ディスク装置及びディスク駆動方法
【課題】フレキシブル光ディスクなどの面ぶれの大きなディスクを使った場合における、面ぶれによるディスクやレンズなどの損傷を防止する。
【解決手段】ディスクを回転させていない状態では、光学ピックアップをディスクの表面から離して退避させる処理を行う。そして、ディスクを所定速度以上に回転駆動させた状態で、光学ピックアップをディスクの表面に近接させた上で、光学ピックアップ内のギャップ駆動系によりギャップ制御を開始させて、レーザ光の照射により記録又は再生を行う。
【解決手段】ディスクを回転させていない状態では、光学ピックアップをディスクの表面から離して退避させる処理を行う。そして、ディスクを所定速度以上に回転駆動させた状態で、光学ピックアップをディスクの表面に近接させた上で、光学ピックアップ内のギャップ駆動系によりギャップ制御を開始させて、レーザ光の照射により記録又は再生を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光を利用して記録や再生を行うディスク装置に適用して好適なディスク装置及びディスク駆動方法に関し、特に安定化板を設けてディスクの回転を安定化させるものに適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
信号の記録や再生を光学ピックアップにより行う光ディスクとして、厚さ0.1mmなどの非常に薄いフレキシブル光ディスクを使うことが、非特許文献1及び2などに提案されている。
この場合、フレキシブル光ディスクは厚さが薄く容易に撓む構成であるため、非特許文献1及び2に記載のように、比較的厚さのある安定化板を光ディスクに近接又は当接させて配置して、光ディスクの回転時の表面を、空気力学的に安定させるようにしてある。安定化板(スタビライザ)は光ディスクとともに回転させる場合と、回転させずに静止させる場合とのいずれの場合もある。
【0003】
安定化板を設けてフレキシブル光ディスクを回転駆動させることで、フレキシブル光ディスクであっても、回転時の低面ぶれを実現することができる。例えば厚さ約0.1mmの光ディスクを、10000rpmで回転させた場合、面ぶれ10μm以下を実現できる。この程度の面ぶれに抑えることができれば、フレキシブル光ディスクであっても、硬質の光ディスクの場合と同様に、安定して記録や再生を行うことが可能となる。
【0004】
図12は、この安定化板を設けることで、ディスクの回転が安定する原理を示した図である。図12(a)は、安定化板2に近接させてフレキシブル光ディスク1を配置した状態を示す。この図12(a)に示したままの状態では、フレキシブル光ディスク1自身が持つ可撓性のために、周辺部がたれた自重だれや、たわみに起因する面ぶれが発生して、そのままでは、ディスクへの正しい記録などが困難である。これに対して、安定化板2に近接させた状態で、フレキシブル光ディスク1を比較的高速で回転駆動させて、空気力学的に安定させることで、図12(b)に示すように、フレキシブル光ディスク1の面ぶれがなくなる。
【非特許文献1】JJAP Vol.46, No.6B, 2007, pp.3750-3754
【非特許文献2】Technical Digest of ISOM2006, We-H-02(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
安定化板を設けることで、光ディスクが高速で回転した状態では、空気力学的に安定して面ぶれを抑えることができ、フレキシブル光ディスクであっても良好に記録や再生が行える。ところが、空気力学的に安定していない状態では、フレキシブル光ディスクの場合、ディスクの自重による自重だれや、たわみに起因する面ぶれが、比較的多く発生してしまう問題がある。空気力学的に安定していない状態とは、フレキシブル光ディスクが回転していない状態か、或いは回転していても、空気力学的に安定した状態に達する前の低速での回転状態である。
例えば、一般的な厚さである厚さ1.2mmの硬質な光ディスクの面ぶれは、最大でも数100μm程度である。これに対して、厚さ0.3mmのフレキシブル光ディスクを使用した場合、低速で回転した状態では、面ぶれが最大で3mm程度も発生することが測定された。
【0006】
この3mm程度の面ぶれが発生してしまうと、フレキシブル光ディスクに対して記録や再生を行うための光学ピックアップの先端がディスク表面と衝突する可能性が高くなり、好ましくない。光学ピックアップの先端がディスク表面と衝突すると、ディスク表面に傷を付ける可能性があると共に、光学ピックアップに取付けられたレンズ部品などについても損傷させてしまう可能性がある。
【0007】
特に、近年、対物レンズとして開口数が1.8〜2.3程度と高いSIL(solid immersion lens)を用いた構成して、レーザ光を当てたSILの底面から漏れ出る近接場光(エバネッセント波)を記録再生に利用するものが開発されている。これは、近接場光(ニア・フィールド光)記録と称されるものである。即ち、記録や再生時に、レンズ(SIL)を光ディスクの表面に非常に近接させて、その近接状態のギャップを一定に維持するギャップ制御を行う必要がある。
【0008】
図13は、近接場光記録を行う場合のディスク装置の光学ピックアップの構成例を示した図である。
図13の構成の場合、光ディスク1は、ディスクチャッキング部3により保持された状態で、スピンドルモータ4により回転駆動される。図13の構成では、安定化板は省略してある。
光ディスク1に対して記録や再生を行う光学ピックアップ100は、集光光学系110に非球面レンズ等よりなる対物レンズである光学レンズ111と、半球状又は超半球状のソリッドイマージョンレンズ(SIL)112を有する。図13においては超半球状のSILを示すが半球状のSILでもよい。
【0009】
この光学ピックアップ100は、パワー制御部101と、レーザーダイオード等の光源102と、コリメートレンズ103と、ビームスプリッタ104及び105と、λ/4波長板106とを備える。そして、λ/4波長板106の出力レーザ光を集光光学系110に供給する。λ/4波長板106があることで、光源102からの直線偏光のレーザ光が円偏光となり、その円偏光のレーザ光が光学レンズ111及びSIL112を介して光ディスク1に照射される。
光ディスク1で反射したレーザ光は、再びλ/4波長板106を通過することで、直線偏光となる。ビームスプリッタ105では、その直線偏光の戻り光と直交する成分の光を分岐させる。ビームスプリッタ104では、その直線偏光の戻り光と平行する成分の光を分岐させる。
【0010】
ビームスプリッタ105の分岐光路上には、集光レンズ107と、フォトダイオード等の光検出部108とを配置してあり、光検出部108で戻り光と直交する成分からRF(高周波)信号SRFを得る。
ビームスプリッタ104の分岐光路上には、集光レンズ109と、フォトダイオード等の光検出部121とを配置してあり、光検出部121で戻り光と平行する成分の光から全反射戻り光量などの信号を得る。光検出部121で得た全反射戻り光量は、制御部122に供給して、集光光学系110を駆動する駆動部113を制御する信号を生成する。集光光学系110の駆動部113を制御する制御信号として、ギャップエラー信号SGを生成する。
【0011】
パワー制御部101は例えば記録の際に、図示しない情報記憶部からの記録情報に対応して光源102の出力を制御する。再生時はパワー制御部101からの出力制御を省略して、光源102の出力を一定としてもよい。集光光学系110により光ディスク1の情報が記録される記録面に近接場光として照射される。
【0012】
光検出部121の出力が供給される制御部122は、フィードフォワードにより生成されたギャップ制御信号SGや、チルト制御信号STを生成させて、駆動部113に出力させる。駆動部113は例えばボイスコイルモーターを含む2軸アクチュエータや3軸アクチュエータ等より構成される。なお、ギャップ制御用の駆動部と、チルト制御用の駆動部とを別々に設け、各駆動部に制御信号をそれぞれ入力する構成としてもよい。なお、図13に示す構成の他に、収差補正用等の種々の光学素子を付加的に配置することある。
【0013】
この図13に示す構成にて近接場光記録を行う場合には、光ディスク1とSIL112との距離であるギャップの目標値を例えば数百nmから数十nm程度のニアフィールド領域として、その距離で近接場光を発生させる。ニアフィールド領域でのギャップ長の目標値は、例えば20nmである。
ギャップが入射光波長λの略1/4以下となって近接場光が生じる距離以上であるファーフィールド領域では、SIL112の端面で全反射する角度で入射した光は、この端面で全反射されることにより、光検出部121での全反射戻り光量は常に一定となる。
【0014】
この図13に示した如き、近接場光記録用の構成とした場合、上述したように3mmのような大きな面ぶれは、ディスクやレンズなどの損傷を防ぐ点から好ましくない問題があった。即ち、ギャップを数百nmから数十nm程度のニアフィールド領域とした場合、ディスクがSILと接触してしまい、損傷してしまう可能性が高い。
【0015】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、フレキシブル光ディスクの如き面ぶれの大きなディスクを使った場合における、面ぶれによるディスクやレンズなどの損傷を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、装着されたディスクに安定化板を近接又は当接させた状態で、ディスクを回転駆動させるものに適用される。
ディスクを回転させていない状態では、光学ピックアップをディスクの表面から離して退避させる処理を行う。そして、ディスクを所定速度以上に回転駆動させた状態で、光学ピックアップをディスクの表面に近接させた上で、光学ピックアップ内のギャップ駆動系によりギャップ制御を開始させて、レーザ光の照射により記録又は再生を行う。
