12を共用する代わりに、透過パルス光と反射パルス光との到達タイミングをずらしたので、透過パルス光の波形と反射パルス光の波形とは、並列ではなく直列に検知される。このため、可動鏡32の全移動量及び測定時間は、第1実施形態のそれよりも長くなる。しかし、到達タイミングのずれ量ΔTは必要最小限に抑えられるので、可動鏡32の全移動量及び全測定時間は、必要最小限に抑えられる。
【0055】
ここで、本測定装置では、被検物50の厚さや屈折率により、到達タイミングのずれ量ΔT(図4(B)参照)は、変化する。このため、被検物50の厚さや材質(屈折率など)によっては、透過パルス光の一部と反射パルス光の一部とが重複し、両者の波形を分離できなくなる可能性がある。分離できないことは、透過測定と反射測定との双方が実施不可能であることと同じである。
【0056】
そこで、図4(A)中に点線で示すように、反射パルス光の単独光路にシャッタ71を設けてもよい。このシャッタ71を利用すれば、少なくとも透過測定については、被検物50の厚さや屈折率に依らずに確実に実施可能になる。
なお、反射パルス光の光路に配置する代わりに、透過パルス光の単独光路にシャッタを配置してもよい。その場合、少なくとも反射測定については、被検物50の厚さや屈折率に依らずに確実に実施可能になる。
【0057】
或いは、透過パルス光の単独光路と反射パルス光の単独光路とのそれぞれにシャッタを配置してもよい。その場合、透過測定と反射測定とが、被検物50の厚さや屈折率に依らずに確実に実施可能になる。
[第5実施形態]
図5を参照して本発明の第5実施形態を説明する。本実施形態は、第4実施形態(図4)の変形例である。ここでは、第4実施形態との相違点のみ説明する。
【0058】
図5(A)は、本実施形態の測定装置を示す概略構成図である。図5(A)では、テラヘルツ光を導光する光学系のみを簡略化して示した。第4実施形態との相違点は、シャッタを配置する代わりに、透過測定用の光路と反射測定用の光路との光路長差を可変にした点にある。
具体的に、本測定装置では、反射パルス光の単独光路に、光路折り曲げミラーM,可動鏡(可動レトロリフレクタ)72,光路折り曲げミラーMが挿入されている。この可動鏡72を図5(A)の矢印の方向へ移動させると、反射パルス光の光路長を調節することができる。
【0059】
図5(B)は、テラヘルツ光検出器12に到達するテラヘルツ光の波形(電場強度の時間変化)を示す図である。反射パルス光の光路長が調節されると、図5(B)中に矢印で示すように、反射パルス光の到達タイミングがシフトする。
よって、可動鏡72の位置を被検物50の厚さや材質(屈折率など)に応じて調節すれば、透過パルス光の波形と反射パルス光の波形との重複を防ぐことができる。また、両者の到達タイミングのずれ量ΔTを最小限に保つこともできる。
【0060】
したがって、本測定装置によれば、被検物50の厚さや屈折率に依らずに、透過測定と反射測定との双方を確実に実施することや、測定時間を必要最小限に確実に抑えることができる。
なお、本測定装置は、反射パルス光の光路長を調節可能としたものであるが、反射パルス光の光路長を調節可能とする代わりに、透過パルス光の光路長を調節可能としてもよい。また、両者の光路長をそれぞれ調節可能としてもよい。
【0061】
[第6実施形態]
図6を参照して本発明の第6実施形態を説明する。本実施形態も、テラヘルツ分光装置の実施形態である。ここでは、第4実施形態(図4)との相違点を主に説明する。
図6は、本実施形態の測定装置を示す概略構成図である。図6では、テラヘルツ光を導光する光学系のみを示した。図6に示すように、第4実施形態との相違点は、照明光路を2系統に分離せずに1系統(斜め方向から照明するもの)にした点にある。
【0062】
テラヘルツ光発生器11は、ポンプ光に応じてテラヘルツパルス光を発光する。このテラヘルツパルス光は、その発光点と等価な位置に焦点を有した軸外し放物面鏡21で反射され、平行光となる。そのテラヘルツパルス光は、軸外し放物面鏡25にて反射した後、光路折り曲げミラー42を介して被検物50の測定点を斜め方向から照明する。
被検物50を照明したテラヘルツパルス光のうち、測定点を透過したもの(透過パルス光)は、測定点の複素誘電率や電気的特性や不純物濃度等の情報を含む光となり、発散しながら軸外し放物面鏡23に入射し、そこで反射して平行光となる。そのテラヘルツパルス光は、シリコン板などからなる合成ミラー44を介して軸外し放物面鏡24にて反射し、その軸外し放物面鏡24の焦点と等価な位置に検出中心を有したテラヘルツ光検出器12に入射する。
【0063】
被検物50を照明したテラヘルツパルス光のうち、測定点を反射したもの(反射パルス光)は、測定点の複素誘電率や電気的特性や不純物濃度等の情報を含む光となり、発散しながら光路折り曲げミラー43に入射し、そこで光路を折り曲げてから軸外し放物面鏡26で反射され、平行光となった後、合成ミラー44に入射する。そのテラヘルツパルス光は、透過パルス光と同じ光路を辿り、軸外し放物面鏡24を経てテラヘルツ光検出器12に入射する。
