説明

テレビ受信機のアンテナ

【課題】複数のアンテナを搭載した小型のテレビ受信機において、デジタルテレビ放送をダイバーシティで受信する場合、アンテナ間の距離が近くなることで、アンテナの電波受信特性が劣化する。
【解決手段】テレビ受信機301の筐体上部背面において、各々が遠ざかるように水平に外方向へ伸ばした後、垂直に上方向に折り曲げ、さらに水平に内方向へ戻るように構成したアンテナ302および302’を左右対称に2対備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルテレビ放送を受信するテレビ受信機のアンテナの形状に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地上デジタルテレビ放送の開始にともない、2011年7月24日には、現行の地上アナログテレビ放送が終了する予定である。そのため、地上デジタルテレビ放送に対応したテレビ受信機の需要が拡大している。
このようなテレビ受信機には、大画面の据え置きタイプのものだけではなく、携帯電話や車載テレビ、ポータブルテレビなどに代表される小型のポータブルタイプのものがある。
ポータブルタイプのテレビ受信機は、どこにでも持ち運べることが前提となるため、そのアンテナも据え置きタイプのものとは異なる。
据え置きタイプのテレビ受信機では、屋根の上などに設置されたUHF(Ultra High Frequency)アンテナを使って受信する。このとき、前記据え置きタイプのテレビ受信機は、前記UHFアンテナとつながっている宅内のアンテナコンセントに同軸ケーブルで接続して地上デジタルテレビ放送を受信する。
【0003】
一方、ポータブルタイプのテレビ受信機では、テレビ受信機自体にアンテナを取り付け、地上デジタルテレビ放送を直接受信する。
このように、テレビ受信機自体に取り付けたアンテナを使って地上デジタルテレビ放送を直接受信するためには、通常、アンテナを1本使って受信する方法がある。さらに受信感度を向上させ、高品質に受信するためには、複数のアンテナを使って受信した信号を合成する「ダイバーシティ」という受信方法がある。
ダイバーシティの受信方法(ダイバーシティ方式による受信方法)では、複数のアンテナをテレビ受信機の筐体に取り付けなければならない。そのため、複数のアンテナをどう配置するかに関しては、様々な技術がある(例えば、特許文献1参照)。
図1に、特許文献1に開示されている従来のマイクロ波帯の無線送受信装置101の概略構成図を示す。図1に示すように、無線送受信装置101の筐体の取っ手104の内部に、2本の直線型のアンテナ102、102‘が収納されている。このようにアンテナを配置することにより、美観的にすっきりとした構成にすることができる。
【特許文献1】特開2002−261646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のアンテナの配置方法を、小型のポータブルタイプのテレビ受信機に適用した場合、新たな課題が生じる。
通常、アンテナの長さは、受信する電波の波長をλ[m]とすると、λ/4[m]となる。例えば、マイクロ波を受信する場合、その波長λを12.5[cm]とすると、アンテナ長は、約3[cm]となる。
一方、地上デジタルテレビ放送を受信する場合、その波長λを約50[cm]とすると、アンテナ長は、約12.5[cm]となる。
このように、地上デジタルテレビ放送を受信する場合、従来例と比較してアンテナ長が長くなる。そのため、ダイバーシティで受信する場合、従来例のように、2本のアンテナを垂直に立てると、アンテナの突出により、垂直方向に大きくなり、小型のポータブルタイプの筐体に適用することが困難となる。
【0005】
また、図2に示すように、従来例の2本のアンテナを途中で折り曲げたとしても、小型の筐体の場合、2本のアンテナ202と202‘の先端間の距離が近づき、アンテナ間の結合が生じる。その結果、個々のアンテナの受信特性が劣化する恐れがある。
以下、アンテナ間の結合に関して、説明する。
アンテナで電波を受信する際、アンテナの周囲の電界により、アンテナ素子とグラウンドに電荷が生じ、アンテナに電流が流れる。しかし、アンテナの近傍に他の金属物がある場合、当該他の金属物にも電荷が発生する。このため、アンテナの周囲に金属物がない場合と比較し、電界によって生じる電流が異なったものとなり、アンテナの受信特性が劣化してしまう。
