説明

テープ巻き用電線導出部構造

【課題】電線導出部を先細りのテーパ状とした場合や、電線収容量を吸収するべく電線導出部の電線支持壁を内向きに傾斜状に撓み可能とした場合でも、テープずれを防止する。
【解決手段】樋状ないし逆樋状の電線導出壁6と板状の電線支持壁21とを対向して備え、電線導出壁と電線支持壁との少なくとも一方が少なくとも二本のテープ滑り止め用のリブ12,23を電線導出方向に並列に有し、電線導出壁又は電線支持壁の先頭のリブが電線導出壁又は電線支持壁の二番目のリブよりも電線径方向に長く突出して位置した。電線導出壁と電線支持壁とが少なくとも各二本のテープ滑り止め用のリブ12,23を電線導出方向に並列に有し、電線導出壁6の各リブ121,122が電線径方向に同じ突出高さで位置し、電線支持壁21の先頭のリブ231が電線支持壁の二番目のリブ232よりも電線径方向に長く突出して位置した。電線支持壁21は可撓性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の電気接続箱等における導出されたワイヤハーネスをテープ巻きで固定させるテープ巻き用電線導出部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気接続箱の電線導出部にワイヤハーネス(複数本の電線)をテープ巻きで固定するために、種々のテープ巻き用電線導出部構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(図示せず)には、ヒューズやリレー等の電気部品を装着した接続ブロックをロアケース内に挿入し、ロアケースにアッパカバーを装着して構成される電気接続箱において、電線導出部として、接続ブロックは逆樋状の上側固定片を有し、ロアケースは樋状の下側固定片を有し、接続ブロックの各電気部品に接続した各電線をワイヤハーネスとして上側固定片と下側固定片との間に挿通させて、テープ巻きで上側固定片と下側固定片に固定したことが記載されている。
【0004】
上記以外のテープ巻き用電線導出部構造として、図6に示すテープ巻き用電線導出部構造がある。この構造は、不図示の接続ブロックを収容するフレーム41と、フレーム41に装着されるロアカバー42と不図示のアッパカバーとを備える電気接続箱において、接続ブロックの各電気部品に続く複数本の電線をワイヤハーネス43として、フレーム41の逆樋状の電線導出壁44とロアカバー42の板状の電線支持壁45とに沿って外部に導出し、電線導出壁44と電線支持壁45とで成る電線導出部46をワイヤハーネス43と共に複数回テープ巻き47するものである。
【0005】
電線支持壁45は電線導出部46内の電線43aの収容量の変動に対応するべくテープ巻き時に上下(板厚方向)に撓み可能である。電線導出壁44は外周面に、電線支持壁45は下面(外面)にそれぞれテープ滑り止め用の複数(本例で各二本)のリブ48,49を電線挿通方向に並列に有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−28806号公報(図1,図2,図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の図6のテープ巻き用電線導出部構造にあっては、例えば電線導出部46を図6の如く先細りのテーパ状に形成した場合に、テープ巻き形状が先細りのテーパ状になって、テープずれ(テープ抜け)を起こしやすいという懸念があった。
【0008】
また、電線導出部46が先細りのテーパ状になっていない場合でも、例えば電線導出部46における電線の収容量が少ない場合に、電線支持壁45が内向き(上向き)に撓んで傾斜し、電線支持壁45のテープ滑り止め用のリブ49が電線支持壁45と一体に上向きに傾斜して、電線導出部46とワイヤハーネス43とに巻いたテープ47が先細りのテーパ状となってテープずれ(テープ抜け)を起こしやすいという懸念があった。
【0009】
