説明

テレビジョン信号処理装置及びテレビジョン信号処理方法

【課題】テレビジョン信号の受信状態が悪化した場合でも,映像の品質の劣化を軽減する。
【解決手段】テレビジョン信号受信装置からコンポジット映像信号の入力を受けるテレビジョン信号処理装置において,前記テレビジョン信号の受信状態が第1の受信状態のときは第1の周波数帯域で,前記第1の受信状態より悪い第2の受信状態のときは前記第1の周波数帯域より狭い第2の周波数帯域で前記コンポジット映像信号から前記色信号を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,コンポジット映像信号から色信号と輝度信号とを抽出するテレビジョン信号処理装置に関し,特に,テレビジョン信号の受信状態に応じて,色信号を抽出する周波数帯域を変更するテレビジョン信号処理装置及びテレビジョン信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にテレビジョン装置は,テレビジョン信号受信装置,テレビジョン信号処理装置,表示装置等により構成される。まず,テレビジョン信号受信装置が,高周波のテレビジョン信号を受信して中間周波信号に変換し,中間周波信号からコンポジット映像信号を抽出して出力する。かかるテレビジョン信号受信装置の例が,特許文献1に記載されている。
【0003】
そして,テレビジョン信号受信装置から出力されたコンポジット信号はテレビジョン信号処理装置へ入力される。テレビジョン信号処理装置はコンポジット映像信号から輝度信号と色信号,及び同期信号を抽出し,輝度信号と色信号とに基づくRGB信号と同期信号を表示装置へ出力する。表示装置は,RGB信号と同期信号に基づいて,受信されたテレビジョン映像を画面に表示する。
【特許文献1】特開2001−313881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,テレビジョン信号の受信状態が悪化すると,受信電波に含まれるノイズにより表示される映像の品質が劣化する。特に,テレビジョン信号処理装置がコンポジット映像信号から色信号と輝度信号とを抽出する際,色信号にノイズが多く混入していると,映像の色の品質の劣化が顕著となる。例えば,本来出力されるべき色とは異なった色が出力されてしまい,ユーザの見た目にも不快感を与えてしまう。
【0005】
さらに,近年普及している車両に搭載されるテレビジョン装置では,車両の移動に伴い受信電波の電界強度が変化するので,弱電界領域へ移動した際に受信状態が悪化し,上記のような映像の劣化が生じ易い。
【0006】
そこで,本発明の目的は,テレビジョン信号の受信状態が悪化した場合でも,映像の品質の劣化を軽減するようなテレビジョン信号処理装置及びテレビジョン信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために,本発明の第1の側面によれば,テレビジョン信号受信装置からコンポジット映像信号の入力を受けるテレビジョン信号処理装置において,前記テレビジョン信号の受信状態が第1の受信状態のときは第1の周波数帯域で,前記第1の受信状態より悪い第2の受信状態のときは前記第1の周波数帯域より狭い第2の周波数帯域で前記コンポジット映像信号から前記色信号を抽出する信号抽出部を有することを特徴とする。そして,このテレビジョン信号処理装置は,前記コンポジット映像信号から前記色信号を取り除いた輝度信号と前記色信号とに基づく映像信号を出力する。
【0008】
上記第1の側面によれば,テレビジョン信号の受信状態が良好なとき,つまり受信したテレビジョン信号全体のS/N比(信号対ノイズ比)が大きいときは第1の周波数帯域で色信号をコンポジット映像信号から分離し,受信状態が悪化し,受信したテレビジョン信号全体のS/N比が低下したときは第1の周波数帯域より狭い第2の周波数帯域で色信号をコンポジット映像信号から抽出する。よって,受信状態が不良のときであっても,抽出される色信号のS/N比(信号対ノイズ比)を改善することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば,テレビジョン信号全体のS/N比が低下した場合でも,抽出した色信号のS/N比を改善することができ,映像の色の品質劣化を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下,図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し,本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず,特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0011】
