説明

テープ巻回体製造装置

【課題】 2枚のセパレータテープを重ね合わせて巻芯に巻き付けるに当り、それらのテープの巻き付け端部を巻芯に確実に固定して、セパレータテープの巻芯への初期巻き付けを良好に行なえるようにする。
【解決手段】 回転可能に支持された巻芯2と、巻芯2にそれぞれ第1セパレータテープ9、第2セパレータテープ10を供給する機構と、正極テープ17と負極テープ19をそれぞれ2つのセパレータテープ9、10の間に介在して巻芯2に供給する機構とを備えてなるテープ巻回体製造装置において、供給された第1と第2のセパレータテープ9、10を巻芯2に溶着接合する加熱溶着装置43を設け、巻芯2に溶着接合された第1と第2のセパレータテープ9、10を該巻芯2に初期巻き付けするように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極テープをセパレータテープを介して巻回してテープ巻回体を製造するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質型のリチウム二次電池は、高い電圧が得られ、またエネルギー密度が高いため、ノートパソコンや携帯電話等のバッテリーに多く利用されている。
リチウム二次電池は、セパレータテープを介して正極テープと負極テープを重ねた状態で巻回し、このテープ巻回体を円筒容器状の電池ケースに入れ、電池ケース内に非水系の電解液を封入して構成される。
【0003】
テープ巻回体を製造するための装置としては、例えば下記特許文献1、2に示すような、巻芯を回転可能に支持してなる構造のものが用いられ、巻芯にセパレータテープ及び電極テープ(正極テープ、負極テープ)を所定の巻数で巻き付けて、巻芯の周囲にテープ巻回体を形成し、巻き付け終了後に得られたテープ巻回体から巻芯を抜き出し、テープ巻回体を巻芯と分離して装置外に取り出し、製品としてのテープ巻回体を製造していた。
【0004】
【特許文献1】特開平11−307132号公報
【特許文献2】特開2004−103485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池の製造工程において、テープ巻回体を円筒容器状の電池ケースに入れ、正極テープ、負極テープのそれぞれの端部付近に接続したタブ端子を電池ケースに接続する。即ち、負極テープのタブ端子(負極タブ)を電池ケースの円筒容器内底面に接続し、一方、正極テープのタブ端子(正極タブ)を、電池ケースの蓋体(トップキャップ)裏面に接続する。
【0006】
負極テープのタブ端子を電池ケースの円筒容器内底面に接続するに当っては、巻回体中心部にある空洞部に溶接棒を上方より挿入し、溶接棒の挿入先端をタブ端子に押し当てて、タブ端子を円筒容器内底面に溶接して接続する。
【0007】
テープ巻回体の空洞部には、最初の巻き(初期巻き付け)で形成されたセパレータテープ巻き面が臨んでいる。即ち、テープ巻回体の空洞部表面にはセパレータテープ巻き面が形成されている。
上記の如く溶接棒を空洞部に挿入した際、溶接棒がセパレータテープ巻き面と接触し、該面をこすって傷つけたり、破断したりする危険がある。
【0008】
セパレータテープ巻き面におけるテープ端部(巻き開始端)は、固定されておらず、フリーの状態にあるため、該端部がテープ巻回体空洞部に飛び出す場合がある。特に、スリット状切り込み部にセパレータテープを挟み込んで巻回するタイプの巻芯を用いた場合は、巻芯を取り外して得られた巻回体の空洞部に、巻芯への挟み込みにより折り目が付けられたテープ端部が飛び出した状態となる。
このように、テープ巻回体の空洞部にテープ端部が飛び出した状態となっている場合には、溶接棒を挿入したときのセパレータテープ巻き面との接触による該面の傷つけ、破断の虞も大きくなる。
【0009】
上記の如くセパレータテープ巻き面が傷ついたり、破断したりすると、疑似ショートが起こり、時間の経過と共に電池の異常発熱が起こるという問題がある。
リチウム二次電池の電解液は有機溶剤であるため、異常発熱が起きた段階で有機溶剤が揮発し、発火事故が生じる虞がある。
【0010】
