説明

ディスプレイ装置及び情報処理装置

【課題】ユーザに立体映像を表示するディスプレイ装置において、ユーザの視聴する位置が移動しても、精度良くかつ自動で、左眼及び右眼用の映像が反転することなく、自然な立体映像の認識させることができる。
【解決手段】立体映像として左眼用と右眼用の映像を出力する表示部及び表示部で出力された左眼用と右眼用の映像をそれぞれユーザの左眼と右眼で知覚させるためのフィルタ部を備えるディスプレイ装置であって、ユーザの眼と表示部及びフィルタ部との相対的な位置関係を検出する位置検出手段と、位置検出手段により検出された位置関係に基づいて、表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を調整する表示調整手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置及び情報処理装置に関し、特に、ユーザに立体映像を表示するディスプレイ装置及び情報処理装置に好ましく適用される技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、ハイビジョンテレビやPCモニタ等、ユーザに立体映像を表示するディスプレイ装置がさかんに提供されてきている。当該ディスプレイ装置は、いくつか異なる原理に基づいたものが存在するが、左右の眼に別々の映像を見せることでユーザに立体感を与えるものが多い。左右の眼に別々の画像を見せるために眼鏡を利用するもの(眼鏡式)と、眼鏡を必要とせずに裸眼のままで立体感を与えるもの(裸眼式)の2種に大別できる。
【0003】
眼鏡式としては、左右の映像に直交する直線偏光(円偏光でも可)をかけて重ねて投影し、これを偏光フィルタの付いた眼鏡により分離する偏光眼鏡方式や、左右異なる角度から撮影した映像を交互に再生し、左右の視界が交互に遮蔽される液晶シャッタを備えた眼鏡で見るフレームシーケンシャル方式がある。裸眼式としては、ユーザの左右両眼に異なる画素が見えるように、表示画素の手前に左右2画素ごとに1つの穴又は溝を設けた遮蔽板を立てることで両眼視差を作り出すパララックスバリア方式や、単純な遮蔽板と穴(又は溝)ではなく、レンチキュラーレンズを用いることで左右の画素の光を最大限にユーザの視点へと振り向けるようにしたレンチキュラーレンズがある。
【0004】
偏光眼鏡方式のディスプレイ装置における立体映像表示の原理について図面を用いて説明する。偏光眼鏡方式のディスプレイ装置は映像を表示する表示面だけでなく、表示面からの映像に異なる偏光特性を与える偏光面を備えており、図7(a)に示すように、横ライン交互に左右の映像を切り替えて表示する。ユーザは、左右で異なる偏光板を実装した偏光眼鏡を装着し、左右の眼にそれぞれ別の横ラインが見えるようにする。その結果、左右の眼に別々の映像が入り、それぞれの視差情報から奥行きを持った画像であると錯覚し、それら画像を連続して見ることで立体映像を認識する。現在の主流である横ラインごとの立体映像表示について説明したが、理論的には、縦ラインごとや市松模様といった表示も同様である。
【0005】
上記の偏光眼鏡方式の立体映像表示では、見る角度によって左右の映像が反転してしまい、ユーザは不自然な立体映像を認識してしまう。この現象について図面を用いて説明する。図7(b)に示すように、立体映像表示を行うディスプレイ装置では表示面と偏光面に隙間があるが、この隙間があることで、正面から見た場合と斜めから見た場合とで偏光面を通してみる表示面上の映像にずれが生じる。正面から見ると、表示面と偏光面は同じ座標のものが対応するが、斜め(図では下方)から見ると、座標の関係が1ラインずれて左右が反転し、さらに斜めから見ると、座標の関係が2ラインずれて左右の反転が元に戻る(正面から見たのと同じ見え方となる)。
【0006】
例えば、特許文献1には、2枚の偏光格子スクリーンを使用して2D(平面)モードと3D(立体)モードとの間のスイッチングが可能な立体映像ディスプレイ装置が開示されている。当該立体映像ディスプレイ装置では、映像を表示するディスプレイ素子と対向して配置された2枚の偏光格子スクリーンを相対的に移動させることで、2Dモードでは入射光を全て透過させ、3Dモードでは左眼映像と右眼映像とに分かれてユーザの眼に入るように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−285247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1で開示された立体映像ディスプレイ装置は、平面映像と立体映像とを切り替えてユーザに見せるようにするものであり、ユーザの画面を見る角度に起因した左右映像の反転(不自然な立体映像の認識)を解消するものではない。
【0009】
