説明

ディスペンサ洗浄用容器の安全装置

【課題】 容器本体内の通常以上に高い圧力の炭酸ガスを外部へ排出し、また、組付け及び手入れが容易なディスペンサ洗浄用容器の安全装置を提供する。
【解決手段】 洗浄液Wを収容する容器本体1と、容器本体の口部10に取り付けられてディスペンスヘッド2を着脱可能に装着する装着体3とを有し、ディスペンスヘッドを介して供給される圧送ガスを容器本体内の洗浄液に加圧し、加圧された洗浄液をディスペンスヘッドを介してディスペンサ側に供給するディスペンサ洗浄用容器Tにおいて、装着体に容器本体の口部に圧接されるOリング50と、Oリングを収容する凹溝40と、装着体の側部31を貫通すると共に、凹溝と連通する少なくとも1つの切欠溝41とを有する減圧機構4を形成し、容器本体内に通常以上の高い圧力の圧送ガスが供給された場合に、Oリングの一部が凹溝から切欠溝に弾性変形することで、容器本体内の高圧な圧送ガスを外部に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディスペンサ洗浄用容器の安全装置に関するもので、更に詳細には、例えば生ビールディスペンサの配管経路の洗浄時に用いるディスペンサ洗浄用容器の安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、生ビールディスペンサの配管経路を洗浄する場合、ディスペンスヘッドをビール樽から取り外し、洗浄液を収容した洗浄用容器の装着体に装着し、その後、ディスペンスヘッドにガスホース及び減圧弁を介して圧送ガス供給源である例えば炭酸ガスボンベを接続して洗浄用容器内に炭酸ガスを供給(注入)する。そして、洗浄用容器内に供給(注入)された炭酸ガスによってタンク内の洗浄液に加圧し、加圧された洗浄液を装着体及びディスペンスヘッドを介してディスペンサの配管経路に流して洗浄作業を行っている。
【0003】
従来、この種のディスペンサの配管経路の洗浄に用いるディスペンサ洗浄用容器として、例えば、洗浄液を収容するタンク本体と、その口部に取り付けられ、ディスペンスヘッドを着脱可能に装着する装着体とを具備するディスペンサ洗浄用タンクにおいて、装着体の側部を貫通する残圧逃し孔と、装着体に装着されるディスペンスヘッドに係合すると共に、ディスペンスヘッドのハンドル操作に伴って、残圧逃し孔を開閉する可動子とを具備する残圧逃し機構を形成し、ディスペンスヘッドのハンドルを上げることにより、ディスペンスヘッドと可動子との係合が解かれると共に、残圧逃し孔が開放されて、タンク本体に残留した圧送ガスを外部に排出する構造のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−68387(「特許請求の範囲」、段落番号0006〜0015,0032,0038,0039、図2、図3、図6、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2002−68387に記載のものにおいて、残圧逃し機構は、ディスペンサの配管経路の洗浄作業後に、洗浄用容器内に残留した炭酸ガスを外部に排出する構造であるため、何等かの原因で減圧弁が故障して、洗浄用容器内に通常以上の圧力の炭酸ガスが急激に供給(注入)された場合に、洗浄用容器内の炭酸ガスを外部に排出することができない。したがって、洗浄用容器が炭酸ガスの圧力によって洗浄用容器が破損する虞があった。また、残圧逃し機構は、ディスペンスヘッドのハンドル操作に伴って移動する可動子によって残圧逃し孔を開閉する構造であるため、構造が複雑であり、組付け及び手入れ作業に手間がかかるという問題があった。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、減圧弁の故障等により通常以上に高い圧力の炭酸ガスがディスペンサ洗浄用容器内へ供給(注入)された場合に、ディスペンサ洗浄用容器内の炭酸ガスを外部へ排出することができるようにし、また、構造を簡略化し組付け及び手入れ作業を容易に行うことができるディスペンサ洗浄用容器の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、洗浄液を収容する容器本体と、この容器本体の口部に取り付けられ、ディスペンスヘッドを着脱可能に装着する装着体と、を具備し、上記ディスペンスヘッドを介して供給される圧送ガスを容器本体内の洗浄液に加圧し、加圧された洗浄液をディスペンスヘッドを介してディスペンサ側に供給する、ディスペンサ洗浄用容器において、 上記装着体に、上記容器本体の口部に圧接されるOリングと、このOリングを収容する凹溝と、装着体の側部を貫通すると共に、上記凹溝と連通する少なくとも1つの切欠溝とを具備する減圧機構を形成し、 上記容器本体内に通常以上の高い圧力の圧送ガスが供給された状態において、上記Oリングの一部が上記凹溝から切欠溝に弾性変形することで、容器本体内の高圧な圧送ガスを外部に排出可能に形成してなる、ことを特徴とする。