これは、アンテナと他の金属が結合している例であるが、他の金属物がアンテナの場合、アンテナ間で結合が発生してしまう。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するもので、2本のアンテナの先端の距離を離すようにして、2本のアンテナを構成する。これにより、2本のアンテナの受信特性を劣化させることなく、小型のポータブルタイプのテレビ受信機に適用できるアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために、本発明のテレビ受信機のアンテナは、テレビ受信機の筐体上部背面において、一旦、各々が遠ざかるように水平に伸ばした後、垂直に上方向に折り曲げ、さらに各々が近づくように水平に戻るように構成したものを左右対称に2対備える。
この構成により、2対のアンテナの先端間の距離が離れ、アンテナ間の結合を回避しつつ、垂直方向に対して小型化できる。
なお、「垂直方向」とは、テレビ受信機の映像画面の垂直方向(映像画面における水平走査方向と直交する方向)と略平行な方向を含む概念である。
また、「水平」(「水平方向」)とは、テレビ受信機の映像画面の水平方向(映像画面における水平走査方向)と略平行な方向を含む概念である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のテレビ受信機のアンテナは、小型のポータブルタイプのテレビ受信機でデジタルテレビ放送をダイバーシティで受信する際に問題となるアンテナ間の結合を回避するとともに、垂直方向に対して小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図3に、本発明の実施の形態1におけるテレビ受信機301を示す。以下、地上デジタルテレビ放送を受信するテレビ受信機301のアンテナ302、302‘について説明する。
テレビ受信機301は、地上デジタルテレビ放送の受信感度を向上させ、高品質に受信するために、2本のアンテナ302、302’を備え、それぞれのアンテナ302、302’で受信した地上デジタルテレビ放送信号をダイバーシティにより合成する。
アンテナ302、302’で受信した放送信号は、地上デジタルテレビ放送の信号であり、その周波数帯域は、470[MHz]〜770[MHz]である。この周波数帯の中間周波数である620[MHz]から、波長λ[m]は、約50[cm]となる。このとき、アンテナ302、302’の長さは、λ/4=12.5[cm]となる。
【0010】
図3に示すように、アンテナ302、302’は、テレビ受信機301の筐体上部背面において、一旦、各々が遠ざかるように水平に伸ばした後、垂直に上方向に折り曲げ、さらに各々が近づくように水平に戻るように構成したものを左右対称に2対備える。
ところで、アンテナ302、302’の電波受信特性を評価する指標の一つとして、「平均アンテナ利得」がある。これは、地上デジタルテレビ放送の送信局のアンテナが電波を輻射する偏波面内で、アンテナ302、302’の角度を変化させて、各角度におけるアンテナ利得を平均化したものである。
ここで、アンテナ302と302’の先端間の距離dが近づきすぎると、アンテナ302と302’間の結合により、平均アンテナ利得が悪化する。
以下に、アンテナ間の結合に関して、説明する。
【0011】
アンテナ302で電波を受信する際、アンテナ302の周囲の電界により、アンテナ302とグラウンドに電荷が生じ、アンテナ302に電流が流れる。しかし、アンテナ302の近傍に他のアンテナ302’がある場合、他のアンテナ302’にも電荷が発生する。このため、アンテナ302の周囲に他のアンテナ302’がない場合と比較し、電界によって生じる電流が異なったものとなり、アンテナ302の受信特性が劣化してしまう。これは、一方のアンテナ302’の受信特性の劣化にもつながる。
このような相互干渉のため、アンテナ302と302’の先端間は、上記結合が生じない程度に離す必要がある。
一例として、縦約200[mm]×横約255[mm]×高さ約40[mm]の導電性の筐体を想定した場合、図4に示すように、アンテナ302、302’の先端間の距離dを25[mm]以上とすると、アンテナ302と302’間の結合による受信特性の劣化が生じないことが明らかになっている。
【0012】
そのため、距離dは、25[mm]以上となるように、アンテナ302、302’の先端間を離すと良い。
アンテナ302、302’で受信した放送信号は、整合回路部305、305’で、アンテナ302、302’と、以降で説明するチューナ部307と、のインピーダンスの整合をとり、放送信号の反射を回避する。
