ディーゼルパティキュレートフィルタ及びその製造方法
【課題】DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)のPM(粒子状物質)捕集率を高めるとともに、捕集したPMの着火燃焼性を高める。
【解決手段】フィルタ本体にコーティングする触媒として、粒状アルミナと、アルカリ金属及びアルミニウムを成分とする針状結晶の化合物とを含有し、この粒状アルミナ及び結晶化合物にPt等の着火燃焼を促進する触媒金属を担持したものとする。
【解決手段】フィルタ本体にコーティングする触媒として、粒状アルミナと、アルカリ金属及びアルミニウムを成分とする針状結晶の化合物とを含有し、この粒状アルミナ及び結晶化合物にPt等の着火燃焼を促進する触媒金属を担持したものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルパティキュレートフィルタ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(以下、適宜PMともいう。)をフィルタで捕集し、該フィルタの排ガス通路壁面に担持された触媒を利用して燃焼除去するPM燃焼触媒付きのディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)の開発が進められている。
【0003】
PM燃焼触媒としては、Ptをアルミナに担持したものの他、PMの着火燃焼温度を下げるべく、活性酸素を放出してPMの着火燃焼を助ける酸素吸蔵材と上記Pt担持アルミナとを混合したもの、Pt担持アルミナにアルカリ金属を担持させたもの等が知られている。PtはPMの酸化燃焼に直接働く他、排ガス中のNOやN2をNO2に酸化させ、このNO2とPMとを反応させてPMを燃焼させる触媒として働く。アルカリ金属は、排ガス中のNOxと反応して硝酸塩を生成し、この硝酸塩の加熱分解によって活性の高い酸素が発生することから、上記PMの着火燃焼、NOの酸化に有用になる。また、アルカリ金属のケイ酸塩、アルミン酸塩又はジルコン酸塩をPM燃焼触媒として用いることにより、硫黄被毒を防止することも知られている(特許文献1参照)。
【0004】
その他に、ストレートフロー型のメタル担体に、触媒金属を担持したγアルミナの層を形成し、その上にアルミナ繊維層を形成したものも知られている(特許文献2参照)。これは、アルミナ繊維を採用することによりPMの捕集率を高め、捕集したPMを触媒金属で燃焼除去するというものである。
【特許文献1】特開平10−118490号公報
【特許文献2】特開2001−104783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如く、DPFのPM燃焼触媒として、アルミナとPt等の触媒金属とアルカリ金属とを組み合わせたものは知られているが、本発明は、このような組み合わせにおいて、アルカリ金属の用い方に工夫をして、PMの着火燃焼性を高めることを課題とする。
【0006】
また、本発明の別の課題は、PM着火燃焼性を高めるとともに、DPFのPM捕集率を高めることにある。
【0007】
また、本発明の別の課題は、DPFのPM着火燃焼性及びPM捕集率の向上を図るとともに、フィルタ本体がコージェライトのようなケイ素を含有する無機多孔質材で形成されているときの、アルカリ金属によるフィルタ本体の強度低下や触媒コート層のフィルタ本体からの剥落を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題に対して、アルカリ金属を結晶化合物の形でアルミナ粉末及び触媒金属と共にフィルタ本体に担持させるようにした。
【0009】
すなわち、請求項1に係る発明は、排ガス中の微粒子状物質を捕集するフィルタ本体の排ガス通路を構成する壁面に触媒がコートされているディーゼルパティキュレートフィルタであって、
上記触媒は、粒状アルミナと、アルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物とを含有し、上記粒状アルミナ及び上記結晶化合物のうち少なくとも粒状アルミナに、上記フィルタ本体に捕集された粒子状物質の着火燃焼を促進する触媒金属が担持されていることを特徴とする。
【0010】
従って、かかるディーゼルパティキュレートフィルタにあっては、粒状アルミナに担持されている触媒金属がフィルタ本体に捕集されたPMを着火燃焼させる。一方、結晶化合物のアルカリ金属は、排ガス中のNOxと反応して硝酸塩を生成させ、この硝酸塩の加熱分解によって生ずる活性の高い酸素が上記触媒金属によるPMの着火燃焼を促進する。そうして、アルカリ金属は結晶化合物を構成する成分となっていることからその分散性が高く、このため、上記活性の高い酸素の生成に有利になり、PMの着火燃焼性が向上する(PMの着火燃焼温度が低くなる)とともに、高熱に晒されたときのシンタリングも少なくなり、長期間にわたってPMの着火燃焼を促進する上で有利になる。
【0011】
また、アルカリ金属は上記結晶化合物の形態で触媒に含まれているから、排ガスの熱による蒸散が抑制される。従って、フィルタ本体がケイ素を含有する無機多孔質材によって形成されている場合でも、アルカリ金属が蒸散してケイ素含有フィルタ本体に固溶することが防がれる。すなわち、アルカリ金属によるフィルタ本体の構造破壊ないしは強度低下、触媒コート層のフィルタ本体からの剥落が防がれる。
【0012】
触媒金属としては、Ptが好ましく、PdやRhを採用することもでき、また、2種以上の触媒金属を併用してもよい。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1において、
上記結晶化合物は、針状結晶であり、室温且つ大気雰囲気でのX線回折によって(Al,M)(OH)3(但し、Mはアルカリ金属である。)と同定されることを特徴とする。
【0014】
従って、アルカリ金属を含有する化合物が針状結晶になっているから、触媒コート層表面から部分的に突出した針状結晶にPMが当たって捕捉され易くなり、或いは針状結晶同士が絡み合って入り組んだ空隙が形成され、該空隙を排ガスが通過するときにPMが針状結晶に付着し易くなり、PM捕集率が高くなる。また、PM捕集量が幾分多くなってきても、上記針状結晶によって形成される入り組んだ空隙によってPM捕集容量が大きくなっているから、針状結晶がPMに埋まってしまうことが避けられる。すなわち、針状結晶と排ガスとの接触が確保されるから、該針状結晶のアルカリ金属がPMの着火燃焼性の向上に有効に働く。
【0015】
また、アルカリ金属を含有する化合物が針状結晶になって絡み合っているということは、アルカリ金属とフィルタ本体との接触も少なくなるということである。よって、フィルタ本体がケイ素を含有する無機多孔質材によって形成されている場合でも、アルカリ金属によるフィルタ本体の構造破壊が少なくなり、フィルタ本体の耐久性向上及び触媒コート層の剥落防止に有利になる。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2において、
上記アルカリ金属はNa又はKであることを特徴とする。
【0017】
すなわち、Na又はKは、排ガス中のNOxと反応して硝酸塩を生成し熱分解により活性の高い酸素を生成し易く、PM着火燃焼性の向上に有利であるとともに、アルミニウムと共に針状結晶の化合物を生成し易く、請求項2に係る発明の説明で述べたPM捕集率の向上等に有利になる。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項3において、
