説明

テープキャリアパッケージ及びそのバーンイン方法及び試験方法

【課題】フレキシブルな配線基板上に複数の半導体素子を実装するテープキャリアパッケージにおいて、故障や異常のある半導体素子が混在する場合に、半導体素子を個片に切り離さず連なったフィルム基材に実装されたまま適切な条件下でバーンインを行い、バーンイン後に半導体素子を個片に切り離さず連なったフィルム基材に実装されたまま試験をする手段を提供することにある。
【解決手段】本発明のテープキャリアパッケージはバーンイン実施時に必要な電気部品をテープキャリアTC5に実装できる為、適切な条件下でバーンインが行える。また電気部品を取り外すことにより、故障や異常のある半導体素子IC52をバーンイン対象から外せる為、その影響を受けず適切な条件下でバーンインが行える。さらに、電気部品をすべて取り外すことにより連なったテープキャリアTC5に実装されたまま半導体素子IC5nの試験を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子のテープキャリアパッケージに係り、特にテープキャリアへの電気部品実装、さらにはテープキャリア状態でのバーンイン方法および試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子のパッケージ形態として、端子の曲がり防止などの為に、テープ上に半導体素子を実装したテープキャリアパッケージ(TCP)またはシステムオンフィルム(SOF)が用いられる場合がある。以下、本明細書ではこれらをまとめてテープキャリアパッケージ(TCP)と称する。図7に従来のTCPを試験する例を示す。テープキャリアTC7には半導体素子IC7が実装されている。IC7は試験用のソケットSOC7に挿入され、ソケットSOC7の蓋で押さえられ、試験装置により試験が実施される。試験が終了すると、テープキャリアTC7が順次送られ、次の半導体素子がソケットSOC7に挿入され、試験される。これを繰り返すことにより、TCPに実装された全ての半導体素子が試験される。
【0003】
又、プローブカードを用いたコンタクト手法(テープキャリアのパッド部分にプローブ針を接触させることで信号の伝搬を行う方法)でも同様の試験が実現できる。
【0004】
図8に従来のTCPをバーンインする例を示す。従来のTCPをバーンインする場合、半導体素子がテープに連なったままではバーンインできないので、半導体素子毎にテープを切断し、バーンインボードBIB8上に搭載されたソケットSOC8に挿入し、行っていた。そのため個片に切断したTCPを搬送する別の手段、ソケットSOC8、及びバーンインボードBIB8の費用が必要になり、コストアップの原因となっていた。このような問題を解決する為に、特許文献1のようなTCPが考案されている。これはテープに各半導体素子の端子を短絡するような配線を設け、半導体素子をテープから切断せずに一括してバーンインを実施する方法である。
【0005】
バーンイン以外の応用手法として個片の半導体素子の試験を実施する場合に、抵抗やコンデンサなどの部品をテープキャリア上に搭載することで種々の評価を行うことも可能である。
【特許文献1】特開平5−160211号公報(平成5年(1993年)6月25日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成では、以下の様な問題点がある。
【0007】
通常バーンインを行う時には、ノイズを抑える為のコンデンサや、抵抗が半導体素子の端子に接続される。しかしながら特許文献1の方法では、各半導体素子にコンデンサや抵抗などの部品を実装することが出来ず、適切な条件下でバーンインが行えない。また、バーンイン時に異常や故障のある半導体素子、例えば電源とGNDがショートしたような半導体素子が存在する場合、その半導体素子の影響で、他の半導体素子に適切な電圧や信号を与えることが出来ず、バーンインが行えない。さらに、試験を行う時にはTCPに実装された半導体素子の端子が短絡されている為、個片に切断する必要がある。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は故障や異常のある半導体素子が混在する場合に、半導体素子を個片に切り離さず連なったフィルム基材に実装されたまま適切な条件下でバーンインを行う手段を提供することにある。また、半導体素子を個片に切り離さず連なったフィルム基材に実装されたまま試験をする手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する為の本発明に係るテープキャリアパッケージは、フレキシブルな配線基板上に複数の半導体素子を実装し、上記各半導体素子の端子から配線を引き出し、引き出された上記配線上に第1の電極を有し、上記第1の電極と相対する位置に対になる第2の電極を有し、上記第2の電極から引き出された配線は上記配線基板に実装された各半導体素子の第2の電極間を短絡し、上記第2の電極間を短絡する配線上には第3の電極を有し、上記第1の電極と上記第2の電極との間に、電気部品を実装及び取り外しすることができることを特徴としている。
