説明

テレビドアホン装置およびドアホン子機

【課題】親機側に子機接続端子の設定にカメラの有無を設けることなく、不安定な画面が表示されてしまうことを防止することができるテレビドアホン装置およびドアホン子機を提供する。
【解決手段】カメラを有しないカメラ無し子機Yは、通話が開始されると、非映像信号を非同期信号発生器41が送信する。この非映像信号は、カメラ付き子機Xが親機Zへ送信する映像信号とは異なるもので、映像信号に含まれる水平同期信号および垂直同期信号(同期信号)よりも高い周波数の信号である。非映像信号を同期信号より高い周波数の信号とすることで、ノイズが重畳しても周波数が低下することがないので、非映像信号であることを識別することができる。親機Zでは、非映像信号を検知することで、ブルーバック表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、来訪者を撮像するカメラを有しないカメラ無し子機と、このカメラ無し子機およびカメラ付き子機を混在させて接続可能な親機とを備えたテレビドアホン装置に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
玄関先や勝手口などに設置されるドアホン装置の子機として、来訪者を撮像するためのカメラを有するカメラ付き子機と、カメラを有しないカメラ無し子機とがある。これらの子機を混在させる場合がある。例えば、カメラ付き子機はカメラ無し子機より高価なものとなるため、来訪者を判別するためにカメラ付き子機を玄関用として、居住者同士の通話のみができればよいのでカメラ無し子機を勝手口用として設置する場合である。
【0003】
カメラ付き子機では映像表示のための同期信号を含む映像信号が音声信号と共に親機に送信され、カメラ無し子機では映像信号がないため、当然、親機側では映像が表示されない。
【0004】
このようなカメラ付き子機とカメラ無し子機とを組み合わせを許容するテレビドアホン装置について、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のテレビドアホンシステムは、カメラ無しのドアホン子機、またはテレビカメラによって撮影した映像信号を出力するカメラ付きドアホン子機を、映像信号の有無で判定し、カメラ無しのドアホン子機と判定された場合にはテレビモニタが点灯することなく通話がなされるというものである。
【特許文献1】特開2001−285851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のテレビドアホンシステムでは、映像信号の有無を、FM変調信号のキャリアの有無により判定しているので、子機と親機との間の信号に周期的なノイズパルスが重畳した場合では、親機側でキャリア有りと誤認し、ノイズパルスを映像の同期信号としてモニタに何かしらを表示しようとしてしまうおそれがある。そうなるとモニタには、一瞬、明るい画面となり、次には暗くなることを繰り返すような不安定な画面が表示されるので、居住者は子機または親機のいずれかが故障したのではないかと心配するおそれがある。また、カメラ付き子機と親機、およびカメラ無し子機と親機とのインタフェースを共通化するために、子機と親機との間を例えばFM変調信号でやり取りするようにした場合では、カメラ無し子機からの信号でもキャリアが検知されるので、映像信号の有無を、FM変調信号のキャリアの有無だけでは、判定することができない。
【0006】
親機側に子機接続端子の設定にカメラの有無を設けることで、カメラ付き子機とカメラ無し子機とを識別する方法も考えられるが、親機での設定は操作が煩雑であり、居住者が設定を忘れてしまうおそれもある。
【0007】
そこで本発明は、親機側に子機接続端子の設定にカメラの有無を設けることなく、不安定な画面が表示されてしまうことを防止することができるテレビドアホン装置およびドアホン子機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のテレビドアホン装置は、カメラ無し子機が親機へ送信する信号として、カメラ付き子機が親機へ送信する映像信号とは異なる非映像信号を送信し、親機がカメラ付き子機から送信される映像信号およびカメラ無し子機から送信される非映像信号を復調して映像信号の有無を検知し、映像信号が検知されない場合に所定の画面の表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ノイズパルスがカメラ無し子機から送信される非映像信号に重畳しても親機で映像信号として検知されないので、ノイズパルスを同期信号と見なされてしまうことを防止することができる。