また一般に、この見る角度による左右映像の反転を解消する方法としては、ユーザが固定の位置から視聴するものと仮定してユーザ自身が設定画面等により設定することが考えられる。しかし、実際には、固定の位置からユーザが視聴することは考えにくいため、ユーザの視聴位置に応じて自動的に左右映像の反転を解消することが望ましい。
【0010】
そこで、本発明は、ユーザに立体映像を表示するディスプレイ装置において、ユーザの視聴する位置が移動しても、精度良くかつ自動で、左眼及び右眼用の映像が反転することなく、自然な立体映像の認識させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面であるディスプレイ装置は、立体映像として左眼用と右眼用の映像を出力する表示部及び表示部で出力された左眼用と右眼用の映像をそれぞれユーザの左眼と右眼で知覚させるためのフィルタ部を備えるディスプレイ装置であって、ユーザの眼と表示部及びフィルタ部との相対的な位置関係を検出する位置検出手段と、位置検出手段により検出された位置関係に基づいて、表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を調整する表示調整手段と、を有する。
【0012】
また、上記のディスプレイ装置において、表示調整手段は、位置検出手段により検出された位置関係に基づいて、表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させるか否かを判定する反転判定手段と、反転判定手段による判定結果に従って、表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させる映像反転手段と、を有するものであってもよい。
【0013】
また、上記のディスプレイ装置において、位置検出手段は、位置関係として、表示部全体の中心位置を基準にしたユーザの眼の座標位置情報を検出し、反転判定手段は、位置検出手段で検出された座標位置情報を用いて、表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させるか否かを判定するものであってもよい。
【0014】
また、上記のディスプレイ装置において、位置検出手段は、位置関係として、表示部全体の中心位置を通る設置面との水平線とユーザの眼とがなす角度を表す角度情報を検出し、移動量算出手段は、位置検出手段で検出された角度情報を用いて、表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させるか否かを判定するものであってもよい。
【0015】
また、上記のディスプレイ装置において、位置検出手段は、位置関係として、表示部全体の中心位置を基準にしたユーザの眼の座標位置情報を検出し、反転判定手段は、位置検出情報で検出された位置情報、表示部とフィルタ部の間の距離情報及び表示部のドット間の距離情報を用いて、表示部において左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させる領域と反転させない領域を判定するものであってもよい。
【0016】
また、上記のディスプレイ装置において、対象物を撮影しその画像データを取得する画像取得手段を有し、位置検出手段が、画像取得手段により取得されたユーザの眼の画像データを用いて、ユーザの眼と表示部及びフィルタ部との相対的な位置関係を検出するものであってもよい。
【0017】
また、上記のディスプレイ装置において、対象物に向けて光を発射し反射した光の受光量を検出する光検出手段を有し、位置検出手段が、光検出手段による検出結果を用いて、ユーザの眼と表示部及びフィルタ部との相対的な位置関係を検出するものであってもよい。
【0018】
本発明の他の一側面である情報処理装置は、立体映像として左眼用と右眼用の映像を出力する表示部及び表示部で出力された左眼用と右眼用の映像をそれぞれユーザの左眼と右眼で知覚させるためのフィルタ部を備えるディスプレイ装置を搭載した情報処理装置であって、ユーザの眼と表示部及びフィルタ部との相対的な位置関係を検出する位置検出手段と、位置検出手段により検出された位置関係に基づいて、表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を調整する表示調整手段と、を有する。
【0019】
また、上記の情報処理装置において、表示調整手段は、位置検出手段により検出された位置関係に基づいて、表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させるか否かを判定する反転判定手段と、反転判定手段による判定結果に従って、表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させる映像反転手段と、を有するものであってもよい。
【0020】
また、上記の情報処理装置において、位置検出手段は、位置関係として、表示部全体の中心位置を基準にしたユーザの眼の座標位置情報を検出し、反転判定手段は、位置検出手段で検出された座標位置情報を用いて、表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させるか否かを判定するものであってもよい。
