説明

ディスク収納容器

【課題】高い遮光効果が得られ、長期に亘って光による特性劣化やデザインの色褪せを防止したディスク収納容器を提供する。
【解決手段】ディスク1を載置することが可能な遮光性のディスク載置部材2と、下面が開放されており、ディスク載置部材2に載置したディスクの上面及び側面を被う遮光性の上蓋部材3を有するディスク収納容器10であって、ディスク載置部材2には、ディスク載置面から前記ディスクの側面に沿って突設された環状凸部5が設けられており前記ディスク載置部材に前記上蓋部材3を被せた状態において、環状凸部5の上端が、上蓋部材3の側壁部の内壁面に接していることを特徴とするディスク収納容器10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクに対する光照射を回避し、長期保存下における光劣化の防止を図ったディスク収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、CD、DVD、BDディスク等の各種光記録媒体を収納保管するための、円筒形状収納容器が広く汎用されている。
円筒形状収納容器は、ディスクが載置される収納トレイ部位と上蓋部位とにより構成されており、収納トレイ部位には、通常、染料系、顔料系材料が含有された熱可塑性樹脂によって成形された不透明の材料が用いられている。一方、上蓋部位は、ユーザーの視認性の便宜上、透明、あるいは半透明の材料が用いられており、収納ディスクやディスクと共に収納されたジャケット(ディスクの特徴を記載した用紙)を視認することができるようになされている。
【0003】
しかしながら、CD、DVD、BD等の光記録媒体は、透明基板と有機色素を含有した記録層を具備しているため、光照射下で保存すると、特性劣化や、ディスク表面へ施したデザイン(インクジェットプリンタで画像を形成したもの)の変色等の不具合を生じるおそれがある。
すなわち、ユーザーの視認性の観点からは、上蓋部位が透明であることは望ましいが、光記録媒体の特性劣化や外観劣化を防止するという観点からは、望ましくないと言える。
【0004】
上記問題点に鑑みて、遮光機能を具備する収納容器についての提案がなされている(例えば、下記特許文献1参照。)。
これは、ディスク収納容器に所定の遮光シートを貼ることによって、外部からの遮光効果を得ているものである。
しかしながら、収納容器の形状は立体的であるから、遮光シートを全面に亘って隙間無く貼ることは極めて困難であり、必ずしも充分な遮光状態が得られていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−243837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明においては、充分な遮光状態が得られ、長期に亘って光による特性劣化やデザインの色褪せを防止したディスク収納容器を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明においては、複数枚のディスクを重層した状態で載置することが可能な遮光性のディスク載置部材と、下面が開放されており、前記ディスク載置部材に載置したディスクの上面及び側面を被う遮光性の上蓋部材を有するディスク収納容器であって、前記ディスク載置部材には、前記ディスク載置面から前記ディスクの側面に沿って突設された環状凸部が設けられており、前記ディスク載置部材に前記上蓋部材を被せた状態において、前記環状凸部の上端が、前記上蓋部材の側壁部の内壁面に接していることを特徴とするディスク収納容器を提供する。
【0008】
請求項2の発明においては、前記上蓋部材の構成材料中、前記無機顔料の含有量が1〜10重量%であることを特徴とする請求項1に記載のディスク収納容器を提供する。
【0009】
請求項3の発明においては、前記環状凸部が、前記ディスクの載置面の垂直方向から10°〜50°外周側に傾いていることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスク収納容器を提供する。
【0010】
請求項4の発明においては、前記上蓋部材は、下縁外面から外方に突設されたロック部片を有し、前記ディスク載置部材は、前記ロック部片に対応する位置において、前記ディスク載置面から突設され、前記ロック部片を上方に抜止め状態で係止するロック受部を有し、前記ロック受部の基端部内側において、前記ディスク載置部材に開口が設けられており、前記環状凸部は、一部を切り欠いて形成されたディスク取り出し口を具備しており、 前記ロック受部は、周方向において前記ディスク取り出し口と異なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のディスク収納容器を提供する。
