説明

ディスク装置

【課題】ターンテーブルの防振性能を維持するとともに、ディスク未装着状態時のクランプ音を大きくすることなく適切なクランプ力が得られるディスク装置の提供。
【解決手段】ディスク装置に、ディスク装着状態時にクランパ25を付勢するクランパスプリング81と、台座部21が押し込まれた際に押し返す台座スプリング83と、を設けた。このため、クランパ25を磁石吸引力F2とクランパスプリング弾性力F3とによりターンテーブル24に押し付けるとともに台座スプリング弾性力F4により台座部21を押し返すので、フロートゴム211を撓ませることなく、クランパスプリング弾性力F3と磁石吸引力F2とをあわせたクランプ力で光ディスク1をクランプできる。磁石吸引力のみでクランプ力を得る構成と比べて磁石吸引力F2を小さくすることができ、ディスク未装着状態時のクランプ音を小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばDVD(Digital Versatile Disk)やCD(Compact Disc)等のディスクを再生あるいは記録するディスク装置が広く利用されている。このようなディスク装置には、通常、ディスクを保持するためのクランプ装置が設けられている。そして、クランプ装置において、ばねを用いてクランパをターンテーブルに押し付けることでディスク状記録媒体をクランプする構成が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のものは、光ディスク装置の開閉蓋に設けられたディスク押圧部と、このディスク押圧部を付勢する押圧ばねと、を備えている。そして、光ディスクの装着時に、ディスク押圧部の回転部材が押圧ばねにより光ディスクを上面から押圧する構成が採られている。
特許文献2に記載のものは、クランパを支持するフォーク部を有する板ばねを備えている。そして、光ディスクの保持時に、クランパがばねから下方への押圧力を受けて、光ディスクをターンテーブル上に押し付ける構成が採られている。
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に記載のようなばねの弾性力のみで付勢する構成では、ディスク状記録媒体を高速回転させたときにターンテーブル上でスリップ(ディスクスリップ)してしまうおそれがある。そこで、高速回転でもディスクスリップしないような大きなクランプ力(クランパとターンテーブルとでディスク状記録媒体を挟持する力)を得るために、上述のばねの弾性力と磁力とを利用する構成が検討されている(例えば、特許文献3,4参照)。
【0005】
特許文献3に記載のものは、一端部がクランパプレート上に固定されるとともに他端部がクランパAの頂点に当接する弾性部材を備えている。また、スピンドルモータが配置されたシャーシ四隅は、防振ゴムを介してエレベータに取り付けられている。そして、この弾性部材でクランパAをスピンドルモータ側に付勢することで、ディスクをクランパBとスピンドルモータでチャッキングする。さらに、マグネットの吸引力でディスクをチャッキングする構成が採られている。
特許文献4に記載のものは、クランパのホルダ板金から飛び出す凸部と、ディスク装着時に凸部と当接するクランパ保持板とを備えている。また、ターンテーブルを有するトラバースには、外部振動を吸収するフローティングゴムが設けられている。そして、クランパ保持板により凸部を弱い弾性力で付勢し、さらにマグネットとヨーク板の磁力を利用して、ディスクをターンテーブルに押し付ける構成が採られている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−3718号公報
【特許文献2】特開2000−36149号公報
【特許文献3】特開2003−91904号公報
【特許文献4】特開2005−332456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3,4に記載のような構成では、ばね弾性力によりフローティングゴムなどが撓んでターンテーブルが沈んでしまい、必要なクランプ力を得ることができないおそれがある。このようなターンテーブルの沈み込みを回避しつつ必要なクランプ力を得るために、フローティングゴムの硬度を高くする構成や、ばね弾性力を利用せずに磁力を大きくする構成が考えられる。しかしながら、フローティングゴムの硬度を高くする構成では、所定の振動に対する撓み量が小さくなりターンテーブルに対する防振性能が落ちてしまうおそれがある。