説明

ディスク装置のローディング機構

【課題】トレイの搬入搬出経路を複数の区間に分けて、トレイの搬入搬出時にトレイの速度を各区間で変化させる。
【解決手段】記録媒体を載置するトレイ(60)と、トレイ(60)を装置本体(20)に搬入搬出させる駆動手段(30)とを備える。装置本体(20)に、トレイ(60)の搬入搬出方向と直交する方向にスライド可能で、係合部(41)を備えたスライド部材(40)と、スライド部材(40)の位置を検出する検出手段(35,36)とを設ける。トレイ(60)に、係合部(41)と係合し、搬入搬出経路を複数の区間に分けて区間どうしの接続部でスライド部材(40)を移動させるカム(70)を設ける。トレイ(60)を搬入または搬出開始後、検出手段(35,36)がスライド部材(40)の移動を検出したとき、移動後の位置に相当するトレイ(60)の区間に応じて、駆動手段(30)によるトレイ(60)の搬入搬出速度を切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等のディスクの再生または記録再生を行うディスク装置におけるトレイのローディング機構に関し、特にトレイの搬入搬出経路を複数の区間に分けて、トレイの搬入搬出時にトレイの速度を各区間で変化させる手段を備えたディスク装置のローディング機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のディスク装置には、トレイ裏面のカムとシャーシに横方向に移動可能なスライド部材とを設け、スライド部材の位置を1つの検出スイッチにより検出し、トレイの搬入位置を検出するようにしたもの(以下、従来例1という。)がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、回転式のディスクチェンジャ装置においてエンコーダを使用してディスクトレイの移動位置を検出し、ディスクトレイの停止位置の前で、ローディング用モ−タにブレーキをかけ速度制御を行い、停止位置で滑らかに停止させるようにしたもの(以下、従来例2という。)がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−217211号公報
【特許文献2】特開平6−338119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来のものには、次のような課題があった。
【0005】
すなわち、従来例1は、トレイの搬入位置を検出してはいるが、トレイの搬入搬出時にトレイの速度を変化させることは行われていなく、トレイは一定の速度で搬入搬出されていた。
【0006】
このように、トレイの搬入搬出速度が一定の場合、トレイの搬入搬出時にトレイが急に停止したり、トレイが急に移動開始するため、見た目が悪く、騒音が発生する等品位に欠ける問題があった。
【0007】
また、従来例2では、トレイの速度制御を行うために、エンコーダが必要であり、部品点数が多くなりコストが高くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、トレイの搬入搬出経路を複数の区間に分けて、トレイの搬入搬出時にトレイの速度を各区間で変化させることのできるディスク装置のローディング機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係るディスク装置のローディング機構は、記録媒体を載置するトレイと、トレイを装置本体に搬入搬出させる駆動手段とを備えたディスク装置のローディング機構において、装置本体に、前記トレイの搬入搬出方向と直交する方向にスライド可能で、かつ、係合部を備えたスライド部材と、当該スライド部材の位置を検出する検出手段とを設け、前記トレイに、前記係合部と係合し、搬入搬出経路を複数の区間に分けて区間どうしの接続部で前記スライド部材を移動させるカムを設け、トレイを搬入または搬出開始後、前記検出手段が前記スライド部材の前記移動を検出したとき、当該移動後の位置に相当するトレイの前記区間に応じて、前記駆動手段によるトレイの搬入搬出速度を切り換え可能に構成したことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