【0064】
以上の本測定装置では、テラヘルツ光発生器11→軸外し放物面鏡21→軸外し放物面鏡25→光路折り曲げミラー42→被検物50→軸外し放物面鏡23→合成ミラー44→軸外し放物面鏡24→テラヘルツ光検出器12を順に経由するテラヘルツパルス光の光路が、透過測定用の光路である。また、テラヘルツ光発生器11→軸外し放物面鏡21→軸外し放物面鏡25→光路折り曲げミラー42→被検物50→光路折り曲げミラー43→軸外し放物面鏡26→合成ミラー44→軸外し放物面鏡24→テラヘルツ光検出器12を順に経由するテラヘルツパルス光の光路が、反射測定用の光路である。
【0065】
本測定装置においても、第4実施形態の測定装置と同様、透過測定用の光路の全長と、反射測定用の光路の全長とには、適当な光路長差が設けられている。したがって、本測定装置も、第4実施形態の測定装置と同じ測定をすることが可能である。
しかも、本測定装置では、第4実施形態の測定装置とは異なり、照明光路が1系統のみなので、部品点数が抑えられる。また、透過測定の照明方向と反射測定の照明方向とが同じ(ここでは斜め方向)なので、透過パルス光の波形を処理するときのアルゴリズムと、反射パルス光の波形を処理するときのアルゴリズムとを共通化できるという利点もある。
【0066】
なお、本測定装置においても、反射パルス光の単独光路、透過パルス光の単独光路の少なくとも1つにシャッタ71を設けてもよい。また、本測定装置も、第5実施形態と同様に変形する(透過測定用の光路と反射測定用の光路との光路長差を可変にする)ことができる。
[第7実施形態]
図7を参照して本発明の第7実施形態を説明する。本実施形態は、第3実施形態(図3)の変形例である。ここでは、第3実施形態との相違点のみ説明する。
【0067】
図7は、本実施形態の測定装置を示す概略構成図である。図7では、テラヘルツ光を導光する光学系のみを示した。図7に示すように、第3実施形態との相違点は、軸外し放物面鏡21,22の代わりに、それらと同じ作用をする1つの楕円鏡31を用いた点と、軸外し放物面鏡25,26の代わりに、それらと同じ作用をする1つの楕円鏡33を用いた点と、軸外し放物面鏡23,24の代わりに、それらと同じ作用をする1つの楕円鏡32を用いた点とにある。
【0068】
楕円面鏡31は、テラヘルツ光発生器11の発光点と等価な位置に一方の焦点を有し、楕円面鏡32は、テラヘルツ光検出器12の検出中心と等価な位置に一方の焦点を有し、楕円面鏡33は、テラヘルツ光検出器13の検出中心と等価な位置に一方の焦点を有する。また、被検物50の配置面は、楕円面鏡31,32,33の他方の焦点からなる焦平面に一致している。
【0069】
したがって、本測定装置は、第3実施形態の測定装置と光学的に等価でありながら、部品点数だけが大幅に削減される。
なお、本実施形態は、第3実施形態の変形例であるが、他の各実施形態も同様に変形することができる。すなわち、各実施形態の測定装置において直列に配置された2つの放物面鏡は、1つの楕円面鏡に置換することが可能である。
【0070】
[その他]
なお、上述した各実施形態の測定装置において、ビームスプリッタ41,合成ミラー44,ハーフミラー61には、シリコン板が利用されたが、入射したテラヘルツ光の一部を反射し他の一部を透過する性質を持つ(但し、少なくともテラヘルツ領域では反射・透過率に波長特性を持たないのが望ましい。)のであれば、シリコン板以外の光学部材が利用されてもよい。例えば、入射したテラヘルツ光の特定の偏光成分を反射し他の特定の偏光成分を透過するワイヤーグリッドを利用することもできる。
【0071】
また、上述した各実施形態の測定装置において、テラヘルツ光を導光する光学系の雰囲気は、真空状態に保たれることが望ましい。なぜなら、テラヘルツ光は水を吸収する特徴があり、大気中の水分の影響を排除する必要があるからである。
また、上述した各実施形態の測定装置において、被検物50を移動させる機構を付加してもよい。被検物50を配置面に沿って移動させれば、被検物50上を測定点で二次元走査できるので、イメージング機能を付与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、テラヘルツ分光装置以外にも、非走査型のテラヘルツ分光イメージング装置や、分光機能の搭載されていないテラヘルツイメージング装置などにも適用可能である。因みに、非走査型の分光イメージング装置には、被検物から射出したテラヘルツパルス光を結像する結像光学系や、その結像面の電場強度分布を一括検出するための電気光学結晶、偏光板などが備えられる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1実施形態の測定装置を示す概略構成図である。
【図2】第2実施形態の測定装置を示す概略構成図である。
【図3】第3実施形態の測定装置を示す概略構成図である。
