説明

ディスク駆動装置

【課題】ディスクの取り出しを適切に行えるようその排出量を大きくしながら、取り出すべきディスクがスロット部から脱落することを防止できるディスク駆動装置の提供。
【解決手段】ディスク搬送機構の作動により、ディスクDが第1の露出量で筐体外に露出するイジェクト途上位置まで搬出されたとき、ディスクの搬出方向に対する押出アーム8の回転移動を規制してディスクDをイジェクト途上位置に一時停止させるイジェクト中断手段を備える。その手段は、所定の位置に固設されるカム部材25と、押出アーム8に取り付けられるカム従動子26とを係合することにより構成される。イジェクト途上位置におけるディスクの露出端面eを筐体内に押し込むことにより、押出アーム8の移動規制が解除されてディスクDの搬出が再開される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDプレーヤやDVDレコーダに代表されるディスク駆動装置に係わり、特にディスクを交換するなどに際して装置内のディスクを適切に取り出させるようにしたディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CDやDVDといったディスクに楽曲情報などを記録したり、その記録情報を再生したりするディスク駆動装置が一般に良く知られている。係るディスク駆動装置は、ディスクを回転させるターンテーブルやディスクの半径方向に移動するピックアップなどを備えたディスク駆動部を有し、そのターンテーブルによりクランプ盤との間にディスクの中心部をチャッキングしてこれを回転させながら、その半径方向に移動するピックアップによりディスクの記録情報を読み取ったり情報の書き込みを行ったりすることのできる構成とされる。
【0003】
特に、係るディスク駆動装置として、ディスクを載せるトレイを用いず、スリット状の開口部(スロット部)とディスク駆動部を構成するターンテーブルとの間でディスクの搬入および搬出を行うディスク搬送機構を備えたものが知られる。
【0004】
その種のディスク駆動装置はスロットインタイプと呼ばれるが、係るディスク駆動装置として、取り出すべきディスクが装置内から勢い良く搬出されることを防止するために、搬出時のディスクをスロット部の長手方向両側から挟み込むためのブレーキ部材を設けたものが知られる(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−167208号公報(段落0125〜0128及び図14〜15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
然しながら、特許文献1のように、左右一対のブレーキ部材をディスクの端面に押し付ける構成によれば、ブレーキ部材による挟持力によってディスクに作用する制動力にバラツキが生じ、ディスクの停止位置がその都度変わり、最悪の場合にはディスクが停止されることなく勢い余ってスロット部から脱落してしまう虞があった。
【0007】
特に、特許文献1では、ブレーキ部材によりディスクをスロット部の長手方向両側から挟み込むようにしているため、左右一対のブレーキ部材は筐体内におけるスロット部の近傍にあって両者の間隔がディスクの直径よりも小さくなければならない。
【0008】
従って、ディスクは筐体内から大きく張り出さず、その中心穴が筐体の外部に現れないので、ディスクをスロット部から抜取るときその中心穴に指を掛けることができず、ディスクを厚さ方向から摘むことになるためにディスクの信号記録エリアに指が触れて記録情報を劣化させる危険性があった。
【0009】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的はディスクの取り出しを適切に行えるようその排出量を大きくしながら、取り出すべきディスクがスロット部から脱落することを防止できるようにする事にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するため、筐体のスロット部に挿入されたディスクを筐体内における所定のドライブ位置まで搬入すると共に、前記ドライブ位置におけるディスクを前記スロット部より筐体外に搬出するディスク搬送機構を備え、そのディスク搬送機構がディスクに対して搬出方向への押圧力を与えるディスクプッシャ(押出アーム8)を有して構成されるディスク駆動装置であって、
