説明

ディスクブレーキ用の積層シムと該積層シムを備えるパッドユニット

【課題】 押圧部材側シムがパッド側シムおよびパッドの裏板に対して面方向に摺動しやすい構成になっているディスクブレーキ用の積層シムを提供する。
【解決手段】 パッド3の裏板30の裏面側に設けられるパッド側シム20と、パッド側シム20と押圧部材との間に介装される押圧部材側シム21とを積層状に備えているディスクブレーキ用の積層シム2であって、パッド側シム20には、裏板30の外周縁に張出して裏板30の外周縁に掛け止められるフック20aが形成されている。
そして押圧部材側シム21には、パッド側シム20のフック20aの上面に張出してパッド側シム20のフック20aの上面に対して摺動可能に当接されるフック21aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドをロータに向けて押圧する押圧部材とパッドとの間に介装されて、押圧部材とパッドとの間に生じるブレーキ異音を抑制するディスクブレーキ用の積層シムに関する。とりわけパッドの裏板の裏面側に設けられるパッド側シムと、パッド側シムと押圧部材との間に介装される押圧部材側シムとを積層状に備えているディスクブレーキ用の積層シムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々な積層シムが知られており、例えば特許文献1,2に記載の積層シムが知られている。
特許文献1に係る積層シムは、パッドの裏板の裏面側に設けられるパッド側シムと、パッド側シムと押圧部材(ピストンまたはキャリパの爪部)との間に介装される押圧部材側シムとを積層状に備えている。
パッド側シムは、裏板に掛け止められる二つの外側縁フックと二つの内側縁フックとを有している。外側縁フックは、裏板のロータ外周縁に沿って延出する外側外周縁に張出して該外側外周縁に掛け止められる構成になっている。一方、内側縁フックは、裏板のロータ中心寄りにてロータ周方向に沿って延出する内側外周縁に張出して該内側外周縁に掛け止められる構成になっている。
押圧部材側シムは、裏板に掛け止められる一つの外側縁フックと二つの内側縁フックとを有している。押圧部材側シムの外側縁フックと内側縁フックは、パッド側シムの外側縁フックと内側縁フックとを避けた位置にて裏板の外周縁に張出して、裏板の外周縁に掛け止められる構成になっている。
【0003】
特許文献2に係るパッド側シムは、裏板に掛け止められる一つの外側縁フックと二つの内側縁フックとを有している。押圧部材側シムは、裏板に掛け止められる一つの外側縁フックと二つの内側縁フックとを有している。そして押圧部材側シムの外側縁フックと内側縁フックは、パッド側シムの外側縁フックと内側縁フックとを避けた位置にて裏板の外周縁に張出して、裏板の外周縁に掛け止められる構成になっている。
したがって特許文献1,2に係る押圧部材側シムは、外側縁フックと内側縁フックによって裏板の外周縁に対して直接、掛け止められる構成になっていた。
【特許文献1】特開平10−318301号公報
【特許文献2】特開平11−101280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし積層シムは、押圧部材がパッドの裏板に対して面方向にずれた際に生じる異音を抑制することを目的の一つとしている。そのため押圧部材側シムがパッド側シムおよび裏板に対して面方向に摺動しやすい構成であることが望ましい。これに対して特許文献1,2に係る押圧部材側シムのフックは、裏板の外周縁に直接掛け止められる構造であった。そのため押圧部材側シムのフックが裏板の外周縁の外周形状あるいは裏板の外周縁との間に生じる摩擦抵抗によって裏板に対して摺動しにくく、押圧部材側シムがパッド側シムおよび裏板に対して面方向に摺動しにくい場合があった。
そこで本発明は、押圧部材側シムがパッド側シムおよびパッドの裏板に対して面方向に摺動しやすい構成になっているディスクブレーキ用の積層シムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備えるディスクブレーキ用の積層シムあるいはパッドユニットであることを特徴とする。
