ディスク・ドライブ及びリード・ライト・オフセットの測定方法
【課題】リード・ライト・オフセットの測定時間を短縮する。
【解決手段】本発明の一実施形態のHDDは、測定用データの読み出し振幅と位置誤差信号の測定データから、それらの間の関係を決定し、それにより、ライト素子122の中心位置を示すディスク半径位置を決定する。HDDは、測定用データを書き込むときのディスク半径位置と測定データ中心位置との間の差分により、リード・ライト・オフセットを算出する。このフォロイングにおいて、リード素子121の半径位置は、測定用データ上で変化する。HDC/MPU23は、リード素子121を移動しながら測定用データの読み出し振幅と位置誤差信号とを測定することで、少ない時間で異なる半径位置における測定用データの読み出し振幅の値を多く取得することができる。
【解決手段】本発明の一実施形態のHDDは、測定用データの読み出し振幅と位置誤差信号の測定データから、それらの間の関係を決定し、それにより、ライト素子122の中心位置を示すディスク半径位置を決定する。HDDは、測定用データを書き込むときのディスク半径位置と測定データ中心位置との間の差分により、リード・ライト・オフセットを算出する。このフォロイングにおいて、リード素子121の半径位置は、測定用データ上で変化する。HDC/MPU23は、リード素子121を移動しながら測定用データの読み出し振幅と位置誤差信号とを測定することで、少ない時間で異なる半径位置における測定用データの読み出し振幅の値を多く取得することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスク・ドライブ及びそのリード・ライト・オフセット測定方法に関し、特に、リード・ライト・オフセット測定の効率化に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク・ドライブとして、光ディスクや光磁気ディスク、あるいはフレキシブル磁気ディスクなどの様々な態様のディスクを使用する装置が知られている。その中で、ハードディスク・ドライブ(HDD)は、コンピュータの記憶装置として広く普及し、さらに、動画像記録再生装置やカーナビゲーション・システムなど多くの装置で利用されている。
【0003】
HDDで使用される磁気ディスクは、同心円状に形成された複数のデータ・トラックと複数のサーボ・トラックとを有している。各サーボ・トラックはアドレス情報を有する複数のサーボ・セクタから構成される。また、各データ・トラックには、ユーザ・データを含む複数のデータ・セクタから構成されている。円周方向に離間するサーボ・セクタの間に、データ・セクタが記録されている。
【0004】
HDDは揺動するアクチュエータを有し、そのアクチュエータにヘッド・スライダが支持されている。HDDは、ヘッド・スライダによってサーボ・セクタのアドレス情報を読み出し、そのアドレス情報に従ってアクチュエータを制御する(サーボ制御)。これにより、HDDは、ヘッド・スライダを所望の半径位置(ターゲット・データ・トラック)に移動し(シーク)、さらに、その位置に位置決めする(フォロイング)することができる。ターゲット・データ・トラックに位置決めされたヘッド・スライダは、そのトラック内のターゲット・データ・セクタへのデータ書き込みあるいはデータ読み出しを行う。
【0005】
データ読み出し処理において、ヘッド・スライダが磁気ディスクから読み出した信号は、信号処理回路によって波形整形や復号処理などの所定の信号処理が施され、ホストに送信される。ホストからの転送データは、信号処理回路によって同様に所定処理された後に、磁気ディスクにヘッド・スライダにより書き込まれる。
【0006】
上述のように、ヘッド・スライダの位置決め制御は、磁気ディスク上のサーボ・データにより行われる。サーボ・セクタは、シリンダID、セクタ番号、バースト・パターンなどから構成されている。シリンダIDはトラックのアドレス、セクタ番号はトラック内のセクタ・アドレスを示す。バースト・パターンはトラックに対する磁気ヘッドの相対位置情報を有している。
【0007】
ヘッド・スライダ上のヘッド素子部は、データ書き込みのためのライト素子とデータ読み出しのためのリード素子とを有している。磁気ディスク上においてリード素子のディスク半径位置とライト素子の半径位置が異なるヘッド素子部が知られている。ディスク半径方向におけるこれら素子の間の距離(中心間距離)を、本明細書においてリード・ライト・オフセットと呼ぶ。
【0008】
ヘッド・ポジショニングは、リード素子が読み出すサーボ・データを使用する。そのため、データの書き込みにおいてライト素子を所定位置に位置決めするためには、HDDは、リード・ライト・オフセットを知っている必要がある。リード・ライト・オフセットは半径位置に従って変化する。そのため、HDDのテスト製造において、半径位置に応じて変化するリード・ライト・オフセットを測定することが必要である(例えば、特許文献1を参照)。
【0009】
図11は、磁気ディスク上の半径位置により変化するリード・ライト・オフセットを模式的に示している。図11において、角度θは、アクチュエータの揺動中心とライト素子122とを結ぶ仮想線とトラック接線方向との間の角度である。角度θが0より小さい領域が内周領域であり、0より大きい領域が外周側領域である。角度φは、ライト素子122とリード素子121とを結ぶ仮想線とアクチュエータの揺動中心とライト素子122とを結ぶ仮想線との間の角度である。
【0010】
リード・ライト・オフセットは角度θを変数とする関数であり、z×sin(φ+θ)で表わすことができる。zとφは定数である。図11の構成例においては、ヘッド・スライダが外周側に移動するほど、リード・ライト・オフセットが大きくなる。リード・ライト・オフセットの半径位置による変化はこの例に限られない。
【0011】
図12は、従来のリード・ライト・オフセット測定の手法を説明するための図面である。従来の測定は、リード素子を所定の半径位置に位置決めして、ライト素子により測定用データ列を書き込む。典型的に、磁気ディスク一周に渡り、測定用データ列を書き込む。図12においては、トラックnに書き込まれた測定用データが示されている。また、リード素子により読み出し位置が黒円で示されている。テスト装置は、RWオフセットを推定し、リード素子を測定用データの近くに移動する。
【0012】
テスト装置は、リード素子のターゲット半径位置を一定に維持して、磁気ディスク一回転もしくは複数回転のフォロイングを行い、測定用データを読み出して振幅を測定する。テスト装置は、さらに、ターゲット半径位置を小さいステップで変化させ、同様に、フォロイングを行いながら測定用データ列の読み出し振幅を測定する。図の例においては、9の半径位置において、フォロイングと測定用データの読み出し振幅測定を行う。
【0013】
図13に示すように、読み出し振幅は、測定用データの中心において最も大きい値を示し、そこから離れるに従って小さくなる。テスト装置は、最も大きい振幅値を示すターゲット半径位置と、測定用データの書き込みにおけるターゲット半径位置とから、リード・ライト・オフセットを算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−210483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図12を参照して説明したように、従来のリード・ライト・オフセットの測定は、複数の異なる半径位置のそれぞれにおいて、一定ターゲット半径位置においてフォロイングを行いながら読み出し振幅測定を行う。従って、リード・ライト・オフセット測定のために、各ターゲット半径位置におけるフォロイング時間を合計した時間(図12の例においては、9の半径位置におけるフォロイング時間)以上の時間が必要とされる。
【0016】
上述のように、リード・ライト・オフセットは半径位置によって変化するため、磁気ディスク上の複数の半径位置において測定用データを書き込み、その測定用データの読み出し振幅測定によるリード・ライト・オフセット測定を行うことが必要である。磁気ディスクの記録密度の増加と共にデータ・トラック数も増加しており、それに従って、必要とされる測定ポイントも増加している。
【0017】
したがって、リード・ライト・オフセットの測定を、より効率的に行うことで、測定時間を短縮することができる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様は、リード素子とライト素子との間のリード・ライト・オフセットを測定する方法である。この方法は、前記ライト素子により測定用データを書き込む。前記測定用データを前記リード素子により読み出すために、ターゲット半径位置に前記リード素子を移動するシーク処理を行う。前記シーク処理が完了した後、前記リード素子によるフォロイング処理を開始する。前記リード素子のターゲット半径位置を変化させながら、前記測定用データ・トラック上を通過する前記リード素子の前記フォロイング処理を行う。前記フォロイング処理において前記測定用データの読み出しとサーボ・データの読み出しとを行う。前記測定用データ及び前記サーボ・データの前記読み出しにより得られたデータを使用して、前記リード・ライト・オフセットを決定する。これにより、リード・ライト・オフセットの測定を、より効率的に行うことで、測定時間を短縮することができる。
【0019】
好ましくは、前記フォロイング処理の前に、前記測定用データの中心位置のラフ・サーチ処理を行う。前記ラフ・サーチ処理は、以下の工程を実施する。前記フォロイング処理における前記ターゲット半径位置の変化幅よりも大きな変化幅において前記ターゲット半径位置を変化させながら、前記測定用データ上を通過する前記リード素子のフォロイング処理を行う。前記ラフ・サーチ処理における前記フォロイング処理において、前記測定用データの読み出しとサーボ・データの読み出しとを行う。前記ラフ・サーチ処理における前記測定用データ及び前記サーボ・データの前記読み出しにより得られたデータにより、前記測定用データの中心位置を決定する。前記ラフ・サーチ処理の測定結果にしたがって、前記ラフ・サーチ処理の後の前記フォロイングにおける前記ターゲット半径位置の変化範囲を決定する。これにより、リード・ライト・オフセットの測定を、効率的により正確に行うことができる。
【0020】
好ましくは、前記シーク処理におけるターゲット位置は、前記ラフ・サーチ処理において決定した中心位置である。これにより、より正確にリード・ライト・オフセットの測定を行うことができる。
【0021】
好ましくは、前記フォロイング処理開始におけるターゲット半径位置と、前記フォロイング処理終了におけるターゲット半径位置とは一致している。これにより、スムーズにラフ・サーチから次のファイン・サーチに移行することができる。
【0022】
好ましくは、前記フォロイング処理を開始する前に、エラー・ハンドリング機能をオフする。これにより、実際の位置信号を適切に取得することができる。
【0023】
好ましくは、前記フォロイング処理において、前記ターゲット半径位置は、ディスク半径方向において振動している。これにより、より正確な測定を行うことができる。
【0024】
好ましい構成において、前記フォロイング処理開始におけるターゲット半径位置と前記フォロイング処理終了におけるターゲット半径位置とは一致しており、前記フォロイングは前記ディスクの一回転で終了する。これにより、効率的かつ正確な測定を行うことができる。
【0025】