【0017】
本発明によると、ディスクを回転させていない状態では、光学ピックアップをディスクの表面から離して退避される。従って、その状態でディスクに面ぶれが発生しても、待避しているために、ディスク表面と光学ピックアップとが接触することがなくなる。そして、安定化板の作用で、回転してディスクが安定して面ぶれがなくなった状態で、光学ピックアップをディスクの表面に近接させることで、ディスクの信号記録面に良好にギャップサーボをかけて、記録や再生を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、安定化板を設けてディスク回転時の面ぶれを防止した場合に、低速回転時や回転停止時などの面ぶれが大きい状態における、ディスク表面と光学ピックアップとの接触事故を防止することができる。従って、ディスクやレンズなどの損傷を効果的に防止することが可能となり、フレキシブル光ディスクなどの面ぶれが大きいディスクを使っても、記録や再生が良好に行える効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下の順序で、本発明の実施の形態について説明する。
1.第1の実施の形態の構成:図1〜図2
2.第1の実施の形態による動作:図3〜図8
3.第1の実施の形態による効果
4.第2の実施の形態の構成:図9
5.第3の実施の形態による動作及び効果:図10〜図11
6.第1の実施の形態による効果
7.実施の形態の変形例
【0020】
[1.第1の実施の形態の構成]
以下、本発明の第1の実施の形態を、図1〜図8を参照して説明する。
本実施の形態においては、近接場光(ニア・フィールド光)記録を行う光ディスクの記録又は再生を行う装置(記録/再生装置)に適用したものである。以下の説明では、ディスクの記録や再生を行う装置を、単にディスク装置と称する。
記録や再生を行う光ディスクは、例えば0.1mm程度の厚さで、直径10数センチ程度の樹脂シートで構成された、可撓性を有するフレキシブル光ディスクとしてある。
ディスク装置については、既に説明した安定化板を設けて、回転駆動時に、空気力学的に安定して面ぶれを抑える構成としてある。なお、以下に示す各図の例では、安定化板の下側に光ディスクを配置した例としてあるが、後述する変形例でも述べるように、安定化板の上側に光ディスクを配置した構成で、各実施の形態の処理を適用してもよい。
【0021】
図1は、本実施の形態の例のディスク装置10の構成例を示した図である。
図1に従って説明すると、ディスク装置10は、スピンドルモータ11の回転軸に連結されたディスクチャッキング部12を備え、そのディスクチャッキング部12により、フレキシブル光ディスク14を保持させる構成としてある。保持されたフレキシブル光ディスク14は、安定化板13と近接又は接触した状態で、スピンドルモータ11により回転駆動される。フレキシブル光ディスク14は、3000rpm以上の非常に高速で回転駆動され、その3000rpm以上の高速回転を行うことで、空気力学的に安定して面ぶれが抑制されるものである。
【0022】
安定化板13はフレキシブル光ディスク14と一体に回転する場合と、回転せずに静止している場合のいずれでもよい。但し、3000rpm以上の高速回転であるため、安定化板13は回転させない構成とする方が、構成が簡単である。安定化板13とフレキシブル光ディスク14との間は、わずかな隙間で近接するように配置する。安定化板13とフレキシブル光ディスク14との間の距離は、例えば約100μm程度とする。
【0023】
ディスクチャッキング部12で保持されたフレキシブル光ディスク14は、下側に配置した光学ピックアップ20から照射されるレーザ光により、記録や再生が行われる。その際には、本実施の形態においては、既に説明した近接場光が利用される構成としてある。このため、光学ピックアップ20の内部構成としては、例えば既に説明した図13の構成が適用され、レンズとして図13に示したソリッドイマージョンレンズ(SIL)112を備える。
【0024】
この光学ピックアップ20は、ピックアップ待避機構部30でピックアップ全体を上下方向に移動可能に保持してある。この上下方向の移動は、ディスクの回転停止と回転開始後の安定状態への移行とに連動して行われる。具体的な上下方向の移動処理状態については後述する。
【0025】
ピックアップ待避機構部30に保持された光学ピックアップ20は、スレッド送り部15により、ディスク14の半径方向に移動可能としてある。このスレッド送り部15は、ディスク上の記録や再生を行うトラック位置に応じて、光学ピックアップ20を移動させる。スレッド送り部15は、例えば図示しないリニアモータなどによる駆動で、光学ピックアップ20を平行移動させる。
【0026】
図2は、光学ピックアップ20とピックアップ待避機構部30との構成の詳細を示した図である。
図2に示すように、光学ピックアップ20は、ギャップ調整を行うレンズ21を備えて、そのレンズ21が駆動コイル22により上下方向(ギャップ調整方向)に駆動される構成としてある。レンズ21は、近接場光記録を行う場合、図13bに示したSILを備える。レンズ21の調整により、レーザ発光/受光部23からのレーザ光が、ギャップ調整されてフレキシブル光ディスク14の信号記録面に照射され、その戻り光が光学ピックアップ20内で検出される。この駆動コイル22によるギャップ調整用の調整範囲としては、例えばディスク表面から300μmから25nm程度の距離まで調整可能としてある。
【0027】
ピックアップ待避機構部30は、駆動コイル31により光学ピックアップ20全体を、上下方向に駆動させることができる構成としてある。
このピックアップ待避機構部30による調整範囲としては、例えば最大でディスク表面から5mmまで離すことができ、光学ピックアップ20でギャップ調整を開始させる際には、ディスク表面から300μmまで近接させることができる構成としてある。以下の説明では、ディスク表面から約5mmまで離れた位置を待避位置とし、ディスク表面から300μmまで近接させた位置を、ギャップサーボ開始位置とする。
【0028】
なお、図1や図2の構成では、光学ピックアップ20に関係した機構だけを示したが、光学ピックアップ20やピックアップ待避機構部30は、図示しない制御部による制御で、位置が制御される構成としてある。制御部については、例えば演算処理機能を持つマイクロコンピュータなどで構成される。
【0029】
[2.第1の実施の形態による動作]
図3及び図4は、本実施の形態による、フレキシブル光ディスクの記録又は再生を行う際の処理例を示したフローチャートである。
まず、図3を参照して、回転を開始させる場合の処理について説明する。
この場合には、記録又は再生を行うために、フレキシブル光ディスク14が静止した状態から、スピンドルモータ11により回転を開始させる(ステップS11)。なお、ディスクが静止した状態では、ピックアップ待避機構部30は光学ピックアップ20を待避位置とする。また、この待避位置とした際には、スレッド送り部15で光学ピックアップ20を最内周寄りの位置に移動させておく。
この状態で、フレキシブル光ディスク14の回転速度が、予め決められた所定回転速度αを越えたか否か判断する(ステップS12)。この回転速度αとしては、例えば、空気力学的に安定して面ぶれが抑制される、3000rpmとする。
【0030】
ここで、回転速度αが越えない場合には、回転速度αを越えるまで待機する。そして、越えることが検出された場合に、ピックアップ待避機構部30により、光学ピックアップ20をギャップサーボ開始位置まで移動させる(ステップS13)。このギャップサーボ開始位置まで移動させることで、レンズアクチュエータが、ギャップサーボで引き込みを行うことが可能な状態となる。この状態で、ギャップサーボを開始させて(ステップS14)、例えばディスク表面から25nm程度の距離で信号記録面にギャップを合わせるサーボ制御が行われる。
以後は、その状態でギャップサーボが継続して行われ、記録又は再生が継続して行われる。
【0031】
次に、ディスクの記録又は再生を停止させて、フレキシブル光ディスク14の回転を停止させる際の処理例を、図4のフローチャートを参照して説明する。
まず、この停止時にはギャップサーボを停止させる(ステップS21)。このときには、例えば光学ピックアップ20内のレンズ21を、駆動コイル22で最も下側のギャップ調整位置としてもよい。
【0032】
そして、ピックアップ待避機構部30により、光学ピックアップ20をギャップ引き込み範囲外まで移動させ、待避位置とする(ステップS22)。このとき、光学ピックアップ20を最内周位置まで移動させてもよい。待避位置となってから、ディスクの回転駆動を停止させる(ステップS23)。
【0033】
図5は、この図3のフローチャートの処理により、光学ピックアップ20が移動する状態の概要を示した図である。
まず、図5(a)に示すように、初期状態では、光学ピックアップ20は待避位置にあり、ディスク表面から光学ピックアップ20の先端のレンズ(SIL)までの距離L1として、5mm程度とする。また、このときには、ディスクの最内周寄りとするのが好ましい。
【0034】
この図5(a)の状態では、例えばディスク14の周辺部が垂れ下がる面だれが発生した破線の状態のディスク14′となることがある。このような破線の状態のディスク14′であっても、その面ぶれ量が距離L1未満である限り、ディスク表面と光学ピックアップ20の先端とが接触することはない。
【0035】
そして、ディスク14を高速で回転駆動させて、図5(b)に示すように、安定化板13による作用で、ディスク14の面ぶれが抑制される状態となると、ピックアップ待避機構部30によりギャップサーボ可能位置まで光学ピックアップ20が移動する。この場合の、ディスク表面から光学ピックアップ20の先端のレンズまでの距離L2は、300μm以下である。
【0036】