テープずれを起こした場合には、電線導出部46へのワイヤハーネス43の固定力が低下して、ワイヤハーネス43と電線導出部46とが擦れを生じたり、テープずれで生じた隙間から内部に水等が侵入し兼ねないという懸念があった。この懸念は電気接続箱の電線導出部に限らず、例えば不図示のハーネスプロテクタ等の電線導出部においても同様に生じ得るものである。
【0010】
本発明は、上記した点に鑑み、例えば電線導出部を先細りのテーパ状に形成した場合や、電線収容量を吸収するべく電線導出部の電線支持壁を内向きに傾斜状に撓み可能とした場合でも、テープずれを生じにくいテープ巻き用電線導出部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るテープ巻き用電線導出部構造は、樋状ないし逆樋状の電線導出壁と板状の電線支持壁とを対向して備え、該電線導出壁と該電線支持壁との少なくとも一方が少なくとも二本のテープ滑り止め用のリブを電線導出方向に並列に有し、該電線導出壁又は該電線支持壁の先頭のリブが該電線導出壁又は該電線支持壁の二番目のリブよりも電線径方向に長く突出して位置したことを特徴とする。
【0012】
上記構成により、電線導出壁又は電線支持壁の先頭すなわち先端側のリブの突出長さが二番目のリブの突出長さよりも長く形成されているので、電線導出壁に対して電線支持壁が先端に向かうにつれてテーパ状に内向きに傾倒している場合でも、複数本の電線(ワイヤハーネス)を電線導出壁と電線支持壁とで成る電線導出部にテープ巻きした際に、先頭のリブでテープの前後方向(電線長手方向)のずれが防止される。
【0013】
例えば、電線導出壁のみ又は電線支持壁のみにリブが設けられてもよい。電線導出壁と電線支持壁との両方にリブが設けられてもよい(この場合、電線導出壁と電線支持壁との何れか一方あるいは両方の先頭のリブの突出長さが長く設定される。あるいは何れか一方のリブが一本のみ設けられる)。両方に各二本のリブがある場合、両方の各リブの先端を結ぶ仮想直線は平行ないし略平行あるいは電線導出部の先端に向かうにつれて先太りのテーパ状であることが好ましいが、先細りのテーパ状であっても先頭の突出長さの長いリブでテープのずれが防止される。電線支持壁は板厚方向の可撓性を有することが好ましい。
【0014】
請求項2に係るテープ巻き用電線導出部構造は、樋状ないし逆樋状の電線導出壁と板状の電線支持壁とを対向して備え、該電線導出壁と該電線支持壁とが少なくとも各二本のテープ滑り止め用のリブを電線導出方向に並列に有し、該電線導出壁の各リブが電線径方向に同じ突出高さで位置し、該電線支持壁の先頭のリブが該電線支持壁の二番目のリブよりも電線径方向に長く突出して位置し、該電線導出壁と該電線支持壁とに複数本の電線をテープ巻きで固定した状態で、該電線導出壁の各リブに沿うテープ巻き部分と該電線支持壁の各リブに沿うテープ巻き部分とが平行ないし略平行に位置することを特徴とする。
【0015】
上記構成により、電線支持壁の先頭すなわち先端側のリブの突出長さが二番目のリブの突出長さよりも長く形成されているので、電線導出壁に対して電線支持壁が先端に向かうにつれてテーパ状に内向きに傾倒している場合でも、電線支持壁の先頭のリブの突出先端と二番目のリブの突出先端とを結ぶ仮想直線と、電線導出壁の各リブの突出先端を結ぶ仮想直線とが平行ないし略平行に位置し、複数本の電線(ワイヤハーネス)を電線導出壁と電線支持壁とで成る電線導出部にテープ巻きした際に、テープが電線導出壁の各リブの突出先端(例えば上端)と、電線支持壁の各リブの突出先端(例えば)下端とに沿って平行ないし略平行に位置することで、テープの前後方向(電線長手方向)のずれが防止される。
【0016】
請求項3に係るテープ巻き用電線導出部構造は、請求項2記載のテープ巻き用電線導出部構造において、前記電線支持壁が板厚方向の可撓性を有し、該電線支持壁が前記テープ巻きで内向きに撓んだ状態で、前記電線導出壁の各リブに沿うテープ巻き部分と前記電線支持壁の各リブに沿うテープ巻き部分とが平行ないし略平行に位置することを特徴とする。
【0017】