前記ディスク搬送機構の作動により、ディスクが第1の露出量で筐体外に露出するイジェクト途上位置まで搬出されたとき、ディスクの搬出方向に対する押出アーム8の移動を規制してディスクを前記イジェクト途上位置に一時停止させるイジェクト中断手段を備え、前記イジェクト途上位置における一時停止中のディスクが筐体内に押し込まれることにより、前記イジェクト中断手段による押出アーム8の移動規制が解除されてディスクがイジェクト途上位置よりも大きい第2の露出量で露出する位置まで搬出される構成としたことを特徴とする。
【0011】
又、上記のようなディスク駆動装置において、イジェクト中断手段は、所定の位置に固設されるカム部材25と、押出アーム8に取り付けられるカム従動子26とを係合することにより構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のディスク駆動装置によれば、ディスクを第1の露出量で筐体外に露出するイジェクト途上位置に一時停止させながら、これを押し込むことでディスクの搬出動作が再開されてディスクがイジェクト途上位置よりも大きい第2の露出量をもって外部搬出されるようにしていることから、イジェクト途上位置より搬出されるディスクをユーザが指先で待ち受けてディスクの飛び出し、脱落を防止でき、しかもユーザの指先が待ち受けた状態でディスクが搬出されることにより、ディスクの排出量をその中心穴が外部に露出する状態となるように大きくしても該ディスクの脱落を防止でき、この場合にはディスクの中心穴に指先を掛けて信号記録エリアに触れることなくディスクを取り出すことができる。
【0013】
又、ディスクをイジェクト途上位置に一時停止させるイジェクト中断手段が、所定の位置に固設されるカム部材と、ディスクを搬出方向に押圧するためのディスクプッシャに取り付けられるカム従動子との係合によるカム機構で成ることから、ディスクの搬出を誤作動なく確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係るディスク駆動装置の構成例を示した斜視図である。図1において、1は金属板をプレス加工するなどして形成されるシャーシであり、このシャーシ1上には板バネ2を介して座板3が設けられる。
【0015】
そして、その座板3にディスクを回転させるためのターンテーブル4や図示せぬピックアップを取り付けて楽曲情報などの記録/再生を行うドライブユニット5(一般にトラバースメカと称されるディスク駆動部)を構成している。因みに、ターンテーブル4は図示せぬスピンドルモータの駆動軸に直結して一方向に回転駆動され、図示せぬピックアップはターンテーブル4上で回転駆動されるディスクの半径方向に移動しながら記録情報の読み取りや書き込みを行う。又、シャーシ1は、その上部が後述する天板により覆われた状態で図示せぬ筐体内に固定されるが、その筐体前面にはディスクの出し入れに供するスリット状の開口部(スロット部)が形成され、そのスロット部に挿入されたディスクが筐体の内外でディスク搬送機構により自動搬送されるようになっている。
【0016】
尚、本発明では、ディスク搬送機構によるディスクの搬入終了位置をドライブ位置といい、そのドライブ位置ではディスクとターンテーブル4の中心が合致して、ターンテーブル4とこれに対向する図示せぬクランプ盤とによりディスクの中心をチャッキング可能とされる。又、ディスク搬送機構によるディスクの搬出終了位置をイジェクト位置といい、そのイジェクト位置ではディスクの中心穴の半分程度が上記スロット部より外部に露出する状態とされる。特に、本発明によれば、イジェクト中断手段によりディスクがイジェクト位置に到達する前の搬出途上で一時停止されるようになっているが、このときのディスク位置をイジェクト途上位置という。そして、イジェクト途上位置では、ディスクの端面の一部のみが外部に露出する状態(第1の露出量)とされるが、係るイジェクト中断手段については後述する。
【0017】
ここで、上記ディスク搬送機構は、筐体内(ドライブユニット5に対向する位置)にディスクを引き込むための左右一対の引込アーム6,7、筐体内のディスクを外部に押し出すための押出アーム8(ディスクプッシャ)、引込アーム6,7と押出アーム8を作動させるためのスライド部材9、並びにスライド部材9を駆動するための正逆回転可能なモータ10などを有して構成され、引込アーム6,7の各一端にはディスクの端面に接触するローラ6a,7aが設けられる。又、押出アーム8の一端にもディスクの端面に接触する接触部材8aが設けられる。