さらに、ギャップサーボが開始されることで、図5(c)に示すように、ディスク表面から光学ピックアップ20の先端のレンズまでの距離L3が、25nm程度の距離となり、近接場光を利用した記録や再生が行われる。
【0037】
図6は、本実施の形態の制御処理を、ディスク回転数と光学ピックアップのレンズとディスク表面との距離(レンズ位置)との関係で示した図である。
まず、ディスク回転数が0であるときは、レンズ位置(ギャップ)が5mmであり、その状態でディスク回転数が閾値αを越えることで、レンズ位置300μmとするフィードフォワード制御状態Aとなる。閾値αの回転数としては、例えば3000rpm程度とする。
その後、さらにディスク回転数が、記録又は再生が可能な回転数βまでサーボ状態としてはそのまま保持Bされる。該当する回転数βまで上昇すると、ニアフィールド引き込み動作Cが行われて、25nm程度のレンズ位置となり、そのレンズ位置を保つギャップ制御Dが行われる。回転数βとしては、例えば10000rpm程度とする。
【0038】
図7は、光学ピックアップ20内で検出される、ディスクからの全反射戻り光の光量と、レンズアクチュエータ(図2での駆動コイル22に相当)にかかる電圧との関係を示した図である。
ギャップ制御が開始される前は、全反射戻り光の光量がファーフィールドレベルであり、その後、ニアフィールド引き込み動作Cが開始されて、さらにギャップ制御Dが行われることで、ギャップ目標値の全反射戻り光の光量が得られる。この状態となって、記録や再生が可能となる。
【0039】
図7に示すように、ニアフィールド引き込み動作Cの状態では、レンズアクチュエータにかかる電圧(駆動電圧)が大きく変化して、ギャップが対応して狭くなるが、全反射戻り光量は変化せず、ファーフィールド領域のままである。即ち、図6に示したギャップ300μm図7では、ファーフィールド領域での全反射戻り光量レベルを1として示してある。
そして、ギャップ制御Dが行われる状態になると、レンズアクチュエータの駆動電圧はほぼ一定状態となって、ギャップが一定となるように制御される。このギャップ制御Dが行われる状態になると、全反射戻り光量はファーフィールド領域でのレベル1から、ニアフィールド領域に入ったことが検出されるレベル0.8以下となり、さらに、ギャップ目標値のレベル0.4まで低下する。このレベル0.8や0.4の値(比率)は一例である。ニアフィールド領域に入るレベル0.8は、例えばギャップ長70nm程度である。ギャップ目標値のレベル0.4では、ギャップ長25nm程度となる。
【0040】
図8は、本実施の形態の処理を行うことで、ディスクの表面にレンズなどが衝突することを防止できることを観察した特性の例である。図8(a)の特性は、ディスク回転速度が1200rpmで、ギャップサーボ制御を開始させた場合の波形図である。この例では、周期的に大きな面ぶれが発生した状態となっており、その大きな面ぶれが発生したときに、レンズがディスク表面と衝突してしまう。
これに対して、図8(b)の特性は、ディスク回転速度が3000rpmで、ギャップサーボ制御を開始させた場合の波形図である。この例では、面ぶれが小さく抑制されており、ギャップサーボを開始させて、25nm程度のレンズ位置としても、レンズがディスク表面と衝突することはない。
【0041】
[3.第1の実施の形態による効果]
ここまでの説明から判るように、本実施の形態によると、フレキシブル光ディスクを使った場合であっても、面ぶれによるディスクとレンズとの接触を良好に防止することができ、ディスクの損傷やレンズの損傷を効果的に防止できる。即ち、ディスクに面ぶれが発生する低速回転状態では、光学ピックアップがディスク表面から離れるように待避するので、原理的に接触が発生することがなく、良好な記録や再生が行える。
【0042】
[4.第2の実施の形態の構成]
次に、本発明の第2の実施の形態を、図9〜図10を参照して説明する。
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、近接場光(ニア・フィールド光)記録を行う光ディスクの記録又は再生を行うディスク装置(ディスク記録/再生装置)に適用したものである。
【0043】
記録や再生を行う光ディスクは、例えば0.1mm程度の厚さで、直径10数センチ程度の樹脂シートで構成された、可撓性を有するフレキシブル光ディスクとしてある。
ディスク装置については、既に説明した安定化板を設けて、回転駆動時に、空気力学的に安定して面ぶれを抑える構成としてある。
【0044】
図9は、本実施の形態の例のディスク装置50の構成例を示した図である。図9(a)は待機時(初期時)の位置を示し、図9(b)はディスク回転時の状態を示す。
図9に従って説明すると、ディスク装置50は、スピンドルモータ51の回転軸に連結されたディスクチャッキング部52を備え、そのディスクチャッキング部52により、フレキシブル光ディスク54を保持させる構成としてある。保持されたフレキシブル光ディスク54は、安定化板53と近接又は接触した状態で、スピンドルモータ51により回転駆動される。フレキシブル光ディスク54は、3000rpm以上の非常に高速で回転駆動され、その3000rpm以上の高速回転を行うことで、空気力学的に安定して面ぶれが抑制されるものである。
安定化板53はフレキシブル光ディスク54と一体に回転する場合と、回転せずに静止している場合のいずれでもよい。
【0045】
ディスクチャッキング部52で保持されたフレキシブル光ディスク54は、下側に配置した光学ピックアップ60から照射されるレーザ光により、記録や再生が行われる。その際には、既に説明した近接場光についても利用される構成としてあり、光学ピックアップ60の内部構成としては、例えば既に説明した図13の構成が適用され、レンズとしてSILを備える。
【0046】
この光学ピックアップ60は、スレッド送り部55により、ディスク54の半径方向に移動可能としてある。このスレッド送り部55は、ディスク上の記録や再生を行うトラック位置に応じて光学ピックアップ60を移動させる。スレッド送り部55は、例えば図示しないリニアモータなどによる駆動で、光学ピックアップ60を平行移動させる。
【0047】
ここで、本実施の形態においては、そのスレッド送り部55により光学ピックアップ60を移動可能な範囲として、ディスクの最外周よりも更に外側の位置(外周待避位置55a)まで移動できる構成としてある。この外周待避位置55aまで光学ピックアップ60を移動させた状態では、装着されたディスク54にどのような面ぶれが発生しても、光学ピックアップ60のレンズと振れることはない。
【0048】
図9(a)に示されるように、本実施の形態においては、ディスクの回転が停止した状態においては、光学ピックアップ60を外周待避位置55aまで移動させる。そして、ディスク54の回転速度が閾値を越えたとき、外周待避位置55aから内周寄りに移動させて、記録や再生を行うディスクの半径方向の所定トラック位置とする。なお、光学ピックアップ60内のレンズ駆動部は、例えばディスク表面からレンズまでの距離として、300μmから25nm程度の距離まで調整可能としてある。
【0049】
[5.第3の実施の形態による動作及び効果]
図10及び図11は、本実施の形態による、フレキシブル光ディスクの記録又は再生を行う際の処理例を示したフローチャートである。
【0050】
まず、回転を開始させる場合の処理を、図10を参照して説明する。この場合には、最初に、記録又は再生を行うために、フレキシブル光ディスク14が静止した状態から、スピンドルモータ11により回転を開始させる(ステップS31)。この場合、ディスクが静止した状態では、光学ピックアップ20は外周待避位置55aとしてあり、そのままの状態で回転を開始させる。
この状態で、フレキシブル光ディスク14の回転速度が、予め決められた所定回転速度αを越えたか否か判断する(ステップS32)。この回転速度αとしては、例えば、空気力学的に安定して面ぶれが抑制される、3000rpmとする。
【0051】
ここで、回転速度αが越えない場合には、回転速度αを越えるまで待機する。そして、越えることが検出された場合に、スレッド送り部55により所望のトラック位置とし、光学ピックアップ60を引き込み可能位置まで移動させる(ステップS33)。この状態で、ギャップサーボを開始させて(ステップS34)、例えばディスク表面から25nm程度の距離で信号記録面にギャップを合わせるサーボ制御が行われる。
以後は、その状態でギャップサーボが継続して行われ、記録又は再生が継続して行われる。
【0052】
次に、ディスクの記録又は再生を停止させて、フレキシブル光ディスク14の回転を停止させる際の処理例を、図11のフローチャートを参照して説明する。
まず、この停止時にはギャップサーボを停止させる(ステップS41)。
そして、スレッド送り部55により、光学ピックアップ60を外周待避位置55aまで移動させる(ステップS42)。その外周待避位置55aとなってから、ディスクの回転駆動を停止させる(ステップS43)。
【0053】
[6.第3の実施の形態による効果]
このようにして、光学ピックアップの半径方向の移動で、外側に逃げる構成とすることによっても、第1の実施の形態の場合と同様に、安定していない状態での面ぶれによるディスクとレンズの接触を確実に阻止することができる。
【0054】
この図9の構成の場合には、元々ディスク装置が持つスレッド送り機構として、移動距離を若干長くすれば対処可能であり、比較的簡単な構成で対処可能である。但し、外周待避位置55aまで光学ピックアップを移動させるために、ディスク装置の形状が若干大きくなってしまう。
従って、適用するディスク装置の形状などに応じて、第1の実施の形態に示した構成を適用する場合と、第2の実施の形態に示した構成を適用する場合とを選択すればよい。
【0055】
[7.実施の形態の変形例]