【0007】
この発明において、上記切欠溝を、凹溝の対向する部位に形成される一対の周方向に沿う長溝に形成する方が好ましい(請求項2)。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0009】
(1)請求項1記載の発明によれば、容器本体内に通常以上の高い圧力の圧送ガスが供給された際において、Oリングの一部が凹溝から切欠溝に弾性変形し、容器本体内の高圧な圧送ガスが切欠溝から外部に排出することができるので、高い圧力の圧送ガスによる容器の破損等を防ぐことができ、作業者の安全を確保することができる。
【0010】
また、減圧機構は、Oリングを凹溝に収納する構造であるので、構造が簡略であり、組付け及び手入れ作業を容易に行うことができる。
【0011】
(2)請求項2記載の発明によれば、切欠溝を凹溝の対向する部位に形成される一対の周方向に沿う長溝に形成することで、瞬時に高圧な圧送ガスを外部に排出することができ、また、万一、一方の切欠溝におけるOリングの弾性変形が不充分であっても、他方の切欠溝におけるOリングの弾性変形により圧送ガスを外部に排出することができるので、上記(1)に加えて、更に、容器本体内の高圧な圧送ガスを切欠溝から外部に排出することができるので、高い圧力の圧送ガスによる容器の破損等を防ぐことができ、作業者の安全を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、この発明に係るディスペンサ洗浄用容器の安全装置の最良の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係るディスペンサ洗浄用容器の安全装置を生ビールディスペンサの配管経路の洗浄時に用いるディスペンサ洗浄用容器に用いた場合について説明する。
【0013】
図1は、この発明に係るディスペンサ洗浄用容器の使用状態を示す概略構成図、図2は、この発明に係るディスペンサ洗浄用容器を示す半部断面図、図3(a)は、この発明における減圧機構を示す拡大断面図、図3(b)は、図3(a)の減圧状態を示す拡大断面図、図4は、この発明における装着体の裏面及び減圧機構を示す平面図、図5は、図4の減圧状態を示す平面図である。
【0014】
上記ディスペンサ洗浄用容器T(以下に洗浄用容器Tという)は、図1及び図2に示すように、洗浄液Wを収容する容器本体1と、この容器本体1の口部10に取り付けられ、ディスペンスヘッド2を着脱可能に装着する装着体3とで主に構成されている。
【0015】
上記ディスペンスヘッド2は、図1及び図2に示すように、下端に上記装着体3に装着される外向き鍔部21を有する取付部20を形成すると共に、上下に貫通する貫通路22aを有する胴部22と、この胴部22の貫通路22a内において洗浄液導出管23を移動するハンドル24とを具備している。
【0016】
この場合、胴部22の一側部には、圧送ガス導入口25が設けられている。この圧送ガス導入口25と圧送ガス供給手段すなわち炭酸ガスボンベ6とが、ガスホース60及び減圧弁61を介して接続されている。この炭酸ガス導入口25は、上記ハンドル24の操作によって移動する洗浄液導入管23によって開閉可能になっている。また、洗浄液導入管23の下端外周面と後述する装着体3の筒状基部35の内周面との間に、シール部材52が介在され、ディスペンスヘッド2と装着体3とのシール性が維持されている。
【0017】
上記装着体3は、例えばプラスチック製部材によって形成されており、図2及び図4に示すように、略蓋状に形成され、内側部に容器本体1の口部10に形成された雄ねじ部11にねじ結合可能な雌ねじ部32を設けた側部31と、装着体3の上部中央に形成され、ディスペンスヘッド2を着脱可能に装着する凹状の装着部33と、この装着部33の底部中央に設けられる液流通路34と、この液流通路34の外周近傍に設けられる圧送ガス流通路37と、側部31の内方基端部に設けられ、容器本体1内の高圧な炭酸ガスを外部に排出する減圧機構4とで主に構成されている。