【0021】
また、上記の情報処理装置において、位置検出手段は、位置関係として、表示部全体の中心位置を通る設置面との水平線とユーザの眼とがなす角度を表す角度情報を検出し、移動量算出手段は、位置検出手段で検出された角度情報を用いて、表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させるか否かを判定するものであってもよい。
【0022】
また、上記の情報処理装置において、位置検出手段は、位置関係として、表示部全体の中心位置を基準にしたユーザの眼の座標位置情報を検出し、反転判定手段は、位置検出情報で検出された位置情報、表示部とフィルタ部の間の距離情報及び表示部のドット間の距離情報を用いて、表示部において左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させる領域と反転させない領域を判定するものであってもよい。
【0023】
また、上記の情報処理装置において、対象物を撮影しその画像データを取得する画像取得手段を有し、位置検出手段が、画像取得手段により取得されたユーザの眼の画像データを用いて、ユーザの眼と表示部及びフィルタ部との相対的な位置関係を検出するものであってもよい。
【0024】
また、上記の情報処理装置において、対象物に向けて光を発射し反射した光の受光量を検出する光検出手段を有し、位置検出手段が、光検出手段による検出結果を用いて、ユーザの眼と表示部及びフィルタ部との相対的な位置関係を検出するものであってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ユーザに立体映像を表示するディスプレイ装置において、ユーザの視聴する位置が移動しても、精度良くかつ自動で、左眼及び右眼用の映像が反転することなく、自然な立体映像の認識させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係るディスプレイ装置の構成を示した図である。
【図2】本発明の実施形態に係るディスプレイ装置の映像表示調整処理(左右映像の出力位置反転処理)の流れを示したフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係る映像反転の判定手法(一例)を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態に係る映像反転の判定手法(他の例)を説明するための図である。
【図5】画面が大きい場合の問題を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態に係る映像反転の判定手法(他の例)を説明するための図である。
【図7】偏光眼鏡方式の立体映像表示の原理及び左右映像の反転を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係るディスプレイ装置の構成を示した図である。本実施形態のディスプレイ装置1は、ユーザに対して立体映像を表示するディスプレイ装置で、画像取得手段2、位置検出手段3、表示調整手段4、映像入力部7、表示部(映像出力部)8、偏光部9を有する。
【0029】
画像取得手段2は、画面を見るユーザに装着された偏光眼鏡50を撮影し、その画像データを取得する。例えばカメラ等で構成することができる。
【0030】
位置検出手段3は、画像取得手段2から偏光眼鏡50の画像データを受け取り、その画像データを用いて偏光眼鏡50の位置データを算出する。
【0031】
表示調整手段4は、位置検出手段3から偏光眼鏡50の位置データを受け取り、その位置データに基づいて表示部8による立体映像の出力を調整する。表示調整手段4は、反転判定手段5、映像反転手段6を有する。反転判定手段5は、位置検出手段3からの位置データを用いて、表示部8により出力される左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させるか否かの判定を行う。映像反転手段6は、反転判定手段5から判定結果を受け取り、その判定結果に従って表示部8により出力される左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させる。具体的には、映像入力部7からの元映像に反転処理を加え、処理後の補正映像を表示部8に出力する(判定結果が反転要の場合に反転処理を行い、反転不要の場合は元映像を出力する)。
【0032】
位置検出手段3、反転判定手段5及び映像反転手段6は、ディスプレイ装置の一般的な構成としてのCPU及びROMによりソフトウェア的に構成(CPUがROMから本発明特有の処理を行うプログラムを読み出して実行することにより上記各手段を主記憶装置上に構成)してもよいし、特定の回路等によりハードウェア的に構成してもよい。