【0018】
係るディスク搬送機構の構成を図2および図3により更に詳しく説明すると、引込アーム6,7は各々その中間部分がピン11,12にてシャーシ1に回動自在に取り付けられており、その各一端には上述の如くローラ6a,7aが設けられ、両者の他の一端は2つのリンク13,14を介して連接される。リンク14は、シャーシ1に対しピン15で回動自在に取り付けられ、リンク13とは連接ピン16により結合されており、それらリンク13,14の他の一端がそれぞれ引込アーム6,7に対して連接ピン17,18で結合されている。これにより、引込アーム6,7がリンク13,14を通じて逆向きに回動して互いに開閉運動を行うようになっている。
【0019】
一方、ディスクプッシャとしての押出アーム8は、その一端が引込アーム6の回動中心を成すピン11に取り付けられて引込アーム6と回動中心を共有している。ここで、ピン11には図3に示すように捩りバネ19が装着され、その捩りバネ19により引込アーム6と押出アーム8が互いに閉じる方向に付勢されるようにしてある。つまり、引込アーム6はピン11を中心として図3の時計回り(ディスクの搬入方向)に付勢され、押出アーム8は同ピン11を中心として図3の反時計回り(ディスクの搬出方向)に付勢されている。
【0020】
又、図2および図3から明らかなように、スライド部材9は引込アーム6と押出アーム8の配置側に設けられるラック状の部品で、これはシャーシ1に対して摺動自在に取り付けられている。特に、スライド部材9はその長さ方向(ディスクの搬送方向)に移動可能とされ、これには引込アーム6の回動案内をするためのカム溝9aと、押出アーム8の回動案内をするための突起9bが設けられる。尚、カム溝9aには引込アーム6に突設される円柱状の従動ピン6bが挿入され、突起9bは押出アーム8の側面部に摺接される。
【0021】
そして、本例によれば、スライド部材9が図3の矢印方向(ディスクの搬入方向L1)に摺動したとき、カム溝9aと捩りバネ19の働きにより引込アーム6がピン11を中心として図3の時計回りに回動されながら、突起9bが押出アーム8を押圧することにより該押出アーム8が捩りバネ19の付勢力に抗してピン11を中心に図3の時計回りに回動されるようにしてある。尚、スライド部材9の摺動により一方の引込アーム6が図3の時計回りに回動されるとき、他方の引込アーム7は上記の如くリンク13,14を通じて図3の反時計回りに回動するのであり、このためローラ6a,7aの間隔は徐々に狭められることになる。但し、スライド部材9がL1方向における終点位置に差し掛かると、カム溝9aおよびリンク13,14の働きにより一対の引込アーム6,7の回動が逆向きに転換され、これによりローラ6a,7aがディスクの端面から離間する。
【0022】
ここで、シャーシ1には、図2のようにスライド部材9とモータ10との間で伝動機構20が設けられ、その伝動機構20を介してモータ10の動力がスライド部材9に伝達されるようにしてある。係る伝動機構20は、ピニオン部21aを含む二段構造のカムギヤ21を有して構成される歯車列であり、このうちカムギヤ21を構成するピニオン部21aがスライド部材9のラック部9cと噛合わされている。
【0023】
又、図2および図3から明らかなように、シャーシ1には左右一対の引込アーム6,7の間でスライダ22が設けられる。スライダ22は、上記スロット部の長手方向に沿って摺動可能とされる可動部品であり、これには傾斜状に立ち上がるガイド溝22aが形成される。更に、スライダ22とスライド部材9の間にはピン23を回転支点とする揺動レバー24が掛け渡され、その一端がスライダ22に連接されると共に、揺動レバー24の他の一端にはスライド部材9に突設されるピン9dと係合するU字形の切欠24aが形成される。
【0024】
そして、本例によれば、スライド部材9が図3のL1方向に進行するとき、揺動レバーの切欠24aにスライド部材のピン9dが係合して揺動レバー24が図3の反時計回りに回動され、これによってスライダ22がスライド部材9側に引き寄せられつつ上記ドライブユニットの上昇動作が行われるようにしてある。
