説明

ディスクドライブのためのウェッジオフセット補正値の決定

【課題】 データ記憶ディスクの最小回転数でウェッジオフセット補償値を決定する。
【解決手段】ディスクドライブ110では、ウェッジベースのスキームがこのディスクドライブ110のトラックに対するウェッジオフセット補正値を決定するために用いられる。各サーボウェッジのオフセットに対する補正値は、最も最近測定されたサーボウェッジの位置誤差信号(PES)およびこれに組み合わされる他の複数のサーボウェッジの測定PESに基づいてウェッジ毎に計算される。サーボの搬送遅れを最小化するため、ほとんどのサーボ制御計算は現在のウェッジでのPES測定に先立って予め計算されることになる。与えられたサーボウェッジに対するウェッジオフセット補正値は、記憶ディスクの各回転で反復して補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般にディスクドライブに関し、特にこのようなドライブのためにウェッジオフセット補正(補償)値の反復リアルタイム決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクドライブは、データ記憶ディスク(data storage disk)の表面上のトラックにデジタルデータを保持するデータ記憶装置(data storage device)である。データは、ディスクが実質的に一定の角速度でその中心のまわりを回っている間にトラックの近くに保持されるとともに読出素子および書込素子を備えるトランスデューサを用いてディスクのトラックから読み出されたり、このトラックへ書き込まれたりする。読出または書込動作中にこのトランスデューサを適切に所望トラックの近くに置くために、閉ループサーボシステムが一般に構築される。このサーボシステムはトランスデューサを所望のトラックに整合させるためにディスク表面上の「サーボウェッジ(servo wedge)」から読み出されたサーボデータを使用し、このサーボデータは記録ヘッドが理想的なトラック中心線からどれくらい遠い距離であるかを示す「複数のサーボバースト(servo bursts)」と同様にトラック番号を含んでよい。サーボデータは、自己サーボ書込プロシージャ(self-servo-writing procedure)を使用するドライブ自体またはサーボトラックライタ(STW)のような外部装置によってディスク表面上に予め書き込まれる。いずれの場合も、ディスクドライブ上にある各トラック毎の付加的工場キャリブレーション(factory calibration)が、ディスク表面に書き込まれた複数のサーボバーストの位置における微小誤差を補償するために必要かもしれない。近年のディスクドライブは多くの場合何十万ものトラックを含んでいるので、このような工場校正は製造工程の時間消費部分である。
【0003】
理想的なディスクドライブでは、ディスクのトラックはディスクの中心の周りに置かれた乱れのない円である。そのため、理想的なトラックの各々は、ディスク中心から既知の一定半径に位置するトラック中心線を含む。実際には、しかしながら、乱れのない円形トラックをディスクに書き込むことは、メディア自身における難点および/またはサーボバーストを書き込む装置の位置制御における振動、ベアリング欠陥、STWでの不正確さ、ディスククランプ滑りなどの機械的な影響に起因した難点のために問題を含んでいる。このため、各トラックを定義するこれらサーボバーストは、一般に理想的な乱のない円形トラックからオフセット付きで書き込まれる。現実のサーボバースト位置と理想的なトラック位置との間のオフセットによって生じるポジショニング誤差(positioning errors)は反復可能書込ランアウト(WRRO:written-in repeatable runout)として知られる(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ディスクに書き込まれたようにサーボバーストへの付加補正なしであると、サーボバーストによって定義されるようなトラックの非理想的な形状が、2つの問題を引き起こす。第一に、サーボシステムが、理想的な円の一定半径に追従するのではなく、サーボバーストによって定義されるようなトラック中心線の絶えず変化する半径に遅れないようにするためにトラック追跡中にトランスデューサを継続して再位置設定するので、トランスデューサのポジショニング機能は読出および書込動作中により複雑になる。第二に、これらトラックの乱れた形状は読出および書込動作中のトラック誤登録(track misregistration)エラーおよび「トラックスクイーズ(track squeeze)」、すなわち互いに接近しすぎた間隔である隣接トラックのような問題をもたらす結果となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,167,336号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスクドライブ製造者等は、ディスクドライブの各トラックについてWRROを測定し、ディスクドライブのサーボシステムがディスク表面上でのサーボバーストの実際の位置と所望のトラック中心線との間のオフセットを実質的に無視できるようにする補償値を生成するために技術開発をしてきた。これら補償値は、一般にディスクドライブの各トラックのサーボウェッジ毎に発生される。多くのスキームがこのような補償値の生成するための技術において知られるが、いずれもサーボバーストを通過しながら位置誤差信号(PES:position error signal)を測定する間に多数の回転に渡って与えられたトラックを追従するようにトランスデューサを制御することを含む。いくつかのスキームにおいて、PESはディスクの多数の回転に渡って測定され、この後平均ウェッジオフセット補償値が各サーボウェッジについて計算される。他のスキームにおいて、ウェッジオフセット補償値は、多数の回転に渡って精度を増加させながら反復して決定される。いずれの場合も、ディスクの多数の回転が各トラックに関連した複数のサーボバーストのための正確な補償値を得るために必要であり、付加的に必要となる回転は工場キャリブレーションを完了させるために要する時間を著しく増大させる。例えば7200rpmで動作して各々150,000トラックの4ディスク表面を持つディスクドライブが与えられるとすると、全ディスクに対するウェッジオフセット補償値の決定は、単一のトラックについて正確な補償値を得るために平均4回転を必要する場合に5時間以上かかるかもしれない。この時間は自己サーボ書込スキームで2倍になる。このため、正確な補償値を得るための1トラック当たりの平均回転数を例えば4から3へ1回転だけ減らすことは、ディスクドライブのキャリブレーション時間を1時間以上短縮することになる。
【0007】