上述した各実施の形態では、近接場光(ニア・フィールド光)記録を行う記録/再生装置に適用した例について説明したが、その他の記録構成の光ディスクの記録/再生装置に適用してもよい。また、使用するディスクについても、比較的面ぶれが大きい0.1mmなどの厚さの可撓性を有するフレキシブル光ディスクを使用した例について説明したが、他の構成の光ディスクを使ったディスク記録装置又はディスク再生装置でもよい。
【0056】
光ディスクに信号を記録させるフォーマットについても、上述した実施の形態では、具体的な構成について特に説明をしなかったが、どのようなフォーマットのものにも適用可能である。例えば上述したように近接場光記録を行う場合には、非常に高密度で記録が行われるフォーマットが適用可能である。
【0057】
また、上述した実施の形態で示したディスクの回転速度や、レンズとディスクとのギャップなどの値についても、好適な一例を示したものであり、これらの値に限定されるものではない。適用されるディスクのフォーマットや装置全体のシステム構成によって、これらの最適な値は、変化するものである。
【0058】
また、第1の実施の形態で光学ピックアップを2段階に移動させる構成として、図2に示したように、レンズをギャップ調整のために移動させるための駆動コイル22と、光学ピックアップ全体を移動させる駆動コイル31とを設ける構成とした。これに対して、1つの駆動機構で、同様の2段階の駆動量と駆動制御が可能であれば、1つの駆動機構による構成として、構成の簡易化を図るようにしてもよい。2つの機構で移動させる場合であっても、待避用の駆動機構として、図2の例のように光学ピックアップ全体を待避させるのではなく、レンズ部の近傍だけを2段階などに移動させる機構として構成としてもよい。
【0059】
また、第1の実施の形態において、ディスク待避時には、ディスクの最内周寄りに光学ピックアップを移動させるようにしたが、待避が十分な距離で行われる場合には、このような最内周寄りに移動させる処理は必要ない。
但し、最内周寄りに移動させる場合には、それだけディスクの外周よりが自重で下がる、いわゆる面だれの影響が少ないので、回転ぶれによる面ぶれの影響だけを考慮すればよく、待避時に、待避させる距離を、少なくすることが可能となる。
【0060】
また、上述した各実施の形態では、回転停止時の処理として、図4のフローチャートや図11のフローチャートに示したように、ギャップサーボを停止させてから、待避処理を行い、その後、ディスクの回転を停止させるようにした。これに対して、例えばディスク装置で記録や再生中に、何らかの要因で突然、ディスク装置の動作が停止した緊急時には、このフローチャートのような手順を行わずに、直ちに、待避位置に光学ピックアップを移動させるようにしてもよい。
このようにすることで、動作中の強制的な電源オフや停電などの異常時であっても、ディスクやレンズなどの損傷を効果的に確実に防止できるようになる。但し、この異常時の処理を行うためには、強制的な電源オフ時であっても、待避させるために必要な電力を蓄えておいて、その電力を使って待避動作を確実に行う必要がある。
【0061】
また、図1や図9に示したディスク装置の構成では、光ディスクの上側に安定化板を配置し、光ディスクの下側に配置した光学ピックアップで、記録や再生を行う構成とした。これに対して、安定化板の上側に光ディスクを装着して、その光ディスクの上側から光学ピックアップで記録や再生を行う構成に適用してもよい。この場合には、安定化板及び光ディスクの上側の十分な距離だけ、光学ピックアップを離して配置した状態で、光ディスクの回転を開始させる。そして、光ディスクを回転駆動させて安定化板がディスクに接近し、一定の回転速度を超えて空力安定後にレンズがディスク面上から接近させて、記録や再生を行う。
また、上述した実施の形態では、安定化板の大きさなどの詳細については説明しなかったが、空気力学的に安定化するものであれば、どのような形状やサイズであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるディスク装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態のディスク装置の要部の例を示したブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による回転開始時の処理例を示したフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施の形態による回転停止時の処理例を示したフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態による制御例を示した説明図であり、(a)は回転していない初期状態を示し、(b)は回転安定時を示し、(c)はギャップサーボを開始させた状態を示す。
【図6】本発明の第1の実施の形態によるディスク回転数と動作の関係を示す説明図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態による特性例を示す特性図である。
【図8】(a)は回転開始と同時にサーボを開始させた特性図であり、(b)は本発明の第1の実施の形態によるサーボ状態の例を示す特性図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態による構成例を示すブロック図であり、(a)は待避時を示し、(b)は安定化時を示す。
【図10】本発明の第2の実施の形態による回転開始時の処理例を示したフローチャートである。
【図11】本発明の第2の実施の形態による回転停止時の処理例を示したフローチャートである。
【図12】安定化板を使用してディスクの回転を安定化させる場合の例について示した説明図である。
【図13】近接場光記録用のピックアップを使ったディスク装置の構成例を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0063】
1…ディスク、2…安定化板、3…ディスクチャッキング部、4…スピンドルモータ、10…ディスク装置、11…スピンドルモータ、12…ディスクチャッキング部、13…安定化板、14…フレキシブル光ディスク、14′…面だれが発生したフレキシブル光ディスク、15…スレッド送り部、20…光学ピックアップ、21…レンズ、22…駆動コイル、23…レーザ発光/受光部、30…ピックアップ待避機構部、31…駆動コイル、50…ディスク装置、51…スピンドルモータ、52…ディスクチャッキング部、53…安定化板、54…フレキシブル光ディスク、55…スレッド送り部、55a…外周待避位置、60…光学ピックアップ、100…光学ピックアップ、101…パワー制御部、102…光源、103…コリメートレンズ、104,105…ビームスプリッタ、106…λ/4波長板、107,109…集光レンズ、108…光検出部、110…集光光学系、111…光学レンズ、112…ソリッドイマージョンレンズ(SIL)、121…光検出部、122…制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光を利用して記録や再生を行うディスク装置に適用して好適なディスク装置及びディスク駆動方法に関し、特に安定化板を設けてディスクの回転を安定化させるものに適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
信号の記録や再生を光学ピックアップにより行う光ディスクとして、厚さ0.1mmなどの非常に薄いフレキシブル光ディスクを使うことが、非特許文献1及び2などに提案されている。
この場合、フレキシブル光ディスクは厚さが薄く容易に撓む構成であるため、非特許文献1及び2に記載のように、比較的厚さのある安定化板を光ディスクに近接又は当接させて配置して、光ディスクの回転時の表面を、空気力学的に安定させるようにしてある。安定化板(スタビライザ)は光ディスクとともに回転させる場合と、回転させずに静止させる場合とのいずれの場合もある。
【0003】
安定化板を設けてフレキシブル光ディスクを回転駆動させることで、フレキシブル光ディスクであっても、回転時の低面ぶれを実現することができる。例えば厚さ約0.1mmの光ディスクを、10000rpmで回転させた場合、面ぶれ10μm以下を実現できる。この程度の面ぶれに抑えることができれば、フレキシブル光ディスクであっても、硬質の光ディスクの場合と同様に、安定して記録や再生を行うことが可能となる。
【0004】
図12は、この安定化板を設けることで、ディスクの回転が安定する原理を示した図である。図12(a)は、安定化板2に近接させてフレキシブル光ディスク1を配置した状態を示す。この図12(a)に示したままの状態では、フレキシブル光ディスク1自身が持つ可撓性のために、周辺部がたれた自重だれや、たわみに起因する面ぶれが発生して、そのままでは、ディスクへの正しい記録などが困難である。これに対して、安定化板2に近接させた状態で、フレキシブル光ディスク1を比較的高速で回転駆動させて、空気力学的に安定させることで、図12(b)に示すように、フレキシブル光ディスク1の面ぶれがなくなる。
【非特許文献1】JJAP Vol.46, No.6B, 2007, pp.3750-3754
【非特許文献2】Technical Digest of ISOM2006, We-H-02(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
安定化板を設けることで、光ディスクが高速で回転した状態では、空気力学的に安定して面ぶれを抑えることができ、フレキシブル光ディスクであっても良好に記録や再生が行える。ところが、空気力学的に安定していない状態では、フレキシブル光ディスクの場合、ディスクの自重による自重だれや、たわみに起因する面ぶれが、比較的多く発生してしまう問題がある。空気力学的に安定していない状態とは、フレキシブル光ディスクが回転していない状態か、或いは回転していても、空気力学的に安定した状態に達する前の低速での回転状態である。
