説明

ディスプレイ用光学シート及びその製造方法及びバックライト・ユニット並びに表示装置

【課題】表面側のレンチキュラーレンズなどのレンズ構造と、裏面側の開口部を含む反射層の構造とのアラインメントが良好で光の利用効率に優れた光学シート及びこれを用いたバックライト・ユニット並びに表示装置を提供する。
【解決手段】単位レンズであるシリンドリカルレンズもしくはプリズムまたはそれらの集合体からなるレンズ層4を有するレンズシート1のレンズ層4と反対の面に、単位レンズの光軸を含む中央部に対応して光透過用の開口部2aを有する白色反射層2を形成して光学シート10を構成する。そして、反射層2を2層に形成するレンズシート1のレンズ層4と反対の面に、光反射性を持つ粘着層2を介してレンズシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に液晶表示素子を用いたディスプレイ用バックライト・ユニットにおける照明光路制御などに使用される光学シート及びその製造方法及び該光学シートを用いたバックライト・ユニット並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)に代表されるディスプレイには、提供される情報を認識するのに必要な光源(バックライト)を内蔵しているタイプのものの普及が著しい。特にラップトップコンピュータのような電池式表示装置においては、光源で消費する電力が装置全体で消費する電力の相当部分を占める。このため、電池式表示装置にとって、所定の輝度を提供するのに必要な総電力を低減することによって電池寿命を増大させることは特に望ましい。
【0003】
この問題を解決するために、光源または導光板と液晶バネルとの間に輝度強調フィルム(Brightness Enhancement Film:BEF、米国3M社の登録商標)を備えた光学シートが広く使用されている。
BEFは、透明基材上に断面三角形状の単位プリズムを一方向に周期的に配列したフィルムである。このプリズムは光の波長に比較して大きいサイズ(ピッチ)で形成されている。BEFは、“軸外(off−axis)”からの光を集光し、この光を視聴者に向けて“軸上(on−axis)”に方向転換(redirect)または“リサイクル(recycle)”する。ディスプレイの使用時(観察時)に、BEFは軸外輝度を低下させることによって軸上輝度を増大させる。ここで言う「軸上」とは、視聴者の視覚方向に一致する方向であり、一般的にはディスプレイ画面に対する法線方向である。
【0004】
プリズムの反復的アレイ構造が1方向のみの配列では、その配列方向での光の方向転換またはリサイクルのみが可能である。そこで、水平および垂直方向での表示光の輝度制御を行うために、プリズム群の配列方向が互いに略直交するように、2枚のシートを重ねて組み合わせて用いる。BEFの採用により、ディスプレイ設計者は、電力消費を低減しながら所望の軸上輝度を達成することができるようになった。BEFに代表されるプリズムの反復的アレイ構造を有する輝度制御部材をディスプレイに採用することは、多数の特許文献に開示されている(たとえば特許文献1乃至3参照)。
【0005】
BEFを輝度制御部材として用いた光学シートでは、光源からの光が屈折作用によって制御された角度でフィルムより出射され、視聴者の視覚方向の光の強度を高めるように制御することができる。しかし、視聴者の視覚方向に進むことなく横方向に出射する想定外の光線も存在する。すなわち、BEFを備えた光学シートから出射される光の強度分布に関しては、視聴者の視覚方向(軸上方向に対する角度が0°)における光強度が最も高いが、軸上方向に対して±90°近辺にも小さな光強度ピークが生じ、横方向から無駄に出射される光が増えるという問題がある。このような光強度ピークを有する輝度分布は望ましくなく、±90°近辺での光強度ピークのない滑らかな輝度分布の方が望ましい。
【0006】
このような問題を解決するために、プリズムではなく単位レンズの反復的アレイ構造(レンチキュラーレンズともいわれる)を有する光学シートが提案されている(たとえば特許文献4参照)。
この光学シートの液晶パネル側の面は、光源から発せられ光学シート内を進行した光を液晶パネルへ導くように、複数の単位レンズが反復的に形成されたアレイ構造となっている。この光学シートの他方の面には、レンズの焦点面近傍が開口部となるようにストライプ状にパターン化された反射層が設けられている。単位レンズが半円柱状凸シリンドリカルレンズの場合、各々の単位レンズに1:1で対応して開口部ができるように、反射層がストライプ状に形成される。このような反射層は、白色顔料たとえば二酸化チタン(TiO)粉末を透明な樹脂などの溶液に混合した混合物を、所定のパターンとなるように、印刷または転写することにより形成される。