上記触媒中のアルミニウム量から換算したアルミナ量と上記触媒金属量とアルカリ金属量との合計量に占めるアルカリ金属量の割合が3.7質量%以上であることを特徴とする。
【0019】
これにより、針状結晶の化合物を生成し易くなり、PM捕集率、PM着火燃焼性の向上に有利になる。上記アルカリ金属量は20質量%を越えても、PM着火燃焼性がさらに大きく向上することは望めず、かえって、針状結晶が多くなることにより触媒のフィルタ本体へのコーティングが難しくなり、また、コート層が嵩高になる(厚くなる)ことにより、排ガス通路の確保が難しくなり、さらには、フィルタ本体がケイ素を含有する無機多孔質材で形成されている場合にはフィルタ本体の強度低下を招き易くなることから、特に限定するわけではないが、アルカリ金属量は20質量%以下が好ましい。
【0020】
請求項5に係る発明は、アルミナ粉末、触媒金属塩の溶液及びアルカリ金属塩の溶液を混合する工程Aと、
上記工程Aで得られた混合液を攪拌しながら加熱することにより、一部のアルミナ粉末よりそのアルミニウム成分を溶出させる工程Bと、
上記工程Bを経た混合物を焼成することにより、上記アルミニウム成分と上記アルカリ金属とを反応させてアルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物を生成する工程Cと、
上記工程Cを経た上記アルミナ粉末の残部、上記結晶化合物及び上記触媒金属を含有するスラリーを調製し、該スラリーをフィルタ本体の排ガス通路を構成する壁面にコーティングする工程Dとを備えていることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタの製造方法である。
【0021】
従って、アルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物を別途調製することなく、アルミナ粉末、触媒金属塩の溶液及びアルカリ金属塩の溶液を混合し加熱攪拌し、得られた混合物を焼成するだけで、当該結晶化合物とアルミナ粉末と触媒金属との混合物を得ることができる。しかも、かかる混合物をフィルタ本体にコーティングするだけで、触媒金属が担持されたアルミナ粉末と上記結晶化合物とよりなる触媒層を形成することができ、アルカリ金属や触媒金属をウォッシュコート層に後から含浸させるという工程も不要になる。
【0022】
請求項6に係る発明は、請求項5において、
上記フィルタ本体は、ケイ素を含有する無機多孔質材で形成されていることを特徴とする。
【0023】
すなわち、フィルタ本体がケイ素を含有する無機多孔質材で形成されている場合、アルミナ粉末をフィルタ本体に担持させた後にアルカリ金属溶液を含浸させると、そのアルカリ金属溶液がフィルタ本体のケイ素と反応して該フィルタ本体の構造破壊が進行し、その強度が低下するとともに、触媒層がフィルタ本体から剥落し易くなる。この点は、アルミナ粉末に予めアルカリ金属を担持させておいて、これをスラリーにしてフィルタ本体にコーティングした場合でも、スラリーにした段階でアルカリ金属がスラリー中に溶け出すから、同じである。
【0024】
これに対して、本発明の場合、アルカリ金属はアルミニウムと共に結晶化合物を構成しているから、スラリーにされたときでも、該スラリー中に溶け出すことがなく、従って、フィルタ本体のケイ素と反応することが防止される。よって、アルカリ金属によってフィルタ本体の強度低下を招くことが避けられるとともに、触媒コート層のフィルタ本体からの剥落も避けられる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、請求項1に係る発明によれば、フィルタ本体にコートされている触媒は、粒状アルミナと、アルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物とを含有し、上記粒状アルミナ及び上記結晶化合物のうち少なくとも粒状アルミナに触媒金属が担持されているから、アルカリ金属によって活性の高い酸素が効率良く生成され、PM着火燃焼性の向上に有利になるとともに、長期間にわたってPMの着火燃焼を促進する上で有利になる。しかもフィルタ本体がケイ素を含有する無機多孔質材によって形成されている場合の、フィルタ本体の強度低下や触媒コート層の剥落防止にも有利になる。
【0026】
請求項2に係る発明によれば、上記結晶化合物は針状結晶の化合物となっているから、PM捕集率が高くなるとともに、PM捕集量が多くなっても、アルカリ金属によるPM着火燃焼性の向上効果が確保され、しかもフィルタ本体がケイ素を含有する無機多孔質材によって形成されている場合の、フィルタ本体の強度低下や触媒コート層の剥落防止にもさらに有利になる。
【0027】
請求項3に係る発明によれば、上記アルカリ金属としてNa又はKを採用したから、PM着火燃焼性の向上に有利になるとともに、針状結晶の化合物を生成し易く、請求項2に係る発明の説明で述べたPM捕集率の向上等に有利になる。
【0028】
請求項4に係る発明によれば、アルカリ金属量の割合が3.7%以上であるから、針状結晶の化合物を生成し易くなり、PM捕集率及びPM着火燃焼性の向上に有利になる。
【0029】
請求項5に係る発明によれば、アルミナ粉末、触媒金属塩の溶液及びアルカリ金属塩の溶液を混合し加熱攪拌し、得られた混合物を焼成することにより、一部のアルミナ粉末からアルミニウム成分を溶出させてアルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物を生成し、フィルタ本体にコーティングするようにしたから、該結晶化合物を別途調製することなく、触媒金属がアルミナ粉末と上記結晶化合物とに担持された触媒層を得ることができ、しかも、アルカリ金属や触媒金属をウォッシュコート層に後から含浸させるという工程も不要になる。
【0030】
請求項6に係る発明によれば、上記フィルタ本体がケイ素を含有する無機多孔質材で形成されているにも拘わらず、アルカリ金属によるフィルタ本体の強度低下や触媒層の剥落が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
図1及び図2にディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFと略す。)1を模式的に示すように、このDPF1は、ハニカム構造をなしており、互いに平行に延びる多数の排ガス通路2,3を備えている。すなわち、DPF1は、下流端が栓4により閉塞された排ガス流入路2と、上流端が栓4により閉塞された排ガス流出路3とが交互に設けられ、排ガス流入路2と排ガス流出路3とは薄肉の隔壁5を介して隔てられている。なお、図1においてハッチングを付した部分は下流端の栓4を示している。
【0033】
DPF1は、そのフィルタ本体がコージェライトやSiC、Si3N4、サイアロンのような無機多孔質材料から形成されており、排ガス流入路2内に流入した排ガスは図2において矢印で示したように周囲の隔壁5を通って隣接する排ガス流出路3内に流出する。すなわち、図3に示すように、隔壁5は排ガス流入路2と排ガス流出路3とを連通する微細な細孔(排ガス通路)6を有し、この細孔6を排ガスが通る。
【0034】
上記DPF1のフィルタ本体の上記排ガス通路(排ガス流入路2、排ガス流出路3及び細孔)の壁面には、粒状アルミナと、アルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物と、触媒金属とを含有する触媒コート層7が形成されている。なお、排ガス流出路3の壁面に触媒コート層を形成することは必ずしも要しない。