項2に係るディスク装置のローディング機構は、記録媒体を載置するトレイと、トレイを装置本体に搬入搬出させる駆動手段とを備えたディスク装置のローディング機構において、装置本体に、前記トレイの搬入搬出方向と直交する方向にスライド可能で、かつ、係合部を備えたスライド部材と、当該スライド部材の位置を検出する第1,第2の検出手段とを設け、前記トレイに、前記係合部と係合し、搬入搬出経路を搬入位置付近と搬出位置付近とそれ以外とに区間分けして、搬入位置付近および搬出位置付近の区間で前記スライド部材を第2の位置に規制し、また、それ以外の区間で前記スライド部材を第3の位置に規制し、さらに、搬入位置直前で前記スライド部材を第1の位置に移動させるカムを設け、トレイを搬入または搬出開始後、前記スライド部材が前記第2の位置にあるとき、前記第2の検出手段がこれを検出して前記駆動手段によるトレイの搬入搬出速度を低速にし、また、前記スライド部材が前記第3の位置にあるとき、前記第2の検出手段がこれを検出して前記駆動手段によるトレイの搬入搬出速度を高速にするように構成したことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3に係るディスク装置のローディング機構は、請求項2記載のディスク装置のローディング機構において、前記記録媒体はディスク状記録媒体であり、装置本体には、ディスクを装着し回転させるスピンドルモータとディスクに情報を記録または再生するピックアップとを保持するトラバースベースが、トレイに載置されたディスクにスピンドルモータを着脱するため昇降自在に設けられ、前記トラバースベースに設けた突起と係合し、前記スライド部材がスライドすることで前記トラバースベースを昇降駆動するカムを前記スライド部材に設け、前記スライド部材が前記第1の位置を移動して搬入位置に到達するとき、前記第1の検出手段がこれを検出して前記駆動手段による駆動をトレイの搬入から前記スライド部材のスライドに切り換え、駆動手段による当該スライド駆動により前記スライド部材が前記トラバースベースを上昇させてディスクにスピンドルモータを装着させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように、記録媒体を載置するトレイと、トレイを装置本体に搬入搬出させる駆動手段とを備えたディスク装置のローディング機構において、装置本体に、前記トレイの搬入搬出方向と直交する方向にスライド可能で、かつ、係合部を備えたスライド部材と、当該スライド部材の位置を検出する検出手段とを設け、前記トレイに、前記係合部と係合し、搬入搬出経路を複数の区間に分けて区間どうしの接続部で前記スライド部材を移動させるカムを設け、トレイを搬入または搬出開始後、前記検出手段が前記スライド部材の前記移動を検出したとき、当該移動後の位置に相当するトレイの前記区間に応じて、前記駆動手段によるトレイの搬入搬出速度を切り換え可能に構成したので、例えば、搬入位置付近および搬出位置付近の区間では、それ以外の区間に比べてトレイの搬入搬出速度を低速にすることができ、これにより、トレイの移動開始時および停止時に滑らかな動作を行わせることができ、このような滑らかな動作により、見た目が良く、騒音を低減することができ、品位を高めることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図14を参照して説明する。
図1は、本発明によるローディング機構を備えたディスク装置の一実施形態について説明のためトレイを搬出位置からさらに搬出方向へ取り外して示す斜視図、図2は底面側から見た斜視図、図3はトレイが搬入位置にある状態を示す斜視図である。
【0014】
このディスク装置10は、装置本体20と、装置本体20に対して搬入・搬出されるトレイ60とを備えている。
【0015】
そして、トレイ60が搬出位置にあるとき、図示しないディスク(光ディスク)を内包したカートリッジまたは複数の単体のディスク(光ディスク)をトレイ60に載置することができるものである。
【0016】