【0007】
このような光学シートを液晶ディスプレイのバックライト・ユニットに組み込むと、拡散フィルムから出射した光のうち、反射層間の開口部を通過した光のみがレンズに入射し、レンズによって一定方向に集光された後に出射される。さらに、光学シートから出射した光は偏光板に入射し、所定の偏光成分の光のみが液晶パネルに導かれる。
一方、開口部を通過しなかった光は、反射層で反射されて拡散フィルム側に戻され、反射板へ導かれる。そして、反射板によって反射されることによって再び拡散フィルムに入射し、拡散フィルムにおいて再び拡散された後に、いずれは入射角度が絞られた光となった後に開口部を通ってレンズに入射し、レンズによって所定角度内に絞られて光学シートから出射される。
【0008】
このような光学シートを用いたバックライト・ユニットでは、反射層間の開口部の大きさ及び位置を調節することによって、光の利用効率を高めながら、レンズから正面方向に出射される光の割合を高めるように制御することができる。
【特許文献1】特公平1−37801号公報
【特許文献2】特公平6−102506号公報
【特許文献3】特表平10−506500号公報
【特許文献4】特開2000−284268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の光学シートは、そのレンズ層を構成するレンチキュラーレンズと、このレンズ層と反対の面に形成された反射層及び開口部との間に位置不整合が生じた場合、モアレや輝度ムラが生じ、輝度向上フィルムとして機能しなくなる。このため、レンズ層を有する表面側と反射層及び開口部を有する裏面側の構造でアライメントを正確に取る必要があり、製造上の課題がある。
例えば、別々のフィルムにレンズ層または反射層及び開口部を形成し、その後、これらを貼り合せて一体化する方法では、アライメント精度の維持に問題が生じる。しかも、レンズ層と反射層を別途に成型する必要があり、製造工数が増加する。
【0010】
上述したような光学シートにおける表裏面構造のアラインメントの課題を解決するために、その表裏面構造を同時に成型する方法が考えられる。しかし、このような方法を用いると、部材や工程の増加を伴うため、歩留りを低下する要因となり、ひいてはコストの上昇要因となる。特に、表裏面におけるレンズなどの形状を、放射線硬化性樹脂を用いて金型で成型しようとすると、表裏構造それぞれを成型する2つの金型でフィルムをサンドイッチする必要がある。しかし、放射線硬化性樹脂を硬化するためには放射線の照射が必須であるため、2つの金型を用いる方法は採用できない。
【0011】
一方、同一のフィルムに対して、順次、表面側の構造を成型して放射線照射し、裏面側の構造を成型して放射線照射する方法では、最初の成型時の樹脂の硬化収縮または熱収縮などによる形状のズレ、特にストライプ幅方向のズレが顕著となり、表裏面構造のアライメントに悪影響が生じ、現実的には採用できない。
【0012】
本発明は上記のような従来の問題を解決するためになされたもので、その目的は、表面側のレンチキュラーレンズなどのレンズ構造と、裏面側の開口部を含む反射層の構造とのアラインメントが良好で光の利用効率に優れた光学シート及びその製造方法及び該光学シートを用いたバックライト・ユニット並びに表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係る発明は、ディスプレイ用バックライト・ユニットにおける照明光路制御に使用される光学シートにおいて、一方の面に単位レンズを一定のピッチで配列形成してなるレンズ層を有するレンズシートと、前記レンズシートの前記レンズ層と反対の面に形成され前記単位レンズの光軸を含む中央部に対応して光透過用の開口部を有する反射層とを備え、前記反射層は、その厚さ方向に重ねられた2層構造に構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1記載の光学シートにおいて、前記レンズシートは透明な支持フィルムを備え、前記支持フィルムの一方の面に前記レンズ層が積層して形成され、前記レンズ層は放射線硬化型樹脂からなることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