図1は,本実施の形態におけるテレビジョン信号処理装置の構成を説明する図である。テレビジョン信号処理装置200は,テレビジョン信号受信装置100から入力されるコンポジット映像信号CMVSを処理してRGB信号R,G,Bを生成し,映像信号として表示装置400へ出力する。テレビジョン信号受信装置100,テレビジョン信号処理装置200,表示装置400は車両に搭載されるテレビジョン装置を構成する。
【0012】
テレビジョン信号受信装置100では,アンテナ11が受信した高周波(周波数帯域90〜700MHz)のテレビジョン信号から,チューナ10がユーザにより選択されたチャネルの周波数帯域を抽出して中間周波信号に変換する。チューナ10から出力される中間周波信号は中間周波信号増幅器12により増幅され,映像検波器14に入力される。映像検波器14は,中間周波信号から被搬送信号である映像中間周波信号を抽出する。映像中間周波信号の一部はAGC(Automatic Gain Control)20へ入力され,一部は映像増幅器16により増幅されてコンポジット映像信号CMVSとしてテレビジョン信号処理装置200へ出力される。
【0013】
AGC20は,映像検波器14の出力を一定に保つため,映像検波器14から入力された映像中間周波信号に基づき,チューナ10及び中間周波信号増幅器12のゲインを制御する。具体的には,映像中間周波信号が小さい程大きいゲインを得るようなAGC信号をチューナ10の図示されない高周波増幅器及び中間周波信号増幅器12に出力する。また,このAGC信号は,テレビジョン信号処理装置200の制御部28へも出力され,後述するように制御部28はAGC信号に応じて信号抽出部22の動作を制御する。
【0014】
また,電界強度検知器18は,チューナ10の受信信号の電界強度を検知し,検知した電界強度である電界強度信号をテレビジョン信号処理装置200の制御部28へ出力する。後述するように,制御部28は電界強度信号に応じて信号抽出部22の動作を制御する。
【0015】
テレビジョン信号処理装置200では,映像増幅器16からのコンポジット映像信号CMVSを信号抽出部22と同期信号分離部30が受ける。信号抽出部22は,バンドパスフィルタ23と不図示の減算回路等を有し,バンドパスフィルタ23は制御部28からの制御信号により通過帯域幅を変更できるデジタルフィルタで構成される。信号抽出部22は,まず色信号Cをバンドパスフィルタ23に設定される通過帯域を通過させることによりこれをコンポジット映像信号CMVSから抽出し,コンポジット映像信号CMVSから色信号Cを減算することにより輝度信号Yを抽出する。
【0016】
抽出された輝度信号Yは,詳細は後述するがノイズ検出部25でカラーバースト信号区間のノイズを検出された後,マトリクス回路26に入力される。また,色信号Cは色復調部24に入力され,色復調部24は色信号Cから色差信号,つまり青色差信号Cb,赤色差信号Crとをさらに抽出してマトリクス回路26に入力する。マトリクス回路26は,入力される輝度信号Y,色差信号Cr,Cbに対応するRGB信号R,G,Bを生成し,表示装置400へ出力する。
【0017】
コンポジット映像信号CMVSが入力された同期信号分離部30は,コンポジット映像信号CMVSから水平同期信号と垂直同期信号とを取り出し,水平同期信号をPLL回路32に入力する。PLL回路32は,水平同期信号と同期した基準クロックCLKを生成して,制御部28,色復調部24,マトリクス回路26,及び表示装置400へ出力する。そして,制御部28等は基準クロックCLKに従ってそれぞれ処理を行い,表示部400は基準クロックCLKに基づいてRGB信号R,G,Bに対応する画像を表示する。
【0018】
上記構成の車載テレビジョン装置では,車両の移動に伴い受信電波の電界強度が変化するため,受信するテレビジョン信号の大きさも変化する。すると,テレビジョン信号受信装置100におけるテレビジョン信号の受信状態,つまり受信したテレビジョン信号と,これに含まれるノイズとのS/N比も電界強度に応じて変化する。かかる電界強度の変化に応じ,信号抽出部22が色信号Cを抽出する動作について以下に説明する。
【0019】