【0025】
図4および図5で明らかなように、ドライブユニット5には、スライダのガイド溝22aに挿入するガイドピン5aが突設されるのであり、このためスライダ22が上記のようにスライド部材9側に移動すると、ガイドピン5aがガイド溝22aに沿って押し上げられることにより、図5のようにドライブユニット5の上昇動作が行われる。又、スライダ22がスライド部材9から離間する方向に移動すると、ガイドピン5aがガイド溝22aに沿って押し下げられることにより、図4のように板バネ2が撓みつつドライブユニット5が傾斜姿勢に降下することとなる。尚、ドライブユニット5の上昇動作はディスク搬送機構によるディスクの搬入動作に連続して行われ、ドライブユニット5の上昇完了時にはターンテーブル4でディスクが支持される(詳しくは、ターンテーブル4とこれに対向するクランプ盤とによりディスクがその中心部を回転自在にチャッキングされる)。又、ドライブユニット5の降下動作はディスク搬送機構によるディスクの搬出動作に先行して行われ、ドライブユニット5の降下開始時にはターンテーブル4に代わってディスクが引込アーム6,7と押出アーム8とで外周端面部を保持される。
【0026】
次に、本発明の主要部を成すイジェクト中断手段の構成例を図6〜図8に示して説明すれば、係るイジェクト中断手段は、所定の位置に固設されるカム部材25と、ディスクプッシャとしての押出アーム8に取り付けられるカム従動子26とにより構成される。このうち、カム部材25は、押出アーム8との対面側にカム溝27を形成した板状の部材とされる。特に、カム溝27は図7に示されるように、その中間部分が隔壁28を介して2つの経路27a,27bに分けられており、隔壁28にはV字形に切り欠いた凹部29が形成される。
【0027】
一方、カム従動子26は、一端が押出アーム8の中間部分にピン26aにて回動自在に取り付けられるアーム状の部品であり、その自由端側にはカム部材25のカム溝27に係合する従動ピン26bが形成される。特に、図6および図8に示されるように、カム従動子26には押出アーム8の部位に接触する摩擦片26cが設けられ、その摩擦片26cによりカム従動子26に所定の回転抵抗力が与えられ、その回転抵抗力を超える外力が作用しない限りカム従動子26が静止状態を保ち得るようにしてある。
【0028】
そして、上記のようなイジェクト中断手段によれば、押出アーム8の回動によって該押出アームに取り付けたカム従動子26の移動が行われ、これによりカム従動子の従動ピン26bがカム溝27の形状に沿ってその内部を移行し、特にディスクの搬出時においては従動ピン26bがカム溝27内の凹部29に案内され、このときディスクの搬出方向に対する押出アーム8の回転移動が規制されてディスクの搬出動作が中断されるようになっている。
【0029】
尚、図9において、30はドライブユニット5の上部を覆う天板であり、この天板30に押出アーム8と対向する位置でカム部材25が固設される構成としてある。又、図9から明らかなように、天板30には、上記ターンテーブル4と対向する位置でクランプ盤31が取り付けられる。
【0030】
ここで、図10に基づきイジェクト中断手段の動作説明をすると、図10(1)は初期状態(スロット部に対するディスク挿入前)であり、このとき押出アーム8は捩りバネ19により矢印A方向(ディスク搬出方向)に付勢されて側面部がスライド部材の突起9bに押し付けられている。又、カム従動子26はその従動ピン26bがカム溝27の一端にあって静止している。
【0031】
この状態で図示せぬスロット部から筐体内にディスクが挿入されると、ディスクの端面が押出アームの接触部材8aに接触し、これにより押出アーム8がディスクに押されて図10(2)の矢印B方向(ディスク搬入方向)に回動され、このときカム従動子の従動ピン26bが回動半径R1を有してカム溝27内の第1経路27aを進行する。そして、ユーザによるディスクの押し込みで押出アーム8が所定位置まで回動されると、これが図示せぬセンサにより検知されてディスク搬送機構がディスクを搬入するべく起動し、これによりスライド部材の突起9bが図10(2)の矢印L1方向(ディスク搬入方向)に移動しながら押出アーム8を更に矢印B方向に回動させる。
【0032】
