説明

ディジタル信号の復号中に後処理ステップによってもたらされるひずみの制限

本発明は、デコーダ(14)からかつノイズ減少後処理(16)ステップから生じるディジタル信号の処理に関し、それは、特に、後処理された信号(SPOST)の現在の振幅及び復号化された信号(S’Pcm)の対応の現在の振幅のそれぞれの値に従って、修正された出力信号(SOUT)を、 − 後処理された信号(SPOST)の現在の振幅値と復号化された信号(S’Pcm)の対応の現在の振幅値との間の中間値を有する現在の振幅値、 − または、後処理された信号(SPOST)の現在の振幅、に割当てることによって、修正された出力信号(SOUT)を配送するよう、後処理によってもたらされるひずみの制限(26)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理に関し、特に、遠隔通信の分野におけるディジタル信号の処理に関し、これらの信号は、例えば、おそらく、音声信号、音楽信号、ビデオ信号、等である。
【背景技術】
【0002】
一般に、オーディオ信号及び/またはビデオ信号を充分な品質で通すために必要とされるビット・レートは、遠隔通信において重要なパラメータである。このパラメータを減少し、従って、全く同じネットワークを介する可能な通信の数を増加させるために、特に、信号を送信するために必要とされる情報の品質を圧縮するためにオーディオ・コーダが開発されてきた。
【0003】
或るコーダは、特に高い情報の圧縮係数を達成することを可能とする。このようなコーダは、一般に、進歩した情報のモデリング及び量子化技術を用いる。従って、これらのコーダは、信号の部分データもしくはモデルを送信するだけである。
【0004】
復号化された信号は、(情報の部分が量子化動作のために送信されなかったので)元の信号とは同じではないけれども、それにもかかわらず、(少なくとも認知という観点からは)元の信号に非常に近いままである。復号化された信号と元の信号との間の、数学的意味においての、違いは、次に、「量子化雑音」と呼ばれる。
【0005】
信号圧縮処理は、しばしば、量子化雑音を最小とするように、特に、オーディオ信号の処理が関係するときにこの量子化雑音を可能な限り聞こえないように設計される。従って、このノイズを「マスキングする」目的で聴覚の心理音響特性を考慮する技術が存在する。しかしながら、最も低い可能なビット・レート得るために、量子化雑音は、時には完全にマスキングすることが困難(もしくは実際不可能)であり得、それにより、或る環境においては、信号の品質及び/または明瞭度を劣化させる。
【0006】
この量子化雑音を減少して、それ故、品質を改善するために、2つの群の技術が復号化に関して用いられ得る。
【0007】
第1に、Chen及びGershoによる論文:“Adaptive postfiltering for quality enhancement of coded speech”、IEEE Transactions on Speech and Audio Processing、Vol.3、No.1、1995年1月、59頁−71頁に記載されており、かつCELP(“コード励起される線形予測”)タイプの音声デコーダに特に用いられる種類の適応型の後フィルタを用いることが可能である。
【0008】
このことは、量子化ノイズが最も可聴である領域(特に、基本周期の高調波もしくは“ピッチ”及びフォルマント間の)における信号を減衰することによって主観的な品質を改善するフィルタリングを行うことを含む。現在の適応型後フィルタは、音声信号に対しては良好な結果をもたらすが、他の種類の信号(例えば、音楽信号)に対しては、良好でない結果となる。
【0009】
もう1つの処理群は、有用な信号をスプリアスなノイズから区別し、復号化の後に量子化雑音を減少するよう後処理として適用され得る通常のノイズ減少処理を目的としている。この種類の処理は、信号取得環境に関係したノイズを減少することを最初に可能として、そしてしばしば音声信号のために用いられる。しかしながら、音声ピックアップ環境に関係したノイズに対して処理を透明にすることが不可能であり、それにより、特に音楽信号の符号化に対する課題を提起する。従って、符号化/復号化において、人は、“環境”ノイズを送信することを望むかもしれず、そして次にノイズ減少がこの種類の“環境”ノイズには適用されないが、特に量子化雑音を減少することを目的とされた復号化に関する後処理の文脈においては、量子化雑音だけに適用されることを望むかも知れない。
【0010】
それにもかかわらず、これらの種々の種類の量子化雑音の減少方法は、多かれ少なかれ信号を変形させる。例えば、音声信号に対して攻撃的すぎるであろう後フィルタ(雑音除去(denoising))の使用は、量子化雑音を完全に除去することを可能とするであろうが、得られた音声音は、自然でない及び/または音を殺したように見えるであろう。これらの種々の種類の方法の最適化は、従って、困難であり、そして