1項記載の光学シートにおいて、前記反射層の前記レンズシート側の層が赤外吸収剤を含むことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1項記載の光学シートにおいて、前記反射層の前記レンズシート側の層が赤外吸収剤を含み、かつ可視光に対して透過性を有することを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1項記載の光学シートにおいて、前記反射層の前記レンズシートと反対の面に前記開口部を覆うように光拡散フィルムが積層接着されていることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1記載の光学シートにおいて、前記単位レンズはシリンドリカルレンズもしくはプリズムからなり、前記レンズ層は前記シリンドリカルレンズもしくはプリズムの集合体からなることを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は、ディスプレイ用バックライト・ユニットにおける照明光路制御に使用される光学シートの製造方法であって、一方の面に単位レンズを一定のピッチで配列形成してなるレンズ層を有するレンズシートを設け、前記レンズシートの前記レンズ層と反対の他方の面に反射層を2層に形成し、前記反射層に前記レンズ層側からレーザー光を照射して前記単位レンズの集光作用により前記反射層に露光領域と未露光領域を生じさせ、前記露光領域を除去することにより光透過用の開口部を形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項8の発明は、請求項7記載の光学シートにおいて、前記レンズシートは透明な支持フィルムを備え、前記支持フィルムの一方の面に前記レンズ層が積層して形成され、前記レンズ層は放射線硬化型樹脂からなることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項7項記載の光学シートの製造方法において、前記反射層の前記レンズシート側の層が赤外吸収剤を含むことを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項7項記載の光学シートの製造方法において、前記反射層の前記レンズシート側の層が赤外吸収剤を含み、かつ可視光に対して透過性を有することを特徴とする。
【0018】
請求項11の発明は、請求項7項記載の光学シートの製造方法において、前記反射層の前記レンズシートと反対の面に前記開口部を覆うように光拡散フィルムが積層接着されていることを特徴とする。
請求項12の発明は、請求項7記載の光学シートの製造方法前記単位レンズはシリンドリカルレンズもしくはプリズムからなり、前記レンズ層は前記シリンドリカルレンズもしくはプリズムまたはそれらの集合体からなることを特徴とする。
【0019】
請求項13の発明は、ディスプレイ用バックライト・ユニットであって、表示画像を規定する画像表示素子と、前記画像表示素子の背面に、光源と、請求項1乃至6何れか1項にの光学シートもしくは請求項7乃至12何れか1項に記載の方法により製造された光学シートを少なくとも備えることを特徴とする。
請求項14の発明は、請求項13記載のディスプレイ用バックライト・ユニットにおいて、前記画像表示素子は液晶表示素子であることを特徴とする。
【0020】
請求項15の発明は、表示装置であって、画素単位での透過/遮光に応じて表示画像を規定する画像表示素子と、前記画像表示素子の背面に、光源と、請求項13または14記載のディスプレイ用バックライト・ユニットを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる光学シートは、単位レンズであるシリンドリカルレンズもしくはプリズムまたはそれらの集合体からなるレンズ層を有するレンズシートのレンズ層と反対の面に、単位レンズの光軸を含む中央部に対応して光透過用の開口部を有する反射層が2層に形成されているので、これをディスプレイ用のバックライト・ユニットに用いた場合に光の利用効率が高いバックライト・ユニット及び表示装置を提供することができる。
また、本発明においては、反射層を2層にすることにより、反射層の密着度を向上させることができ、圧力や張力、温度変化などに対しする耐久性を向上することができる。
さらに、反射層の2層の膜厚や2層のバランスを取ることにより反射率を調整することができ、材料選定の幅を広げることが可能である。