整合回路部305、305’を経由した放送信号は、破線の矢印で示すように、同軸線などの伝送線路を通る。その後、放送信号は、アンテナ302、302’、および整合回路部305、305’を収納するアンテナ収納部304(取っ手)とテレビ受信機301の筐体を接続するヒンジ部303から筐体内のチューナ部307に入る。ヒンジ部303内には、固定棒306があり、アンテナ収納部304を筐体に取り付けるとともに、アンテナ収納部304を回転させることができる。
【0013】
チューナ部307では、地上波デジタルテレビ放送のMPEG2−TS信号を映像データに復号化する。その後、復号化された映像データは、デジタル−アナログ変換等の処理をした後、筐体内の表示パネルに出力され、表示パネルに映像が表示される。
また、整合回路部305、305’の大きさにより、アンテナ収納部の形状を図5に示すように変えることもできる。
さらに、アンテナ302と302’の長さを変える場合には、ヒンジ部303を水平方向に大きくすることによって対応できる。例えば、図6に示すように、ヒンジ部603を水平方向に大きくすることで、アンテナ602と602’を図3の場合のアンテナ302、302’と比較して短くすることができる。
なお、整合回路部305、305’、505、505’、605、605’の整合回路を経由した後(整流回路の後段)にLNA(Low Noise Amplifier)を搭載することで、放送信号が増幅され、さらに高感度で受信することもできる。
【0014】
このように、テレビ受信機301において、アンテナ302と302’、502と502’、602と602’を構成することで、アンテナ間の結合を回避しつつ、垂直方向に対して小型化できる。
(実施の形態2)
図7に、本発明の実施の形態2におけるテレビ受信機701を示す。以下、地上デジタルテレビ放送を受信するテレビ受信機701のアンテナについて説明する。なお、図7に示すように、x軸、y軸およびz軸を設定する。
テレビ受信機701は、地上デジタルテレビ放送の受信感度を向上させ、高品質に受信するために、2本のアンテナ702、702’を備え、それぞれのアンテナ702、702’で受信した地上デジタルテレビ放送信号をダイバーシティにより合成する。
【0015】
図7に示すように、アンテナ702、702’は、テレビ受信機701の筐体上部背面に対して、直角に外方向(z軸正方向)へ伸ばした後、垂直に上方向(y軸正方向)に折り曲げ、さらに各々が近づくように水平に内方向へ(アンテナ702についてはx軸正方向へ、アンテナ702’についてはx軸負方向へ)戻るように構成したものを左右対称に2対備える。
本実施形態のテレビ受信機701においても、実施の形態1と同様に、アンテナ702と702’の結合による電波受信特性の劣化を回避させるために、アンテナ702と702’の先端間の距離dを25[mm]以上とする。
アンテナ702、702’で受信した放送信号は、整合回路部705、705’で、アンテナ302、302’と以降で説明するチューナ部707とのインピーダンスの整合をとり、放送信号の反射を回避する。
【0016】
整合回路部705、705’を経由した放送信号は、破線の矢印で示すように、同軸線などの伝送線路を通る。その後、放送信号は、アンテナ702、702’、および整合回路部705、705’を収納するアンテナ収納部(取っ手)704とテレビ受信機701の筐体を接続するヒンジ部703から筐体内のチューナ部707に入る。ヒンジ部703内には、固定棒706があり、アンテナ収納部704をテレビ受信機701の筐体に取り付けるとともに、アンテナ収納部704をヒンジ部703により回転させることができる。
なお、テレビ受信機701において、整合回路部705、705’の整合回路を経由した後にLNA(Low Noise Amplifier)を搭載することで、放送信号が増幅され、さらに高感度で受信することもできる。
【0017】
また、実施の形態1で説明したように、整合回路部705、705’の大きさにより、アンテナ収納部の形状を図5に示したように変えることもできる。さらに、アンテナ702と702’の長さを変える場合には、図5に示したように、ヒンジ部703を水平方向に大きくすることによって対応できる。
