説明

ディスペンサ

【課題】容易かつ確実に容器をケース体に装着でき、しかも異物混入や容器内の流体の漏出も有効に防止できる、ディスペンサを提供する。
【解決手段】容器1を着脱可能に装着するケース体10と、容器内の流体を吸い上げ管48から吸い上げ吐出管46から吐出するポンプ装置30及びその駆動機構34,35,41,42と、ポンプ装置をケース体の保持ブラケット20に固定するために、ポンプ装置に係止され保持ブラケットのベース板21の上面に当接するキャップ38と、該キャップに下方から係合しベース板の下面に当接するアダプタ50とを有する固定機構と、ケース体に装着された容器の底部4を支持するケース体の底壁部14と、を備え、前記アダプタは、ケース体に装着された容器の上部5,6の壁面に密着して容器を下方に付勢し、前記底壁部との間に容器を保持する可撓性スカート部58を有している、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディスペンサ、より詳しく言えば、例えば薬液や石鹸液等の流体の内容物を充填した容器をケース体に着脱可能に装着して使用するディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば薬液や石鹸液等の流体の内容物を充填した容器をケース体に着脱可能に装着し、容器内の流体をポンプ機構で吸い上げ、吐出ノズルから吐出させて使用するようにしたものは、一般に良く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなディスペンサでは、容器の内容物の補給やその種類の変更を行う場合、容器ごと新たなものと取り替えるのが一般的である。
容器は、通常、給排口部のネジを利用してポンプ機構と結合されているので、ポンプ機構がケース体に組み込まれた構造のディスペンサでは、容器の交換を行う場合、まず、給排口部のネジを螺脱させて使用済みの容器をポンプ機構から取り外す。そして、新たな交換容器の給排口部のネジをポンプ機構のネジ部に螺合させて締め付けることにより、新たな交換容器がポンプ機構に結合された状態でケース体に装着されるようになっている。
【特許文献1】特開平9−48479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように、ケース体に組み込まれたポンプ機構のネジ部に容器の給排口部のネジを螺合させ締め付けることで、新たな交換容器を装着する場合には、使用済み容器を取り外す際のネジの螺脱作業、及び交換容器を装着する際のネジの螺合作業に、手間が掛かり煩わしいという難点がある。
【0005】
また、交換容器をケース体に装着する場合、ケース体の容器装着スペースは限られており、しかも、容器内から流体を吸い上げる吸い上げ管を容器内に挿入しながらケース体に装着する必要があり、また、ポンプ機構のネジ部がケース外部から視認し難い場合も多いので、ポンプ機構のネジ部に容器の給排口部のネジを螺合させる際に、螺合不良が生じたり締め付け不足が生じる場合が少なくない。
【0006】
このようなネジの螺合不良や締め付け不足が生じると、容器のケース体に安定して保持させることができず、また、ネジ結合部から容器内あるいはポンプ機構に異物が混入したり、場合によっては、容器内の流体が漏れ出るおそれもある。
【0007】
この発明は、かかる技術的課題に鑑みてなされたもので、容易かつ確実に容器をケース体に装着でき、しかも異物混入や容器内の流体の漏出も有効に防止できる、ディスペンサを提供することを基本的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本願発明に係るディスペンサは、a)所定の流体を充填した容器を着脱可能に装着するケース体と、b)該ケース体に装着された容器内の流体を、吸い上げ管を介して当該容器から吸い上げ、吐出管を介して前記ケース体の外部に吐出するポンプ装置と、c)該ポンプ装置を駆動するための駆動機構と、d)ポンプ装置をケース体の保持板に固定する固定機構であって、ポンプ装置に係止され前記保持板の上面に当接する上側固定具と、該上側固定具に下方から係合し保持板の下面に当接する下側固定具とを有する固定機構と、e)前記ケース体の底部に設けられ、該ケース体に装着された容器の底部を支持する底部支持部と、を備え、f)前記下側固定具は、ケース体に装着された容器の上部壁面に密着して容器を下方に付勢し、前記底部支持部との間に容器を保持する可撓性スカート部を有している、ことを特徴としたものである。
