説明

ディスプレイ装置の駆動回路

【課題】ディスプレイ装置の消費電力を低減する。
【解決手段】ソースフォロワ回路を構成し、ソースから発光素子を発光させる駆動電圧を供給するトランジスタ28と、トランジスタ28のソース−ドレイン間を接続する電力回収用のダイオードD1と、トランジスタ28のゲートに直列に接続されたスイッチSW1と、トランジスタ28のソース−ゲート間を接続するスイッチSW2とを備え、発光素子を駆動する期間において、スイッチSW1を接続状態とすると共に、スイッチSW2を遮断状態とし、発光素子から電力を回収する期間において、スイッチSW1を遮断状態とすると共に、スイッチSW2を接続状態とすることを可能とした駆動回路により上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置の駆動回路に関する。特に、無機エレクトロ・ルミネセンス(EL)ディスプレイ装置の駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル型のディスプレイ装置として無機エレクトロ・ルミネセンス(EL)ディスプレイ装置が知られている。無機ELディスプレイ装置は、表示面内において絶縁性基板上に互いに平行に連設された複数のロウ(行)電極線Lrowと、ロウ電極線Lrow上面に形成された高誘電体膜と、高誘電体膜の上に設けられた中間層、蛍光体層、中間層を介してロウ電極線Lrowに直交する方向に延伸され、互いに平行に周期的に配設された無機EL発光体層と、無機EL発光体層の上に互いに平行に配設された線状の複数のカラム(列)電極線Lcolを含んで構成されている。ロウ電極線Lrowはロウドライバに接続され、カラム電極線Lcolはカラムドライバにそれぞれ接続される。
【0003】
無機ELディスプレイ装置は、図8に示す等価回路で表すことができる。ロウドライバ10により複数のロウ電極線Lrowのうち1つが順次選択され、選択されたロウ電極線Lrowにロウ電圧Vrowが印加される。また、カラムドライバ12に対して外部回路から選択された行に含まれる各画素に対する階調情報が入力され、その階調情報に基づいて所定のモジュレーション電圧Vmがカラムドライバ12から各カラム電極線Lcolに印加される。選択されたロウ電極線Lrowに対応する各画素の無機EL発光体層には、ロウ電圧Vrowと各カラム電極線Lcolとの電位差が印加される。その結果、選択されたロウ電極線Lrow上の各画素の無機EL発光体層は、その電位差に応じた発光強度の光を出力する。そして、無機ELディスプレイ装置に含まれる各行を順次選択して上記制御を行うことによって、無機ELディスプレイ装置の表示画面を走査して1フレームの画像を表示させることができる。
【0004】
特許文献1には、無機ELディスプレイ装置の各画素の駆動回路が開示されている。この駆動回路50は、図9に示すように、論理回路52、トランジスタ54〜66、コンデンサ68を含んで構成される。論理回路52は、階調データ70を受けて、階調データ70をパルス幅符号化(PWM)信号72に変換して出力する。トランジスタ54は、コンデンサ68とトランジスタ56と直列に接続される。コンデンサ68にはランプ電圧Vが印加される。トランジスタ56はPWM信号72のパルスを受けるとオン状態となり、トランジスタ56のドレイン側の電圧Vは閾値電圧Vに保持される。一方、PWM信号72のパルスが出力されていない場合、トランジスタ56はオフ状態となり、電圧Vはランプ電圧Vにつれて変化する。すなわち、PWM信号72のパルス幅が大きいほど電圧Vは小さくなり、PWM信号72のパルス幅が小さいほど電圧Vが大きくなる。トランジスタ64は、ソースフォロワドライバ回路を構成する。電圧VPPは正弦波の交流電源であり、駆動回路50の出力電圧VOUTは、電圧Vと電圧VPPとを掛け合わせた電圧となる。無機ELディスプレイ装置の各画素は、ロウドライバ10から選択されたロウ電極線Lrowに印加される電圧Vrowと、カラムドライバ12からカラム電極線Lcolに印加される出力電圧VOUTとの電位差によって発光する。図10に示すように、ロウドライバ10から選択されたロウ電極線Lrowに印加される電圧Vrowと、カラムドライバ12からカラム電極線Lcolに印加される出力電圧VOUTとの電位差が最大電位差ΔVMAXの場合に最も輝度が高くなり、最小電位差ΔVMINの場合に最も輝度が低くなる。なお、図10(a)には、電圧Vrowと出力電圧VOUTとの極性が逆である場合を示し、図10(b)には、電圧Vrowと出力電圧VOUTとの極性が等しい場合を示している。
【0005】