【図4】(A)は、第4実施形態の測定装置を示す概略構成図であり、(B)は、テラヘルツ光検出器12に到達するテラヘルツ光の波形(電場強度の時間変化)を示す図である。
【図5】(A)は、第5実施形態の測定装置を示す概略構成図であり、(B)は、テラヘルツ光検出器12に到達するテラヘルツ光の波形(電場強度の時間変化)を示す図である。
【図6】第6実施形態の測定装置を示す概略構成図である。
【図7】第7実施形態の測定装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0074】
11・・・テラヘルツ光発生器,12,13・・・テラヘルツ光検出器,41・・・ビームスプリッタ,42,43・・・光路折り曲げミラー,44・・・合成ミラー,21,22,23,24,25,26,27・・・軸外し放物面鏡,31・・・レーザ光源,32・・・可動鏡,34・・・コンピュータ,33・・・電流計,50・・・被検物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラヘルツ光で被検物を照明する照明光学系と、
前記被検物から同時に発生した前記テラヘルツ光の透過光及び反射光をそれぞれ検出する検出光学系と
を備えたことを特徴とするテラヘルツ測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のテラヘルツ測定装置において、
前記照明光学系は、
テラヘルツパルス光で前記被検物を照明し、
前記検出光学系は、
同一のテラヘルツパルス光による照明で発生した前記透過光及び反射光をそれぞれ検出する
ことを特徴とするテラヘルツ測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のテラヘルツ測定装置において、
前記検出光学系は、
前記透過光及び反射光を2つの検出器で個別に検出する
ことを特徴とするテラヘルツ測定装置。
【請求項4】
請求項2に記載のテラヘルツ測定装置において、
前記検出光学系は、
前記透過光及び反射光を同一の検出器で検出するものであり、
前記透過光の光路と前記反射光の光路との間には、
光路長差が設けられている
ことを特徴とするテラヘルツ測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載のテラヘルツ測定装置において、
前記検出光学系には、
前記光路長差を調節するための機構が備えられる
ことを特徴とするテラヘルツ測定装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のテラヘルツ測定装置において、
前記透過光と前記反射光との少なくとも一方の光路には、
光路を開閉するためのシャッタ手段が設けられる
ことを特徴とするテラヘルツ測定装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のテラヘルツ測定装置において、
前記照明光学系は、
同一のテラヘルツ光を分岐して2種類の角度から前記被検物を照明し、
前記検出光学系は、
前記2種類の角度のうち小角度の照明で発生した前記透過光と、大角度の照明で発生した前記反射光とをそれぞれ検出する
ことを特徴とするテラヘルツ測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載のテラヘルツ測定装置において、
前記小角度の照明は、
前記被検物を正面から照明するものである
ことを特徴とするテラヘルツ測定装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のテラヘルツ測定装置において、
前記照明光学系は、
1種類の角度から前記被検物を照明する
ことを特徴とするテラヘルツ測定装置。
【請求項10】
請求項9に記載のテラヘルツ測定装置において、
前記角度の照明は、
前記被検物を正面から照明するものである
ことを特徴とするテラヘルツ測定装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10の何れか一項に記載のテラヘルツ測定装置において、
前記発光及び前記検出のタイミングを制御し、前記透過光の時間波形と前記反射光の時間波形とをそれぞれ検知する制御手段を備えた
ことを特徴とするテラヘルツ測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−308426(P2006−308426A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131493(P2005−131493)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(592171153)株式会社栃木ニコン (34)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】