請求項1に係る積層シムによると、パッド側シムには、裏板の外周縁に張出して裏板の外周縁に掛け止められるフックが形成されている。そして押圧部材側シムには、パッド側シムのフックの上面に張出してパッド側シムのフックの上面に対して摺動可能に当接されるフックが形成されている。
【0006】
したがって押圧部材側シムは、押圧部材側シムのフックがパッド側シムのフックの上面に当接されることで裏板に対して掛け止められる。
また押圧部材側シムのフックは、パッド側シムのフックの上面に対して摺動可能に当接される。そのため押圧部材側シムのフックは、従来のように裏板に対して直接掛け止められる構成よりも裏板に対して摺動しやすい。なぜならパッド側シムのフックは、一般にステンレス等の金属板から形成されており裏板よりも摩擦抵抗が小さいからである。
かくして押圧部材側シムは、押圧部材とともにパッド側シムおよび裏板に対して面方向に摺動しやすい。このため押圧部材側シムは、押圧部材がパッドに対して面方向にずれた際に生じる異音を効果的に抑制することができる。
【0007】
請求項2に記載の積層シムによると、パッド側シムには、裏板のロータ外周縁に沿って延出する外側外周縁に張出して該外側外周縁に掛け止められる外側縁フックと、裏板のロータ中心寄りにてロータ周方向に沿って延出する内側外周縁に張出して該内側外周縁に掛け止められる内側縁フックとが形成されている。そして押圧部材側シムには、裏板の外側外周縁に張出す外側縁フックと、裏板の内側外周縁に張出す内側縁フックとが形成されており、外側縁フックまたは内側縁フックの少なくとも一つがパッド側シムの外側縁フックまたは内側縁フックの上面に対して摺動可能に当接される構成になっている。
【0008】
したがって押圧部材側シムは、外側縁フックと内側縁フックによって裏板に対してロータ径方向への移動が規制された状態にて掛け止められる。
そして外側縁フックと内側縁フックの少なくとも一つがパッド側シムの外側縁フックまたは内側縁フックの上面に対して摺動可能に当接されている。そのため押圧部材側シムの外側縁フックまたは内側縁フックは、従来のように裏板に直接掛け止められる構成よりも裏板に対してロータ周方向に摺動しやすい。かくして押圧部材側シムは、押圧部材とともにパッド側シムおよび裏板に対してロータ周方向に摺動しやすい。このため押圧部材側シムは、押圧部材がパッドに対してロータ周方向にずれた際に生じる異音を効果的に抑制することができる。
【0009】
請求項3に記載の積層シムによると、押圧部材側シムには、一つまたは複数の外側縁フックと、一つまたは複数の内側縁フックが形成されている。そして外側縁フックのすべてまたは/および内側縁フックのすべてがパッド側シムの外側縁フックまたは内側縁フックの上面に対して摺動可能に当接される構成になっている。
したがって押圧部材側シムの外側縁に形成された外側縁フックのすべてがパッド側シムの外側縁フックの上面に対して摺動可能に当接される構成の場合には、押圧部材側シムの外側縁の全体が裏板に対してロータ周方向に摺動しやすい。また内側縁フックのすべてがパッド側シムの内側縁フックの上面に対して摺動可能に当接される構成の場合には、押圧部材側シムの内側縁の全体が裏板に対してロータ周方向に摺動しやすい。あるいは両構成を有する場合には、押圧部材側シムの外側縁と内側縁の両側全体が裏板に対してロータ周方向に摺動しやすい。
【0010】
請求項4に記載の積層シムによると、パッド側シムのフックの上面に掛け止められる押圧部材側シムのフックは、パッド側シムのフックの上面に張出す首部と、首部の先端に設けられかつパッド側シムのフックの上面に摺動可能に当接される当接部とを有している。そして首部の幅長さが、当接部の幅長さよりも細くなっている。
【0011】
したがって押圧部材側シムの首部は、押圧部材側シムが面方向の力を受けた際において他の部分よりも応力集中を受けやすく弾性変形しやすい。そのため押圧部材側シムは、首部の弾性変形によって面方向にずれることができる。
また押圧部材側シムの当接部は、パッド側シムのフックの上面に対して摺動可能に当接されているためパッド側シムおよび裏板に対して面方向に摺動することができる。
かくして押圧部材側シムは、首部の弾性変形と当接部の摺動とによってパッド側シムおよび裏板に対して面方向に移動することができる。
【0012】
請求項5に記載の積層シムによると、押圧部材側シムのフックの首部は、パッド側シムのフックの上面よりも上方にて湾曲状に延出している。