上記に鑑み、データ記憶ディスクの最小回転数でウェッジオフセット補償値を決定できるディスクドライブのためのウェッジオフセット補償値決定方法の技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1以上の実施形態は、ディスクドライブのサーボウェッジ(servo wedges)についてウェッジオフセットリダクションフィールド(WORF:wedge offset reduction field)値と呼ばれるウェッジオフセット補正値(wedge offset correction values)を決定する方法とシステムを提供する。これら実施形態は、ディスクドライブのトラックについてウェッジオフセット補正値を決定するために必要な記憶ディスク回転数を減らすリアルタイム反復アプローチ(real-time iterative approach)を実現する。PESが1以上の回転に渡るトラックの全サーボウェッジについて測定されてWORF値が全サーボウェッジについて同時に計算される回転ベースのスキームを用いてウェッジオフセット補正値を計算するのではなく、ウェッジベースのスキームが使用される。このウェッジベースのスキームでは、複数のWORF値が、最も最近測定されたサーボウェッジである第1サーボウェッジのPES、およびこれに組み合わされる以前のサーボウェッジ(previous servo wedges)である第2サーボウェッジの測定PESに基づいてウェッジ毎に計算される。より安定なWORF計算アルゴリズムおよびより正確なWORF値のためには、与えられたサーボウェッジに対するWORF値がさらに記憶ディスクの各回転でさらに補正される反復スキームが使用される。
【0009】
一実施形態では、サーボウェッジのPESが測定され、直ちに測定ウェッジのための更新WORF値の計算に組み込まれる。このWORF値は、次にこのウェッジのためのサーボ制御信号の計算において用いられる。PES検出とサーボ制御信号の計算との間で生じる計算時間によるサーボの搬送遅れを最小化するため、ほとんどのサーボ制御計算は現在のウェッジでのPES測定に先立って予め計算される。好ましい実施形態では、以前のサーボウェッジに関連する全てのサーボ制御計算が現在のウェッジのPES測定に先立って計算され、現在のウェッジのPESに関連するいくらかの計算だけを現在のウェッジPESの測定後に行うことが必要になる。この技術では、この更新WORF値の使用によって導入される付加的な搬送遅れが1マイクロ秒未満であることが観察された。
【0010】
別の実施形態では、サーボウェッジのPESが測定され、次のウェッジのための更新WORF値の計算に組み込まれる。そのような実施形態では、付加的な遅れがサーボウェッジでのPESの測定とこのウェッジのためのサーボ制御信号の計算との間に存在しない。WORF値の再計算は、これを採用してよいが、この実施形態において不要である。これは、以前のウェッジの各々について測定されたPESに基づく次のウェッジのための更新WORF値がこのPESの実際の測定よりもはるか前に利用できることになるからである。
【発明の効果】
【0011】
これにより、データ記憶ディスクの最小回転数でウェッジオフセット補償値を決定できるディスクドライブのためのウェッジオフセット補償値決定方法の技術が得られる。
【0012】
本発明に係る上述構成がより詳細に理解できる様式、発明のより具体的な記述、上記簡単な概要は、いくつかが添付図面に示された複数の実施形態を参照することにより得られてよい。しかし、添付図面は本発明の典型的実施形態だけ示すものであって、その範囲を限定することなく、他の等しく有効な実施形態を許容するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ここに記載されるように発明の実施形態の恩恵を受けることができるディスクドライブの透視図である。
【図2A】当該技術において知られた典型的な様式で組織したデータを持つ記憶ディスクを示す図である。
【図2B】少なくとも1サーボウェッジを持つ記憶ディスクの一部を概略的に示す図である。
【図3】ヌルパターンに関連したサーボパターンに含まれ得るサーボバーストパターンを示す図である。
【図4】サーボウェッジ内の少なくとも1つのサーボバーストエッジ位置を決定し、ディスクドライブのアクチュエータドライバへのドライブ信号を生成するサーボシステムの概略図である。
【図5】ディスクドライブの離散時間モデルの図である。
【図6】サーボウェッジの相対位置、ディスク媒体のトラック上の書込データ、およびトランスデューサヘッドがディスク媒体上を移動する時にウェッジオフセット値補正プロシージャを行う対応時間領域シーケンスを示す概略図である。
【図7】リアルタイムウェッジ毎スキーム(real-time per wedge scheme)を使用してディスクドライブでのウェッジオフセット補正値を決定する方法の概要を示すフローチャートである。
【図8】サーボウェッジの相対位置、ディスク媒体のトラック上の書込データ、およびトランスデューサヘッドがディスク媒体上を移動する時にウェッジオフセット値補正プロシージャを行う対応時間領域シーケンスを示す概略図である。
【図9】ディスクドライブでのウェッジオフセット補正値を決定する方法を行うために複数のコンピュータプログラム命令を実行するコンピュータシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
理解し易いように、同一参照番号が図相互間で共通な同一要素を指定するために適用可能なところで用いられている。一実施形態の構成はさらに言及せずに他の実施形態に組み込まれ得ると考える。
【0015】
図1は、ここに記載されるように発明の実施形態の恩恵を受けることができるディスクドライブ(disk drive)110の透視図である。理解を容易にするため、ディスクドライブ110はトップカバーなしに示される。ディスクドライブ110は、スピンドルモータ(spindle motor)114によって回転する記憶ディスク(storage disk)112を含む。スピンドルモータ114はベースプレート(base plate)116にマウントされる。アクチュエータアームアセンブリ(actuator arm assembly)118はこれもベースプレート116にマウントされ、湾曲アーム(flexure arm)122にマウントされたスライダ(slider)120を持ち、この上にリソグラフィ形成されたトランスデューサヘッド(transducer head)121を含む。湾曲アーム122は、ベアリングアセンブリ(bearing assembly)126の周りを回転するアクチュエータアーム(actuator arm)124に取り付けられる。ボイスコイルモータ(voice coil motor)128は、記憶ディスク112に対して相対的にスライダ120を移動させ、これにより、記憶ディスク112の表面112A上に配置された所望の同心データ記憶トラックに関してトランスデューサヘッド121の位置を決める。スピンドルモータ114、トランスデューサヘッド121およびボイスコイルモータ128は、プリント回路基板(printed circuit board)132上にマウントされる複数の電子回路130につながれる。これら電子回路130は読出チャンネル、マイクロプロセッサベースのコントローラおよびランダムアクセスメモリ(RAM)を含む。説明の理解を容易にするため、ディスクドライブ110は単一の記憶ディスク112およびアクチュエータアームアセンブリ118と共に示される。しかしながら、ディスクドライブ110は多数の記憶ディスク112および多数のアクチュエータアームアセンブリ118を含んでよい。加えて、ディスク112の各サイドが関連のトランスデューサヘッド121を備えてよく、両方のトランスデューサヘッド121が一緒に旋回するように、これら両方はロータリーアクチュエータ(アームアセンブリ118)にまとめてつなが