例えば、一般的な厚さである厚さ1.2mmの硬質な光ディスクの面ぶれは、最大でも数100μm程度である。これに対して、厚さ0.3mmのフレキシブル光ディスクを使用した場合、低速で回転した状態では、面ぶれが最大で3mm程度も発生することが測定された。
【0006】
この3mm程度の面ぶれが発生してしまうと、フレキシブル光ディスクに対して記録や再生を行うための光学ピックアップの先端がディスク表面と衝突する可能性が高くなり、好ましくない。光学ピックアップの先端がディスク表面と衝突すると、ディスク表面に傷を付ける可能性があると共に、光学ピックアップに取付けられたレンズ部品などについても損傷させてしまう可能性がある。
【0007】
特に、近年、対物レンズとして開口数が1.8〜2.3程度と高いSIL(solid immersion lens)を用いた構成して、レーザ光を当てたSILの底面から漏れ出る近接場光(エバネッセント波)を記録再生に利用するものが開発されている。これは、近接場光(ニア・フィールド光)記録と称されるものである。即ち、記録や再生時に、レンズ(SIL)を光ディスクの表面に非常に近接させて、その近接状態のギャップを一定に維持するギャップ制御を行う必要がある。
【0008】
図13は、近接場光記録を行う場合のディスク装置の光学ピックアップの構成例を示した図である。
図13の構成の場合、光ディスク1は、ディスクチャッキング部3により保持された状態で、スピンドルモータ4により回転駆動される。図13の構成では、安定化板は省略してある。
光ディスク1に対して記録や再生を行う光学ピックアップ100は、集光光学系110に非球面レンズ等よりなる対物レンズである光学レンズ111と、半球状又は超半球状のソリッドイマージョンレンズ(SIL)112を有する。図13においては超半球状のSILを示すが半球状のSILでもよい。
【0009】
この光学ピックアップ100は、パワー制御部101と、レーザーダイオード等の光源102と、コリメートレンズ103と、ビームスプリッタ104及び105と、λ/4波長板106とを備える。そして、λ/4波長板106の出力レーザ光を集光光学系110に供給する。λ/4波長板106があることで、光源102からの直線偏光のレーザ光が円偏光となり、その円偏光のレーザ光が光学レンズ111及びSIL112を介して光ディスク1に照射される。
光ディスク1で反射したレーザ光は、再びλ/4波長板106を通過することで、直線偏光となる。ビームスプリッタ105では、その直線偏光の戻り光と直交する成分の光を分岐させる。ビームスプリッタ104では、その直線偏光の戻り光と平行する成分の光を分岐させる。
【0010】
ビームスプリッタ105の分岐光路上には、集光レンズ107と、フォトダイオード等の光検出部108とを配置してあり、光検出部108で戻り光と直交する成分からRF(高周波)信号SRFを得る。
ビームスプリッタ104の分岐光路上には、集光レンズ109と、フォトダイオード等の光検出部121とを配置してあり、光検出部121で戻り光と平行する成分の光から全反射戻り光量などの信号を得る。光検出部121で得た全反射戻り光量は、制御部122に供給して、集光光学系110を駆動する駆動部113を制御する信号を生成する。集光光学系110の駆動部113を制御する制御信号として、ギャップエラー信号SGを生成する。
【0011】
パワー制御部101は例えば記録の際に、図示しない情報記憶部からの記録情報に対応して光源102の出力を制御する。再生時はパワー制御部101からの出力制御を省略して、光源102の出力を一定としてもよい。集光光学系110により光ディスク1の情報が記録される記録面に近接場光として照射される。
【0012】
光検出部121の出力が供給される制御部122は、フィードフォワードにより生成されたギャップ制御信号SGや、チルト制御信号STを生成させて、駆動部113に出力させる。駆動部113は例えばボイスコイルモーターを含む2軸アクチュエータや3軸アクチュエータ等より構成される。なお、ギャップ制御用の駆動部と、チルト制御用の駆動部とを別々に設け、各駆動部に制御信号をそれぞれ入力する構成としてもよい。なお、図13に示す構成の他に、収差補正用等の種々の光学素子を付加的に配置することある。
【0013】
この図13に示す構成にて近接場光記録を行う場合には、光ディスク1とSIL112との距離であるギャップの目標値を例えば数百nmから数十nm程度のニアフィールド領域として、その距離で近接場光を発生させる。ニアフィールド領域でのギャップ長の目標値は、例えば20nmである。
ギャップが入射光波長λの略1/4以下となって近接場光が生じる距離以上であるファーフィールド領域では、SIL112の端面で全反射する角度で入射した光は、この端面で全反射されることにより、光検出部121での全反射戻り光量は常に一定となる。
【0014】
この図13に示した如き、近接場光記録用の構成とした場合、上述したように3mmのような大きな面ぶれは、ディスクやレンズなどの損傷を防ぐ点から好ましくない問題があった。即ち、ギャップを数百nmから数十nm程度のニアフィールド領域とした場合、ディスクがSILと接触してしまい、損傷してしまう可能性が高い。
【0015】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、フレキシブル光ディスクの如き面ぶれの大きなディスクを使った場合における、面ぶれによるディスクやレンズなどの損傷を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、装着されたディスクに安定化板を近接又は当接させた状態で、ディスクを回転駆動させるものに適用される。
ディスクを回転させていない状態では、光学ピックアップをディスクの表面から離して退避させる処理を行う。そして、ディスクを所定速度以上に回転駆動させた状態で、光学ピックアップをディスクの表面に近接させた上で、光学ピックアップ内のギャップ駆動系によりギャップ制御を開始させて、レーザ光の照射により記録又は再生を行う。
【0017】
本発明によると、ディスクを回転させていない状態では、光学ピックアップをディスクの表面から離して退避される。従って、その状態でディスクに面ぶれが発生しても、待避しているために、ディスク表面と光学ピックアップとが接触することがなくなる。そして、安定化板の作用で、回転してディスクが安定して面ぶれがなくなった状態で、光学ピックアップをディスクの表面に近接させることで、ディスクの信号記録面に良好にギャップサーボをかけて、記録や再生を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、安定化板を設けてディスク回転時の面ぶれを防止した場合に、低速回転時や回転停止時などの面ぶれが大きい状態における、ディスク表面と光学ピックアップとの接触事故を防止することができる。従って、ディスクやレンズなどの損傷を効果的に防止することが可能となり、フレキシブル光ディスクなどの面ぶれが大きいディスクを使っても、記録や再生が良好に行える効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下の順序で、本発明の実施の形態について説明する。
1.第1の実施の形態の構成:図1〜図2
2.第1の実施の形態による動作:図3〜図8
3.第1の実施の形態による効果
4.第2の実施の形態の構成:図9
5.第3の実施の形態による動作及び効果:図10〜図11
6.第1の実施の形態による効果
7.実施の形態の変形例
【0020】
[1.第1の実施の形態の構成]
以下、本発明の第1の実施の形態を、図1〜図8を参照して説明する。
本実施の形態においては、近接場光(ニア・フィールド光)記録を行う光ディスクの記録又は再生を行う装置(記録/再生装置)に適用したものである。以下の説明では、ディスクの記録や再生を行う装置を、単にディスク装置と称する。
記録や再生を行う光ディスクは、例えば0.1mm程度の厚さで、直径10数センチ程度の樹脂シートで構成された、可撓性を有するフレキシブル光ディスクとしてある。
ディスク装置については、既に説明した安定化板を設けて、回転駆動時に、空気力学的に安定して面ぶれを抑える構成としてある。なお、以下に示す各図の例では、安定化板の下側に光ディスクを配置した例としてあるが、後述する変形例でも述べるように、安定化板の上側に光ディスクを配置した構成で、各実施の形態の処理を適用してもよい。
【0021】
図1は、本実施の形態の例のディスク装置10の構成例を示した図である。
図1に従って説明すると、ディスク装置10は、スピンドルモータ11の回転軸に連結されたディスクチャッキング部12を備え、そのディスクチャッキング部12により、フレキシブル光ディスク14を保持させる構成としてある。保持されたフレキシブル光ディスク14は、安定化板13と近接又は接触した状態で、スピンドルモータ11により回転駆動される。フレキシブル光ディスク14は、3000rpm以上の非常に高速で回転駆動され、その3000rpm以上の高速回転を行うことで、空気力学的に安定して面ぶれが抑制されるものである。
【0022】
安定化板13はフレキシブル光ディスク14と一体に回転する場合と、回転せずに静止している場合のいずれでもよい。但し、3000rpm以上の高速回転であるため、安定化板13は回転させない構成とする方が、構成が簡単である。安定化板13とフレキシブル光ディスク14との間は、わずかな隙間で近接するように配置する。安定化板13とフレキシブル光ディスク14との間の距離は、例えば約100μm程度とする。
【0023】
ディスクチャッキング部12で保持されたフレキシブル光ディスク14は、下側に配置した光学ピックアップ20から照射されるレーザ光により、記録や再生が行われる。その際には、本実施の形態においては、既に説明した近接場光が利用される構成としてある。このため、光学ピックアップ20の内部構成としては、例えば既に説明した図13の構成が適用され、レンズとして図13に示したソリッドイマージョンレンズ(SIL)112を備える。
【0024】