したがって首部は、湾曲状に延出することで延出方向の長さが湾曲状に延出させない場合よりも長い。そのため首部の弾性変形量が多くなり、押圧部材側シムのパッド側シムおよび裏板に対する面方向への移動量が多くなる。
【0013】
請求項6に記載のパッドユニットによると、請求項1〜5に記載のディスクブレーキ用の積層シムとパッドとを備えている。パッドの裏板の外周縁には、積層シムのパッド側シムのフックが掛け止められる凹部が形成されている。凹部には、パッド側シムのフックと、該フックの上面に摺動可能に当接される押圧部材側シムのフックとが内設されている。そして押圧部材側シムのフックの摺動量が凹部の構成壁面によって規制される構成になっている。
したがって押圧部材側シムのフックは、パッド側シムのフックの上面を摺動する。そしてその摺動量が裏板の凹部の構成壁面によって規制されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図1〜6にしたがって説明する。
ディスクブレーキ10は、図1に示すように浮動型のディスクブレーキであって、車体側に固定されるマウンティング11と、マウンティング11に対して移動可能に支持されるキャリパ13と、図2に示す一対のパッドユニット1とを有している。パッドユニット1は、パッド3と積層シム2とを有している。
【0015】
キャリパ13は、図1に示すようにスライドピン14を介してマウンティング11に支持されている。
キャリパ13は、ロータRの外周外方にてロータRをディスク軸方向に跨いでおり、ロータ軸方向に移動する。そしてキャリパ13のインナ側(車体側)にはピストン12が内設されており、アウタ側(車体外側)には爪部13a,13bが形成されている。
【0016】
ピストン12は、図2に示すようにインナ側に設けられたパッド3をロータRに向けて押圧する構成になっている。そしてピストン12によってインナ側のパッド3がロータRに向けて押圧された際には、その押圧反力によってキャリパ13がピストン12のインナ側(図中左側)に移動し、キャリパ13の爪部13a(13b)がアウタ側のパッド3をロータRに向けて押圧する。
したがって一対のパッド3は、ピストン12と爪部13a,13bの協働によってロータRに押圧される。なおピストン12と爪部13a,13bは、特許請求の範囲に記載の押圧部材に相当する部材である。
【0017】
パッド3は、図2に示すように摩擦材31と、摩擦材31の裏面を支持する裏板30とを有している。
摩擦材31は、ロータRに対して摺接されることで摩擦力を生じる。
裏板30は、金属材料または樹脂材料から成形されており、図4に示すようにディスク周方向両端縁からディスク周方向に突出する一対の耳部30dを有している。耳部30dは、図への記載は省略しているが、マウンティング11に凹設されたガイド部に対して移動可能に掛け止められる。したがって裏板30は、マウンティング11に対してディスク軸方向に移動可能に支持されている。
【0018】
積層シム2は、図2に示すようにパッド3をロータに向けて押圧する押圧部材(ピストン12または爪部13a,13b)とパッド3との間に生じるブレーキ異音を抑制するために、押圧部材(12,13a,13b)とパッド3との間に介装されている。
積層シム2は、パッド3側に設けられるパッド側シム20と、押圧部材(12,13a,13b)側に設けられる押圧部材側シム21とを積層状に備えている。
【0019】
パッド側シム20と押圧部材側シム21は、どちらもステンレス等の金属板から成形されている。したがってパッド側シム20と押圧部材側シム21との間の摩擦抵抗は、パッド側シム20と裏板30との間の摩擦抵抗よりも小さい構成になっている。
パッド側シム20は、図2に示すように裏板30の裏面側に設けられており、裏板30の裏面を覆う。パッド側シム20には、図4に示すように一つの外側縁フック20aと、複数(例えば二つ)の内側縁フック20b,20cとが形成されている。
【0020】
外側縁フック20aは、図4に示すようにパッド側シム20の外側外周縁の略中央位置に設けられており、該外側外周縁から裏板30の外側外周縁、すなわち裏板30のロータ外周縁に沿って延出する外側外周縁に張出している。そして外側縁フック20aは、図5に示すように裏板30の外側外周縁に形成された凹部30aに掛け止められる構成になっている。