まず,コンポジット映像信号CMVSに含まれる輝度信号Yと色信号Cの周波数成分を見てみると,図2(A)に示すように輝度信号成分YSは0〜4.2MHzの周波数帯域に分布し,色信号成分CSは3.58MHzを中心に±0.5MHzの周波数帯域に分布している。なお,ノイズ成分NSは,周波数帯域全体にわたって分布している。そこで,まずテレビジョン信号処理装置200の制御部28は,電界強度が十分に強くテレビジョン信号のS/N比が大きいとき,すなわち受信したテレビジョン信号の周波数成分に比べてノイズ成分NSが問題とならない程度に少量なときは,図2(A)に示すように信号抽出部22のバンドパスフィルタ23の通過帯域を3.58MHzを中心とした1MHzの通過帯域幅Wとして色信号Cを通過させて抽出し,通過しない部分を輝度信号Yとして抽出する。
【0020】
ところが,電界強度が弱くなると受信したテレビジョン信号が低下し,図2(B)に示すようにノイズ成分NSの量が相対的に増加する。すると,上記のようにして通過帯域Wで抽出される色信号CのS/N比,つまり色信号成分の分布曲線CSのノイズ成分NSと重複しない部分の面積Sと,ノイズ成分NSと重複する網掛けされた部分の面積Nの比率は低下する。特に,3.58MHzから離れた周波数帯域F1,F2の周波数成分ではノイズ成分NSの占める割合が大きく,S/N比が極めて低くなる。よって,通過帯域幅Wで色信号Cを抽出した場合は,S/N比が極めて低い周波数帯域F1,F2の信号を含んでおり,これらの信号に対応した色が正確に出力されなくなってしまう。
【0021】
そこで,テレビジョン信号処理装置200は,図2(C)に示すように信号抽出部22のバンドパスフィルタ23の通過帯域を,3.58MHzを中心とした1MHzの通過帯域幅Wより狭い通過帯域幅Nに変更して色信号Cを抽出する。そうすることにより,S/N比が極めて低い周波数帯域F1,F2の信号成分を色信号成分として取り込まず,抽出された色信号CのS/N比,つまり,色信号成分の分布曲線Cのノイズ成分NSと重複しない部分の面積(S1)と,ノイズ成分NSと重複する網掛け部分の面積(N1)の比率を向上させることができる。
【0022】
なお,色信号抽出部22は,バンドパスフィルタ23を通過しない信号を輝度信号Yとするので,周波数帯域F1,F2に存在するノイズ成分は輝度信号Yに混入されることとなる。しかし,色信号Cに対するノイズの影響が映像本来の色と異なる色の映像が表示されるという見た目にも顕著なものであるのに対し,輝度信号Yに対するノイズの影響は映像の輝度が本来の輝度より明るい・暗いという比較的目立たないものである。よって,周波数帯域F1,F2のノイズ成分が輝度信号に混入する影響を差し引いても,色信号CのS/N比を改善することによる映像品質の改善効果の方が大きい。このため,本実施の形態においては,バンドパスフィルタ23の通過帯域を狭くして狭い周波数帯域の色信号Cを抽出することにより,映像の品質低下を軽減することができる。
【0023】
上記の動作は,制御部28が電界強度検知器18から受ける電界強度信号に基づき信号抽出部22の動作を制御することにより実現される。例えば,図3(A)に示すように,電界強度信号が閾値THVを上回っている場合,つまり電界強度が十分強い場合には通常の通過帯域Wで,電界強度信号が閾値THV以下であれば狭い通過帯域Nをバンドパスフィルタ23に設定するように,信号抽出部22を制御する。
【0024】
バンドパスフィルタ23は,入力信号に複数の係数を乗算することにより一定の周波数帯域を減衰させるデジタルフィルタであり,係数の数や係数の値に応じて減衰される周波数帯域が異なる。よって,図4(A)に示すように,制御部28は係数テーブル29に係数群1,係数群2を格納しておき,電界強度に応じてバンドパスフィルタ23へこれらの係数群を入力して通過帯域を制御する。例えば,バンドパスフィルタ23は,係数群1を入力された場合は,入力されるコンポジット映像信号CMVSに係数群1を乗算して帯域W(図4(B))の色信号Cを抽出し,高周波部分と低周波部分とを減衰させるような係数2を入力された場合は,入力信号に係数群2を乗算して通過帯域N(図4(B))で色信号Cを出力する。このようにして,バンドパスフィルタ23に適当な係数を設定することにより,通過帯域Wあるいは通過帯域Nの切替を行うことができる。
【0025】