よって発明は、カメラ無し子機を使用する場合でも、親機側に設定などすることなく、不安定な画面が表示されてしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願の第1の発明は、カメラを有しないカメラ無し子機と、カメラ付き子機またはカメラ無し子機を接続してカメラ映像を表示すると共に通話を行う親機とを備えるテレビドアホン装置であって、カメラ無し子機は、カメラ付き子機が親機へ送信する映像信号とは異なる非映像信号を発生する非映像信号発生手段と、非映像信号発生手段で発生させた非映像信号を親機へ送信する送信手段とを備え、親機は、カメラ付き子機から送信される映像信号およびカメラ無し子機から送信される非映像信号を復調して映像信号の有無を検知する映像信号検知手段と、映像信号検知手段により映像信号が検知されない場合に所定の画面の表示を行う表示手段とを備えたテレビドアホン装置としたことを特徴としたものである。
【0011】
第1の発明によれば、カメラ無し子機の非映像信号発生手段が非映像信号を発生し、送信手段が非映像信号を親機へ送信することにより、親機では、映像信号検知手段により映像信号が検知されない場合に、表示手段が所定の画面の表示を行う。従って、ノイズパルスがカメラ無し子機から送信される非映像信号に重畳しても親機で映像信号として検知されないので、ノイズパルスを同期信号と見なされてしまうことを防止することができる。
【0012】
本願の第2の発明は、第1の発明において、送信手段は、カメラ付き子機が映像信号を送信する変調方式を用いて非映像信号を送信するテレビドアホン装置としたことを特徴としたものである。
【0013】
第2の発明によれば、カメラ無しの子機の送信手段が、カメラ付き子機が映像信号を送信する変調方式を用いて非映像信号を送信するので、親機では複数種類の復調を行わなくてもよい。
【0014】
本願の第3の発明は、第2の発明において、変調方式は、FM変調であるテレビドアホン装置としたことを特徴としたものである。
【0015】
第3の発明によれば、変調方式をFM変調とすることができる。
【0016】
本願の第4の発明は、第1から3のいずれかの発明において、映像信号検知手段は、映像信号または非映像信号における同期信号の有無を検知するテレビドアホン装置としたことを特徴としたものである。
【0017】
第4の発明によれば、映像信号検知手段が映像信号または非映像信号における同期信号の有無を検知することで、カメラ付き子機かカメラ無し子機かを判定することができる。
【0018】
本願の第5の発明は、第1から4のいずれかの発明において、非映像信号発生手段は、映像信号における同期信号の周波数より高い周波数の信号を非映像信号として発生するテレビドアホン装置としたことを特徴としたものである。
【0019】
第5の発明によれば、非映像信号を映像信号における同期信号の周波数より高い周波数とすることで、非映像信号にノイズパルスが重畳しても、同期信号より周波数が高いことは変わらない。従って、非映像信号を映像信号の同期信号の周波数より高いことに基づいて映像信号と非映像信号とを識別すれば、ノイズが重畳しても静止画面を表示させることが可能となる。
【0020】
本願の第6の発明は、第5発明において、非映像信号発生手段は、映像信号における同期信号の電圧レベルより大きな電圧レベルの信号を非映像信号として発生するテレビドアホン装置としたことを特徴としたものである。
【0021】
第6の発明によれば、非映像信号を同期信号の電圧レベルより大きな電圧レベルの信号とすることで、電圧レベルに基づいて映像信号と非映像信号との識別が可能となる。
【0022】
本願の第7の発明は、第1から4のいずれかの発明において、非映像信号発生手段は、映像信号における同期信号の周波数より高い周波数で、同期信号の電圧レベルより大きな電圧レベルの信号を非映像信号として発生するテレビドアホン装置としたことを特徴としたものである。
【0023】