【0021】
内側縁フック20b,20cは、パッド側シム20の内側外周縁にて並設されている。内側縁フック20b,20cは、該内側外周縁から裏板30の内側外周縁、すなわち裏板30のロータ中心寄りにてロータ周方向に沿って延出する内側外周縁に張出している。そして図3に示すように裏板30の内側外周縁に形成された凹部30b,30cに対して掛け止められる構成になっている。
【0022】
パッド側シム20は、図4に示すように複数のスリット20dを有しており、スリット20d内にグリースが貯留される構成になっている。したがってスリット20d内に貯留されたグリースによって、パッド側シム20と裏板30との間の摩擦抵抗と、パッド側シム20と押圧部材側シム21との間の摩擦抵抗とが低減されている。かくしてブレーキ異音の発生がグリースによって抑制され得る構成になっている。
【0023】
押圧部材側シム21は、図2に示すようにパッド側シム20と爪部13a(13b)との間、あるいはパッド側シム20とピストン12との間に介装されている。
押圧部材側シム21には、図4に示すように一つの外側縁フック21aと、複数(例えば二つ)の内側縁フック21b,21cとが形成されている。
外側縁フック21aは、押圧部材側シム21の外側外周縁の略中央位置に設けられている。そして外側縁フック21aは、図5に示すように押圧部材側シム21の外側外周縁からパッド側シム20の外側縁フック20aの上面に張出しており、外側縁フック20aの上面に対して摺動可能に当接される構成になっている。
【0024】
外側縁フック21aは、図5に示すように首部21a1と当接部21a2とを有するT字状部分を備えている。
首部21a1は、押圧部材側シム21の外側外周縁からパッド側シム20の外側縁フック20aの上面に張出している。そして首部21a1は、図6に示すようにパッド側シム20の外側縁フック20aの上面よりも上方にて湾曲状に延出している。
首部21a1の幅長さは、当接部21a2の幅長さよりも細くなっている。
【0025】
当接部21a2は、首部21a1の先端に設けられており、パッド側シム20の外側縁フック20aの上面に対して摺動可能に当接されている。したがって当接部21a2は、外側縁フック20aの上面に対してディスク周方向に摺動する。そして当接部21a2の幅長さは、首部21a1の幅長さよりも太くなっており、ディスク周方向に延出している。したがって当接部21a2は、外側縁フック20aの上面に対して安定良くディスク周方向に摺動する。
【0026】
内側縁フック21b,21cは、押圧部材側シム21の内側外周縁にて並設されている。内側縁フック21b,21cは、該内側外周縁から裏板30の内側外周縁、すなわち裏板30のロータ中心寄りにてロータ周方向に沿って延出する内側外周縁に張出している。そして図3に示すように裏板30の内側外周縁に形成された凹部30b,30cに対して掛け止められる構成になっている。
【0027】
以上のようにして積層シム2が形成されている。
すなわち押圧部材側シム21には、パッド側シム20の外側縁フック20aの上面に対して摺動可能に当接される外側縁フック21aが形成されている。
したがって押圧部材側シム21は、外側縁フック21aがパッド側シム20の外側縁フック20aの上面に当接されることで裏板30に対して掛け止められる。
また押圧部材側シム21の外側縁フック21aは、パッド側シム20の外側縁フック20aの上面に対して摺動可能に当接される。そのため外側縁フック21aは、従来のように裏板30に対して直接掛け止められる構成よりも裏板30に対して面方向に摺動しやすい。なぜならパッド側シム20の外側縁フック20aは、ステンレス等の金属板から形成されており裏板30よりも摩擦抵抗が小さいからである。
かくして押圧部材側シム21は、ピストン12または爪部13a,13b(図2参照)とともにパッド側シム20および裏板30に対して面方向に摺動しやすい。このため押圧部材側シム21は、ピストン12または爪部13a,13bがパッド3に対して面方向にずれた際に生じる異音を効果的に抑制することができる。
【0028】
押圧部材側シム21には、図4に示すように外側縁フック21aと内側縁フック21b,21cとが形成されており、図5に示すように外側縁フック21aがパッド側シム20の外側縁フック20aの上面に対して摺動可能に当接される構成になっている。