【0035】
<DPFの製法>
上記DPF1の製法を説明する。
【0036】
まず、アルミナ粉末、触媒金属塩の溶液及びアルカリ金属塩の溶液を混合する。この混合液をイオン交換水で希釈し、次いで攪拌しながら加熱することにより水分を蒸発させていく(蒸発乾固)。この蒸発乾固の過程で、一部のアルミナ粉末よりそのアルミニウム成分が溶出する。
【0037】
次いで、上記蒸発乾固によって得られた混合物を充分に乾燥した後、これを粉砕し、焼成する。焼成は、大気雰囲気において500℃の温度に2時間保持することによって行なうことができる。
【0038】
上記焼成のための昇温段階で、上記アルミナ粉末よりさらにアルミニウム成分が溶出し、当該焼成により、上記アルミニウム成分と上記アルカリ金属とが反応してアルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物、すなわち、水酸化物の針状結晶が成長する。この場合、針状結晶は粒状アルミナが溶けて生成することから、針状結晶の少なくとも一部は、当該粒状アルミナの表面より成長し該粒状アルミナから生えた状態になると考えられる。また、触媒金属の殆どは、溶けずに残っている比表面積の大きな粒状アルミナに固定される。
【0039】
従って、上記蒸発乾固及び焼成により、触媒金属が担持された粒状アルミナと、アルカリ金属及びアルミニウムを含有する水酸化物の針状結晶との混合物が得られる。この水酸化物の針状結晶にも若干の触媒金属が固定されると考えられる。
【0040】
以上により得られた粉末状の触媒材料にバインダ及び水を加えて攪拌することによりスラリーとし、このスラリーに排ガス流入路2の上流端が開放している側からフィルタ本体を浸漬する一方、排ガス流出路3の下流端が開放している側から吸引ポンプでスラリーを吸い上げることで、少なくとも排ガス流入路2の壁面と細孔6の壁面にスラリーを付着させてフィルタ本体を引き上げ、余分なスラリーを除去した後、乾燥及び焼成を行なうことにより、目的とするDPFを得る。
【0041】
なお、アルミナ粉末とアルカリ金属塩の溶液を混合して蒸発乾固を行なうことによって上述の水酸化物の針状結晶を生成し、これと、触媒金属を担持した粒状アルミナとを混合することによって上記触媒材料を調製するようにしてもよい。
【0042】
また、上述の水酸化物の針状結晶と粒状アルミナとを混合してフィルタ本体にコーティングした後に、そのコート層に触媒金属溶液を含浸させ、乾燥・焼成を行なうことによってDPFを形成するようにしてもよい。
【0043】
<触媒材料の観察>
上記DPFの製法で説明した方法により、すなわち、アルミナ粉末、触媒金属塩の溶液及びアルカリ金属塩の溶液を混合し、水で希釈した後、蒸発乾固を行なうことにより、触媒材料を調製した。アルミナ粉末としてはLaを5質量%含有するγ−アルミナを用い、触媒金属塩の溶液としてはジニトロジアミン白金硝酸溶液を用い、アルカリ金属塩の溶液としては酢酸カリウム溶液を用いた。仕込み量は、γ−アルミナ量が87.7質量%、Pt量が3.5質量%、K量が8.8質量%となるように調整した。
【0044】
なお、上記γ−アルミナ量は、触媒材料中の全アルミニウム量から換算したアルミナ量に相当する。すなわち、原料として仕込まれたγ−アルミナの一部が溶けて上記水酸化物の針状結晶となるから、上記γ−アルミナの仕込み量と触媒材料中の溶けずに残るγ−アルミナ量とは一致しない。γ−アルミナの仕込み量は、当該針状結晶中のアルミニウム量から換算されるアルミナ量と、溶けずに残ったアルミナ量との合計量に相当する。
【0045】
図4及び図5は得られた触媒材料の顕微鏡写真である。同写真の塊状部分はアルミナ粒子であり、このアルミナ粒子より延びている針状結晶はAl及びKを含有する水酸化物であり、塊状部分に黒い点になって現れているもの(矢印の先)はPtである。これにより、上記製法によれば、上述の出発原料を混合し蒸発乾固するだけで、触媒金属が担持された粒状アルミナと、アルカリ金属及びアルミニウムを含有する水酸化物の針状結晶との混合物が得られることがわかる。
【0046】
<X線回折分析>
図4及び図5に示す触媒材料(以下、これを仕込み材料の種類で特定して「Al2O3+Pt+K」とする。)と、酢酸カリウム溶液に代えて酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウムの各々を採用して同様に調製した3種類の触媒材料(Al2O3+Pt+Na,Al2O3+Pt+Li,Al2O3+Pt+Cs)とについて、大気雰囲気で800℃の温度に24時間保持するエージングを施した後に、室温且つ大気雰囲気においてX線回折分析を行なった。図6は触媒材料(Al2O3+Pt+K)及び(Al2O3+Pt+Na)の回折パターンであり、図7は触媒材料(Al2O3+Pt+Li)及び(Al2O3+Pt+Cs)の回折パターンである。
【0047】
図6の◆は(Al,K)(OH)3によるピーク、◇は(Al,Na)(OH)3によるピークである。このことは、図8に示すAl(OH)3のX線回折パターンとの比較から明らかである。すなわち、同図の破線はAl(OH)3のピーク位置を示すが、上記触媒材料(Al2O3+Pt+K,Al2O3+Pt+Na)でも当該破線位置付近にピークが現れている。そうして、触媒材料のピーク位置が破線位置から若干シフトしているのは、K又はNaが固溶している影響によるものと認められる。従って、触媒材料(Al2O3+Pt+K)はカリウム固溶水酸化アルミニウム、触媒材料(Al2O3+Pt+Na)はナトリウム固溶水酸化アルミニウムということができ、総称的にはアルカリ金属固溶水酸化アルミニウムということができる。
【0048】
図7に示すように、触媒材料(Al2O3+Pt+Li)及び(Al2O3+Pt+Cs)では水酸化物の結晶は得られていない。但し、触媒材料(Al2O3+Pt+Li)では、35.7゜付近と45゜付近とに現れたピークからLiAlO2結晶の存在を確認することができる。
【0049】
<添加元素の種類がPMの着火燃焼性に及ぼす影響>
アルミナ及びPt以外の添加元素として、上記4種類のアルカリ金属を採用して調製した実施例に係る各触媒材料、並びにアルカリ土類金属Mg、Ca、Sr及びBa、並びにランタノイド元素La及びCeの各々を採用して調製した比較例に係る各触媒材料について、DTA(示差熱分析)により、PMの着火燃焼性を調べた。
【0050】
具体的には、供試触媒材料の仕込み量はいずれも、γ−アルミナ量が87.7質量%、Pt量が3.5質量%、K等の添加元素量が8.8質量%であり、また、いずれにも上述のエージングを施した。そうして、各供試触媒材料について、PMとしてのカーボンブラックと混合し、DTA用サンプルを調製した。カーボンブラック量はカーボンブラックと供試触媒材料との合計量に対して20質量%とした。このDTA用サンプルを反応容器に充填し、N2(80質量%)とO2(20質量%)との混合ガスを供給しながら、10℃/分の速度で昇温して供試触媒材料と基準物質の温度差の変化(DTA曲線)を測定し、これに基いてカーボンブラック量が半減した時点の温度(カーボン半減時温度)を求めた。結果は図9に示されている。
【0051】
同図によれば、アルカリ金属を添加元素とする各実施例はカーボン半減時の温度が比較例よりもかなり低くなっており、特にK又はNaを添加元素とした場合には100℃以上も低くなっている。また、別に添加元素量を零とした触媒材料(γ−アルミナ量;96.5質量%,Pt量;3.5質量%)に係るDPFを調製してカーボン半減時のガス温度を調べたところ、685℃であったことから、添加元素として上記アルカリ土類金属やランタノイド元素を採用してもPMの着火燃焼性の実質的な改善は望めないことがわかった。