第7の発明によれば、非映像信号を映像信号における同期信号の周波数より高い周波数とすることで、非映像信号にノイズパルスが重畳しても、同期信号より周波数が高いことは変わらない。従って、非映像信号を映像信号の同期信号の周波数より高いことに基づいて映像信号と非映像信号とを識別すれば、ノイズが重畳しても静止画面を表示させることが可能となる。また、電圧レベルに基づいて映像信号と非映像信号とを識別すれば、より確実に識別することが可能となる。
【0024】
本願の第8の発明は、第1から第7のいずれかの発明において、親機は、カメラ無し子機からの呼び出しを検出すると通話終了まで該カメラ無し子機へカメラ用の給電を行う給電手段を備え、カメラ無し子機の非映像信号発生手段は、親機の給電手段から給電されている間、非映像信号を発生するテレビドアホン装置としたことを特徴としたものである。
【0025】
第8の発明によれば、カメラ無し子機の非映像信号発生手段は、親機の給電手段から給電されている間、非映像信号を発生することができる。従って、カメラ無し子機は、カメラの代わりに非映像信号発生手段を設けることで、非映像信号をカメラ付き子機が送信する映像信号と同じタイミングとすることができるので、親機の回路を共通化することができる。
【0026】
本願の第9の発明は、第1から第8のいずれかの発明において、親機は、着信時または通話時において、映像信号検知手段により映像信号が検知された場合は相手がカメラ付き子機と判定し、映像信号検知手段により映像信号が検知されない場合は相手がカメラ無し子機と判定するテレビドアホン装置としたことを特徴としたものである。
【0027】
第9の発明によれば、映像信号検知手段により相手をカメラ無し子機と判定することで、特別に用意した画像等の所定の静止画面の表示を行うことができる。
【0028】
本願の第10の発明は、第1から第9のいずれかの発明において、映像信号検知手段には、復調された映像信号を通過させる高周波カット回路が設けられ、非映像信号発生手段は、非映像信号として高周波カット回路を通過できない高周波数の信号を発生するテレビドアホン装置としたことを特徴としたものである。
【0029】
第10の発明によれば、カメラ無し子機から送信される非映像信号を親機の映像信号検知手段に設けられた高周波カット回路を通過できない高周波数の信号とすることで、非映像信号はノイズとして扱われるので、既存のノイズフィルタを備えた親機を変更することなく使用することができる。
【0030】
本願の第11の発明は、カメラ付き子機からのカメラの映像信号を復調して映像信号の有無を検知し、映像信号が検知されない場合に所定の画面を表示する親機を備えるテレビドアホン装置に接続可能なドアホン子機であって、カメラ付き子機が親機へ送信する映像信号とは異なる信号を発生する非映像信号発生手段と、非映像信号発生手段で発生させた非映像信号を親機へ送信する送信手段とを具備するドアホン子機としたことを特徴としたものである。
【0031】
第11の発明によれば、カメラ無し子機の非映像信号発生手段が非映像信号を発生し、送信手段が非映像信号を親機へ送信することにより、親機では、映像信号検知手段により映像信号が検知されない場合に、表示手段が所定の画面の表示を行う。従って、ノイズパルスがカメラ無し子機から送信される非映像信号に重畳しても親機で映像信号とは検知されないので、ノイズパルスを同期信号と見なしてしまうことを防止することができる。
【0032】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係るテレビドアホン装置を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1は本発明の実施の形態に係るテレビドアホン装置の構成を示す図である。図1に示すテレビドアホン装置Tは、玄関に設置されることでカメラ玄関子機として機能するカメラ付き子機Xと、勝手口に設置されることで音声勝手口子機として機能するカメラ無し子機Yと、カメラ付き子機Xおよびカメラ無し子機Yと2線式の平行ケーブルにより接続された親機Zとを備えている。
【0034】
次に、カメラ付き子機X、カメラ無し子機Yおよび親機Zの構成について説明する。最初に、カメラ付き子機Xの構成について、図2に基づいて詳細に説明する。図2は図1に示すテレビドアホン装置のカメラ付き子機の構成を示すブロック図である。図2に示すカメラ付き子機Xは、撮像部1と、通話部2と、制御部3とを備えている。
【0035】