れる。ここに記載の発明は、独立なヘッドがアクチュエータに対して相対的に微小距離を別々に移動するように構成された装置にも等しく適用できる。この技術はデュアルステージアクチュエーション(DSA:dual-stage actuation)と呼ばれる。
【0016】
図2Aは当該技術において知られた典型的な様式で組織したデータを持つ記憶ディスク112を示す。記憶ディスク112はデータを保持する複数の同心データ記憶トラック(concentric data storage tracks)242を含む。同心データ記憶トラック242の各々は、中心線として概略的に示される。しかしながら、同心データ記憶トラック242の各々が対応中心線について有限幅を占領することは理解すべきである。記憶ディスク112は実質的に放射状に並ぶ複数のサーボウェッジ(servo wedge)244を含み、またこれらはサーボスポークと呼ばれ、同心データ記憶トラック(data storage track)242と交差して、これら同心データ記憶トラック242内のサーボセクタにサーボ情報を保持する。そのサーボ情報は、所望トラック242上方でのトランスデューサヘッド121の位置を決めるために読出および書込動作中にトランスデューサヘッド121によって読み出される基準信号、例えば既知振幅の矩形波を含む。サーボウェッジ244内のサーボ情報は、図2Bを参照してさらに下に詳述される。実際上、サーボウェッジ244は幾分曲がり、例えば部分的螺旋パターンに構成されてよい。一般的には、記憶ディスク112上に含まれるサーボスポーク244および同心データ記憶トラック242の実際数は図2Aに示されるよりもかなり多い。
【0017】
動作では、アクチュエータアームアセンブリ118が、記憶ディスク112の外径(OD)と内径(ID)との間において弧を描いてスイープする。アクチュエータアームアセンブリ118はボイスコイルモータ128のボイスコイルを介して電流が流れると一方の角度方向に加速し、電流が反転すると逆方向に加速し、ディスク112に対して取り付けたトランスデューサヘッド121およびアクチュエータアームアセンブリ118の位置を制御可能にする。ボイスコイルモータ128は、同心データ記憶トラック242上方でのトランスデューサヘッド121の位置を決定するためにディスク112からトランスデューサヘッド121により読み出される位置決めデータを使用するサーボシステム(servo system)400(図4に示す)につなげられる。サーボシステム400は、ボイスコイルモータ128のボイスコイルを介して流す適切な電流を決定し、電流ドライバおよび関連回路(図4に示す)を用いてこの電流を流す。
【0018】
図2Bは少なくとも1サーボウェッジ244を持つ記憶ディスク112の一部を概略的に示す。各サーボウェッジ244は、磁化の領域あるいは光学徴表(optical indicia)等の他の徴表(indicia)として保存された情報を含む。サーボウェッジ244は長手方向に磁化されてよく(すなわち、サーボパターン(servo pattern)200のクロスハッチ部分は左向きに磁化され、サーボパターン200の余白部分は右向きに磁化されるが、これらが逆の場合もある)、垂直に磁化されてもよい(すなわち、クロスハッチ部分は紙面から出ていく方向に磁化され、余白部分は紙面に入ってくる方向に磁化されるが、これらが逆の場合もある)。各サーボウェッジ244に含まれるサーボパターン200は、ディスク112の表面がトランスデューサヘッド121の下を通過することに伴なってトランスデューサヘッド121により読み出される。サーボパターン200は、データフィールド(data field)246に含まれるデータセクタを識別するために使用される情報を含んでよい。例えば、サーボパターン200はプリアンブル(preamble)202、サーボアドレスマーク(SAM:servo address mark)204、トラック識別番号(track identification number)206のようなデジタル情報を含んでよい。サーボパターン200は、またサーボバーストA,B,CおよびDのセットを含む。図示するように、サーボバーストエッジ(servo burst edge)210はAサーボバーストおよびBサーボバーストの間にあり、サーボバーストエッジ(servo burst edge)220はCサーボバーストおよびDサーボバーストの間にある。図2Bに示すパターンは、直交型パターンである。実施形態によっては、サーボウェッジ244がまたウェッジ番号(wedge number)のような他の情報を含んでよい。これはインデックスウェッジ(wedge #0)を指定するためのシングルビットであってよく、SAMは別のパターン(サーボインデックスマークまたはSIMと呼ばれる)に置き換えられてもよく、ウェッジはウェッジ番号の低次の数ビット、あるいは完全なウェッジ番号を含んでもよい。
【0019】
サーボパターン200は、図2Bに示す以上に多くの異なるサーボバーストパターンを含む。例えば図3は、ヌルパターンに関連したサーボパターンに含まれ得るサーボバーストパターンを示す。このパターンは4つのサーボバーストを示し、ディスク上の各サーボウェッジにおいて、AB+、AB−、CD+、およびCD−サーボバーストによるいくつかの放射直線をディスク上に作り出すために、列として繰り返されてよいことが理解される。こうしたサーボバーストパターンは、結果として、ヌルパターンでは、AB+およびAB−サーボバースト間のサーボバーストエッジ310を与え、CD+およびCD−サーボバースト間のサーボバーストエッジ320を与える。
【0020】
理想的なドライブでは、サーボバーストエッジのうちの1つが、トラックの中心、またはトラックの中心から既知の距離にあってよい。サーボパターンが読み出されて復調され、選択されたサーボバーストエッジからのトランスデューサヘッド121の距離が決定される。トラックの中心またはサーボバーストエッジからの距離を示す位置誤差信号(PES:position error signal)が生成されて、トランスデューサヘッド121を所望トラックの中心の上方位置に移動させるために用いられる。実際には、しかしながら、サーボバーストを書き込む装置の書込ヘッド、すなわちサーボライタ、メディアライタ、あるいはディスクドライブ自身は完璧に位置決めされるわけではなく、ディスク上に配置された複数のサーボバーストは一般に、理想的なトラック位置に厳密に対応しない。このため、ディスクに対するヘッドの、これらサーボバーストの所望位置とこれらサーボバーストの実際位置との間に顕著なオフセットがありえ、結果として、書込ランアウト(WRRO:written-in runout)をもたらす。WRROは、トラックの理想的な中心線と、書込サーボバターンを読み出すトランスデューサヘッドによって定められるはずの中心線との間のオフセットであると考えられる。WRROは、サーボ性能の問題、ディスク上でのスペースの無駄、そして最悪のケースでは、回復不能あるいは取り返しのつかないデータの損傷をもたらし得る。
【0021】
