説明

ディスクグラインダ

【課題】
切削粉の飛散を防止するホイールガードの回転ストップ機構を簡易な構成で実現し、原価低減を実現したディスクグラインダを提供する。
【解決手段】
スピンドルカバー4に設けられたホイールガード20の抜け止め用の溝6の一部に塞ぐストッパ部(壁部10)を設け、ホイールガード20が回転した際にホイールガード20の抜け止め用の凸部22と壁部10が当接するように構成してホイールガード20の回動角度を制限するように構成した。ディスクグラインダの作業中の何らかの操作によりホイールガード20が意図した位置から回動してしまった場合でも、凸部22と壁部10が当接するため、作業者側にホイールガード20の開口部20aが向くことがなく、切削粉の飛散を作業者側に招くことを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスクグラインダに関し、特に先端工具を覆うホイールガードの回り止め機構を改良したディスクグラインダに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクグラインダは駆動源であるモータによって先端工具を回転駆動して研削等の作業を行うものである。先端工具としては砥石やダイヤモンドホイール等が用いられる。ディスクグラインダにおいては、安全対策上、先端工具の一部がホイールガードによって覆う構造とされ、作業に合わせてホイールガードの取付位置を変えることができる。ここで従来のディスクグラインダのホイールガードの取付け構造を図4〜図7を用いて説明する。図4は従来のディスクグラインダにおけるギヤカバー、スピンドルカバー周りの構成を示す部分斜視図であって、ディスクグラインダ101の先端部分を下側から見た斜視図である。ギヤカバー13は、図示しないモータを収容する円筒形のモータハウジングの前側に固定されるカバーであって、図示しない傘歯車等のギヤを覆うハウジング部分である。スピンドル3はスピンドルケース104にて回転可能に保持され、ギヤカバー13から下方に延出する。スピンドルケース104は、例えばアルミニウム等の金属により一体成形で構成され、スピンドル3の周囲に配置されたネジ穴を介して、4本のネジ7によってギヤカバー13に固定される。スピンドルケース104の軸方向(上下方向)中央部付近の外周には、後述するホイールガード120の取付リング121を保持するために取付面105が形成され、取付面105には軸方向(上下方向)に一定の幅を有し、円周方向に連続する溝106が形成される。
【0003】
図5は、従来のディスクグラインダ101におけるホイールガード120の上面図である。ホイールガード120は、例えば金属板のプレス加工により製造された部材であって、回転工具のほぼ半分を覆うように上から見たときに略半円形の形状とされる。半円形の中心付近には取付リング121と、取付リング121を締め付けるためのネジとボルトからなる締付手段124が設けられる。取付リング121は帯状の金属板状であって、周方向の1箇所において分断され、その端部が径方向外側に延びて折曲部121aとされ、この折曲部121aはボルトとナットからなる締付手段124の座面の機能を果たす。取付リング121の内周側には、スピンドルケース104の円筒形の外周部である取付面105に取り付けられ、溝106には取付リング121の突起122が係合する。
【0004】
このようなディスクグラインダ101のホイールガード120は、締付手段124を緩めることによって取付リング121の取付面105に対する締め付けを緩め、ホイールガード120をスピンドル3の回転軸を中心に円周方向の任意の位置に変更できるようになっている。この状態を示すのが図6である。図6において、ディスクグラインダ101のモータ軸線(モータの回転の軸線であって、ディスクグラインダの前後方向中心線)と垂直線を基準にすると、図6の位置、即ちホイールガード120のエッジ部分120a部分が垂直線の位置にある状態(これをθ=0°の位置という)から、矢印に示す反時計方向に約110度だけ大きく回転した状態を示している。従来のディスクグラインダ101においては、ホイールガード120の締付手段124は、ギヤカバー13の凸部(壁部)と接触しない構造になっているため、ホイールガード120はスピンドル3を中心に360度の任意の箇所で固定可能な構造となっている。
【0005】
しかしながら近年、電動工具に関する国際的な規格によって、ホイールガード120が、取り付け用の締付手段124の緩みやホイールガード120をぶつけた等の衝撃により作業中に固定していた位置から外れたとしても、作業者側にホイールガード120の開口部(エッジ部分120a)が向かないように何らかの措置をとる事が求められるようになった。このため所定の位置、例えば半円形のホイールガード120のエッジ部分120aが垂直線から60度回転した位置(線とエッジ部分が一致する位置)を超えて矢印に示す方向へ回転できないように制限する必要が生じた。この課題を解決するために、図4で示すように特許文献1の技術では、ギヤカバー113にストップピース111を取り付け、ホイールガード120の所定回転以上を制限するように構成した。ストップピース111は、ギヤカバー13をモータハウジングに取り付けるためのネジを用いて固定させるものである。ストップピース111を設けたことにより、図7に示すようにホイールガード120の回転をθ=60°以上回転させないよう制限させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−125983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4に示したようなストップピース111は、ホイールガード120の品構成を変えることなくホイールガード120の回転角度の制限をすることができる。しかしながら、ストップピース111は金属製の部材で強固に作ることが必要であり、複雑な形状となっており、部品単価が高くなっているのが現状であった。