撮像部1は、カメラユニット1aが設けられ、映像信号としてコンポジットビデオ信号を制御部3へ出力する。カメラユニット1aは、固体撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などが使用できる。
【0036】
通話部2は、来訪者が親機Zを操作する居住者と通話するためのもので、呼出ボタン21と、マイク22と、スピーカ23とが設けられている。呼出ボタン21は、来訪者が居住者を呼び出す際に押下するノンロックスイッチである。マイク22は、会話の音声を音声信号として音声回路34へ出力するものである。スピーカ23は音声回路34からの呼び出し音に対するバックトーンを出力したり、居住者の音声を出力したりするものである。
【0037】
制御部3は、FM変調回路31と、電源回路32と、制御回路33と、音声回路34と、重畳分離回路35とを備えている。
【0038】
FM変調回路31は、撮像部1からの映像信号であるコンポジットビデオ信号を変調してFM信号を重畳分離回路35に出力する。電源回路32は、親機Zからの電源供給を受け、撮像部1を含む各部の回路へ動作電源をそれぞれ供給するものである。制御回路33は、呼出ボタン21の押下を親機Zへ通知したり、親機Zからの撮像開始の指示や、輝度調整の指示などの制御信号を受信して撮像部1のカメラユニット1aを調整したりするものである。音声回路34は、マイク22の音声信号を増幅して重畳分離回路35へ出力したり、重畳分離回路35からの音声信号を増幅してスピーカ23へ出力したりするものである。重畳分離回路35は、FM変調回路31からの映像信号と、音声回路34からの音声信号を重畳して親機Zへ送信する送信手段として機能する。また、重畳分離回路35は、親機Zからの信号を、制御信号と音声信号と電源供給とに分離し、制御信号を制御回路33へ、音声信号を音声回路34へ、電源を電源回路32へ出力する。
【0039】
次に、カメラ無し子機Yの構成について、図3に基づいて詳細に説明する。図3は図1に示すテレビドアホン装置のカメラ無し子機の構成を示すブロック図である。また、図4はカメラ無し子機の信号生成部から出力される非映像信号を示す波形図である。なお、図3においては、図2と同じ機能を有するものは同符号を付し、説明は省略する。
【0040】
図3に示すカメラ無し子機Yには、カメラ有り子機信Xの撮像部1の代わりに、非映像信号発生手段として機能する信号生成部4が設けられている。この信号生成部4は、図4に示すような振幅の大きさが1V、パルス幅が2μs、周波数500kHzの矩形波を非映像信号として生成する非同期信号発生器41を備えている。この信号生成部4から出力される非映像信号は、カメラ付き子機信Xの撮像部から出力される映像信号と同様に、FM変調回路31に出力され変調される。
【0041】
次に、カメラ付き子機Xおよびカメラ無し子機Y(以下、カメラ付き子機Xおよびカメラ無し子機Yを、単に子機X,Yと称する場合がある。)に接続される親機Zの構成について、図5に基づいて詳細に説明する。図5は図1に示すテレビドアホン装置の親機の構成を示すブロック図である。
【0042】
図5に示す親機Zは、重畳分離回路5と、給電回路6と、通話部7と、音声回路8と、制御回路9と、映像復調回路10と、高周波カット回路11と、同期分離回路12と、同期信号検知回路13と、映像信号処理回路14と、ブルーバック映像生成回路15と、ブルーバック切換回路16と、表示部17とを備えている。なお、図5においては、カメラ付き子機X,カメラ無し子機Yを接続する子機接続端子およびインタフェース部は図示していない。
【0043】
重畳分離回路5は、給電回路6からの給電に、音声回路8からの音声信号を重畳して子機X,Yへ送信する。また、重畳分離回路5は、子機X,Yからの信号を、制御信号と、音声信号と、映像信号または非映像信号とに分離し、制御信号を制御回路9へ、音声信号を音声回路8へ、映像信号を高周波カット回路10および映像信号処理回路13へ出力する。
【0044】
給電回路6は、親機Z全体に電源を供給すると共に、子機X,Yへの電源を供給する給電手段として機能するものである。本実施の形態では、給電回路6はアイドル中に+5Vを出力し、制御回路9からの通話開始の通知により通話終了までカメラ用として+20Vを出力する。通話部7は、来訪者や居住者同士での会話に使用され、マイク71と、スピーカ72と、通話ボタン73とを備えている。
【0045】