本発明の他の態様は、リード素子とライト素子との間のリード・ライト・オフセットを測定するディスク・ドライブである。このディスク・ドライブは、ディスクと、測定用データを前記ディスクに書き込むライト素子と、前記測定用データとサーボ・データとを読み出すリード素子と、シーク処理において、前記リード素子により前記測定用データを読み出すためにターゲット半径位置に前記リード素子を移動する移動機構と、コントローラと、を有する。前記コントローラは、前記シーク処理が完了した後、前記リード素子のターゲット半径位置を変化させながら前記測定用データ上を通過する前記リード素子の前記フォロイング処理を行い、そのフォロイング処理における前記測定用データとサーボ・データとの前記リード素子による読み出しにより得られたデータを使用して、前記リード・ライト・オフセットを決定する。これにより、リード・ライト・オフセットの測定を、より効率的に行うことで、測定時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、リード・ライト・オフセットの測定時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態にかかるHDDの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態にかかるリード・ライト・オフセット測定の原理について説明する図である。
【図3】本実施形態において、測定用データとリード素子の軌跡とを模式的に示す図である。
【図4】本実施形態において、リード素子軌跡に対応するバリアブル・ゲイン・アンプのゲイン値(VGAゲイン値)の変化を示す図である。
【図5】本実施形態のリード・ライト・オフセット測定用データの読み出し処理におけるタイミング制御について説明するタイミング・チャートである。
【図6】本実施形態のリード・ライト・オフセット測定用データの読み出し処理におけるタイミング制御について説明するブロック図である。
【図7】本実施形態において、VGA値と位置信号値との間の関係を示す測定データ及びその測定データにフィッティングした近似関数とを模式的に示す図である。
【図8】本実施形態に係る二段階のVGA測定方法について説明するフローチャートである。
【図9】本実施形態に二段階のVGA測定のより具体的な例について説明するフローチャートである。
【図10】本実施形態に二段階のVGA測定のより具体的な例において、最初のVGA測定により得られた測定結果と、その測定結果から次の測定におけるターゲット半径位置範囲(サーチ範囲)を決定する方法を説明する図である。
【図11】従来の技術において、磁気ディスク上の半径位置により変化するリード・ライト・オフセットを模式的に示している。
【図12】従来のリード・ライト・オフセット測定の手法を説明する図面である。
【図13】従来のリード・ライト・オフセット測定において、測定用データの読み出し位置と読み出し信号振幅との関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明を適用した実施の形態を説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。以下においては、ディスク・ドライブの一例であるハードディスク・ドライブ(HDD)において、本発明の実施形態を説明する。
【0029】
本実施形態は、リード素子とライト素子との間の距離である、リード・ライト・オフセットの測定に特徴を有している。ヘッド・スライダ上に形成されているヘッド素子部は、リード素子とライト素子とを有している。リード・ライト・オフセットは、リード素子とライト素子との間のディスク半径方向における距離である。
【0030】
本形態のリード・ライト・オフセット測定は、リード・ライト・オフセットが大きいヘッド素子部を有するHDDに特に有用である。セルフ・サーボ・ライト(SSW)処理によりサーボ・データを書き込むHDDは、大きなリード・ライト・オフセットのヘッド・スライダを有しており、このようなHDDに本実施形態のリード・ライト・オフセット測定は特に有用である。
【0031】
リード・ライト・オフセットは、ディスク半径位置に従って変化する。図11を参照して説明したように、これは、アクチュエータと揺動中心と素子中心とを結ぶ仮想線とトラック接線方向との間の角度(スキュー角)の変化による。SSW処理を行うHDDにおいて、一般に、リード素子は、ディスク上において、常にライト素子の外周側もしくは内周側の一方に位置する。本形態のリード・ライト・オフセット測定は、特定のディスク半径位置においてリード・ライト・オフセットが0となるHDDにも適用することができる。また、サーボ・トラック・ライタによってサーボ・データが書き込まれるHDDにも適用することができる。
【0032】
本形態の手法は、例えば、SSWの初期処理におけるリード・ライト・オフセット測定及びサーボ・ライト後のテスト工程におけるリード・ライト・オフセット測定に適用することができる。本形態の手法は、リード・ライト・オフセット測定の時間を短縮する効果を有し、テスト工程における各ヘッド・スライダのリード・ライト・オフセット測定に特に有用である。製品としてのHDDがリード・ライト・オフセット測定機能を有する場合、その測定に本形態の手法を適用することもできる。
【0033】
以下においては、本発明の好ましい態様として、HDDのテスト工程におけるリード・ライト・オフセット測定について詳細を説明する。好ましい構成において、HDDの制御回路が、ホストからのコマンドに応答して、リード・ライト・オフセット測定を実行する。まず、HDDの構成について説明の全体構成について説明する。
【0034】
図1に示すように、HDD1は、エンクロージャ10内に、データを記憶するディスクである磁気ディスク11を有している。スピンドル・モータ(SPM)14は、磁気ディスク11を所定の角速度で回転する。磁気ディスク11の各記録面に対応して、磁気ディスク11にアクセスするヘッド・スライダ12が設けられている。
【0035】
各ヘッド・スライダ12は、磁気ディスク上を飛行するスライダと、スライダに固定され磁気信号と電気信号との間の変換を行うヘッド素子部とを備えている。各ヘッド・スライダ12はアクチュエータ16の先端部に固定されている。アクチュエータ16はボイス・コイル・モータ(VCM)15に連結され、揺動軸を中心に揺動することによって、ヘッド・スライダ12を回転する磁気ディスク11上においてその半径方向に移動する。
【0036】
磁気ディスク11の外周端近くに、ランプ17がエンクロ−ジャ10内に固定されている。HDD1の電源がOFFのときやアイドル時に、アクチュエータ16は磁気ディスク11の外側においてランプ17上で停止している。本発明は、アクチュエータ16が磁気ディスク11上の所定領域で着地、停止するCSS(コンタクト・スタート・アンド・ストップ)方式のHDDに適用することができる。
【0037】
エンクロージャ10の外側に固定された回路基板20上には、回路素子が実装されている。モータ・ドライバ・ユニット22は、HDC/MPU23からの制御データに従って、SPM14及びVCM15を駆動する。RAM24は、リード・データ及びライト・データを一時的に格納するバッファとして機能する。エンクロージャ10内のアーム電子回路(AE)13は、複数のヘッド・スライダ12の中から磁気ディスク11へのアクセスを行うヘッド・スライダ12を選択し、その再生信号を増幅してリード・ライト・チャネル(RWチャネル)21に送る。また、RWチャネル21からの記録信号を選択したヘッド・スライダ12に送る。なお、本発明は一つのヘッド・スライダ12のみを有するHDDに適用することができる。
【0038】
RWチャネル21は、リード処理において、AE13から供給されたリード信号を、バリアブル・ゲイン・アンプ(VGA)によって一定の振幅となるように増幅し、取得したリード信号からデータを抽出し、デコード処理を行う。読み出されるデータは、ユーザ・データとサーボ・データとを含む。デコード処理されたリード・ユーザ・データ及びサーボ・データは、HDC/MPU23に転送される。また、RWチャネル21は、ライト処理において、HDC/MPU23から転送されたライト・データをコード変調し、更にコード変調されたライト・データをライト信号に変換してAE13に供給する。
【0039】
コントローラであるHDC/MPU23は、リード/ライト処理制御、コマンド実行順序の管理、サーボ・データを使用したヘッド・スライダ12(アクチュエータ16)のポジショニング制御(サーボ制御)、ホスト51との間のインターフェース制御、ディフェクト管理、エラーが発生した場合のエラー対応処理など、データ処理に関する必要な処理及びHDD1の全体制御を実行する。特に、本形態のHDC/MPU23は、各ヘッド・スライダ12のリード・ライト・オフセット測定を行う。HDC/MPU23が行なう処理の全てもしくは一部を外部装置であるテスト装置が行ってもよい。この構成においても、テスト装置を含めて、HDDを構成している。
【0040】
本形態のリード・ライト・オフセット測定の原理について説明する。図2に示すように、HDC/MPU23は、ヘッド・スライダ12上のヘッド素子部120内のリード素子121を、所定のターゲット半径位置に位置決めし、ライト素子122により、測定用データを書き込む。リード素子121は一定のターゲット半径位置に位置決めされる。リード素子121がターゲット半径位置をフォロイングしている間、ライト素子122が測定用データをデータ領域に書き込む。好ましい構成において、ライト素子122は、1データ・トラック全てに測定用データを書き込む。つまり、全てのサーボ・セクタの間に測定用データが書き込まれる。
【0041】
測定用データを書き込むと、HDC/MPU23はモータ・ドライバ・ユニット22を介してVCM15を制御し、リード素子121を測定用データのトラックの近くの特定のディスク半径位置(ターゲット半径位置)に移動する(シーク)。シークが完了後、HDC/MPU23は、ターゲット半径位置を変化させながら、フォロイングを行なう。このフォロイングの間、HDC/MPU23は、リード素子121により測定用データを読み出して振幅を測定し、また、サーボ・セクタを読み出して位置誤差信号を測定する。位置誤差信号は、各サーボ・セクタ上でのリード素子121の半径位置を示す位置信号である。
【0042】
HDC/MPU23は、測定用データの読み出し振幅と位置誤差信号の測定データから、それらの間の関係を決定し、それにより、測定用データ(ライト素子122)の中心位置を示すディスク半径位置を決定する。HDC/MPU23は、測定用データを書き込むときのディスク半径位置を保持している。従って、HDC/MPU23は、それらのディスク半径位置の差分により、測定を行ったディスク半径位置におけるリード・ライト・オフセットを算出することができる。
【0043】
本形態のリード・ライト・オフセット測定において、リード素子121の半径位置は、フォロイングにおいて、測定用データ上で変化する。HDC/MPU23は、リード素子121を移動しながら測定用データの読み出し振幅と位置誤差信号とを測定することで、少ない時間で異なる半径位置における測定用データの読み出し振幅の値を多く取得することができる。これにより、リード・ライト・オフセットの時間を短縮する。
【0044】
図3は、測定用データとリード素子121の軌跡とを模式的に示す図である。図3において、1トラック全体の測定用データ(DATA)とサーボ・セクタ(SERVO)が示されている。図3においては、上側が外周側で下側が内周側とする。測定用データは、トラックnと指示されている。また、リード素子121は、図の左から右に移動する(ディスク回転方向が右から左)ものとする。図3は模式図であって、実際のHDDにおけるサーボ・セクタ数は数百である。なお、データ・トラックの中心位置とサーボ・トラックの中心とが一致しているとは限らない。測定用データは、ユーザ・データと同一あるいは異なるフォーマットを有する。測定用データによりクリアランス測定ができれば、そのフォーマットを問わない。
【0045】