また、磁力を大きくする構成では、ディスク状記録媒体を挟持しないときのクランパとターンテーブルとの衝突音(以下、クランプ音と称す)が大きくなってしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、このような点などに鑑みて、ターンテーブルに対する防振性能を維持するとともに、ディスク状記録媒体の未装着時のクランプ音を大きくすることなく適切なクランプ力が得られるディスク装置を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、シャーシと、弾性変形可能な防振部材を介して前記シャーシに取り付けられた台座部と、この台座部に取り付けられ、軸孔を有するディスク状記録媒体が載置されるターンテーブルと、このターンテーブルに係脱可能に設けられ、前記ターンテーブルとにより前記ディスク状記録媒体を挟持するクランパと、前記台座部を前記クランパに対して遠近させることで前記ターンテーブルを前記クランパに係脱させる台座遠近手段と、を具備し、前記ターンテーブルは、前記ディスク状記録媒体の軸孔に挿脱可能な略柱状の嵌挿部と、この嵌挿部に設けられた第一磁性体と、を備え、前記クランパは、前記第一磁性体との間で磁力を発生させる第二磁性体と、前記嵌挿部の軸方向一端部に係脱可能な凹状に形成された挿入部を有し前記第二磁性体を保持するクランパ本体部と、を備えているディスク装置であって、前記ターンテーブルと前記クランパとによりディスク状記録媒体が挟持された際に前記クランパを前記ターンテーブルの方向に付勢する第一付勢手段と、この第一付勢手段の付勢力で前記台座部が付勢された際にこの付勢方向と略反対側に前記台座部を付勢する第二付勢手段と、を具備したことを特徴とするディスク装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、ディスク状記録媒体としての光ディスクに情報を記録および読み出す処理装置であるディスク装置を例示して説明する。なお、例えば携帯型のディスク装置を備えた映像データの録画などの記録や再生のための処理をする再生装置、記録装置あるいはゲーム機など、光ディスクに限らず、磁気ディスク、光磁気ディスクなどのいずれの記録媒体に各種情報を記録、あるいは読み出すいずれのディスク装置を対象とすることができる。また、記録媒体としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:ブルーレイディスク)、HD−DVD(High Definition DVD)などが例示できる。
【0011】
[ディスク装置の構成]
〔全体の構成〕
まず、本発明の一実施形態に係るディスク装置の全体の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るディスク装置の全体の概略構成を示す分解斜視図である。
図1において、ディスク装置100は、金属製のケース体10を有している。このケース体10は、下面および前面が2面に亘って開口する上ケース11と、この上ケース11の下面を閉塞する下ケース12と、上ケース11の前面を閉塞する化粧板13とを有している。
上ケース11には、略円形状のクランパスプリング挿通孔11Aが開口形成されている。そして、上ケース11には、略正方形板状に形成され、クランパスプリング挿通孔11Aを閉塞するカバー押さえ部材14が取り付けられている。化粧板13には、窓部13Aが開口形成されている。
【0012】
また、ケース体10には、合成樹脂製の枠体15が設けられている。この枠体15は、上ケース11、下ケース12および化粧板13とにてケース体10を構成する。
また、枠体15には、この枠体15の開口面を略閉塞する状態で固定されるクランパ支持部材17が設けられている。このクランパ支持部材17には、後述の回転駆動手段23のターンテーブル24に対向する位置に支持孔171が開口形成されている。この支持孔171の周縁には、支持孔171を閉塞する状態で略円板状のクランパ25が回転可能に載置されている。このクランパ25とカバー押さえ部材14との間には、第一付勢手段としてのクランパスプリング81と、一面が閉塞された略円筒状のクランパカバー82と、が設けられる。
【0013】
枠体15には、本体部20が配設されている。この本体部20は、例えば金属製の平板枠状に形成された台座部21を有している。この台座部21は、一縁が上下方向に回動可能に他縁が枠体15に取り付けられている。具体的には、台座部21の他縁は、防振部材としてのフロートゴム211を介して枠体15に取り付けられている。