また,制御部28は,AGC20からAGC信号を受け,AGC信号に基づいてバンドパスフィルタ23の通過帯域を制御してもよい。テレビジョン信号の電界強度が強ければ中間周波信号増幅器12等のゲインは大きいのでAGC信号は小さいゲインを得るような信号であり,電界強度が弱ければ中間周波信号増幅器12等のゲインは小さくなり,AGC信号はより大きいゲインを得る信号となる。よって,制御部28は,電界強度を示すパラメータとしてAGC信号を用いることができ,AGC信号により得られるゲインがある閾値を下回る場合には通常の通過帯域W,AGC信号により得られるゲインが閾値以上であれば狭い通過帯域Nに対応した係数群をバンドパスフィルタ23に入力し,バンドパスフィルタ23の通過帯域の切り替えを行う。
【0026】
また,制御部28は,同期信号分離部30が分離した水平同期信号と同位相のクロックCLKをPLL回路32が生成する際に,PLL回路32のロック率に応じてバンドパスフィルタ23の通過帯域を制御してもよい。ここでロック率とは,PLL回路32が生成する基準クロックCLKと水平同期信号の位相が一致している状態(ロック状態)が継続する時間の一定時間内における割合をいう。
【0027】
受信した信号の電界強度が弱い場合には,ノイズの影響により水平同期信号の位相が乱れると,PLL回路32に入力される水平同期信号と基準クロックCLKとの位相差が生じるのでPLL回路32のロック状態が解除され,PLL回路32は基準クロックCLKの位相を水平同期信号に同期させるよう動作する。反対に,電界強度が強い場合には,水平同期信号の位相が安定し,ロック状態が維持される。よって,制御部28は,PLL回路32のロック率を電界強度を示すパラメータとして用いることができ,PLL回路32が検出したロック率の入力を受けて,ロック率が閾値より高ければ通常の通過帯域W,ロック率が閾値以下であれば狭い通過帯域Nに対応した係数群をバンドパスフィルタ23に入力し,バンドパスフィルタ23の通過帯域の切り替えを行う。
【0028】
このようにして,制御部28は,テレビジョン信号受信装置100から電界強度信号やAGC信号を受け取らない場合でも,コンポジット映像信号CMVSに基づいてテレビジョン信号の受信状態に応じた通過帯域をバンドパスフィルタ23に設定することができる。
【0029】
また,制御部28は色復調部24が色信号Cから色差信号Cb,Crを抽出する際に用いるカラーバースト信号に基づき,バンドパスフィルタ23の通過帯域を制御してもよい。カラーバースト信号はコンポジット信号に含まれ,色復調部24が色信号Cから色差信号Cb,Crを位相選択検波する際にバースト信号の位相を基準とする。図5(A)に示すように,1ライン分の映像に対応するコンポジット信号CMVS1において,カラーバースト信号CBは,水平同期信号HSと,色信号Cと輝度信号Yの複合信号の間,約4.7μSに3.58MHzの信号として挿入される。
【0030】
コンポジット映像信号CMVS1(図5(A))は信号抽出部22により色信号Cとカラーバースト信号CB(図5(B)),及び輝度信号Y(図5(C))とに分離されるが,カラーバースト信号CBが挿入されるカラーバースト信号区間CBPは,輝度信号Yの水平同期信号HSに追随した約4.7μSに相当する(図5(A))。よって,信号抽出部22が抽出した輝度信号Yを入力されたノイズ検出部25は,水平同期信号HSに同期した基準クロックCLKに基づきカラーバースト信号区間CBPを検出し,その区間の周波数成分を検出する(図5(C))。色信号Cとカラーバースト信号が取り除かれた輝度信号Yにおけるカラーバースト信号区間には,本来信号は存在しないので,この区間で検出された信号はノイズ成分ということになる。かかるノイズ成分量は色信号Cに混入するノイズ成分量の目安となるので,カラーバースト信号区間CBPのノイズ成分が多ければ,受信信号のS/N比が悪化している。
【0031】
そこで,色復調部24は,PLL回路32から受ける基準クロックCLKの後4.7μSでの信号を検出し,ノイズ成分が検出された場合は,その成分量を制御部28へ入力する。そして,制御部28は,色復調部24から受け取るカラーバースト信号区間のノイズ成分量が閾値より小さければ通常の通過帯域W,ノイズ成分が閾値以上であれば狭い通過帯域Nに対応した係数群をバンドパスフィルタ23に入力し,バンドパスフィルタ23の通過帯域の切り替えを行う。
【0032】
また,カラーバースト信号CBは,1ラインごとに位相が逆相になるように挿入されるので,あるラインのカラーバースト信号と次のラインのカラーバースト信号の位相差が180度となっていなければ,ノイズの影響でカラーバースト信号の位相が乱れていることになり,すなわち受信信号のS/N比が低下している。そこで,色復調部24は,基準クロックCLKに基づき連続するラインのカラーバースト信号を色信号Cから検出し,カラーバースト信号同士の位相差を制御部28へ入力する。そして,制御部28は位相差が180度であれば,通常の通過帯域W,位相差が180度出ない場合は狭い通過帯域Nに対応した係数群をバンドパスフィルタ23に入力し,バンドパスフィルタ23の通過帯域の切り替えを行う。