【0011】
請求項5の発明においては、複数枚のディスクを重層した状態で載置することが可能な遮光性のディスク載置部材と、下面が開放されており、前記ディスク載置部材に載置したディスクの上面及び側面を被う遮光性の上蓋部材を有するディスク収納容器であって、
前記ディスク載置部材には、前記ディスク載置面から前記ディスクの側面に沿って突設された環状凸部が設けられており、前記環状凸部は、一部を切り欠いて形成されたディスク取り出し口を具備しており、前記上蓋部材は、下縁外面から外方に突設されたロック部片を有し、前記ディスク載置部材は、前記ロック部片に対応する位置において、前記ディスク載置面から突設され、前記ロック部片を上方に抜止め状態で係止するロック受部を有し、前記ロック受部の基端部内側において、前記ディスク載置部材に開口が設けられており、前記ロック受部は、周方向において前記ディスク取り出し口と異なる位置に設けられていることを特徴とするディスク収納容器を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外部からの光線入射を効果的に遮断することができ、長期保存下においても、特性の劣化、及びデザインの色褪せを防止することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のディスク収納容器について、図を参照して説明する。
図1に、ディスク収納容器(ディスク収納状態)の概略斜視図を示し、図2に概略断面図を示す。
ディスク収納容器10は、複数枚のディスク1を重層した状態で、各々の中心孔1hを円柱部1aに挿入して載置するディスク載置部材2と、ディスク1の上面及び側面を被覆する形状を有する上蓋部材3とを具備している。
【0014】
上蓋部材3は、遮光機能を有しており、無機顔料を含有させた熱可塑性樹脂により形成されているものとする。無機顔料の含有量は、1〜10重量%が好適である。
1重量%であると、充分な遮光効果が得られず、10重量%を超えると成形加工性が悪化することが確かめられた。
【0015】
上蓋部材3の側壁下端には、側壁面から突出するロック部片31が設けられている。前記ディスク載置部材2の周端部には、複数のロック部片13に対応するように、底面から突設され、径方向内側に屈曲して延びるロック受部32が、周方向等間隔に複数箇所設けられている。
上蓋部材3をディスク載置部材2に載置されたディスクに被せ、ディスク載置部材2に対して上蓋部材3を回転し(ロック回転方向)、上蓋部材3のロック部片31と、ディスク載置部材2のロック受部32とを合致させることにより、両者が係止するようになされている。また、ロック回転方向と逆方向に回転すれば係止が解除される。
なお、図示省略したが、各ロック受部32の下面には、ロック回転方向の先端部に、各ロック部片31のロック回転方向先端部が突き当たるストッパー部が形成されている。これにより、各ロック部片と各ロック受部とが係止した後、それ以上、ディスク載置部材に対して上蓋部材がロック回転方向に回転しないようになっている。
ロック受部32の基端部内側において、ディスク載置部材2に開口が設けられており、ロック受部32は、周方向において後述するディスク取り出し口と異なる位置に設けられている。各ロック受部32は、平面視矩形を有しており、各開口は、これと略同形の矩形を有している。
【0016】
図3(a)にディスク載置部材2の上面図を示し、図3(b)にディスク載置部材2の断面図を示す。
ディスク載置部材2には、前記ディスクの側面に沿って突設された環状凸部5が設けられている。この環状凸部は、上蓋部材の下端部がディスク側面に当らないようにするとともに、ロック時やロック解除時に上蓋部材の回転をガイドするものである。
図中、二つのディスク取り出し口50は、円柱部1aに対し相互に180度離れた位置に形成されている。ユーザーは、各ディスク取り出し口50から指を入れることで、ディスク載置部材2に載置されたディスクを指でつかみ、これを取り出すことができる。
この環状凸部5の上端部は、図2に示すように、ディスク載置部材2に上蓋部材3を被せた状態において、上蓋部材3の側壁部の内壁33に対し、ディスク取り出し口50が形成された部分を除き、全周に亘って接するようになされている。
【0017】
環状凸部5が、上蓋部材3の内壁33に接するようにするための形態については、特に限定されるものではない。
図4(a)に環状凸部5と上蓋部材3とが非接触の状態を示す。
図4(b)には、環状凸部5の角度を外周側に傾けることによって上蓋部材3と接触させた状態図を示す。
図4(c)には、環状凸部5の高さを変えることによって上蓋部材3と接触させた状態を示す。