また、枠体15と台座部21との間には、台座部21の一縁に沿ってフロートベース22が取り付けられている。このフロートベース22は、台座部21の一縁に沿った長手状の取付保持部221と、この取付保持部221の長手方向の両端部に略垂直に一体的に突設された一対の回動腕部222とを有している。
取付保持部221には、台座部21の一縁の両端側がフロートゴム211を介して取り付けられている。一対の回動腕部222は、その先端が枠体15に回動可能に軸支される。そして、台座部21は、フロートベース22により、回動が案内される。
ここで、枠体15と、フロートベース22とにて本発明のシャーシが構成されている。
さらに、台座部21には、ターンテーブル24を有する回転駆動手段23と、ピックアップ31と、このピックアップ31を移動させる処理移動手段32と、が配設されている。
【0014】
そして、枠体15には、水平方向に進退可能に移動するディスクトレイ50が配設されている。このディスクトレイ50は、略長方形板状に形成され、光ディスク1が載置されるトレイ部51を有している。そして、このトレイ部51の一縁には、化粧板13の窓部13Aを閉塞する窓閉塞板部52が取り付けられている。
【0015】
また、枠体15には、ディスクトレイ50を搬入出移動させる台座遠近手段としての開閉駆動手段60が配設されている。この開閉駆動手段60は、ギヤ、プーリ、無端ベルトなどを備えた駆動伝達部61と、モータとしての出入用電動モータ64と、を備えている。そして、開閉駆動手段60は、出入用電動モータ64の駆動により、駆動伝達部61を介してディスクトレイ50を化粧板13の窓部13Aから進退させる。
また、開閉駆動手段60は、枠体15の幅方向に沿って移動可能に配設された移動カム68を有している。この移動カム68は、フロートベース22の図示しない係合ピンに係合する図示しないリンク溝が設けられている。そして、移動カム68は、出入用電動モータ64が駆動して駆動伝達部61が駆動すると枠体15の幅方向に沿って移動し、係合ピンをリンク溝に沿って移動させることで台座部21をクランパ25に対する進退方向である上下方向に回動させる。つまり、本発明における台座部をクランパに対して遠近させるとは、台座部21をクランパ25に対する進退方向である上下方向に回動させる、すなわち接近/離反させることを意味している。また、枠体15には、回路基板70が係脱可能に取り付けられている。
【0016】
〔要部の構成〕
次に、ディスク装置100の要部の構成について説明する。なお、以下において、光ディスク1が装着されていない状態をディスク未装着状態と、装着されている状態をディスク装着状態と、適宜称して説明する。
図2は、ディスク未装着状態におけるディスク装置の要部の概略構成を示す断面図である。図3は、ディスク装着状態におけるディスク装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【0017】
図2および図3に示すように、回転駆動手段23は、ターンテーブル24と、このターンテーブル24を回転させるモータ26と、を備えている。
ターンテーブル24は、略円板状に形成され、光ディスク1の軸孔1Aに嵌挿する略柱状の嵌挿部241と、この嵌挿部241の軸方向の一端側外周に外方に向けて鍔状に突設され光ディスク1を載置する載置部242とを有している。嵌挿部241の先端には、第一磁性体としての磁石243が埋設されている。
モータ支持板212が取り付けられたモータ26は、台座部21に固定され、クランパ25と対向する位置に設けられている。
【0018】
また、台座部21が固定されるフロートベース22は、モータ支持板212の下方に位置するフロートベース底面部223を備えている。このフロートベース底面部223とモータ支持板212との間には、第二付勢手段としての台座スプリング83が配設されている。この台座スプリング83は、台座部21に下側への付勢力が作用しておらずフロートゴム211が撓んでいないときに縮まずに、下側への付勢力が作用してフロートゴム211が撓んだときに縮む形状に形成されている。また、台座スプリング83は、ターンテーブル24を挟んでクランパ25と略対向する位置に設けられている。
【0019】
また、カバー押さえ部材14の略中央には、略球状に凹むカバー係合凹部14Aが設けられている。
略円板状に形成されたクランパ25は、合成樹脂製のクランパ本体部251と、クランパ本体部251に保持され、磁石243との間で磁力を発生させる金属板などの略板状の第二磁性体としてのクランパプレート252とを備えている。