セパレータテープ巻き面が溶接棒と直接接触するのを防ぐため、テープ巻回体を製造後、後工程としてテープ巻回体の空洞部に断面中空の管状体を挿入するという手段を採っても、当然ながら上記問題点を解決することはできない。管状体を挿入する際に、セパレータテープ巻き面をこすって傷つけたり、破断したりするという不具合が同様に起こるからである。
【0011】
また、溶接棒とセパレータテープ巻き面との密な接触を避けるため、テープ巻回体の空洞部を大きく形成しようとすると、その分、巻数が減少することになり、それによって電極面積が減少し、放電電圧容量が低下してしまうという不具合がある。
【0012】
上記した問題点を解決するため、セパレータテープの初期巻き付けの際に、セパレータテープの巻き付け端部を巻芯に接着テープで止めて固定し、この状態でセパレータテープの初期巻き付けを行うと共に、セパレータテープの初期巻き付け後、セパレータテープ及び電極テープを巻回し、得られたテープ巻回体の中にそのまま巻芯を残置させるという方法が検討されている。
【0013】
この方法によれば、テープ巻回体の中心部には、巻芯による空洞部が形成されるので、上記したタブ端子の円筒容器内底面への溶接に当り、溶接棒は巻芯の空洞部に挿入されることとなり、セパレータテープ巻き面に溶接棒が直接触れることがないため、セパレータテープ巻き面が傷ついたり、破断したりする不具合は解消される。
【0014】
しかしながら、セパレータテープの巻き付け端部を巻芯に接着テープで止める方法は、十分な固定力が得られず、固定方法としては適切なものではない。
即ち、セパレータテープの初期巻き付けは、第1セパレータテープと第2セパレータテープの2枚のセパレータテープを重ね合わせた状態で巻芯に巻き付けるため、上記接着テープによる固定の際、重ね合わせた2枚のセパレータテープを接着テープで巻芯に止めることになる。従って、2枚のセパレータテープのうち、外側に位置するセパレータテープのみが接着テープに接着し、内側に位置するセパレータテープは接着テープに接着せず、直接固定されない。
【0015】
この状態で初期巻き付けを開始すると、内側のセパレータテープが動いて位置ずれを起こす虞があり、このように内側のセパレータテープが動いて位置ずれを起こした状態で巻き付けが行なわれると、該テープ面にしわが発生し、巻き付けムラが生じ、良好な巻回体が得られないという不具合がある。
【0016】
この問題を解決するため、2枚のセパレータテープを重ね合わせる際、両者の端部同士を所定間隔ずらすという方法もある。この方法によれば、重ね合わせた2枚のセパレータテープの外テープのみならず、内テープも直接、接着テープに接着され巻芯に固定されることとなるが、両者の端部位置のずれ間隔が小さすぎると、内側テープの固定が不充分となり、前記したしわの発生を招く虞があるため、端部位置相互のずれ間隔を微妙に調整する手間を要し、それにより、セパレータテープ送り制御が煩雑となる欠点がある。
【0017】
また、2枚のセパレータテープのうち、最初に、内側テープの巻き付け端部を巻芯に接着テープで止め、次いで、外側テープの巻き付け端部を巻芯に接着テープで止めるという個別接着方法も考えられるが、作業が煩雑となり、工程数も増え、製造効率の低下を招く欠点がある。
【0018】
本発明は、上記した問題点に鑑みなされたもので、2枚相互に重なり合ったセパレータテープを確実に且つ効率よく巻芯に固定でき、巻芯への初期巻き付けを良好に行なえるテープ巻回体製造装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、2枚のセパレータテープの巻芯への初期巻き付けの際、テープ面にしわが発生する虞がなく、良好な巻回体が得られるテープ巻回体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、
(1)回転可能に支持された巻芯と、巻芯にそれぞれ第1セパレータテープ、第2セパレータテープを供給する機構と、供給された第1と第2のセパレータテープを巻芯に溶着接合する接合装置と、溶着接合された第1と第2のセパレータテープを巻芯に初期巻き付けした後、正極テープと負極テープがそれぞれ2つのセパレータテープの間に介在されるように正極テープと負極テープを巻芯に供給する機構とからなることを特徴とするテープ巻回体製造装置、