【0052】
<アルカリ金属添加量の影響>
上記触媒材料(Al2O3+Pt+K)について、そのK量を表1のように変化させたときの生成物(触媒材料)に与える影響を調べた。すなわち、K量が異なる各触媒材料を調製し上記エージングを施した後にX線回折分析を行なったところ、図10に示す回折パターンが得られた。
【0053】
【表1】
【0054】
図10によれば、K量が3.7質量%以上になると、(Al,K)(OH)3によるピークが現れ、K量の増大に従ってそのピークが大きくなっている。従って、(Al,K)(OH)3の針状結晶を形成するためにはK量を3.7%以上にすることが好ましいということができる。
【0055】
また、表1のK量が3.7質量%〜27.8質量%の各触媒材料及びK量零の触媒材料(γ−アルミナ量;96.5質量%,Pt量;3.5質量%)を用いてそれぞれDPFを作製し、先と同様のエージングを施した後、上述のカーボン半減時の温度をDTAにより調べた。その結果を図11に示す。同図から、K量が増大するに従ってカーボン半減時の温度が低下する、つまり、PMの着火燃焼性が良くなること、但し、K量が多くなると効果が飽和してくることがわかる。
【0056】
従って、図10及び図11に示す結果から、K量を増大させることは上記針状結晶を生成する上では有利になり、PMの着火燃焼性の改善が図れるが、K量が過剰になると上述の如く効果が飽和してくるとともに、触媒材料のフィルタ本体へのコーティングが難しくなる、粒状アルミナ量が相対的に減少して触媒金属の分散性が低下する、Kによってフィルタ本体の強度低下を招き易くなる、等の理由から、K量は27.8質量%以下にすること、さらには20質量%以下にすることが好ましい。このことは添加元素としてNaを採用した場合も同様である。
【0057】
<針状結晶によるPM捕集率の改善効果>
上述のK量8.8質量%の実施例に係る触媒材料(針状結晶あり)と、K量零の比較例に係る触媒材料(針状結晶なし)とについて、それぞれ供試DPFを作製し、図12に示す装置により、PMとしてのカーボン捕集率を調べた。
【0058】
図12において、11はPMとしてのカーボン(煤)を入れた容器であり、この容器11の頂部にエアブロー管12が接続されているとともに、該頂部から延設されたカーボン送り管13の先端に供試DPF14を取り付けるようになっている。この装置の場合、エアブロー管12から供給されたエアによって容器11内に乱流を生じ、該容器11のカーボンが乱流に巻き込まれカーボン送り管13によって供試DPF14に供給される。供試DPF14に捕捉されなかったカーボンはエアと共に該供試DPF14から排出される。
【0059】
供試DPFは細孔通路径が22μmと30μmの2種類であり、いずれも容積は55cm3、セル密度は300cpsi(断面積約6.45cm2当たりのセル数)である。また、DPF容積1L当たりの触媒材料のコート量は50gとした。一方、容器11に入れるカーボン量は0.28g、エア流量は供試DPF14においてSV=120000h-1となるようにした。そうして、容器11のカーボンの全量をDPFサンプル14に供給したときの該サンプルの重量増加量からそのカーボン捕集量を求め、捕集率(カーボン捕集量/カーボン供給量)を算出した。結果は表2に示されている。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例は比較例よりもカーボン捕集率が6〜7%高くなっている。これは、実施例では、触媒コート層表面から部分的に突出した針状結晶にカーボンが当たって捕捉され、また、針状結晶同士が絡み合っててできた空隙をカーボンが通過するときに針状結晶に当たって捕捉されるためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】DPFを模式的に示す正面図である。
【図2】DPFを模式的に示す縦断面図である。
【図3】DPFの排ガス流入路と排ガス流出路とを隔てる壁を模式的に示す拡大断面図である。
【図4】本発明に係る触媒粒子の顕微鏡写真である。
【図5】本発明に係る別の触媒粒子の顕微鏡写真である。
【図6】K及びNaの各々を添加元素とする触媒材料のX線回折パターン図である。
【図7】Li及びCsの各々を添加元素とする触媒材料のX線回折パターン図である。
【図8】K及びNaの各々を添加元素とする触媒材料及び水酸化アルミニウムのX線回折パターン図である。
【図9】添加元素が異なる各種触媒材料に係るDPFのカーボン半減時温度を示すグラフ図である。
【図10】K添加量が異なる各触媒材料のX線回折パターン図である。
【図11】触媒材料のK添加量とカーボン半減時温度との関係を示すグラフ図である。
【図12】PM捕集率の測定装置を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 DPF
2 排ガス流入路(排ガス通路)
3 排ガス流出路(排ガス通路)
4 栓
5 隔壁
6 細孔通路(排ガス通路)
7 触媒コート層
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルパティキュレートフィルタ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(以下、適宜PMともいう。)をフィルタで捕集し、該フィルタの排ガス通路壁面に担持された触媒を利用して燃焼除去するPM燃焼触媒付きのディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)の開発が進められている。
【0003】
PM燃焼触媒としては、Ptをアルミナに担持したものの他、PMの着火燃焼温度を下げるべく、活性酸素を放出してPMの着火燃焼を助ける酸素吸蔵材と上記Pt担持アルミナとを混合したもの、Pt担持アルミナにアルカリ金属を担持させたもの等が知られている。PtはPMの酸化燃焼に直接働く他、排ガス中のNOやN2をNO2に酸化させ、このNO2とPMとを反応させてPMを燃焼させる触媒として働く。アルカリ金属は、排ガス中のNOxと反応して硝酸塩を生成し、この硝酸塩の加熱分解によって活性の高い酸素が発生することから、上記PMの着火燃焼、NOの酸化に有用になる。また、アルカリ金属のケイ酸塩、アルミン酸塩又はジルコン酸塩をPM燃焼触媒として用いることにより、硫黄被毒を防止することも知られている(特許文献1参照)。
【0004】
その他に、ストレートフロー型のメタル担体に、触媒金属を担持したγアルミナの層を形成し、その上にアルミナ繊維層を形成したものも知られている(特許文献2参照)。これは、アルミナ繊維を採用することによりPMの捕集率を高め、捕集したPMを触媒金属で燃焼除去するというものである。
【特許文献1】特開平10−118490号公報
【特許文献2】特開2001−104783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如く、DPFのPM燃焼触媒として、アルミナとPt等の触媒金属とアルカリ金属とを組み合わせたものは知られているが、本発明は、このような組み合わせにおいて、アルカリ金属の用い方に工夫をして、PMの着火燃焼性を高めることを課題とする。
【0006】
また、本発明の別の課題は、PM着火燃焼性を高めるとともに、DPFのPM捕集率を高めることにある。
【0007】