【0009】
この場合において、上側固定具と下側固定具とは、前記保持板を挟んで互いに締結固定されることにより、ポンプ装置をケース体の保持板に固定するようにすることができる。
【0010】
また、この場合において、前記下側固定具は、好ましくは、上側固定具に締結されるネジ部を有する第1アダプタと、該第1アダプタに組み付けられ可撓性スカート部を下方に有する第2アダプタとで構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、ポンプ装置は上側固定具と下側固定具とでケース体の保持板に固定され、ケース体に装着された容器は、その上部壁面が、下側固定具の可撓性スカート部により下方に付勢されて、ケース体の底部支持部との間に保持される。
従って、容器を交換する際に、使用済み容器を取り外すためのネジの螺脱作業および交換容器を装着するためのネジの螺合作業は不要であり、容器交換作業を大幅に簡略化することができ、また、容易かつ確実に交換容器をケース体に装着することができる。しかも、前記可撓性スカート部は容器の上部壁面に密着した状態で容器を下方に付勢しているので、容器内あるいはポンプ装置に異物が混入したり容器内の流体が漏れ出ることを、確実に防止することができる。
【0012】
この場合において、上側固定具と下側固定具とが保持板を挟んで互いに締結固定されてポンプ装置をケース体の保持板に固定することにより、ネジの締結機構を利用して、容易かつ確実にポンプ装置をケース体に固定することができる。
【0013】
この場合において、前記下側固定具を、上側固定具に締結されるネジ部を有する第1アダプタと、該第1アダプタに組み付けられ前記可撓性スカート部を下方に有する第2アダプタとの2分割構造とすることにより、下側固定具の全体形状が複雑な場合でも比較的容易に製作することができる。また、ネジ部を有する第1アダプタと可撓性スカート部を有する第2アダプタとを、それぞれに要求される特性を備えた異なる材料で構成することもでき、アダプタを製作するに際して、材料選定の自由度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施形態に係るディスペンサのケース体および交換容器の全体構成を概略的に示す斜視図、図2はケース体に容器を装着した状態を示す前記ディスペンサの縦断面図、図3は図2のY3部分を拡大して示す部分拡大断面図、図4は前記ディスペンサのポンプ装置を保持する保持ブラケットの概略構成を示す斜視図、図5は前記ポンプ装置の断面構造をポンプ非作動状態にて示す縦断面図、また、図6は前記ポンプ装置の断面構造をポンプ駆動状態にて示す縦断面図である。
【0015】
これらの図に示されるように、本実施形態に係るディスペンサDは、例えばポンプ装置をマニュアル(手動)で駆動するようにした所謂マニュアル式のもので、例えば石鹸液などの薬液を充填した薬液容器1を、図2に示すように、ケース体10内に装着して使用される。
【0016】
前記容器1は、図1から良く分かるように、ボトル状の容器本体2の上端部中央に給排口部8を設けて構成され、合成樹脂材料を用いて、例えばブロー成形法により一体成形されている。容器本体2は、薄肉筒状の胴部3と、該胴部3の下端側を覆って閉じる底部4と、胴部3の上端側を覆い中央に前記給排口部8を備えた上面部5と、該上面部5の周縁およびその近傍を形成する曲面状の肩部6とで構成されている。
本実施形態では、容器本体2の胴部3は矩形筒状に形成されているが、この代わりに例えば円筒状でもよい。また、上面部5は比較的フラットに近い形状であるが、この代わりに、例えば、肩部6を含めて円錐状あるいはドーム状の曲面形状に形成されてもよい。
【0017】
前記容器1は、ケース体10に装着されるまでは、容器上端中央の給排口部8の雄ネジ部8mにキャップ(不図示)を螺着させた状態で所定の保管場所に保管されており、ケース体10への装着に際して、前記キャップを給排口部8の雄ネジ部8mから螺脱して取り外されるものである。尚、この代わりに、キャップ(不図示)をネジ機構に依らず嵌合構造により容器1の給排口部8に着脱可能に装着するようにしてもよい。また、容器1内に充填される内容物は、石鹸液などの薬液に限られるものではなく、用途に応じて種々の流体が充填して用いられる。