また、トランジスタ58,60による電圧降下は、トランジスタ64,66の閾値電圧Vに等しいトランジスタ58,60の閾値電圧Vの合計に等しいので、駆動回路50の出力は“デッドバンド”をもたないものとなる。
【0006】
【特許文献1】特開平9−179519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の駆動回路50は、発光素子に印加された電力を回収することができない。従って、省電力特性が悪く、このような駆動回路を用いるとディスプレイ装置全体の消費電力が大きくなる問題を生ずる。特に、発光素子を携帯用電子機器に搭載する場合、消費電力の低減が必要となる。
【0008】
また、上記従来の駆動回路では、出力電圧VOUTは極性が定まった0〜80Vの電圧となるので、各画素の両端に印加される電圧Vrowと出力電圧VOUTとの電位差も最大電位差ΔVMAX〜最小電位差ΔVMINにかけて常に極性が等しいものとなる。このように、EL素子に極性が一定である電圧を印加し続ける片側駆動方式では、EL素子の寿命が短くなる問題を生ずる。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題を鑑み、上記課題の少なくとも1つを解決するディスプレイ装置の駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、発光素子を発光させる階調に対応する駆動電圧を生成し、前記駆動電圧を発光素子に供給することによって発光素子を発光させるディスプレイ装置の駆動回路であって、ソースフォロワ回路を構成し、ソースから駆動電圧を供給する第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのソース−ドレイン間を接続する電力回収用のダイオードと、前記第1のトランジスタのゲートに直列に接続された第1のスイッチと、前記第1のトランジスタのソース−ゲート間を接続する第2のスイッチと、を備え、発光素子を駆動する期間において、前記第1のスイッチを接続状態とすると共に、前記第2のスイッチを遮断状態とし、発光素子から電力を回収する期間において、前記第1のスイッチを遮断状態とすると共に、前記第2のスイッチを接続状態とすることを可能としたことを特徴とする。
【0011】
両側駆動方式の場合、ソースフォロワ回路を構成し、ソースから前記第1のトランジスタとは逆極性の駆動電圧を供給する第2のトランジスタと、前記第2のトランジスタのソース−ドレイン間を接続する電力回収用のダイオードと、前記第2のトランジスタのゲートに直列に接続された第3のスイッチと、前記第2のトランジスタのソース−ゲート間を接続する第4のスイッチと、を備え、発光素子を駆動する期間において、前記第3のスイッチを接続状態とすると共に、前記第4のスイッチを遮断状態とし、発光素子から電力を回収する期間において、前記第3のスイッチを遮断状態とすると共に、前記第4のスイッチを接続状態とすることを可能とした回路を備える。
【0012】
ここで、発光素子を発光させる階調を示す階調データを受けて、前記階調データが示す階調が所定の閾値以上である場合、接地電位以上であって前記階調データに応じた最大ランプ電圧へ昇圧されるランプ電圧を前記第1のトランジスタのゲートに供給し、前記階調データが示す階調が所定の閾値より小さい場合、接地電位以下であって前記階調データに応じた最小ランプ電圧へ降圧されるランプ電圧を前記第2のトランジスタのゲートに供給する回路を備えることが好適である。
【0013】
前記第1又は第2のトランジスタのドレインには正弦波又は余弦波の電圧が印加されることが好適である。
【0014】
上記本発明の駆動回路はバイポーラトランジスタで構成することも可能である。すなわち、発光素子を発光させる階調に対応する駆動電圧を生成し、前記駆動電圧を発光素子に供給することによって発光素子を発光させるディスプレイ装置の駆動回路であって、エミッタフォロワ回路を構成し、エミッタから駆動電圧を供給する第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのエミッタ−コレクタ間を接続する電力回収用のダイオードと、前記第1のトランジスタのベースに直列に接続された第1のスイッチと、前記第1のトランジスタのエミッタ−ベース間を接続する第2のスイッチと、を備え、発光素子を駆動する期間において、前記第1のスイッチを接続状態とすると共に、前記第2のスイッチを遮断状態とし、発光素子から電力を回収する期間において、前記第1のスイッチを遮断状態とすると共に、前記第2のスイッチを接続状態とすることを可能としたことを特徴とする。
【0015】