図3において、円がリード素子121の位置を示している。図3の例においては、リード素子121は、測定用データの中心から読み出しを開始し、外周側に移動した後、内周側に移動し、さらに外周側に移動して測定用データの中心に戻る。図4は、図3のリード素子軌跡に対応するVGAのゲイン値の変化を示している。X軸はサーボ・セクタ(円周方向における位置)である。VGAゲインは、リード素子121による読み出し信号の振幅の逆数に相当する。従って、それは、読み出し信号振幅の増加と共に減少し、VGAゲインが最も小さい値を示す半径位置が測定用データ(ライト素子122)の中心半径位置である。
【0046】
VGAは、RWチャネル12内に組み込まれており、HDC/MPU23は、RWチャネル12からVGAゲイン値を取得する。AE13あるいはRWチャネル21が読み出し信号振幅を直接に測定することができる場合、HDC/MPU23は、それらの振幅値を取得してもよい。また、HDC/MPU23は、測定用データ内の位置を表す他のデータ(値)を使用してもよい。
【0047】
図3に示すように、測定用データの中心位置を正確に測定するためには、リード素子121が測定用データの内周端から外周端までをスイープしていることが好ましい。つまり。リード素子121の中心位置が、フォロイングにおいて、測定用データの外周端及び内周端に達することが好ましい。従って、フォロイングにおいて変化するターゲット半径位置の範囲が、これらの位置を含むことが好ましい。以下において、ターゲット半径位置が変化する範囲をターゲット範囲と呼ぶ。
【0048】
このように、HDC/MPU23は、測定用データを、リード素子121によりオフトラック・スイープする。図3の好ましい例において、リード素子121(のターゲット半径位置)は、ターゲット範囲内で往復する。具体的には、HDC/MPU23は、ターゲット範囲の中心からフォロイングを開始し、ターゲット半径位置をディスク半径方向において振って後、初期位置である中心位置にターゲット半径位置を戻す。リード素子121は、ターゲット半径位置に追随するように移動するが、実際の半径位置とターゲット半径位置とは一般に一致しない。
【0049】
測定用データを外周端から内周端まで読み出すためには、リード素子121は内周あるいは外周への一方の方向においてのみ移動すればよい。つまり、HDC/MPU23は、ターゲット半径位置を、ターゲット半径位置範囲の端から端まで一方向(内周側から外周側もしくは外周側から内周側)においてのみ変化させればよい。測定値の信頼性が十分である場合には、この軌跡が好ましい。これによって、測定時間を短縮する、あるいは、同一測定時間におけるターゲット半径位置の変化ステップ(連続しているターゲット半径位置間の差分)を小さくすることができる。
【0050】
リード素子121のターゲット半径位置(リード素子121)をターゲット範囲(リード素子の移動範囲)内において内外に振る(振動させる)ことで、同一ターゲット半径位置について複数のサンプル値を得ることができる。これにより、測定結果の信頼性を高めることができる。測定時間の短縮のため、ターゲット半径位置(リード素子位置)の変化は1サイクルであることが好ましい。図3の例において、ターゲット半径位置(リード素子位置)の変化は1サイクル終了する。
【0051】
リード素子121のターゲット半径位置の変化が大きいと、リード素子121の実際の位置がターゲット半径位置に追従できなくなる。従って、ターゲット半径位置のステップは、小さい値であることが重要である。好ましい構成において、ステップ値は、HDD1の機能として変化可能な値の最小値もしくは最小値の次に小さい値以下である。例えば、1PES単位でターゲット半径位置を指定することができる場合、HDC/MPU23が指定するステップは、1PES以下もしくは2PES以下である。
【0052】
ターゲット半径位置の変化ステップ量を小さくするためには、測定の開始から終了までに読み出す測定点(ディスク回転数)を大きくする。例えば、ディスク1回転半の間でターゲット半径位置を1サイクル分変化させると、ディスク1回転で1サイクルのディスク半径位置変化を行なう方法よりも、ターゲット半径位置(リード素子位置)の変化ステップ量を小さくすることができる。
【0053】
測定の信頼性と測定時間短縮、そして、フォロイングにおけるヘッド・スライダ12のポジショニングの点から、図3の例に示すように、HDC/MPU23は、ターゲット半径位置を、磁気ディスク11の一回転において、1サイクル分振動変化させることが好ましい。制御のシンプリシティの点からは、HDC/MPU23は、ターゲット範囲の中心から開始してターゲット半径位置を変化させる。内外に振れた後に、ターゲット半径位置は初期位置と同一の値に戻る。
【0054】
好ましい構成において、HDC/MPU23は、サーボ・セクタ毎にターゲット半径位置を指定する機能を有する。これにより、正確なリード素子121の位置制御を行うことができる。測定用データの読み出しにおいて、必要な位置制御を行うことができるのであれば、HDC/MPU23は、複数セクタに一回の頻度でのみターゲット半径位置を指定できる構成でもよい。ターゲット半径位置を指定不能なセクタにおいては、例えば、直前の値が使用される。また、各サーボ・セクタ間において測定データの読み出し振幅を測定することが好ましいが、複数セクタに一回の頻度でのみ測定を行う構成でもよい。
【0055】
リード素子121を振りながらのフォロイングにおいて、HDC/MPU23は、サーボ読み出しエラーをハンドリングする機能をオフすることが好ましい。リード・ライト・オフセットの測定においては、読み出し振幅と位置信号との双方の実際のデータを取得することが必要である。サーボ・エラー・ハンドリング機能は、規定の条件からはずれる位置信号を無視する。従って、HDC/MPU23は、シーク完了後にフォロイングを開始する前、サーボ・エラー・ハンドリング機能をオフする。
【0056】
図5のタイミング・チャート及び図6のブロック図を参照して、リード・ライト・オフセット測定用データの読み出し処理におけるタイミング制御について説明する。図5は、そのタイミング・チャートの一例であり、図6は測定用データの読み出し処理に関連する構成要素及びそれらの間の信号及びデータを模式的に示すブロック図である。
【0057】
サーボ・ゲート信号は、サーボ・セクタの読み出しタイミングを制御する信号である。サーボ・ゲート信号がHIGHの間(サーボ・ゲートが開いている間)、RWチャネル21とHDC/MPU23とは、リード素子121からのサーボ・データ読み出し信号の処理を行う。リード・ゲート信号は、測定用データの読み出しタイミングを制御する信号である。リード・ゲート信号がHIGHの間(リード・ゲートが開いている間)、RWチャネル21とHDC/MPU23とは、リード素子121からの測定用データ読み出し信号を処理する。
【0058】
HDC/MPU23は、サーボ・ゲート信号を基準に、リード・ゲート信号を制御する。例えば、HDC/MPU23は、直前のサーボ・セクタのサーボ・ゲート信号の立ち下がりから、規定時間が経過した後にリード・ゲート信号をHIGHにセットする。また、規定時間経過後にリード・ゲート信号をLOWにセットする。HDC/MPU23は、直前のサーボ・ゲート信号の立ち下がりから、規定時間が経過した後にサーボ・ゲート信号をHIGHにセットする。
【0059】
HDC/MPU23は、シーク中に測定用データを読み出すことはできない。HDC/MPU23は、初期ターゲット半径位置へのシークが完了した後、フォロイング制御下においてリード・ゲート信号を制御して測定用データの読み出しを行う。具体的には、HDC/MPU23は、初期ターゲット位置へのシークが完了すると、フォロイングを開始する。
【0060】
シーク完了から既定時間(既定サーボ・セクタ数)経過した後、HDC/MPU23は、リード・ゲート信号をHIGHにセットして、リード・ライト・オフセット測定用データの読み出しを開始する。HDC/MPU23は、シーク完了後に、既定のサーボ・セクタ番号(例えば0番)を有するサーボ・セクタから測定用データの読み出しを開始してもよい。
【0061】
HDC/MPU23は、測定用データの読み出し処理を開始すると、各サーボ・セクタの位置信号とサーボ・セクタ間の測定用データの読み出し振幅値(本例においてVGA値)をRWチャネル21から取得し、それをRAM24のメモリ領域に格納する。HDC/MPU23は、サーボ・セクタ間において一つのVGA値を取得すればよい。HDC/MPU23は、サーボ・セクタ毎にターゲット半径位置を指定する。
【0062】
本例において、ターゲット半径位置は、磁気ディスク1回転において1サイクルの変化を示す。従って、ターゲット半径位置の変化ステップ量は、ターゲット変化範囲(幅)を1トラックのサーボ・セクタ数で割った値である。端数は、例えば、切り捨てる。図5の例においては、サーボ・セクタ毎にターゲット半径位置が変化しており、変化量も一定である。実際の処理においては、各サーボ・セクタにおけるターゲット半径位置変化量は、幅とセクタ数によって決まるため、一定とは限らず、サーボ・セクタによっては変化量が零であることもありうる。
【0063】
上記測定により、HDC/MPU23は、ディスク1回転における全てのサーボ・セクタの位置信号の値と、全てのセクタ(サーボ・セクタ間の領域を意味する)の測定用データのVGA値(読み出し振幅値に相当)を取得する。HDC/MPU23は、取得した値に対して近似式を適用し、測定用データの中心位置を算出する。図7は、VGA値と位置信号値との間の関係を示す測定データ及びその測定データにフィッティングした近似関数とを模式的に示す図である。VGA値と位置信号値との間の関係は、二次関数で近似することができる。
【0064】
HDC/MPU23は、フィッティングした近似関数の最小値を示す位置信号値を算出し、その位置信号値が示すディスク半径位置が測定用データ(ライト素子122)の中心位置であると決定する。VGA最小値(振幅最大値)の半径位置の算出には、近似関数を使用することが好ましいが、他の手法によりVGA最小値の半径位置を決定してもよい。なお、近似関数のフィッティングにおいては、不要データの削除や平均値の算出など、広く知られた統計手法を使用することが好ましい。
【0065】
リード・ライト・オフセット測定におけるVGA測定をより正確なものとするためには、VGA最小値を示す半径位置の近傍において、狭い範囲でリード素子121の位置を変化させることが好ましい。しかし、リード素子位置の振り幅を小さくすることで、ターゲット位置範囲内にVGA最小値を示す半径位置が含まれないことを避けることが必要である。好ましい構成において、HDC/MPU23は、VGA最小位置(ライト素子中心位置)の多段階探索を行なう。
【0066】
HDC/MPU23は、広いサーチ範囲(ターゲット半径位置範囲)での測定を行い、その測定結果からVGA最小値の半径位置を決定(推定)する。次に、HDC/MPU23は、上記推定半径位置を含むより狭いサーチ範囲においてVGA測定を行い、その測定結果からVGA最小値の半径位置を決定する。このように、ラフ・サーチとファイン・サーチとを行なうことで、短い測定時間においてより正確なサーチを行うことができる。また、サーチ範囲を狭くしながらVGA測定を繰り返し行うことで、より正確にVGA最小半径位置を特定することができる。
【0067】
図8のフローチャートを参照して、二段階のVGA測定方法について説明する。HDC/MPU23は、最初の測定のターゲット半径位置にリード素子121を移動する(シーク)(S11)。このターゲット半径位置は、測定用データの書き込みにおけるリード素子位置と前もって設定されている近似式とから算出することができる。HDC/MPU23は、ターゲット半径位置においてフォロイングを開始する。
【0068】