【0018】
前記ケース体10は、容器1を収容し得るハウジング部11と、該ハウジング部11の上部に取り付けられたカバー部18とで構成されている。ハウジング部11の主要部は例えば鋼板をプレス成形して製作され、カバー部18は例えば合成樹脂材料を用いて例えば射出成形法により製作されている。尚、ハウジング部11及びカバー部の材料および製作法は、これらに限定されるものではない。
【0019】
前記ハウジング部11は、左右一対の互いに平行な側壁12(図1参照)と、これら側壁12の上端部どうしを繋ぐ天井部13と、左右の側壁12の下端部どうしを繋ぐ底壁部14とを備え、左右の側壁12間に容器1を収容する収容スペース11sが形成されている。この収容スペース11sの片側および片側下方が開口しており、この開口11hから収容スペース11s内に容器1が挿入されるようになっている。尚、本明細書では、容器1を挿入させる側(図2,図5,図6における左側)をケース体10又はハウジング部11の「前側」と称することとする。
【0020】
図3に詳しく示すように、前記底壁部14の前端には、上方へ所定高さだけ突出する突起部14pが設けられている。容器1の底部4の周縁部分には、所定の曲率で湾曲した湾曲縁部4aが形成され、この湾曲縁部4aの内側から容器底部4の中央部分に向かってなだらかな曲面状の傾斜部4bが設けられている。容器1をハウジング部11内に装着する際には、湾曲縁部4aが底壁部14の前記突起部14pを乗り越え、曲面状の傾斜部4bが突起部14pに乗り上げた状態で、容器1の底部4がハウジング部11の底壁部14上に支持される。このように、容器底部4の湾曲縁部4aがハウジング部11の底壁部14の前記突起部14pを乗り越えた状態で、容器1がハウジング部11に装着されているので、容器底部4がハウジング部11の底壁部14から不用意に脱落することはない。
【0021】
前記底壁部14の後部には、開口11hと対向する背面板15が、例えば底壁部14と一体に設けられている。そして、収容スペース11s内に挿入されて来た容器1は、その底部4がケース体10の底壁部14上に支持されて上下方向の位置が定まり、胴部3の比較的下部が背面板15に当て止められて前後方向の位置が定まるようになっている。尚、この背面板15の上方には、ケース体10を例えば縦壁(不図示)に取り付ける場合に使用される取付板16(図2参照)が、必要に応じて組み付けられる。
【0022】
また、ハウジング部11の比較的上部の上下方向における適所には、ポンプ装置30を保持するための保持ブラケット20が固定されている。該保持ブラケット20は、図4に示されるように、平面視で略U字状のスロット部21kを有するベース板21と、該ベース板21の側端部から上方に延びる左右一対の側板22と、これら側板22の前端部どうしを繋ぐ前板23とで構成され、左右の側板22がそれぞれハウジング部11の左右の側壁12に例えばネジ止めされることにより、ベース板21が略水平に向けられた状態で、保持ブラケット20がハウジング部11に固定されている。
【0023】
前記ポンプ装置30は、図5及び図6により詳しく示されるように、筒状本体31と、該筒状本体31のポンプ室31s内に収納されたボール状の弁体32及びコイルバネ33と、該コイルバネ33で上方に付勢され筒状本体31に対してスライド動作する駆動軸34とを備え、該駆動軸34の上端に設けられたヘッド部35を、駆動レバー41のローラ部42で押下することにより(図6参照)、駆動軸34を下方にスライドさせてポンプ装置30を駆動し、ポンプ室31s内に貯えられた一定量の流体を吐出させるものである。
【0024】
前記ポンプ本体31の下端部には、容器1内の薬液をポンプ室31s内に吸い上げるための吸い上げ管48が結合されている。この吸い上げ管48は、容器1をケース体10に装着する際の作業性を確保・向上させるために、より好ましくは、弾性に富む材料で製作され、十分な可撓性を有している。
【0025】
一方、前記ヘッド部35の側部には、ポンプ室31s内に貯えられた薬液を吐出するための吐出管46が結合されており、該吐出管46の先端にはノズル部47が組み込まれている。尚、この吐出管46のノズル部47は、カバー部18に設けた孔部からカバー部18の外方に臨んでいる。また、前記駆動レバー41は、カバー部18に設けた孔部からカバー部18の外方に突き出るように伸長している。