両側駆動方式の場合、エミッタフォロワ回路を構成し、エミッタから前記第1のトランジスタとは逆極性の駆動電圧を供給する第2のトランジスタと、前記第2のトランジスタのエミッタ−コレクタ間を接続する電力回収用のダイオードと、前記第2のトランジスタのベースに直列に接続された第3のスイッチと、前記第2のトランジスタのエミッタ−ベース間を接続する第4のスイッチと、を備え、発光素子を駆動する期間において、前記第3のスイッチを接続状態とすると共に、前記第4のスイッチを遮断状態とし、発光素子から電力を回収する期間において、前記第3のスイッチを遮断状態とすると共に、前記第4のスイッチを接続状態とすることを可能とした回路を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発光素子に印加された電力を高い効率で回収することができる。これによって、駆動回路及びそれを用いたディスプレイ装置の消費電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態におけるディスプレイ装置の駆動回路100は、図1に示すように、レベルシフト回路20、デッドバンド除去回路22、トランジスタ24〜29及びコンデンサC1を含んで構成される。
【0018】
従来のディスプレイ装置の駆動回路は、例えば0〜80Vという接地電位に対して片側の電圧で発光素子を駆動させていた。本実施の形態における駆動回路100は、例えば−40V〜40Vという接地電位に対して正負両側の電圧で発光素子を駆動させる。
【0019】
レベルシフト回路20は、論理回路及び電圧シフト回路を含んで構成される。レベルシフト回路20はパルス発生回路に相当する。論理回路は、EL素子の発光強度を示すディジタルの階調データの入力を受けて、階調データに応じたパルス幅を有するパルス幅符号化(PWM)信号であるチャネル信号を生成する。チャネル信号は、EL素子の発光強度の階調が大きいほど広いパルス幅を有する信号である。このとき、階調データが示す階調が所定の閾値以上である場合に階調データが示す階調から閾値を引いた値に対応するパルス幅を有するPチャネル信号を生成し、階調データが示す階調が閾値より小さい場合に階調データが示す階調に対応するパルス幅を有するNチャネル信号を生成する。すなわち、論理回路は、階調データに応じてNチャネル信号とPチャネル信号とを切り替えて出力する。電圧シフト回路は、論理回路から出力されるチャネル信号を高圧に昇圧する。論理回路まではロジック回路で構成されるので、チャネル信号は低電圧(例えば、0〜3.3V)のパルス信号となる。そこで、電圧シフト回路では、後段の高電圧回路を駆動するために、低電圧のチャネル信号を高電圧(例えば、±40V)に変換する。
【0020】
図2に、電圧シフト回路の一例を示す。トランジスタ30〜33は、Pチャネル信号の昇圧回路を構成する。トランジスタ31のドレインはトランジスタ30のドレイン−ソース間を介して正の高圧電源バイアスAVDD(例えば、+40V)に接続され、トランジスタ31のソースは低圧電源バイアスDVSS(例えば、接地電位)に接続される。Pチャネル型のトランジスタ30のゲートには、正のゲートバイアスVpが印加されて電流源として機能する。Nチャネル型のトランジスタ31のゲートにはPチャネル信号が入力される。トランジスタ31は、Pチャネル信号のパルスが立ち上がっている期間はオン状態となり、パルスが立ち上がっていない期間はオフ状態となる。従って、トランジスタ31のドレイン端子の電圧は、Pチャネル信号のパルスが立ち上がっている期間はほぼ負の低圧電源バイアスDVSSに維持され、パルスが立ち上がっていない期間はほぼ正の高圧電源バイアスAVDDに維持される。
【0021】
トランジスタ32のソースは正の高圧電源バイアスAVDDに接続され、トランジスタ32のドレインはトランジスタ33のドレイン−ソース間を介して負の高圧電源バイアスAVSS(例えば、−40V)に接続される。Nチャネル型のトランジスタ33のゲートには、負のゲートバイアスVnが印加されて電流源として機能する。Pチャネル型のトランジスタ32のゲートにはトランジスタ31のドレインが接続され、ドレイン端子の電圧変化がPチャネル高圧信号として出力される。すなわち、トランジスタ30〜33の昇圧回路により、3.3VレベルのPチャネル信号が±40Vレベルのパルス信号に変換されて出力される。
【0022】