【0010】
上記第1の特徴の本発明に係るテープキャリアパッケージは、各半導体素子の端子から引き出された配線と、第1の電極と、第2の電極と、第2の電極から引き出され各半導体素子の第2の電極を短絡する配線と、第3の電極とで構成される上記構造を、各半導体素子に対して複数組有することが好ましい。
【0011】
本発明に係るテープキャリアパッケージのバーンイン方法は、上記テープキャリアパッケージの第1の電極と第2の電極との間に電気部品を実装し、第3の電極から電圧及び電気的信号を入力し、バーンインを行うことができる。
【0012】
これによると、バーンイン実施時に必要な電気部品を上記テープキャリアパッケージに実装できる為、適切な条件下で一括してバーンインを行うことができる。
【0013】
本発明に係るテープキャリアパッケージのバーンイン方法は、異常や故障のある半導体素子の第1の電極と、第2の電極との間には電気部品を実装せずに、バーンイン対象から外すことができる。
【0014】
これによると、故障や異常のある半導体素子がある場合、電気部品を実装しないことで故障や異常のある半導体素子をバーンイン対象から外すことができる。これにより、正常な半導体素子が故障や異常のある半導体素子の影響を受けずに適切な条件下で一括してバーンインを行うことができる。
【0015】
本発明に係るテープキャリアパッケージの試験方法は、上記配線基板上の第1の電極と第2の電極との間に実装された電気部品を取り外し、試験することができる。
【0016】
本発明に係るテープキャリアパッケージの試験方法は、上記配線基板上の上記第1の電極と上記第2の電極との間に上記電気部品を実装した状態で試験することができる。
【0017】
これによると、実装された電気部品を取り外す、または実装することにより、半導体素子を個片に切り離さず、連なった配線基板上に実装されたまま試験することが可能となる。従って、本発明によりフレキシブルな配線基板上に複数の半導体素子を実装するテープキャリアパッケージの製造コストは大幅に削減することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本テープキャリアパッケージは、バーンイン実施時に必要な電気部品を上記テープキャリアパッケージに実装できる為、適切な条件下で一括してバーンインが行える。また、故障や異常のある半導体素子が混在する場合、電気部品を実装しないことにより故障や異常のある半導体素子をバーンイン対象から外せる為、正常な半導体素子が故障や異常のある半導体素子の影響を受けず、正しい条件で一括してバーンインが行える。さらに、実装された電気部品を全て取り外すことにより、半導体素子を個片に切り離さず、連なった配線基板上に実装されたまま試験することが可能となる。従って、従来の大掛かりなバーンイン装置(バーンインボードまたは個々の半導体集積回路用のソケットなど)が必要なくなり、本発明のフレキシブルな配線基板上に複数の半導体素子を実装するテープキャリアパッケージの製造コストは大幅に削減されるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を図1ないし図6に基づいて説明すると以下の通りである。
【0020】
図1は本発明におけるテープキャリアパッケージ(TCP)を示す平面図である。テープキャリアTC1には半導体素子IC1が実装されている。半導体素子IC1の端子PIN1はテープキャリアTC1上の配線パターンL11により配線され、第1の電極PAD11に接続されている。第1の電極PAD11の相対する位置には第2の電極PAD12が設けられ、第2の電極PAD12はテープキャリアTC1上の配線パターンL12により配線され、図示しないテープキャリアTC1上に実装された複数の各半導体素子に対応する第2の電極間を短絡し、テープキャリアTC1上の任意の位置にある第3の電極PAD13に接続されている。相対する第1の電極PAD11と第2の電極PAD12との間には、電気部品を搭載することができる。ここで電気部品とはコンデンサ、抵抗またはジャンパ配線などである。
【0021】
図2は上記TCPにおいて、第1の電極と第2の電極から成る電気部品搭載用電極を複数個備えた場合のTCPを示す平面図である。テープキャリアTC2には半導体素子IC2が実装されている。半導体素子IC2の複数の端子PIN21〜PIN2nはテープキャリアTC2上の各配線パターンL211〜L21nにより配線され、それぞれの端子についての第1の電極PAD211〜PAD21nに接続されている。各第1の電極PAD211〜PAD21nの相対する位置には、第2の電極PAD221〜PAD22nが設けられている。各第2の電極PAD221〜PAD22nはテープキャリアTC2上の配線パターンL221〜L22nにより配線され、それぞれがテープキャリアTC2上に実装された複数の各半導体素子に対応する第2の電極間を短絡している。各配線パターンL221〜L22nはテープキャリアTC2上の任意の位置にある第3の電極PAD231〜PAD23nに接続されている。