読出トラック中心線または書込トラック中心線でよい所望のトラック中心線と、バーストパターンの復調から得られる見かけ上の中心線との間のオフセットを決定することが望ましい。各サーボウェッジについてこのオフセットを知ると、WRROの全部または一部を書き込まれたサーボパターンから取り除くことができる。このようなオフセットの値は、1トラックの複数のサーボウェッジまたはディスクドライブに関連するメモリに保存できる。サーボウェッジにそれぞれ関連した保存オフセット値は、ここでWORF(wedge offset reduction field)データまたはWORF値と称される。WORFデータは、例えば、与えられたトラック上でサーボウェッジの後に配置されるデジタル数でよく、サーボバーストの復調から得られるサーボウェッジについてのPES値に加えたり、PES値から減じたりする量を含む。これに代わって、WORFデータはSRAM、DRAM、またはフラッシュのような、ディスクドライブに関連するメモリに保存されてもよい。WORFデータはトラック中心線を決定するために用いられるバーストエッジの誤配置を補償するために利用可能である。バーストエッジに関連するWORF値は、読み出されて計算されたPES値に加えられ、トランスデューサヘッドが理想的な中心線をより正確になぞるパスに追従するようにできる。WORFデータは、特定のサーボウェッジに書き込まれたデータのオフセットに依存する負の値または正の値であってよい。
【0022】
図4は、発明の一実施形態に従い、サーボウェッジ244内の少なくとも1つのサーボバーストエッジ位置を決定し、ディスクドライブ110のアクチュエータドライバ440へのドライブ信号を生成するサーボシステムの概略的な図である。この実施形態では、記憶ディスク112がAB+、AB−バーストエッジ310およびCD+、CD−バーストエッジ320を含むヌル型サーボバーストパターンを含むサーボウェッジ244を持つ。発明は直交サーボパターンのような他の型のサーボパターンを含むディスクドライブにも等しく適用可能である。また、各サーボウェッジ244に包含される情報の一部としては、AB+、AB−バーストエッジ310および/またはCD+、CD−バーストエッジ320の理想的なトラックからの距離である補正値を保持するWORF(wedge offset reduction field)410が含まれる。実施形態によっては、補正値、すなわちWORF値はこれもSRAM、DRAM、またはフラッシュのようなメモリに保存されてよい。直交型サーボパターンを特色とする実施形態では、WORF値がABバーストエッジ210またはCDバーストエッジ220(図2Bに示す)の少なくとも1つからの距離に相当するはずである。記憶ディスク112は、各々が複数のサーボウェッジ244およびデータフィールド(data field)246を含む複数の同心データ記憶トラック242を含む。
【0023】
アクチュエータアームアセンブリ118はアクチュエータドライバ(actuator driver)440によって駆動される。このアクチュエータドライバ440は図1に示されるボイスコイルモータ128に電流を流す。動作において、記録された磁束転移から誘起された微小な電気信号はプリアンプ(preamplifier)424によって増幅され、従来のディスクドライブデータリカバリ(disk drive data recovery)回路(図示せず)に供給される。ディスクドライブ110は、トランスデューサの位置を決定するために使用されるサーボシステム400を含む。サーボシステム400は、トランスデューサヘッド121の位置を測定し、このトランスデューサヘッド121を所望のトラック上方に位置決めするために、駆動すべきアクチュエータアームアセンブリ118のボイスコイルモータへ入力される駆動電流を生成するフィードバックループである。サーボシステム400はリカバリWORF回路(recovery WORF circuit)426、微細位置リカバリ回路(fine position recovery circuit)430およびトラック番号回路(track number circuit)431を含む。信号はトランスデューサヘッド121によって生成され、微細位置リカバリ回路430およびトラック番号回路431によって処理される。微細位置リカバリ回路430およびトラック番号回路431の出力信号は、合計ノード(summing node)434で合計され、AB+,AB−バーストエッジ310および/またはCD+,CD−バーストエッジ320に関連するWORF値の少なくとも1つで補正される。このWORF値は、ディスク112のサーボウェッジ244内のWORFフィールド410からのデジタルバースト補正値、すなわちWORF値を修復するWORFリカバリ回路426から生成されるものである。加えて、WRROは、サーボ上のWRROの効果なので、合計ノード434で位置信号に加えられることが概略的に示される。アクチュエータドライバ440で駆動電流を生成するために、コントローラ回路436は合計ノード434からの信号およびディスクドライブ110内の他の回路からのヘッド位置決め指令値を受け取り、量子化して補正したヘッド位置決め値と指令値を組み合わせて、指令されたアクチュエータ電流値を生成する。この指令された電流値は、コントローラ回路436によって計算され、ディジタルアナログ変換器(digital to analog converter)438によってアナログ値に変換され、追従している同心データ記憶トラック242に対して相対的にヘッドの位置を調節するようにロータリーアクチュエータ118を動作させるアクチュエータドライバ440の制御に適用される。
【0024】
図5は、発明の実施形態に従うディスクドライブ110の離散時間モデル500の図である。図5では、ディスクドライブ110、オンボードヘッド位置サーボコントローラ回路436、および関連回路が離散時間動的システム(discrete time dynamic system)G(z)としてブロック560内でモデル化されている。本例のモデル500では、zが連続時間システム(continuous time system)を離散時間システム(discrete-time system)へ変換するために一般に用いられる離散時間時間進行オペレータを表す。サンプル時間系列rro(n)のZ変換はRRO(z)として表わされ、ここでrro(n)はサーボウェッジnでの反復可能ランアウトを表す。動的システムは、加算ノード(summing node)552に加わる未知の反復する外乱(repeatable disturbance)RRO(z)を受ける。ゼロミーンノイズ(zero mean noise)であると想定される他の未知の外乱N(z)は加算ノード554でヘッド位置信号に加わる。最終的に、特定の補正信号WORF(z)が加算ノード556で外乱を受けたヘッド位置信号に加わる。これら3つの影響(influences)は、モデル500を駆動するエラー項である合成された影響ERR(z)を生じさせる。この結果となる閉ループ伝達関数(closed loop transfer function)は、次のように定義され得る。
【0025】
【数1】

【0026】
ここで、以下のような変形が可能である。
【0027】
【数2】

【0028】
RRO信号は、定義により、周期的である。周期的であるため、周波数領域においては離散的であり、有限長のz多項式(z-polynomial)で表される。これはディスクスピンドルの回転の度に反復するため、スピンドルの様々な調波の和で表される。実際に、存在するrro(n)の部分のみがωi(i=0〜N/2)において現れる。ここでNは、回転毎のサーボ位置のサンプル数である。G(z)は、周期的信号rro(n)によって活性化される線形システムであるため、注目するG(z)の部分は各ωiでのそれらのみである。システム全体は、各々ωiで動作し、個別に解が求められる離散システムの総和として扱われる。