上記構成により、テープ巻き時に電線支持壁が電線径方向内向きに撓んで電線導出壁内の電線の収容量を吸収し、電線導出壁の内面と電線支持壁の内面とに複数本の電線の外周面を密着させる。その状態で、電線支持壁の先頭のリブの突出先端と二番目のリブの突出先端とを結ぶ仮想直線と、電線導出壁の各リブの突出先端を結ぶ仮想直線とが平行ないし略平行に位置し、テープが電線導出壁の各リブの突出先端(例えば上端)と、電線支持壁の各リブの突出先端(例えば)下端とに沿って平行ないし略平行に位置することで、テープの前後方向(電線長手方向)のずれが防止される。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、例えば電線導出部と電線支持壁とで成る電線導出部を先細りのテーパ状に形成した場合やテープ巻きで先細りのテーパ状に傾倒させた場合でも、先頭の突出長さの長いリブでテープのずれを防ぐことができ、テープずれに起因するワイヤハーネスの固定性の低下や水等の侵入を防止することができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、例えば電線導出部と電線支持壁とで成る電線導出部を先細りのテーパ状に形成した場合でも、テープを電線支持壁の突出長さの長い先頭のリブに沿ってテーパ状ではなく電線径方向に平行ないし略平行に巻き付けることで、テープずれを防ぐことができ、テープずれに起因するワイヤハーネスの固定性の低下や水等の侵入を防止することができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、電線収容量を吸収するべく電線支持壁を内向きに傾斜状に撓み可能とした場合でも、テープを電線支持壁の突出長さの長い先頭のリブに沿ってテーパ状ではなく電線径方向に平行ないし略平行に巻き付けることで、テープずれを防ぐことができ、テープずれに起因するワイヤハーネスの固定性の低下や水等の侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るテープ巻き用電線導出部構造の一実施形態を含む電気接続箱の一形態を示す分解斜視図である。
【図2】同じくテープ巻き用電線導出部構造の組立状態を示す斜視図である。
【図3】同じくテープ巻き用電線導出部構造を示す下面図である。
【図4】ワイヤハーネスを挿通させたテープ巻き用電線導出部構造を示す側面図である。
【図5】同じくワイヤハーネスをテープ巻きで固定した状態を示す側面図である。
【図6】従来のテープ巻き用電線導出部構造の一形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜図5は、本発明に係るテープ巻き用電線導出部構造の一実施形態を示すものである。
【0023】
図1の如く、このテープ巻き用電線導出部構造は、例えばヒューズブロックといった電気接続箱1におけるものであり、電気接続箱1は、合成樹脂製のフレーム2と、フレーム2内に下方から挿着される絶縁樹脂製の接続ブロック3と、フレーム2の下側に装着されて下部開口を塞ぐ合成樹脂製のロアカバー4と、フレーム2の上側に装着されて上部開口2aを塞ぐ合成樹脂製の不図示のアッパカバーとを備えている。
【0024】
フレーム2は、上下に貫通した内部空間(ブロック収容空間)2bをなす垂直な周壁5と、周壁5から一体に略水平に前方に突出した逆樋状(縦断面逆U字状)の電線導出壁6とを備えている。
【0025】
図2の如く、電線導出壁6は上側の湾曲壁部7と左右の垂直な側壁部8とで成り、湾曲壁部7から両側の側壁部8の上半側にかけて外周面にテープ滑り止め用の複数(本例で二本)のリブ12(121,122)を電線挿通方向(前後方向)に並列(平行)に有している。電線導出壁6の両側壁8の前端側下部には例えば後述のロアケース4の電線支持壁21の上向きの撓みを促進させる空間としての切欠部11が設けられている。
【0026】