また、本発明の別の課題は、DPFのPM着火燃焼性及びPM捕集率の向上を図るとともに、フィルタ本体がコージェライトのようなケイ素を含有する無機多孔質材で形成されているときの、アルカリ金属によるフィルタ本体の強度低下や触媒コート層のフィルタ本体からの剥落を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題に対して、アルカリ金属を結晶化合物の形でアルミナ粉末及び触媒金属と共にフィルタ本体に担持させるようにした。
【0009】
すなわち、請求項1に係る発明は、排ガス中の微粒子状物質を捕集するフィルタ本体の排ガス通路を構成する壁面に触媒がコートされているディーゼルパティキュレートフィルタであって、
上記触媒は、粒状アルミナと、アルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物とを含有し、上記粒状アルミナ及び上記結晶化合物のうち少なくとも粒状アルミナに、上記フィルタ本体に捕集された粒子状物質の着火燃焼を促進する触媒金属が担持されていることを特徴とする。
【0010】
従って、かかるディーゼルパティキュレートフィルタにあっては、粒状アルミナに担持されている触媒金属がフィルタ本体に捕集されたPMを着火燃焼させる。一方、結晶化合物のアルカリ金属は、排ガス中のNOxと反応して硝酸塩を生成させ、この硝酸塩の加熱分解によって生ずる活性の高い酸素が上記触媒金属によるPMの着火燃焼を促進する。そうして、アルカリ金属は結晶化合物を構成する成分となっていることからその分散性が高く、このため、上記活性の高い酸素の生成に有利になり、PMの着火燃焼性が向上する(PMの着火燃焼温度が低くなる)とともに、高熱に晒されたときのシンタリングも少なくなり、長期間にわたってPMの着火燃焼を促進する上で有利になる。
【0011】
また、アルカリ金属は上記結晶化合物の形態で触媒に含まれているから、排ガスの熱による蒸散が抑制される。従って、フィルタ本体がケイ素を含有する無機多孔質材によって形成されている場合でも、アルカリ金属が蒸散してケイ素含有フィルタ本体に固溶することが防がれる。すなわち、アルカリ金属によるフィルタ本体の構造破壊ないしは強度低下、触媒コート層のフィルタ本体からの剥落が防がれる。
【0012】
触媒金属としては、Ptが好ましく、PdやRhを採用することもでき、また、2種以上の触媒金属を併用してもよい。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1において、
上記結晶化合物は、針状結晶であり、室温且つ大気雰囲気でのX線回折によって(Al,M)(OH)3(但し、Mはアルカリ金属である。)と同定されることを特徴とする。
【0014】
従って、アルカリ金属を含有する化合物が針状結晶になっているから、触媒コート層表面から部分的に突出した針状結晶にPMが当たって捕捉され易くなり、或いは針状結晶同士が絡み合って入り組んだ空隙が形成され、該空隙を排ガスが通過するときにPMが針状結晶に付着し易くなり、PM捕集率が高くなる。また、PM捕集量が幾分多くなってきても、上記針状結晶によって形成される入り組んだ空隙によってPM捕集容量が大きくなっているから、針状結晶がPMに埋まってしまうことが避けられる。すなわち、針状結晶と排ガスとの接触が確保されるから、該針状結晶のアルカリ金属がPMの着火燃焼性の向上に有効に働く。
【0015】
また、アルカリ金属を含有する化合物が針状結晶になって絡み合っているということは、アルカリ金属とフィルタ本体との接触も少なくなるということである。よって、フィルタ本体がケイ素を含有する無機多孔質材によって形成されている場合でも、アルカリ金属によるフィルタ本体の構造破壊が少なくなり、フィルタ本体の耐久性向上及び触媒コート層の剥落防止に有利になる。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2において、
上記アルカリ金属はNa又はKであることを特徴とする。
【0017】
すなわち、Na又はKは、排ガス中のNOxと反応して硝酸塩を生成し熱分解により活性の高い酸素を生成し易く、PM着火燃焼性の向上に有利であるとともに、アルミニウムと共に針状結晶の化合物を生成し易く、請求項2に係る発明の説明で述べたPM捕集率の向上等に有利になる。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項3において、
上記触媒中のアルミニウム量から換算したアルミナ量と上記触媒金属量とアルカリ金属量との合計量に占めるアルカリ金属量の割合が3.7質量%以上であることを特徴とする。
【0019】
これにより、針状結晶の化合物を生成し易くなり、PM捕集率、PM着火燃焼性の向上に有利になる。上記アルカリ金属量は20質量%を越えても、PM着火燃焼性がさらに大きく向上することは望めず、かえって、針状結晶が多くなることにより触媒のフィルタ本体へのコーティングが難しくなり、また、コート層が嵩高になる(厚くなる)ことにより、排ガス通路の確保が難しくなり、さらには、フィルタ本体がケイ素を含有する無機多孔質材で形成されている場合にはフィルタ本体の強度低下を招き易くなることから、特に限定するわけではないが、アルカリ金属量は20質量%以下が好ましい。
【0020】
請求項5に係る発明は、アルミナ粉末、触媒金属塩の溶液及びアルカリ金属塩の溶液を混合する工程Aと、
上記工程Aで得られた混合液を攪拌しながら加熱することにより、一部のアルミナ粉末よりそのアルミニウム成分を溶出させる工程Bと、
上記工程Bを経た混合物を焼成することにより、上記アルミニウム成分と上記アルカリ金属とを反応させてアルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物を生成する工程Cと、
上記工程Cを経た上記アルミナ粉末の残部、上記結晶化合物及び上記触媒金属を含有するスラリーを調製し、該スラリーをフィルタ本体の排ガス通路を構成する壁面にコーティングする工程Dとを備えていることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタの製造方法である。
【0021】
従って、アルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物を別途調製することなく、アルミナ粉末、触媒金属塩の溶液及びアルカリ金属塩の溶液を混合し加熱攪拌し、得られた混合物を焼成するだけで、当該結晶化合物とアルミナ粉末と触媒金属との混合物を得ることができる。しかも、かかる混合物をフィルタ本体にコーティングするだけで、触媒金属が担持されたアルミナ粉末と上記結晶化合物とよりなる触媒層を形成することができ、アルカリ金属や触媒金属をウォッシュコート層に後から含浸させるという工程も不要になる。
【0022】
請求項6に係る発明は、請求項5において、
上記フィルタ本体は、ケイ素を含有する無機多孔質材で形成されていることを特徴とする。
【0023】
すなわち、フィルタ本体がケイ素を含有する無機多孔質材で形成されている場合、アルミナ粉末をフィルタ本体に担持させた後にアルカリ金属溶液を含浸させると、そのアルカリ金属溶液がフィルタ本体のケイ素と反応して該フィルタ本体の構造破壊が進行し、その強度が低下するとともに、触媒層がフィルタ本体から剥落し易くなる。この点は、アルミナ粉末に予めアルカリ金属を担持させておいて、これをスラリーにしてフィルタ本体にコーティングした場合でも、スラリーにした段階でアルカリ金属がスラリー中に溶け出すから、同じである。
【0024】