環状凸部5の傾き角については、ディスク載置面の垂直方向から外周側に10°〜50°とすることにより、上蓋部材3の内壁面と接触できることが確認された。
上記のように環状凸部5の上端と上蓋部材3の内壁面とを接触させることにより、上蓋部材3の下端部とディスク載置面との隙間から入る光を遮断することができ、内部の遮光性を高めることができる。
【0018】
また、図3(a)の上面図に示すように、ロック受部32と、環状凸部5のディスク取り出し口50とは、異なる位置、すなわち周方向において、相互に位置ずれして設けられていることが好ましい。
これによりロック部片31とロック受部32とが係止した状態において、開口を通って、ロック部片31の下面とディスク載置面との隙間から入射する光が、さらにディスク取り出し口50を通って、内部のディスクに到達することがなく、その入射光を環状凸部5により確実に遮断でき、内部の遮光性をより一層高めることができる。
【0019】
次に、本発明のディスク収納容器について、具体的なサンプルを作製し、これを用いて光記録媒体の保存実験を行った。
【0020】
〔実験例1〕
上蓋部材3に遮光顔料を、1、5、10重量%含有させたディスク収納容器(サンプル1〜3)、遮光顔料を含有させずに成形したディスク収納容器(サンプル4)を作製した。
市販のドライブによりデータを記録したDVDを10枚重層させ、上記サンプル1〜4に収納した。
6万Luxの光照射条件下で0時間〜600時間の保存を行い、100時間ごとに信号再生、およびエラー値の評価を行った(Audeio Development社製 SA300 Advanced適用。)。
測定結果を図5、及び表1に示す。なお、評価基準値は、DVD+R 8.5GB Basic Format Specifications Version 1.1に準拠する。
【0021】
【表1】

【0022】
遮光顔料を含有させた上蓋部材を有するディスク収納容器を用いたサンプル1〜3においては、いずれも実用上十分な遮光性を発揮でき、再生特性の劣化が効果的に抑制できたことが確かめられた。
【0023】
〔実験例2〕
市販の染料系インクジェットプリンタでディスクレーベル面に画像を印刷したDVDを10枚重層させ、上記実験例1で作製したサンプル1〜4のディスク収納容器に収納した。
6万Luxの光照射条件下で20時間〜100時間の保存を行い、20時間ごとにインクジェット印刷面の変色状態について目視による官能評価を行った。
評価結果を下記表2に示す。
なお、初期状態から色味変化が確認できないものを○、色味変化が確認されたものを×として表記した。
【0024】
【表2】

【0025】
表2に示すように、遮光顔料を1重量%以上含有させた上蓋部材を有するディスク収納容器を用いたサンプル1〜3においては、いずれも、実用上十分な遮光性を発揮できたため、ディスクレーベル面の印刷状態の退色が効果的に抑制できた。
一方、遮光顔料を含有させずに成形した上蓋部材を有するディスク収納容器を用いたサンプル4においては、20時間程度の照射により、既に目視で確認できるほどに顕著な退色が見られ、ユーザーレベルで実用面において問題があった。
【0026】
〔実験例3〕
ディスク載置部材2の環状凸部5のディスク取り出し口50の位置(ロック受部32との相対位置)、環状凸部5の傾き角について変更を加えて、下記に示す4種類のディスク収納容器(サンプル5〜8)を作製した。
なお、サンプル5〜8のいずれにおいても、上蓋部材3には、遮光無機顔料が含有されており、材料面における遮光性は確保されているものとする。
(サンプル5):図3(a)に示すように、環状凸部のディスク取り出し口50とロック受部32との位置が異なっている。
(サンプル6):図4(b)に示すように、環状凸部5の角度を底面の垂直方向から30°外周側に傾けた状態とし、上蓋部材を閉じてロックした状態において上蓋部材の内壁に環状凸部が接するようになされている。
(サンプル7):図3(a)、図4(b)に示すように、環状凸部のディスク取り出し口50とロック受部32との位置が異なっており、かつ、環状凸部5の角度を底面の垂直方向から30°外周側に傾けた状態とし上蓋部材を閉じてロックした状態において上蓋部材の内壁面とガイド受部とが接するようになされている。これは、上記サンプル2と同一構成である。
(サンプル8):図4(a)に示すように、上蓋部材2を閉じてロックした状態において、上蓋部材2の内壁面と環状凸部5とが非接触となる。更に、ディスク取り出し口50とロック受部32とが同一位置にある。
【0027】
市販の染料系インクジェットプリンタでディスクレーベル面に画像を印刷したDVDを10枚重層させ、上記サンプル5〜8のディスク収納容器に収納した。