− 量子化雑音の抑制の有効性と、
− 特に、自然または不自然な観点について、初期の信号の特性の保全と、
の間の妥協を見つけることが系統的に適切である。
【0011】
本発明は、この状況を改善することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明は、デコーダからかつノイズ減少後処理から生じるディジタル信号を処理するための方法を提案する。本発明の意味内における該方法は、修正された出力信号を、
− 後処理された信号の現在の振幅値と復号化された信号の対応の現在の振幅値との間の中間値を有する現在の振幅値に、
− または、後処理された信号の現在の振幅及び復号化された信号の対応の現在の振幅によってそれぞれ取られる値に従って、後処理された信号の現在の振幅に、
割当てることによって、修正された出力信号を配送するよう、後処理によってもたらされるひずみの制限を提案する。
【0013】
長所的には、後処理された信号の現在の振幅と、符号化された信号の対応の現在の振幅との間の一時対応を確実にするように、遅延線が設けられる。
【0014】
特定の実施形態において、当該方法は、
− 許可された振幅の間隔を定義するステップと、該間隔は、復号化された(しかし後処理されない)信号の現在の振幅値に依存する下境界及び上境界を含むものであり、
− 後処理された信号の対応の現在の振幅に対して、現在の振幅値を
・ 後処理された信号の現在の振幅が下境界の値より小さい場合には、下境界の、
・ 後処理された信号の現在の振幅が上境界の値より大きい場合には、上境界の、
・ 後処理された信号の現在の振幅の値が前記間隔内に含まれる場合には、後処理信号の現在の振幅の
値に等しい出力信号に割当てるステップと、
を含む。
【0015】
従って、本発明は、復号化された信号が、復号化された信号の後処理中に、或る許容範囲を超えて逸脱しないということを提案する。
【0016】
次に、一実施形態においては、該上境界及び下境界間の差が値のスパンに等しいように上述の下及び上境界が選択されるような態様で、この許容範囲を量的に限定するように、振幅値のスパンを、復号化された信号の各可能な振幅値に割当てることを可能とする。
【0017】
この実施形態は、長所的には、受信された信号が、スカラ量子化符号化によって符号化されており、デコーダは、個別の態様で一方からもう一方に変る量子化された振幅値を配送し、量子化された値間の連続する偏差は、量子化ステップサイズを限定する場合において履行され得る。従って、
− 上境界は、符号化された信号の現在の振幅に割当てられる量子化された値に、量子化ステップサイズの実質的に半分を追加することによって与えられ得、そして
− 下境界は、符号化された信号の現在の振幅に割当てられる量子化された値から、量子化ステップサイズの実質的に半分を差し引くことによって与えられ得る。
【0018】
例示的なスカラ量子化符号化は、符号化されたインデックスを配送する、いわゆる、“パルス・コード変調符号化”である。この場合、下及び上境界のそれぞれの現在の値を、デコーダにおいて受信された現在の符号化されたインデックスに基づいてのみ決定することが可能である。さらに、受信された現在のインデックスに対して、下及び上境界のそれぞれの現在の値のいずれが次に決定され得るかに基づいて、対応の量子化された値と対応の量子化ステップサイズの半分とを与える対応表が設けられ得る。
【0019】
本発明の他の特徴及び長所は、以下に詳細にされる説明及び添付図面を精査することで明瞭となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】スカラ量子化コーデックの一般的な構造を非常に概略的に示す図であり、該コーデックのデコーダは、後処理によって、並びに後処理によってもたらされるひずみを制限するための本発明の意味内のモジュールによって後続される。
【図2】図1のひずみを制限するためのモジュールの構造及びそれと後処理モジュールとの相互作用を概略的に示す図である。
【図3】本発明の意味内のひずみを制限するためのステップを概略的に示す図である。
【図4】本発明の意味内のひずみを制限するためのモジュールのハードウェア構造を非常に概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、スカラ量子化タイプの符号化/復号化の文脈において長所的に介在する。例えば、PCM(“パルス符号変調”)タイプの符号化の場合、各入力サンプルは、予測無しに個々に符号化される。このようなコーデックの原理を、図1を参照して思い起こす。
【0022】
ITU−T G.711基準の意味内のこのタイプの符号化は、広いダイナミック・レンジの信号に対してほとんど一定の信号対雑音比を得ることを可能とする対数曲線によって、300から3400Hzまでの最小帯域の周波数に代表的には限定される、8kHzにおいてサンプリングされる信号の圧縮を行う。