【0033】
上述のようにして,制御部28はテレビジョン信号の電界強度あるいは電界強度と相関関係にある各種パラメータに応じてバンドパスフィルタ23の通過帯域を設定できる。
【0034】
以上の例では,制御部22はバンドパスフィルタ23に2種類の係数群を設定することにより,それぞれの係数群に応じた通過帯域を設定している。かかる係数は,係数テーブル29に予め格納されているが,係数テーブルを書換え可能な不揮発性記憶装置に格納し,係数群を適宜に設定可能とすることもできる。そうすることにより,例えば工場出荷時などに,バンドパスフィルタ23のハード特性に応じた最適な係数をベンチマークテストにより算出し,算出された係数を係数テーブル29に格納することにより,制御部28は格納された係数群を設定してバンドパスフィルタ23の通過帯域を変更することができる。
【0035】
また,CPU34が電界強度等に応じた係数群を演算により求めてもよい。そうすることにより,図3(B)で示すように,電界強度が閾値THVを下回った場合に,CPU34は電界強度信号,AGC信号,PLLロック率等に応じてバンドパスフィルタ23の通過帯域を計算し,その通過帯域を設定するための係数を計算してバンドパスフィルタ23に設定する。そうすることにより,電界強度の変化に応じた段階的な通過帯域を設定でき,映像品質の改善も段階的に行うことができる。さらにその場合の変形例として,制御部28がバンドパスフィルタ23の通過帯域を変更する際,切替をヒステリシス的に行うようにしてもよい。
【0036】
図6は,バンドパスフィルタ23の通過帯域の変更をヒステリシス的に行う制御部28の動作を説明する図である。図6(A)は制御部28の動作手順を説明するフローチャート図であり,図6(B),(C)は電界強度と通過帯域幅との関係を示す図である。
【0037】
まず,図6(B)で制御部28がバンドパスフィルタ23の通過帯域の切替をヒステリシス的に行わない場合を示す。制御部28は,電界強度V1とV2を閾値として,電界強度信号が電界強度V1より大きいときは通過帯域をW,電界強度信号が電界強度V2より小さいときは通過帯域をNとなるようにバンドパスフィルタ23に係数を設定する。そして,電界強度V1,V2の間では,電界強度信号に応じて通過帯域がWからNへ線形に変化するように通過帯域を制御する。しかしながらこの方法では,電界強度が閾値V1と閾値V2との間で不安定に変動するときは,電界強度信号の変動に応じてバンドパスフィルタの通過帯域も不安定に変動し,結果として表示される映像が不安定となる。そこで,図6(A),(C)で示す動作を行う。
【0038】
まず,制御部28はバンドパスフィルタ23に設定されている通過帯域を判断する(図6(A)のS10)。広い通過帯域Wに設定されている場合((図6(A)のS10の「W」,図6(C)のB10)に,電界強度信号が閾値V1以下となったとき((図6(A)のS20のYES),CPU34により電界強度(弱電界)に応じた通過帯域を設定するための係数を計算し,その係数をバンドパスフィルタ23に設定する(図6(A)のS22,図6(C)のB22)。そして,通過帯域が狭い通過帯域Nに設定されたら,通過帯域の変更を終了する(図6(A)のS24,図6(C)のB12))。
【0039】
一方,狭い通過帯域Nに設定されている場合((図6(A)のS10の「N」,図6(C)のB12)に,電界強度信号が閾値V3より大きくなったときは((図6(A)のS30のYES),CPU34により電界強度(強電界)に応じた通過帯域を設定するための係数を計算し,その係数をバンドパスフィルタ23に設定する(図6(A)のS32,図6(C)のB32)。そして,通過帯域が広い通過帯域Wに設定されたら,通過帯域の変更を終了する(図6(A)のS34,図6(C)のB10))。
【0040】
上記の動作により,バンドパスフィルタ32の通過帯域W,Nの切替をヒステリシス的に行うことができる。すなわち,制御部28は,電界強度V1とV3との間では,通過帯域を狭くする方向へ動作する場合には通過帯域Wを維持し,通過帯域を広くする方向へ動作する場合には通過帯域Nを維持する。そうすることにより,電界強度がV1とV3の間で不安定に変動する場合であっても,電界強度信号の変動に応じて通過帯域を過敏に切替えることにより映像が不安定となることを回避することができる。