また、トレイ60が搬入位置にあるとき、カートリッジに内包されたディスク(光ディスク)または単体のディスク(光ディスク)が、ディスク装置10の所定位置に位置決めされ、スピンドルモータに装着されるものである。
【0017】
図2、図5に示すように、トレイ60の装置本体20に向かって右側裏面には、搬入搬出方向に沿って延びるシャフト(軸部材)61を設けてある。このシャフト61が、図1、図4に示すように装置本体20の右側手前に設けた軸受け21により、摺動自在に支持されている。
【0018】
また、図1、図3に示すように、トレイ60の左側縁部62が、装置本体20の左側部に設けたガイド部22により高さ方向を規制してガイドされている。すなわち、複数のガイド突条22aが左側縁部62を下から支え、また、複数のガイド爪22bが左側縁部62の上方位置を規制することで、トレイ60の左側縁部62は、ガイド部22に沿って往復自在にガイドされている。
【0019】
これにより、トレイ60は、装置本体20に、水平を保った状態で搬入搬出自在に保持されている。
【0020】
図2、図5に示すように、トレイ60の右側裏面には、シャフト61と平行に延びるラック63が形成されている。このラック63は、図5に示すように、装置本体20の手前に設けた駆動手段30のトレイ駆動ギヤ33と噛み合うものである。
【0021】
駆動手段30は、図4に示すように、ローディングモータ31、減速機構32、トレイ駆動ギヤ33およびスライド駆動ギヤ34を備えている。そして、トレイ駆動ギヤ33が、ローディングモータ31の回転を減速機構32で減速して駆動されることで、トレイ60はトレイ駆動ギヤ33により、搬出位置と搬入位置との間を搬入、搬出駆動される。
【0022】
図1、図4に示すように、装置本体20には、スライド部材40が、トレイ60の搬入搬出方向と直交する方向にスライド可能に設けてある。スライド部材40は、上方へ起立したピン(係合部)41を備え、このピン41が、図2、図5に示すようにトレイ60の裏面に設けたカム70と係合することで、スライド部材40は、トレイ60の搬出位置から搬入位置直前までカム70により案内される。
【0023】
また、スライド部材40は、トレイ60の搬入位置直前でピン41がカム70の傾斜した切り換え部72に当接することで、図4に矢印Aで示す方向へスライド駆動される。スライド部材40のこの移動により、図4、図5、図6に示すようにスライド部材40に形成したラック42が、駆動手段30のスライド駆動ギヤ34と噛み合うようになるとともに、トレイ60のラック63はトレイ駆動ギヤ33から離脱し、駆動の切り換えが行われる。
【0024】
そして、トレイ60は、スライド駆動ギヤ34により図4の矢印A方向へさらにスライド駆動されるスライド部材40のピン41によって駆動され、搬入位置でトレイ60の搬入搬出方向と直交するカム部71により位置決めされる。
【0025】
このディスク装置10は、トレイ60の搬入搬出経路を複数の区間に分け、区間どうしの接続部でスライド部材40をスライドさせることで、区間に応じてトレイ60の搬入搬出速度を切り換え可能に構成したものである。
【0026】
そのため、トレイ60のカム70は、図7に示すように、搬入位置でトレイ60の搬入搬出方向と直交するカム部71と、カム部71に続く傾斜した切り換え部72と、切り換え部72に続く搬入位置付近に配置された、トレイ60の搬入搬出方向に沿ったカム部73と、搬出位置付近に配置された、カム部73の延長線上に位置するカム部77と、カム部73,77と平行に延びるカム部75と、カム部73とカム部75を結ぶ傾斜した接続部74と、カム部75とカム部77を結ぶ傾斜した接続部76と、搬出位置でカム部75の延長線上に位置するカム部79と、カム部77とカム部79を結ぶ傾斜した接続部78とを備えている。
【0027】
すなわち、カム部71は、トレイ60の搬入位置に相当し、切り換え部72は、トレイ60の搬入位置直前の区間に相当し、カム部73は、トレイ60の搬入位置付近の区間に相当し、カム部77は、トレイ60の搬出位置付近の区間に相当し、カム部75は、トレイ60のそれ以外の区間に相当する。また、カム部79は、トレイ60の搬入時に駆動手段30を起動するためトレイ60を手で押す区間である。
【0028】