(2)接合装置は、加熱溶着装置として構成される前記(1)記載のテープ巻回体製造装置、
(3)加熱溶着装置は、巻芯の下方位置に設けられる前記(2)記載のテープ巻回体製造装置、
(4)加熱溶着装置は、加熱板をシリンダ装置に上下揺動可能に支持して構成される前記(2)又は(3)記載のテープ巻回体製造装置、
(5)加熱板には、複数の加熱突子が設けられている前記(4)記載のテープ巻回体製造装置、
(6)巻芯を回転盤に回転可能に支持し、この巻芯を支持してなる回転盤を所定回転角度に回転することにより巻芯の位置を第1の地点から第2の地点に変位するように構成した前記(1)〜(5)のいずれかに記載のテープ巻回体製造装置、
(7)回転盤における第1の地点で、正極テープ及び負極テープを切断する機構と、第2の地点で、第1セパレータテープ及び第2セパレータテープを切断する機構を有する前記(6)記載のテープ巻回体製造装置
を要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、巻芯に供給された第1と第2のセパレータテープを該巻芯に溶着接合する接合装置を設け、溶着接合された第1と第2のセパレータテープを巻芯に初期巻き付けするように構成したので、2枚のセパレータテープのそれぞれの巻き付け端部を巻芯に確実に接合固定でき、初期巻き付けの際に、一方のセパレータテープが位置ずれを起こす虞はなく、巻芯への初期巻き付けを良好に行なうことができる。
従って本発明によれば、巻き付けの過程でセパレータテープ面にしわが発生し、巻き付けムラが生じるという虞はなく、良好な巻回体を製造することができる。
【0021】
本発明は、第1と第2のセパレータテープを溶着接合により巻芯に接合固定する構造を有するので、接合作業を極めて短時間に効率よく行うことができ、生産能率を向上し、製造コストの低減に寄与できる効果がある。
また本発明によれば、製造設備として簡単な構造で済むという利点がある。
【0022】
本発明装置により製造されたテープ巻回体は、巻芯にセパレータテープを接合した状態で巻芯の周囲にセパレータテープを巻回すると共に、このセパレータテープを介して電極テープを巻芯の周囲に巻回してなり、中心空洞部に巻芯が位置して設けられている構造を有するものであるから、本発明装置により製造されたテープ巻回体を例えば、リチウム二次電池用の渦巻型電極構造体として用いる場合において、次のような作用効果が発揮される。
【0023】
即ち、本発明装置により製造されたテープ巻回体を電池ケースの円筒容器内に入れ、電極棒を挿入して負極テープのタブ端子を円筒容器内底面に溶接する作業を行うに当り、溶接棒は巻芯の中空部に挿入されることになり、そのため溶接棒がセパレータテープ巻き面と直接接触することがなく、その結果、溶接棒がセパレータテープ巻き面をこすって該面を傷つけたり、破断したりする等の虞はない。
従って、セパレータテープ巻き面の傷つきや破断が原因となって起こる疑似ショート及びそれに伴って起こる異常発熱の発生を防止できる効果がある。このように、本発明によれば、性能保持特性に優れたテープ巻回体を製造することができる。
また、溶接棒を巻芯の中空部を通して挿入することができるので、溶接棒の挿入作業を円滑、容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明テープ巻回体製造装置の略図を示すもので、図中、1は円盤形状の構造体を縦型に立てた姿勢で回転可能に設けた回転盤である。回転盤1には巻芯2が回転可能に支持されている。巻芯2は、図2に示すように、断面中空状の円筒体で、円筒体両端部は開口していると共に、その開口端部には、図3に示すように切欠部3が設けられている。
【0025】
回転盤1は、基軸に軸支され、従来公知の回転駆動装置により図1において矢印A方向に所定回転角度毎に回転する機構を備えている。この回転盤1には図4に示すように、支持ピン4が回転自在に軸装されている。
支持ピン4は、回転盤1の軸受7に枢支され、回転装置8による回転運動が、図示しない公知の回転伝達機構により支持ピン4に伝達され、これにより支持ピン4が回転するようになっている。