【0026】
前記駆動レバー41の端末部は、ケース体10のハウジング部11の後部上端付近の枢支部43で回動自在に支持されており、図5に示す待機状態(ポンプ非駆動状態)から、ユーザが駆動レバー41を前下方に向かって回動させることにより、図6に示されるように、駆動レバー41に取り付けられたローラ部42が下方へ移動し、前記ヘッド部35を押下する。これにより、ヘッド部35に結合された吐出管46の先端ノズル部47から、一定量の薬液が吐出される。
【0027】
この後、ユーザが駆動レバー41から手を離して該駆動レバー41を解放すると、コイルバネ33の付勢力によって駆動軸34が上方へスライドし、元の待機状態(図5参照)に戻る。このとき、容器1内の圧力とポンプ室31s内の圧力差によってボール状の弁体32が浮動し、筒状本体31の下端部に結合された吸い上げ管48を介して、容器1内の薬液が吸い上げられ、ポンプ室31sの容積に応じて一定量の薬液がポンプ室31s内に貯えられるようになっている。
尚、かかる構成のポンプ装置30は、マニュアル式のポンプ装置として従来公知のものであるので、その構造および作動について、これ以上の説明は省略する。
【0028】
ポンプ装置30の筒状本体31には、環状のブッシュ37が例えばネジ機構を用いて固定され、該ブッシュ37と、その下方に位置する筒状本体31の鍔部31bとの間に、環状のキャップ38の上面部38bが脱落不能に係止されている。該キャップ38の環状部分38aの内面には雌ネジ部38nが螺設されている。キャップ38の環状部分38aの下端面は、前述の保持ブラケット20のベース板21に形成されたスロット部21kの幅よりも大径に形成され、該ベース板21の上面に当接し得るようになっている。
【0029】
本実施形態に係るディスペンサDは、ポンプ装置30を保持ブラケット20に固定するアダプタ50を備えている。次に、このアダプタ50の構造および作用を説明する。
図7は前記アダプタの概略構成を示す分解斜視図、図8はアダプタの組立状態を示す全体斜視図である。また、図9は容器装着直前におけるアダプタの断面構造を示す部分断面図、図10は容器装着状態におけるアダプタの断面構造を示す部分断面図である。
【0030】
図7から良く分かるように、前記アダプタは、好ましくは2分割構造とされ、上部に雄ネジ部53mを有する第1アダプタ51と、該第1アダプタ51の下部に組み付けられる第2アダプタ56とで構成されている。
第1アダプタ51は、好ましくは合成樹脂材料を用いて一体成形されており、より大径の下部円筒部52とより小径の上部円筒部53とで構成され、この上部円筒部53の外周部に前記雄ネジ部53mが螺設されている。この雄ネジ部53mは、ポンプ装置30の前記キャップ38の環状部分38aの内面に形成された雌ネジ部38nと螺合するものである。
【0031】
また、上部円筒部53の外径寸法は、前述の保持ブラケット20のベース板21に形成されたスロット部21kの幅よりも小さく設定され、一方、下部円筒部52の環状の上端面の外径寸法は、前記スロット部21kの幅よりも大きく設定されている。従って、上部円筒部53を下方からスロット部21kを挿通させた状態で、下部円筒部52の環状の上端面が保持ブラケット20のベース板21の下面に当接し得るようになっている。
【0032】
前記第2アダプタ56は、第1アダプタ51の下部円筒部52の外周面に嵌合する内周面を有する筒状部57と、該筒状部57の下端から拡径するように下方に広がるスカート部58とで構成されている。第2アダプタ56は、例えばゴム或いは軟質樹脂等の弾性に富む材料で製作されており、前記スカート部58は十分な可撓性とシール特性とを有している。
【0033】
筒状部57の上端内側には、環状の係止鍔部57bが一体に形成されており、この係止鍔部57bを、第1アダプタ51の下部円筒部52の外周上部に設けられた環状の溝部52gに嵌合させることにより、第2アダプタ56が第1アダプタ51と一体的に組み立てられる。
【0034】