6万Luxの光照射条件下で100時間〜800時間の保存を行い、100時間ごとにインクジェット印刷面の変色状態について目視による官能評価を行った。
評価結果を下記表3に示す。なお、初期状態から色味変化が確認できないものを○、色味変化が確認されたものを×として表記した。
【0028】
【表3】

【0029】
表3に示すように、サンプル5〜7においては、実用上十分な遮光性が発揮され、ディスクレーベル面の印刷状態の退色が効果的に抑制できた。
特に、環状凸部5と上蓋部材とを接触させ、かつディスク取り出し口50とロック受部32とを異なる位置に設けたサンプル7においては、極めて優れた遮光効果が得られたことが確認された。
一方、構成上の遮光を施さなかったサンプル8においては、かなり早期に目視で確認できるほどの顕著な退色が見られ、ユーザーレベルで実用面において問題があった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のディスク収納容器(ディスク収納状態)の概略斜視図を示す。
【図2】本発明のディスク収納容器(ディスク収納状態)の概略断面図を示す。
【図3】(a)にディスク載置部材の上面図を示す。(b)ディスク載置部材の断面図を示す。
【図4】(a)〜(c)環状凸部と上蓋部材との位置関係を示す。
【図5】サンプルディスクの再生エラーの測定結果を示す。
【符号の説明】
【0031】
1 ディスク
1h 中心孔
1a 円柱部
2 ディスク載置部材
3 上蓋部材
5 環状凸部
10 ディスク収納容器
31 ロック部片
32 ロック受部
33 上蓋部材の内壁
50 ディスク取り出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のディスクを重層した状態で載置することが可能な遮光性のディスク載置部材と、
下面が開放されており、前記ディスク載置部材に載置したディスクの上面及び側面を被う遮光性の上蓋部材を有するディスク収納容器であって、
前記ディスク載置部材には、前記ディスク載置面から前記ディスクの側面に沿って突設された環状凸部が設けられており、
前記ディスク載置部材に前記上蓋部材を被せた状態において、前記環状凸部の上端が、前記上蓋部材の側壁部の内壁面に接していることを特徴とするディスク収納容器。
【請求項2】
前記上蓋部材の構成材料中、前記無機顔料の含有量が1〜10重量%であることを特徴とする請求項1に記載のディスク収納容器。
【請求項3】
前記環状凸部が、前記ディスクの載置面の垂直方向から10°〜50°外周側に傾いていることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスク収納容器。
【請求項4】
前記上蓋部材は、下縁外面から外方に突設されたロック部片を有し、
前記ディスク載置部材は、前記ロック部片に対応する位置において、前記ディスク載置面から突設され、前記ロック部片を上方に抜止め状態で係止するロック受部を有し、
前記ロック受部の基端部内側において、前記ディスク載置部材に開口が設けられており、
前記環状凸部は、一部を切り欠いて形成されたディスク取り出し口を具備しており、
前記ロック受部は、周方向において前記ディスク取り出し口と異なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のディスク収納容器。
【請求項5】
複数枚のディスクを重層した状態で載置することが可能な遮光性のディスク載置部材と、
下面が開放されており、前記ディスク載置部材に載置したディスクの上面及び側面を被う遮光性の上蓋部材を有するディスク収納容器であって、
前記ディスク載置部材には、前記ディスク載置面から前記ディスクの側面に沿って突設された環状凸部が設けられており、
前記環状凸部は、一部を切り欠いて形成されたディスク取り出し口を具備しており、
前記上蓋部材は、下縁外面から外方に突設されたロック部片を有し、
前記ディスク載置部材は、前記ロック部片に対応する位置において、前記ディスク載置面から突設され、前記ロック部片を上方に抜止め状態で係止するロック受部を有し、
前記ロック受部の基端部内側において、前記ディスク載置部材に開口が設けられており、
前記ロック受部は、周方向において前記ディスク取り出し口と異なる位置に設けられていることを特徴とするディスク収納容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−12843(P2009−12843A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179745(P2007−179745)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】