【0008】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、従来の部品構成を変更することなく、作業者への切削粉の飛散を防止するホイールガードの回転ストップ機構を実現したグラインダを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、簡単な部材を追加するだけでホイールガードの回転ストップ機構を実現し、コスト上昇を最小に抑えたグラインダを提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、ホイールガードの位置調整機能の使い勝手を損なうことなく、ホイールガードの回転ストップ機構を実現したグラインダを提供することにある。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、ストップピースのような複雑な形状をした部品を用いないで、簡単な構造で原価的にも安くホイールガードの回転を制限できる構造を実現したグラインダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの特徴によれば、モータを内蔵するハウジング部と、モータの動力の減速および回転軸の方向を直角に変換を行なう傘歯車を内蔵するギヤカバーと、ギヤカバーからモータの回転軸と直交する方向に回転軸が伸びるスピンドルを覆うスピンドルカバーと、スピンドルカバーに取り付けられる円形砥石の円周角の約半分を覆うホイールガードを有し、ホイールガードを円周方向の所定位置に固定できるようにしたグラインダにおいて、スピンドルカバーは、モータの回転軸と直角な方向に締められる複数のネジによりギヤカバーに固定される。スピンドルカバーに設けられたホイールガードの抜け止め兼回り止め用の溝にホイールガードに設けられた凸部が当接することにより、ホイールガードはスピンドル方向から抜けにくくなる。スピンドルカバーにはホイールガードの抜け止め用凸部の差し込み位置が形成される。この抜け止め用に設けられた溝の円周方向の一部は、溝を形成せず残しておく。このホイールガード抜け止め用に設けられた溝の一部にある壁とホイールガードの凸部が当接する形状とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スピンドルカバーに設けられたホイールガード抜け止め用の溝の一部に壁部を設けることにより、グラインダ使用時においてホイールガードが回転した際にホイールガードの抜け止め用の凸部と前述の壁部が当接することにより、ホイールガードをぶつけた等の作業中のトラブルによりホイールガードが意図した位置から外れ、作業者側に開口部が向いてしまい切削粉の飛散を作業者側に招くことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例のギヤカバー、スピンドルカバー周りの構成を示す部分斜視図である。
【図2】本発明の実施例のホイールガードの上面図である。
【図3】本発明の実施例のギヤカバー、スピンドルカバー、ホイールガード周りの構成を示す底面図である。
【図4】従来のディスクグラインダにおけるギヤカバー、スピンドルカバー周りの構成を示す部分斜視図である。
【図5】従来のディスクグラインダにおけるホイールガードの上面図である。
【図6】従来のディスクグラインダにおけるホイールガードの角度位置移動状況を説明するための部分底面図である(その1)。
【図7】従来のディスクグラインダにおけるホイールガードの角度位置移動状況を説明するための部分底面図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の機能を有する部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施例に係るディスクグラインダ1の先端部分の下側から見た斜視図である。ギヤカバー13は、モータを内部に収容するモータハウジング(図示せず)の前側に、図示しないモータの回転軸と平行する方向に締め付けられる4本の取り付けネジ7により固定される。スピンドル3はスピンドルカバー4にて回転可能に保持され、ギヤカバー13から下方に延出する。スピンドルカバー4は、例えばアルミニウム等の金属により一体成形で構成され、スピンドル3の周囲に配置されたネジ穴を介して、4本の取り付けネジ8によってギヤカバー13に固定される。スピンドルカバー4の軸方向(上下方向)外周には円筒面となる取付面5が形成され、取付面5の前後方向の中央付近には後述するホイールガード20の取付リングを保持するために軸方向(上下方向)に一定の幅を有する溝6が形成される。溝6は、基本的には円周方向に連続して形成された円環状の溝部であって、取付面5よりも内側に窪むように溝状又は凹状に形成される。本実施例の特徴的な構成として、ホイールガード20の回転角を制限するため、この円筒状の溝6は円周方向の一部に、溝状の部分を塞ぐ壁部10(ストッパ部)が形成される。
ホイールガード20に設けられた凸部(突起)22はスピンドルカバー4に設けられた溝6にあてがわれることで抜け止めと回り止めの2つの効果を
得られることができる。
【0017】