【0022】
また、本発明によれば、レンズシートを透明な支持フィルムと放射線硬化型樹脂からなるレンズ層とを積層した二層構造とすることにより、レンズシートの膜厚調整が容易になり、安定性や機械的強度も向上させることができる。
また、本発明によれば、反射層のレンズシート側の層に赤外吸収剤を含ませることにより、例えば赤外レーザーを用いた加工性を向上させつつも、最外層の白色度を維持することが容易になる。
また、本発明によれば、反射層のレンズシート側の層に赤外吸収剤を含ませ、かつ可視光に対して透過性を持たせ、さらに赤外吸収層に白色顔料を含まずに済むことから材料選定の幅が広がるととともに、バインダーリッチな構成となり、反射層の機械的強度を容易に向上することが可能になる。
添加される赤外吸収層の効果により加工性の維持が可能であり、製作工程の共通化などメリットが大きい。
【0023】
また、本発明によれば、レンズシートの一方の面にシリンドリカルレンズもしくはプリズムまたはそれらの集合体が形成されたレンズ層を形成し、このレンズ層と反対のレンズシートの他方の面に2層の反射層を形成することで、レーザー照射時に発生する顔料の発色を抑えることが可能であり、容易に明度の良い白色層を得ることができる。
また、本発明によれば、赤外線吸収剤での感度向上効果の他、デブリと呼ばれる加工時のダスト発生度合いの調整、高温に晒されることによる変色防止の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における光学シートの断面図である。
この図1において、光学シート10は、レンチキュラーレンズ(ストライプ状の半円柱状凸シリンドリカルレンズの反復アレイ構造)などの構造を持つ単位レンズ1aが一定のピッチで配列形成されてなるレンズシート1を備え、このレンズシート1の単位レンズ1aと反対の面には、2層の反射層2が単位レンズ1aに対応してストライプ状に形成されている。また、互いに隣接ストライプ状の反射層2の間、すなわち、単位レンズ1aの光軸を含む中央部に対応する箇所には光透過用の開口部2aが形成されている。この開口部2aは、レンズシート1に単位レンズ1a側から入射された平行光の集光形状にほぼ一致している。
また、反射層2のレンズシート1と反対の面には、開口部2aを覆うように光拡散フィルム12が接着剤11により積層接着されている。
【0025】
(第2の実施の形態)
図2は本発明の他の実施形態における光学シートの断面図である。
この図2において、光学シート10は、支持フィルム3の一方の面にレンチキュラーレンズ(ストライプ状の半円柱状凸シリンドリカルレンズの反復アレイ構造)などの構造を持つ単位レンズ4aを一定のピッチで配列形成してなるレンズ層4を有するレンズシート1を備え、このレンズシート1の単位レンズ1aと反対の面には、2層の反射層2が単位レンズ1aに対応してストライプ状に形成されている。また、互いに隣接ストライプ状の反射層2の間、すなわち、単位レンズ1aの光軸を含む中央部に対応する箇所には光透過用の開口部2aが形成されている。この開口部2aは、レンズシート1に単位レンズ1a側から入射された平行光の集光形状にほぼ一致している。この場合、支持フィルム3の厚さは、支持フィルム3の裏面(反射層2側)がレンズシート1全体の集光位置近傍となるように設定される。
支持フィルム3の厚さを上記のように設定すれば、ストライプ状の光反射性を持つ粘着層2の間に形成された光透過用の開口部2aを、容易かつ高精度にレンズシート1に単位レンズ4a側から入射された平行光の集光形状に一致するように調整することができる。因みに、支持フィルム3の厚みは、通常、50μmから200μm程度である。
【0026】
レンズ層4の材料には、特に微細な加工が必要な場合、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂などの放射線硬化型樹脂を用いることが望ましい。放射線硬化型樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーに反応希釈剤、光重合開始剤、光増感剤などを添加した組成物を用いることができる。
【0027】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは特に限定されないが、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコールなどと、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンイソシアネートなどのポリイソシアネート類とを反応させて得ることができる。