HDC/MPU23は、ターゲット半径位置を変化させながらのフォロイングを行ないながら、VGAと位置信号(ディスク半径位置)の測定を行う(S12)。このときのサーチ範囲(ターゲット半径位置の触れ幅)は広いサーチ範囲であり、好ましくは、測定用データの幅よりも大きい。
【0069】
HDC/MPU23は、得られた測定結果から、VGA最小値を示す位置信号値(ディスク半径位置)を決定する(S13)。好ましくは、HDC/MPU23は、VGA最小値及びそれに対応する位置信号位置の決定には、近似関数を利用する。また、この決定に使用するデータは、測定データからノイズと判定されたデータを除いたデータである。
【0070】
HDC/MPU23は、次の測定のためのサーチ範囲を決定する(S14)。HDC/MPU23は、好ましくは、サーチ範囲の中心をラフ・サーチの測定結果から決定する。同一の中心位置を使用するよりも、より適切なファイン・サーチにおけるVGA測定を行うことができる。好ましくは、その中心位置はVGA最小値を示す位置信号値であり、以下においてはこの構成を説明する。サーチ範囲の幅は既定の値(予め設定されている値)、あるいは、決定したVGA最小値あるいはその位置信号値からそれを算出してもよい。サーチ範囲の幅(ターゲット半径位置の変化幅)は、前回のVGA測定におけるサーチ範囲の幅よりも小さい値である。
【0071】
HDC/MPU23は、前回のVGA測定で決定したVGA最小値のディスク半径位置をターゲット位置として、リード素子121(ヘッド・スライダ12)を移動する(シーク)(S15)。シーク完了後、HDC/MPU23は、ターゲット半径位置を変化させながらのフォロイングを行ないながら、VGAと位置信号(ディスク半径位置)の測定を行う(S16)。上述のように、このときのリード素子移動範囲は、前回の測定よりも狭い。HDC/MPU23は、得られた測定結果から、VGA最小値を示す位置信号値(ディスク半径位置)を決定する(S17)。HDC/MPU23は、この位置信号ちと測定用データ書き込みにおけるリード素子位置とから、リード・ライト・オフセットを算出する(S18)。
【0072】
このように、サーチ範囲を小さくしながら複数回のVGA測定を行う場合、一回のVGA測定において、図3を参照して説明したように、ターゲット半径位置は測定後に初期位置に戻ることが好ましい。これにより、次のVGA測定への移行をスムーズに行なうことができる。設計によっては、異なるVGA測定におけるサーチ範囲は常に同一でもよい。しかし、上述のように、前回の測定により得られたVGA最小値を示す半径位置からサーチ範囲を決定することで、より正確なVGA測定を行うことができる。これは、多くのVGA測定(2回を越える測定)を行う場合に、特に有用である。
【0073】
次に、二段階のVGA測定のより具体的な例について説明する。図9のフローチャートは、この処理の流れを示し、図10は最初のVGA測定により得られた測定結果と、その測定結果から次の測定におけるターゲット半径位置範囲(サーチ範囲)を決定する方法を説明する図である。図9に示すように、HDC/MPU23は、最初の測定のためのターゲット半径位置にリード素子121を移動する(シーク)(S31)。シーク・ターゲットは、測定用データの中心位置である。
【0074】
HDC/MPU23は、リード素子121をスイングさせながら、VGAとリード素子半径位置とを測定する(S32)。本例において、サーボ・トラック間の距離は256PESであり、振り幅は±120PESである。HDC/MPU23は、4PES毎にVGA測定値を複数グループにわけ、グループ内のσが10を超えるグループを削除する(S33)。HDC/MPU23は、不要データを除去した測定データから、VGA最小値を探索する(S34)。
【0075】
HDC/MPU23は、上記の4PES毎にグループ化したデータにおいて、各グル−プにおけるVGAとPESの平均値をとる。さらに、σが10以下の各グループにおける平均VGAの最大値と最小値との差を100%としたときの最小値+60%のデータを集める(S35)。図10は、ラフ・サーチによる測定データと、60%範囲とを示している。HDC/MPU23は、集めたデータから次のVGA測定におけるターゲット半径位置の振り幅を算出する(S36)。HDC/MPU23は、上記集めたデータに対して二次関数のフィッティング(Xが半径位置、YがVGA)を行い、VGAのプロファイルを得る(S37)。HDC/MPU23は、フィッティングした二次関数の微分を計算して、VGA最小値を示す位置信号値を算出する(S38)。以上により、最初のラフ・サーチが終了する。
【0076】
次に、HDC/MPU23は、ファイン・サーチを開始する。HDC/MPU23は、工程S38で算出したVGA最小値の半径位置にリード素子121を移動する(シーク)(S39)。HDC/MPU23は、リード素子121をスイングさせながら、VGAとリード素子半径位置とを測定する(S40)。振り幅は、上記工程S36で算出した値である。HDC/MPU23は、4PES毎にVGA測定値を複数グループにわけ、グループ内のσが10を超えるグループを削除する(S41)。HDC/MPU23は、不要データを除去した測定データから、VGA最小値を探索する(S42)。
【0077】
HDC/MPU23は、σが10以下の各グループにおける平均VGAの最大値と最小値との差を100%としたときの最小値+60%のデータを集める(S43)。HDC/MPU23は、上記集めたデータに対して二次関数のフィッティング(Xが半径位置、YがVGA)を行い、VGAのプロファイルを得る(S44)。HDC/MPU23は、フィッティングした二次関数の微分を計算して、VGA最小値を示す位置信号値を算出する(S45)。HDC/MPU23は、算出した位置信号と測定用データ書き込みにおけるリード素子121の半径位置とから、リード・ライト・オフセット値を算出する。2回目のVGA測定は、1回目の測定における工程S36を除く処理と同様である。3回以上のVGA測定を行う場合には、2回目の測定においても次の測定における振り幅の算出を行なう。最後のVGA測定においてのみ、この工程は省略される。
【0078】
以上、本発明を好ましい実施形態を例として説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。本発明はHDDに限らず、他のタイプのディスク・ドライブに適用することができる。測定用データの中心位置を決定することができるのであれば、測定振幅と異なる値を使用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 ハードディスク・ドライブ、10 エンクロージャ、11 磁気ディスク
12 ヘッド・スライダ、14 スピンドル・モータ、15 ボイス・コイル・モータ
16 アクチュエータ、17 ランプ、20 回路基板
21 リード・ライト・チャネル、22 モータ・ドライバ・ユニット
120 ヘッド素子部、121 リード素子、122 ライト素子
【技術分野】
【0001】
本発明はディスク・ドライブ及びそのリード・ライト・オフセット測定方法に関し、特に、リード・ライト・オフセット測定の効率化に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク・ドライブとして、光ディスクや光磁気ディスク、あるいはフレキシブル磁気ディスクなどの様々な態様のディスクを使用する装置が知られている。その中で、ハードディスク・ドライブ(HDD)は、コンピュータの記憶装置として広く普及し、さらに、動画像記録再生装置やカーナビゲーション・システムなど多くの装置で利用されている。
【0003】
HDDで使用される磁気ディスクは、同心円状に形成された複数のデータ・トラックと複数のサーボ・トラックとを有している。各サーボ・トラックはアドレス情報を有する複数のサーボ・セクタから構成される。また、各データ・トラックには、ユーザ・データを含む複数のデータ・セクタから構成されている。円周方向に離間するサーボ・セクタの間に、データ・セクタが記録されている。
【0004】
HDDは揺動するアクチュエータを有し、そのアクチュエータにヘッド・スライダが支持されている。HDDは、ヘッド・スライダによってサーボ・セクタのアドレス情報を読み出し、そのアドレス情報に従ってアクチュエータを制御する(サーボ制御)。これにより、HDDは、ヘッド・スライダを所望の半径位置(ターゲット・データ・トラック)に移動し(シーク)、さらに、その位置に位置決めする(フォロイング)することができる。ターゲット・データ・トラックに位置決めされたヘッド・スライダは、そのトラック内のターゲット・データ・セクタへのデータ書き込みあるいはデータ読み出しを行う。
【0005】
データ読み出し処理において、ヘッド・スライダが磁気ディスクから読み出した信号は、信号処理回路によって波形整形や復号処理などの所定の信号処理が施され、ホストに送信される。ホストからの転送データは、信号処理回路によって同様に所定処理された後に、磁気ディスクにヘッド・スライダにより書き込まれる。
【0006】
上述のように、ヘッド・スライダの位置決め制御は、磁気ディスク上のサーボ・データにより行われる。サーボ・セクタは、シリンダID、セクタ番号、バースト・パターンなどから構成されている。シリンダIDはトラックのアドレス、セクタ番号はトラック内のセクタ・アドレスを示す。バースト・パターンはトラックに対する磁気ヘッドの相対位置情報を有している。
【0007】
ヘッド・スライダ上のヘッド素子部は、データ書き込みのためのライト素子とデータ読み出しのためのリード素子とを有している。磁気ディスク上においてリード素子のディスク半径位置とライト素子の半径位置が異なるヘッド素子部が知られている。ディスク半径方向におけるこれら素子の間の距離(中心間距離)を、本明細書においてリード・ライト・オフセットと呼ぶ。
【0008】
ヘッド・ポジショニングは、リード素子が読み出すサーボ・データを使用する。そのため、データの書き込みにおいてライト素子を所定位置に位置決めするためには、HDDは、リード・ライト・オフセットを知っている必要がある。リード・ライト・オフセットは半径位置に従って変化する。そのため、HDDのテスト製造において、半径位置に応じて変化するリード・ライト・オフセットを測定することが必要である(例えば、特許文献1を参照)。
【0009】
図11は、磁気ディスク上の半径位置により変化するリード・ライト・オフセットを模式的に示している。図11において、角度θは、アクチュエータの揺動中心とライト素子122とを結ぶ仮想線とトラック接線方向との間の角度である。角度θが0より小さい領域が内周領域であり、0より大きい領域が外周側領域である。角度φは、ライト素子122とリード素子121とを結ぶ仮想線とアクチュエータの揺動中心とライト素子122とを結ぶ仮想線との間の角度である。
【0010】
リード・ライト・オフセットは角度θを変数とする関数であり、z×sin(φ+θ)で表わすことができる。zとφは定数である。図11の構成例においては、ヘッド・スライダが外周側に移動するほど、リード・ライト・オフセットが大きくなる。リード・ライト・オフセットの半径位置による変化はこの例に限られない。
【0011】
図12は、従来のリード・ライト・オフセット測定の手法を説明するための図面である。従来の測定は、リード素子を所定の半径位置に位置決めして、ライト素子により測定用データ列を書き込む。典型的に、磁気ディスク一周に渡り、測定用データ列を書き込む。図12においては、トラックnに書き込まれた測定用データが示されている。また、リード素子により読み出し位置が黒円で示されている。テスト装置は、RWオフセットを推定し、リード素子を測定用データの近くに移動する。
【0012】