切欠部11の上辺部11aは電線導出壁6の先端(前端)6aに直交して続き、後辺部11bは図1の側壁8の水平な短い下辺部8aに続き、下辺部8aは下側の傾斜辺部8bに続き、傾斜辺部8bは後方の下向きの凸壁部8cに続き、凸壁部8cは後方の長い下辺部8dに続いている。短い下辺部8aと傾斜辺部8bとでロアカバー係合用の段差部13をなしている。
【0027】
電線導出壁6の基端側には車両ボディへのフレーム固定用のブラケット14が設けられている。電線導出壁6内の空間(電線挿通空間)はフレーム周壁5の略逆U字状の不図示の開口を経て周壁5内の空間2bに連通している。なお、明細書で前後左右の方向性は説明の便宜上のものであり、必ずしも電気接続箱1の取付方向と一致するとは限らない。
【0028】
図1の如く、ロアカバー4は、底壁15と底壁15から立ち上げられた左右の側壁16とを有し、側壁16に、係止手段であるフレーム2のロック片(係止部)17に対するロック枠片(係合部)18が設けられ、底壁15は前側において傾斜状に立ち上げられて傾斜底壁19(図2)をなし、傾斜底壁19の片側で側壁16の上部が凹状に切欠され(凹部を符号20で示す)、傾斜底壁19の上端から略水平にハーネス支持用の矩形平板状の電線支持壁21が前向き(外向き)に突出形成されている。
【0029】
電線支持壁21の後半部21bは左右両側に低背な傾斜状の側壁22を有し、電線支持壁21の前半部21aは側壁のない平板状に形成されている。少なくとも電線支持壁21の前半部21aは板厚方向(上下方向)の可撓性を有している。
【0030】
図2の如く、電線支持壁21の下面にテープ滑り止め用の複数(本例で三本)のリブ23(231,232,233)が電線挿通方向(前後方向)に並列(平行)に突出形成されている。各リブ23は電線導出壁6側の各リブ12と同様に樹脂成形で電線支持壁21と一体に形成されている。
【0031】
図4で後述する如く、図2の電線支持壁21の前半部21aに二本のリブ231,232が配置され、電線支持壁21の後半部21bに一本のリブ233が配置され、前半部21aの先頭のリブ231は他のリブ232,233よりも下向きに長く突出形成されている。各リブ23は円弧状の下端面23aを有し、先頭のリブ231は円弧状の下端面に続く左右両側の短い垂直な側面23bを有している。
【0032】
図2の如く、ロアカバー4の側壁16の上端部はフレーム2の側壁5aの下端部に接合し、傾斜底壁19は電線導出壁6の後半の傾斜辺部8b(図1)に接合し、傾斜底壁19の後側の凹部20(図1)に凸壁部8c(図1)が接合し、短い水平な下辺部8a(図1)に電線支持壁6の後半部6bの低背な傾斜リブ状の側壁22(図1)が接合し、切欠部11の下側に電線支持壁21の前半部21aが位置する。電線導出壁6と電線支持壁21とで電線導出部24が構成される。電線支持壁6の後半部6bと傾斜底壁19とが電線導出壁6の下側の段差部13(図1)に当接係合することで、電線支持壁6のぐらつきや位置ずれが阻止される。
【0033】
図3(下面図)の如く、電線支持壁21の前半部21aは電線導出壁6の左右の側壁8の外幅や内幅(内面を符号8eで示す)よりも幅狭に形成されて、板厚方向(上下方向)の可撓性を有している。電線支持壁21の先端(前端)21a’は電線導出壁6の先端(前端)6a(図2)と同一垂直面上に位置する。符号22は後半部21aの傾斜リブ状の側壁を示す。
【0034】
電線支持壁21の前半部21aの先頭のテープ滑り止め用のリブ231は他のリブ232,233よりも前後方向に厚肉に形成され、先頭のリブ231の左右方向幅は他のリブ232,233と同様に電線支持壁21の前半部21aの幅と同じに設定されている。先頭のリブ231は電線支持壁21の前端21a’よりも少し後方に配置され、中間(二番目)のリブ232は電線支持壁21の前半部21aと後半部21bとの境界に配置され、三番目のリブ233は電線支持壁21の後半部21bの後端寄りに配置され、各リブ23は前後方向に等ピッチで配置されている。
【0035】