マイク71は、親機Zを使用する居住者の音声を音声信号として音声回路8へ出力する。スピーカ72は、来訪者を告げる呼出音を鳴動したり、来訪者の音声を出力したりする。通話ボタン73は、押下することで子機X,Yとの通話開始を通知するノンロックスイッチである。
【0046】
音声回路8は、マイク71からの音声信号を増幅して重畳分離回路5へ出力したり、子機X,Yからの音声信号を増幅してスピーカ72へ出力したりする。制御回路9は、子機X,Yからの通話開始や、通話終了を給電回路6へ通知したり、表示部17の輝度を調整したり、子機X,Yへ輝度調整のための制御信号を出力したりする。
【0047】
映像復調回路10は、FM変調された映像信号または非映像信号をコンポジットビデオ信号へ復調する。高周波カット回路11は、復調された信号の高周波成分を除去する回路である。本実施の形態では、高周波カット回路11は200kHz以上の高周波を除去する機能を備えている。
【0048】
同期分離回路12は、コンポジットビデオ信号から水平同期信号および垂直同期信号を分離する機能を備えている、同期信号検知回路13は、水平同期信号が出力されているか否かで同期信号の有無を判定する回路である。映像復調回路10と高周波カット回路11と同期分離回路12と同期信号検知回路13とで、映像信号検知手段として機能している。
【0049】
映像信号処理回路14は、コンポジットビデオ信号から表示部17が表示可能な輝度信号と色信号とに分離処理すると共に、同期分離回路12が分離した水平同期信号および垂直同期信号に基づいてタイミング信号を生成する回路である。
【0050】
ブルーバック映像生成回路15は、画面全体が単色の静止画面を生成する回路である。本実施の形態では、ブルーバック画面と称される青色画面を生成する。
【0051】
ブルーバック切換回路16は、同期信号検知回路13からの通知に基づいて、映像信号処理回路14からの出力、またはブルーバック映像生成回路15からの出力のいずれかを切り換えて表示部17へ出力する回路で、映像信号が検知されない場合に所定の画面の表示を行う表示手段として機能するものである。
【0052】
表示部17は、ブルーバック切換回路16からの信号により表示するLCD(Liquid Crystal Display)である。
【0053】
以上のように構成される本発明の実施の形態に係るテレビドアホン装置の動作および使用状態を、図面に基づいて説明する。
【0054】
(カメラ付き子機Xの場合)
まずは、カメラ付き子機Xの場合を説明する。来訪者が呼出ボタン21を押下する。呼出ボタン21が押下されたことで、制御回路33は親機Zへ通話開始の通知を重畳分離回路35を介して送信する。
【0055】
親機Zでは、重畳分離回路5を介して制御回路9が受信すると、給電回路6へ通知すると共に、表示部17を表示可能な状態とする。給電回路6は、供給する電圧を+5Vからカメラ用の電圧である+20Vへ昇圧する。制御回路9は、音声回路8を介してスピーカ72から呼出音を鳴動させると共に、バックトーンをカメラ付き子機Xへ送信する。また、居住者がマイク71に向かって発した音声は、音声回路8により音声信号として重畳分離回路5へ出力され、給電に重畳されてカメラ付き子機Xへ送信される。
【0056】
カメラ付き子機Xでは、バックトーンや居住者の音声として親機Xから送信された音声信号を重畳分離回路35が給電から分離して音声回路34へ出力する。音声回路34は音声信号を増幅してスピーカ23から出力する。電源回路32はカメラ用の電源を撮像部1へ供給する。撮像部1は、電源が供給されることで起動され、カメラユニット1aからコンポジットビデオ信号である映像信号をFM変調回路31へ出力する。
【0057】
ここで、映像信号について、図6(A)および同図(B)に基づいて説明する。図6(A)は映像信号であるコンポジットビデオ信号の水平同期信号波形を示す図、図6(B)は映像信号であるコンポジットビデオ信号の垂直同期信号波形を示す図である。本実施の形態では、図6に示すような映像信号がカメラユニット1aから出力される。映像信号は、水平同期信号が15.734kHzのパルス幅10.2μs,電圧レベル286mV(0〜−40IRE)、垂直同期信号が59.94Hzのパルス幅4.7μs,電圧レベル286mV(0〜−40IRE)、カラーバーストが3.579545MHz,電圧レベル286mV(20〜−20IRE)である。このような映像信号を入力したFM変調回路31はFM変調して重畳分離回路35へ出力する。