しかして、ディスクの搬入が完了した時点において、押出アーム8はその側面部が捩りバネ19によりスライド部材の突起9bに押し付けられたまま図10(3)の位置に静止される。又、このとき従動ピン26bはカム溝の第1経路27aの先端に位置して回動半径がR2(R2<R1)に変化されている。
【0033】
一方、ディスクの搬出時において、スライド部材の突起9bが図10(4)の矢印L2方向(ディスク搬出方向)に移動することにより、押出アーム8も捩りバネ19の付勢力を受けて同図矢印A方向に回動される。このとき、従動ピン9bは経路27aを搬入時とは逆向きに移動するが、その回動半径が上記の如くR2に変化されていることにより、該従動ピン26bが第1経路27aから第2経路27b側に誘導される。そして、この時点で従動ピン26bが経路27a,27bを分ける隔壁の凹部29に嵌り込むようになる。このため、押出アーム8はイジェクト中断手段により拘束されて図10(4)の矢印A方向(ディスク搬出方向)に対する回転移動を規制されるのであり、このときディスクが押出アーム8から押圧力を受けることなく上記イジェクト途上位置に一時停止されることになる。
【0034】
ここで、ディスクの露出端面(筐体の外部に露出する端面)がユーザにより外部から押し込まれると、そのディスクを通じて押出アーム8が図10(5)の矢印B方向に回動されるが、従動ピン26bは凹部29内への嵌り込みに際して回動半径がR2からR3(R3<R2)に変化されることにより、経路27a内を進入することなく図10(4)〜図10(5)のように回動半径をR3からR4に変化されながら経路27bの端部に進行する。
【0035】
その後、ユーザがディスクを押し込むのをやめると、押出アーム8が捩りバネ19の付勢力により図10(6)の矢印A方向(ディスク搬出方向)に回動されるが、このとき従動ピン26bは回動半径R4をもって隔壁28に衝突することなく経路27b内を進行するのであり、このためイジェクト中断手段による押出アーム8の移動規制が解除され、その押出アーム8が図10(6)の矢印A方向に回動しながらディスクの端面を搬出方向に押圧し、以ってディスクがイジェクト途上位置よりも大きな露出量(第2の露出量)で露出するイジェクト位置まで搬出されることとなる。
【0036】
尚、ディスクがイジェクト位置に搬出される際には、ディスクの搬出を再開すべくその露出端面を押し込んだユーザの指先がディスクを待ち受けるので、ディスクがスロット部から脱落することはなく、これを適切に取り出すことができる。
【0037】
次に、ディスク搬送機構によるディスクの搬送動作について説明する。先ず図11によりディスクの搬入動作について説明すると、図11(1)は初期状態(ディスクの搬入前)であり、このとき一方の引込アーム6は、捩りバネ19の付勢力により従動ピン6bがスライド部材のカム溝9aの片面に押し付けられた状態で位置決めされている。又、他方の引込アーム7はリンク13,14を通じてシャーシ1の壁面に押し付けられた状態で位置決めされており、この状態では左右のローラ6a,7aの間隔がディスクDの直径よりも小さくなっている。尚、押出アーム8は、捩りバネ19によりスライド部材の突起9bに押し付けられた状態で位置決めされている。
【0038】
この状態で外部からスロット部にディスクDを挿入すると、その端面がローラ6a,7aに接触するが、ディスクDを更に強く押し込むと、その押込力によりローラ6a,7aが押され、左右の引込アーム6,7が捩りバネ19の付勢力に抗して押し広げられる。
【0039】
そして、ディスクの中心部がローラ6a,7aの間を通過した時点では、図11(2)のように当該ディスクDの端面が押出アームの接触部材8aにも接触するようになり、このとき捩りバネ19の作用でローラ6a,7aと接触部材8aがそれぞれディスクDの端面に押圧されるために、ディスクDは3点支持されるようになる。又、ディスクDが引込アームのローラ6a,7aと押出アームの接触部材8aとで3点支持された段階では、引込アーム6の位置が図示せぬセンサにより検知され、その検知信号に基づいてディスクの搬入方向L1に対するスライド部材9の移動が開始される。
【0040】