【0029】
与えられたωiについて、WORF(jωi)は計算できる。離散フーリエ変換(DFT)または類似の方法でERR(jωi)を測定して1+G(jωi)を知ることにより、以下の式からRRO(jωi)を計算する。
【0030】
【数3】

【0031】
各ωiでerr(n)のDFTを取り(ここでerr(n)はサーボウェッジnでの位置誤差を表す)、各々を対応する1+G(jωi)によってスケーリングするプロセスは、err(n)とカーネル(kernel)とを畳み込むことと同じであり、各ωiで評価される1+G(z)の応答から得られる。従って、信号err(n)とカーネルを畳み込んで、次式を得る。
【0032】
【数4】

【0033】
ここで、nは0からN−1までのサーボウェッジを表す変数であり、カーネルはループ伝達関数を表すN数の列であって、Nは回転毎のサーボウェッジの数である。このカーネルは、制御システムシミュレーションや識別信号をサーボ制御ループに投入してこれら信号に対する応答を測定することにより異なるディスクドライブモデル毎に取得できる。実施形態によっては、別々のカーネルがポストアセンブリ製造処理工程中に各個別ドライブについて決定できる。代わりに、各ヘッドについて別々のカーネルを決定したり、各ヘッドについて複数のカーネルを決定したり、各ヘッド上の多数の半径方向のゾーンの各々について1つを決定してもよい。
【0034】
本発明の原理及び態様に従って、ゼロミーンノイズ項の影響(impact)のnoise(n)は、記憶ディスクの多数の回転に対し、漸近低減時定数(asymptotically decreasing time constant)、err(n)、またはerr(n)−worf(n)をローパスフィルタリング(low pass filtering)や同期平均化(synchronously averaging)して最小化できる。必要な回転数は、noise(n)項の周波数内容(frequency content)に依存する。スピンドル調波(spindle harmonics)近くに重要なスペクトルを有するnoise(n)は、rro(n)のスペクトルをnoise(n)と充分区別するために、データフィルタリングの更なる回転を必要とする。充分なフィルタリングがあれば、noise(n)が小さくなり、上述の式の左辺は次式に帰着する。
【0035】
【数5】

【0036】
これは、算出されたWORF値とRRO値との間の誤差である。このフォーマット(format)は、以下の反復解(iteration solution)に向いている。
【0037】
【数6】

【0038】
ここで、kは反復番号であり、αkは0および1の間の定数であって、実際の伝達関数とカーネルの生成のための伝達関数との不一致を許容する収束レート(convergence rate)を得るために選択される。一実施形態では、αkの値が反復ごとに変動することがある。また、他の実施形態では特定ウェッジのWRROに対する補正での低減レートの関数として変動することもある。当該技術の熟練者は、αkの値が反復WORF値決定スキームの収束に重要であることが直ぐにわかるはずであり、高すぎる場合に正確なWORF値への収束は遅くなるか適切に到達しなくなり、低すぎる場合にWORF決定アルゴリズムが非常に遅くなったり、全く収束しなくなったりする。例えば、比較的高い利得、ここでは0.5≦αk <1.0が初期の反復において使用され、後続の反復中に徐々に減少されてもよい。要するに、個々のサーボウェッジnに対するWORF値は巡回畳み込み(circular convolution)として計算でき、サーボループの逆伝達関数を用いたディスク媒体の以前の回転のPESのCONV(n)として示される。ここで、各サーボウェッジに対するPES値は環状バッファに保存され、利得係数αkは収束信頼性を高めるために使用される。
【0039】
特定トラックのために、WORF値、すなわち記憶ディスク上の各ウェッジのためのオフセット補正値はウェッジ毎ベースでリアルタイムに決定され、直ぐに測定ウェッジのためのサーボ制御信号の計算に組み込まれる。記憶ディスクの各回転では、付加的な反復kが各サーボウェッジ上で行われ、N個のウェッジの各々に対するWORF値が補正される。サーボ制御信号はトランスデューサに関する最新の位置情報、すなわち最も最近測定されたPESに基づいて計算されるので、正確なWORF値が、従来のWORF値を決定する方法に比べて比較的少ない記憶ディスクの回転で決定される。ディスクドライブコントローラやマイクロプロセッサがサーボパターンを読み出して復調してPESを生成するため専念できたり、コントローラやマイクロプロセッサの一部がこれらのサーボ動作を行うために使用できたりする。
【0040】
当該技術の熟練者は、N項の逆伝達関数とWORFおよびPES項との畳み込みを行うために要する計算の数が、ディスクドライブコントローラやマイクロプロセッサにとって著しい計算時間を完了のために必要とするN個の乗算およびN個の蓄積を含むこがわかるはずである。記憶ディスク上のサーボウェッジ数Nがほぼ100から200であるため、最も最近測定されたPESに基づく更新WORF値の計算を待つことによってもたらされる搬送遅れは著しい。発明の実施形態は、WORF値決定計算および現在のウェッジ(current wedge)のPESの測定に先立つ現在のサーボウェッジのサーボ制御計算の大多数を前計算することを考えている。すなわち、前に測定された全サーボウェッジのPESおよびWORF項と逆伝達関数カーネルとの畳み込みを成す全ての乗算および蓄積は、現在のウェッジのPESを測定することに先立って行われて保存されてよい。最後の乗算および畳み込み演算の蓄積の計算は、現在のウェッジのためのPESを測定した後に行われる。このように、現在のウェッジのPESが測定された後、メモリからの取得、乗算、および蓄積という少数の動作だけがディスクドライブコントローラやマイクロプロセッサによって行われる。これら少数の動作は著しく1マイクロ秒よりもはるかに速く行える。従って、たとえ最も最新のPESがトランスデューサヘッドのサーボ制御信号に組み込まれても、WORF値計算でもたらされるサーボの付加的搬送遅れは最小である。
【0041】
図6は、サーボウェッジの相対位置、ディスク媒体のトラック601上の書込データ、およびトランスデューサヘッドがディスク媒体上を移動する時にWORF値補正プロシージャを行う対応時間領域シーケンス610を示す概略図である。
【0042】
時刻611および612間では、トランスデューサヘッドがサーボウェッジ619および620間に位置する場合に、ディスクドライブコントローラがサーボウェッジnとしてもラベル付けされたサーボウェッジ620に対するWORF値の前計算630を行う。ここで、nは0からN−1であって、Nはサーボウェッジの数である。前計算630はサーボループの逆伝達関数とサーボウェッジ620以外の全サーボウェッジのPESとの巡回畳み込みを行うことを含む。具体的には、この計算に用いられるPES値がディスク媒体の以前の回転でのサーボウェッジn+1からN−1のPESおよびこのディスク媒体の現在の回転でのサーボウェッジ0からn−1のPESを含む。