このように、ポンプ装置30を保持ブラケット20に固定するアダプタ50を、ポンプ装置30のキャップ38に締結される雄ネジ部53mを有する第1アダプタ51と、該第1アダプタ51に組み付けられ可撓性スカート部58を下方に有する第2アダプタ56とに、2分割して構成することにより、全体としては複雑形状のアダプタ50を比較的容易に製作することができる。また、ネジ部53mを有する第1アダプタ51と可撓性スカート部58を有する第2アダプタ56とを、それぞれに要求される特性を備えた異なる材料で製作することができ、アダプタ50を製作するに際して、材料選定の自由度を高めることができる。尚、アダプタを2分割構造とせずに一体成形することも可能である。
【0035】
ポンプ装置30をケース体10のハウジング部11に固定する際には、ポンプ装置30の筒状本体部31及び吸い上げ管48を、ケース体10に固定した保持ブラケット20のベース板21に形成されたスロット部21kに挿通させ、ポンプ装置30の前記キャップ38の環状部分38aの下端面が前記ベース板21の上面側に位置する状態で、アダプタ50の(つまり第1アダプタ51の)上部円筒部53をスロット部21kに下方から挿通させ、該上部円筒部53の雄ネジ部53mを前記キャップ38の環状部分38aの内面に形成された雌ネジ部38nと螺合させて締め付ける(図5,図6参照)。
【0036】
これにより、前記キャップ38の環状部分38aの下端面が前記ベース板21の上面に当接し、且つ、アダプタ50の(つまり第1アダプタ51の)上部円筒部53の環状の上端面がベース板21の下面に当接した状態で、キャップ38とアダプタ50とが、保持ブラケット20のベース板21を挟んで互いに締結固定され、ポンプ装置30がベース板21に固定される。
このようにして、ポンプ装置30をベース板21に固定することにより、ネジの締結機構を利用して、容易かつ確実にポンプ装置30をケース体10に固定することができる。
【0037】
以上のように構成されたディスペンサDにおいて、薬液を充填した前記容器1をケース体10に装着する際には、図1に示されるように、給排口部8のキャップを取り外した状態の容器1を若干傾けながら、給排口部8から吸い上げ管48を容器1内に挿入させ、ケース体10のハウジング部11の収容スペース11sの前側および前側下方に形成された開口11hから、収容スペース11s内に容器1を挿入して行く。このとき、容器1の胴部3がケース体10の背面板15に略沿うようにして容器を上方へ挿入することにより、容器1の給排口部8がアダプタ50と(つまり第2アダプタ56と)略同軸を保つようにして容器1が上動する(図9参照)。
【0038】
そして、容器1の底部4がケース体10の底壁部14上に支持されて上下方向に位置決めされ、胴部3の比較的下部が背面板15に当て止められて前後方向に位置決めされることにより、従来のようにネジ締結作業を行う必要無しに、容器1がケース体10のハウジング部11内に装着される。
【0039】
このとき、図10に示すように、アダプタ50の(つまり第2アダプタ56の)スカート部58は、好ましくは、その先端部およびその近傍部分が容器1の肩部6或いは上面部5の壁面に密着するように撓む(弾性変形する)。そして、この撓み量に応じた弾性力で容器1が下方に付勢され、ケース体10の前記底壁部14との間に、一定の付勢力をもって容器1が保持されるようになっている。
【0040】
このとき、スカート部58の撓み量が(つまり弾性力が)所望の好適な範囲内の値になるように、スカート部58の弾性特性および容器1の上下方向寸法に応じて、保持ブラケット20のベース板21の下面と、ケース体10の底壁部14の上面との間隔Lsが好適に設定されている。
【0041】
以上、説明したように、本実施形態よれば、ポンプ装置30はキャップ38とアダプタ50とでケース体10の保持ブラケット20のベース板21に固定され、ケース体10に装着された容器1は、その上部(肩部6或いは上面部5)の壁面が、アダプタ50の可撓性スカート部58により下方に付勢されて、ケース体10の底壁部14との間に保持される。
【0042】
従って、容器1を交換する際に、使用済み容器を取り外すためのネジの螺脱作業および交換容器を装着するためのネジの螺合作業は不要であり、容器交換作業を大幅に簡略化することができる。また、容易かつ確実に交換容器1をケース体10に装着することができる。しかも、前記可撓性スカート部58は容器の上部(肩部6或いは上面部5)の壁面に密着した状態で容器1を下方に付勢しているので、容器1内またはポンプ装置30に異物が混入したり容器1内の流体が漏れ出ることを、確実に防止することができるのである。