【0033】
表示部8は、映像入力部7に対応する映像出力部で、映像入力部7からの元映像を、映像反転手段6を介して、立体映像として左眼用の映像と右眼用の映像をラインごとに出力する。偏光部9は、表示部8でラインごとに出力された左眼用及び右眼用の映像について、ピクセル単位でそれぞれ偏光方向を変える。なお、偏光光としては直線偏光であってもよいし、円偏光であってもよい。円偏光を用いる場合、ユーザが顔を傾けても左右の映像のストロークは小さく維持され、不自然な立体映像を認識することが少ないというメリットがある。
【0034】
図2は、本発明の実施形態に係るディスプレイ装置の映像表示調整処理(左右映像の出力位置反転処理)の流れを示したフローチャートである。本実施形態の映像表示調整処理では、図2(a)に示す偏光眼鏡の位置検出及び出力映像の反転判定の処理と、図2(b)に示す映像入力及び映像出力の処理と、が独立して行われる。
【0035】
図2(a)の処理において、まず電源がONとなり(ステップS1/NO)、所定時間が経過した場合(ステップS2/YES)、すなわち所定のタイミングで、画像取得手段2が偏光眼鏡50の撮影を行い、画像データを取得する(ステップS3)。例えば画像取得手段2をカメラで構成した場合、当該相対位置調整処理を行うプログラムをROMから読み込んだCPUがカメラに命令することで撮影、画像データ取得を行う。
【0036】
そして、画像取得手段2で取得された画像データが複数の偏光眼鏡を含むものであった場合(ステップS4/YES)、映像表示調整処理(左右映像の出力位置反転処理)は行わず、ステップS1に戻る。これは、本発明による映像表示調整処理(左右映像の出力位置反転処理)は、単一ユーザの見る左眼及び右眼用の映像を反転させずに自然な立体映像の認識させるためのものであり、複数ユーザの視聴時にはそぐわない(特定のユーザのみが自然な立体映像を認識できるようにしても、他のユーザの不自然な立体映像認識は解消しない)ためである。
【0037】
他方、画像取得手段2で取得された画像データが単数の偏光眼鏡を含むものであった場合(ステップS4/NO)、位置検出手段3は、画像取得手段2から偏光眼鏡50の画像データを受け取り、その位置データを算出する(ステップS5)。位置データとしては、例えば表示部7の画面中央を0とした場合の座標情報(画面中央からどの程度の離れた場所に位置しており、どの程度の高さに位置しているか)等が挙げられる。画像データを用いた座標情報の算出や、前述した偏光眼鏡の単複の判別は、周知の技術であるため詳細な説明は省略する。
【0038】
続いて、反転判定手段5は、位置検出手段3から位置データを受け取り、映像入力部7で立体映像として入力される元映像について、表示部8における出力位置が左右逆となるような反転処理を行うか否かを判定する(ステップS6)。そして、反転判定手段5は、判定結果を映像反転手段6に送る。
【0039】
電源ON状態となっている間(ステップS1/NO)、以下の動作を繰り返す(ステップS2〜ステップS6)。
【0040】
一方、図2(b)の処理において、電源がONとなっているとき(ステップS11/NO)、映像反転手段6は、映像入力部7からの元映像として1フレーム分の画像を読み込む(ステップS12)。そして、反転判定手段5から反転要の判定結果を受け取っている場合(ステップS13/YES)、左眼用の画像と右眼用の画像のラインを反転する(ステップS14)。
【0041】
反転判定手段5から反転不要の判定結果を受け取っている場合あるいはいずれの判定結果も受け取っていない場合(ステップS13/NO)には、左眼用の画像と右眼用の画像のラインの反転は行わず、映像入力部7から読み込んだ1フレーム分の画像を表示部(映像出力部)8に出力する(ステップS15)。
【0042】
電源ON状態となっている間(ステップS11/NO)、映像入力部7から入力した元映像について、フレームごとに以下の動作を繰り返す(ステップS12〜ステップS15)。
【0043】
次に、本発明の実施形態に係る映像反転の判定手法について図面を用いて説明する。図3は、左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させるか否かの判定手法の一例を説明するための図である。ここでは、位置検出手段3で求めた偏光眼鏡50の座標情報(眼鏡位置の距離及び高さ)と、表示面と偏光面との距離と、表示面のドット間の距離と、を用いて、映像反転の判定を行っている。
【0044】
表示面の画面中央を通り設置面に水平な直線上に偏光眼鏡50がある場合、図7(b)に示すように表示面と偏光面でラインのずれは生じず同じ座標のものが対応するため、ユーザにとって理想的な視聴状態である。一方で、ユーザに見える画像は、正しい状態と反転した状態の2通りだけではなく、双方が混ざった状態である。よって、左眼用の映像と右眼用の映像を反転させるか否かは、どちらの画像が強く見えるかにより決定することが望ましく、偏光眼鏡の位置が、左右の正しい画像が強く見える範囲にあるのか、左右の反転画像が強く見える範囲にあるのかに基づいて、映像反転の要否を判定するとよい。