【0023】
一層詳細には、量子化ステップサイズ(stepsize)は、信号の振幅にほぼ比例する。初期の信号Sは、最初にコーダ13において符号化され(モジュール10)、インデックスIPCMの結果のシーケンスは、サンプルごとに8ビットで表わされ(図1の参照数字15を参照)、このことは、従って、256の量子化レベル(2=256)に対応する。交換電話ネットワーク11において、これらの8ビットは、8×8=64キロビット/秒のビット・レートを与えるよう8kHzの周波数で送信される。デコーダ14において、ネットワーク11によって配送された信号I’PCMの受信時に、最後に復号化された信号S’PCMが逆量子化器12の出力において得られる。実際には、逆量子化がテーブルによって監督されるならば、それは、単に、以下のチャート1にリストされる256の量子化された値を含むテーブル内のインデックスをポインティングすることにある。このチャート1は、それがヨーロッパで履行されているようなITU−T G.711基準(いわゆる“A−law”プラクティス)のために創設される。
【0024】
例えば、符号化されるべき信号Sの元のサンプルは、−75に等しい振幅を有する。それ故、この振幅は、チャートの行123(または“レベル”123)の間隔[−80、−65]にある。この情報の符号化は、0x51に等しい、図1において及びチャート1においてI’PCMで参照される符号化された最後のインデックスを配送することにある。復号化時、逆量子化動作は、従って、インデックスI’PCM=0x51を回収して、それを量子化された値QVと整合させQV=−72とすることにある。それ故、復号化は、この値−72を、復号化された信号S’PCMの対応のサンプルの振幅に割当てる。この同じ値QV=−72は、初期の振幅が間隔[−80、−65]内の値を有した、復号化されるべきサンプルのすべてに、すなわち、該間隔内の16のすべての可能な値に割当てられるであろうことが意味され、このことは、ここでは16の量子化ステップサイズに対応する。他方、同じ値QV=32256は、初期の振幅が間隔[31744、32767]内であった、サンプルのすべてに、すなわち、1024のすべての可能な値に割当てられるであろうことが意味され、このことは、1024の量子化ステップサイズに対応する。
【0025】
【表1】

【0026】
その履行を容易にするために、PCM圧縮が、セグメント・ベースの線形振幅圧縮によって行われる。ITU−T G.711基準において、256の量子化された値を特徴付ける8ビットは、従って、以下の態様で配分される:
【0027】
− 図1において参照符号sgnを有する1符号ビット(負の値に対して0;そしてその他は1)
− 図1において参照符号ID−SEGを有する0から7までのセグメント識別子(チャート2及び3)を示すための3ビット、及び
− 図1において参照符号ID−POSを有する現在のセグメント上のレベルの場所を特定するための4ビット。
【0028】
特にA−lawによるG.711基準において、量子化ステップサイズは、1つのセグメントから次に通過する際に2で乗算され(16、32、64、...)、第2のセグメントから前方にそうする。この符号化法は、従って、インデックス0及び1(チャート2)の最初の2つのセグメント上に12ビットの量子化精度(16の量子化ステップサイズを有する)を有することを可能とする。次に、該精度は、以下のチャート2によって示されるように、セグメント・インデックスの各増分において1ビットだけ減少する(量子化ステップサイズは、各増分において2によって乗算される)。
【0029】
【表2】

【0030】
チャート2は、以下のように解釈される。例として、元のサンプルの振幅が−30000に等しいならば:
【0031】
− 関連のセグメント“7”のインデックスは、3ビット上で符号化され、
− 符号“−”は、1ビット上で符号化され(0に設定)、そして
− 4つの残りのビット(13、12、11及び10)は、インデックス7のセグメントにおける振幅レベルを限定する。
【0032】
同様に、元のサンプルの振幅が+4000に等しいならば:
− 関連のセグメント“4”のインデックスは、3ビット上で符号化され、
− 符号“+”は、1ビット上で符号化され(1に設定)、そして
− 4つの残りのビット(3、2、1及び0)は、インデックス4のセグメントにおける振幅レベルを限定する。
【0033】
以下のチャート3は、チャート2と等価であるが、特に量子化ステップサイズと、量子化された値QV及び元のサンプルの振幅の本当の値間の最大可能偏差EMAXとを有する、特に米国または日本で実行されているようなG.711基準(“μ−law”と称される)のためのものである。
【0034】
【表3】

【0035】