【0022】
図3は上記TCPにおいて、第1の電極と第2の電極との間に、電気部品を実装したTCPを示す平面図である。テープキャリアTC3には半導体素子IC3が実装されている。半導体素子IC3の複数の端子PIN31〜PIN3nはテープキャリアTC3上の各配線パターンL311〜L31nにより配線され、それぞれの端子についての第1の電極PAD311〜PAD31nに接続されている。各第1の電極PAD311〜PAD31nの相対する位置には、第2の電極PAD321〜PAD32nが設けられている。各第2の電極PAD321〜PAD32nはテープキャリアTC3上の配線パターンL321〜L32nにより配線され、それぞれがテープキャリアTC3上に実装された複数の各半導体素子に対応する第2の電極間を短絡している。各配線パターンL321〜L32nはテープキャリアTC3上の任意の位置にある第3の電極PAD331〜PAD33nに接続されている。各第1の電極PAD311〜PAD31nと、各第2の電極PAD321〜PAD32nの間には、それぞれ電気部品PRT31〜PRT3nが実装されている。電気部品PRT31〜PRT3nは抵抗、コンデンサなどの電子部品の場合もあれば、単に第1の電極PAD311〜PAD31nと第2の電極PAD321〜PAD32nを短絡する為のジャンパ配線のような場合もある。
【0023】
尚、第1の電極、第2の電極間への電気部品の実装及び取り外しは、はんだ接続によって行うことができる。
【0024】
図4は上記TCPに電気部品を実装し、テープキャリア上の複数の半導体素子に対して、一括してバーンインを行う場合を示す平面図である。テープキャリアTC4には複数の半導体素子IC41〜IC4nが実装されている。各半導体素子IC41〜IC4nにおける複数の端子のそれぞれについて、第1の電極と第2の電極との間には電気部品が実装されている。これらの端子はバーンインの信号入出力に使用する端子である。通常、半導体素子は電源及びGND端子を備えており、これらの端子の第1の電極および第2の電極との間は、特に電気部品の接続が必要ない場合はジャンパ配線などで短絡する。第3の電極PAD41〜PAD4nから電圧や信号を与えると、第2の電極、実装された電気部品またはジャンパ配線、及び第1の電極を通して半導体素子IC41〜IC4nに電圧や信号が与えられ、一括して半導体素子IC41〜IC4nのバーンインが実施される。
【0025】
図5は異常や故障のある半導体素子をバーンイン対象から外す場合を示す平面図である。テープキャリアTC5には複数の半導体素子IC51〜IC5nが実装されており、第3の電極PAD51〜PAD5nからの電圧、信号によりバーンインが実施される。例えば半導体素子IC52に異常があり、電源−GND間に大電流が流れる場合、半導体素子IC52を流れる大電流の影響で半導体素子IC51〜IC5nの電源電圧は電圧降下を起こし、適切な条件下でバーンインできなくなる。そこで半導体素子IC52のバーンインに使用する端子に対する、第1の電極、第2の電極間に実装されていた電気部品を取り外す。そうすると半導体素子IC52は第3の電極PAD51〜PAD5nから切り離され、他の半導体素子からも切り離される。これにより異常や故障のある半導体素子IC52を除く半導体素子IC51〜IC5nは一括して適切な条件下でバーンインを行うことができる。
【0026】
異常や故障のある半導体素子IC52の検出は、バーンイン前にそれぞれの半導体素子について個々に試験を行うことで検出し、特定することができる。以下に試験の方法を記載する。
【0027】
図6は本発明におけるTCPを試験する場合を示す平面図である。テープキャリアTC6には複数の半導体素子IC61〜IC6nが実装されている。半導体素子IC61〜IC6nの第1の電極と第2の電極との間には電気部品が実装されていないので、それぞれ独立した状態である。従って半導体素子IC61〜IC6nは、図7に示されるようなソケットSOC7により、連なったテープキャリアTC6に実装されたままそれぞれ試験することが可能となる。また、バーンイン後に同様の試験をすることにより、バーンインで不良が発生した半導体素子を検出し、特定することができる。
【0028】
尚、試験に無関係である端子に接続された第1の電極、第2の電極間には電気部品を実装したままでもよい。
【0029】