【0045】
図3に示すように、左右の正しい画像が強く見える範囲は、表示面の画像中央と、当該画面中央を中心にした1ドットピッチ分の表示面領域と対向する偏光面領域の端部と、を結ぶ直線で囲まれた領域(領域aとする)となる。そして、その偏光面領域と1ドットピッチ分上下にずれた偏光面領域の端部と、表示面の画面中央と、を結ぶ直線で囲まれた領域(領域bとする)が、左右の反転画像が強く見える範囲となる。左右の正しい画像が強く見える範囲と左右の反転画像が強く見える範囲とは、交互に位置する。
【0046】
偏光眼鏡の位置が、左右の正しい画像が強く見える範囲にあるのか、左右の反転画像が強く見える範囲にあるのかは、偏光眼鏡50と画面中央を結ぶ直線と偏光面との交点が、上記領域aに含まれるのか、上記領域bに含まれるのかをみることで判定することができる。眼鏡位置の距離(表示面の画面中央を通り設置面に水平な直線と偏光眼鏡50を通る当該水平な直線と直交する直線との交点から画面中央までの距離)をL、眼鏡位置の高さ(当該交点から偏光眼鏡50までの距離)をH、表示面と偏光面との距離をdとした場合、偏光眼鏡50と画面中央を結ぶ直線と偏光面との交点の、当該水平な直線からの垂直な距離は、Hd/Lの式で求めることができる。
【0047】
一般化すると、以下のような式となる。
【数1】

nが偶数の場合、本来の正しい左右の映像が強く見え、nが奇数の場合、本来とは左右が反転した映像が強く見える。したがって、この閾値を用いて、nが奇数の場合のみ表示部8に出力する映像を反転させる(nが偶数の場合には映像反転を行わない)ように制御すればよい。
【0048】
図4は、偏光面8の移動量を算出する手法の他の例を説明するための図である。ここでも、図3の場合と同様に、位置検出手段3で求めた偏光眼鏡50の座標情報(眼鏡位置の距離及び高さ)と、表示面と偏光面との距離と、表示面及び偏光面のドット間の距離(ドットピッチ)と、を用いる。図3に示した手法と異なるのは、映像反転の要否の判定に、上記情報を用いて求めた偏光眼鏡50と画面中央の角度を使用している点である。左眼用の映像と右眼用の映像を反転させるか否かが、どちらの画像が強く見えるかにより決定することが望ましいのは図3の場合と同様で、ここでは、完全に正しく見える角度と反転して見える角度の中間を閾値とすることができる。
【0049】
図4において、表示面の画面中央を通り設置面に水平な直線上に偏光眼鏡50があるとき、ユーザは左右の映像を完全に正しく見える。また、当該水平な直線と偏光面との交点から1ドットピッチだけ上方(又は下方)の点と画面中央とを結ぶ直線上に偏光眼鏡50があるとき、ユーザが見る映像は左右が完全に反転している。つまり、完全に正しく見える角度と反転して見える角度の中間として、図4に示す視角θ(当該水平な直線と当該交点からp/2ピッチ上方(又は下方)偏光面上の点を通る直線とのなす角度)を、偏光面を移動させる閾値とする。視角θは、左右の正しい画像が強く見える範囲として、
【数2】

で表される。つまり、表示面の画面中央と偏光眼鏡50を結ぶ線と偏光面との交点が、偏光面において表示面の画面中央と対向する点(画面中央を通り設置面に水平な直線と偏光面との交点)からそれぞれ上下にp/2ピッチ以内の距離にある(当該対向する点を中心にドットピッチpの範囲内)とき、左右の正しい画像が強く見える。
【0050】
一方、視角θが、表示面の画面中央とその点からp/2ピッチ上方の偏光面上の点を通る直線と、表示面の画面中央とその点から3p/2ピッチ上方の偏光面上の点を通る直線と、のなす角度である場合、視角θは、左右の反転画像が強く見える範囲として、
【数3】

で表される。
【0051】
また、視角θが、表示面の画面中央とその点からp/2ピッチ下方の偏光面上の点を通る直線と、表示面の画面中央とその点から3p/2ピッチ下方の偏光面上の点を通る直線と、のなす角度である場合、視角θは、左右の反転画像が強く見える範囲として、
【数4】

で表される。
【0052】
閾値は、ドットピッチp、表示面と偏光面との距離dを用いた三角関数で求めることができる。また、視角θは、図3で使用した座標情報(眼鏡位置の距離L、眼鏡位置の高さH)を用いた三角関数で求めることが可能である。
【0053】
一般化すると、以下のような式となる。
【数5】

nが偶数の場合、本来の正しい左右の映像が強く見え、nが奇数の場合、本来とは左右が反転した映像が強く見える。したがって、この閾値を用いて、nが奇数の場合のみ表示部8に出力する映像を反転させる(nが偶数の場合には映像反転を行わない)ように制御すればよい。
【0054】