【0058】
来訪者がマイク22に向かって発した音声は、音声回路34により音声信号として重畳分離回路35へ出力され、FM変調回路31からの映像信号に重畳されて、親機Zへ送信される。
【0059】
親機Zでは、重畳分離回路5を介して受信した映像信号は、映像復調回路10によりコンポジットビデオ信号に変換される。そして、コンポジットビデオ信号は高周波カット回路11にてノイズパルス成分が除去された後、同期分離回路12にて水平同期信号および垂直同期信号が分離される。また、コンポジットビデオ信号は、映像信号処理回路14へ入力され、輝度信号と色信号とタイミング信号とを出力する。
【0060】
同期分離回路12にてコンポジットビデオ信号から水平同期信号が分離されることで、同期信号検知回路13は同期信号が有りと判定してブルーバック切換回路16へ通知する。ブルーバック切換回路16は、同期信号検知回路13からの通知により映像信号処理回路14からの信号を選択して表示部17へ出力する。表示部17はブルーバック切換回路16からの信号に基づいて来訪者の映像を表示する。
【0061】
(カメラ無し子機Yの場合)
次に、勝手口に設置されたカメラ無し子機Yの場合について説明する。勝手口にいる居住者が呼出ボタン21を押下し、この押下がカメラ無し子機Yから親機Zへ通知され、親機Zからカメラ用の電源が供給され、勝手口の居住者と居間の居住者とが通話する動作についてはカメラ付き子機Xの場合と同じである。
【0062】
カメラ無し子機Yの場合には、電源回路32からの給電により信号生成部4の非同期信号発生器41が非映像信号を発生してFM変調回路31へ出力する点で、カメラ付き子機Xと異なっている。
【0063】
非映像信号は、FM変調回路31によりFM変調され、重畳分離回路35により音声信号と重畳されて親機Zへ送信される。
【0064】
親機Zでは、重畳分離回路5を介して受信したカメラ無し子機Yからの非映像信号は、映像復調回路10が復調して高周波カット回路11へ出力される。非映像信号は500kHzの矩形波であるため、200kHz以上の高周波は通過させない高周波カット回路11により除去される。従って、高周波カット回路11からの出力は無信号となるので、同期分離回路12からの出力は同様に無信号状態である。つまり、同期分離回路12からの同期信号は、水平同期信号または垂直同期信号のいずれもが分離できない状態である。
【0065】
同期信号検知回路13は、無信号の入力により非同期信号であることを検知してブルーバック切換回路16へブルーバック映像生成回路15からの出力を選択するように指示する。ブルーバック切換回路16は、ブルーバック映像生成回路15からの出力を選択することで表示部17には表示画面の全体が青色一色の静止画像が表示される。
【0066】
例えば、従来のカメラ無し子機では、親機Zに対して映像信号が出力されなかったため、周期的なノイズパルスが信号に重畳してしまうと(図7(A)参照)、同期分離回路12によりノイズパルスを垂直同期信号または水平同期信号と誤認してパルスを出力してしまうことがある(図7(B)参照)。この誤認された同期信号により表示部17には一瞬、画面が明るくなってすぐ消えるような不安定な表示となる。
【0067】
本実施の形態に係るカメラ無し子機Yでは、カメラ無し子機Yからは非映像信号として、映像信号とは異なる500kHzの矩形波を発生しているので、カメラ無し子機Yと親機Zとの間の信号に周期的なノイズが重畳したとしても、周波数が500kHzから低下することはない(図7(C)参照)。従って、高周波カット回路11にて映像信号より高周波な非映像信号の全部を除去することができる(図7(D)参照)。つまり、カメラ無し子機Yから送信される非映像信号は親機Zの高周波カット回路11を通過できない高周波数の信号とし、ノイズとして扱われる。従って、同期信号検知回路13が水平同期信号の有無を検知することで、ノイズがカメラ無し子機Yと親機Zとの間の信号に重畳しても、確実にカメラ無し子機Yを識別することができ、既存のノイズフィルタを備えた親機Zを変更することなく使用することができる。
【0068】
居住者同士の会話が終了すると、居間にいる居住者は通話ボタン73を押下することで、制御回路9はカメラ無し子機Yおよび給電回路6へ通話終了を通知する。給電回路6はカメラ用の電圧+20Vから+5Vへ電圧を低下させる。