この光学ピックアップ20は、ピックアップ待避機構部30でピックアップ全体を上下方向に移動可能に保持してある。この上下方向の移動は、ディスクの回転停止と回転開始後の安定状態への移行とに連動して行われる。具体的な上下方向の移動処理状態については後述する。
【0025】
ピックアップ待避機構部30に保持された光学ピックアップ20は、スレッド送り部15により、ディスク14の半径方向に移動可能としてある。このスレッド送り部15は、ディスク上の記録や再生を行うトラック位置に応じて、光学ピックアップ20を移動させる。スレッド送り部15は、例えば図示しないリニアモータなどによる駆動で、光学ピックアップ20を平行移動させる。
【0026】
図2は、光学ピックアップ20とピックアップ待避機構部30との構成の詳細を示した図である。
図2に示すように、光学ピックアップ20は、ギャップ調整を行うレンズ21を備えて、そのレンズ21が駆動コイル22により上下方向(ギャップ調整方向)に駆動される構成としてある。レンズ21は、近接場光記録を行う場合、図13bに示したSILを備える。レンズ21の調整により、レーザ発光/受光部23からのレーザ光が、ギャップ調整されてフレキシブル光ディスク14の信号記録面に照射され、その戻り光が光学ピックアップ20内で検出される。この駆動コイル22によるギャップ調整用の調整範囲としては、例えばディスク表面から300μmから25nm程度の距離まで調整可能としてある。
【0027】
ピックアップ待避機構部30は、駆動コイル31により光学ピックアップ20全体を、上下方向に駆動させることができる構成としてある。
このピックアップ待避機構部30による調整範囲としては、例えば最大でディスク表面から5mmまで離すことができ、光学ピックアップ20でギャップ調整を開始させる際には、ディスク表面から300μmまで近接させることができる構成としてある。以下の説明では、ディスク表面から約5mmまで離れた位置を待避位置とし、ディスク表面から300μmまで近接させた位置を、ギャップサーボ開始位置とする。
【0028】
なお、図1や図2の構成では、光学ピックアップ20に関係した機構だけを示したが、光学ピックアップ20やピックアップ待避機構部30は、図示しない制御部による制御で、位置が制御される構成としてある。制御部については、例えば演算処理機能を持つマイクロコンピュータなどで構成される。
【0029】
[2.第1の実施の形態による動作]
図3及び図4は、本実施の形態による、フレキシブル光ディスクの記録又は再生を行う際の処理例を示したフローチャートである。
まず、図3を参照して、回転を開始させる場合の処理について説明する。
この場合には、記録又は再生を行うために、フレキシブル光ディスク14が静止した状態から、スピンドルモータ11により回転を開始させる(ステップS11)。なお、ディスクが静止した状態では、ピックアップ待避機構部30は光学ピックアップ20を待避位置とする。また、この待避位置とした際には、スレッド送り部15で光学ピックアップ20を最内周寄りの位置に移動させておく。
この状態で、フレキシブル光ディスク14の回転速度が、予め決められた所定回転速度αを越えたか否か判断する(ステップS12)。この回転速度αとしては、例えば、空気力学的に安定して面ぶれが抑制される、3000rpmとする。
【0030】
ここで、回転速度αが越えない場合には、回転速度αを越えるまで待機する。そして、越えることが検出された場合に、ピックアップ待避機構部30により、光学ピックアップ20をギャップサーボ開始位置まで移動させる(ステップS13)。このギャップサーボ開始位置まで移動させることで、レンズアクチュエータが、ギャップサーボで引き込みを行うことが可能な状態となる。この状態で、ギャップサーボを開始させて(ステップS14)、例えばディスク表面から25nm程度の距離で信号記録面にギャップを合わせるサーボ制御が行われる。
以後は、その状態でギャップサーボが継続して行われ、記録又は再生が継続して行われる。
【0031】
次に、ディスクの記録又は再生を停止させて、フレキシブル光ディスク14の回転を停止させる際の処理例を、図4のフローチャートを参照して説明する。
まず、この停止時にはギャップサーボを停止させる(ステップS21)。このときには、例えば光学ピックアップ20内のレンズ21を、駆動コイル22で最も下側のギャップ調整位置としてもよい。
【0032】
そして、ピックアップ待避機構部30により、光学ピックアップ20をギャップ引き込み範囲外まで移動させ、待避位置とする(ステップS22)。このとき、光学ピックアップ20を最内周位置まで移動させてもよい。待避位置となってから、ディスクの回転駆動を停止させる(ステップS23)。
【0033】
図5は、この図3のフローチャートの処理により、光学ピックアップ20が移動する状態の概要を示した図である。
まず、図5(a)に示すように、初期状態では、光学ピックアップ20は待避位置にあり、ディスク表面から光学ピックアップ20の先端のレンズ(SIL)までの距離L1として、5mm程度とする。また、このときには、ディスクの最内周寄りとするのが好ましい。
【0034】
この図5(a)の状態では、例えばディスク14の周辺部が垂れ下がる面だれが発生した破線の状態のディスク14′となることがある。このような破線の状態のディスク14′であっても、その面ぶれ量が距離L1未満である限り、ディスク表面と光学ピックアップ20の先端とが接触することはない。
【0035】
そして、ディスク14を高速で回転駆動させて、図5(b)に示すように、安定化板13による作用で、ディスク14の面ぶれが抑制される状態となると、ピックアップ待避機構部30によりギャップサーボ可能位置まで光学ピックアップ20が移動する。この場合の、ディスク表面から光学ピックアップ20の先端のレンズまでの距離L2は、300μm以下である。
【0036】
さらに、ギャップサーボが開始されることで、図5(c)に示すように、ディスク表面から光学ピックアップ20の先端のレンズまでの距離L3が、25nm程度の距離となり、近接場光を利用した記録や再生が行われる。
【0037】
図6は、本実施の形態の制御処理を、ディスク回転数と光学ピックアップのレンズとディスク表面との距離(レンズ位置)との関係で示した図である。
まず、ディスク回転数が0であるときは、レンズ位置(ギャップ)が5mmであり、その状態でディスク回転数が閾値αを越えることで、レンズ位置300μmとするフィードフォワード制御状態Aとなる。閾値αの回転数としては、例えば3000rpm程度とする。
その後、さらにディスク回転数が、記録又は再生が可能な回転数βまでサーボ状態としてはそのまま保持Bされる。該当する回転数βまで上昇すると、ニアフィールド引き込み動作Cが行われて、25nm程度のレンズ位置となり、そのレンズ位置を保つギャップ制御Dが行われる。回転数βとしては、例えば10000rpm程度とする。
【0038】
図7は、光学ピックアップ20内で検出される、ディスクからの全反射戻り光の光量と、レンズアクチュエータ(図2での駆動コイル22に相当)にかかる電圧との関係を示した図である。
ギャップ制御が開始される前は、全反射戻り光の光量がファーフィールドレベルであり、その後、ニアフィールド引き込み動作Cが開始されて、さらにギャップ制御Dが行われることで、ギャップ目標値の全反射戻り光の光量が得られる。この状態となって、記録や再生が可能となる。
【0039】
図7に示すように、ニアフィールド引き込み動作Cの状態では、レンズアクチュエータにかかる電圧(駆動電圧)が大きく変化して、ギャップが対応して狭くなるが、全反射戻り光量は変化せず、ファーフィールド領域のままである。即ち、図6に示したギャップ300μm図7では、ファーフィールド領域での全反射戻り光量レベルを1として示してある。
そして、ギャップ制御Dが行われる状態になると、レンズアクチュエータの駆動電圧はほぼ一定状態となって、ギャップが一定となるように制御される。このギャップ制御Dが行われる状態になると、全反射戻り光量はファーフィールド領域でのレベル1から、ニアフィールド領域に入ったことが検出されるレベル0.8以下となり、さらに、ギャップ目標値のレベル0.4まで低下する。このレベル0.8や0.4の値(比率)は一例である。ニアフィールド領域に入るレベル0.8は、例えばギャップ長70nm程度である。ギャップ目標値のレベル0.4では、ギャップ長25nm程度となる。
【0040】
図8は、本実施の形態の処理を行うことで、ディスクの表面にレンズなどが衝突することを防止できることを観察した特性の例である。図8(a)の特性は、ディスク回転速度が1200rpmで、ギャップサーボ制御を開始させた場合の波形図である。この例では、周期的に大きな面ぶれが発生した状態となっており、その大きな面ぶれが発生したときに、レンズがディスク表面と衝突してしまう。
これに対して、図8(b)の特性は、ディスク回転速度が3000rpmで、ギャップサーボ制御を開始させた場合の波形図である。この例では、面ぶれが小さく抑制されており、ギャップサーボを開始させて、25nm程度のレンズ位置としても、レンズがディスク表面と衝突することはない。
【0041】
[3.第1の実施の形態による効果]
ここまでの説明から判るように、本実施の形態によると、フレキシブル光ディスクを使った場合であっても、面ぶれによるディスクとレンズとの接触を良好に防止することができ、ディスクの損傷やレンズの損傷を効果的に防止できる。即ち、ディスクに面ぶれが発生する低速回転状態では、光学ピックアップがディスク表面から離れるように待避するので、原理的に接触が発生することがなく、良好な記録や再生が行える。
【0042】
[4.第2の実施の形態の構成]
次に、本発明の第2の実施の形態を、図9〜図10を参照して説明する。
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、近接場光(ニア・フィールド光)記録を行う光ディスクの記録又は再生を行うディスク装置(ディスク記録/再生装置)に適用したものである。