また、上記エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは特に限定されないが、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型プロピレンオキサイド付加物の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂などのエポキシ樹脂類と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得ることができる。
【0028】
上記反射層2の材料は、樹脂中に白色顔料を分散させたものが用いられる。白色顔料としてはTiO2、BaSO、ZnO、Al23、Agなどを用いることができる。
上記反射層2の厚みを5μm以上とすることにより十分な白色が得られ所望の透過率に調整することができるとともに、擦れなどに対して十分な強度を持ち容易に剥離/脱落することがなくなる。また、反射層2の厚みを100μm以下とすることによりパターンの加工形状を良好にするとともに材料コストを下げることができる。このような厚みを有する反射層2は、層の内部で光を反射することができるので、体積的な反射層ということができる。
【0029】
上記硬化剤には、例えば、多官能イソシアネート、多官能エポキシ化合物、または金属キレートが使用される。
また、上記白色顔料としては、TiO、BaSO、ZnO、Al、Agなどを用いることができる。光反射性を持つ粘着層2の厚みを5μm以上とすることにより十分な白色が得られ所望の透過率に調整することができるとともに、擦れなどに対して十分な強度を持ち、安易に剥離/脱落することがなくなる。また、光反射性を持つ粘着層の厚みを100μm以下とすることによりパターンの加工形状を良好にするとともに材料コストを下げることができる。このような厚みを有する光反射性を持つ粘着層2は、層の内部で光を反射することができるので、体積的な反射層ということができる。
【0030】
次に、図3および図4を参照して、本発明に係るレンズシートおよび光反射性を持つ粘着層の製造方法の一例を説明する。
【0031】
まず、図3に示すように、巻き出しロール101から支持フィルム3を供給し、その表面に塗布装置102により紫外線硬化樹脂を塗布する。この支持フィルム3を、表面にレンチキュラーレンズの逆の形状が形成されたレンズ成型ロール103と加圧ロール103aとの間に通し、支持フィルム3上の紫外線硬化樹脂にレンズ構造を転写する。その後、紫外線照射装置104から紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させて、図4に示すようにレンズ層4を形成する。
【0032】
支持フィルム3としては、紫外線透過性を有する透明な樹脂フィルムが好ましく、レンズ層が形成される面に紫外線硬化性樹脂の易接着処理を施していることが一層好ましい。また、支持フィルム3の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)などが挙げられる。
【0033】
上記紫外線硬化樹脂の塗布装置102は特に限定されないが、ドクターブレード、ダイコーターなどが望ましい。支持フィルム3への紫外線硬化樹脂の塗布厚さは、形成するレンチキュラーレンズの形状によって異なるが、0.02〜0.2mmが適当である。紫外線硬化樹脂の塗布厚さは、樹脂の粘度、支持フィルムの送り速度などによって調整することができる。
また、支持フィルム3の表面に形成されるレンチキュラーレンズと逆形状のレンズ成型ロール103としては、切削加工した金属型やこの金属型から所定の方法により複製した樹脂製の型を、ロール表面に配設したものなどが用いられる。
【0034】
次に、図4に示すように、レンズシート1のレンズ層4と反対の面(平坦面)に白色顔料を含有する反射層2を形成する(図示せず)。この反射層2の原料を、樹脂溶液に白色顔料を分散させた液状の白色インキとして供給することができれば、印刷法、塗工法、転写法などを使用することができるので、生産上都合がよい。また必要に応じて、反射層2の形成後に適宜ドライヤーなどを用いて樹脂の乾燥/硬化を行ってもよい。また、反射層2を2層化するためには、材料を変えて上記プロセスを繰り返せば容易に得ることができる。