チャート1の行123に戻ると、間隔[−80、−65]の16のすべての値は、一旦復号化されると量子化された値−72を与える、0x51の符号語によって表わされる。しかしながら、逆に言えば、符号化された値−72を得ることによって、符号化されていた元の値が間隔[−80、−65]にあったということが確実である、ということに留意されるべきである。従って、このサンプルのための符号化エラーの最大振幅がEMAX=8であるということが知られ、このことは、量子化ステップサイズの半分に対応する。
【0036】
以下において、デコーダにおいて受信される最後のインデックスI’Pcmは、一方では、量子化された値QVを、そして他方では、それに基づいて量子化ステップサイズが演繹され得るセグメント・インデックスID−SEG及びこれから符号化エラーEMAXの最大振幅を、決定することが可能であると仮定される。また、セグメントID−SIGのインデックスが、A−law(チャート2)によるG.711符号化の場合における信号の振幅の最も高いオーダーのビットの位置の関数としても発見され得ることが留意されるであろう。一般的なルールとして、PCM符号化の特定の特徴は、元のサンプル及び符号化されたサンプルがいつも:
− 元のサンプルに対して、間隔における任意の位置において、
− 及び、復号化されたサンプルに対して、間隔の中央において対照的に、
全く同じ量子化間隔においてそれらの振幅を有するということであるということが仮定されるであろう。
【0037】
再度、図1を参照して、復号化された信号S’Pcmは、その後、後処理フィルタリング16(例えば、雑音除去(denoising)または知覚後フィルタの適用)を受ける。結果の信号SPOSTは、次に、発明の意味内でのモジュール20によって処理される。
【0038】
実際、前に示したように、後処理16は(それが一般的に波形を保存するように線形位相タイプのものであるとしても)、あまりにも攻撃的であり得、特に、音声信号の自然の観点を損ない得る。デコーダにおいて、それにもかかわらず、元の信号に関する情報は、利用可能であり、一方では復号化されかつ後フィルタリングされた信号SPOSTと、他方では元の信号Sとの間の偏差を制限するよう、本発明の意味内で使用され得る。従って、モジュール20(図1)は、本発明の意味内で、復号の際に履行される後処理によって引き起こされるひずみを制限することが可能である。
【0039】
以後詳細に説明される可能な例示的実施形態は、復号化された信号S’Pcmに対して後処理16によってもたらされるひずみが、符号化エラーEMAXの最大振幅以上であることができないということを必要とするということである。このことは、従って、後フィルタリングされた信号が、元の信号と同じ量子化間隔内に留まるということを確実にする。符号化/復号化処理及び後処理に起因する全体的なひずみは制限され、特に、符号化の最大ひずみEMAXにきわめて近接する。この方法は、また、連続するサンプルと全体の波形との間のエネルギ配分が良好に保存されるということを確実にする。
【0040】
本発明の例示的な履行が図2に示されている。符号化された最後のインデックスI’Pcmの受信時に、モジュール21は、受信されたインデックスI’Pcmの逆量子化によって、符号化されたサンプルS’Pcmを計算する。モジュール22は、前述の後処理を行う。この動作は、一般に、遅延をもたらすということも推定されるであろう。並列的に、受信されたインデックスI’Pcmがまた適用される遅延線(モジュール23)で長所的に始まる本発明の意味内の処理が行われる。特に、遅延は、遅延されたインデックスI’Pcm_DELが後処理22の出力SPOSTによって配送された現在のサンプルと時間に渡って整列されるように調整される。
【0041】
遅延線23の例示的実施形態は以下のものであり得る。後処理22が16サンプルの遅延をもたらすと仮定すると、モジュール23は、次に、長所的な態様において、シフト・レジスタを有する16サンプルのメモリMEMを備える。例えば、このメモリのインデックス0は、最も古いサンプルに対応し、それに反して、インデックス15は、記憶された最後のサンプルに対応する。従って、新しいインデックスがモジュール23の入力に到着するとき、以下の動作が行われる:
【0042】
− 最も古い記憶されたサンプルを含むモジュール23の出力は、今やI’Pcm_DEL=MEM(0)のようである、
− メモリ・シフトが適用される:i=0,...14に対してMEM(i)=MEM(i+1)、
− 新しく到着したサンプルが記憶される:MEM(15)=I’Pcm
【0043】
遅延されたインデックスI’Pcm_DELに基づいて、モジュール25は、例えば、上のチャート1のデータを含み得るテーブル24に基づいて、対応の量子化された値QV及び対応の最大符号化エラーEMAXを決定する。チャート1のデータは、以下のチャート4に再トレースされ、このデータは、モジュール25によって行われるパラメータQV及びEMAXの決定のために用いられ得る。