トランジスタ34〜37は、Nチャネル信号の昇圧回路を構成する。トランジスタ34のドレインはトランジスタ35のドレイン−ソース間を介して負の高圧電源バイアスAVDD(例えば、−40V)に接続され、トランジスタ34のソースは正の低圧電源バイアスDVDD(例えば、+3.3V)に接続される。Nチャネル型のトランジスタ35のゲートには、負のゲートバイアスVnが印加されて電流源として機能する。Pチャネル型のトランジスタ34のゲートにはNチャネル信号が入力される。トランジスタ34は、Nチャネル信号のパルスが立ち上がっている期間はオフ状態となり、パルスが立ち上がっていない期間はオン状態となる。従って、トランジスタ34のドレイン端子の電圧は、Nチャネル信号のパルスが立ち下がっている期間はほぼ正の低圧電源バイアスDVDDに維持され、パルスがたち下がっていない期間はほぼ負の高圧電源バイアスAVSSに維持される。
【0023】
トランジスタ37のソースは負の高圧電源バイアスAVSSに接続され、トランジスタ37のドレインはトランジスタ36のドレイン−ソース間を介して正の高圧電源バイアスAVDDに接続される。Pチャネル型のトランジスタ36のゲートには、正のゲートバイアスVpが印加されて電流源として機能する。Nチャネル型のトランジスタ37のゲートにはトランジスタ34のドレインが接続され、ソース端子の電圧変化がNチャネル高圧信号として出力される。すなわち、トランジスタ34〜37の昇圧回路により、+3.3VレベルのNチャネル信号が±40Vレベルのパルス信号に変換されて出力される。
【0024】
図1に示すように、レベルシフト回路20から出力されるPチャネル高圧信号及びNチャネル高圧信号はトランジスタ24及び26のゲートにそれぞれ入力される。トランジスタ24のソースはランプ電圧VR(+)は接続され、トランジスタ26のソースはランプ電圧VR(−)に接続される。また、トランジスタ24のドレインとトランジスタ26のドレインとが接続され、接続点AはコンデンサC1を介して接地される。
【0025】
ランプ電圧VR(+)は、レベルシフト回路20へPWM信号が入力されるタイミングに同期して基準電位(例えば、接地電位GND)から昇圧を開始し、Pチャネル信号(Pチャネル高圧信号)の最大パルス幅に相当する時間で最大ランプ電圧VRMAX(例えば、+40V)に到達するように一定速度で昇圧される。また、ランプ電圧VR(−)は、レベルシフト回路20へPWM信号が入力されるタイミングに同期して基準電位(例えば、接地電位GND)から降圧を開始し、Nチャネル信号(Nチャネル高圧信号)の最大パルス幅に相当する時間で最小ランプ電圧VRMIN(例えば、−40V)に到達するように一定速度で降圧される。
【0026】
トランジスタ24は、Pチャネル高圧信号のパルスが出力されている期間だけオン状態となる。また、トランジスタ26は、Nチャネル高圧信号のパルスが出力されている期間だけオン状態となる。従って、Pチャネル高圧信号のパルスが出力されている場合には、ランプ電圧VR(+)によりコンデンサC1はPチャネル高圧信号のパルス幅に相当する時間だけ充電され、その充電電圧Vcはパルス幅に対応する値となる。一方、Nチャネル高圧信号のパルスが出力されている場合には、ランプ電圧VR(−)によりコンデンサC1はNチャネル高圧信号のパルス幅に相当する時間だけ充電され、その充電電圧Vcはパルス幅に対応する値となる。
【0027】
デッドバンド除去回路22は、コンデンサC1の充電電圧Vcを出力電圧として受けて、デッドバンドの除去を行う。図3に、デッドバンド除去回路22の例を示す。
【0028】
トランジスタ38のドレインは正の高圧電源バイアスAVDDに接続され、トランジスタ38のソースはトランジスタ39のドレイン−ソースを介して負の高圧電源バイアスAVSSに接続される。トランジスタ38のゲートにはコンデンサの充電電圧Vcが入力される。また、Nチャネル型のトランジスタ39のゲートには負のゲートバイアスVnが印加されて電流源として機能する。
【0029】
トランジスタ41のドレインは負の高圧電源バイアスAVSSに接続され、トランジスタ41のソースはトランジスタ40のドレイン−ソースを介して正の高圧電源バイアスAVDDに接続される。トランジスタ41のゲートにはコンデンサの充電電圧Vcが入力される。また、Pチャネル型のトランジスタ40のゲートには正のゲートバイアスVpが印加されて電流源として機能する。
【0030】
充電電圧Vcが正電位になると、ソースフォロワ回路を構成するトランジスタ41の作用により、充電電圧Vcの変化に追従して充電電圧Vc+閾値電圧Vtがトランジスタ41のソースからNチャネル除去信号として出力される。一方、充電電圧Vcが負電位になると、ソースフォロワ回路を構成するランジスタ38の作用により、充電電圧Vcの変化に追従して充電電圧Vc−閾値電圧Vtがトランジスタ38のソースからPチャネル除去信号として出力される。
【0031】