【0043】
記録や再生を行う光ディスクは、例えば0.1mm程度の厚さで、直径10数センチ程度の樹脂シートで構成された、可撓性を有するフレキシブル光ディスクとしてある。
ディスク装置については、既に説明した安定化板を設けて、回転駆動時に、空気力学的に安定して面ぶれを抑える構成としてある。
【0044】
図9は、本実施の形態の例のディスク装置50の構成例を示した図である。図9(a)は待機時(初期時)の位置を示し、図9(b)はディスク回転時の状態を示す。
図9に従って説明すると、ディスク装置50は、スピンドルモータ51の回転軸に連結されたディスクチャッキング部52を備え、そのディスクチャッキング部52により、フレキシブル光ディスク54を保持させる構成としてある。保持されたフレキシブル光ディスク54は、安定化板53と近接又は接触した状態で、スピンドルモータ51により回転駆動される。フレキシブル光ディスク54は、3000rpm以上の非常に高速で回転駆動され、その3000rpm以上の高速回転を行うことで、空気力学的に安定して面ぶれが抑制されるものである。
安定化板53はフレキシブル光ディスク54と一体に回転する場合と、回転せずに静止している場合のいずれでもよい。
【0045】
ディスクチャッキング部52で保持されたフレキシブル光ディスク54は、下側に配置した光学ピックアップ60から照射されるレーザ光により、記録や再生が行われる。その際には、既に説明した近接場光についても利用される構成としてあり、光学ピックアップ60の内部構成としては、例えば既に説明した図13の構成が適用され、レンズとしてSILを備える。
【0046】
この光学ピックアップ60は、スレッド送り部55により、ディスク54の半径方向に移動可能としてある。このスレッド送り部55は、ディスク上の記録や再生を行うトラック位置に応じて光学ピックアップ60を移動させる。スレッド送り部55は、例えば図示しないリニアモータなどによる駆動で、光学ピックアップ60を平行移動させる。
【0047】
ここで、本実施の形態においては、そのスレッド送り部55により光学ピックアップ60を移動可能な範囲として、ディスクの最外周よりも更に外側の位置(外周待避位置55a)まで移動できる構成としてある。この外周待避位置55aまで光学ピックアップ60を移動させた状態では、装着されたディスク54にどのような面ぶれが発生しても、光学ピックアップ60のレンズと振れることはない。
【0048】
図9(a)に示されるように、本実施の形態においては、ディスクの回転が停止した状態においては、光学ピックアップ60を外周待避位置55aまで移動させる。そして、ディスク54の回転速度が閾値を越えたとき、外周待避位置55aから内周寄りに移動させて、記録や再生を行うディスクの半径方向の所定トラック位置とする。なお、光学ピックアップ60内のレンズ駆動部は、例えばディスク表面からレンズまでの距離として、300μmから25nm程度の距離まで調整可能としてある。
【0049】
[5.第3の実施の形態による動作及び効果]
図10及び図11は、本実施の形態による、フレキシブル光ディスクの記録又は再生を行う際の処理例を示したフローチャートである。
【0050】
まず、回転を開始させる場合の処理を、図10を参照して説明する。この場合には、最初に、記録又は再生を行うために、フレキシブル光ディスク14が静止した状態から、スピンドルモータ11により回転を開始させる(ステップS31)。この場合、ディスクが静止した状態では、光学ピックアップ20は外周待避位置55aとしてあり、そのままの状態で回転を開始させる。
この状態で、フレキシブル光ディスク14の回転速度が、予め決められた所定回転速度αを越えたか否か判断する(ステップS32)。この回転速度αとしては、例えば、空気力学的に安定して面ぶれが抑制される、3000rpmとする。
【0051】
ここで、回転速度αが越えない場合には、回転速度αを越えるまで待機する。そして、越えることが検出された場合に、スレッド送り部55により所望のトラック位置とし、光学ピックアップ60を引き込み可能位置まで移動させる(ステップS33)。この状態で、ギャップサーボを開始させて(ステップS34)、例えばディスク表面から25nm程度の距離で信号記録面にギャップを合わせるサーボ制御が行われる。
以後は、その状態でギャップサーボが継続して行われ、記録又は再生が継続して行われる。
【0052】
次に、ディスクの記録又は再生を停止させて、フレキシブル光ディスク14の回転を停止させる際の処理例を、図11のフローチャートを参照して説明する。
まず、この停止時にはギャップサーボを停止させる(ステップS41)。
そして、スレッド送り部55により、光学ピックアップ60を外周待避位置55aまで移動させる(ステップS42)。その外周待避位置55aとなってから、ディスクの回転駆動を停止させる(ステップS43)。
【0053】
[6.第3の実施の形態による効果]
このようにして、光学ピックアップの半径方向の移動で、外側に逃げる構成とすることによっても、第1の実施の形態の場合と同様に、安定していない状態での面ぶれによるディスクとレンズの接触を確実に阻止することができる。
【0054】
この図9の構成の場合には、元々ディスク装置が持つスレッド送り機構として、移動距離を若干長くすれば対処可能であり、比較的簡単な構成で対処可能である。但し、外周待避位置55aまで光学ピックアップを移動させるために、ディスク装置の形状が若干大きくなってしまう。
従って、適用するディスク装置の形状などに応じて、第1の実施の形態に示した構成を適用する場合と、第2の実施の形態に示した構成を適用する場合とを選択すればよい。
【0055】
[7.実施の形態の変形例]
上述した各実施の形態では、近接場光(ニア・フィールド光)記録を行う記録/再生装置に適用した例について説明したが、その他の記録構成の光ディスクの記録/再生装置に適用してもよい。また、使用するディスクについても、比較的面ぶれが大きい0.1mmなどの厚さの可撓性を有するフレキシブル光ディスクを使用した例について説明したが、他の構成の光ディスクを使ったディスク記録装置又はディスク再生装置でもよい。
【0056】
光ディスクに信号を記録させるフォーマットについても、上述した実施の形態では、具体的な構成について特に説明をしなかったが、どのようなフォーマットのものにも適用可能である。例えば上述したように近接場光記録を行う場合には、非常に高密度で記録が行われるフォーマットが適用可能である。
【0057】
また、上述した実施の形態で示したディスクの回転速度や、レンズとディスクとのギャップなどの値についても、好適な一例を示したものであり、これらの値に限定されるものではない。適用されるディスクのフォーマットや装置全体のシステム構成によって、これらの最適な値は、変化するものである。
【0058】
また、第1の実施の形態で光学ピックアップを2段階に移動させる構成として、図2に示したように、レンズをギャップ調整のために移動させるための駆動コイル22と、光学ピックアップ全体を移動させる駆動コイル31とを設ける構成とした。これに対して、1つの駆動機構で、同様の2段階の駆動量と駆動制御が可能であれば、1つの駆動機構による構成として、構成の簡易化を図るようにしてもよい。2つの機構で移動させる場合であっても、待避用の駆動機構として、図2の例のように光学ピックアップ全体を待避させるのではなく、レンズ部の近傍だけを2段階などに移動させる機構として構成としてもよい。
【0059】
また、第1の実施の形態において、ディスク待避時には、ディスクの最内周寄りに光学ピックアップを移動させるようにしたが、待避が十分な距離で行われる場合には、このような最内周寄りに移動させる処理は必要ない。
但し、最内周寄りに移動させる場合には、それだけディスクの外周よりが自重で下がる、いわゆる面だれの影響が少ないので、回転ぶれによる面ぶれの影響だけを考慮すればよく、待避時に、待避させる距離を、少なくすることが可能となる。
【0060】
また、上述した各実施の形態では、回転停止時の処理として、図4のフローチャートや図11のフローチャートに示したように、ギャップサーボを停止させてから、待避処理を行い、その後、ディスクの回転を停止させるようにした。これに対して、例えばディスク装置で記録や再生中に、何らかの要因で突然、ディスク装置の動作が停止した緊急時には、このフローチャートのような手順を行わずに、直ちに、待避位置に光学ピックアップを移動させるようにしてもよい。
このようにすることで、動作中の強制的な電源オフや停電などの異常時であっても、ディスクやレンズなどの損傷を効果的に確実に防止できるようになる。但し、この異常時の処理を行うためには、強制的な電源オフ時であっても、待避させるために必要な電力を蓄えておいて、その電力を使って待避動作を確実に行う必要がある。
【0061】
また、図1や図9に示したディスク装置の構成では、光ディスクの上側に安定化板を配置し、光ディスクの下側に配置した光学ピックアップで、記録や再生を行う構成とした。これに対して、安定化板の上側に光ディスクを装着して、その光ディスクの上側から光学ピックアップで記録や再生を行う構成に適用してもよい。この場合には、安定化板及び光ディスクの上側の十分な距離だけ、光学ピックアップを離して配置した状態で、光ディスクの回転を開始させる。そして、光ディスクを回転駆動させて安定化板がディスクに接近し、一定の回転速度を超えて空力安定後にレンズがディスク面上から接近させて、記録や再生を行う。