また、装置本体20には、図4、図6、図7に示すように、スライド部材40のピン41が、上記したように、トレイ駆動ギヤ33とスライド駆動ギヤ34とで駆動の切り換えが行われる切り換え部72に位置するとき、スライド部材40に形成した凸部45によりこの位置の前後でオン、オフを切り換えられることで、スライド部材40がこの位置(第1の位置)にあることを検出する第1の検出スイッチ35を設けてある。
【0029】
すなわち、第1の検出スイッチ35は、スライド部材40の凸部45によりオフからオンへ切り換えられることで、トレイ60が第1の位置を通過して搬入位置まで搬入され終わることを検出することができる。
【0030】
また、第1の検出スイッチ35は、スライド部材40の凸部45によりオンからオフへ切り換えられることで、トレイ60が第1の位置を通過して搬入位置から搬出され始めたことを検出することができる。
【0031】
また、装置本体20には、スライド部材40のピン41が、カム部73とカム部77に位置するとき、スライド部材40に形成した穴46から外れてオンされることで、スライド部材40がこの位置(第2の位置)にあることを検出し、かつ、スライド部材40のピン41が、カム部75とカム部79に位置するとき、スライド部材40に形成した穴46によりオフされることで、スライド部材40がこの位置(第3の位置)にあることを検出する第2の検出スイッチ36を設けてある。
【0032】
すなわち、第2の検出スイッチ36は、スライド部材40の穴46によりオフからオンに切り換えられることで、スライド部材40が第2の位置(カム部73またはカム部77)にあり、トレイ60が搬入位置付近の区間または搬出位置付近の区間にあることを検出することができる。
【0033】
また、第2の検出スイッチ36は、スライド部材40の穴46によりオンからオフに切り換えられることで、スライド部材40が第3の位置(カム部75またはカム部79)にあり、トレイ60がそれ以外の区間または手押し区間にあることを検出することができる。
【0034】
図7〜図11は、トレイ60の搬入搬出動作中におけるトレイ60とスライド部材40と検出スイッチ35,36との関係を示す。トレイ60はカム70のみを示してあり、図7〜図11を用いてトレイ60の搬入動作時の位置(区間)検出について説明する。
【0035】
図7は、トレイ60が搬出位置にある状態を示し、スライド部材40は、トレイ60のカム部79により第3の位置に規制されている。
【0036】
このとき、第1の検出スイッチ35および第2の検出スイッチ36はいずれもオフの状態にあり、これにより、第2の検出スイッチ36は、スライド部材40が第3の位置(カム部79)にあり、トレイ60が手押し区間にあることを検出している。
【0037】
図8は、トレイ60が搬入のため手で押されたことを検出する位置にある状態を示す。トレイ60が搬出位置から手で押されて図8に示す位置に移動すると、スライド部材40は、トレイ60の接続部78により第2の位置へ移動し、カム部77によりこの位置(第2の位置)に規制される。
【0038】
このとき、第1の検出スイッチ35はオフのままである。一方、第2の検出スイッチ36は、スライド部材40と当接してオンに切り換わることで、スライド部材40が第2の位置(カム部77)になり、トレイ60が搬出位置付近の区間になったことを検出する。
【0039】
これにより、駆動手段30のローディングモータ31が起動し、トレイ駆動ギヤ33を介してトレイ60の搬入を開始する。
【0040】
しかも、第2の検出スイッチ36がオン状態にあるこの区間(搬出位置付近の区間)では、ローディングモータ31を低速駆動してトレイ60の搬入搬出速度を低速に保つことにより、トレイ60は低速で搬入方向へ移動する。
【0041】
この区間の低速移動により、トレイ60の搬入搬出動作を、滑らかで見た目を良くすることができ、騒音を低減することができ、品位を高めることができる。
【0042】
図9は、トレイ60が搬出位置付近の区間を越えて搬出方向へ移動した位置にある状態を示す。トレイ60がこの位置に移動すると、スライド部材40は、トレイ60の接続部76により第3の位置へ移動し、カム部75によりこの位置(第3の位置)に規制される。
【0043】