【0018】
なお、装着体3の上部には、容器本体1内に残留する炭酸ガスを強制的に外部に排出する残圧逃し弁6(図1及び図2参照)が設けられている。なお、容器本体1内の圧力を維持するために、容器本体1内の圧力が一定の値を超えた場合に、容器本体1内の炭酸ガスを外部に排出するリリーフ弁(図示せず)を設けるようにしてもよい。また、側部31の例えば一箇所に、外側部から内側部へ貫通しねじ部を設けるねじ孔(図示せず)が穿設されており、このねじ孔に止めねじ30を螺合して、止めねじ30の先端で容器本体1の口部10側面を押圧することによって、装着体3と容器本体1との取付けを強固にすることができる。
【0019】
上記装着部33は、液流通路34及び圧送ガス流通路37の開口部を残して挿入されるリング状のパッキング51を収容する段付底部38と、底部との間にディスペンスヘッド2の取付部例えば外向き鍔部21を挾持すべく開口側内方の対向する2箇所に突出する係止突起39が形成されている。また、段付底部38の周壁の適宜位置には、この段付底部38の段部頂面から下部に向かって容器本体1内のガス抜きを行うガス抜き溝(図示せず)が形成されている。
【0020】
このように形成される装着部33にディスペンスヘッド2を装着する場合は、係止突起39を回避して外向き鍔部21を凹状の装着部33内に挿入した後、外向き鍔部21を水平方向に回転させて外向き鍔部21と係止突起39とを係合させる、いわゆるバヨネット方式で締結する。なお、この場合、係止突起39の下面すなわち外向き鍔部21の上面を押圧する面の角部に、外向き鍔部21の着脱を容易にするためのテーパ(図示せず)を設けておく方が好ましい。また、装着部33からディスペンスヘッド2を取り外す場合は、上記操作と逆の操作によって外向き鍔部21と係止突起39との係合を解いて取り外すことができる。なお、装着部33からディスペンスヘッド2を取り外す際に、装着部33の段付底部38の周壁に形成されたガス抜き溝から容器本体1内に残留した炭酸ガスを排出することができる。
【0021】
上記液流通路34は、装着部33の底部中央から下方に筒状に突出する筒状基部35によって形成されている。この筒状基部35の下端には、容器本体1内に挿入されるサイホンチューブ36が取り付けられている(図1及び図2参照)。このように液流通路34を形成することによって、容器本体1内の加圧された洗浄液Wは、サイホンチューブ36、液流通路34を通り、ディスペンスヘッド2を介してディスペンサ7へ供給される。
【0022】
一方、上記圧送ガス流通路37は、図2及び図4に示すように、装着部33の底部に設けられ、筒状基部35の外周の同心円状に適宜間隔をおいて複数(図面では4個)の円弧溝状に形成されている。このように圧送ガス流通路37を形成することによって、ディスペンスヘッド2を介して供給される炭酸ガスを容器本体1内に流入することができる。
【0023】
上記のように構成される装着体3及びディスペンスヘッド2を用いてディスペンサ7の配管経路の洗浄を行う場合は、ディスペンスヘッド2にガスホース60及び減圧弁61を介して炭酸ガスボンベ6を接続する一方、ディスペンスヘッド2の洗浄液導出管23にビールホース70を介してディスペンサ7を接続する。このように接続されたディスペンスヘッド2は、ハンドル24を上方向に回転することによって、洗浄液導入管23が上方に移動すると共に、炭酸ガス導入口25が開放される。そして、炭酸ガスボンベ6から炭酸ガス導入口25を通って供給される炭酸ガスが、圧送ガス流通路37を介して容器本体1内に充填された洗浄液Wを加圧する。この加圧された洗浄液Wが、サイホンチューブ36、液流通路34を通り、ビールホース70を介してディスペンサ7に入り、配管経路を通った後に、タップ71から排出することによって洗浄作業を行うことができる。
【0024】
上記減圧機構4は、図2ないし図5に示すように、装着体3の側部31の基端部に形成されており、容器本体1の口部10上面に圧接されるOリング50と、このOリング50を収容する凹溝40と、装着体3の側部31を貫通すると共に、凹溝40に連通する一対の切欠溝41とで形成されている。なお、切欠溝40は、凹溝40の対向する部位に形成されており、一対の周方向に沿う長溝に形成されている。なお、Oリング50は、例えばシリコンゴム又はNBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)等の合成ゴムで形成されている。