また、上述した実施の形態では、安定化板の大きさなどの詳細については説明しなかったが、空気力学的に安定化するものであれば、どのような形状やサイズであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるディスク装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態のディスク装置の要部の例を示したブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による回転開始時の処理例を示したフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施の形態による回転停止時の処理例を示したフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態による制御例を示した説明図であり、(a)は回転していない初期状態を示し、(b)は回転安定時を示し、(c)はギャップサーボを開始させた状態を示す。
【図6】本発明の第1の実施の形態によるディスク回転数と動作の関係を示す説明図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態による特性例を示す特性図である。
【図8】(a)は回転開始と同時にサーボを開始させた特性図であり、(b)は本発明の第1の実施の形態によるサーボ状態の例を示す特性図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態による構成例を示すブロック図であり、(a)は待避時を示し、(b)は安定化時を示す。
【図10】本発明の第2の実施の形態による回転開始時の処理例を示したフローチャートである。
【図11】本発明の第2の実施の形態による回転停止時の処理例を示したフローチャートである。
【図12】安定化板を使用してディスクの回転を安定化させる場合の例について示した説明図である。
【図13】近接場光記録用のピックアップを使ったディスク装置の構成例を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0063】
1…ディスク、2…安定化板、3…ディスクチャッキング部、4…スピンドルモータ、10…ディスク装置、11…スピンドルモータ、12…ディスクチャッキング部、13…安定化板、14…フレキシブル光ディスク、14′…面だれが発生したフレキシブル光ディスク、15…スレッド送り部、20…光学ピックアップ、21…レンズ、22…駆動コイル、23…レーザ発光/受光部、30…ピックアップ待避機構部、31…駆動コイル、50…ディスク装置、51…スピンドルモータ、52…ディスクチャッキング部、53…安定化板、54…フレキシブル光ディスク、55…スレッド送り部、55a…外周待避位置、60…光学ピックアップ、100…光学ピックアップ、101…パワー制御部、102…光源、103…コリメートレンズ、104,105…ビームスプリッタ、106…λ/4波長板、107,109…集光レンズ、108…光検出部、110…集光光学系、111…光学レンズ、112…ソリッドイマージョンレンズ(SIL)、121…光検出部、122…制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転させない状態で形状がフレキシブルに変化するディスクが装着され、装着された前記ディスクと近接又は当接する平面状の安定化板を有するディクス装着部と、
前記ディスク装着部に装着された前記ディスクを回転駆動させる回転駆動部と、
前記ディスク装着部に装着された前記ディスクに対してレーザ光を照射して信号の記録又は再生を行う光学ピックアップと、
前記光学ピックアップの前記ディスクに対する位置の駆動を行うピックアップ駆動部と、
前記回転駆動部で前記ディスクを回転させていない状態で、前記ピックアップ駆動部により前記光学ピックアップを前記ディスクの表面から離して退避させ、前記回転駆動部で前記ディスクを所定速度以上に回転駆動させた状態で、前記ピックアップ駆動部により前記光学ピックアップを前記ディスクの表面に近接させた上で、前記光学ピックアップ内のギャップ駆動系によりギャップ制御を開始させて、レーザ光の照射により記録又は再生を行う制御部とを備えた
ディスク装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ディスクが前記回転駆動部により前記所定速度以上に回転駆動された状態で、前記ピックアップ駆動部により前記光学ピックアップをディスク表面から離して退避させてから、前記ディスクの回転駆動を停止させる制御を行う
請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記所定速度は、前記ディスクの形状が前記安定化板により空気力学的に安定する回転速度である
請求項2に記載のディスク装置。
【請求項4】
前記ピックアップ駆動部により前記光学ピックアップを前記ディスクの表面から離して退避させる駆動は、前記ディスクの表面と直交する方向に距離を離す駆動である
請求項2に記載のディスク装置。
【請求項5】
前記光学ピックアップは、近接場光を生じさせる光学ピックアップであり、
前記光学ピックアップを前記ディスクの表面と直交する方向に駆動させる距離として、前記退避させた状態は、近接場光を生じさせないファーフィールド領域となる距離とし、前記近接させた状態は、近接場光を生じさせるニアフィールド領域となる距離とした
請求項4に記載のディスク装置。
【請求項6】
前記光学ピックアップを前記ディスクの表面から離して退避させる際に、前記光学ピックアップを前記ディスクの最内周側の位置とする
請求項4に記載のディスク装置。
【請求項7】
前記ピックアップ駆動部により前記光学ピックアップを前記ディスクの表面から離して退避させる駆動は、前記ディスクの半径方向に移動させて、前記ディスクの最外周よりも外側に移動させる駆動である
請求項2に記載のディスク装置。
【請求項8】
回転させない状態で形状がフレキシブルに変化するディスクが装着され、装着された前記ディスクに安定化板を近接又は当接させた状態で前記ディスクを回転駆動させるディスク回転駆動処理を行い、
前記ディスクを回転させていない状態で、光学ピックアップを前記ディスクの表面から離して退避させ、前記ディスクを所定速度以上に回転駆動させた状態で、前記光学ピックアップを前記ディスクの表面に近接させた上で、前記光学ピックアップ内のギャップ駆動系によりギャップ制御を開始させて、レーザ光の照射により記録又は再生を行う
ディスク駆動方法。
【請求項1】
回転させない状態で形状がフレキシブルに変化するディスクが装着され、装着された前記ディスクと近接又は当接する平面状の安定化板を有するディクス装着部と、
前記ディスク装着部に装着された前記ディスクを回転駆動させる回転駆動部と、
前記ディスク装着部に装着された前記ディスクに対してレーザ光を照射して信号の記録又は再生を行う光学ピックアップと、
前記光学ピックアップの前記ディスクに対する位置の駆動を行うピックアップ駆動部と、
前記回転駆動部で前記ディスクを回転させていない状態で、前記ピックアップ駆動部により前記光学ピックアップを前記ディスクの表面から離して退避させ、前記回転駆動部で前記ディスクを所定速度以上に回転駆動させた状態で、前記ピックアップ駆動部により前記光学ピックアップを前記ディスクの表面に近接させた上で、前記光学ピックアップ内のギャップ駆動系によりギャップ制御を開始させて、レーザ光の照射により記録又は再生を行う制御部とを備えた
ディスク装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ディスクが前記回転駆動部により前記所定速度以上に回転駆動された状態で、前記ピックアップ駆動部により前記光学ピックアップをディスク表面から離して退避させてから、前記ディスクの回転駆動を停止させる制御を行う
請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記所定速度は、前記ディスクの形状が前記安定化板により空気力学的に安定する回転速度である
請求項2に記載のディスク装置。
【請求項4】
前記ピックアップ駆動部により前記光学ピックアップを前記ディスクの表面から離して退避させる駆動は、前記ディスクの表面と直交する方向に距離を離す駆動である
請求項2に記載のディスク装置。
【請求項5】
前記光学ピックアップは、近接場光を生じさせる光学ピックアップであり、
前記光学ピックアップを前記ディスクの表面と直交する方向に駆動させる距離として、前記退避させた状態は、近接場光を生じさせないファーフィールド領域となる距離とし、前記近接させた状態は、近接場光を生じさせるニアフィールド領域となる距離とした
請求項4に記載のディスク装置。
【請求項6】
前記光学ピックアップを前記ディスクの表面から離して退避させる際に、前記光学ピックアップを前記ディスクの最内周側の位置とする
請求項4に記載のディスク装置。
【請求項7】
前記ピックアップ駆動部により前記光学ピックアップを前記ディスクの表面から離して退避させる駆動は、前記ディスクの半径方向に移動させて、前記ディスクの最外周よりも外側に移動させる駆動である
請求項2に記載のディスク装置。
【請求項8】
回転させない状態で形状がフレキシブルに変化するディスクが装着され、装着された前記ディスクに安定化板を近接又は当接させた状態で前記ディスクを回転駆動させるディスク回転駆動処理を行い、
前記ディスクを回転させていない状態で、光学ピックアップを前記ディスクの表面から離して退避させ、前記ディスクを所定速度以上に回転駆動させた状態で、前記光学ピックアップを前記ディスクの表面に近接させた上で、前記光学ピックアップ内のギャップ駆動系によりギャップ制御を開始させて、レーザ光の照射により記録又は再生を行う
ディスク駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−135027(P2010−135027A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311640(P2008−311640)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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