このとき、第1の検出スイッチ35はオフのままである。一方、第2の検出スイッチ36は、スライド部材40の穴46によりオフに切り換わることで、スライド部材40が第3の位置(カム部75)になり、トレイ60がそれ以外の区間になったことを検出する。
【0044】
第2の検出スイッチ36がオフ状態にあるこの区間(それ以外の区間)では、ローディングモータ31を高速駆動してトレイ60の搬入搬出速度を高速に保つことにより、トレイ60は高速で搬入方向へ移動する。
【0045】
この区間の高速移動により、トレイ60の搬入搬出時間を全体として短くすることができる。
【0046】
図10は、トレイ60が搬入位置から所定距離手前の搬入位置付近の区間へ移動した位置にある状態を示す。トレイ60がこの位置に移動すると、スライド部材40は、トレイ60の接続部74により第2の位置へ移動し、カム部73によりこの位置(第2の位置)に規制される。
【0047】
このとき、第1の検出スイッチ35はオフのままである。一方、第2の検出スイッチ36は、スライド部材40と当接してオンに切り換わることで、スライド部材40が第2の位置(カム部73)になり、トレイ60が搬入位置付近の区間になったことを検出する。
【0048】
第2の検出スイッチ36がオン状態にあるこの区間(搬入位置付近の区間)では、ローディングモータ31を低速駆動してトレイ60の搬入搬出速度を低速に保つことにより、トレイ60は低速で搬入方向へ移動する。
【0049】
この区間の低速移動により、トレイ60の搬入搬出動作を、滑らかで見た目を良くすることができ、騒音を低減することができ、品位を高めることができる。
【0050】
図11は、トレイ60が搬入位置直前の区間を搬入位置へ向けて移動する位置にある状態を示す。トレイ60がこの位置に移動すると、スライド部材40は、トレイ60の切り換え部72により第1の位置へ移動する。
【0051】
このとき、第2の検出スイッチ36はオンのままである。一方、第1の検出スイッチ35は、スライド部材40と当接してオンに切り換わることで、スライド部材40が第1の位置になり、トレイ60が搬入位置直前の区間になったことを検出する。
【0052】
これにより、図4、図5に示すように、スライド部材40のラック42が、駆動手段30のスライド駆動ギヤ34と噛み合うようになるとともに、トレイ60のラック63はトレイ駆動ギヤ33から離脱し、駆動の切り換えが行われる。
【0053】
そして、トレイ60は、スライド駆動ギヤ34により図4の矢印A方向へさらにスライド駆動されるスライド部材40のピン41によって駆動され、搬入位置でトレイ60の搬入搬出方向と直交するカム部71により位置決めされる。
【0054】
以上のようにして、トレイ60の搬入動作時の位置(区間)検出を行う。また、トレイ60の搬出動作時には、上記と逆の動作によりトレイ60の位置(区間)検出が行われる。
【0055】
図12は、第1の検出スイッチ35および第2の検出スイッチ36の動作モードを示す。図12に示すように、第1の検出スイッチ35によって、スライド部材40が第1の位置を通過したか否か、すなわち、トレイ60が搬入位置にあるか否かを検出することができる。
【0056】
また、第2の検出スイッチ36によって、トレイ60が搬入位置にある状態から、スライド部材40が第2の位置、第3の位置を交互に切り換わる変化をカウントすることにより、トレイ60の搬入搬出速度を変化させる位置(トレイ60の搬入搬出経路の区間)を複数箇所検出することができる。
【0057】
第1の検出スイッチ35は、トレイ60の絶対位置を検出している。これに対し、第2の検出スイッチ36は、トレイ60の相対位置を検出している。
【0058】
すなわち、第2の検出スイッチ36は、オフの状態にあるとき、スライド部材40が第3の位置にあることは検出できるが、それがカム部75、カム部79のどちらであるかは検出できず、トレイ60がそれ以外の区間にあるのか、手押し区間にあるのかを判別できない。
【0059】
また、オンの状態にあるときも、第2の検出スイッチ36は、スライド部材40が第2の位置にあることは検出できるが、それがカム部73、カム部77のどちらであるかは検出できず、トレイ60が搬入位置付近の区間にあるのか、搬出位置付近の区間にあるのかを判別できない。