上述した図3や図4の手法は、表示面と偏光面との距離と画面の大きさの比に対して、偏光眼鏡50が十分に遠い場合を想定していた。しかし、特に画面サイズが大きいときには、画面と偏光眼鏡50とで十分な距離がとれない場合がある。この場合、図5に示すように、画面中央での視角θと、画面上端での視角θtと、画面下端での視角θbと、が大きく相違し、それぞれの映像反転の判定結果が異なるという状況が起こりうる。つまり、画面中央を基準に反転要否を判定して映像の反転を行ったとしても、画面上端や画面下端において依然として左右の正しい映像が見えない状態が解消できない可能性がある。
【0055】
この問題に対して、映像反転を行わずに表示部8に表示させる範囲と、映像反転を行って表示部8に表示させる範囲と、を決めることで回避することが可能である。映像反転する範囲と反転しない範囲を特定する方法について、図6を用いて説明する。図6に示す方法では、図3や図4とは逆に、偏光眼鏡の位置を基準に、左右の正しい画像が強く見える範囲と、左右の反転画像が強く見える範囲と、を決め、前者の範囲に含まれる画面領域をそのまま表示させる領域とし、後者の範囲に含まれる画面領域を映像反転して表示させる領域と特定する。
【0056】
左右の正しい画像が強く見える範囲と左右の反転画像が強く見える領域は、図3や図4と同様の角度の広がりを持ち、これらと反対の方向に(偏光眼鏡50から画面に向かって)放射する直線で囲まれた領域で、交互に連続する。すなわち、左右の正しい画像が強く見える範囲は、偏光眼鏡50を通り設置面に水平な直線と画面の交点を中心とした1ドットピッチ分の表示面領域と対向する偏光面領域の端部と、偏光眼鏡50と、を結ぶ直線で囲まれた領域(領域Aとする)となる。また、左右の反転画像が強く見える領域は、その偏光面領域と1ドットピッチ分上下にずれた偏光面領域の端部と、偏光眼鏡50と、を結ぶ直線で囲まれた領域(領域Bとする)が、左右の反転画像が強く見える範囲となる。
【0057】
左右の正しい画像が強く見える画面上の領域や、左右の反転画像が強く見える画面上の領域の具体的な位置については、偏光眼鏡50の座標位置情報(眼鏡位置の距離及び高さ)と、表示面と偏光面との距離と、偏光面のドット間の距離(ドットピッチ)と、を用いて求めることができる。
【0058】
図3や図4と同様に、眼鏡位置の距離をL、眼鏡位置の高さをH、表示面と偏光面の間隔をd、ドットピッチをpとした場合、領域Aや領域Bを特定する直線のうち、上側の直線(例えば領域Aを特定する直線(b))は、
【数6】

で表され、下側の直線(例えば領域Aを特定する直線(a))は、
【数7】

で表される。なお、nが偶数の場合、本来の正しい左右の映像が強く見え、nが奇数の場合、本来とは左右が反転した映像が強く見えるのは、図3や図4の場合と同様である。図6に示すように、例えば、nが0の場合、両方直線に囲まれた領域は領域Aで、上側の直線が直線(b)、下側の直線が直線(a)となり、nが1の場合、両方直線に囲まれた領域は領域Bで、上側の直線が直線(c)、下側の直線が直線(b)となる。
【0059】
これらの式から、上側の直線の切片が、
【数8】

下側の直線の切片が、
【数9】

とそれぞれ導き出され、画面上の具体的な位置として特定することができる。
【0060】
そして、左右の正しい画像が強く見える表示部8の表示位置(上記具体的な位置)に表示される画像については、反転を行わずにそのまま表示し、左右の反転画像が強く見える表示部8の表示位置(上記具体的な位置)に表示される画像については、左右反転を行って表示する。このように映像反転処理を行うことで、図5に示した問題を解消することが可能である。
【0061】
なお、映像入力部7や映像反転手段6は、描画機能を持ち立体映像を生成する映像生成部に実装し、映像生成部内で反転判定結果に応じた映像反転を行って表示部8に補正映像を直接出力するように構成してもよい。
【0062】
また、上述した映像表示の調整(左右映像の出力位置反転)は、上述した横ラインごとの左右表示のみならず、縦ラインごとの左右表示にも適用することが可能である。また、市松模様のような表示に対応する場合には、上下方向、左右方向で個別に演算を行えばよい。
【0063】
また、偏光眼鏡50の位置検出について、本実施形態のような画像データを用いた方法のほか、赤外線を用いて三点測量する方法(偏光眼鏡50との間で発信及び受信を行い、赤外線の反射したものが偏光眼鏡50であることを検知しておくことは必要)を用いることが可能である。この場合、本実施形態のディスプレイ装置1は、対象物に光を向けて光を発射し反射した光の受光量を検出する光検出手段(例えば赤外線センサ)を有し、位置検出手段3は、光検出手段による検出結果を用いて、表示部8と偏光部9の相対的な位置関係を検出する。
【0064】
また、ユーザの設定により、偏光部9の位置に対して固定的な補正を加えることができるように構成してもよい。この場合、偏光眼鏡50と瞳の相対位置の個人差について補正することが可能となる。