【0044】
【表4】

【0045】
ここに、チャート4によって与えられる情報は、量子化された値QVの関数として展開されて、このチャート4が上に与えられたチャート1から導出されるということを示す。しかしながら、実際、さらに続けて説明されるように、入力として、受信されかつ遅延されたインデックスI’Pcm_DELをカタログし、そして出力として対応のパラメータQV及びEMAXを与えるテーブル(表)24を用いることが好ましい。以下のチャート5は、チャート4と同じデータを含むが、インデックス値I’Pcm_DELに従って配列される。
【0046】
このように、チャート5は、与えられたインデックスI’Pcm_DELの関数としてそれぞれのパラメータQV及びEMAXを提起し、従って、G.711 A−law基準に対して、図2のテーブル24の内容を構成することができる。
【0047】
【表5】

【0048】
もちろん、変形例として、遅延線23の入力に(後処理の前に)復号化された信号S’Pcmを提起し、各サンプルに割当てられた量子化された値QVに基づいて、そこから対応のパラメータEMAXを演繹することが可能であるだろう。上に与えられたチャート4に従ってレイドアウトされたテーブル24が次に用いられるであろう。
【0049】
しかしながら、この実施形態は、A−lawのために与えられたチャート1の等価物がチャート6で以下に与えられるμ−lawに従う符号化において特に、長所的なものではない。
【0050】
実際、全く同じ量子化された値QV=0が異なった受信されたインデックス:I’Pcm=0x7f及びI’Pcm=0xff、に対して割当てられるということがチャート6で認められるであろう。このように、μ−lawによる符号化の場合には、モジュール25が、受信されたインデックスに基づいて(かつ量子化された値に基づかずに)動作するとき、元のサンプルの振幅が位置していたことができた間隔の範囲が一層精細に決定され得る。
【0051】
【表6】

【0052】
図2に表わされたタイプの処理においてテーブル24が含むことができるデータは、このように、μ−lawによる符号化の文脈において、以下のチャート7に表わされてきた。
【0053】
【表7】

【0054】
(従ってチャート5または7のデータを含み得る)テーブル24は、本発明の意味内でモジュール20のメモリ(図1)内にハード記憶され得る。しかしながら、メモリの一層安価な変形実施形態において、パラメータEMAX及びQVは、以下のように、テーブル24にたよることなく、受信されたインデックスに基づいて直接計算される。
【0055】
実際、セグメントID−SEGの識別子は、受信されかつ遅延されたインデックスI’Pcm_DELにおける3つのビット(図1のビット1、2、3)で符号化される。このように、モジュール25は、識別子ID−SEGとパラメータEMAXとの間の簡単な対応の関数に基づいて、識別子ID−SEGのこのセグメントに関係した最大符号化エラーEMAXを計算することができ、この関数は、先に与えられたチャート2および3に従って、以下に基づいて可能に構成される:
【0056】
− 識別子ID−SEGを量子化ステップサイズに関係させる現存の関数に基づいて、そして
− 量子化ステップサイズを最大の符号化エラーEMAXに関係させる現存の関数に基づいて。
【0057】
その後、モジュール26は、後処理されたサンプルSPOSTと後処理S’Pcm無しでちょうど復号化されたサンプルとの間の偏差が、パラメータEMAXの発見された値を超えないか否かを確認し、超えた場合は、後処理が、制限することが適切であるひずみを誘発した場合である。例示的実施形態において、サンプルSPOSTの値は、従って、量子化された値QVに近い値に減少され、それ故、値SPOSTとQVとの間の偏差は、認可された閾値以下に留まる。
【0058】
従って、モジュール26は、
− 後処理された現在のサンプルSPOSTに基づいて、
− 後処理無しでちょうど復号化された対応のサンプルの量子化された値QVに基づいて、そして
− この量子化された値QVと共に発見された最大符号化エラーEMAXに基づいて、
以下のように動作する。
【0059】
図3は、フローチャートの形態で図2のモジュール26の動作を詳細にする。このモジュールの入力は、従って、後処理されたサンプルSPOSTと、対応の量子化された値QVと、対応の最大符号化エラーEMAXとである(ステップ31)。ステップ32及び33において、現在の量子化された値QVの回りの量子化間隔のそれぞれ下限界LimINF及び上限界LimSUPである限界が決定される。ステップ34において、後処理されたサンプルSPOSTが下限界LimINF以下の振幅を有するか否かを確認するためにチェックが行われる。従って、臨時の変数Tmpが以下において固定化される:
− サンプルSPOSTの振幅値においてか、または