図1の如く、接続ブロック3は、上側にヒュージブルリンク装着部28やコネクタ装着部29や不図示のリレー装着部やヒューズ装着部等を有し、これらヒュージブルリンクやリレーやヒューズといった不図示の電気部品に接続された電線や、コネクタから導出された電線が下向きに導出されてロアカバー4で保護されつつワイヤハーネス25(図4)として電線導出部24から外部に導出される。
【0036】
図4の如く、電線支持壁21の前半部21aの先頭のリブ231の下向きの突出長さH1は他の二つのリブ232,233の下向きの突出長さH2,H3よりも長く設定されている。図4の例では、テープを巻かない自由状態で、電線支持壁21が先端(前端)21a’に向かうにつれて漸次上向きに少し傾斜して形成されているが、先頭のリブ231の下端23aの高さは二番目のリブ232の下端23aの高さよりも低く設定されている(先頭のリブ231の下端23aは二番目のリブ232の下端23aよりも下方に長く突出している)。
【0037】
三番目のリブ233は電線支持壁21の後半部21bの低い基端側に配置されている関係で、先頭のリブ231の下端23aの高さと三番目のリブ233の下端23aの高さとはほぼ同程度になっているが、先頭のリブ231の下端23aの高さは三番目のリブ233の下端23aの高さよりも低い(先頭のリブ231の下端23aは三番目のリブ233の下端23aよりも下方に長く突出している)ことが好ましい。図5の如く、三番目のリブ233は補助的なものであり、テープ巻きをしない場合もあり得る。
【0038】
フレーム2の電線導出壁6の前後二つの各リブ121,122の上向きの突出高さ(長さ)H4は同じに設定されている。電線導出壁6の上壁7の頂部は水平であり、二つの各リブ121,122の上端12aは仮想の水平線L1上に位置している。上側且つ前側のリブ121の下方に(ほぼ同一垂直線上に)下側の先頭のリブ231が位置し、上側且つ後側のリブ122の下方において少し後方に下側の二番目のリブ232が位置している。
【0039】
本例の下側の先頭のリブ231の下端23aと二番目のリブ232の下端23aとを結ぶ不図示の仮想直線は水平よりも少し前下がりに傾斜して位置し、先頭のリブ231の下端23aと三番目のリブ233の下端23aとを結ぶ仮想直線L2はほぼ水平に位置する。自由状態で電線支持壁21の上面(内面)21cと下面(外面)は少し前上がりに傾斜しているので、電線支持壁21の下面の延長線L3は少し前上がりに傾斜して位置する。電線導出壁6の上側の二本のリブ121,122の上端12aを結ぶ仮想直線L1と、下側の先頭のリブ231の下端23aと三番目のリブ233の下端23aとを結ぶ仮想直線L2とは平行ないし略平行に位置する。
【0040】
図4でワイヤハーネス25は便宜上短く図示しているが、実際には長く延長されて不図示の車両の各電装品(負荷側)等にコネクタ接続される。ワイヤハーネス25をなす各電線26は上下左右の複数列に配置されている(左右方向の奥側の電線を符号261で示す)。
【0041】
図5の如く、電線導出壁6と電線支持壁21とで成る電線導出部24の外周面とワイヤハーネス25の外周面とに合成樹脂製の片面粘着性のテープ27を連続して複数回巻き付けて、ワイヤハーネス25を電線導出部24に固定し、且つ電線導出部24とワイヤハーネス25との間の隙間をなくして防水する。
【0042】
テープ27を強く巻き付けた際に、電線支持壁21の前半部21aは上向きに撓んでワイヤハーネス25の下端面に密着するが、その際に、テープ滑り止め用の先頭のリブ231(図4)の下端23aの高さが二番目のリブ232の下端23aの高さとほぼ同一の仮想水平線上に位置して、テープ巻き27の上端27aと下端27bとが平行(水平)ないし略平行になって、すなわち電線導出壁6の各リブ12に沿うテープ巻き部分27aと電線支持壁21の各リブ23に沿うテープ巻き部分26bとが平行ないし略平行になって、従来のように先細りのテーパ状にならずに、テープ27の前後方向のずれや外れが防止される。
【0043】