【0043】
時刻612では、トランスデューサヘッドがサーボウェッジ620に遭遇し、サーボパターンを読み出す。この後、ディスクドライブコントローラはこのサーボパターンを復調してサーボインタラプト(servo interrupt)640中にサーボウェッジ620に対するPESを生成する。加えて、ディスクドライブコントローラは、サーボウェッジ620のPESの最終乗算および蓄積を行うことにより全サーボウェッジのPESとサーボループの逆伝達関数との巡回畳み込みの最終演算を完了する。これら2つの関数の巡回畳み込みを完了することによって、サーボウェッジ620に対する補正WORF値が生成され、実質的に円形のトラックを生むトランスデューサ位置に適用される。巡回畳み込みを完了するために必要な最終演算がほぼ10ナノ秒で行えるため、全ての要求関数を完了するために10ナノ秒以上を要するサーボインタラプト640が持続期間において大幅な増大を被ることはない。特に、サーボウェッジ620のPESの測定とこのPESに応答してサーボ制御信号の適用との間の時間は、全サーボウェッジのPESとサーボループと逆伝達関数の巡回畳み込みの最終演算が完了することに伴って約10ナノ秒増大するだけである。サーボインタラプト640の時間限界部(time-critical portion)の終わり、すなわち時刻613はトランスデューサがサーボウェッジ620を通過してから非常に短時間に起き、サーボウェッジ620のPESがサーボインタラプト640中に用いられるWORF値に組み込まれない場合よりわずか1マイクロ秒遅いだけである。図示するように、サーボウェッジ620のPESは、トランスデューサヘッドがサーボウェッジ620および621間を移動する時間のほとんどにおいてトランスデューサヘッドのパスに影響を及ぼすために十分迅速にサーボ制御信号に組み込まれている。対照的に、WORF値を計算する回転ベースのスキームは、持続期間において1回以上の完全なディスク媒体の回転で測定されるサーボウェッジPESの測定(observation)からWORF値補正の適用までの遅延を組み込んでいる。その結果として、ここに記載のWORF値を決定するリアルタイムでのウェッジベース方法は、WORF値を計算する回転ベーススキームよりも速く与えられたトラックに対する正確なWORF値に収束する。
【0044】
時刻613では、サーボウェッジnのために時刻611に始められたプロセスが、サーボウェッジn+1のために繰り返される。すなわち、ディスクドライブコントローラは、次のサーボウェッジ621に対するWORF値のうち前計算631を行う。ここで、前計算631で追従するプロシージャは、前計算630でのそれと実質的に同様である。ディスク媒体のトラック601の各サーボウェッジに対するWORF値を補正するための時間領域シーケンスは、所望の最終条件が満足されるまで、ディスク媒体の多数の回転に渡って繰り返す。一実施形態において、最終条件はWORF値が更新されたプロシージャのスタートからサーボウェッジの総数に基づいてもよい。他の実施形態では、WRRO低減の所望レベルまたは比率が達成された後、WORF値補正プロシージャが与えられたトラックについて終了してよい。他の終了基準もまた考慮される。一実施形態では、WORF値補正プロシージャは、データリカバリ技術の一部として、あるいはディスクドライブの耐用年数を通じて周期的に行われてよい。
【0045】
ここに記述されたWORF値補正プロシージャについては、WORF値に対する非0開始条件が、安定かつ迅速な収束プロセスにとって望ましい。一実施形態において、与えられたトラックのWORF値に対する開始条件は以前のトラックについて決定されたWORF値を採用する。このような実施形態では、記憶ディスクのまさに最初のトラックに対するWORF値は、回転ベースのWORF値補正スキームや他のプロシージャのような現在知られる何らかの方法を用いて決定されてよい。他の実施形態では、「最良推量」開始条件を入力する代わりに、ここに記述された反復リアルタイムWORF値決定スキームの安定性を例えば4以上の因数だけサーボループの利得を著しく低減することにより改善したり、各サーボウェッジのPES値を与えられたトラックの最初または全回転で例えば70%に実質的に割引いたりできる。代わって、利得低減および/またはPES割引技術は単にディスク媒体上で測定された最初のトラックに適用されてもよい。
【0046】
図7は、発明の実施形態に従い、リアルタイムウェッジ毎スキームを使用してディスクドライブでのWORF補正値を決定する方法700の概要を示すフローチャートである。記述を容易にするため、方法700は図1でのディスクドライブ110と実質的に同様のディスクドライブについて記述されるが、他のディスクドライブが方法700の使用から利益を得てもよい。処理700-706を行わせる複数のコマンドは、ディスクドライブコントロールアルゴリズムに、および/またはディスクドライブの電子回路、あるいは記憶ディスク自体上で保存された値として存在してよい。図6に関連して上述したように、ディスク媒体の最初の回転に対する初期WORF値は、多くの様々なプロシージャにより提供されてよい。
【0047】
処理701では、トランスデューサヘッド121が記憶ディスク112のデータセクタ246を通過するにつれて、コントローラ回路436が以前のサーボウェッジ(previous servo wedges)のPESをメモリから取得する。一実施形態では、各サーボウェッジのPES値が環状バッファに保存され、記憶ディスク112の各回転で重ね書きされてもよい。PES値は測定される次のサーボウェッジ、すなわちサーボウェッジnを除いて全ての以前のサーボウェッジについて取得されてよい。
【0048】
処理702では、コントローラ回路436が逆伝達関数カーネルとサーボウェッジn−1まで前に測定されたサーボウェッジのWORFおよびPES項との畳み込みを成す全ての演算が行われて保存される前計算動作を行う。
【0049】
処理703では、トランスデューサヘッド121がサーボウェッジnを通過し、コントローラ回路436によって復調され保存されるPESを生成する。
【0050】
処理704では、コントローラ回路436が前に測定されたウェッジのPESと逆伝達関数との巡回畳み込みの最終演算を行うことにより、サーボウェッジnに対してWORF値決定を完了する。最終演算は、乗算とサーボウェッジnのPESを含む蓄積とを含む。
【0051】
処理705では、コントローラ回路436がサーボウェッジnに対する補正WORF値をサーボ制御信号に適用する。
【0052】
処理706では、終了条件チェックが行われる。方法700のための終了条件は所望のレベルのWRRO低減、あるいはディスク媒体の連続の回転の間において1以上のサーボウェッジについて達成されるWRRO低減の比率であってよい。代わって、方法700のための終了条件は所定数のサーボウェッジおよび/または方法700が行われたディスク媒体の回転でよい。他の終了基準(termination criteria)もまた考慮される。この終了条件が満足されなければ、方法700がサーボウェッジn+1について繰り返される。この終了条件が満足されれば、現在トラックの各サーボウェッジに対するWORF値がディスク媒体上の適切なWORFに書き込まれ、および/またはSRAM、DRAM、あるいはフラッシュのようなディスクドライブに関連した他のメモリに保存される。一実施形態では、トラックに対する最終のWORF値は、ディスク媒体の次のトラックへのトランスデューサ移動に先立って保存される。