クランパ本体部251は、嵌挿部241の軸方向の他端部が挿脱可能とされた凹状の挿入部251Aと、この挿入部251Aの開口縁に外方に向けて鍔状に突設され、載置部242とにて光ディスク1を挾持する挟持部251Bと、挟持部251Bの周縁に外方に向けて鍔状に突設されたフランジ部251Cと、を有している。また、挿入部251Aは、その周面を形成する側壁部251Dと、底面を形成する底部251Eと、を有している。底部251Eは、図2に示すように、ディスク未装着状態の場合にターンテーブル24の磁石243と接触し、このときの磁石243とクランパプレート252との距離が未装着時距離P1になるように構成されている。つまり、底部251Eの厚さ寸法は、未装着時距離P1に設定されている。また、底部251Eの厚さ寸法は、磁石243とクランパプレート252との間の磁力の吸引力(以下、磁力吸引力)のみでクランプ力を得る構成の底部と比べて大きく設定されている。
クランパプレート252は、略円板状に形成され、その一面がクランパ本体部251の底部251Eに接触する状態で設けられている。
【0020】
クランパカバー82の一面の略中央には、カバー係合凹部14Aに係合する略球状のカバー係合凸部821が設けられている。このクランパカバー82は、カバー係合凸部821とカバー係合凹部14Aとの係合により、カバー押さえ部材14に対して回転可能に設けられている。
クランパスプリング81は、軸方向の一端側がクランパプレート252に当接し、他端側がクランパカバー82内に位置する状態で設けられている。このクランパスプリング81は、図2に示すようなディスク未装着状態でありクランパ25の底部251Eと磁石243とが接触しているときに縮まずに、図3に示すようなディスク装着状態でありクランパ25とターンテーブル24との間に光ディスク1が存在しているときに縮む形状に形成されている。
そして、光ディスク1が例えば再生されるときにターンテーブル24およびクランパ25が回転すると、クランパスプリング81およびクランパカバー82も回転する。
【0021】
[ディスク装置の動作]
次に、ディスク装置100の動作について説明する。
【0022】
まず、ディスク未装着状態のときの動作について説明する。
光ディスク1が載置されていない状態でディスクトレイ50がディスク装置100内に搬入されると、台座部21が上昇し、これとともに回転駆動手段23も上昇する。
そして、ターンテーブル24の磁石243と、クランパ25のクランパプレート252との間に発生した磁力によりターンテーブル24がクランパ25側に吸引され、図2に示すように、未装着時距離P1に対応する下方への磁石吸引力F1により底部251Eと磁石243とが密着する。また、上述したようにディスク未装着状態ではクランパスプリング81が縮まないため、台座部21が押し込まれることがなく台座スプリング83も縮まない。つまり、ディスク未装着状態では、ターンテーブル24には、磁石吸引力F1のみが作用する。
【0023】
次に、ディスク装着状態のときの動作について説明する。
ディスクトレイ50に載置された光ディスク1がディスク装置100内に搬入されると、台座部21が上昇し、これとともに回転駆動手段23も上昇し、ターンテーブル24の嵌挿部241に光ディスク1の軸孔1Aが嵌挿するとともに、載置部242に光ディスク1が載置される。
そして、磁石243とクランパプレート252との間に発生した磁力によりターンテーブル24がクランパ25側に吸引され、図3に示すように、磁石243とクランパプレート252との距離に対応する下方への磁石吸引力F2により光ディスク1が挟持される。ここで、磁石243とクランパプレート252との距離(以下、装着時距離と称す)P2は、光ディスク1の厚さ寸法と、未装着状態時における挟持部251Bおよび載置部242の隙間寸法との差(以下、装着時増加寸法と称す)に、未装着時距離P1を加えた長さとなり、ディスク未装着状態のときと比べて長い。このため、磁石吸引力F2の大きさは、磁石吸引力F1よりも小さくなる。
【0024】
また、光ディスク1が挟持されると、クランパ25の上方に位置するクランパスプリング81が装着時増加寸法だけ縮む。そして、この縮みに伴い発生する弾性力(以下、クランパスプリング弾性力と称す)F3によりクランパ25が下方に付勢され、ターンテーブル24などが取り付けられている台座部21も下方に付勢される。また、台座部21が下方に押し込まれると台座スプリング83が縮み、この縮みに伴い発生する弾性力(以下、台座スプリング弾性力と称す)F4により台座部21が上方に押し返される。このため、フロートゴム211が撓むことがない。