【0060】
したがって、トレイ60の搬入搬出動作中に電源が切られた場合は、第2の検出スイッチ36ではトレイ60の位置がどこにあるのか判断できないため、駆動手段30によりトレイ60を一旦搬入位置まで戻し、第1の検出スイッチ35によりトレイ60が搬入位置にあることを検出(絶対位置を検出)したのち、トレイ60の搬入搬出動作を再開する。
【0061】
また、このディスク装置10は、トレイ60の搬入動作時に、スライド部材40のラック42が駆動手段30のスライド駆動ギヤ34と噛み合って、スライド部材40が図4の矢印A方向へさらに駆動されるとき、トラバースベース50を上昇駆動する。
【0062】
図13は、トラバースベースが下方へ傾斜した待避位置にある状態を示し、図14は、トラバースベースが上昇してディスク装着位置にある状態を示す。
【0063】
図13、図14に示すように、トラバースベース50は4個のダンパー部材55を備え、後方の2個のダンパー部材55aが装置本体20に支持されて、このダンパー部材55aが変形することにより、トラバースベース50は、前方部分が片持ち式に上下に昇降可能に装置本体20に保持されている。
【0064】
前方の2個のダンパー部材55bは、トラバースベース50の前方部分を上下に駆動するトラバースアーム56に支持されている。トラバースアーム56には、スライド部材40に形成したカム43a,43bと係合するピン(突起)57a,57bが設けてある。
【0065】
トレイ60が搬入され、スライド部材40がスライド駆動ギヤ34により図13、図14の矢印A方向へ駆動されると、トラバースアーム56は、ピン57a,57bがカム43a,43bに沿って上昇することで、図14の矢印B方向へ上昇駆動される。
【0066】
トラバースアーム56が矢印B方向へ駆動されると、トラバースベース50も連動して矢印B方向へ上昇駆動され、トラバースベース50に固定されたスピンドルモータ51にディスク(光ディスク)がクランパ(図示せず)によりクランプされる。
【0067】
ディスク(光ディスク)の搬出動作時には、上記の動作とは逆の動作が行われ、トラバースベース50が下方向に駆動され、ディスク(光ディスク)はクランパから外れ、トレイ60に載置された状態となり、その後トレイ60により搬出される。
【0068】
このように、このディスク装置10では、トレイ60の位置(区間)を検出する機構の一部であるスライド部材40を、トラバースベース50の昇降機構と兼ねており、検出手段としての部品点数の増加を最小限に抑えることができる。
【0069】
これにより、トレイの速度制御を行うために例えばエンコーダを使用する場合に比べて、部品点数が少なく、コストを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明によるローディング機構を備えたディスク装置の一実施形態について説明のためトレイを搬出位置からさらに搬出方向へ取り外して示す斜視図である。
【図2】図1の底面側から見た斜視図である。
【図3】トレイが搬入位置にある状態を示す斜視図である。
【図4】図1の要部を拡大して示す斜視図である。
【図5】トレイおよびスライド部材を底面側から見た斜視図である。
【図6】トレイおよびスライド部材を背面側から見た斜視図である。
【図7】トレイが搬出位置にあるときのカム、スライド部材、検出スイッチの関係を示す平面図である。
【図8】トレイが搬出位置付近の低速区間にあるときのカム、スライド部材、検出スイッチの関係を示す平面図である。
【図9】トレイが高速区間にあるときのカム、スライド部材、検出スイッチの関係を示す平面図である。
【図10】トレイが搬入位置付近の低速区間にあるときのカム、スライド部材、検出スイッチの関係を示す平面図である。
【図11】トレイが搬入位置直前の切換位置(区間)にあるときのカム、スライド部材、検出スイッチの関係を示す平面図である。
【図12】トレイの搬入搬出経路中の第1、第2の検出スイッチの動作モードを示す図である。
【図13】トラバースベースが下方へ傾斜した待避位置にある状態を示す斜視図である。