このように、テレビ受信機701において、アンテナ702と702’を構成することで、アンテナ間の結合を回避しつつ、垂直方向に対して小型化できる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明にかかるテレビ受信機のアンテナは、どこにでも持ち運んで視聴するような車載やポータブルタイプのテレビ受信機に適用できる。また、アンテナを搭載した据え置きタイプのテレビ受信機にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来例のアンテナの形状と配置を示す図
【図2】従来例のアンテナを折り曲げて配置した例を示す図
【図3】本発明の実施の形態1におけるテレビ受信機のアンテナの形状と配置を示す図
【図4】アンテナ先端間の距離と平均アンテナ利得の関係を示す図
【図5】本発明の実施の形態1におけるテレビ受信機のアンテナ収納部の形状を変えた例を示す図
【図6】本発明の実施の形態1におけるヒンジ部の大きさを変えた例を示す図
【図7】本発明の実施の形態2におけるテレビ受信機のアンテナの形状と配置を示す図
【符号の説明】
【0020】
101 従来例の無線送受信装置
102、102’ 従来例のアンテナ
103、103’ 従来例のヒンジ部
104 従来例のアンテナ収納部(取っ手)
201 従来例の無線送受信装置
202、202’ 従来例のアンテナを折り曲げたアンテナ
203、203’ 従来例のヒンジ部
204 従来例のアンテナ収納部(取っ手)
301、501、601、701 本発明におけるテレビ受信機
302、302’、502、502’、602、602’、702、702’ 本発明におけるアンテナ
303、503、603、703 本発明におけるヒンジ部
304、504、604、704 本発明におけるアンテナ収納部(取っ手)
305、305’、505、505’、605、605’、705、705’ 本発明における整合回路部
306、506、606、706 本発明におけるヒンジ部内の固定棒
307、507、607、707 本発明におけるチューナ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルテレビ放送を受信するテレビ受信機のアンテナであって、
前記アンテナを取り付けるテレビ受信機の筐体背面において、一旦、各々が遠ざかるように水平に伸ばした後、垂直に上方向に折り曲げ、さらに各々が近づくように水平に戻るように構成したものを左右対称に2対備えることを特徴とする、
テレビ受信機のアンテナ。
【請求項2】
前記2対のアンテナの先端間の距離を25mm以上離して配置することを特徴とする、
請求項1に記載のテレビ受信機のアンテナ。
【請求項3】
前記2対のアンテナは、前記テレビ受信機の筐体背面の上部に取り付けることを特徴とする、
請求項1に記載のテレビ受信機のアンテナ。
【請求項4】
前記2対のアンテナ、および前記2対のアンテナにつなげる整合回路を、取っ手などのアンテナ収納部に収納することを特徴とする、
請求項1に記載のテレビ受信機のアンテナ。
【請求項5】
前記整合回路の後段に、LNA(Low Noise Amplifier)を搭載することを特徴とする、
請求項1に記載のテレビ受信機のアンテナ。
【請求項6】
デジタルテレビ放送を受信するテレビ受信機のアンテナであって、
前記アンテナを取り付けるテレビ受信機の筐体背面に対して、直角に外方向へ伸ばした後、垂直に上方向に折り曲げ、さらに各々が近づくように水平に内方向へ戻るように構成したものを左右対称に2対備えることを特徴とする、
テレビ受信機のアンテナ。
【請求項7】
前記2対のアンテナの先端間の距離を25mm以上離して配置することを特徴とする、
請求項6に記載のテレビ受信機のアンテナ。
【請求項8】
前記2対のアンテナは、前記テレビ受信機の筐体背面の上部に取り付けることを特徴とする、
請求項6に記載のテレビ受信機のアンテナ。
【請求項9】
前記2対のアンテナ、および前記2対のアンテナにつなげる整合回路を、取っ手などのアンテナ収納部に収納することを特徴とする、
請求項6に記載のテレビ受信機のアンテナ。
【請求項10】
前記整合回路の後段に、LNA(Low Noise Amplifier)を搭載することを特徴とする、
請求項6に記載のテレビ受信機のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−183225(P2010−183225A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23407(P2009−23407)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】