これに対して、本発明の場合、アルカリ金属はアルミニウムと共に結晶化合物を構成しているから、スラリーにされたときでも、該スラリー中に溶け出すことがなく、従って、フィルタ本体のケイ素と反応することが防止される。よって、アルカリ金属によってフィルタ本体の強度低下を招くことが避けられるとともに、触媒コート層のフィルタ本体からの剥落も避けられる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、請求項1に係る発明によれば、フィルタ本体にコートされている触媒は、粒状アルミナと、アルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物とを含有し、上記粒状アルミナ及び上記結晶化合物のうち少なくとも粒状アルミナに触媒金属が担持されているから、アルカリ金属によって活性の高い酸素が効率良く生成され、PM着火燃焼性の向上に有利になるとともに、長期間にわたってPMの着火燃焼を促進する上で有利になる。しかもフィルタ本体がケイ素を含有する無機多孔質材によって形成されている場合の、フィルタ本体の強度低下や触媒コート層の剥落防止にも有利になる。
【0026】
請求項2に係る発明によれば、上記結晶化合物は針状結晶の化合物となっているから、PM捕集率が高くなるとともに、PM捕集量が多くなっても、アルカリ金属によるPM着火燃焼性の向上効果が確保され、しかもフィルタ本体がケイ素を含有する無機多孔質材によって形成されている場合の、フィルタ本体の強度低下や触媒コート層の剥落防止にもさらに有利になる。
【0027】
請求項3に係る発明によれば、上記アルカリ金属としてNa又はKを採用したから、PM着火燃焼性の向上に有利になるとともに、針状結晶の化合物を生成し易く、請求項2に係る発明の説明で述べたPM捕集率の向上等に有利になる。
【0028】
請求項4に係る発明によれば、アルカリ金属量の割合が3.7%以上であるから、針状結晶の化合物を生成し易くなり、PM捕集率及びPM着火燃焼性の向上に有利になる。
【0029】
請求項5に係る発明によれば、アルミナ粉末、触媒金属塩の溶液及びアルカリ金属塩の溶液を混合し加熱攪拌し、得られた混合物を焼成することにより、一部のアルミナ粉末からアルミニウム成分を溶出させてアルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物を生成し、フィルタ本体にコーティングするようにしたから、該結晶化合物を別途調製することなく、触媒金属がアルミナ粉末と上記結晶化合物とに担持された触媒層を得ることができ、しかも、アルカリ金属や触媒金属をウォッシュコート層に後から含浸させるという工程も不要になる。
【0030】
請求項6に係る発明によれば、上記フィルタ本体がケイ素を含有する無機多孔質材で形成されているにも拘わらず、アルカリ金属によるフィルタ本体の強度低下や触媒層の剥落が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
図1及び図2にディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFと略す。)1を模式的に示すように、このDPF1は、ハニカム構造をなしており、互いに平行に延びる多数の排ガス通路2,3を備えている。すなわち、DPF1は、下流端が栓4により閉塞された排ガス流入路2と、上流端が栓4により閉塞された排ガス流出路3とが交互に設けられ、排ガス流入路2と排ガス流出路3とは薄肉の隔壁5を介して隔てられている。なお、図1においてハッチングを付した部分は下流端の栓4を示している。
【0033】
DPF1は、そのフィルタ本体がコージェライトやSiC、Si3N4、サイアロンのような無機多孔質材料から形成されており、排ガス流入路2内に流入した排ガスは図2において矢印で示したように周囲の隔壁5を通って隣接する排ガス流出路3内に流出する。すなわち、図3に示すように、隔壁5は排ガス流入路2と排ガス流出路3とを連通する微細な細孔(排ガス通路)6を有し、この細孔6を排ガスが通る。
【0034】
上記DPF1のフィルタ本体の上記排ガス通路(排ガス流入路2、排ガス流出路3及び細孔)の壁面には、粒状アルミナと、アルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物と、触媒金属とを含有する触媒コート層7が形成されている。なお、排ガス流出路3の壁面に触媒コート層を形成することは必ずしも要しない。
【0035】
<DPFの製法>
上記DPF1の製法を説明する。
【0036】
まず、アルミナ粉末、触媒金属塩の溶液及びアルカリ金属塩の溶液を混合する。この混合液をイオン交換水で希釈し、次いで攪拌しながら加熱することにより水分を蒸発させていく(蒸発乾固)。この蒸発乾固の過程で、一部のアルミナ粉末よりそのアルミニウム成分が溶出する。
【0037】
次いで、上記蒸発乾固によって得られた混合物を充分に乾燥した後、これを粉砕し、焼成する。焼成は、大気雰囲気において500℃の温度に2時間保持することによって行なうことができる。
【0038】
上記焼成のための昇温段階で、上記アルミナ粉末よりさらにアルミニウム成分が溶出し、当該焼成により、上記アルミニウム成分と上記アルカリ金属とが反応してアルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物、すなわち、水酸化物の針状結晶が成長する。この場合、針状結晶は粒状アルミナが溶けて生成することから、針状結晶の少なくとも一部は、当該粒状アルミナの表面より成長し該粒状アルミナから生えた状態になると考えられる。また、触媒金属の殆どは、溶けずに残っている比表面積の大きな粒状アルミナに固定される。
【0039】
従って、上記蒸発乾固及び焼成により、触媒金属が担持された粒状アルミナと、アルカリ金属及びアルミニウムを含有する水酸化物の針状結晶との混合物が得られる。この水酸化物の針状結晶にも若干の触媒金属が固定されると考えられる。
【0040】
以上により得られた粉末状の触媒材料にバインダ及び水を加えて攪拌することによりスラリーとし、このスラリーに排ガス流入路2の上流端が開放している側からフィルタ本体を浸漬する一方、排ガス流出路3の下流端が開放している側から吸引ポンプでスラリーを吸い上げることで、少なくとも排ガス流入路2の壁面と細孔6の壁面にスラリーを付着させてフィルタ本体を引き上げ、余分なスラリーを除去した後、乾燥及び焼成を行なうことにより、目的とするDPFを得る。
【0041】
なお、アルミナ粉末とアルカリ金属塩の溶液を混合して蒸発乾固を行なうことによって上述の水酸化物の針状結晶を生成し、これと、触媒金属を担持した粒状アルミナとを混合することによって上記触媒材料を調製するようにしてもよい。
【0042】
また、上述の水酸化物の針状結晶と粒状アルミナとを混合してフィルタ本体にコーティングした後に、そのコート層に触媒金属溶液を含浸させ、乾燥・焼成を行なうことによってDPFを形成するようにしてもよい。
【0043】
<触媒材料の観察>
上記DPFの製法で説明した方法により、すなわち、アルミナ粉末、触媒金属塩の溶液及びアルカリ金属塩の溶液を混合し、水で希釈した後、蒸発乾固を行なうことにより、触媒材料を調製した。アルミナ粉末としてはLaを5質量%含有するγ−アルミナを用い、触媒金属塩の溶液としてはジニトロジアミン白金硝酸溶液を用い、アルカリ金属塩の溶液としては酢酸カリウム溶液を用いた。仕込み量は、γ−アルミナ量が87.7質量%、Pt量が3.5質量%、K量が8.8質量%となるように調整した。
【0044】