図1に示すように、Nチャネル除去信号はトランジスタ28のゲートに入力され、Pチャネル除去信号はトランジスタ29のゲートに入力される。トランジスタ28のドレインは正の交流(正弦波)電源Vsin(+)に接続され、トランジスタ29のドレインは負の交流(正弦波)電源Vsin(−)に接続される。トランジスタ28のソースはトランジスタ29のソースと接続され、その接続点からEL素子の駆動電圧VDRVが出力される。
【0032】
ここで、正の交流(正弦波)電源Vsin(+)は、図4に示すように、基準電位(例えば、接地電位GND)を最小ピーク電圧とし、正の高圧電源バイアスAVDD(例えば、+40V)を最高ピーク電圧とする正弦波交流とする。また、負の交流(正弦波)電源Vsin(−)は、図4に示すように、基準電位(例えば、接地電位GND)を最大ピーク電圧とし、負の高圧電源バイアスAVSS(例えば、−40V)を最小ピーク電圧とする正弦波交流とする。
【0033】
トランジスタ29は、充電電圧Vcが正電位になると、図4に示すように、負の交流電源Vsin(−)をカットオフ電圧として、Pチャネル除去信号の変化に応じてPチャネル除去信号−閾値電圧Vt、すなわち充電電圧Vcに対応する駆動電圧VDRVを出力する。一方、トランジスタ28は、充電電圧Vcが負電位になると、図4に示すように、正の交流電源Vsin(+)をカットオフ電圧として、Nチャネル除去信号の変化に応じてNチャネル除去信号+閾値電圧Vt、すなわち充電電圧Vcに対応する駆動電圧VDRVを出力する。
【0034】
ここで、トランジスタ28による電圧降下はトランジスタ41の閾値電圧Vで補償され、トランジスタ29による電圧降下はトランジスタ38の閾値電圧Vで補償されるので、駆動回路100の出力は“デッドバンド”をもたないものとなる。
【0035】
従って、選択されたロウ電極線Lrowに接続されたEL素子には、図5に示すように、ロウ電極線Lrowに印加される電圧Vrowと、基準電位(接地電位)に対して正負の両極に振れる駆動電圧VDRVとの電位差がΔVMINからΔVMAXの範囲で印加されることとなる。この電位差によって発光素子が階調データに応じた発光強度で発光する。一方、選択されていないロウ電極線Lrowに接続されたEL素子には、図6に示すように、基準電位(接地電位)に対して正負の両極に振れる駆動電圧VDRVとの電位差が印加される。これによって、EL素子の寿命を従来よりも著しく長くすることができる。
【0036】
また、駆動回路100は、EL素子に蓄積されたエネルギーを電源に回収するための電力回収用のダイオードD1,D2を含むことも好適である。これによって、図4に示すように、EL素子の駆動期間TDRVに続く回収期間TRCVにおいて、EL素子に蓄積されたエネルギーを交流電源Vsin(+)又はVsin(−)に回収させることができる。このとき、駆動回路100は、電力を効率良く回収するための電力回収用のダイオードD3〜D6を備えることが好適である。
【0037】
例えば、プラスの電圧(電荷)がEL素子の容量に蓄積されていた場合、電力回収時にその電荷はダイオードD1を介して交流電源Vsin(+)に流れる。このとき、コンデンサC1に貯まっていた電荷も同様に交流電源Vsin(+)に流れるが、コンデンサC1の端子電圧Vcは交流電源Vsin(+)よりもダイオードD3,D4の端子間電圧分だけ高い電圧となる。従って、Pチャネルのトランジスタ29はオフ状態となり、効率良く電力を回収することができる。同様に、マイナスの電圧(電荷)がEL素子の容量に蓄積されていた場合には、ダイオードD5,D6の作用によってトランジスタ28がオフ状態となり、交流電源Vsin(−)に電力が効率良く回収される。
【0038】
ところが、一般的にEL素子のロウ側の端子はフローティングになっており、複数のEL素子のロウ側の端子は共通に接続されている。そのため、EL素子の駆動状況に応じてロウ側の電位が変動することがある。例えば、プラスの電圧(電荷)がEL素子の容量に蓄積されていた場合、回収期間TRCVにEL素子のロウ側の電位が上昇する変動を受けたとすると、トランジスタ28と共にトランジスタ29もオン状態となり、EL素子の容量に蓄積されていた電力が交流電源Vsin(+)にうまく回収できなくなる。同様に、マイナスの電圧(電荷)がEL素子の容量に蓄積されていた場合、回収期間TRCVにEL素子のロウ側の電位が下降したとすると、トランジスタ29と共にトランジスタ28もオン状態となり、EL素子の容量に蓄積されていた電力が交流電源Vsin(−)にうまく回収できなくなる。
【0039】