例えば従来(図6)のように、電線導出壁の上端面に対して電線支持壁の下端面が先細りにテーパ状に形成されている場合でも、図4の如く、電線支持壁21の先頭のリブ231の突出長さH1を二番目のリブ232の突出長さH2よりも長く設定し、電線支持壁21の自由状態(テープ巻き前の状態)で、あるいは図5のテープ巻きされた状態で、先頭のリブ231の下端23aと二番目のリブ232の下端23aとを結ぶ仮想直線L2と上側の各リブ12の上端12aを結ぶ仮想直線L1とが平行(水平)ないし略平行になるようにすることで、テープ巻き27の上端27aと下端27bとが平行(水平)ないし略平行に位置して、すなわち電線導出壁6の各リブ12に沿うテープ巻き部分27aと電線支持壁21の各リブ23に沿うテープ巻き部分27bとが平行ないし略平行に位置して、同様にテープ27の前後方向のずれや外れが防止される。
【0044】
図4において、上側の各リブ12の上端12aを結ぶ仮想直線L1と、テープ巻き後の下側の先頭と二番目の各リブ231,232の各下端23aを結ぶ仮想直線L2とは必ずしも水平でなくともよく、平行に傾斜していてもよい(平行であればよい)。テープ27は上下の各リブ12,23の突出先端12a,23aと各リブ12,23間の面(電線導出壁6の外面と電線支持壁21の下面)に接着される。テープ27の巻付け方向は電線導出壁6側から初めてワイヤハーネス25側で終わってもよく、その逆であってもよい。
【0045】
図5において、電線支持壁21の三番目(後端側)のリブ233には上側且つ後側のリブ122から斜め後向きにテープ巻きを施してもよい。ブラケット14の関係で上側(電線導出壁6)に三番目のリブを設けていないが、ブラケット14に代えて上側に三番目のリブを他の上側のリブ12と同じ高さに設けた場合は、テープ巻き27の上端27aと下端27bとが平行ないし略平行になるように、電線支持壁21の三番目のリブ233を二番目のリブ232と同じ突出長さないしそれよりも短く突出形成することが好ましい。
【0046】
なお、上記実施形態においては、例えば自動車のエンジンルームに電気接続箱1を配置した際の上からの洗浄水に対する防水性を高めるために、逆樋状の電線導出壁6を上側に配置し、板状の電線支持壁21を下側に配置したが、防水の必要のない部位に電気接続箱1を配置する場合は、ロアカバー4に樋状(U字状)の下側の電線導出壁(6)を設け、フレーム4に上側の電線支持壁(21)を設けることも可能である。
【0047】
また、上記実施形態においては、フレーム2とロアカバー4とを別体に設けて、電線導出壁6と電線支持壁21とを別体に形成したが、例えば、フレーム2とロアカバー4とを一体にしたような接続箱本体ないしケースに電線導出壁6と電線支持壁21とを上下に一体に設けた場合においても、電線支持壁6に突出長さの異なるテープ滑り止め用の複数のリブ23を設け、電線導出壁6に突出長さの同じテープ滑り止め用の複数のリブ12を設けることは有効である。電線導出壁6の形状は、上壁部7が湾曲せずに平面的に形成された樋状のものであってもよい。
【0048】
また、上記実施形態においては、電気接続箱本体(フレーム2とロアカバー4)に電線導出壁6と電線支持壁21とを設けた例で説明したが、本発明の電線導出部のテープ巻き構造は電気接続箱1に限らず、例えばワイヤハーネス挿通保護用の不図示の合成樹脂製のハーネスプロテクタにおいても適用可能である。
【0049】
この場合、ハーネスプロテクタは例えば下側の樋状のプロテクタ本体と上側の断面逆凹字状のカバー(第二のプロテクタ本体)とで成り、係止手段(係止部と係合部)で相互に固定され、プロテクタ本体の端部に樋状(U字状)の電線導出壁(6)が一体に設けられ、電線導出壁(6)にテープ滑り止め用の複数のリブ(12)が同じ突出長さで設けられ、カバーに平板状の電線支持壁(21)が一体に設けられ、電線支持壁(21)に、先端(21a’)に向かうにつれて漸次突出高さを増したテープ滑り止め用の複数のリブ(23)が設けられる。電気接続箱本体やプロテクタ本体は中空構造体と総称可能である。
【0050】