【0069】
カメラ無し子機Yでは、親機Zからの通話終了の通知および電圧の低下により非同期信号発生器41が非映像信号の生成を停止する。
【0070】
カメラ無し子機Yの非同期信号発生器41は、親機Zの給電回路6から給電されている間、非映像信号を発生することができる。従って、カメラ無し子機Yは、カメラ付き子機Xのカメラユニット1aの代わりに非同期信号発生器41を設けることで、非映像信号をカメラ付き子機Xが送信する映像信号と同じタイミングとすることができるので、親機Zの回路を共通化することができる。
【0071】
このように、カメラ無し子機Yが、非同期信号発生器41が、水平同期信号や水平同期信号より周波数の高い非映像信号を発生して親機Zへ送信することにより、ノイズが重畳しても親機Zでは確実にカメラ付き子機Xとカメラ無し子機Yと識別してブルーバックの静止画面を表示することができるので、親機Z側に設定などすることなく、不安定な画面が表示されてしまうことを防止することができる。
【0072】
また、非映像信号は、カメラ付き子機Xが映像信号を送信するときと同じFM変調で親機Zに送信されるので、親機Zでは複数種類の復調を行わなくてもよい。
【0073】
なお、本実施の形態では、同期信号検知回路13は水平同期信号に基づいて判定しているが、垂直同期信号に基づいて判定するようにしてもよい。また、非映像信号を同期信号による判定でなく、電圧レベルでの判定としてもよい。
【0074】
本実施の形態では、水平同期信号が検知できない場合に、所定の画面としてブルーバックの静止画面を表示部17に表示するようにしているが、これは表示回路においては同期信号を検知しないとブルーバック表示するものが一般的であることによるもので、ブルーバックの代わりに、同期信号を検知できない場合はカメラ無し子機であると判定して、メモリ等に記憶させておいた「カメラ無し子機と通話中」などのメッセージを含む特別に用意した画像を表示するようにしてもよい。また、カメラ無し子機と判定することによりカメラ付き子機の場合と異なる動作をさせることも可能である。
【0075】
更に、本実施の形態では、非映像信号として500kHzの矩形波を、非同期信号発生器41が発生しているが、正弦波でも異形波でも、同期信号より高周波であればよい。また、親機Zの同期分離回路12にて同期信号として分離されなければ、非映像信号は周期が変動する非同期信号でもよい。しかし、生成しやすい点を考慮するとデューティが50%の矩形波とするのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、親機側に子機接続端子の設定にカメラの有無を設けることなく、不安定な画面が表示されてしまうことを防止することができるので、来訪者を撮像するカメラを有しないカメラ無し子機と、このカメラ無し子機およびカメラ付き子機を混在させて接続可能な親機とを備えたテレビドアホン装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態に係るテレビドアホン装置の構成を示す図
【図2】図1に示すテレビドアホン装置のカメラ付き子機の構成を示すブロック図
【図3】図1に示すテレビドアホン装置のカメラ無し子機の構成を示すブロック図
【図4】カメラ無し子機の信号生成部から出力される非映像信号を示す波形図
【図5】図1に示すテレビドアホン装置の親機の構成を示すブロック図
【図6】(A)映像信号であるコンポジットビデオ信号の水平同期信号波形を示す図、(B)映像信号であるコンポジットビデオ信号の垂直同期信号波形を示す図
【図7】(A)従来のカメラ無し子機の動作を説明するための波形図(入力)、(B)従来のカメラ無し子機の動作を説明するための波形図(出力)、(C)本実施の形態に係るカメラ無し子機の動作を説明するための波形図(入力)、(D)本実施の形態に係るカメラ無し子機の動作を説明するための波形図(出力)
【符号の説明】
【0078】
T テレビドアホン装置
X カメラ付き子機
Y カメラ無し子機
1 撮像部
1a カメラユニット
2 通話部
21 呼出ボタン
22 マイク
23 スピーカ
3 制御部
31 FM変調回路
32 電源回路
33 制御回路
34 音声回路
35 重畳分離回路
4 信号生成部
41 非同期信号発生器
Z 親機
5 重畳分離回路
6 給電回路