また上記の試験とは別に、TCP上に電気部品を実装した状態で対象となる半導体素子の試験を行うことにより、電気部品が半導体素子の電気的特性に与える影響を評価することができる。この際、対象外の半導体素子の電気部品は取り外しておき、各半導体素子について個別に試験を行う。
【0030】
本発明により、バーンイン前の半導体素子の試験、バーンイン、及びバーンイン後の試験において、連なったテープキャリアに実装されたままそれぞれの試験及びバーンインを行うことができる。
【0031】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は半導体素子を実装するTCPのバーンイン方法及び試験に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明におけるTCPを示す平面図である。
【図2】図1のTCPにおいて、電気部品搭載用電極を複数個備えた場合のTCPを示す平面図である。
【図3】図2のTCPにおいて、第1の電極と第2の電極との間に、電気部品を実装したTCPを示す平面図である。
【図4】本発明におけるTCPに電気部品を実装し、TCP上の複数の半導体素子に対して、一括してバーンインを行う場合を示す平面図である。
【図5】本発明におけるTCPの、異常や故障のある半導体素子をバーンイン対象から外す場合を示す平面図である。
【図6】本発明におけるTCPを試験する場合を示す平面図である。
【図7】従来のTCPを試験する場合を示す斜視図である。
【図8】従来のTCPをバーンインする場合を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
IC1、IC2、IC3、IC41〜IC4n、IC51〜IC5n、IC61〜IC6n、IC7 半導体素子
TC1〜TC7 テープキャリア(配線基板)
PIN1、PIN21〜PIN2n、PIN31〜PIN3n 端子
L11、L211〜L21n、L311〜L31n 配線
L12、L221〜L22n、L321〜L32n 配線
PAD11、PAD211〜PAD21n、PAD311〜PAD31n 第1の電極
PAD12、PAD221〜PAD22n、PAD311〜PAD32n 第2の電極
PAD13、PAD231〜PAD23n、PAD331〜PAD33n、PAD41〜PAD4n、PAD51〜PAD5n 第3の電極
PRT31〜PRT3n 電気部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルな配線基板上に複数の半導体素子を実装するテープキャリアパッケージにおいて、
上記各半導体素子の端子から配線を引き出し、引き出された上記配線上に第1の電極を有し、
上記第1の電極と相対する位置に対になる第2の電極を有し、
上記第2の電極から引き出された配線は上記配線基板に実装された各半導体素子の第2の電極間を短絡し、
上記第2の電極間を短絡する配線上には第3の電極を有し、
上記第1の電極と上記第2の電極との間に、電気部品を実装及び取り外しすることができることを特徴とするテープキャリアパッケージ。
【請求項2】
上記各半導体素子の端子から引き出された配線と、上記第1の電極と、上記第2の電極と、上記第2の電極から引き出され上記各半導体素子の第2の電極間を短絡する上記配線と、上記第3の電極とで構成される上記構造を、上記各半導体素子に対して複数組有することを特徴とする請求項1に記載のテープキャリアパッケージ。
【請求項3】
請求項2に記載のテープキャリアパッケージに対して行うバーンイン方法であって、
上記第1の電極と上記第2の電極との間に上記電気部品を実装し、上記第3の電極から電圧及び電気信号を入力することを特徴とする、テープキャリアパッケージのバーンイン方法。
【請求項4】
上記異常や故障のある半導体素子の上記第1の電極と、上記第2の電極との間には上記電気部品を実装せずに、バーンイン対象から外すことを特徴とする請求項3に記載のテープキャリアパッケージのバーンイン方法。
【請求項5】
請求項2に記載のテープキャリアパッケージに対して行う試験方法であって、
上記バーンイン後に、上記配線基板上の上記第1の電極と上記第2の電極との間に実装された上記電気部品を取り外し、試験することを特徴とする、テープキャリアパッケージの試験方法。
【請求項6】
請求項2に記載のテープキャリアパッケージに対して行う試験方法であって、
上記配線基板上の上記第1の電極と上記第2の電極との間に上記電気部品を実装した状態で試験することを特徴とする、テープキャリアパッケージの試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−276078(P2009−276078A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124809(P2008−124809)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】