すると、スライド部材9の突起9bにより押出アーム8が側面部を押圧されて図11(2)の時計回りに回動される一方、引込アーム6,7は捩りバネ19により閉じる方向の付勢力を受けてディスクDを押出アーム8側に押圧する。このため、ディスクDは、引込アームのローラ6a,7aと押出アームの接触部材8aとで3点支持されたまま搬入方向L1に移動され、やがてディスクの中心部がターンテーブルと対向する位置(ドライブ位置)まで到達することとなる。
【0041】
図11(3)は、ディスクがドライブ位置に到達した状態であり、この状態ではスライド部材9のカム溝9aの形状により引込アーム6,7の回動が規制されるほか、押出アーム8がスライド部材の突起9bにより図11(3)の時計回りに回動されることなく、捩りバネ19による反時計回りの回動を阻止されただけの状態となり、このためディスクDは3点支持されたままドライブ位置に停止されるが、スライド部材9はその後も移動され続ける。
【0042】
ディスクDがドライブ位置に到達した後もスライド部材9の移動が続行されると、やがてスライド部材のピン9dが図11(4)のように揺動レバーの切欠24aに係合し、これによって揺動レバー24が同図の反時計回りに回動されつつスライダ22をスライド部材9側に引き寄せる。
【0043】
このため、上記ドライブユニット5が上昇され、これに装備されるターンテーブル4によりドライブ位置に停止されたままのディスクDが中心部を支持されつつ、そのチャッキング動作(ターンテーブルとクランプ盤によるディスク中心部の挟み込み)が行われる。尚、図11で明らかなように、スライダ22とシャーシ1はトグルバネ32により連係されており、スライダ22が右側に位置するときにはトグルバネ32から右向きの付勢力が与えられると共に、スライダ22が左側に位置するときにはトグルバネ32から左向きの付勢力が与えられ、これによりスライダ22を位置決めしながらドライブユニット5の昇降駆動力を軽減できるようにしている。
【0044】
又、上記のようなディスクのチャッキング動作に並行し、スライド部材9のカム溝9aが従動ピン6bを図11(4)の右方に押圧することによる引込アーム6の逆転回動が行われるほか、スライド部材9の突起9bが押出アーム8の側面部を押圧することによる押出アーム8の回動が再開されることにより、図11(4)のようにローラ6a,7aおよび接触部材8aがディスクの外周端面部から離間され、以ってディスクDをドライブする準備が整えられる。
【0045】
一方、ディスクの搬出は、上記のような搬入動作とは逆の動作により行われる。但し、ディスクの搬出時においては、イジェクト中断手段により上記のようにディスクがイジェクト途上位置に一時停止される。
【0046】
詳しくは、ディスク搬送機構によるディスクDの搬出時において、スライド部材9が図12(1)の矢印L2方向(ディスク搬出方向)に移動されることにより、ドライブユニットの降下に続いて引込アームのローラ6a,7aと押出アームの接触部材8aとによるディスクDの支持が行われる。そして、スライド部材9が更にL2方向に移動すると、捩りバネ19の働きにより押出アーム8が図12(1)の反時計回り(ディスク搬出方向)に回動されて、ディスクDが押出アームの接触部材8aにより端面を押圧されつつイジェクト途上位置まで搬出される。
【0047】
図12(1)に示されるイジェクト途上位置において、押出アーム8は上記のようにイジェクト中断手段によりディスクの搬出方向に対する回転移動を規制されるのであり、このためディスクは端面の一部を外部に露出させた状態(第1の露出量)でイジェクト途上位置に一時停止される。
【0048】
そして、この段階でイジェクト途上位置に一時停止中のディスクの露出端面eを筐体内(搬入方向)に押し込むと、図12(2)のように、押出アーム8がディスクDに押されて同図時計回りに回動され、これによりカム従動子の従動ピン26bがカム溝27内の凹部29から外れることとなる。
【0049】
その後、ディスクDの押し込みをやめると、押出アーム8はイジェクト中断手段により回転移動を規制されることなく、図12(3)のようにディスクの端面を搬出方向に押圧しながら反時計回り(ディスク搬出方向)に回動する。
【0050】
しかして、ディスクDは図12(4)のように、押出アーム8に押圧されつつイジェクト途上位置よりも大きな露出量(第2の露出量)となる位置まで再搬出されるが、ディスクDの中心部がローラ6a,7aの間を通過した後には、カム従動子の従動ピン26bとスライド部材の突起9bにより押出アーム8が停止される一方で、ディスクDに対するローラ6a,7aの圧接力がディスクDを搬出する方向に作用するようになる結果、ディスクDは引込アーム6,7により図12(4)の位置より更に大きく押し出され、最終的に中心穴hがスロット部より筐体外に露出するイジェクト位置まで搬出されるようになる。