【0026】
巻芯2は、上記の如く回転盤1に設けられた支持ピン4に回転可能に支持されている。巻芯2を支持ピン4に取り付けるに当って、巻芯2の中空部5に支持ピン4が挿入されるようにして、巻芯2を水平方向に押し込む。このとき、図3に示すように、支持ピン4に設けられた係止突起6が巻芯2の切欠部3に係合する。
これにより、巻芯2のそれ以上の押し込みは抑止される。また、係止突起6との係合により、巻芯2は支持ピン4に対し、回転方向にも係止され、そのため、支持ピン4の回転力が巻芯2に伝達するようになっている。巻芯2は支持ピン4により、図1、図8において矢印a方向に回転可能に設けられる。
【0027】
巻芯2に第1のセパレータテープ9及び第2のセパレータテープ10を供給するために、第1セパレータテープ供給部11及び第2セパレータテープ供給部12が設けられている。
【0028】
第1と第2のセパレータテープ供給部11、12は、それぞれ、セパレータテープ材料を幾重にも巻いた原反テープ巻回体13、14と、それぞれ、セパレータテープを搬出し、巻芯2への供給方向に案内する複数の案内ローラ15、16とからなる。
【0029】
また、巻芯2に正極テープ17及び負極テープ19を供給するために、正極テープ供給部18及び負極テープ供給部20が設けられている。
【0030】
正極テープ供給部18は、正極テープ材料を幾重にも巻いた原反テープ巻回体21と、正極テープ17を搬出し、巻芯2への供給方向に案内する複数の案内ローラ22とからなる。
また、負極テープ供給部20は、負極テープ材料を幾重にも巻いた原反テープ巻回体23と、負極テープ19を搬出し、巻芯2への供給方向に案内する複数の案内ローラ24とからなる。
【0031】
巻芯2の近傍に送りローラ25、26が設けられ、搬出されたセパレータテープ9、10及び正極テープ17、負極テープ19は、それぞれ送りローラ25、26を介して巻芯2へ送られるようになっている。
【0032】
正極テープ17が巻芯2に供給される手前の位置(図1においては、送りローラ25、26に導かれる手前の位置)において正極テープ17にタブ端子を接続するためのタブ付け装置27が設けられ、このタブ付け装置27の設置位置よりも送り方向に進んだ位置(図1においては、タブ付け装置27と送りローラ25、26の間の位置)に、正極テープ17を切断するための切断装置28が設けられている。
【0033】
同様に、負極テープ19が巻芯2に供給される手前の位置(図1においては、送りローラ25、26に導かれる手前の位置)において負極テープ19にタブ端子を接続するためのタブ付け装置29が設けられ、このタブ付け装置29の設置位置よりも送り方向に進んだ位置(図1においては、タブ付け装置29と送りローラ25、26の間の位置)に、負極テープ19を切断するための切断装置30が設けられている。
【0034】
回転盤1における巻芯取付部の下方位置、即ち、巻芯2の下方位置に接合装置31が設けられている。この接合装置31は、セパレータテープ9、10を巻芯2に接合するための装置であり、図1に示す実施形態においては、接合装置31は、加熱溶着装置43として構成されている。
加熱溶着装置43は、図6に示すように、加熱板32をシリンダ装置33に上下揺動可能に支持して構成される。シリンダ装置33としては、エアシリンダ、油圧シリンダ等が用いられる。
加熱板32の上面には複数の加熱突子34が設けられており、加熱板32内部に設けたヒーター35により加熱突子34が所定温度に加熱されるようになっている。
【0035】
回転盤1の回転角度は任意に設定できるが、図1には回転角度が180°である場合の実施形態が示されている。この実施形態においては、電極テープ(正極テープ17及び負極テープ19)の巻き付けが終了したときに、回転盤1を180°回転し、巻芯2の位置を第1の地点(図中、Xの地点)から第2の地点(図中、Yの地点)に変位させるように構成されている。
巻芯2がX地点からY地点に変位したとき、巻芯2はY地点においても回転可能となるように設けられている。この場合、X地点におけると同様に矢印a方向に回転可能に設けられる。