【図14】トラバースベースがディスク装着位置にある状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
10 ディスク装置
20 装置本体
21 軸受け
22 ガイド部
22a ガイド突条
22b ガイド爪
30 駆動手段
31 ローディングモータ
32 減速機構
33 トレイ駆動ギヤ
34 スライド駆動ギヤ
35 第1の検出スイッチ
36 第2の検出スイッチ
40 スライド部材
41 ピン(係合部)
42 ラック
43a,43b カム
45 凸部
46 穴
50 トラバースベース
51 スピンドルモータ
52 ピックアップ
55(55a,55b) ダンパー部材
56 トラバースアーム
57a,57b ピン(突起)
60 トレイ
61 シャフト(軸部材)
62 左側縁部
63 ラック
70 カム
71,73,75,77,79 カム部
72 切り換え部
74,76,78 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を載置するトレイと、トレイを装置本体に搬入搬出させる駆動手段とを備えたディスク装置のローディング機構において、
装置本体に、前記トレイの搬入搬出方向と直交する方向にスライド可能で、かつ、係合部を備えたスライド部材と、当該スライド部材の位置を検出する検出手段とを設け、
前記トレイに、前記係合部と係合し、搬入搬出経路を複数の区間に分けて区間どうしの接続部で前記スライド部材を移動させるカムを設け、
トレイを搬入または搬出開始後、前記検出手段が前記スライド部材の前記移動を検出したとき、当該移動後の位置に相当するトレイの前記区間に応じて、前記駆動手段によるトレイの搬入搬出速度を切り換え可能に構成したことを特徴とするディスク装置のローディング機構。
【請求項2】
記録媒体を載置するトレイと、トレイを装置本体に搬入搬出させる駆動手段とを備えたディスク装置のローディング機構において、
装置本体に、前記トレイの搬入搬出方向と直交する方向にスライド可能で、かつ、係合部を備えたスライド部材と、当該スライド部材の位置を検出する第1,第2の検出手段とを設け、
前記トレイに、前記係合部と係合し、搬入搬出経路を搬入位置付近と搬出位置付近とそれ以外とに区間分けして、搬入位置付近および搬出位置付近の区間で前記スライド部材を第2の位置に規制し、また、それ以外の区間で前記スライド部材を第3の位置に規制し、さらに、搬入位置直前で前記スライド部材を第1の位置に移動させるカムを設け、
トレイを搬入または搬出開始後、前記スライド部材が前記第2の位置にあるとき、前記第2の検出手段がこれを検出して前記駆動手段によるトレイの搬入搬出速度を低速にし、また、前記スライド部材が前記第3の位置にあるとき、前記第2の検出手段がこれを検出して前記駆動手段によるトレイの搬入搬出速度を高速にするように構成したことを特徴とするディスク装置のローディング機構。
【請求項3】
前記記録媒体はディスク状記録媒体であり、
装置本体には、ディスクを装着し回転させるスピンドルモータとディスクに情報を記録または再生するピックアップとを保持するトラバースベースが、トレイに載置されたディスクにスピンドルモータを着脱するため昇降自在に設けられ、
前記トラバースベースに設けた突起と係合し、前記スライド部材がスライドすることで前記トラバースベースを昇降駆動するカムを前記スライド部材に設け、
前記スライド部材が前記第1の位置を移動して搬入位置に到達するとき、前記第1の検出手段がこれを検出して前記駆動手段による駆動をトレイの搬入から前記スライド部材のスライドに切り換え、駆動手段による当該スライド駆動により前記スライド部材が前記トラバースベースを上昇させてディスクにスピンドルモータを装着させることを特徴とする請求項2記載のディスク装置のローディング機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−42189(P2007−42189A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224111(P2005−224111)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】