【0051】
従って、ディスクの中心穴hに指先を掛け、ディスクDの信号記録エリアに触れる事なくこれを取り出すことができる。尚、ディスクDがイジェクト位置に搬出される際には、上記のようにディスクDの搬出を再開すべくその露出端面eを押し込んだユーザの指先がディスクDを待ち受けるので、ディスクDがスロット部から脱落することもない。
【0052】
以上、本発明について説明したが、ディスクに対して搬出方向の押圧力を与えるディスクプッシャは、上記のような回動運動を行う押出アーム8に限らず、ディスクの搬出方向にバネ付勢された状態で同方向に直進移動するような部材でもよい。
【0053】
又、ディスクは、イジェクト途上位置からの再搬出によりイジェクト途上位置より排出量(露出量)が大きくなればよく、イジェクト位置において必ずしもディスクの中心穴が外部に露出されなくてもよい。
【0054】
尚、本発明はCDプレーヤ、DVDレコーダ、又はカーナビゲーション用のDVDプレーヤなど様々なディスク駆動装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るディスク駆動装置の内部構造を示す斜視図
【図2】同装置におけるディスク搬送機構を示す斜視図
【図3】シャーシを省略して示したディスク搬送機構の斜視図
【図4】ディスクを駆動するドライブユニットを示す斜視図(降下状態)
【図5】同ドライブユニットを示す斜視図(上昇状態)
【図6】イジェクト中断手段の構成例を示す斜視図
【図7】同イジェクト中断手段を下側からみた斜視図
【図8】同イジェクト中断手段を部分的に破断して示した側面図
【図9】同イジェクト中断手段を構成するカム部材の固設例を示す説明図
【図10】同イジェクト中断手段の動作説明図
【図11】ディスクの搬入動作を示す説明図
【図12】ディスクの搬出動作を示す説明図
【符号の説明】
【0056】
4 ターンテーブル
5 ドライブユニット
6,7 引込アーム
8 押出アーム(ディスクプッシャ)
9 スライド部材
19 捩りバネ
25 カム部材
26 カム従動子
26b 従動ピン
26c 摩擦片
27 カム溝
27a 第1経路(従動ピン26bの往路)
27b 第2経路(従動ピン26bの復路)
29 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体のスロット部に挿入されたディスクを筐体内における所定のドライブ位置まで搬入すると共に、前記ドライブ位置におけるディスクを前記スロット部より筐体外に搬出するディスク搬送機構を備え、そのディスク搬送機構がディスクに対して搬出方向への押圧力を与えるディスクプッシャを有して構成されるディスク駆動装置であって、
前記ディスク搬送機構の作動により、ディスクが第1の露出量で筐体外に露出するイジェクト途上位置まで搬出されたとき、ディスクの搬出方向に対するディスクプッシャの移動を規制してディスクを前記イジェクト途上位置に一時停止させるイジェクト中断手段を備え、前記イジェクト途上位置における一時停止中のディスクが筐体内に押し込まれることにより、前記イジェクト中断手段によるディスクプッシャの移動規制が解除されてディスクがイジェクト途上位置よりも大きい第2の露出量で露出する位置まで搬出される構成としたことを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
前記イジェクト中断手段は、所定の位置に固設されるカム部材と、ディスクプッシャに取り付けられるカム従動子とを係合することにより構成されることを特徴とする請求項1記載のディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−164918(P2007−164918A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361773(P2005−361773)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】