そこで、デッドバンド除去回路22の出力端とトランジスタ28のゲート間にスイッチSW1、トランジスタ28のゲート−ソース間にスイッチSW2、デッドバンド除去回路22の出力端とトランジスタ29のゲート間にスイッチSW3、トランジスタ29のゲート−ソース間にスイッチSW4を設ける回路構成とすることが好適である。駆動期間TDRVには、スイッチSW1,SW3を接続状態、スイッチSW2,SW4を遮断状態とする。一方、回収期間TRCVには、スイッチSW1,SW3を遮断状態、スイッチSW2,SW4を接続状態とする。
【0040】
より具体的には、図7に示すように、スイッチSW1〜SW4としてトランスファーゲート81〜84とし、駆動回路の外部からトランスファーゲート81〜84の接続・遮断を制御する構成とすることができる。駆動期間TDRVには、外部制御端子にローレベル(負電位)の制御信号を印加することによってトランスファーゲート81,83を接続状態、トランスファーゲート82,84を遮断状態とする。一方、回収期間TRCVには、外部制御端子にハイレベル(正電位)の制御信号を印加することによってトランスファーゲート81,83を遮断状態、トランスファーゲート82,84を接続状態とする。
【0041】
これによって、回収期間TRCVにはトランジスタ28,29が切り離され、ダイオードD1,D2のみが有効となり、EL素子に蓄積されていた電力を確実に回収することができる。
【0042】
ここで、回収期間TRCVはVsin(+)及びVsin(−)のピーク値から最小値までの期間に含まれるように設定することが好適である。特に、駆動電圧VDRVの絶対値が減少する期間に設定することが好適である。このように回収期間TRCVを設定することによって、EL素子の発光をより確実に行うと共に、EL素子に蓄積されていた電力を効率的に回収することができる。
【0043】
このように、電力の回収期間TRCVにトランジスタを切り離すスイッチ素子を設ける構成は、両側駆動方式の駆動回路に限定されることはなく、片側駆動方式の駆動回路においても有効である。また、本実施の形態では、トランジスタはFETとして説明を行ったが、バイポーラトランジスタを用いても同様に回路を構成することができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、ディスプレイ装置として無機ELディスプレイ装置を対象として説明を行ったがこれに限定されるものでない。両極性の印加電圧によって発光可能な素子を利用したディスプレイ装置であれば本発明の適用対象範囲とすることができる。ただし、無機ELディスプレイのように印加電圧の範囲が数十V程度になるディスプレイ装置では、正負の両側駆動とすることによって発光素子の寿命を延ばし、駆動回路に含まれる素子の必要耐圧を抑えることができる等の効果が顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態におけるディスプレイ装置の駆動回路の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における電圧シフト回路の具体例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるデッドバンド除去回路の具体例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における駆動電圧の生成を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態における発光素子の両側駆動を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態における発光素子の両側駆動を説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態における電力回収用の回路の具体例を示す図である。
【図8】従来のディスプレイ装置の等価回路を示す図である。
【図9】従来のディスプレイ装置の駆動回路の構成を示す図である。
【図10】従来の実施の形態における発光素子の片側駆動を説明する図である。
【符号の説明】
【0046】
10 ロウドライバ、12 カラムドライバ、20 レベルシフト回路、22 デッドバンド除去回路、24〜41 トランジスタ、50 駆動回路、52 論理回路、54〜66 トランジスタ、68 コンデンサ、70 階調データ、72 PWM信号、81〜84 トランスファーゲート、100 駆動回路、SW1〜SW4 スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を発光させる階調に対応する駆動電圧を生成し、前記駆動電圧を発光素子に供給することによって発光素子を発光させるディスプレイ装置の駆動回路であって、