ギヤカバー13内には、モータの回転軸に取り付けられる傘歯車(図示せず)と、スピンドル3の上端に取り付けられる傘歯車(図示せず)が配置され、これらの2つの傘歯車によってモータの回転数が減速されて、出力軸たるスピンドル3が回転する。スピンドル3の先端(下端)には図示しない先端工具が取り付けられ、例えば円形の砥石が取り付けられる。ギヤカバー13の左右両側には、着脱可能に固定されるサイドハンドルを固定するためのネジ穴9が設けられる。
【0018】
図2は、本実施例のホイールガード20の上面図である。ホイールガード20は、締付手段24を形成するネジを緩めることによって取付リング21の内径を広げ(締め付けを緩め)、ホイールガード20をスピンドル3の回転軸を中心に円周方向の任意の位置に変更できるようになっている。取付リング21はC字状の形状であり、ホイールガード20に溶接によって固定される。取付リング21の両方の端部には折曲部21a、21bが形成され、折曲部21a、21bにはネジ穴(図示せず)が形成される。これらのネジ穴を連結する締付手段24として、本実施例ではボルトとナットを用い、締付手段24を締め付けることによって取付リング21をスピンドルカバー4の円筒形の取付面5に固定されるこの際、取付リング21の内周面において内側に突出する凸部22がスピンドルカバー4の外周面に形成された抜け止め用の溝6(取付面)に収容されるように取り付けられる。凸部22は抜け止め用の溝6の内部に位置する限り、締付手段24を緩めることによって周方向に移動可能であるが、円周方向の一方の端部には壁部10(図1参照)が存在するため、凸部22が周方向に移動して所定の位置にて、ホイールガード20の回動(上から見て反時計回りの回動)が制限されることになる。図1では見えないが、溝6の円周方向の他方の端部にも同様の壁が形成されるので、ホイールガード20の反対方向の回動(上から見て反時計回りの回動)も所定の位置にて制限されることになる。
【0019】
図3は、本実施例のギヤカバー13、スピンドルカバー4、ホイールガード20周りの構成を示す底面図である。図3においては回動角がθ=60の時(図7と同じ位置関係)であって、凸部22は点線で示す位置にある。図からは見えないが凸部22は壁部10に当接する状態にある。そのため、ホイールガード20はスピンドルカバー4に対してθ>60の相対回転が不可能となり、ホイールガード20をぶつけた等の作業中のトラブルにより、ホイールガード20が意図した位置から大きく回転してしまって、作業者側に開口部が向いてしまうことを防止することができる。
【0020】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例では、回り止め手段としてホイールガード20に形成した凸部22として、これがスピンドルカバー4の壁部10に当接することにより機能させたが、この構成だけに限定されずに、ホイールガード20の凸部22の替わりに、取付リング21の径方向に穴を開けて、その穴に雌ねじを形成し、径方向外から内側に貫通させるボルトを配してボルトと取付リング21を溶接するような構成として凸部22を形成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0021】
1 ディスクグラインダ
3 スピンドル
4 スピンドルカバー
5 取付面
6 溝
7、8 ネジ
9 ネジ穴
10 壁部
12 ホイールガード抜け止め用凸部差し込み位置
13 ギヤカバー
20 ホイールガード
21 取付リング
21a、21b (取付リングの)折曲部
22 凸部
24 締付手段
101 ディスクグラインダ
104 スピンドルケース
105 取付面
106 溝
111 ストップピース
113 ギヤカバー
120 ホイールガード
120a エッジ部分
121 取付リング
121a 折曲部
122 突起
124 締付手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを内蔵するモータハウジングの前方の設けられるギヤカバーと、
前記ギヤカバーから前記モータの回転軸と略直交する方向に延びるスピンドルと、
前記スピンドルを覆い外周部に略円筒形の取付面を有するスピンドルカバーと、
前記スピンドルカバーに取り付けられる回転工具の円周角の約半分を覆うホイールガードを有し、前記ホイールガードを前記取付面の円周方向の所定位置に固定できるようにしたグラインダであって、
前記ホイールガードに、前記スピンドルカバーの取付面に固定するための取付リングと取付リングから内側に突出する突起を設け、
前記スピンドルカバーの前記取付面には前記突起を嵌合させて軸方向に抜けることを防止する径方向に延びる円環状の溝部を設け、
前記円環状の溝部に、前記ホイールガードがある一定の角度以上回転しないように制限するために前記溝部を塞いだストッパ部を設けたことを特徴とするディスクグラインダ。
【請求項2】
前記取付リングは略C字状の形状であって前記ホイールガードに溶接され、
前記取付リングの両方の端部に折曲部が形成され、
前記折曲部に開けられたネジ穴を連結する締付手段を締め付けることによって前記取付リングを前記スピンドルカバーの前記取付面に固定されることを特徴とする請求項1に記載のディスクグラインダ。
【請求項3】
前記ストッパ部は前記溝部の2箇所に設けられ、前記ホイールガードの双回転方向への移動を制限することを特徴とする請求項1又は2に記載のディスクグラインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107182(P2013−107182A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255993(P2011−255993)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】