− (振幅SPOSTが限界LimINF以下であるならば、)認可された下限界LimINFの振幅値においてかのいずれかにおいて。
【0060】
同じチェックがステップ35において上限界LimSUPに対して行われる。最後に、出力SOUTが以下を与える:
− (それが限界LimINF及びLimSUPによって範囲を定められた間隔内にすでにあった場合に)サンプルSPOSTの振幅の変更されない値、
− または、(サンプルSPOSTの振幅がこの限界LimINF以下であった場合に)下限界LimINF
− または他に、(サンプルSPOSTの振幅がこの限界LimSUPに以上であった場合に)上限界LimSUP、のいずれか。
【0061】
従って、出力信号SOUTは、常に、元の信号Sと同じ量子化間隔内に留まる。
【0062】
この例示的実施形態において、出力信号は、
[S’Pcm−EMAX、S’Pcm+EMAX−1]
によって範囲を定められる元の信号の量子化間隔に厳密に減少される。
【0063】
もちろん、発見された量子化された値に対して出力信号の振幅を保存することが望まれる間隔は、他の方法でも限定され得る。例えば、以下が設けられ得る:
・ それを対称にするようにわずかに拡大されたタイプ[S’Pcm−EMAX、S’Pcm+EMAX]の間隔、または他に、
・ タイプ[S’Pcm−αEMAX、S’Pcm+αEMAX]、ここに、項αの値は、間隔をさらに増大し、量子化された値QVに対して一層の偏差を許容するよう、1以上であり得る、または他に、
・ 例えば、パラメータEMAX及び/またはパラメータQVの関数f及びfまたは他によって決定されるタイプ[S’Pcm−f、S’Pcm+f]の間隔、または他に、
・ タイプ[S’−EMAX、S’+EMAX]の間隔、ここに、S’は、任意のデコーダの出力であり得、それ故、後処理のひずみは、PCMデコーダによって復号化された信号を扱うかのように制限されるであろう(セグメント識別子は、この場合、信号の振幅の最も高いオーダー・ビットの位置(チャート2)に単に基づいて、G.711基準のPCM符号化におけるように、受信されたインデックスI’Pcmが無い場合に決定されるであろう)、または他に、
・ タイプ[S’−β.|S’|、S’+β.|S’|]の間隔、ここに、S’は、任意のデコーダの出力であり、間隔の境界は、(例えば、1より小さいβを有する)信号の振幅に比例する。
【0064】
最後の2つの例において、後処理のひずみは、用いられた符号化/復号化のタイプに従って、必ずしも元の信号に対してではなく、復号化された信号に対して制限される。
【0065】
図3に示された例示的な実施形態において、後処理に起因するひずみの制限が系統的な態様で適用されるのを阻止するために、任意選択的な(この理由で点線で示されている)先のステップ38が設けられ得る。或る場合においては、図2の処理を不能化することが実際有利である。
【0066】
PCM符号化/復号化によって得られる信号対雑音比(以下、SNRで示す)は、信号の広い動的範囲に対して(約38dBのレベルの)実質的に一定である。他方、(代表的には、第1の識別子セグメント0における)低信号レベルに対しては、SNR比は低く、振幅圧縮法のセグメントの開始において、負でさえあり得る。PCMデコーダの出力は、次に、(例えば、音声信号の2つのセンテンス間でサイレンスの場合におけるような)低振幅の信号に対して非常に「騒がしい」。さらに、非常に低いSNR比を顧慮した、後処理フィルタだけでPCM符号化/復号化ノイズを抑制することは困難である。1つの解決法は、しばしば、復号化された信号の振幅を大いに減少することによって非常に低振幅の信号の後処理を変更することにある。このタイプの後処理から帰結する信号の振幅は、従って、元の信号の振幅に対して完全に忠実ではない。これらの条件下では、後処理に起因するひずみの制限を不能化することが好ましく、本発明の意味内での処理のステップ32乃至35は、次に、回避される。
【0067】
従って、図3を参照して、振幅が、与えられた閾値以下である(閾値Seとの比較のテスト38の出力n)後フィルタリングされたサンプルSPOSTに対して、ステップ32乃至35は履行されず、出力サンプルSOUTの振幅は、直接、後フィルタリングされたサンプルSPOSTの振幅の値を取る(ステップ37)。この実施形態の例示的な履行において、閾値Seの値は、24に等しい(もちろん、上に与えられたチャートのスケールにおいて)。他方、後処理されたサンプルの振幅が閾値Seより大きいままであるならば(テスト38の出力y)、ひずみを制限する目的の処理が与えられる(前述したステップ32乃至35)。従って、本発明の意味内における方法は、振幅が所定の閾値Seより大きい復号化され後処理された信号SPOSTに対してのみ最終的に履行される。
【0068】
もちろん、本発明は、例として上述した実施形態の形態に制限されるものでなく、本発明は、他の変形例に拡張される。