【0036】
Yの地点における巻芯2の近傍位置には、セパレータテープ9、10を切断するための切断装置36が設けられている。
【0037】
巻芯2がYの地点に変位したとき、この地点において巻芯2に巻回されているテープを巻き止めするシールテープ37が、Yの地点の近傍に配置されている。38は、シールテープ37の案内ローラである。
【0038】
正極テープ17は、アルミニウム箔の両面にコバルト酸リチウム等のリチウム遷移金属酸化物を溶媒で溶いて塗布後、乾燥、プレスして密度を上げて製作してなるものであり、また負極テープ19は、銅箔の両面にカーボン等の炭素材料を溶媒で溶いて塗布後、乾燥、プレスして密度を上げて製作してなるものである。
【0039】
セパレータテープ9、10は、正極と負極との間でイオンが移動できる多孔質構造を有する材料が用いられる。セパレータテープ9、10として、微多孔性プラスチックフィルムを用いることが好ましく、この微多孔性プラスチックフィルムの材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性を有するポリオレフィン系樹脂が好ましい。
尚、セパレータテープ9と10は同一材料のものを用いても或いは相互に異なった材料のものを用いてもよい。
【0040】
巻芯2の材料としては、セパレータテープ9、10と熱溶着できるものであればどのような材料も使用可能であるが、プラスチックにて形成することが好ましく、このプラスチック材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性を有するポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0041】
正極テープ17に接続されるタブ端子として、アルミタブが用いられ、また負極テープ19に接続されるタブ端子として、ニッケルタブが用いられる。これらのタブ端子は、超音波溶接によりそれぞれ、正極テープ17、負極テープ19に接続される。
【0042】
シールテープ37は、プラスチックフィルムに接着剤を塗布してなるもので、プラスチックフィルムの材料として、ポリイミド等が用いられる。
【0043】
次に、上記の如く構成される本発明テープ巻回体製造装置の作用について説明する。
第1セパレータテープ供給部11、第2セパレータテープ供給部12において、原反テープ巻回体13、14よりそれぞれ、第1セパレータテープ9、第2セパレータテープ10が搬出され、それらはそれぞれ、案内ローラ15、16を介して送りローラ25、26に送り込まれ、この送りローラ25、26によって第1セパレータテープ9、第2セパレータテープ10が巻芯2に供給される。
【0044】
第1セパレータテープ9と第2セパレータテープ10は、送りローラ25、26によって相互に重ね合わされた状態で巻芯2に供給され、セパレータテープ9、10の端部が巻芯2の下面に位置した時点でセパレータテープ9、10の送り動作を停止する。
この時、加熱溶着装置43におけるシリンダ装置33が作動して加熱板32を上昇させ、図5に示すように、加熱突子34を下方からセパレータテープ9、10に押し当て、巻芯2との間にセパレータテープ9、10を挟持した形で加圧加熱し、それによりセパレータテープ9、10の端部を巻芯2に加熱溶着により接合する。
この加熱溶着の条件としては、加熱温度160〜190℃、加圧加熱時間0.2〜1秒である。
【0045】
加熱突子34による加圧加熱により、セパレータテープ9、10は、図7に示すように巻芯2に点状に融着される。図中、39は点状接合部を示す。このように、セパレータテープ9、10の巻芯2への接合を点状接合とすることにより、所定のテープ強度を保持できる効果がある。
上記の加圧加熱に当って、突起形状ではなく連続した線形状の加熱板を用いて、いわゆるベタ融着を行なうと、セパレータテープ9、10の加熱溶融により融着面におけるテープ厚さが全体的に薄くなり、その結果、テープ強度が低下し、巻き付け時のテンション力によりテープが破断する虞があるが、上記の如く点状加熱溶融とすることにより、融着面におけるテープ強度を必要な強度に保持できる利点がある。