【0065】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。例えば、眼鏡式の他の方式(フレームシーケンシャル方式やアナグリフ方式)にも本発明は適用することができ、また、裸眼式(パララックスバリア方式やレンチキュラーレンズ方式)のディスプレイ装置に適用することも可能である。また、このようなディスプレイを搭載するノートPC等の情報処理装置も本発明の実施形態を構成する。
【0066】
また、本実施形態におけるディスプレイ装置で実行されるプログラムは、先に述べた各手段(位置検出手段3、反転判定手段5、映像反転手段6、)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアを用いて具体的手段を実現する。すなわち、CPUが所定の記録媒体(例えばROM等)からプログラムを読み出して実行することにより上記各手段が主記憶装置上にロードされて生成される。
【0067】
本実施形態におけるディスプレイ装置で実行されるプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供されるように構成してもよい。また、上記プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供あるいは配布するように構成してもよい。
【0068】
また、上記プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、DVD、不揮発性のメモリカード等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されるように構成してもよい。また、上記プログラムは、ROM等にあらかじめ組み込んで提供するように構成してもよい。
【0069】
この場合、上記記録媒体から読み出された又は通信回線を通じてロードし実行されたプログラムコード自体が前述の実施形態の機能を実現することになる。そして、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成する。
【符号の説明】
【0070】
1 ディスプレイ装置
2 画像取得手段
3 位置検出手段
4 表示調整手段
5 反転判定手段
6 映像判定手段
7 映像入力部
8 表示部(映像出力部)
9 偏光部
50 偏光眼鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体映像として左眼用と右眼用の映像を出力する表示部及び前記表示部で出力された左眼用と右眼用の映像をそれぞれユーザの左眼と右眼で知覚させるためのフィルタ部を備えるディスプレイ装置であって、
ユーザの眼と前記表示部及び前記フィルタ部との相対的な位置関係を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段により検出された前記位置関係に基づいて、前記表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を調整する表示調整手段と、
を有することを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】
前記表示調整手段は、
前記位置検出手段により検出された前記位置関係に基づいて、前記表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させるか否かを判定する反転判定手段と、
前記反転判定手段による判定結果に従って、前記表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させる映像反転手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
前記位置検出手段は、前記位置関係として、前記表示部全体の中心位置を基準にしたユーザの眼の座標位置情報を検出し、
前記反転判定手段は、前記位置検出手段で検出された座標位置情報を用いて、前記表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載のディスプレイ装置。
【請求項4】
前記位置検出手段は、前記位置関係として、前記表示部全体の中心位置を通る設置面との水平線とユーザの眼とがなす角度を表す角度情報を検出し、
前記移動量算出手段は、前記位置検出手段で検出された角度情報を用いて、前記表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載のディスプレイ装置。
【請求項5】
前記位置検出手段は、前記位置関係として、前記表示部全体の中心位置を基準にしたユーザの眼の座標位置情報を検出し、
前記反転判定手段は、前記位置検出情報で検出された位置情報、前記表示部と前記フィルタ部の間の距離情報及び前記表示部のドット間の距離情報を用いて、前記表示部において左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させる領域と反転させない領域を判定することを特徴とする請求項2に記載のディスプレイ装置。