つまり、クランパスプリング弾性力F3と等しい大きさの台座スプリング弾性力F4が略反対の方向に作用することで台座部21の沈み込みが防止されつつ、クランパスプリング弾性力F3と、磁石吸引力F2とをあわせたクランプ力で光ディスク1が挟持される。
【0025】
[ディスク装置の作用]
次に、本発明の効果を確認するための実験に基づいて、上記ディスク装置100の作用について説明する。
図4は、実験方法を示す説明図である。図5は、実施例1,2および比較例のクランパにおける動作時間とクランプ音の音量との関係を示すグラフである。図6は、実施例1,2および比較例のクランパにおける動作時間とアンクランプ音の音量との関係を示すグラフである。
【0026】
〔サンプルの構成〕
図4に示すような実験に用いた実施例1のクランパ901として、図2に示すように底部251Eの厚さ寸法が未装着時距離P1のものを適用した。
また、実施例2のクランパ902として、底部251Eの厚さ寸法が未装着時距離P1よりも0.3mm小さいものを適用した。
さらに、比較例のクランパ903として、底部251Eの厚さ寸法が未装着時距離P1よりも0.5mm小さいものを適用した。ここで、比較例のクランパ903は、クランパスプリング81および台座スプリング83が設けられておらず磁力吸引力のみでクランプ力を得る構成に適用されるものである。
【0027】
〔実験方法〕
図4に示すように、無響室において、実施例1のクランパ901とターンテーブル24とを備えたディスク装置900を載置台951に載置した。また、測定器952に接続されたマイク953を、実施例1のクランパ901の中心までの距離が300mmとなる位置に吊り下げた。なお、ディスク装置900は、クランパスプリング81および台座スプリング83を備えていない点を除いて、上記実施形態のディスク装置100と同様の機構を備えている。
そして、ディスク装置900にディスク未装着状態時におけるディスクトレイの搬入動作を実施させて、動作開始からの経過時間と、ターンテーブル24とクランパ25とが密着するときのクランプ音との関係を調べた。また、この状態から、ディスクトレイの搬出動作を実施させて、動作開始からの経過時間と、ターンテーブル24とクランパ25とが離れるときのアンクランプ音との関係を調べた。実施例2,比較例のクランパ902,903についても同様の関係を調べた。
【0028】
〔実験結果〕
図5および図6に示すように、クランプ音およびアンクランプ音は、比較例のクランパ903、実施例2のクランパ902、実施例1のクランパ901の順で小さくなっていることが確認できた。特に、実施例1のクランパ901のクランプ音は、比較例のクランパ903に比べて約10dBも小さいことが確認できた。また、実施例1のクランパ901のアンクランプ音は、比較例のクランパ903に比べて約6dBも小さいことが確認できた。
これは、磁石243とクランパプレート252との距離が長いほど磁力吸引力が小さくなり、ターンテーブル24とクランパ25との密着時あるいは離間時の衝撃が小さくなるためと考えられる。
以上のことから、磁力吸引力のみでクランプ力を得る構成と比べて磁力吸引力を小さくすると、ディスク未装着状態時におけるクランプ音およびアンクランプ音を小さくできることが確認できた。
【0029】
[ディスク装置の作用効果]
上述したように、上記実施形態では、以下のような効果を奏することができる。
【0030】
(1)ディスク装置100に、ディスク装着状態時にクランパ25をターンテーブル24の方向に付勢するクランパスプリング81と、このクランパスプリング81の付勢力でターンテーブル24が設けられた台座部21が押し込まれた際にこの押し込み方向と略反対側に台座部21を押し返す台座スプリング83と、を設けている。
このため、クランパ25を磁石吸引力F2とクランパスプリング弾性力F3とによりターンテーブル24に押し付けるとともに、台座スプリング弾性力F4により台座部21を押し返すので、フロートゴム211を撓ませることなく、クランパスプリング弾性力F3と、磁石吸引力F2とをあわせたクランプ力で光ディスク1をクランプすることができる。したがって、ターンテーブル24に対する防振性能を維持しつつ、高速回転に必要なクランプ力を得ることができる。
また、クランパスプリング弾性力F3をクランプ力として利用するため、磁石吸引力のみでクランプ力を得る構成と比べて磁石吸引力F2を小さくすることができ、ディスク未装着状態時におけるクランプ音やアンクランプ音を小さくすることができる。