テスト装置は、リード素子のターゲット半径位置を一定に維持して、磁気ディスク一回転もしくは複数回転のフォロイングを行い、測定用データを読み出して振幅を測定する。テスト装置は、さらに、ターゲット半径位置を小さいステップで変化させ、同様に、フォロイングを行いながら測定用データ列の読み出し振幅を測定する。図の例においては、9の半径位置において、フォロイングと測定用データの読み出し振幅測定を行う。
【0013】
図13に示すように、読み出し振幅は、測定用データの中心において最も大きい値を示し、そこから離れるに従って小さくなる。テスト装置は、最も大きい振幅値を示すターゲット半径位置と、測定用データの書き込みにおけるターゲット半径位置とから、リード・ライト・オフセットを算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−210483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図12を参照して説明したように、従来のリード・ライト・オフセットの測定は、複数の異なる半径位置のそれぞれにおいて、一定ターゲット半径位置においてフォロイングを行いながら読み出し振幅測定を行う。従って、リード・ライト・オフセット測定のために、各ターゲット半径位置におけるフォロイング時間を合計した時間(図12の例においては、9の半径位置におけるフォロイング時間)以上の時間が必要とされる。
【0016】
上述のように、リード・ライト・オフセットは半径位置によって変化するため、磁気ディスク上の複数の半径位置において測定用データを書き込み、その測定用データの読み出し振幅測定によるリード・ライト・オフセット測定を行うことが必要である。磁気ディスクの記録密度の増加と共にデータ・トラック数も増加しており、それに従って、必要とされる測定ポイントも増加している。
【0017】
したがって、リード・ライト・オフセットの測定を、より効率的に行うことで、測定時間を短縮することができる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様は、リード素子とライト素子との間のリード・ライト・オフセットを測定する方法である。この方法は、前記ライト素子により測定用データを書き込む。前記測定用データを前記リード素子により読み出すために、ターゲット半径位置に前記リード素子を移動するシーク処理を行う。前記シーク処理が完了した後、前記リード素子によるフォロイング処理を開始する。前記リード素子のターゲット半径位置を変化させながら、前記測定用データ・トラック上を通過する前記リード素子の前記フォロイング処理を行う。前記フォロイング処理において前記測定用データの読み出しとサーボ・データの読み出しとを行う。前記測定用データ及び前記サーボ・データの前記読み出しにより得られたデータを使用して、前記リード・ライト・オフセットを決定する。これにより、リード・ライト・オフセットの測定を、より効率的に行うことで、測定時間を短縮することができる。
【0019】
好ましくは、前記フォロイング処理の前に、前記測定用データの中心位置のラフ・サーチ処理を行う。前記ラフ・サーチ処理は、以下の工程を実施する。前記フォロイング処理における前記ターゲット半径位置の変化幅よりも大きな変化幅において前記ターゲット半径位置を変化させながら、前記測定用データ上を通過する前記リード素子のフォロイング処理を行う。前記ラフ・サーチ処理における前記フォロイング処理において、前記測定用データの読み出しとサーボ・データの読み出しとを行う。前記ラフ・サーチ処理における前記測定用データ及び前記サーボ・データの前記読み出しにより得られたデータにより、前記測定用データの中心位置を決定する。前記ラフ・サーチ処理の測定結果にしたがって、前記ラフ・サーチ処理の後の前記フォロイングにおける前記ターゲット半径位置の変化範囲を決定する。これにより、リード・ライト・オフセットの測定を、効率的により正確に行うことができる。
【0020】
好ましくは、前記シーク処理におけるターゲット位置は、前記ラフ・サーチ処理において決定した中心位置である。これにより、より正確にリード・ライト・オフセットの測定を行うことができる。
【0021】
好ましくは、前記フォロイング処理開始におけるターゲット半径位置と、前記フォロイング処理終了におけるターゲット半径位置とは一致している。これにより、スムーズにラフ・サーチから次のファイン・サーチに移行することができる。
【0022】
好ましくは、前記フォロイング処理を開始する前に、エラー・ハンドリング機能をオフする。これにより、実際の位置信号を適切に取得することができる。
【0023】
好ましくは、前記フォロイング処理において、前記ターゲット半径位置は、ディスク半径方向において振動している。これにより、より正確な測定を行うことができる。
【0024】
好ましい構成において、前記フォロイング処理開始におけるターゲット半径位置と前記フォロイング処理終了におけるターゲット半径位置とは一致しており、前記フォロイングは前記ディスクの一回転で終了する。これにより、効率的かつ正確な測定を行うことができる。
【0025】
本発明の他の態様は、リード素子とライト素子との間のリード・ライト・オフセットを測定するディスク・ドライブである。このディスク・ドライブは、ディスクと、測定用データを前記ディスクに書き込むライト素子と、前記測定用データとサーボ・データとを読み出すリード素子と、シーク処理において、前記リード素子により前記測定用データを読み出すためにターゲット半径位置に前記リード素子を移動する移動機構と、コントローラと、を有する。前記コントローラは、前記シーク処理が完了した後、前記リード素子のターゲット半径位置を変化させながら前記測定用データ上を通過する前記リード素子の前記フォロイング処理を行い、そのフォロイング処理における前記測定用データとサーボ・データとの前記リード素子による読み出しにより得られたデータを使用して、前記リード・ライト・オフセットを決定する。これにより、リード・ライト・オフセットの測定を、より効率的に行うことで、測定時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、リード・ライト・オフセットの測定時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態にかかるHDDの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態にかかるリード・ライト・オフセット測定の原理について説明する図である。
【図3】本実施形態において、測定用データとリード素子の軌跡とを模式的に示す図である。
【図4】本実施形態において、リード素子軌跡に対応するバリアブル・ゲイン・アンプのゲイン値(VGAゲイン値)の変化を示す図である。
【図5】本実施形態のリード・ライト・オフセット測定用データの読み出し処理におけるタイミング制御について説明するタイミング・チャートである。
【図6】本実施形態のリード・ライト・オフセット測定用データの読み出し処理におけるタイミング制御について説明するブロック図である。
【図7】本実施形態において、VGA値と位置信号値との間の関係を示す測定データ及びその測定データにフィッティングした近似関数とを模式的に示す図である。
【図8】本実施形態に係る二段階のVGA測定方法について説明するフローチャートである。
【図9】本実施形態に二段階のVGA測定のより具体的な例について説明するフローチャートである。
【図10】本実施形態に二段階のVGA測定のより具体的な例において、最初のVGA測定により得られた測定結果と、その測定結果から次の測定におけるターゲット半径位置範囲(サーチ範囲)を決定する方法を説明する図である。
【図11】従来の技術において、磁気ディスク上の半径位置により変化するリード・ライト・オフセットを模式的に示している。
【図12】従来のリード・ライト・オフセット測定の手法を説明する図面である。
【図13】従来のリード・ライト・オフセット測定において、測定用データの読み出し位置と読み出し信号振幅との関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明を適用した実施の形態を説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。以下においては、ディスク・ドライブの一例であるハードディスク・ドライブ(HDD)において、本発明の実施形態を説明する。
【0029】
本実施形態は、リード素子とライト素子との間の距離である、リード・ライト・オフセットの測定に特徴を有している。ヘッド・スライダ上に形成されているヘッド素子部は、リード素子とライト素子とを有している。リード・ライト・オフセットは、リード素子とライト素子との間のディスク半径方向における距離である。
【0030】
本形態のリード・ライト・オフセット測定は、リード・ライト・オフセットが大きいヘッド素子部を有するHDDに特に有用である。セルフ・サーボ・ライト(SSW)処理によりサーボ・データを書き込むHDDは、大きなリード・ライト・オフセットのヘッド・スライダを有しており、このようなHDDに本実施形態のリード・ライト・オフセット測定は特に有用である。
【0031】
リード・ライト・オフセットは、ディスク半径位置に従って変化する。図11を参照して説明したように、これは、アクチュエータと揺動中心と素子中心とを結ぶ仮想線とトラック接線方向との間の角度(スキュー角)の変化による。SSW処理を行うHDDにおいて、一般に、リード素子は、ディスク上において、常にライト素子の外周側もしくは内周側の一方に位置する。本形態のリード・ライト・オフセット測定は、特定のディスク半径位置においてリード・ライト・オフセットが0となるHDDにも適用することができる。また、サーボ・トラック・ライタによってサーボ・データが書き込まれるHDDにも適用することができる。
【0032】
本形態の手法は、例えば、SSWの初期処理におけるリード・ライト・オフセット測定及びサーボ・ライト後のテスト工程におけるリード・ライト・オフセット測定に適用することができる。本形態の手法は、リード・ライト・オフセット測定の時間を短縮する効果を有し、テスト工程における各ヘッド・スライダのリード・ライト・オフセット測定に特に有用である。製品としてのHDDがリード・ライト・オフセット測定機能を有する場合、その測定に本形態の手法を適用することもできる。
【0033】
以下においては、本発明の好ましい態様として、HDDのテスト工程におけるリード・ライト・オフセット測定について詳細を説明する。好ましい構成において、HDDの制御回路が、ホストからのコマンドに応答して、リード・ライト・オフセット測定を実行する。まず、HDDの構成について説明の全体構成について説明する。
【0034】
図1に示すように、HDD1は、エンクロージャ10内に、データを記憶するディスクである磁気ディスク11を有している。スピンドル・モータ(SPM)14は、磁気ディスク11を所定の角速度で回転する。磁気ディスク11の各記録面に対応して、磁気ディスク11にアクセスするヘッド・スライダ12が設けられている。
【0035】
各ヘッド・スライダ12は、磁気ディスク上を飛行するスライダと、スライダに固定され磁気信号と電気信号との間の変換を行うヘッド素子部とを備えている。各ヘッド・スライダ12はアクチュエータ16の先端部に固定されている。アクチュエータ16はボイス・コイル・モータ(VCM)15に連結され、揺動軸を中心に揺動することによって、ヘッド・スライダ12を回転する磁気ディスク11上においてその半径方向に移動する。
【0036】
磁気ディスク11の外周端近くに、ランプ17がエンクロ−ジャ10内に固定されている。HDD1の電源がOFFのときやアイドル時に、アクチュエータ16は磁気ディスク11の外側においてランプ17上で停止している。本発明は、アクチュエータ16が磁気ディスク11上の所定領域で着地、停止するCSS(コンタクト・スタート・アンド・ストップ)方式のHDDに適用することができる。