したがって押圧部材側シム21は、図3に示すように外側縁フック21aと内側縁フック21b,21cによって裏板30に対してロータ径方向への移動が規制された状態にて掛け止められる。
そして外側縁フック21aがパッド側シム20の外側縁フック20aの上面に対して摺動可能に当接されている。そのため押圧部材側シム21の外側縁フック21aは、従来のように裏板30に直接掛け止められる構成よりも裏板30に対してロータ周方向に摺動しやすい。
【0029】
押圧部材側シム21には、図3に示すように一つの外側縁フック21aが形成されており、外側縁フック21aがパッド側シム20の外側縁フック20aの上面に対して摺動可能に当接される構成になっている。
すなわち押圧部材側シム21の外側縁に形成された外側縁フック21aのすべてがパッド側シム20の外側縁フック20aの上面に対して摺動可能に当接さる構成になっている。したがって押圧部材側シム21の外側縁の全体が裏板30に対してロータ周方向に摺動しやすい。
【0030】
押圧部材側シム21の外側縁フック21aは、図5に示すように首部21a1と当接部21a2を有している。そして首部21a1の幅長さが当接部21a2の幅長さよりも細くなっている。
したがって首部21a1は、押圧部材側シム21が面方向の力を受けた際において他の部分よりも応力集中を受けやすく弾性変形しやすい。そのため押圧部材側シム21は、首部21a1の弾性変形によって面方向にずれることができる。
また当接部21a2は、パッド側シム20の外側縁フック20aの上面に対して摺動可能に当接されているためパッド側シム20および裏板30に対して面方向に摺動することができる。
かくして押圧部材側シム21は、首部21a1の弾性変形と当接部21a2の摺動とによってパッド側シム20および裏板30に対して面方向に移動することができる。
【0031】
首部21a1は、図6に示すようにパッド側シム20の外側縁フック20aの上面よりも上方にて湾曲状に延出している。
したがって首部21a1は、湾曲状に延出することで延出方向の長さが湾曲状に延出させない場合よりも長い。そのため首部21a1の弾性変形量が多くなり、押圧部材側シム21のパッド側シム20および裏板30に対する面方向への移動量が多くなる。
【0032】
裏板30の外周縁には、図5に示すようにパッド側シム20の外側縁フック20aが掛け止められる凹部30aが形成されている。凹部30aには、パッド側シム20の外側縁フック20aと押圧部材側シム21の外側縁フック21aとが内設されている。そして押圧部材側シム21の外側縁フック21aの摺動量が凹部30aの構成壁面によって規制される構成になっている。
したがって押圧部材側シム21の外側縁フック21aは、パッド側シム20の外側縁フック20aの上面をロータ周方向へ摺動する。そしてその摺動量が裏板30の凹部30aの構成壁面によって規制されている。
【0033】
(他の実施の形態)
本発明は、上記の実施の形態に限定されず、以下の形態であってもよい。
(1)上記の実施の形態に係る押圧部材側シムは、内側縁フックが裏板に対して直接掛け止められる形態であった。しかし内側縁フックがパッド側シムの内側縁フックの上面に当接される形態であっても良い。これにより押圧部材側シムは、内側縁側もパッド側シムおよび裏板に対してロータ周方向に摺動しやすくなる。そして好ましくは、押圧部材側シムの内側縁フックのすべてがパッド側シムの各内側縁フックの上面に当接される形態である。
(2)また(1)において押圧部材側シムの外側縁フックが裏板に対して直接掛け止められる形態であっても良い。
(3)上記の実施の形態に係るディスクブレーキは、浮動型のディスクブレーキであって、押圧部材としてキャリパの爪部とピストンとを備えている形態であった。しかしディスクブレーキが対向型のディスクブレーキであって、押圧部材として二つのピストンを備えている形態であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】ディスクブレーキの斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面矢視図である。
【図3】パッドユニットの背面図である。
【図4】パッドユニットの構成部材の背面側からの斜視図である。