尚、ベタ融着を行なっても、所定のテープ強度を保持できるようなテープ材料を用いるのであれば、必ずしも点状接合を行なう必要はなく、ベタ融着でもよい。
【0046】
セパレータテープ9、10の端部を巻芯2に接合するための加熱溶着が終了すると、シリンダ装置33により加熱板32が降下し、加熱突子34は、セパレータテープ9、10の接合位置から離間し、旧位置に復帰する。
【0047】
次に、回転装置8が作動して支持ピン4が回転し、この支持ピン4に係止される巻芯2が支持ピン4と同軸上に回転し、この巻芯2の回転に伴い、巻芯2に接合されているセパレータテープ9、10が相互に重なり合った状態で巻芯2に巻き付き、巻回される。このようにして、セパレータテープ9、10の初期巻き付けが行われる。
【0048】
一方、正極テープ供給部18において原反テープ巻回体21より正極テープ17が搬出されると共に、負極テープ供給部20において原反テープ巻回体23より負極テープ19が搬出され、それぞれ案内ローラ22、24を介して送りローラ25、26方向に案内される。
【0049】
正極テープ17、負極テープ19にはそれぞれタブ付け装置27、29によってタブ端子が超音波溶接により接続される。
【0050】
上記したセパレータテープ9、10の初期巻き付けは、セパレータテープ9、10を巻芯2に所定巻数で巻き付けることにより行われる。セパレータテープ9、10を初期巻き付けした後、正極テープ17、負極テープ19は、送りローラ25、26に送り込まれ、この送りローラ25、26によって図8に示すように、巻芯2に供給される。
同図に示すように、正極テープ17は、初期巻き付けにより既に巻芯2に巻かれているセパレータテープとこれから巻き付けが行われる過程にあるセパレータテープ9との間に送り込まれる。既に巻芯2に巻かれているセパレータテープの最外層(外表面)はセパレータテープ10なので、正極テープ17は、セパレータテープ10とセパレータテープ9との間に送り込まれることになる。
また負極テープ19は、これから巻き付けが行われる過程にあるセパレータテープ9とセパレータテープ10との間に送り込まれる。
【0051】
このように、図8において上から順に、正極テープ17、セパレータテープ9、負極テープ19、セパレータテープ10が重なり合った状態となり、テープ積層体を形成する。
このテープ積層体は、送りローラ25、26により巻芯2に供給され、巻芯2の周囲に巻回される。
【0052】
正極テープ17と負極テープ19の巻数が所定の巻回長さに達したとき、巻芯2の回転を止め、巻回動作を停止する。次いで、切断装置28、30が駆動し、これらの切断装置28、30によって、それぞれ正極テープ17と負極テープ19が切断される。
切断後、巻芯2を回転し、巻芯2位置と切断位置との間に残った電極テープ(正極テープ17、負極テープ19)部分を巻き取る。
【0053】
上記電極テープの切断残り部分を巻き取った後、巻芯2の回転を止め、巻回動作を停止し、回転盤1を回転駆動する。図1に示す実施形態においては、回転盤1は180°の回転角度に回転し、それにより、巻芯2の位置がX地点からY地点に変位する。従ってまた、X地点で巻き付けが行われることによって得られた巻回体は、X地点からY地点に変位する。このとき、送りローラ25、26によって、セパレータテープ9、10が送り出され、セパレータテープ9、10はY地点まで延びた状態に繰り出される。
【0054】
この状態において切断装置36が駆動し、セパレータテープ9、10を切断する。
次いで、Y地点における巻芯2を矢印a方向に回転し、巻芯2位置と切断位置との間に残ったセパレータテープ部分を巻き取る。
【0055】
上記セパレータテープの切断残り部分を巻き取る際、シールテープ37が案内ローラ38によって供給され、シールテープ37の端部が巻回体表面に貼着する。巻回体の回転に伴って、シールテープ37は巻回体の周面に巻き付けられ、次いで、シールテープ37の切断が行われる。
シールテープ37が巻回体の周面に貼着して巻き付くことにより、巻き止めが完了し、テープ巻回体40が得られる。
【0056】