【0037】
エンクロージャ10の外側に固定された回路基板20上には、回路素子が実装されている。モータ・ドライバ・ユニット22は、HDC/MPU23からの制御データに従って、SPM14及びVCM15を駆動する。RAM24は、リード・データ及びライト・データを一時的に格納するバッファとして機能する。エンクロージャ10内のアーム電子回路(AE)13は、複数のヘッド・スライダ12の中から磁気ディスク11へのアクセスを行うヘッド・スライダ12を選択し、その再生信号を増幅してリード・ライト・チャネル(RWチャネル)21に送る。また、RWチャネル21からの記録信号を選択したヘッド・スライダ12に送る。なお、本発明は一つのヘッド・スライダ12のみを有するHDDに適用することができる。
【0038】
RWチャネル21は、リード処理において、AE13から供給されたリード信号を、バリアブル・ゲイン・アンプ(VGA)によって一定の振幅となるように増幅し、取得したリード信号からデータを抽出し、デコード処理を行う。読み出されるデータは、ユーザ・データとサーボ・データとを含む。デコード処理されたリード・ユーザ・データ及びサーボ・データは、HDC/MPU23に転送される。また、RWチャネル21は、ライト処理において、HDC/MPU23から転送されたライト・データをコード変調し、更にコード変調されたライト・データをライト信号に変換してAE13に供給する。
【0039】
コントローラであるHDC/MPU23は、リード/ライト処理制御、コマンド実行順序の管理、サーボ・データを使用したヘッド・スライダ12(アクチュエータ16)のポジショニング制御(サーボ制御)、ホスト51との間のインターフェース制御、ディフェクト管理、エラーが発生した場合のエラー対応処理など、データ処理に関する必要な処理及びHDD1の全体制御を実行する。特に、本形態のHDC/MPU23は、各ヘッド・スライダ12のリード・ライト・オフセット測定を行う。HDC/MPU23が行なう処理の全てもしくは一部を外部装置であるテスト装置が行ってもよい。この構成においても、テスト装置を含めて、HDDを構成している。
【0040】
本形態のリード・ライト・オフセット測定の原理について説明する。図2に示すように、HDC/MPU23は、ヘッド・スライダ12上のヘッド素子部120内のリード素子121を、所定のターゲット半径位置に位置決めし、ライト素子122により、測定用データを書き込む。リード素子121は一定のターゲット半径位置に位置決めされる。リード素子121がターゲット半径位置をフォロイングしている間、ライト素子122が測定用データをデータ領域に書き込む。好ましい構成において、ライト素子122は、1データ・トラック全てに測定用データを書き込む。つまり、全てのサーボ・セクタの間に測定用データが書き込まれる。
【0041】
測定用データを書き込むと、HDC/MPU23はモータ・ドライバ・ユニット22を介してVCM15を制御し、リード素子121を測定用データのトラックの近くの特定のディスク半径位置(ターゲット半径位置)に移動する(シーク)。シークが完了後、HDC/MPU23は、ターゲット半径位置を変化させながら、フォロイングを行なう。このフォロイングの間、HDC/MPU23は、リード素子121により測定用データを読み出して振幅を測定し、また、サーボ・セクタを読み出して位置誤差信号を測定する。位置誤差信号は、各サーボ・セクタ上でのリード素子121の半径位置を示す位置信号である。
【0042】
HDC/MPU23は、測定用データの読み出し振幅と位置誤差信号の測定データから、それらの間の関係を決定し、それにより、測定用データ(ライト素子122)の中心位置を示すディスク半径位置を決定する。HDC/MPU23は、測定用データを書き込むときのディスク半径位置を保持している。従って、HDC/MPU23は、それらのディスク半径位置の差分により、測定を行ったディスク半径位置におけるリード・ライト・オフセットを算出することができる。
【0043】
本形態のリード・ライト・オフセット測定において、リード素子121の半径位置は、フォロイングにおいて、測定用データ上で変化する。HDC/MPU23は、リード素子121を移動しながら測定用データの読み出し振幅と位置誤差信号とを測定することで、少ない時間で異なる半径位置における測定用データの読み出し振幅の値を多く取得することができる。これにより、リード・ライト・オフセットの時間を短縮する。
【0044】
図3は、測定用データとリード素子121の軌跡とを模式的に示す図である。図3において、1トラック全体の測定用データ(DATA)とサーボ・セクタ(SERVO)が示されている。図3においては、上側が外周側で下側が内周側とする。測定用データは、トラックnと指示されている。また、リード素子121は、図の左から右に移動する(ディスク回転方向が右から左)ものとする。図3は模式図であって、実際のHDDにおけるサーボ・セクタ数は数百である。なお、データ・トラックの中心位置とサーボ・トラックの中心とが一致しているとは限らない。測定用データは、ユーザ・データと同一あるいは異なるフォーマットを有する。測定用データによりクリアランス測定ができれば、そのフォーマットを問わない。
【0045】
図3において、円がリード素子121の位置を示している。図3の例においては、リード素子121は、測定用データの中心から読み出しを開始し、外周側に移動した後、内周側に移動し、さらに外周側に移動して測定用データの中心に戻る。図4は、図3のリード素子軌跡に対応するVGAのゲイン値の変化を示している。X軸はサーボ・セクタ(円周方向における位置)である。VGAゲインは、リード素子121による読み出し信号の振幅の逆数に相当する。従って、それは、読み出し信号振幅の増加と共に減少し、VGAゲインが最も小さい値を示す半径位置が測定用データ(ライト素子122)の中心半径位置である。
【0046】
VGAは、RWチャネル12内に組み込まれており、HDC/MPU23は、RWチャネル12からVGAゲイン値を取得する。AE13あるいはRWチャネル21が読み出し信号振幅を直接に測定することができる場合、HDC/MPU23は、それらの振幅値を取得してもよい。また、HDC/MPU23は、測定用データ内の位置を表す他のデータ(値)を使用してもよい。
【0047】
図3に示すように、測定用データの中心位置を正確に測定するためには、リード素子121が測定用データの内周端から外周端までをスイープしていることが好ましい。つまり。リード素子121の中心位置が、フォロイングにおいて、測定用データの外周端及び内周端に達することが好ましい。従って、フォロイングにおいて変化するターゲット半径位置の範囲が、これらの位置を含むことが好ましい。以下において、ターゲット半径位置が変化する範囲をターゲット範囲と呼ぶ。
【0048】
このように、HDC/MPU23は、測定用データを、リード素子121によりオフトラック・スイープする。図3の好ましい例において、リード素子121(のターゲット半径位置)は、ターゲット範囲内で往復する。具体的には、HDC/MPU23は、ターゲット範囲の中心からフォロイングを開始し、ターゲット半径位置をディスク半径方向において振って後、初期位置である中心位置にターゲット半径位置を戻す。リード素子121は、ターゲット半径位置に追随するように移動するが、実際の半径位置とターゲット半径位置とは一般に一致しない。
【0049】
測定用データを外周端から内周端まで読み出すためには、リード素子121は内周あるいは外周への一方の方向においてのみ移動すればよい。つまり、HDC/MPU23は、ターゲット半径位置を、ターゲット半径位置範囲の端から端まで一方向(内周側から外周側もしくは外周側から内周側)においてのみ変化させればよい。測定値の信頼性が十分である場合には、この軌跡が好ましい。これによって、測定時間を短縮する、あるいは、同一測定時間におけるターゲット半径位置の変化ステップ(連続しているターゲット半径位置間の差分)を小さくすることができる。
【0050】
リード素子121のターゲット半径位置(リード素子121)をターゲット範囲(リード素子の移動範囲)内において内外に振る(振動させる)ことで、同一ターゲット半径位置について複数のサンプル値を得ることができる。これにより、測定結果の信頼性を高めることができる。測定時間の短縮のため、ターゲット半径位置(リード素子位置)の変化は1サイクルであることが好ましい。図3の例において、ターゲット半径位置(リード素子位置)の変化は1サイクル終了する。
【0051】
リード素子121のターゲット半径位置の変化が大きいと、リード素子121の実際の位置がターゲット半径位置に追従できなくなる。従って、ターゲット半径位置のステップは、小さい値であることが重要である。好ましい構成において、ステップ値は、HDD1の機能として変化可能な値の最小値もしくは最小値の次に小さい値以下である。例えば、1PES単位でターゲット半径位置を指定することができる場合、HDC/MPU23が指定するステップは、1PES以下もしくは2PES以下である。
【0052】
ターゲット半径位置の変化ステップ量を小さくするためには、測定の開始から終了までに読み出す測定点(ディスク回転数)を大きくする。例えば、ディスク1回転半の間でターゲット半径位置を1サイクル分変化させると、ディスク1回転で1サイクルのディスク半径位置変化を行なう方法よりも、ターゲット半径位置(リード素子位置)の変化ステップ量を小さくすることができる。
【0053】
測定の信頼性と測定時間短縮、そして、フォロイングにおけるヘッド・スライダ12のポジショニングの点から、図3の例に示すように、HDC/MPU23は、ターゲット半径位置を、磁気ディスク11の一回転において、1サイクル分振動変化させることが好ましい。制御のシンプリシティの点からは、HDC/MPU23は、ターゲット範囲の中心から開始してターゲット半径位置を変化させる。内外に振れた後に、ターゲット半径位置は初期位置と同一の値に戻る。
【0054】
好ましい構成において、HDC/MPU23は、サーボ・セクタ毎にターゲット半径位置を指定する機能を有する。これにより、正確なリード素子121の位置制御を行うことができる。測定用データの読み出しにおいて、必要な位置制御を行うことができるのであれば、HDC/MPU23は、複数セクタに一回の頻度でのみターゲット半径位置を指定できる構成でもよい。ターゲット半径位置を指定不能なセクタにおいては、例えば、直前の値が使用される。また、各サーボ・セクタ間において測定データの読み出し振幅を測定することが好ましいが、複数セクタに一回の頻度でのみ測定を行う構成でもよい。
【0055】
リード素子121を振りながらのフォロイングにおいて、HDC/MPU23は、サーボ読み出しエラーをハンドリングする機能をオフすることが好ましい。リード・ライト・オフセットの測定においては、読み出し振幅と位置信号との双方の実際のデータを取得することが必要である。サーボ・エラー・ハンドリング機能は、規定の条件からはずれる位置信号を無視する。従って、HDC/MPU23は、シーク完了後にフォロイングを開始する前、サーボ・エラー・ハンドリング機能をオフする。
【0056】
図5のタイミング・チャート及び図6のブロック図を参照して、リード・ライト・オフセット測定用データの読み出し処理におけるタイミング制御について説明する。図5は、そのタイミング・チャートの一例であり、図6は測定用データの読み出し処理に関連する構成要素及びそれらの間の信号及びデータを模式的に示すブロック図である。
【0057】
サーボ・ゲート信号は、サーボ・セクタの読み出しタイミングを制御する信号である。サーボ・ゲート信号がHIGHの間(サーボ・ゲートが開いている間)、RWチャネル21とHDC/MPU23とは、リード素子121からのサーボ・データ読み出し信号の処理を行う。リード・ゲート信号は、測定用データの読み出しタイミングを制御する信号である。リード・ゲート信号がHIGHの間(リード・ゲートが開いている間)、RWチャネル21とHDC/MPU23とは、リード素子121からの測定用データ読み出し信号を処理する。