【0043】
尚、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、変更および改良等がなされるものであることは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、ディスペンサに関し、容易かつ確実に容器をケース体に装着でき、しかも異物混入や容器内の流体の漏出も有効に防止でき、例えば薬液や石鹸液等の流体の内容物を充填した容器をケース体に着脱可能に装着して使用するディスペンサとして、有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係るディスペンサのケース体および交換容器の全体構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】ケース体に容器を装着した状態を示す前記ディスペンサの縦断面図である。
【図3】図2のY3部分を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図4】前記ディスペンサのポンプ装置を保持する保持ブラケットの概略構成を示す斜視図である。
【図5】前記ディスペンサのポンプ装置の断面構造をポンプ非作動状態にて示す縦断面図である。
【図6】前記ポンプ装置の断面構造をポンプ駆動状態にて示す縦断面図である。
【図7】前記ディスペンサのアダプタの概略構成を示す分解斜視図である。
【図8】前記アダプタの組立状態を示す全体斜視図である。
【図9】容器装着直前における前記アダプタの断面構造を示す部分断面図である。
【図10】容器装着状態における前記アダプタの断面構造を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 容器
2 容器本体
3 胴部
4 底部
5 上面部
6 肩部
8 給排口部
10 ケース体
11 ハウジング部
14底壁部
20 保持ブラケット
21 ベース板
30 ポンプ装置
31 筒状本体
34 駆動軸
35 ヘッド部
38 キャップ
41 駆動レバー
42 ローラ部
46 吐出管
48 吸い上げ管
50 アダプタ
51 第1アダプタ
53 上部円筒部
53m 雄ネジ部
56 第2アダプタ
58 スカート部
D ディスペンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の流体を充填した容器を着脱可能に装着するケース体と、
前記ケース体に装着された前記容器内の流体を、吸い上げ管を介して前記容器から吸い上げ、吐出管を介して前記ケース体の外部に吐出するポンプ装置と、
該ポンプ装置を駆動するための駆動機構と、
前記ポンプ装置を前記ケース体の保持板に固定する固定機構であって、前記ポンプ装置に係止され前記保持板の上面に当接する上側固定具と、該上側固定具に下方から係合し前記保持板の下面に当接する下側固定具とを有する固定機構と、
前記ケース体の底部に設けられ、該ケース体に装着された前記容器の底部を支持する底部支持部と、を備え、
前記下側固定具は、前記ケース体に装着された前記容器の上部壁面に密着して容器を下方に付勢し、前記底部支持部との間に容器を保持する可撓性スカート部を有している、
ことを特徴とするディスペンサ。
【請求項2】
前記上側固定具と前記下側固定具とは、前記保持板を挟んで互いに締結固定されることにより、前記ポンプ装置を前記ケース体の保持板に固定する、ことを特徴とする請求項1に記載のディスペンサ。
【請求項3】
前記下側固定具は、前記上側固定具に締結されるネジ部を有する第1アダプタと、該第1アダプタに組み付けられ前記可撓性スカート部を下方に有する第2アダプタとで構成されている、ことを特徴とする請求項2に記載のディスペンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−286406(P2009−286406A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137965(P2008−137965)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000106106)サラヤ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】