【0053】
方法700のWORF値決定プロシージャを使用した場合、トラック上の各サーボウェッジに対するWORF値、同じセットの処理を用いて計算される。回転ベースのWORF値決定スキームとは違って、WORF計算プロシージャ、すなわち方法700で、別個のデータ収集およびデータ処理のステージがない。これは、より単純で少数ラインのコード実行を許容し、バックグラウンドで走るWORF値処理状態のマシンを必要としない。このようなWORF値決定スキームは、サーボインタラプトルーチンで当然リアルタイムに実行される。
【0054】
他の実施形態では、サーボウェッジのPESが測定されて、測定される次のサーボウェッジに対する更新WORF値の計算に組み込まれる。このようなWORF値決定スキームは図8に示される。図8は、例的実施形態に従い、サーボウェッジの相対位置、ディスク媒体のトラック601上の書込データ、およびトランスデューサヘッドがディスク媒体上を移動する時にWORF値補正プロシージャを行う対応時間領域シーケンス810を示す概略図である。
【0055】
時刻811では、トランスデューサヘッドがサーボウェッジ619に遭遇し、サーボパターンを読み出す。この後、ディスクドライブコントローラはこのサーボパターンを復調してサーボインタラプト830中にサーボウェッジ619のPESを生成する。
【0056】
時刻812で、サーボインタラプト830の一部として、ディスクドライブコントローラは、トランスデューサヘッドがサーボウェッジ619およびサーボウェッジ620間を移動するときに、トランスデューサヘッドを再度位置決めするサーボ制御信号を生成する。サーボ制御信号はサーボウェッジ619について測定されたPESおよびサーボウェッジ619に対して前に計算されたWORF値に基づく。このような発明の実施形態では、サーボウェッジ619のPESは時刻811で測定され、ウェッジ619に対するWORF値を更新するために用いられない。また、時刻812では、ディスクドライブコントローラが、サーボループの逆の伝達関数と全サーボウェッジのPESとの巡回畳み込み840を行うことにより次のサーボウェッジ、すなわちサーボウェッジ620に対するWORF値を計算し始める。この計算に用いられるPES値は最も最近測定された利用可能なPES値を含む。このため、与えられたトラック上に配置されるN個のサーボウェッジの総数からサーボウェッジnとして定義されるサーボウェッジ620について、この計算に用いられるPES値はディスク媒体の現在回転についてのサーボウェッジ0からn−1のPES、およびディスク媒体の以前の回転についてのサーボウェッジ0からn−1のPESを含む。サーボウェッジ620、すなわちサーボウェッジnに対する新規WORF値は時刻813の前に計算され、トランスデューサヘッドがサーボウェッジ620に遭遇するサーボインタラプト831中にサーボ制御信号に適用されるはずである。
【0057】
時刻813では、トランスデューサヘッドがサーボウェッジ620に遭遇し、サーボパターンを読み出す。その後、ディスクドライブコントローラはサーボパターンを復調しサーボインタラプト831中にサーボウェッジ619のPESを生成する。このプロセスは、この後、各サーボウェッジについて繰り返される。ここで、与えられたウェッジに対するWORF値はそのウェッジでPES値を測定する前に計算される。例えば、サーボウェッジ621に対するWORF値は巡回畳み込み841中に時刻814および815間で計算される。こうして、ディスク媒体の1回転より古いPESデータがどのサーボウェッジに対するWORF値を計算するためにも使用されない。結果として、この方法は、当該技術において知られた回転ベースである他のWORF値決定スキームに比べて、ディスク媒体に対する正確なWORF値への比較的速い収束を可能にする。
【0058】
図9は、ディスクドライブでのウェッジオフセット補正値を決定する方法を行うために複数のコンピュータプログラム命令を実行するコンピュータシステム2000のブロック図である。コンピュータシステム2000は処理ユニット2002、メモリ2004、リムーバブルストレージ2012および非リムーバブルストレージ2014を含む。メモリ2004は揮発性メモリ2006および不揮発性メモリ2008を含んでよい。コンピュータシステム2000は揮発性メモリ2006、不揮発性メモリ2008、リムーバブルストレージ2012、および非リムーバブルストレージ2014のような様々なコンピュータ可読媒体を含む計算環境へのアクセスを含んだり有したりしてよい。コンピュータストレージはランダムアクセスメモリ(RAM)、読出専用メモリ(ROM)、消去およびプログラム可能読出専用メモリ(EPROM)、電気的消去およびプログラム可能読出専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、あるいは他のメモリ技術、コンパクトディスクを使った読出専用メモリ(CD ROM)、デジタル他用途ディスク(DVD)、あるいは他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ、あるいは他のディスクストレージ装置、あるいはコンピュータ可読命令を保持できる他の媒体を含む。コンピュータシステム2000は、入力部2016、出力部2018および通信接続部2020を含む計算環境へのアクセスを含んだり有したりしてよい。入力部のうちの1つはキーボード、マウスあるいは他の選択デバイスであり得る。通信接続部2020はディスプレイのようなグラフィカルユーザインタフェース(graphical user interface)を含み得る。コンピュータは1以上の遠隔コンピュータに接続するために通信接続部を用いてネットワーク環境で動作してよい。遠隔コンピュータはパーソナルコンピュータ(PC)、サーバ、ルータ、ネットワークPC、ピア装置あるいは他の共有ネットワークノード等を含んでよい。通信接続部はローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)あるいは他のネットワークを含んでよい。
【0059】
コンピュータ可読媒体に記憶されたコンピュータ可読命令は、コンピュータシステム2000の処理ユニット2002によって実行可能である。ハードドライブ、CD−ROM、およびRAMは、コンピュータ可読媒体を含む物品の例である。例えば、本発明の教示に従い、データアクセスのためのアクセス制御チェックおよび/またはコンポーネントオブジェクトモデル(COM)ベースのシステム内のサーバのうちの一つ上で動作を行う汎用技術を提供できるコンピュータプログラム2025はCD−ROMに含まれ、このCD−ROMからハードドライブにロードされてよい。コンピュータ可読命令は、コンピュータシステム2000が多数のユーザおよびサーバを持つCOMベースコンピュータネットワークシステムにおいて汎用アクセス制御を提供することを認める。
【0060】