さらに、磁石吸引力F2を小さくできるので、クランパ25からターンテーブル24を引き剥がす力を小さくすることができ、台座部21を引き降ろす駆動源となる出入用電動モータ64の力を小さくできる。
そして、ターンテーブル24の仕様最高回転数に応じて底部251Eの厚さ寸法を設定することで、クランプ力とクランプ音との関係を調整することができる。
【0031】
(2)台座スプリング83を、ターンテーブル24を挟んでクランパ25と略対向する位置に設けている。
このため、ターンテーブル24におけるクランパスプリング弾性力F3で付勢される位置と略等しい位置に、クランパスプリング弾性力F3と略反対の方向に付勢するための台座スプリング弾性力F4を作用させることができ、台座スプリング弾性力F4の付勢力を大きくしなくても、台座部21を効率的に押し返すことができる。
【0032】
(3)本発明の第一,第二付勢手段として、一般的に安価で構成が簡単なクランパスプリング81、台座スプリング83を適用している。
このため、ディスク装置100のコストダウンや組立性向上を容易に図ることができる。
【0033】
[他の実施形態]
なお、本発明は前述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0034】
すなわち、台座スプリング83をモータ支持板212と当接する状態で設けたが、台座部21に直接当接する状態で設けてもよいし、モータ支持板212と当接していてもターンテーブル24を挟んでクランパ25と略対向しない位置に設けてもよい。
また、図7〜図10に示すような構成としてもよい。
【0035】
図7に示す構成では、台座スプリング83の代わりに、2個の第二付勢手段としての台座板ばね84Aを設けている。そして、台座板ばね84Aは、一端側がフロートベース底面部223に固定され、他端側がモータ支持板212に当接し、台座部21が押し込まれた際に台座部21を押し返す。
図8に示す構成では、クランパプレート252およびクランパスプリング81の代わりに、第二磁性体としてのクランパプレート253Aおよび10個の第一付勢手段としてのクランパスプリング85Aを設けている。クランパプレート253Aの一面には、10個のクランパスプリング85Aが係合するスプリング係合部253A1が設けられている。そして、クランパスプリング85Aは、ディスク装着状態時にクランパ25をターンテーブル24の方向に付勢する。
【0036】
図9に示す構成では、クランパスプリング81の代わりに、第一付勢手段としてのクランパ板ばね85Bを設けている。クランパ板ばね85Bの一端側には、クランパ本体部251の略中央の凹部251Fに係合する略半球状のばね突部85B1が設けられている。そして、クランパ板ばね85Bは、一端側のばね突部85B1が凹部251Fに回転可能に係合し、他端側がカバー押さえ部材14に固定され、ディスク装着状態時にクランパ25をターンテーブル24の方向に付勢する。
図10に示す構成では、図9に示すクランパ板ばね85Bの代わりに、第一付勢手段としてのクランパスプリング85Cを設けている。このクランパスプリング85Cの一端には、凹部251Fに係合する略球状のばね球状係合部85C1が設けられている。そして、クランパスプリング85Cは、一端側のばね球状係合部85C1が凹部251Fに回転可能に係合し、他端側がカバー押さえ部材14に固定され、ディスク装着状態時にクランパ25をターンテーブル24の方向に付勢する。
【0037】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【0038】
[実施形態の作用効果]
上述したように、ディスク装置100に、ディスク装着状態時にクランパ25をターンテーブル24の方向に付勢するクランパスプリング81と、このクランパスプリング81の付勢力で台座部21が押し込まれた際に台座部21を押し返す台座スプリング83と、を設けている。