また、上記実施形態においては、電線導出壁6にも二本のリブ12を設けたが、電線導出壁6にリブ12を設けず、あるいは電線導出壁6に一本のみリブ12を設け(電線導出壁6の先端側に設けることが好ましい)、電線支持壁21のみに少なくとも二本のリブ23を設け、その先頭のリブ231の突出長さを長くすることも可能である。また、電線導出壁6と電線支持壁21との両方に少なくとも各二本のリブ12,23を設け、各二本のうちの各先頭のリブ121,231の突出長さを長く設定することも可能である。
【0051】
また、上記実施形態においては、電線支持壁21の先頭のリブ231の突出長さを長く設定したが、他の実施形態として、電線支持壁21ではなく電線導出壁6の少なくとも二本のリブ12のうちの先頭のリブ121の突出長さを長く設定することも可能である。電線支持壁21の少なくとも二本のリブ23は同じ突出長さであり、あるいは電線支持壁21にリブ23を設けないこともあり得る。電線支持壁21は可撓性であることが好ましいが、可撓性を有さない場合もあり得る。電線導出壁6と電線支持壁21とで成る電線導出部24がたとえ先細りのテーパ状に形成されていても、あるいはテープ巻きで先細りのテーパ状に傾倒した場合でも、電線導出壁6の先頭の突出長さの長いリブ(121)でテープ27のずれが防止される。テープ巻き状態で電線導出壁6と電線支持壁21とは平行ないし略平行あるいは先太りのテーパ状であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係るテープ巻き用電線導出部構造は、例えば自動車に搭載される電気接続箱の電線導出部を先細りのテーパ状に形成した場合や、電線収容量を吸収するべく電線導出部の電線支持壁を内向きに傾斜状に撓み可能とした場合でも、テープずれを生じ難くして、電線導出部へのワイヤハーネスの固定性を高めると共に、テープずれの隙間から内部への水等を侵入を防ぐために利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
6 電線導出壁
121,122 リブ
21 電線支持壁
231 先頭のリブ
232 二番目のリブ
26 電線
27 テープ巻き
27a,27b テープ巻き部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樋状ないし逆樋状の電線導出壁と板状の電線支持壁とを対向して備え、該電線導出壁と該電線支持壁との少なくとも一方が少なくとも二本のテープ滑り止め用のリブを電線導出方向に並列に有し、該電線導出壁又は該電線支持壁の先頭のリブが該電線導出壁又は該電線支持壁の二番目のリブよりも電線径方向に長く突出して位置したことを特徴とするテープ巻き用電線導出部構造。
【請求項2】
樋状ないし逆樋状の電線導出壁と板状の電線支持壁とを対向して備え、該電線導出壁と該電線支持壁とが少なくとも各二本のテープ滑り止め用のリブを電線導出方向に並列に有し、該電線導出壁の各リブが電線径方向に同じ突出高さで位置し、該電線支持壁の先頭のリブが該電線支持壁の二番目のリブよりも電線径方向に長く突出して位置し、該電線導出壁と該電線支持壁とに複数本の電線をテープ巻きで固定した状態で、該電線導出壁の各リブに沿うテープ巻き部分と該電線支持壁の各リブに沿うテープ巻き部分とが平行ないし略平行に位置することを特徴とするテープ巻き用電線導出部構造。
【請求項3】
前記電線支持壁が板厚方向の可撓性を有し、該電線支持壁が前記テープ巻きで内向きに撓んだ状態で、前記電線導出壁の各リブに沿うテープ巻き部分と前記電線支持壁の各リブに沿うテープ巻き部分とが平行ないし略平行に位置することを特徴とする請求項2記載のテープ巻き用電線導出部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−222850(P2012−222850A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82654(P2011−82654)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】