【0058】
HDC/MPU23は、サーボ・ゲート信号を基準に、リード・ゲート信号を制御する。例えば、HDC/MPU23は、直前のサーボ・セクタのサーボ・ゲート信号の立ち下がりから、規定時間が経過した後にリード・ゲート信号をHIGHにセットする。また、規定時間経過後にリード・ゲート信号をLOWにセットする。HDC/MPU23は、直前のサーボ・ゲート信号の立ち下がりから、規定時間が経過した後にサーボ・ゲート信号をHIGHにセットする。
【0059】
HDC/MPU23は、シーク中に測定用データを読み出すことはできない。HDC/MPU23は、初期ターゲット半径位置へのシークが完了した後、フォロイング制御下においてリード・ゲート信号を制御して測定用データの読み出しを行う。具体的には、HDC/MPU23は、初期ターゲット位置へのシークが完了すると、フォロイングを開始する。
【0060】
シーク完了から既定時間(既定サーボ・セクタ数)経過した後、HDC/MPU23は、リード・ゲート信号をHIGHにセットして、リード・ライト・オフセット測定用データの読み出しを開始する。HDC/MPU23は、シーク完了後に、既定のサーボ・セクタ番号(例えば0番)を有するサーボ・セクタから測定用データの読み出しを開始してもよい。
【0061】
HDC/MPU23は、測定用データの読み出し処理を開始すると、各サーボ・セクタの位置信号とサーボ・セクタ間の測定用データの読み出し振幅値(本例においてVGA値)をRWチャネル21から取得し、それをRAM24のメモリ領域に格納する。HDC/MPU23は、サーボ・セクタ間において一つのVGA値を取得すればよい。HDC/MPU23は、サーボ・セクタ毎にターゲット半径位置を指定する。
【0062】
本例において、ターゲット半径位置は、磁気ディスク1回転において1サイクルの変化を示す。従って、ターゲット半径位置の変化ステップ量は、ターゲット変化範囲(幅)を1トラックのサーボ・セクタ数で割った値である。端数は、例えば、切り捨てる。図5の例においては、サーボ・セクタ毎にターゲット半径位置が変化しており、変化量も一定である。実際の処理においては、各サーボ・セクタにおけるターゲット半径位置変化量は、幅とセクタ数によって決まるため、一定とは限らず、サーボ・セクタによっては変化量が零であることもありうる。
【0063】
上記測定により、HDC/MPU23は、ディスク1回転における全てのサーボ・セクタの位置信号の値と、全てのセクタ(サーボ・セクタ間の領域を意味する)の測定用データのVGA値(読み出し振幅値に相当)を取得する。HDC/MPU23は、取得した値に対して近似式を適用し、測定用データの中心位置を算出する。図7は、VGA値と位置信号値との間の関係を示す測定データ及びその測定データにフィッティングした近似関数とを模式的に示す図である。VGA値と位置信号値との間の関係は、二次関数で近似することができる。
【0064】
HDC/MPU23は、フィッティングした近似関数の最小値を示す位置信号値を算出し、その位置信号値が示すディスク半径位置が測定用データ(ライト素子122)の中心位置であると決定する。VGA最小値(振幅最大値)の半径位置の算出には、近似関数を使用することが好ましいが、他の手法によりVGA最小値の半径位置を決定してもよい。なお、近似関数のフィッティングにおいては、不要データの削除や平均値の算出など、広く知られた統計手法を使用することが好ましい。
【0065】
リード・ライト・オフセット測定におけるVGA測定をより正確なものとするためには、VGA最小値を示す半径位置の近傍において、狭い範囲でリード素子121の位置を変化させることが好ましい。しかし、リード素子位置の振り幅を小さくすることで、ターゲット位置範囲内にVGA最小値を示す半径位置が含まれないことを避けることが必要である。好ましい構成において、HDC/MPU23は、VGA最小位置(ライト素子中心位置)の多段階探索を行なう。
【0066】
HDC/MPU23は、広いサーチ範囲(ターゲット半径位置範囲)での測定を行い、その測定結果からVGA最小値の半径位置を決定(推定)する。次に、HDC/MPU23は、上記推定半径位置を含むより狭いサーチ範囲においてVGA測定を行い、その測定結果からVGA最小値の半径位置を決定する。このように、ラフ・サーチとファイン・サーチとを行なうことで、短い測定時間においてより正確なサーチを行うことができる。また、サーチ範囲を狭くしながらVGA測定を繰り返し行うことで、より正確にVGA最小半径位置を特定することができる。
【0067】
図8のフローチャートを参照して、二段階のVGA測定方法について説明する。HDC/MPU23は、最初の測定のターゲット半径位置にリード素子121を移動する(シーク)(S11)。このターゲット半径位置は、測定用データの書き込みにおけるリード素子位置と前もって設定されている近似式とから算出することができる。HDC/MPU23は、ターゲット半径位置においてフォロイングを開始する。
【0068】
HDC/MPU23は、ターゲット半径位置を変化させながらのフォロイングを行ないながら、VGAと位置信号(ディスク半径位置)の測定を行う(S12)。このときのサーチ範囲(ターゲット半径位置の触れ幅)は広いサーチ範囲であり、好ましくは、測定用データの幅よりも大きい。
【0069】
HDC/MPU23は、得られた測定結果から、VGA最小値を示す位置信号値(ディスク半径位置)を決定する(S13)。好ましくは、HDC/MPU23は、VGA最小値及びそれに対応する位置信号位置の決定には、近似関数を利用する。また、この決定に使用するデータは、測定データからノイズと判定されたデータを除いたデータである。
【0070】
HDC/MPU23は、次の測定のためのサーチ範囲を決定する(S14)。HDC/MPU23は、好ましくは、サーチ範囲の中心をラフ・サーチの測定結果から決定する。同一の中心位置を使用するよりも、より適切なファイン・サーチにおけるVGA測定を行うことができる。好ましくは、その中心位置はVGA最小値を示す位置信号値であり、以下においてはこの構成を説明する。サーチ範囲の幅は既定の値(予め設定されている値)、あるいは、決定したVGA最小値あるいはその位置信号値からそれを算出してもよい。サーチ範囲の幅(ターゲット半径位置の変化幅)は、前回のVGA測定におけるサーチ範囲の幅よりも小さい値である。
【0071】
HDC/MPU23は、前回のVGA測定で決定したVGA最小値のディスク半径位置をターゲット位置として、リード素子121(ヘッド・スライダ12)を移動する(シーク)(S15)。シーク完了後、HDC/MPU23は、ターゲット半径位置を変化させながらのフォロイングを行ないながら、VGAと位置信号(ディスク半径位置)の測定を行う(S16)。上述のように、このときのリード素子移動範囲は、前回の測定よりも狭い。HDC/MPU23は、得られた測定結果から、VGA最小値を示す位置信号値(ディスク半径位置)を決定する(S17)。HDC/MPU23は、この位置信号ちと測定用データ書き込みにおけるリード素子位置とから、リード・ライト・オフセットを算出する(S18)。
【0072】
このように、サーチ範囲を小さくしながら複数回のVGA測定を行う場合、一回のVGA測定において、図3を参照して説明したように、ターゲット半径位置は測定後に初期位置に戻ることが好ましい。これにより、次のVGA測定への移行をスムーズに行なうことができる。設計によっては、異なるVGA測定におけるサーチ範囲は常に同一でもよい。しかし、上述のように、前回の測定により得られたVGA最小値を示す半径位置からサーチ範囲を決定することで、より正確なVGA測定を行うことができる。これは、多くのVGA測定(2回を越える測定)を行う場合に、特に有用である。
【0073】
次に、二段階のVGA測定のより具体的な例について説明する。図9のフローチャートは、この処理の流れを示し、図10は最初のVGA測定により得られた測定結果と、その測定結果から次の測定におけるターゲット半径位置範囲(サーチ範囲)を決定する方法を説明する図である。図9に示すように、HDC/MPU23は、最初の測定のためのターゲット半径位置にリード素子121を移動する(シーク)(S31)。シーク・ターゲットは、測定用データの中心位置である。
【0074】
HDC/MPU23は、リード素子121をスイングさせながら、VGAとリード素子半径位置とを測定する(S32)。本例において、サーボ・トラック間の距離は256PESであり、振り幅は±120PESである。HDC/MPU23は、4PES毎にVGA測定値を複数グループにわけ、グループ内のσが10を超えるグループを削除する(S33)。HDC/MPU23は、不要データを除去した測定データから、VGA最小値を探索する(S34)。
【0075】
HDC/MPU23は、上記の4PES毎にグループ化したデータにおいて、各グル−プにおけるVGAとPESの平均値をとる。さらに、σが10以下の各グループにおける平均VGAの最大値と最小値との差を100%としたときの最小値+60%のデータを集める(S35)。図10は、ラフ・サーチによる測定データと、60%範囲とを示している。HDC/MPU23は、集めたデータから次のVGA測定におけるターゲット半径位置の振り幅を算出する(S36)。HDC/MPU23は、上記集めたデータに対して二次関数のフィッティング(Xが半径位置、YがVGA)を行い、VGAのプロファイルを得る(S37)。HDC/MPU23は、フィッティングした二次関数の微分を計算して、VGA最小値を示す位置信号値を算出する(S38)。以上により、最初のラフ・サーチが終了する。
【0076】
次に、HDC/MPU23は、ファイン・サーチを開始する。HDC/MPU23は、工程S38で算出したVGA最小値の半径位置にリード素子121を移動する(シーク)(S39)。HDC/MPU23は、リード素子121をスイングさせながら、VGAとリード素子半径位置とを測定する(S40)。振り幅は、上記工程S36で算出した値である。HDC/MPU23は、4PES毎にVGA測定値を複数グループにわけ、グループ内のσが10を超えるグループを削除する(S41)。HDC/MPU23は、不要データを除去した測定データから、VGA最小値を探索する(S42)。
【0077】
HDC/MPU23は、σが10以下の各グループにおける平均VGAの最大値と最小値との差を100%としたときの最小値+60%のデータを集める(S43)。HDC/MPU23は、上記集めたデータに対して二次関数のフィッティング(Xが半径位置、YがVGA)を行い、VGAのプロファイルを得る(S44)。HDC/MPU23は、フィッティングした二次関数の微分を計算して、VGA最小値を示す位置信号値を算出する(S45)。HDC/MPU23は、算出した位置信号と測定用データ書き込みにおけるリード素子121の半径位置とから、リード・ライト・オフセット値を算出する。2回目のVGA測定は、1回目の測定における工程S36を除く処理と同様である。3回以上のVGA測定を行う場合には、2回目の測定においても次の測定における振り幅の算出を行なう。最後のVGA測定においてのみ、この工程は省略される。
【0078】
以上、本発明を好ましい実施形態を例として説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。本発明はHDDに限らず、他のタイプのディスク・ドライブに適用することができる。測定用データの中心位置を決定することができるのであれば、測定振幅と異なる値を使用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 ハードディスク・ドライブ、10 エンクロージャ、11 磁気ディスク