このため、クランパ25を磁石吸引力F2とクランパスプリング弾性力F3とによりターンテーブル24に押し付けるとともに、台座スプリング弾性力F4により台座部21を押し返すので、フロートゴム211を撓ませることなく、クランパスプリング弾性力F3と、磁石吸引力F2とをあわせたクランプ力で光ディスク1をクランプすることができる。したがって、ターンテーブル24に対する防振性能を維持しつつ、高速回転に必要なクランプ力を得ることができる。また、クランパスプリング弾性力F3をクランプ力として利用するため、磁石吸引力のみでクランプ力を得る構成と比べて磁石吸引力F2を小さくすることができ、ディスク未装着状態時におけるクランプ音やアンクランプ音を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスク装置の全体の概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】前記一実施形態におけるディスク未装着状態におけるディスク装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【図3】前記一実施形態におけるディスク装着状態におけるディスク装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【図4】前記一実施形態におけるディスク装置の効果を確認するための実験方法を示す説明図である。
【図5】実施例1,2および比較例のクランパにおける動作時間とクランプ音の音量との関係を示すグラフである。
【図6】実施例1,2および比較例のクランパにおける動作時間とアンクランプ音の音量との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の他の実施形態に係るディスク装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態に係るディスク装置の要部の概略構成を示す分解斜視図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態に係るディスク装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【図10】本発明のさらに他の実施形態に係るディスク装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1…ディスク状記録媒体としての光ディスク
1A…軸孔
15…シャーシを構成する枠体
21…台座部
22…シャーシを構成するフロートベース
24…ターンテーブル
25…クランパ
60…台座遠近手段としての開閉駆動手段
81,85A,85C…第一付勢手段としてのクランパスプリング
83…第二付勢手段としての台座スプリング
84A…第二付勢手段としての台座板ばね
85B…第一付勢手段としてのクランパ板ばね
100…ディスク装置
211…防振部材としてのフロートゴム
241…嵌挿部
243…第一磁性体としての磁石
251…クランパ本体部
251A…挿入部
252,253A…第二磁性体としてのクランパプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシと、
弾性変形可能な防振部材を介して前記シャーシに取り付けられた台座部と、
この台座部に取り付けられ、軸孔を有するディスク状記録媒体が載置されるターンテーブルと、
このターンテーブルに係脱可能に設けられ、前記ターンテーブルとにより前記ディスク状記録媒体を挟持するクランパと、
前記台座部を前記クランパに対して遠近させることで前記ターンテーブルを前記クランパに係脱させる台座遠近手段と、を具備し、
前記ターンテーブルは、前記ディスク状記録媒体の軸孔に挿脱可能な略柱状の嵌挿部と、この嵌挿部に設けられた第一磁性体と、を備え、
前記クランパは、前記第一磁性体との間で磁力を発生させる第二磁性体と、前記嵌挿部の軸方向一端部に係脱可能な凹状に形成された挿入部を有し前記第二磁性体を保持するクランパ本体部と、を備えているディスク装置であって、
前記ターンテーブルと前記クランパとによりディスク状記録媒体が挟持された際に前記クランパを前記ターンテーブルの方向に付勢する第一付勢手段と、
この第一付勢手段の付勢力で前記台座部が付勢された際にこの付勢方向と略反対側に前記台座部を付勢する第二付勢手段と、
を具備したことを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載のディスク装置において、
前記第二付勢手段は、前記ターンテーブルを挟んで前記クランパと略対向する位置に設けられた
ことを特徴とするディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−199646(P2009−199646A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38609(P2008−38609)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】