なお、上記γ−アルミナ量は、触媒材料中の全アルミニウム量から換算したアルミナ量に相当する。すなわち、原料として仕込まれたγ−アルミナの一部が溶けて上記水酸化物の針状結晶となるから、上記γ−アルミナの仕込み量と触媒材料中の溶けずに残るγ−アルミナ量とは一致しない。γ−アルミナの仕込み量は、当該針状結晶中のアルミニウム量から換算されるアルミナ量と、溶けずに残ったアルミナ量との合計量に相当する。
【0045】
図4及び図5は得られた触媒材料の顕微鏡写真である。同写真の塊状部分はアルミナ粒子であり、このアルミナ粒子より延びている針状結晶はAl及びKを含有する水酸化物であり、塊状部分に黒い点になって現れているもの(矢印の先)はPtである。これにより、上記製法によれば、上述の出発原料を混合し蒸発乾固するだけで、触媒金属が担持された粒状アルミナと、アルカリ金属及びアルミニウムを含有する水酸化物の針状結晶との混合物が得られることがわかる。
【0046】
<X線回折分析>
図4及び図5に示す触媒材料(以下、これを仕込み材料の種類で特定して「Al2O3+Pt+K」とする。)と、酢酸カリウム溶液に代えて酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウムの各々を採用して同様に調製した3種類の触媒材料(Al2O3+Pt+Na,Al2O3+Pt+Li,Al2O3+Pt+Cs)とについて、大気雰囲気で800℃の温度に24時間保持するエージングを施した後に、室温且つ大気雰囲気においてX線回折分析を行なった。図6は触媒材料(Al2O3+Pt+K)及び(Al2O3+Pt+Na)の回折パターンであり、図7は触媒材料(Al2O3+Pt+Li)及び(Al2O3+Pt+Cs)の回折パターンである。
【0047】
図6の◆は(Al,K)(OH)3によるピーク、◇は(Al,Na)(OH)3によるピークである。このことは、図8に示すAl(OH)3のX線回折パターンとの比較から明らかである。すなわち、同図の破線はAl(OH)3のピーク位置を示すが、上記触媒材料(Al2O3+Pt+K,Al2O3+Pt+Na)でも当該破線位置付近にピークが現れている。そうして、触媒材料のピーク位置が破線位置から若干シフトしているのは、K又はNaが固溶している影響によるものと認められる。従って、触媒材料(Al2O3+Pt+K)はカリウム固溶水酸化アルミニウム、触媒材料(Al2O3+Pt+Na)はナトリウム固溶水酸化アルミニウムということができ、総称的にはアルカリ金属固溶水酸化アルミニウムということができる。
【0048】
図7に示すように、触媒材料(Al2O3+Pt+Li)及び(Al2O3+Pt+Cs)では水酸化物の結晶は得られていない。但し、触媒材料(Al2O3+Pt+Li)では、35.7゜付近と45゜付近とに現れたピークからLiAlO2結晶の存在を確認することができる。
【0049】
<添加元素の種類がPMの着火燃焼性に及ぼす影響>
アルミナ及びPt以外の添加元素として、上記4種類のアルカリ金属を採用して調製した実施例に係る各触媒材料、並びにアルカリ土類金属Mg、Ca、Sr及びBa、並びにランタノイド元素La及びCeの各々を採用して調製した比較例に係る各触媒材料について、DTA(示差熱分析)により、PMの着火燃焼性を調べた。
【0050】
具体的には、供試触媒材料の仕込み量はいずれも、γ−アルミナ量が87.7質量%、Pt量が3.5質量%、K等の添加元素量が8.8質量%であり、また、いずれにも上述のエージングを施した。そうして、各供試触媒材料について、PMとしてのカーボンブラックと混合し、DTA用サンプルを調製した。カーボンブラック量はカーボンブラックと供試触媒材料との合計量に対して20質量%とした。このDTA用サンプルを反応容器に充填し、N2(80質量%)とO2(20質量%)との混合ガスを供給しながら、10℃/分の速度で昇温して供試触媒材料と基準物質の温度差の変化(DTA曲線)を測定し、これに基いてカーボンブラック量が半減した時点の温度(カーボン半減時温度)を求めた。結果は図9に示されている。
【0051】
同図によれば、アルカリ金属を添加元素とする各実施例はカーボン半減時の温度が比較例よりもかなり低くなっており、特にK又はNaを添加元素とした場合には100℃以上も低くなっている。また、別に添加元素量を零とした触媒材料(γ−アルミナ量;96.5質量%,Pt量;3.5質量%)に係るDPFを調製してカーボン半減時のガス温度を調べたところ、685℃であったことから、添加元素として上記アルカリ土類金属やランタノイド元素を採用してもPMの着火燃焼性の実質的な改善は望めないことがわかった。
【0052】
<アルカリ金属添加量の影響>
上記触媒材料(Al2O3+Pt+K)について、そのK量を表1のように変化させたときの生成物(触媒材料)に与える影響を調べた。すなわち、K量が異なる各触媒材料を調製し上記エージングを施した後にX線回折分析を行なったところ、図10に示す回折パターンが得られた。
【0053】
【表1】
【0054】
図10によれば、K量が3.7質量%以上になると、(Al,K)(OH)3によるピークが現れ、K量の増大に従ってそのピークが大きくなっている。従って、(Al,K)(OH)3の針状結晶を形成するためにはK量を3.7%以上にすることが好ましいということができる。
【0055】
また、表1のK量が3.7質量%〜27.8質量%の各触媒材料及びK量零の触媒材料(γ−アルミナ量;96.5質量%,Pt量;3.5質量%)を用いてそれぞれDPFを作製し、先と同様のエージングを施した後、上述のカーボン半減時の温度をDTAにより調べた。その結果を図11に示す。同図から、K量が増大するに従ってカーボン半減時の温度が低下する、つまり、PMの着火燃焼性が良くなること、但し、K量が多くなると効果が飽和してくることがわかる。
【0056】
従って、図10及び図11に示す結果から、K量を増大させることは上記針状結晶を生成する上では有利になり、PMの着火燃焼性の改善が図れるが、K量が過剰になると上述の如く効果が飽和してくるとともに、触媒材料のフィルタ本体へのコーティングが難しくなる、粒状アルミナ量が相対的に減少して触媒金属の分散性が低下する、Kによってフィルタ本体の強度低下を招き易くなる、等の理由から、K量は27.8質量%以下にすること、さらには20質量%以下にすることが好ましい。このことは添加元素としてNaを採用した場合も同様である。
【0057】
<針状結晶によるPM捕集率の改善効果>
上述のK量8.8質量%の実施例に係る触媒材料(針状結晶あり)と、K量零の比較例に係る触媒材料(針状結晶なし)とについて、それぞれ供試DPFを作製し、図12に示す装置により、PMとしてのカーボン捕集率を調べた。
【0058】
図12において、11はPMとしてのカーボン(煤)を入れた容器であり、この容器11の頂部にエアブロー管12が接続されているとともに、該頂部から延設されたカーボン送り管13の先端に供試DPF14を取り付けるようになっている。この装置の場合、エアブロー管12から供給されたエアによって容器11内に乱流を生じ、該容器11のカーボンが乱流に巻き込まれカーボン送り管13によって供試DPF14に供給される。供試DPF14に捕捉されなかったカーボンはエアと共に該供試DPF14から排出される。
【0059】