【0035】
反射層の印刷法としては、グラビア印刷法、シルク印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法などを選択できる。ベタ印刷であるため、数度の加刷により、必要な厚さの反射層を形成すればよい。塗工法としては、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーターなどを選択できる。転写法を用いる場合、転写箔を使用し、熱転写方式、昇華転写方式、接着や粘着を利用した転写方式などを使用することができる。
また、上記反射層2の厚みは、5μmを超え、100μm以下とすることが好ましい。粘着層2の厚みが5μmを超えると、十分な白色が得られ所望の透過率に調整することができるとともに、擦れなどに対して十分な強度を持ち容易に剥離/脱落することがなくなる。また、反射層2の厚みを100μm以下にすれば、パターンの加工形状を良好にするとともに材料コストを下げることができる。
【0036】
次に、図4に示すように、平行光としてレーザー光6をレンズシート1のレンズ層4側から照射する。この状態で、レンズシート1に対しレーザー光6をストライプ長方向(紙面に垂直な方向)に相対的に移動させることにより、レンズ層4を構成する単位レンズ4aの集光作用で反射層2に露光領域と未露光領域を生じさせ、露光領域を除去することで光透過用の開口部2aを形成する。この操作を、レンズシート1に対してレーザー光6をストライプの配列方向(矢印方向)に沿って相対的に移動させて繰り返すことにより、ストライプ状の反射層2を残すことができる。このようにしてレンズシート1の構造に応じた反射層2のストライプパターンを得ることができる。
【0037】
前記レーザー光6の波長は、反射層2に充分なエネルギーを与えることができれば、特に限定されない。ただし、レンズシート1の透過率、反射層2の吸収率などを考慮して、YAGレーザー(波長1.064μm)やLDなどで得られる波長0.8μm以上のレーザー光を用いることが好ましい。
また、ストライプ状反射層の加工後に、この反射層を固定化するために紫外線などの放射線を照射する手法も有効である。充分な照射量の紫外線を照射して、表裏面の樹脂を充分に硬化させることにより、生産を安定させ、長期間使用しても変質が少ない製品を得ることができる。
最終的な加工を行ったレンズシートはセパレータフィルムをラミした上巻き取り部で巻き取ってもよいし、そのまま拡散板との貼合/接着を行うラインに接続して次工程を進めてもよい。
【0038】
上記のように構成されたレンズシート1を、拡散機能を有する拡散板または拡散フィルムと貼合や接着することにより一体化した光学シート10を形成することができる。これを光源(バックライト)などの部材と組み合わせてバックライト・ユニットを構成し、さらに液晶パネルと組み合わせて液晶ディスプレイを製造することができる。
【0039】
次に、図5により本発明の光学シートを用いたバックライト・ユニットを具備する液晶表示装置について説明する。
図5において、液晶表示装置100は、液晶パネル30(特許請求の範囲に記載した画像表示素子に相当する)と、この液晶パネル30の光入射側に臨ませて配置されたバックライト・ユニット40を備える。
前記バックライト・ユニット40は、液晶パネル30の光入射側に臨ませて配置された、照明光路制御用の光学シート10及び直下型光源23を含んで構成される。また、前記光学シート10は、上記図1に示す場合(または図2に示す場合)と同様に構成されているのでその構成説明は省略する。
【0040】
前記直下型光源23は、光学シート10を構成する光散乱シート5の光入射面に対向して配設されるもので、光散乱シート5の光入射面に対向して配列された複数の光源20と、この光源20を収容するランプハウス21と、このランプハウス21を含む光源20を光散乱シート5の反対側から覆うように配置された光反射版22とから構成されている。
また、前記液晶パネル30は、レンズシート1のレンズ層4と対向する側に配置されるもので、この液晶パネル30の表面と裏面には、液晶パネル30が表裏両面から挟持されるように偏光板31と32が設けられている。これにより、液晶ディスプレイ、すなわち液晶表示装置が構成される。
【0041】