【図5】押圧部材側シムの外側縁フック近傍の拡大斜視図である。
【図6】図5のB−B線断面矢視図である。
【符号の説明】
【0035】
1…パッドユニット
2…積層シム
3…パッド
10…ディスクブレーキ
12…ピストン(押圧部材)
13…キャリパ
13a,13b…爪部(押圧部材)
20…パッド側シム
20a…外側縁フック(フック)
20b,20c…内側縁フック(フック)
21…押圧部材側シム
21a…外側縁フック(フック)
21a1…首部
21a2…当接部
21b,21c…内側縁フック(フック)
30…裏板
30a,30b,30c…凹部
31…摩擦材
R…ロータ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッドをロータに向けて押圧する押圧部材とパッドとの間に生じるブレーキ異音を抑制するために、前記パッドの裏板の裏面側に設けられるパッド側シムと、前記パッド側シムと前記押圧部材との間に介装される押圧部材側シムとを積層状に備えているディスクブレーキ用の積層シムであって、
前記パッド側シムには、前記裏板の外周縁に張出して前記裏板の外周縁に掛け止められるフックが形成されており、
前記押圧部材側シムには、前記パッド側シムのフックの上面に張出して前記パッド側シムのフックの上面に対して摺動可能に当接されるフックが形成されていることを特徴とするディスクブレーキ用の積層シム。
【請求項2】
請求項1に記載のディスクブレーキ用の積層シムであって、
パッド側シムには、裏板のロータ外周縁に沿って延出する外側外周縁に張出して該外側外周縁に掛け止められる外側縁フックと、前記裏板のロータ中心寄りにてロータ周方向に沿って延出する内側外周縁に張出して該内側外周縁に掛け止められる内側縁フックとが形成されており、
前記押圧部材側シムには、前記裏板の外側外周縁に張出す外側縁フックと、前記裏板の内側外周縁に張出す内側縁フックとが形成されており、前記外側縁フックまたは前記内側縁フックの少なくとも一つが、前記パッド側シムの外側縁フックまたは前記内側縁フックの上面に対して摺動可能に当接される構成になっていることを特徴とするディスクブレーキ用の積層シム。
【請求項3】
請求項2に記載のディスクブレーキ用の積層シムであって、
押圧部材側シムには、一つまたは複数の外側縁フックと、一つまたは複数の内側縁フックが形成されており、
前記外側縁フックのすべてまたは/および前記内側縁フックのすべてが、パッド側シムの外側縁フックまたは前記内側縁フックの上面に対して摺動可能に当接される構成になっていることを特徴とするディスクブレーキ用の積層シム。
【請求項4】
請求項1に記載のディスクブレーキ用の積層シムであって、
パッド側シムのフックの上面に掛け止められる押圧部材側シムのフックは、前記パッド側シムのフックの上面に張出す首部と、首部の先端に設けられかつ前記パッド側シムのフックの上面に摺動可能に当接される当接部とを有しており、
前記首部の幅長さが、前記当接部の幅長さよりも細くなっていることを特徴とするディスクブレーキ用の積層シム。
【請求項5】
請求項4に記載のディスクブレーキ用の積層シムであって、
押圧部材側シムのフックの首部は、パッド側シムのフックの上面よりも上方にて湾曲状に延出していることを特徴とするディスクブレーキ用の積層シム。
【請求項6】
請求項1〜5に記載のディスクブレーキ用の積層シムと、パッドとを備えているディスクブレーキ用のパッドユニットであって、
前記パッドの裏板の外周縁には、前記積層シムのパッド側シムのフックが掛け止められる凹部が形成されており、その凹部には、前記パッド側シムのフックと、該フックの上面に摺動可能に当接される押圧部材側シムのフックとが内設されており、前記押圧部材側シムのフックの摺動量が、前記凹部の構成壁面によって規制される構成になっていることを特徴とするディスクブレーキ用のパッドユニット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−46561(P2006−46561A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230373(P2004−230373)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】