【請求項6】
対象物を撮影しその画像データを取得する画像取得手段を有し、
前記位置検出手段は、前記画像取得手段により取得されたユーザの眼の画像データを用いて、前記ユーザの眼と前記表示部及び前記フィルタ部との相対的な位置関係を検出する
ことを特徴とする請求項1から5に記載のディスプレイ装置。
【請求項7】
対象物に向けて光を発射し反射した光の受光量を検出する光検出手段を有し、
前記位置検出手段は、前記光検出手段による検出結果を用いて、ユーザの眼と前記表示部及び前記フィルタ部との相対的な位置関係を検出する
ことを特徴とする請求項1から5に記載のディスプレイ装置。
【請求項8】
立体映像として左眼用と右眼用の映像を出力する表示部及び前記表示部で出力された左眼用と右眼用の映像をそれぞれユーザの左眼と右眼で知覚させるためのフィルタ部を備えるディスプレイ装置を搭載した情報処理装置であって、
ユーザの眼と前記表示部及び前記フィルタ部との相対的な位置関係を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段により検出された前記位置関係に基づいて、前記表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を調整する表示調整手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項9】
前記表示調整手段は、
前記位置検出手段により検出された前記位置関係に基づいて、前記表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させるか否かを判定する反転判定手段と、
前記反転判定手段による判定結果に従って、前記表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させる映像反転手段と、
を有することを特徴とする請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記位置検出手段は、前記位置関係として、前記表示部全体の中心位置を基準にしたユーザの眼の座標位置情報を検出し、
前記反転判定手段は、前記位置検出手段で検出された座標位置情報を用いて、前記表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させるか否かを判定することを特徴とする請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記位置検出手段は、前記位置関係として、前記表示部全体の中心位置を通る設置面との水平線とユーザの眼とがなす角度を表す角度情報を検出し、
前記移動量算出手段は、前記位置検出手段で検出された角度情報を用いて、前記表示部による左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させるか否かを判定することを特徴とする請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記位置検出手段は、前記位置関係として、前記表示部全体の中心位置を基準にしたユーザの眼の座標位置情報を検出し、
前記反転判定手段は、前記位置検出情報で検出された位置情報、前記表示部と前記フィルタ部の間の距離情報及び前記表示部のドット間の距離情報を用いて、前記表示部において左眼用と右眼用の映像の出力位置を反転させる領域と反転させない領域を判定することを特徴とする請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項13】
対象物を撮影しその画像データを取得する画像取得手段を有し、
前記位置検出手段は、前記画像取得手段により取得されたユーザの眼の画像データを用いて、前記ユーザの眼と前記表示部及び前記フィルタ部との相対的な位置関係を検出する
ことを特徴とする請求項8から12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
対象物に向けて光を発射し反射した光の受光量を検出する光検出手段を有し、
前記位置検出手段は、前記光検出手段による検出結果を用いて、ユーザの眼と前記表示部及び前記フィルタ部との相対的な位置関係を検出する
ことを特徴とする請求項8から12に記載の情報処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−142846(P2012−142846A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−607(P2011−607)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(311012169)NECパーソナルコンピュータ株式会社 (116)
【Fターム(参考)】