上述したような機械可読媒体は、機械によって実行される場合に、第1のサーボウェッジのサーボ情報を復調し、第2のサーボウェッジのサーボ情報を復調する前に、第1のサーボウェッジのサーボ情報に対するWRROの補正因子を決定することをこの機械に行わせる複数の命令を提供する。第2のサーボウェッジは、第1のサーボウェッジに対して時間的に次のサーボウェッジである。実施形態によっては、これら命令が、機械によって実行される場合に、第1のサーボウェッジについて決定された補正因子を第1のサーボウェッジのPESに加えることをこの機械に行わせる。このPESは、第1のサーボウェッジのサーボ情報を復調した結果として得られる。実施形態によっては、これら命令が、第1のサーボウェッジについて決定された補正因子を記憶させることをこの機械に行わせる。機械可読媒体は、ディスクドライブのディスク表面上のトラックに関連する複数のサーボウェッジに関連する複数のPES値を取得し、補正値決定の一部として、複数のサーボウェッジの各々から取得したPES値の畳み込みを行うことをこの機械に行わせてもよい。機械可読媒体は、サーボ情報の第1のサーボウェッジについて決定された補正因子をサーボ情報の第1のサーボウェッジのPESに加えることをこの機械に行わせる複数の命令を含んでもよい。この機械は、ここでトランスデューサをディスク上で選択トラック上の位置に移動させるためにディスクドライブのボイスコイルモータ内に電流を生成するよう命令されてよい。
【0061】
上述の記載は本発明の実施形態を導くもので、本発明の他の実施形態が本発明の基本的範囲を逸脱せずに案出されることもでき、この範囲は以下の請求項によって明らかである。
【符号の説明】
【0062】
110…ディスクドライブ、112…記憶ディスク、121…トランスデューサヘッド、200…サーボパターン、242…データ記憶トラック、244…サーボウェッジ、436…コントローラ回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を有するディスクドライブにおいて、前記ディスクドライブのトランスデューサヘッドのためのサーボ制御信号を、前記トランスデューサヘッドが第1サーボウェッジを通過した後で前記トランスデューサヘッドが次のサーボウェッジを通過する前に生成する方法であって、
前記第1サーボウェッジ以外の少なくとも1つの第2サーボウェッジに関連した1以上の位置誤差信号を取得し、
前記第1サーボウェッジに関連した位置誤差信号を測定し、
前記第1サーボウェッジに関連した位置誤差信号のための補正因子を、前記第1サーボウェッジ以外の少なくとも1つの第2サーボウェッジに関連した1以上の位置誤差信号および前記第1サーボウェッジに関連した前記位置誤差信号に基づいて決定し、
前記補正因子を前記第1サーボウェッジに関連した前記位置誤差信号に適用し、
前記補正因子が前記第1サーボウェッジに関連した前記位置誤差信号に適用された後で前記第1サーボウェッジに対する前記サーボ制御信号を生成することを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
N個のサーボウェッジおよび1個の位置誤差信号および前記N個のサーボウェッジの各々について保存された1個の補正因子があることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補正因子は前記位置誤差信号、前記第1サーボウェッジ以外の全ての第2サーボウェッジに関連した補正因子、および前記第1サーボウェッジに関連し測定された位置誤差信号に基づいて決定されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定された位置誤差信号で前記第1サーボウェッジについて保存された前記位置誤差信号を更新し、
前記第1サーボウェッジについて保存された前記補正因子を新規に決定された補正因子で更新することをさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1サーボウェッジに関連した位置誤差信号が測定される前に、前記サーボ制御信号のための補正因子の一部が決定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記サーボ制御信号のための補正因子の一部は、前記第1サーボウェッジ以外の少なくとも1つの第2サーボウェッジに関連した1以上の位置誤差信号から決定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記サーボ制御信号のための補正因子の一部は、前記第1サーボウェッジ以外の全ての第2サーボウェッジに関連した前記1以上の位置誤差信号から決定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
複数のサーボウェッジ#0から#N−1を伴って構成される記録媒体を有するディスクドライブにおいて、前記ディスクドライブのトランスデューサヘッドのためのサーボ制御信号を生成する方法であって、
サーボウェッジ#nの位置誤差信号を測定し、
前記トランスデューサヘッドがサーボウェッジ#n+1に到達する前に、全N個のサーボウェッジに関連した複数の保存位置誤差信号を取得し、前記複数の保存位置誤差信号に基づいて前記サーボ制御信号のための補正因子を決定し、前記補正因子を前記サーボ制御信号に適用することを備えることを特徴とする方法。
【請求項9】
1つの位置誤差信号および1つの補正因子がN個のサーボウェッジの各々について保存されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記補正因子は、前記複数の保存位置誤差信号および前記複数の保存補正因子に基づいて決定されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
サーボウェッジ#n+1の位置誤差信号を測定してサーボウェッジ#n+1に対する前記保存位置誤差信号を前記測定位置誤差信号で更新し、
前記サーボウェッジ#n+1のための前記補正因子を前記新規に決定された補正因子で更新することをさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
N個のサーボウェッジ(N>1)を伴って構成される記録媒体を有するディスクドライブのトランスデューサヘッドのためのサーボ制御信号の生成に用いられる補正因子の反復決定方法であって、
前記サーボウェッジの各々に1個ずつとなるN個の補正因子のセットを保存し、
前記記録媒体を回転させ、
いずれかのサーボウェッジ#n(ここで、nはn=1からN−1)のための更新が現在の回転でのサーボウェッジ#0から#n−1の位置誤差信号および以前の回転でのサーボウェッジ#n+1から#N−1の位置誤差信号に基づくようにして前記記録媒体の各回転中に前記N個の補正因子を更新し、
更新されたN個の補正因子を記録媒体に書き込むことを備えることを特徴とする方法。
【請求項13】
いずれかのサーボウェッジ#nのための前記更新は、前記サーボウェッジ#nの位置誤差信号が測定される前に現在の回転でのサーボウェッジ#0から#n−1の位置誤差信号および以前の回転でのサーボウェッジ#n+1から#N−1の位置誤差信号に基づく前記補正因子の一部を計算することを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−238348(P2010−238348A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200851(P2009−200851)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】