【0041】
以上説明したとおり,本実施の形態におけるテレビジョン信号処理装置によれば,テレビジョン信号全体のS/N比が低下した場合でも,抽出した色信号のS/N比を改善することができ,映像の色の品質劣化を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施の形態におけるテレビジョン信号処理装置の構成を説明する図である。
【図2】コンポジット映像信号の周波数成分を説明する図である。
【図3】電界強度に応じたバンドパスフィルタ23の通過帯域を説明する図である。
【図4】バンドパスフィルタ23の出力の周波数特性を説明する図である。
【図5】コンポジット映像信号の波形を説明する図である。
【図6】バンドパスフィルタ23の通過帯域の変更をヒステリシス的に行う制御部28の動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0043】
100:テレビジョン信号受信装置 200:テレビジョン信号処理装置
22:信号抽出部 23:バンドパスフィルタ
28:制御部 CMVS:コンポジット映像信号 C:色信号
Y:輝度信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレビジョン信号受信装置からコンポジット映像信号の入力を受けるテレビジョン信号処理装置であって,
前記テレビジョン信号の受信状態が第1の受信状態のときは第1の周波数帯域で,前記第1の受信状態より悪い第2の受信状態のときは前記第1の周波数帯域より狭い第2の周波数帯域で前記コンポジット映像信号から前記色信号を抽出する信号抽出部を有し,
前記コンポジット映像信号から前記色信号を取り除いた輝度信号と前記色信号とに基づく映像信号を出力するテレビジョン信号処理装置。
【請求項2】
請求項1において,
前記第1の受信状態は,前記テレビジョン信号の電界強度が第1の強度のときであり,前記第2の受信状態は,前記電界強度が前記第1の強度より弱い第2の強度のときであることを特徴とするテレビジョン信号処理装置。
【請求項3】
請求項1において,
前記第1の受信状態は,前記テレビジョン信号受信装置のAGC信号が第1のゲインにする信号のときであり,前記第2の受信状態は,前記AGC信号が前記第1のゲインより大きい第2のゲインにする信号のときであることを特徴とするテレビジョン信号処理装置。
【請求項4】
請求項1において,
前記コンポジット映像信号から抽出された同期信号を入力して,前記同期信号に同期したクロック信号を出力するPLL回路をさらに有し,
前記第1の受信状態は,前記PLL回路の一定時間内におけるロック時間の割合であるロック率が第1のロック率のときであり,前記第2の受信状態は,前記PLL回路のロック率が前記第1のロック率より小さい第2のロック率のときであることを特徴とするテレビジョン信号処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて,
前記信号抽出部は,色信号を抽出する周波数帯域を前記第1の周波数帯域から第2の周波数帯域へ切替える場合には,前記色信号を抽出する周波数帯域と前記受信状態が第1の対応関係を示し,第2の周波数帯域から第1の周波数帯域に切替える場合には,前記色信号を抽出する周波数帯域と前記受信状態が第2の対応関係を示すことを特徴とするテレビジョン信号処理装置。
【請求項6】
テレビジョン信号受信装置が出力するコンポジット映像信号を処理するテレビジョン信号処理方法であって,
前記テレビジョン信号の受信状態が第1の受信状態のときは第1の周波数帯域で,前記第1の受信状態より悪い第2の受信状態のときは前記第1の周波数帯域より狭い第2の周波数帯域で前記コンポジット映像信号から前記色信号を抽出する工程と,
前記コンポジット映像信号から前記色信号を取り除いて輝度信号を抽出する工程と,
前記色信号と前記輝度信号とに基づく映像信号を出力する工程とを有するテレビジョン信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−306173(P2007−306173A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130996(P2006−130996)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】