【0025】
このように構成される減圧機構4は、ディスペンサ7の配管経路を洗浄する際に、炭酸ガスボンベ6から容器本体1内へ供給(注入)される炭酸ガスの圧力が、通常例えば0.35MPa又は通常以下である場合には、図3(a)及び図4に示すように、凹溝40内のOリング50は弾性変形せずに、装着体3と容器本体1の口部10上面との間に納まった状態で、装着体3と容器本体1との気密性を維持している。一方、ディスペンサ7の配管経路を洗浄する際に、炭酸ガスボンベ6から容器本体1内へ供給(注入)される炭酸ガスが、減圧弁61の故障等により、容器本体1内に急激に通常以上の圧力で供給(注入)された場合には、図3(b)及び図5に示すように、容器本体1内の炭酸ガスの圧力によって、Oリング50の一部が凹溝40から切欠溝41に弾性変形すると共に、装着体3と容器本体1の口部10上面との間に隙間Sを形成することができ、この隙間Sから容器本体1内の高圧の炭酸ガスを外部に排出することができる。
【0026】
したがって、減圧弁61の故障等により容器本体1内に急激に通常以上の圧力の炭酸ガスが供給された場合でも、Oリング50の一部が凹溝40から切欠溝41に弾性変形することにより、容器本体1内の高圧炭酸ガスを外部に排出することができるので、容器本体1の破裂やディスペンスヘッド2及び装着体3が跳ね飛ばされるのを防ぐことができる。また、減圧機構4は、Oリング50を凹溝40に収納する構造であるので、構造が簡略であり、組付け及び手入れ作業を容易に行うことができる。
【0027】
なお、上記実施形態において切欠溝41を、一対すなわち2つ設けた場合について説明したが、必ずしも2つである必要はなく、2つ以上、又は、1つでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明に係るディスペンサ洗浄用容器の使用状態を示す概略構成図である。
【図2】この発明に係るディスペンサ洗浄用容器を示す半部断面図である。
【図3】この発明における減圧機構の通常状態を示す拡大断面図(a)及び、(a)の減圧状態を示す拡大断面図(b)である。
【図4】この発明における装着体に形成された減圧機構の通常状態を示す裏面平面図である。
【図5】図4の減圧状態を示す裏面平面図である。
【符号の説明】
【0029】
S 隙間
T ディスペンサ洗浄用容器
W 洗浄液
1 容器本体
2 ディスペンスヘッド
3 装着体
4 減圧機構
10 口部
31 側部
40 凹溝
41 切欠溝
50 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を収容する容器本体と、この容器本体の口部に取り付けられ、ディスペンスヘッドを着脱可能に装着する装着体と、を具備し、上記ディスペンスヘッドを介して供給される圧送ガスを容器本体内の洗浄液に加圧し、加圧された洗浄液をディスペンスヘッドを介してディスペンサ側に供給する、ディスペンサ洗浄用容器において、
上記装着体に、上記容器本体の口部に圧接されるOリングと、このOリングを収容する凹溝と、装着体の側部を貫通すると共に、上記凹溝と連通する少なくとも1つの切欠溝とを具備する減圧機構を形成し、
上記容器本体内に通常以上の高い圧力の圧送ガスが供給された状態において、上記Oリングの一部が上記凹溝から切欠溝に弾性変形することで、容器本体内の高圧な圧送ガスを外部に排出可能に形成してなる、ことを特徴とするディスペンサ洗浄用容器の安全装置。
【請求項2】
請求項1記載のディスペンサ洗浄用容器の安全装置において、
上記切欠溝を、凹溝の対向する部位に形成される一対の周方向に沿う長溝に形成する、ことを特徴とするディスペンサ洗浄用容器の安全装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−27691(P2006−27691A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210950(P2004−210950)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】