拡散機能を有する光拡散フィルム12の材料としては、映像光波長に対し透明な材料であって、光学部材に使用するものを制限することなく用いることができるが、生産効率などを考慮するとプラスチックフィルムを用いることが好ましい。このプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いれば経験上取扱が容易で好ましいが、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル−スチレン共重合体、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニルなども用いることができる。
また、拡散機能を有する光拡散フィルム12の材料には、投射する映像の再現に実用上差し支えない透過率と、機械的強度があればよく、主なプラスチック材料としてメタクリルスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などを使用することができる。プラスチック板以外にガラス板(フロートガラス、青板ガラス、BK7など)を使用することもできる。
【0042】
なお、本発明にかかる光学シートは、液晶表示装置以外の用途にも使用することができる。例えば、光学シートのストライプ状反射層に適宜着色を施して用いることもできる。特にストライプ状反射層を黒色に着色し、適切な光拡散フィルムと貼合/接着して、透過型スクリーンに用いることもできる。
【0043】
次に本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
この実施例1においては、図2に示す構造の光学シートを製造した。また、支持フィルム3として、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡A4300)を用いた。
【0044】
図3に示した光学シート製造方法で、支持フィルム3上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、紫外線硬化性樹脂にレンズ成型ロール103のレンズ構造を転写した後、紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、レンズ層を形成する。これにより、レンズシートを作製した。単位レンズの形状は、ピッチ140μmで楕円面を基準面とし高次項により補正を加えた非球面形状とした。このように140μmピッチで単位レンズを形成すると、厚さ75μmのPETからなる支持フィルム3の裏面近傍が、反射層のストライプ加工に用いるレーザー光の焦点面となる。
【0045】
このようにして得られたレンズシートのレンズ層と反対の面に、まず2層の反射層の一層目として顔料を2種(酸化チタンと硫酸バリウムを1:1)で配合した厚さ5μmの反射層を形成し、塗布/乾燥処理の後に、酸化チタン100%を顔料とした二層目の反射層を形成した。
次に、図4に示した方法で、反射層のストライプ加工を行った。YAGレーザーから出射された波長1064nmのレーザー光6を、レンズシート1のレンズ層側から照射し、レーザーを走査することによって、単位レンズによるレーザー光6の集光部分に対応する反射層2の一部を露光し、この露光部分を選択的に除去して、反射層2のストライプパターンを形成した。
【0046】
この場合、レーザー光のレンズシート1への入射角度を種々変化させてパターン形成への影響を調べた。具体的には、鉛直方向に対するレンズのストライプ長方向へのレーザー光の傾き角を、0度、10度、20度、30度と変化させたが、いずれの条件でもストライプパターンを得ることができた。
さらに、2層の反射層の一層目としてアクリルバインダーのみにIR吸収剤(有機系吸収剤)を配合した厚さ5μmの反射層を形成し、塗布/乾燥処理の後に、酸化チタン100%を顔料とした二層目の反射層を形成した場合でも、同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明にかかる第1の実施の形態を示す光学シートの断面図。
【図2】本発明にかかる第2の実施の形態を示す光学シートの断面図。
【図3】本発明にかかるレンズシートの製造方法を示す模式図。
【図4】本発明にかかる光学シートの製造方法を示す模式図。
【図5】本発明にかかる光学シートを組み込んだ液晶ディスプレイの構成を示す模式図。
【符号の説明】
【0048】