巻き止め完了後、巻芯2の回転を止め、巻回動作を停止する。次いで、図4に示すように、テープ巻回体40を、チャック機構を有する把持具41によって把持し、この状態で支持ピン4を回転盤1から抜いて、巻芯2から支持ピン4を離脱させる。
把持具41を図示しないリンク機構によって回動し、把持具41によって把持されたテープ巻回体40をY地点から離れた場所に移動し、ここでチャックを解除してテープ巻回体40を取り出す。
テープ巻回体40の取り出し後、回転盤1は矢印A方向に180°回転駆動し、元の位置に復帰する。
【0057】
このようにして、本発明装置により図9に示すようなテープ巻回体40が製造される。同図に示すように、テープ巻回体40の中心空洞部42には、巻芯2が位置して設けられている。
即ち、テープ巻回体40は、第1と第2のセパレータテープ9、10を重ね合わせた状態で、その端部を巻芯2に接合し、巻芯2に接合されたセパレータテープ9、10を巻芯2の周囲に巻回すると共に、正極テープ17と負極テープ19がそれぞれ第1セパレータテープ9と第2セパレータテープ10との間に介在されるようにして、正極テープ17及び負極テープ19を巻芯2の周囲に巻回してなり、中心空洞部42に巻芯2が位置して設けられている構造を有するものである。
【0058】
上記した本発明実施形態は、接合装置31を、加熱溶着装置43として構成した場合の態様について説明したが、本発明はこれに限定されず、接合装置31を、超音波溶着装置として構成し、第1と第2のセパレータテープ9、10を巻芯2に超音波溶着により接合するように構成することもできる。この超音波溶着による接合の場合、セパレータテープ及び巻芯の材質として、上記した加熱溶着を行う場合と同一の材質を用いることができ、従って、セパレータテープ及び巻芯の材質として、いずれもポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0059】
本発明において、第1と第2のセパレータテープ9、10を巻芯2に接合する位置は、セパレータテープ9、10の端部に限定されるものではなく、端部位置から多少、離れた位置であってもよい。
【0060】
本発明において、巻芯2の位置を第1の地点(X地点)から第2の地点(Y地点)に変位するための回転盤1の回転角度は180°に限られず、90°や120°等任意の回転角度に設定できる。
【0061】
上記した本発明実施形態は、回転盤1における第1の地点(X地点)にのみ巻芯支持部を設けた(即ち、巻芯支持部は1つである)が、第1の地点(X地点)と第2の地点(Y地点)の2箇所に巻芯支持部を設けてもよい。即ち、X地点に第1巻芯支持部を設け、Y地点に第2巻芯支持部を設けることができる。
この場合、X地点の第1巻芯支持部で巻芯2に電極テープ(正極テープ17、負極テープ19)を巻回した後、回転盤1を回転して巻芯2をY地点に変位したとき、それに伴ってY地点からX地点に移動した第2巻芯支持部に新しい巻芯が供給され、Y地点で巻回体を取り出している間に、X地点における第2巻芯支持部の巻芯に対するセパレータテープ及び電極テープの巻回動作が行われ、この巻回終了後、前記した動作が繰り返し行われるように構成することができる。これによって、連続的にテープ巻回体を製造でき、製造能率を向上できる。
尚、この態様において、巻芯支持部を2箇所以上、例えば3箇所設けることもできる。
【0062】
本発明装置により製造されたテープ巻回体は、リチウム二次電池用の渦巻型電極構造体として用いることができる。リチウム二次電池の製造に当って、テープ巻回体は、電池ケースの円筒容器内に収納される。この円筒容器として、通常、ニッケルメッキされた鉄製の円筒缶が用いられる。
円筒容器に収納されたテープ巻回体の中心空洞部に、上方より溶接棒を挿入し、この溶接棒により負極テープ19のタブ端子を円筒容器内底面に溶接して接続する。
【0063】
次いで、電解液を円筒容器内に注入した後、正極テープ17のタブ端子を電池ケースの蓋体裏面に溶接して接続し、しかる後、蓋体を円筒容器の開口部にカシメ止めをして封口する。このようにしてリチウム二次電池が製造される。
【0064】
本発明装置により製造されたテープ巻回体40は、その中心空洞部42に巻芯2が位置して設けられている。このように、巻芯2がそのままテープ巻回体40の中に組み込まれており、巻芯2は、テープ巻回体40を構成する1つの構成要素となっている。