【0069】
例えば、ひずみ制限モジュール20は、後処理モジュール16の下流に図1において表わされている。変形例として、それは、後処理モジュール16に直接一体化されることができる。さらに、この変形例は、循環無限インパルス応答(IIR)フィルタの使用の観点から特に有利であり得る。事実、IIRフィルタの使用の場合において、フィルタからの出力サンプルは、このフィルタからの先の出力に依存する。従って、本発明の意味内におけるモジュールを、IIRタイプのフィルタリングを用いる後処理に一体化することによって、IIRフィルタリングの出力は、本発明の意味内におけるモジュールによって即座に変更されている値を直接考慮することができる。
【0070】
さらに、間隔が、(上述したタイプのスカラ量子化の符号化/復号化の場合において、量子化された値QVであり得る)復号化された値S’の回りで定義されていた例示的な実施形態が説明されてきた。しかしながら、この実施形態は、非制限的な例によって説明された。変形例として、例えば、後処理された振幅値SPOSTが未だ選択された間隔内にあるならば、該後処理された振幅値SPOSTの直接割当てを認可しつつ、復号化された値S’と後処理された振幅値SPOSTとの間の平均(または一層一般的には重み付けされた平均)を、出力信号SOUTの振幅に割当てることを行うことができる。従って、間隔の低LimINF及び上LimSUP限界を定義することによって、または復号化された値S’と後処理された振幅SPOSTとの間の平均(任意選択的には重み付けされた)を定義することによって、本発明の意味内で修正された、出力信号SOUTによって取られ得る可能な中間値が常に定義される。
【0071】
一層一般的には、本発明は、G.711基準による符号化を超えた、符号化/復号化の任意のタイプに適用され、例えば、上で詳細に説明した実施形態は、線形位相タイプの後処理が復号化時に後に続く、任意の数のレベルを有するスカラ量子化の符号化/復号化の場合において、特に適用され得る。
【0072】
本発明は、また、ディジタル信号処理モジュール20をも目的としており、この信号は、上流のデコーダ14(図1)によって復号化され、ノイズ減少後処理16を受ける。本発明の意味内のこの処理モジュール20は、従って、後処理によってもたらされるひずみを制限するための方法を履行するための手段23、24、25、26(図2)を含む。本発明の意味内のハードウェア様式のこのモジュール20は、代表的には、図4を参照して、記憶装置及び/または作業メモリを含むメモリ・ブロックBMと協働するプロセッサμPと、例示的実施形態において、遅延線23を実施しかつ遅延されたインデックスI’Pcm_DELを提供するための手段を装った前述のメモリMEMとを含む。メモリ・ブロックBMは、さらに、図2の対応表24を(好ましくは、リード・オンリ・メモリ内に)記憶するための手段、もしくは他に、採用された実施形態により遅延されたインデックスI’Pcm_DELに基づく復号化された値及び対応の間隔を直接計算するためのコンピュータ・プログラムを含み得る。上述したように、モジュール20は、ノイズ減少後処理モジュールと独立していても良く、もしくはそれと一体化されても良い。
【0073】
このようなモジュール20の記憶メモリは、命令がモジュール20のプロセッサμPによって実行されたときに、本発明の意味内の方法を履行するためのこれらの命令を含むコンピュータ・プログラムをも長所的に含み得る。代表的には、図3は、このようなコンピュータ・プログラムのアルゴリズムを表わすフローチャートを示し得る。
【符号の説明】
【0074】
11・・・交換電話ネットワーク
12・・・逆量子化器
13・・・コーダ
14・・・デコーダ
16・・・後処理
20・・・ディジタル信号処理モジュール
22・・・後処理
23・・・遅延線
24・・・テーブル(対応表)
BM・・・メモリ・ブロック
μP・・・プロセッサ
MEM・・・メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デコーダ(14)からかつノイズ減少後処理(16)から生じるディジタル信号を処理するための方法であって、
− 受信された信号(I’Pcm)は、復号化された信号(S’Pcm)を配送するために復号化され、
− 復号化された信号(S’Pcm)は、後処理された信号(SPOST)を配送するために後処理される方法において、
復号化された信号(S’Pcm)の及び後処理された信号(SPOST)の現在の振幅のそれぞれの値に従って、修正された出力信号(SOUT)を
− 後処理された信号(SPOST)の現在の振幅値と復号化された信号(S’Pcm)の対応の現在の振幅値との間の中間値を有する現在の振幅値
− または、後処理された信号(SPOST)の現在の振幅