7 通話部
71 マイク
72 スピーカ
73 通話ボタン
8 音声回路
9 制御回路
10 映像復調回路
11 高周波カット回路
12 同期分離回路
13 同期信号検知回路
14 映像信号処理回路
15 ブルーバック映像生成回路
16 ブルーバック切換回路
17 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを有しないカメラ無し子機と、カメラ付き子機または前記カメラ無し子機を接続してカメラ映像を表示すると共に通話を行う親機とを備えるテレビドアホン装置であって、
前記カメラ無し子機は、前記カメラ付き子機が前記親機へ送信する映像信号とは異なる非映像信号を発生する非映像信号発生手段と、前記非映像信号発生手段で発生させた非映像信号を前記親機へ送信する送信手段とを備え、
前記親機は、前記カメラ付き子機から送信される映像信号および前記カメラ無し子機から送信される非映像信号を復調して映像信号の有無を検知する映像信号検知手段と、前記映像信号検知手段により映像信号が検知されない場合に所定の画面の表示を行う表示手段とを備えたことを特徴とするテレビドアホン装置。
【請求項2】
前記送信手段は、前記カメラ付き子機が映像信号を送信する変調方式を用いて前記非映像信号を送信することを特徴とする請求項1記載のテレビドアホン装置。
【請求項3】
前記変調方式は、FM変調であることを特徴とする請求項2記載のテレビドアホン装置。
【請求項4】
前記映像信号検知手段は、前記映像信号または前記非映像信号における同期信号の有無を検知することを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載のテレビドアホン装置。
【請求項5】
前記非映像信号発生手段は、前記映像信号における同期信号の周波数より高い周波数の信号を非映像信号として発生することを特徴とする請求項1から4のいずれかの項に記載のテレビドアホン装置。
【請求項6】
前記非映像信号発生手段は、前記映像信号における同期信号の電圧レベルより大きな電圧レベルの信号を非映像信号として発生することを特徴とする請求項5記載のテレビドアホン装置。
【請求項7】
前記非映像信号発生手段は、前記映像信号における同期信号の周波数より高い周波数で、前記同期信号の電圧レベルより大きな電圧レベルの信号を非映像信号として発生することを特徴とする請求項1から4のいずれかの項に記載のテレビドアホン装置。
【請求項8】
前記親機は、前記カメラ無し子機からの呼び出しを検出すると通話終了まで該カメラ無し子機へカメラ用の給電を行う給電手段を備え、前記カメラ無し子機の前記非映像信号発生手段は、前記親機の前記給電手段から給電されている間、前記非映像信号を発生することを特徴とする請求項1から7のいずれかの項に記載のテレビドアホン装置。
【請求項9】
前記親機は、着信時または通話時において、前記映像信号検知手段により映像信号が検知された場合は相手がカメラ付き子機と判定し、前記映像信号検知手段により映像信号が検知されない場合は相手がカメラ無し子機と判定することを特徴とする請求項1から8のいずれかの項に記載のテレビドアホン装置。
【請求項10】
前記映像信号検知手段には、復調された映像信号を通過させる高周波カット回路が設けられ、
前記非映像信号発生手段は、非映像信号として前記高周波カット回路を通過できない高周波の信号を発生することを特徴とする請求項1から9のいずれかの項に記載のテレビドアホン装置。
【請求項11】
前記カメラ付き子機からのカメラの映像信号を復調して映像信号の有無を検知し、映像信号が検知されない場合に所定の画面を表示する親機を備えるテレビドアホン装置に接続可能なドアホン子機であって、
前記カメラ付き子機が前記親機へ送信する映像信号とは異なる信号を発生する非映像信号発生手段と、前記非映像信号発生手段で発生させた非映像信号を前記親機へ送信する送信手段とを具備することを特徴とするドアホン子機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−220153(P2010−220153A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67430(P2009−67430)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】