供試DPFは細孔通路径が22μmと30μmの2種類であり、いずれも容積は55cm3、セル密度は300cpsi(断面積約6.45cm2当たりのセル数)である。また、DPF容積1L当たりの触媒材料のコート量は50gとした。一方、容器11に入れるカーボン量は0.28g、エア流量は供試DPF14においてSV=120000h-1となるようにした。そうして、容器11のカーボンの全量をDPFサンプル14に供給したときの該サンプルの重量増加量からそのカーボン捕集量を求め、捕集率(カーボン捕集量/カーボン供給量)を算出した。結果は表2に示されている。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例は比較例よりもカーボン捕集率が6〜7%高くなっている。これは、実施例では、触媒コート層表面から部分的に突出した針状結晶にカーボンが当たって捕捉され、また、針状結晶同士が絡み合っててできた空隙をカーボンが通過するときに針状結晶に当たって捕捉されるためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】DPFを模式的に示す正面図である。
【図2】DPFを模式的に示す縦断面図である。
【図3】DPFの排ガス流入路と排ガス流出路とを隔てる壁を模式的に示す拡大断面図である。
【図4】本発明に係る触媒粒子の顕微鏡写真である。
【図5】本発明に係る別の触媒粒子の顕微鏡写真である。
【図6】K及びNaの各々を添加元素とする触媒材料のX線回折パターン図である。
【図7】Li及びCsの各々を添加元素とする触媒材料のX線回折パターン図である。
【図8】K及びNaの各々を添加元素とする触媒材料及び水酸化アルミニウムのX線回折パターン図である。
【図9】添加元素が異なる各種触媒材料に係るDPFのカーボン半減時温度を示すグラフ図である。
【図10】K添加量が異なる各触媒材料のX線回折パターン図である。
【図11】触媒材料のK添加量とカーボン半減時温度との関係を示すグラフ図である。
【図12】PM捕集率の測定装置を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 DPF
2 排ガス流入路(排ガス通路)
3 排ガス流出路(排ガス通路)
4 栓
5 隔壁
6 細孔通路(排ガス通路)
7 触媒コート層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の微粒子状物質を捕集するフィルタ本体の排ガス通路を構成する壁面に触媒がコートされているディーゼルパティキュレートフィルタであって、
上記触媒は、粒状アルミナと、アルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物とを含有し、上記粒状アルミナ及び上記結晶化合物のうち少なくとも粒状アルミナに、上記フィルタ本体に捕集された粒子状物質の着火燃焼を促進する触媒金属が担持されていることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項2】
請求項1において、
上記結晶化合物は、針状結晶であり、室温且つ大気雰囲気でのX線回折によって(Al,M)(OH)3(但し、Mはアルカリ金属である。)と同定されることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記アルカリ金属はNa又はKであることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項4】
請求項3において、
上記触媒中のアルミニウム量から換算されるアルミナ量と上記触媒金属量とアルカリ金属量との合計量に占めるアルカリ金属量の割合が3.7質量%以上であることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項5】
アルミナ粉末、触媒金属塩の溶液及びアルカリ金属塩の溶液を混合する工程Aと、
上記工程Aで得られた混合液を攪拌しながら加熱することにより、一部のアルミナ粉末よりそのアルミニウム成分を溶出させる工程Bと、
上記工程Bを経た混合物を焼成することにより、上記アルミニウム成分と上記アルカリ金属とを反応させてアルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物を生成する工程Cと、
上記工程Cを経た上記アルミナ粉末の残部、上記結晶化合物及び上記触媒金属を含有するスラリーを調製し、該スラリーをフィルタ本体の排ガス通路を構成する壁面にコーティングする工程Dとを備えていることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタの製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
上記フィルタ本体は、ケイ素を含有する無機多孔質材で形成されていることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタの製造方法。
【請求項1】
排ガス中の微粒子状物質を捕集するフィルタ本体の排ガス通路を構成する壁面に触媒がコートされているディーゼルパティキュレートフィルタであって、
上記触媒は、粒状アルミナと、アルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物とを含有し、上記粒状アルミナ及び上記結晶化合物のうち少なくとも粒状アルミナに、上記フィルタ本体に捕集された粒子状物質の着火燃焼を促進する触媒金属が担持されていることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項2】
請求項1において、
上記結晶化合物は、針状結晶であり、室温且つ大気雰囲気でのX線回折によって(Al,M)(OH)3(但し、Mはアルカリ金属である。)と同定されることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記アルカリ金属はNa又はKであることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項4】
請求項3において、
上記触媒中のアルミニウム量から換算されるアルミナ量と上記触媒金属量とアルカリ金属量との合計量に占めるアルカリ金属量の割合が3.7質量%以上であることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。
【請求項5】
アルミナ粉末、触媒金属塩の溶液及びアルカリ金属塩の溶液を混合する工程Aと、
上記工程Aで得られた混合液を攪拌しながら加熱することにより、一部のアルミナ粉末よりそのアルミニウム成分を溶出させる工程Bと、
上記工程Bを経た混合物を焼成することにより、上記アルミニウム成分と上記アルカリ金属とを反応させてアルカリ金属及びアルミニウムを成分とする結晶化合物を生成する工程Cと、
上記工程Cを経た上記アルミナ粉末の残部、上記結晶化合物及び上記触媒金属を含有するスラリーを調製し、該スラリーをフィルタ本体の排ガス通路を構成する壁面にコーティングする工程Dとを備えていることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタの製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
上記フィルタ本体は、ケイ素を含有する無機多孔質材で形成されていることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2006−205025(P2006−205025A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19147(P2005−19147)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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