12 ヘッド・スライダ、14 スピンドル・モータ、15 ボイス・コイル・モータ
16 アクチュエータ、17 ランプ、20 回路基板
21 リード・ライト・チャネル、22 モータ・ドライバ・ユニット
120 ヘッド素子部、121 リード素子、122 ライト素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード素子とライト素子との間のリード・ライト・オフセットを測定する方法であって、
前記ライト素子により測定用データを書き込み、
前記測定用データを前記リード素子により読み出すために、ターゲット半径位置に前記リード素子を移動するシーク処理を行い、
前記シーク処理が完了した後、前記リード素子によるフォロイング処理を開始し、
前記リード素子のターゲット半径位置を変化させながら、前記測定用データ・トラック上を通過する前記リード素子の前記フォロイング処理を行い、
前記フォロイング処理において前記測定用データの読み出しとサーボ・データの読み出しとを行い、
前記測定用データ及び前記サーボ・データの前記読み出しにより得られたデータを使用して、前記リード・ライト・オフセットを決定する、
リード・ライト・オフセット測定方法。
【請求項2】
前記フォロイング処理の前に、前記測定用データの中心位置のラフ・サーチ処理を行い、
前記ラフ・サーチ処理は、
前記フォロイング処理における前記ターゲット半径位置の変化幅よりも大きな変化幅において前記ターゲット半径位置を変化させながら、前記測定用データ上を通過する前記リード素子のフォロイング処理を行い、
前記ラフ・サーチ処理における前記フォロイング処理において、前記測定用データの読み出しとサーボ・データの読み出しとを行い、
前記ラフ・サーチ処理における前記測定用データ及び前記サーボ・データの前記読み出しにより得られたデータにより、前記測定用データの中心位置を決定し、
前記ラフ・サーチ処理の測定結果にしたがって、前記ラフ・サーチ処理の後の前記フォロイングにおける前記ターゲット半径位置の変化範囲を決定する、
請求項1に記載のリード・ライト・オフセット測定方法。
【請求項3】
前記シーク処理におけるターゲット位置は、前記ラフ・サーチ処理において決定した中心位置である、
請求項2に記載のリード・ライト・オフセット測定方法。
【請求項4】
前記フォロイング処理開始におけるターゲット半径位置と、前記フォロイング処理終了におけるターゲット半径位置とは一致している、
請求項2に記載のリード・ライト・オフセット測定方法
【請求項5】
前記フォロイング処理を開始する前に、エラー・ハンドリング機能をオフする、
請求項1に記載のリード・ライト・オフセット測定方法。
【請求項6】
前記フォロイング処理において、前記ターゲット半径位置は、ディスク半径方向において振動している、
請求項1に記載のリード・ライト・オフセット測定方法。
【請求項7】
前記フォロイング処理開始におけるターゲット半径位置と、前記フォロイング処理終了におけるターゲット半径位置とは一致しており、
前記フォロイングは前記ディスクの一回転で終了する、
請求項1に記載のリード・ライト・オフセット測定方法。
【請求項8】
リード素子とライト素子との間のリード・ライト・オフセットを測定するディスク・ドライブであって、
ディスクと、
測定用データを前記ディスクに書き込むライト素子と、
前記測定用データとサーボ・データとを読み出すリード素子と、
シーク処理において、前記リード素子により前記測定用データを読み出すために、ターゲット半径位置に前記リード素子を移動する移動機構と、
前記シーク処理が完了した後、前記リード素子のターゲット半径位置を変化させながら前記測定用データ上を通過する前記リード素子の前記フォロイング処理を行い、そのフォロイング処理における前記測定用データとサーボ・データとの前記リード素子による読み出しにより得られたデータを使用して、前記リード・ライト・オフセットを決定する、
コントローラと、
を有するディスク・ドライブ。
【請求項9】
前記コントローラは、前記フォロイング処理の前に、前記測定用データの中心位置のラフ・サーチ処理を行い、
前記ラフ・サーチ処理は、
前記フォロイング処理における前記ターゲット半径位置の変化幅よりも大きな変化幅において前記ターゲット半径位置を変化させながら、前記測定用データ上を通過する前記リード素子のフォロイング処理を行い、
前記ラフ・サーチ処理における前記フォロイング処理において、前記測定用データの読み出しとサーボ・データの読み出しとを行い、
前記ラフ・サーチ処理における前記測定用データ及び前記サーボ・データの前記読み出しにより得られたデータにより、前記測定用データの中心位置を決定し、
前記ラフ・サーチ処理の測定結果にしたがって、前記ラフ・サーチ処理の後の前記フォロイングにおける前記ターゲット半径位置の変化範囲を決定する、
請求項8に記載のディスク・ドライブ。
【請求項10】
前記シーク処理におけるターゲット位置は、前記ラフ・サーチ処理において決定した中心位置である、
請求項9に記載のディスク・ドライブ。
【請求項11】
前記フォロイング処理開始におけるターゲット半径位置と、前記フォロイング処理終了におけるターゲット半径位置とは一致している、
請求項9に記載のディスク・ドライブ。
【請求項12】
前記コントローラは、前記フォロイング処理を開始する前に、エラー・ハンドリング機能をオフする、
請求項8に記載のディスク・ドライブ。
【請求項13】
前記フォロイング処理において、前記ターゲット半径位置はディスク半径方向において振動している、
請求項8に記載のディスク・ドライブ。
【請求項14】
前記フォロイング処理開始におけるターゲット半径位置と、前記フォロイング処理終了におけるターゲット半径位置とは一致しており、
前記フォロイングは前記ディスクの一回転で終了する、
請求項8に記載のディスク・ドライブ。
【請求項1】
リード素子とライト素子との間のリード・ライト・オフセットを測定する方法であって、
前記ライト素子により測定用データを書き込み、
前記測定用データを前記リード素子により読み出すために、ターゲット半径位置に前記リード素子を移動するシーク処理を行い、
前記シーク処理が完了した後、前記リード素子によるフォロイング処理を開始し、
前記リード素子のターゲット半径位置を変化させながら、前記測定用データ・トラック上を通過する前記リード素子の前記フォロイング処理を行い、
前記フォロイング処理において前記測定用データの読み出しとサーボ・データの読み出しとを行い、
前記測定用データ及び前記サーボ・データの前記読み出しにより得られたデータを使用して、前記リード・ライト・オフセットを決定する、
リード・ライト・オフセット測定方法。
【請求項2】
前記フォロイング処理の前に、前記測定用データの中心位置のラフ・サーチ処理を行い、
前記ラフ・サーチ処理は、
前記フォロイング処理における前記ターゲット半径位置の変化幅よりも大きな変化幅において前記ターゲット半径位置を変化させながら、前記測定用データ上を通過する前記リード素子のフォロイング処理を行い、
前記ラフ・サーチ処理における前記フォロイング処理において、前記測定用データの読み出しとサーボ・データの読み出しとを行い、
前記ラフ・サーチ処理における前記測定用データ及び前記サーボ・データの前記読み出しにより得られたデータにより、前記測定用データの中心位置を決定し、
前記ラフ・サーチ処理の測定結果にしたがって、前記ラフ・サーチ処理の後の前記フォロイングにおける前記ターゲット半径位置の変化範囲を決定する、
請求項1に記載のリード・ライト・オフセット測定方法。
【請求項3】
前記シーク処理におけるターゲット位置は、前記ラフ・サーチ処理において決定した中心位置である、
請求項2に記載のリード・ライト・オフセット測定方法。
【請求項4】
前記フォロイング処理開始におけるターゲット半径位置と、前記フォロイング処理終了におけるターゲット半径位置とは一致している、
請求項2に記載のリード・ライト・オフセット測定方法
【請求項5】
前記フォロイング処理を開始する前に、エラー・ハンドリング機能をオフする、
請求項1に記載のリード・ライト・オフセット測定方法。
【請求項6】
前記フォロイング処理において、前記ターゲット半径位置は、ディスク半径方向において振動している、
請求項1に記載のリード・ライト・オフセット測定方法。
【請求項7】
前記フォロイング処理開始におけるターゲット半径位置と、前記フォロイング処理終了におけるターゲット半径位置とは一致しており、
前記フォロイングは前記ディスクの一回転で終了する、
請求項1に記載のリード・ライト・オフセット測定方法。
【請求項8】
リード素子とライト素子との間のリード・ライト・オフセットを測定するディスク・ドライブであって、
ディスクと、
測定用データを前記ディスクに書き込むライト素子と、
前記測定用データとサーボ・データとを読み出すリード素子と、
シーク処理において、前記リード素子により前記測定用データを読み出すために、ターゲット半径位置に前記リード素子を移動する移動機構と、
前記シーク処理が完了した後、前記リード素子のターゲット半径位置を変化させながら前記測定用データ上を通過する前記リード素子の前記フォロイング処理を行い、そのフォロイング処理における前記測定用データとサーボ・データとの前記リード素子による読み出しにより得られたデータを使用して、前記リード・ライト・オフセットを決定する、
コントローラと、
を有するディスク・ドライブ。
【請求項9】
前記コントローラは、前記フォロイング処理の前に、前記測定用データの中心位置のラフ・サーチ処理を行い、
前記ラフ・サーチ処理は、
前記フォロイング処理における前記ターゲット半径位置の変化幅よりも大きな変化幅において前記ターゲット半径位置を変化させながら、前記測定用データ上を通過する前記リード素子のフォロイング処理を行い、
前記ラフ・サーチ処理における前記フォロイング処理において、前記測定用データの読み出しとサーボ・データの読み出しとを行い、
前記ラフ・サーチ処理における前記測定用データ及び前記サーボ・データの前記読み出しにより得られたデータにより、前記測定用データの中心位置を決定し、
前記ラフ・サーチ処理の測定結果にしたがって、前記ラフ・サーチ処理の後の前記フォロイングにおける前記ターゲット半径位置の変化範囲を決定する、
請求項8に記載のディスク・ドライブ。
【請求項10】
前記シーク処理におけるターゲット位置は、前記ラフ・サーチ処理において決定した中心位置である、
請求項9に記載のディスク・ドライブ。
【請求項11】
前記フォロイング処理開始におけるターゲット半径位置と、前記フォロイング処理終了におけるターゲット半径位置とは一致している、
請求項9に記載のディスク・ドライブ。
【請求項12】
前記コントローラは、前記フォロイング処理を開始する前に、エラー・ハンドリング機能をオフする、
請求項8に記載のディスク・ドライブ。
【請求項13】
前記フォロイング処理において、前記ターゲット半径位置はディスク半径方向において振動している、
請求項8に記載のディスク・ドライブ。
【請求項14】
前記フォロイング処理開始におけるターゲット半径位置と、前記フォロイング処理終了におけるターゲット半径位置とは一致しており、
前記フォロイングは前記ディスクの一回転で終了する、
請求項8に記載のディスク・ドライブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−108342(P2011−108342A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264899(P2009−264899)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】
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