1……レンズシート、1a……単位レンズ、2……粘着層、2a……開口部、3……支持フィルム、4……レンズ層、4a……単位レンズ、6……レーザー光、10……光学シート、20……光源、21……ランプハウス、22……光反射板、23……直下型光源、30……液晶パネル、31、32……偏光板、101……巻き出しロール、102……塗布装置、103……レンズ成型ロール、103a……加圧ロール、104……紫外線照射装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ用バックライト・ユニットにおける照明光路制御に使用される光学シートにおいて、
一方の面に単位レンズを一定のピッチで配列形成してなるレンズ層を有するレンズシートと、
前記レンズシートの前記レンズ層と反対の面に形成され前記単位レンズの光軸を含む中央部に対応して光透過用の開口部を有する反射層とを備え、
前記反射層は、その厚さ方向に重ねられた2層構造に構成されている、
ことを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記レンズシートは透明な支持フィルムを備え、前記支持フィルムの一方の面に前記レンズ層が積層して形成され、前記レンズ層は放射線硬化型樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の光学シート。
【請求項3】
前記反射層の前記レンズシート側の層が赤外吸収剤を含むことを特徴とする請求項1項記載の光学シート。
【請求項4】
前記反射層の前記レンズシート側の層が赤外吸収剤を含み、かつ可視光に対して透過性を有することを特徴とする請求項1項記載の光学シート。
【請求項5】
前記反射層の前記レンズシートと反対の面に前記開口部を覆うように光拡散フィルムが積層接着されていることを特徴とする請求項1項記載の光学シート。
【請求項6】
前記単位レンズはシリンドリカルレンズもしくはプリズムからなり、前記レンズ層は前記シリンドリカルレンズもしくはプリズムの集合体からなることを特徴とする請求項1記載の光学シート。
【請求項7】
ディスプレイ用バックライト・ユニットにおける照明光路制御に使用される光学シートの製造方法であって、
一方の面に単位レンズを一定のピッチで配列形成してなるレンズ層を有するレンズシートを設け、
前記レンズシートの前記レンズ層と反対の他方の面に反射層を2層に形成し、
前記反射層に前記レンズ層側からレーザー光を照射して前記単位レンズの集光作用により前記反射層に露光領域と未露光領域を生じさせ、前記露光領域を除去することにより光透過用の開口部を形成した、
ことを特徴とする光学シートの製造方法。
【請求項8】
前記レンズシートは透明な支持フィルムを備え、前記支持フィルムの一方の面に前記レンズ層が積層して形成され、前記レンズ層は放射線硬化型樹脂からなることを特徴とする請求項7記載の光学シート。
【請求項9】
前記反射層の前記レンズシート側の層が赤外吸収剤を含むことを特徴とする請求項7項記載の光学シートの製造方法。
【請求項10】
前記反射層の前記レンズシート側の層が赤外吸収剤を含み、かつ可視光に対して透過性を有することを特徴とする請求項7項記載の光学シートの製造方法。
【請求項11】
前記反射層の前記レンズシートと反対の面に前記開口部を覆うように光拡散フィルムが積層接着されていることを特徴とする請求項7項記載の光学シートの製造方法。
【請求項12】
前記単位レンズはシリンドリカルレンズもしくはプリズムからなり、前記レンズ層は前記シリンドリカルレンズもしくはプリズムまたはそれらの集合体からなることを特徴とする請求項7記載の光学シートの製造方法。
【請求項13】
表示画像を規定する画像表示素子と、
前記画像表示素子の背面に、光源と、請求項1乃至6何れか1項にの光学シートもしくは請求項7乃至12何れか1項に記載の方法により製造された光学シートを少なくとも備える、
ことを特徴とするディスプレイ用バックライト・ユニット。
【請求項14】
前記画像表示素子は液晶表示素子であることを特徴とする請求項13記載のディスプレイ用バックライト・ユニット。
【請求項15】
画素単位での透過/遮光に応じて表示画像を規定する画像表示素子と、
前記画像表示素子の背面に、光源と、請求項13または14記載のディスプレイ用バックライト・ユニットを備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−304518(P2008−304518A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149059(P2007−149059)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】