テープ巻回体40は、その中心空洞部42に巻芯2を有しているから、上記の負極タブ(負極テープ19のタブ端子)溶接工程において、テープ巻回体40の中心空洞部に溶接棒を挿入する際、溶接棒は巻芯2の中空部5に挿入されることになり、そのため溶接棒がセパレータテープ巻き面と直接接触することがない。
その結果、溶接棒がセパレータテープ巻き面をこすって該面を傷つけたり、破断したりする等の虞はなく、疑似ショート、異常発熱を招く危険を防止できる。また、溶接棒は巻芯2の中空部5に挿入されるので、挿入作業を円滑、容易に行うことができる。
【0065】
本発明装置により製造されたテープ巻回体は、リチウム二次電池用として用いることに限定されず、例えば、電解コンデンサー素子、キャパシタ素子として用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明テープ巻回体製造装置の略図である。
【図2】巻芯の一部切欠正面図である。
【図3】巻芯が支持ピンに係止される状態を示す要部縦断面図である。
【図4】巻芯の回転支持構造を示す部分縦断面図である。
【図5】セパレータテープを巻芯に接合する状態を示す説明図である。
【図6】加熱溶着装置を示す部分正面図である。
【図7】セパレータテープを巻芯に点状接合した状態を示す部分斜視図である。
【図8】巻芯にセパレータテープ及び電極テープを巻き付ける状態を示す説明図である。
【図9】本発明装置により製造されたテープ巻回体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
2 巻芯
9、10 セパレータテープ
11 第1セパレータテープ供給部
12 第2セパレータテープ供給部
17 正極テープ
18 正極テープ供給部
19 負極テープ
20 負極テープ供給部
28、30 切断装置
31 接合装置
40 テープ巻回体
43 加熱溶着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持された巻芯と、巻芯にそれぞれ第1セパレータテープ、第2セパレータテープを供給する機構と、供給された第1と第2のセパレータテープを巻芯に溶着接合する接合装置と、溶着接合された第1と第2のセパレータテープを巻芯に初期巻き付けした後、正極テープと負極テープがそれぞれ2つのセパレータテープの間に介在されるように正極テープと負極テープを巻芯に供給する機構とからなることを特徴とするテープ巻回体製造装置。
【請求項2】
接合装置は、加熱溶着装置として構成される請求項1記載のテープ巻回体製造装置。
【請求項3】
加熱溶着装置は、巻芯の下方位置に設けられる請求項2記載のテープ巻回体製造装置。
【請求項4】
加熱溶着装置は、加熱板をシリンダ装置に上下揺動可能に支持して構成される請求項2又は3記載のテープ巻回体製造装置。
【請求項5】
加熱板には、複数の加熱突子が設けられている請求項4記載のテープ巻回体製造装置。
【請求項6】
巻芯を回転盤に回転可能に支持し、この巻芯を支持してなる回転盤を所定回転角度に回転することにより巻芯の位置を第1の地点から第2の地点に変位するように構成した請求項1〜5のいずれかに記載のテープ巻回体製造装置。
【請求項7】
回転盤における第1の地点で、正極テープ及び負極テープを切断する機構と、第2の地点で、第1セパレータテープ及び第2セパレータテープを切断する機構を有する請求項6記載のテープ巻回体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−289661(P2009−289661A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142723(P2008−142723)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(398026048)カトー機工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】