説明

テンションレベラー直後の薄鋼板の水切り方法

【課題】テンションレベラーで矯正直後の薄鋼板の水切りを行うに際して、薄鋼板に反りを発生させることなく、適切に水切りを行うことができるテンションレベラー直後の薄鋼板の水切り方法を提供する。
【解決手段】テンションレベラー11の直後に、上下の水切りロール22とその直前に位置する補助ロール21とが一体となった水切り装置20を設置し、テンションレベラー11の最終ロール12nの上下移動に合わせて、補助ロール21と水切りロール22を上下移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンションレベラーで矯正された直後の薄鋼板の水切り方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷間圧延後の薄鋼板をテンションレベラーで矯正する際には、通板時にレベラーロールと薄鋼板との摩擦によるすり疵等の発生を防ぐため、テンションレベラーの直前で薄鋼板の表面に水を吹きかけている。
【0003】
しかし、テンションレベラーで矯正後の薄鋼板の表面に水を付着させたまま通板すると、テンションレベラー以降の搬送ロールでスリップを引き起こし、薄鋼板の表面に汚れを付着させる要因となる。
【0004】
そこで、従来は、テンションレベラーで矯正直後の薄鋼板の表面にエアーを噴き付けて、付着した水を取り除いているが、常時エアー噴射していても、薄鋼板の表面に付着した水を完全に除去することはできず、上記の問題は解決されていなかった。
【0005】
これに対して、特許文献1に記載されるように、テンションレベラー直後にピンチロールを水切りロールとして設置することが考えられる。
【0006】
しかし、水切りロール(ピンチロール)はエアーを噴き付けるよりも水切り性能は良好であるものの、単に水切りロールを設置しただけでは、薄鋼板に反りを発生させるという問題が生じて、水切りロールを設置できない場合が多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−11728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、テンションレベラーで矯正直後の薄鋼板の水切りを行うに際して、薄鋼板に反りを発生させることなく、適切に水切りを行うことができるテンションレベラー直後の薄鋼板の水切り方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、テンションレベラー直後に水切りロール(ピンチロール)を設置した場合に薄鋼板に反りが発生する原因について検討した結果、以下のようなことが原因であることを突き止めた。
【0010】
すなわち、テンションレベラーで薄鋼板を矯正する際には、その薄鋼板の条件(板厚、鋼種等)に応じてレベラーロールを上下移動させるが、上下位置が固定された水切りロール(ピンチロール)を設置した場合、薄鋼板の条件(板厚、鋼種等)に応じて最終レベラーロールが上下移動した際に薄鋼板の水切りロールへの進入角度が変化し、水切りロールへの巻き付け角度が適切な角度から外れてしまい、薄鋼板に不必要な曲げ力が作用して、反りが発生するようになる。
【0011】
そこで、本発明者は、この反りの発生を防止するためには、最終レベラーロールが上下移動しても、常に、薄鋼板の水切りロールへの巻き付け角度が反りの発生しない適切な角度となるようにすればよいと考えた。
【0012】
本発明は上記のような考え方に基づいてなしたものであり、以下の特徴を有している。
【0013】
[1]テンションレベラーで矯正直後の薄鋼板の水切りを行うために、テンションレベラーの直後に、上下の水切りロールとその直前に位置する補助ロールとを一体として設置し、テンションレベラーの最終ロールの上下移動に合わせて、これら補助ロールと水切りロールを上下移動させることを特徴とするテンションレベラー直後の薄鋼板の水切り方法。
【0014】
[2]補助ロールと同じ側の水切りロールをゴム被覆ロールとすることを特徴とする前記[1]に記載の薄鋼板の水切り方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、テンションレベラーで矯正直後の薄鋼板の水切りを行うに際して、薄鋼板に反りを発生させることなく、適切に水切りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態におけるテンションレベラー矯正ラインを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態における水切り装置(補助ロールと水切りロール)の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態におけるテンションレベラー矯正ラインを示す図である。
【0019】
図1に示すように、このテンションレベラー矯正ラインは、冷間圧延後の薄鋼板10を矯正するためのテンションレベラー11と、薄鋼板10に所定の張力を付加するための入側ブライドルロール13および出側ブライドルロール14を備えている。また、通板時にレベラーロール12と薄鋼板10との摩擦によるすり疵等の発生を防ぐために、テンションレベラー11の直前に、薄鋼板10の表面に水を吹きかけるノズル15を備えている。
【0020】
その上で、この実施形態においては、テンションレベラー11で矯正直後の薄鋼板10の水切りを行うために、テンションレベラー11の直後に、水切り装置20が設置されている。この水切り装置20は、上下の水切りロール22とその直前に位置する補助ロール21とが一体となったものである。なお、補助ロール21と上下の水切りロール22はいずれも非駆動ロールである。
【0021】
図2は、この水切り装置20の動作を示すものである。
【0022】
図2に示すように、テンションレベラー11の最終ロール12nを通過した薄鋼板10は、いったん、補助ロール21によってパスラインPLから下方に所定量δだけ押し下げられた後、上水切りロール22aと下水切りロール22bがパスラインPLを挟んで対向している水切りロール22に進入していき、下水切りロール22bに対して、反りが発生しない適切な巻き付け角度θで巻き付きながら通過していく。
【0023】
そして、薄鋼板10の条件(板厚、鋼種等)に応じて最終ロール12nが上下移動した際には、その最終ロール12nの上下移動量に合わせて、補助ロール21と水切りロール22(上水切りロール22aと下水切りロール22b)が同じ量だけ上下移動するようになっている。
【0024】
これによって、テンションレベラー11の最終ロール12nが上下移動しても、常に、水切りロール22への適切な巻き付け角度θが確保されるので、薄鋼板10に反りを発生させることなく、適切に水切りを行うことができる。
【0025】
なお、薄鋼板10が巻き付いて薄鋼板10との接触長さが長い下水切りロール22bは、耐摩耗性を考慮して、鉄ロールとし、薄鋼板10との接触長さが短い上水切りロール22aは、水切り性を考慮して、ゴム被覆ロールとすることが好ましい。また、補助ロール21も下水切りロール22bと同様に鉄ロールとすることが好ましい。
【符号の説明】
【0026】
10 薄鋼板
11 テンションレベラー
12 レベラーロール
12n レベラー最終ロール
13 入側ブライドルロール
14 出側ブライドルロール
15 ノズル
20 水切り装置
21 補助ロール
22 水切りロール(ピンチロール)
22a 上水切りロール
22b 下水切りロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンションレベラーで矯正直後の薄鋼板の水切りを行うために、テンションレベラーの直後に、上下の水切りロールとその直前に位置する補助ロールとを一体として設置し、テンションレベラーの最終ロールの上下移動に合わせて、これら補助ロールと水切りロールを上下移動させることを特徴とするテンションレベラー直後の薄鋼板の水切り方法。
【請求項2】
補助ロールと同じ側の水切りロールをゴム被覆ロールとすることを特徴とする請求項1に記載の薄鋼板の水切り方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−218011(P2012−218011A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84138(P2011−84138)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】