ソースフォロワ回路を構成し、ソースから駆動電圧を供給する第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタのソース−ドレイン間を接続する電力回収用のダイオードと、
前記第1のトランジスタのゲートに直列に接続された第1のスイッチと、
前記第1のトランジスタのソース−ゲート間を接続する第2のスイッチと、を備え、
発光素子を駆動する期間において、前記第1のスイッチを接続状態とすると共に、前記第2のスイッチを遮断状態とし、
発光素子から電力を回収する期間において、前記第1のスイッチを遮断状態とすると共に、前記第2のスイッチを接続状態とすることを可能としたことを特徴とする駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動回路において、
ソースフォロワ回路を構成し、ソースから前記第1のトランジスタとは逆極性の駆動電圧を供給する第2のトランジスタと、
前記第2のトランジスタのソース−ドレイン間を接続する電力回収用のダイオードと、
前記第2のトランジスタのゲートに直列に接続された第3のスイッチと、
前記第2のトランジスタのソース−ゲート間を接続する第4のスイッチと、を備え、
発光素子を駆動する期間において、前記第3のスイッチを接続状態とすると共に、前記第4のスイッチを遮断状態とし、
発光素子から電力を回収する期間において、前記第3のスイッチを遮断状態とすると共に、前記第4のスイッチを接続状態とすることを可能としたことを特徴とする駆動回路。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動回路において、
発光素子を発光させる階調を示す階調データを受けて、
前記階調データが示す階調が所定の閾値以上である場合、接地電位以上であって前記階調データに応じた最大ランプ電圧へ昇圧されるランプ電圧を前記第1のトランジスタのゲートに供給し、
前記階調データが示す階調が所定の閾値より小さい場合、接地電位以下であって前記階調データに応じた最小ランプ電圧へ降圧されるランプ電圧を前記第2のトランジスタのゲートに供給する回路を備えることを特徴とする駆動回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の駆動回路において、
前記第1又は第2のトランジスタのドレインには正弦波又は余弦波の電圧が印加されることを特徴とする駆動回路。
【請求項5】
発光素子を発光させる階調に対応する駆動電圧を生成し、前記駆動電圧を発光素子に供給することによって発光素子を発光させるディスプレイ装置の駆動回路であって、
エミッタフォロワ回路を構成し、エミッタから駆動電圧を供給する第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタのエミッタ−コレクタ間を接続する電力回収用のダイオードと、
前記第1のトランジスタのベースに直列に接続された第1のスイッチと、
前記第1のトランジスタのエミッタ−ベース間を接続する第2のスイッチと、を備え、
発光素子を駆動する期間において、前記第1のスイッチを接続状態とすると共に、前記第2のスイッチを遮断状態とし、
発光素子から電力を回収する期間において、前記第1のスイッチを遮断状態とすると共に、前記第2のスイッチを接続状態とすることを可能としたことを特徴とする駆動回路。
【請求項6】
請求項5に記載の駆動回路において、
エミッタフォロワ回路を構成し、エミッタから前記第1のトランジスタとは逆極性の駆動電圧を供給する第2のトランジスタと、
前記第2のトランジスタのエミッタ−コレクタ間を接続する電力回収用のダイオードと、
前記第2のトランジスタのベースに直列に接続された第3のスイッチと、
前記第2のトランジスタのエミッタ−ベース間を接続する第4のスイッチと、を備え、
発光素子を駆動する期間において、前記第3のスイッチを接続状態とすると共に、前記第4のスイッチを遮断状態とし、
発光素子から電力を回収する期間において、前記第3のスイッチを遮断状態とすると共に、前記第4のスイッチを接続状態とすることを可能としたことを特徴とする駆動回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−119452(P2006−119452A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308317(P2004−308317)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】