に割当てることによって、修正された出力信号(SOUT)を配送するよう、後処理によってもたらされるひずみの制限(26)を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
− 許可された振幅の間隔を定義する(32、33)ステップと、該間隔は、復号化された信号の現在の振幅値(S’Pcm)に依存する下境界(LimINF)及び上境界(LimSUP)を含むものであり、
− 後処理された信号(SPOST)の対応の現在の振幅に対して、現在の振幅値を
・ 後処理された信号の現在の振幅が下境界の値より小さい場合には、下境界の、
・ 後処理された信号の現在の振幅が上境界の値より大きい場合には、上境界の、
・ 後処理された信号の現在の振幅の値が前記間隔内に含まれる場合には、後処理信号の現在の振幅の
値に等しい出力信号(SOUT)に割当てるステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
振幅値のスパンは、復号化された信号(S’Pcm)の各可能な振幅値に割当てられ、そして下及び上境界は、該上境界及び下境界間の差が前記値のスパンに等しいように選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
受信された信号は、スカラ量子化符号化によって符号化されており、デコーダは、個別の態様で一方からもう一方に変る量子化された振幅値QVを配送し、量子化された値間の連続する偏差は、量子化ステップサイズを限定する請求項3に記載の方法において、
− 上境界は、符号化された信号(S’Pcm)の現在の振幅に割当てられる量子化された値(QV)に、量子化ステップサイズ(EMAX)の実質的に半分を追加することによって与えられ、そして
− 下境界は、符号化された信号(S’Pcm)の現在の振幅に割当てられる量子化された値(QV)から、量子化ステップサイズ(EMAX)の実質的に半分を差し引くことによって与えられ、
ることを特徴とする方法。
【請求項5】
受信された信号は、符号化されたインデックス(I’Pcm)を配送するパルス・コード変調符号化によって符号化されている請求項4に記載の方法において、下及び上境界のそれぞれの現在の値は、デコーダにおいて受信された現在の符号化されたインデックス(I’Pcm_DEL)に基づいて決定される(25)ことを特徴とする方法。
【請求項6】
受信された現在のインデックス(I’Pcm_DEL)に対して、下及び上境界のそれぞれの現在の値のいずれが決定された(25)かに基づいて、対応の量子化された値(QV)と対応の量子化ステップサイズ(EMAX)の半分とを与えるように、対応表(24)が設けられることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
後処理された信号(SPOST)の前記現在の振幅と、符号化された信号(S’Pcm)の前記対応の現在の振幅との間の一時対応を確実にするように、遅延線(23)が設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
所定の閾値の値(Se)より大きい振幅の符号化されかつ後処理された信号(SPOST)に対して履行されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
符号化されノイズ減少後処理(16)を受けるディジタル信号を処理するためのモジュールであって、後処理によってもたらされるひずみを制限するために、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法を履行するための手段(23、24、25、26)を備えることを特徴とするモジュール。
【請求項10】
ノイズ減少後処理モジュール(16)に一体化されることを特徴とする請求項9に記載のモジュール。
【請求項11】
モジュール(20)のプロセッサによって実行されるときに、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法を履行するための命令を含むことを特徴とする請求項9及び10の一方に記載された前記モジュール(20)のメモリに記憶されるよう意図されたコンピュータ・プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−532875(P2010−532875A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514083(P2010−514083)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051246
【国際公開番号】WO2009/010672
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(591034154)フランス・テレコム (290)
【Fターム(参考)】